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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084325
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】角型リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240618BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240618BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240618BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240618BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0585
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/169
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198531
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐介
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD05
5H011DD13
5H011KK01
5H011KK02
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM04
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029DJ02
5H029DJ14
5H029EJ01
5H029HJ04
(57)【要約】
【課題】電極体の膨張/収縮の繰り返しによる、電池ケースの溶接部の破損が抑制された角型リチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される角型リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体および前記電解質を収容する角型の電池ケースと、を備える。前記電池ケースは、外装体と、蓋体と、を備える。前記電池ケースは、前記外装体と前記蓋体とが溶接によって接合された溶接部を有する。前記外装体は、前記蓋体と対向する長方形状の底壁と、一対の長側壁と、一対の短側壁と、を有する。前記電極体は、正極と負極とが積層された扁平部を有する。前記外装体の一対の長側壁のうちの少なくとも一つは、前記蓋体に垂直な方向において、前記蓋体と、前記電極体の扁平部の蓋体側の端部との間の位置に、溝を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、電解質と、前記電極体および前記電解質を収容する角型の電池ケースと、を備える角型リチウムイオン二次電池であって、
前記電池ケースは、外装体と、蓋体と、を備え、
前記電池ケースは、前記外装体と前記蓋体とが溶接によって接合された溶接部を有し、
前記外装体は、前記蓋体と対向する長方形状の底壁と、一対の長側壁と、一対の短側壁と、を有し、
前記電極体は、正極と負極とが積層された扁平部を有し、
前記外装体の一対の長側壁のうちの少なくとも一つは、前記蓋体に垂直な方向において、前記蓋体と、前記電極体の扁平部の蓋体側の端部との間の位置に、溝を有する、
角型リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記溝の深さが、前記長側壁の厚みの0%超50%以下である、請求項1に記載の角型リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記短側壁に垂直な方向において、前記溝の長さが、前記電極体と前記長側壁の接触部の寸法よりも長い、請求項1に記載の角型リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記蓋体に垂直な方向において、前記溶接部の最深部の位置と、前記捲回電極体の扁平部の端部の位置との距離をHとした場合に、前記溝の位置が、前記溶接部の最深部の位置から、Hの40%~60%の距離だけ離れた位置にある、請求項1に記載の角型リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
車載用である、請求項1に記載の角型リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角型リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池は、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源用途における需要が急速に増大している。
【0003】
車両駆動用電源用途のリチウムイオン二次電池、すなわち車載用リチウムイオン二次電池は、一般的に、複数の電池が電気的に接続された組電池の形態で用いられる。車載用リチウムイオン二次電池は、組電池を構成し易いように、代表的には角型であり、角型リチウムイオン二次電池は、電極体、電解質、およびこれらを収容する角型の電池ケースを備える。角型リチウムイオン二次電池においては、充放電時の電極体の膨張/収縮によって、電池ケースの変形が起こり得ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-40684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BEV等の車両には、航続距離のさらなる向上が望まれている。この要求に応じる方策の一つは、正負極の活物質量を多くして、リチウムイオン二次電池の容量を増大させることである。一方で、典型的な角型リチウムイオン二次電池の電池ケースは、蓋体と、外装体とが溶接されることで封止されている。本発明者が鋭意検討した結果、正負極の活物質の充填密度を増やした場合には、充放電時の電極体の膨張時と収縮時との体積差が大きくなることによって、蓋体と外装体との溶接部に応力が集中し、充放電を繰り返した際に、溶接部において電池ケースの破損が起こり得るという問題があることを見出した。
