(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084331
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】シャッターの施錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 65/02 20060101AFI20240618BHJP
E06B 9/15 20060101ALI20240618BHJP
E05B 13/00 20060101ALI20240618BHJP
E06B 9/80 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
E05B65/02 E
E06B9/15 Z
E05B13/00 A
E06B9/80 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198537
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000150936
【氏名又は名称】株式会社田窪工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100225967
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】重松 保彦
(72)【発明者】
【氏名】藤淵 健二
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042AA06
2E042DA01
2E042DB03
(57)【要約】
【課題】錠前の交換の利便性を向上させることが可能なシャッターの施錠装置を提供すること。
【解決手段】スラット50には、前カバー10の4つのボルト13に対応する位置に孔51を透設する。また、スラット50には、スライド金具30の把持部31を突出させるための突出孔52を透設する。即ち、スラット50に簡単な加工を施して、施錠装置1を取り付ける。施錠装置1を構成するスライド金具30の連結孔37を既存のリンクバーに連結させる。施錠装置1をスラット50に取り付けた状態では、把持部31に透設された孔32が前面カバー10よりも突出する。施錠時には一対の孔32の位置が一致するため、錠60の掛け金61を一対の孔32に貫通させることができる。ここで、錠60と鍵とからなる錠前としては汎用品を用いることができるため、錠前の交換の利便性を向上させることができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部の両側部に立設したガイドレールに案内されて上下動するシャッターカーテンと、
前記シャッターカーテンの上下動を規制する規制手段とを備えたシャッターの施錠装置において、
錠を取り付けるための取付孔を有するとともに、前記規制手段に連結する連結手段を備えたシャッターの施錠装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシャッターの施錠装置において、
前記連結手段は、一対で構成されているシャッターの施錠装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシャッターの施錠装置において、
施錠時には前記連結手段に透設された一対の取付孔の位置が一致するシャッターの施錠装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシャッターの施錠装置において、
施錠時又は開錠時に前記連結手段を所定の位置に付勢させる付勢手段を備えたシャッターの施錠装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のシャッターの施錠装置において、
前記施錠装置の大部分は、シャッターカーテンを構成するスラットに没設されているシャッターの施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラット式シャッター、特にシャッターの施錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、店舗や物置の出入口の開口部には、開閉装置の一つとして、スラットと呼ばれる長尺の金属板を複数連結したシャッターカーテンを有するスラット式シャッターが知られている。
図12は、スラット式シャッターを裏側から見た下部正面図である。
図13は、
図12において矢印Aで示す部分の拡大図である。
図12、
図13に示すように、スラット式シャッター100には、その開口部101の両側部に立設したガイドレール102に案内されて上下動するシャッターカーテン103が設けられている。シャッターカーテン103の所定の位置には、盗難防止などの観点からシャッターカーテン103の上下動を規制して施錠するための施錠装置104が設けられている。施錠装置104は、一対のリンクバー105に連結されており、施錠時や開錠時には一対のリンクバー105が左右に移動する。一対のリンクバー105の先端部には係止部106が形成されており、この係止部106がガイドレール102に設けられた被係止部107と係止して、シャッターカーテン103の上下動を規制する。
【0003】