【0006】
したがって、本発明は、電極体の膨張/収縮の繰り返しによる、電池ケースの溶接部の破損が抑制された角型リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される角型リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体および前記電解質を収容する角型の電池ケースと、を備える。前記電池ケースは、外装体と、蓋体と、を備える。前記電池ケースは、前記外装体と前記蓋体とが溶接によって接合された溶接部を有する。前記外装体は、前記蓋体と対向する長方形状の底壁と、一対の長側壁と、一対の短側壁と、を有する。前記電極体は、正極と負極とが積層された扁平部を有する。前記外装体の一対の長側壁のうちの少なくとも一つは、前記蓋体に垂直な方向において、前記蓋体と、前記電極体の扁平部の蓋体側の端部との間の位置に、溝を有する。
【0008】
このような構成によれば、電極体の膨張/収縮の繰り返しによる、電池ケースの溶接部の破損が抑制された角型リチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3】本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池の電極体の構成を示す模式分解図である。
図4】本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池の上部の模式断面図である。
図5】溝がない場合について説明するための蓋体と長側壁との溶接部の近傍を示す模式断面図である。
図6】溝がある場合について説明するための蓋体と長側壁との溶接部の近傍を示す模式断面図である。
図7】溝の変形例を説明するための、本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池の斜視図である。
図8】溝の別の変形例を説明するための、本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池の斜視図である。
図9】溝のさらに別の変形例を説明するための、本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池の上部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスを指す。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池を指す。
【0012】
以下、ここに開示される角型リチウムイオン二次電池の一例として、本実施形態に係る角型リチウムイオン二次電池を、図1~9を参照しつつ説明する。
【0013】
<リチウムイオン二次電池の概略構成>
図1は、角型リチウムイオン二次電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、U、Dは、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、角型リチウムイオン二次電池100の長辺方向、上記長辺方向と直交する短辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、角型リチウムイオン二次電池100の設置形態をなんら限定するものではない。
【0014】
図2に示すように、角型リチウムイオン二次電池100は、電池ケース30の内部に、扁平形状の電極体20と、非水電解質(図示せず)とが収容されることで構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44が備えられている。また、電池ケース30には、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁38が設けられている。電池ケース30には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。
【0015】
図1に示すように、電池ケース30は、角型であり、電極体20を収容する外装体32と、外装体32の開口を封口する蓋体34と、から構成されている。外装体32は、底壁と、相互に対向する一対の長側壁32aと、相互に対向する一対の短側壁32bと、を備えている。底壁は、長方形状であり、蓋体34と対向している。一対の長側壁32aおよび一対の短側壁32bはそれぞれ、底壁から延びている。
【0016】
図4に、角型リチウムイオン二次電池100の上部の断面を模式的に示す。図4は、方向Xに垂直な断面図である。図4に示すように、外装体32と蓋体34とは、レーザ溶接等によって溶接されて封止されている。したがって、電池ケース30は、外装体32と蓋体34とが接合された溶接部36を有する。図1および図4に示すように一対の長側壁32aには、溝80Aが形成されている。この溝80Aについては後述する。
【0017】
電池ケース30の材質は、特に制限されず、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0018】
図3は、角型リチウムイオン二次電池100の電極体20の構成を模式的に示す分解図である。本実施形態では、電極体20は、捲回電極体である。しかしながら、電極体20は、これに限られず、複数の正極と複数の負極とがセパレータを介して交互に積層された積層型電極体であってもよい。
【0019】
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、長尺状の正極シート50と、長尺状の負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0020】
捲回電極体20は、図3および図4に示すように扁平部22と、当該扁平部22の両端部に一対のR部24とを有する。通常、捲回電極体20の扁平部22が、電池ケース30の長側壁32aの内部表面と接触する。金属リチウム析出抑制の観点から、捲回電極体20において、通常、X方向における負極活物質層64の寸法は、正極活物質層54の寸法よりも大きい。よって、通常、X方向における捲回電極体20と長側壁32aの接触部分の寸法は、X方向における負極活物質層64の寸法と同じである。
【0021】
捲回電極体20の積層数(言い換えると、捲回電極体における正極層または負極層の積層数)は、特に限定されない。捲回電極体20の積層数は、例えば、40以上または60以上であってよい。捲回電極体20の積層数が大きい方が、電池をより高容量化でき、近年の車載用リチウムイオン二次電池に対する要求に適している。一方、捲回電極体20の積層数が大きくなると、充放電時の捲回電極体20の体積変化がより大きくなる。このため、捲回電極体20の積層数が大きいほど、電池の容量が大きくなると共に、本発明の効果がより大きくなる。したがって、捲回電極体20の積層数は、90以上が好ましい。
【0022】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0023】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質の例としては、リチウム複合金属酸化物(例、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物等)や、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、リン酸鉄リチウム等)などが挙げられる。正極活物質層54は、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。正極活物質層54中の正極活物質の含有量は、例えば80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
【0024】
正極活物質層54の充填密度は特に限定されない。正極活物質層54の充填密度が大きくなると、電池を高容量化できる一方で、充放電時の捲回電極体20の体積変化が大きくなる。よって、正極活物質層54の充填密度が大きいほど、本発明の効果がより大きくなる。このことから、正極活物質層54の充填密度は、2.4g/cm以上が好ましく、2.6g/cm以上がより好ましく、3.5g/cm以上がさらに好ましい。正極活物質層54の充填密度の上限は特に限定はないが、4.3g/cm以下、または4.1g/cm以下であり得る。
【0025】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、銅箔等が挙げられる。
【0026】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば黒鉛等を使用し得る。負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。負極活物質層64中の負極活物質の含有量は、例えば85質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。
【0027】
負極活物質層64の充填密度は特に限定されない。負極活物質層64の充填密度が大きくなると、電池を高容量化できる一方で、充放電時の捲回電極体20の体積変化が大きくなる。よって、負極活物質層64の充填密度が大きいほど、本発明の効果がより大きくなる。このことから、負極活物質層64の充填密度は、1.1g/cm以上が好ましく、1.3g/cm以上がより好ましく、1.5g/cm以上がさらに好ましい。負極活物質層64の充填密度の上限は特に限定はないが、2.2g/cm以下、または2.0g/cm以下であり得る。
【0028】
セパレータ70としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知のセパレータを用いてよく、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成される多孔性シートが挙げられる。多孔性シートは、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0029】
非水電解質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の非水電解質を用いてよく、典型的には、非水電解質は、非水溶媒と、支持塩(言い換えると電解質塩)とを含有する。非水溶媒の例としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等が挙げられる。支持塩の例としては、LiPF等のリチウム塩などが挙げられる。非水電解質は、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、本実施形態では、電解質として非水電解質を使用しているが、電解質は、固体電解質であってよい。
【0030】
<溝>
図1および図4に示すように一対の長側壁32aは、溝80Aを有している。図4に示すように、溝80Aは、蓋体34に垂直な方向(すなわち、図面のZ方向)において、蓋体34と、捲回電極体20の扁平部22の端部22aとの間に位置している。端部22aは、捲回電極体20の扁平部の端部のうちの、蓋体34側の端部である。
【0031】
図5は、長側壁に溝が形成されていない場合の例であり、蓋体534と長側壁532aとの溶接部536の近傍を示す模式断面図である。捲回電極体(図示せず)が、膨張した場合には、電池ケースの外装体が、外側に膨らむ。そのため、図中の矢印のように、外装体の長側壁532aが蓋体534から離れる方向に応力が働き、この応力が溶接部536に集中する。リチウムイオン二次電池に充放電が繰り返されると、捲回電極体が膨張/収縮を繰り返し、溶接部536に繰返し負荷がかかり、溶接部536の破損が起こり得る。
【0032】
図6は、本実施形態の場合の例であり、蓋体34と長側壁32aとの溶接部36の近傍を示す模式断面図である。本実施形態では、電池ケース30の外装体32の長側壁32aに溝80Aが形成されている。捲回電極体20が膨張した際に、外装体の長側壁32aが蓋体34から離れる方向に応力が働くが、溝80Aを起点に長側壁32aが変形することにより、応力を分散することができる。よって、応力の溶接部36への集中を緩和することができ、捲回電極体の膨張/収縮の繰り返しによる溶接部36の破損を抑制することができる。
【0033】
溝80Aの断面形状は、図示例ではV字状であるが、これに限定されない。溝80Aの断面形状は、矩形状、U字状、逆台形状等であってよい。
【0034】
溝80Aの深さ(すなわち、長側壁32aの厚み方向(Y方向)における溝80Aの寸法)は、特に限定されないが、応力の分散と電池ケース30の強度の確保の観点から、好ましくは外装体32の長側壁32aの厚み(すなわち、長側壁32aの溝がない部分の平均厚み)の0%超50%以下であり、より好ましくは5%以上30%以下であり、さらに好ましくは10%以上20%以下である。
【0035】
溝80Aの幅(すなわち、蓋体34に垂直な方向(Z方向)における溝80Aの寸法)は、特に限定されない。例えば、0.1mm~3.0mmであってよく、0.5mm~2.0mmであってよい。
【0036】
Z方向における溝80Aの位置は、溶接部36と、捲回電極体20の扁平部22の端部22aとの間にある限り特に限定されない。図4に示すように、Z方向における、溶接部36の最深部(Z方向における溶接部36の最下点)の位置をBとし、捲回電極体20の扁平部22の端部22aの位置をTとする。Z方向における位置Bと位置Tとの距離をHとする。溝80Aの位置は、位置Bと位置Tの真ん中およびその近傍が好ましい。具体的には、溝80Aの位置は、位置Bから、Hの40%~60%の距離だけ離れた位置が好ましく、Hの45%~55%の距離だけ離れた位置にあることがより好ましい。
【0037】
図示例では、溝80Aが一対の長側壁32aにのみ形成されている。しかしながら、一対の長側壁32aのうちの一つのみが、溝80Aを有していてもよい。この場合でも、電池ケース30の溶接部36の破損抑制効果は得られる。溝80Aが一対の長側壁32aの両方に形成されている方が、電池ケース30の溶接部36の破損抑制効果は高い。また、溝80Aは、一対の長側壁32aのみならず、一対の短側壁32bにも溝80Aが形成されていてもよい。
【0038】
図示例では、溝80Aが一対の長側壁32aの外側表面(すなわち、露出面)に形成されている。しかしながら、溝80Aは、一対の長側壁32aの内部表面に形成されていてもよく、溝80Aが、一対の長側壁32aの外側表面および内側表面の両方に形成されていてもよい。溝80Aが一対の長側壁32aの外側表面のみにある場合が、溝80Aの形成の容易さから有利である。
【0039】
図1に示す例では、溝80Aは、長側壁32aの一方の端部から、他方の端部まで、連続して形成されている。よって、溝80Aの長さ(すなわち、溝80AのX方向の寸法)は、長側壁32aのX方向の寸法の100%である。しかしながら、本発明の効果が得られる限り、これに限られない。溝80Aの長さは、長側壁32aのX方向の寸法の50%以上または80%以上であってよい。好適には、X方向において、溝80Aの長さは、捲回電極体20と長側壁32aの接触部の寸法以上である。このとき、X方向において、溝80Aの両端はそれぞれ、捲回電極体20と長側壁32aの接触部の両端と同じ位置または外側にあることが好ましい。なお、X方向は、短側壁32bに垂直な方向である。
【0040】
図7に示す溝の変形例では、溝80Bは、長側壁32aの両端には形成されておらず、長側壁32aの中央部を伸長している。溝80Bの長さ(X方向における溝80Bの寸法)は、好ましくは、捲回電極体20と長側壁32aの接触部の寸法の100%以上で設定される。しかしながら、溝80Bの長さは、本発明の効果が得られる限り、これよりも小さくてもよい。
【0041】
図8に示す溝の別の変形例では、溝80Cは、連続していない。このように、本発明の効果が得られる限り、溝が連続していなくてもよい。
【0042】
図示例では、溝80Aは、外装体32の長側壁32aの厚みが減少した凹部溝として形成されている。しかしながら、図9に示す溝のさらに別の変形例のように、溝80Dが、外装体32の長側壁32aが折れ曲がることによって形成されていてもよい。この場合、外装体232の厚さを一定に保つことができる。
【0043】
角型リチウムイオン二次電池100の好適な用途は、車載用であり、具体的には、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源である。しかしながら、その他の用途(例、携帯機器の電源など)にも使用可能である。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0045】
すなわち、ここに開示される角型リチウムイオン二次電池は、以下の項[1]~[5]である。
[1]電極体と、電解質と、前記電極体および前記電解質を収容する角型の電池ケースと、を備える角型リチウムイオン二次電池であって、
前記電池ケースは、外装体と、蓋体と、を備え、
前記電池ケースは、前記外装体と前記蓋体とが溶接によって接合された溶接部を有し、
前記外装体は、前記蓋体と対向する長方形状の底壁と、一対の長側壁と、一対の短側壁と、を有し、
前記電極体は、正極と負極とが積層された扁平部を有し、
前記外装体の一対の長側壁のうちの少なくとも一つは、前記蓋体に垂直な方向において、前記蓋体と、前記電極体の扁平部の蓋体側の端部との間の位置に、溝を有する、
角型リチウムイオン二次電池。
[2]前記溝の深さが、前記長側壁の厚みの0%超50%以下である、項[1]に記載の角型リチウムイオン二次電池。
[3]前記短側壁に垂直な方向において、前記溝の長さが、前記電極体と前記長側壁の接触部の寸法よりも長い、項[1]または[2]に記載の角型リチウムイオン二次電池。
[4]前記蓋体に垂直な方向において、前記溶接部の最深部の位置と、前記捲回電極体の扁平部の端部の位置との距離をHとした場合に、前記溝の位置が、前記溶接部の最深部の位置から、Hの40%~60%の距離だけ離れた位置にある、項[1]~[3]のいずれか一項に記載の角型リチウムイオン二次電池。
[5]車載用である、項[1]~[4]のいずれか一項に記載の角型リチウムイオン二次電池。
【符号の説明】
【0046】
20 電極体
30 電池ケース
32 外装体
34 蓋体
36 溶接部
38 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータ
80A,80B,80C,80D 溝
100 角型リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9