ところで、近年では、施錠装置104などを容易に着脱でき、ひいては施錠装置104などに対するメンテナンス性を向上させているシャッターも存在している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、施錠装置104などに対するメンテナンス性は向上させることができるものの、施錠装置104自体はシャッターの専門知識を有する者がメンテナンスを行っていると思われる。このため、例えば、レンタル倉庫やレンタル車庫等において、使用者が入れ替わった場合には、その度毎に施錠装置104の一部を構成するシリンダー錠部108と鍵とを交換する必要がある。この場合には、使用者自身では交換できないため、シリンダー錠部108と鍵との交換には、非常に手間と時間を要していた。
【0006】
そこで、本発明は、錠前の交換の利便性を向上させることが可能なシャッターの施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
建物の開口部の両側部に立設したガイドレールに案内されて上下動するシャッターカーテンと、前記シャッターカーテンの上下動を規制する規制手段とを備えたシャッターの施錠装置において、錠を取り付けるための取付孔を有するとともに、前記規制手段に連結する連結手段を備えた。
【0008】
このように構成すれば、シャッターカーテンの上下動を規制する規制手段を有効活用すべく、規制手段と連結手段とを連結するとともに、例えば汎用品である錠の掛け金を取付孔に貫通させるとシャッターカーテンを全閉状態で施錠できることとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、錠前の交換の利便性を向上させることが可能なシャッターの施錠装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)前カバーを示す正面図。(b)前カバーを示す平面図。(c)前カバーを示す右側面図。
【
図3】(a)収容ケースを示す正面図。(b)収容ケースを示す平面図。(c)収容ケースを示す右側面図。
【
図4】(a)スライド金具を示す正面図。(b)スライド金具を示す平面図。(c)スライド金具を示す左側面図。(d)スライド金具を示す右側面図。
【
図5】(a)一対のスライド金具を収容ケースに収容した状態の施錠時を示す正面図。(b)一対のスライド金具を収容ケースに収容した状態の施錠時を示す平面図。(c)一対のスライド金具を収容ケースに収容した状態の施錠時を示す背面図。
【
図6】(a)一対のスライド金具を収容ケースに収容した状態の開錠時を示す正面図。(b)一対のスライド金具を収容ケースに収容した状態の開錠時を示す平面図。
【
図7】(a)前カバーから見たときの開錠時の状態を示す正面図。(b)前カバーから見たときの施錠時の状態を示す正面図。
【
図9】施錠装置をスラットに取り付けるときの手順を示す概略斜視図。
【
図10】収容ケースをスラットの裏側に取り付けた状態を示す正面図。
【
図11】把持部に透設された孔に錠を取り付けた状態を示す斜視図。
【
図12】スラット式シャッターを裏側から見た下部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、施錠装置1を示す斜視図である。
図1に示すように、施錠装置1は、前カバー10、収容ケース20、スライド金具30などから構成されている。
図2(a)は、前カバー10を示す正面図であり、
図2(b)は、前カバー10を示す平面図であり、
図2(c)は、前カバー10を示す右側面図である。
図2(a)に示すように、前カバー10の上端部及び下端部には、屈曲部11が形成され、中央部にはスライド金具30の一部を突出させるための突出孔12が形成されている。
図2(b)、(c)に示すように、前カバー10の裏側の略四隅には、ボルト13が立設されている。ボルト13は、前カバー10の裏側に溶接によって立設させているため、ボルト13の頭が前カバー10の表側に現れることはない。従って、施錠装置1を構成する前カバー10を、シャッターカーテンを構成するスラットに取り付けた場合でも、シャッターカーテン自体の美観を損ねることはない。
【0012】
図3(a)は、収容ケース20を示す正面図であり、
図3(b)は、収容ケース20を示す平面図であり、
図3(c)は、収容ケース20を示す右側面図である。
図3(a)に示すように、収容ケース20は略長方形に形成され、長手方向の両端にはフランジ21が形成されている。両フランジ21には、孔22が透設されている。また、収容ケース20の略左上と略右下の2箇所には、ボルト23が立設されている。ボルト23は、収容ケース20の内側に溶接によって立設させているため、ボルト23の頭が収容ケース20の表面に現れることはない。
【0013】
なお、ボルト23を取り付ける位置に予め孔を透設しておき、当該孔にボルト23を立設する構成にしても良い。このように構成すれば、収容ケース20に対するボルト23の位置決めが容易に行うことができるため、収容ケース20の量産する際に生産性の向上を図ることができる。
【0014】
図4(a)は、スライド金具30を示す正面図であり、
図4(b)は、スライド金具30を示す平面図であり、
図4(c)は、スライド金具30を示す左側面図であり、
図4(d)は、スライド金具30を示す右側面図である。
図4に示すように、スライド金具30には、施錠時や開錠時にスライド金具30を左右に移動させるための把持部31が突出形成されている。その把持部31には、孔32が透設されている。また、スライド金具30の略中央には、ボルト33が立設されている。なお、上述したようにボルト33に対しても、位置決め孔を透設する構成としても良い。
【0015】
図4(b)に示すように、スライド金具30には、施錠時に収容ケース20の内壁と当接して、スライド金具30の移動を規制する規制部34が形成されている。
図4(a)、(b)に示すように、スライド金具30には、上方に折り曲げられて折曲部35が形成されている。スライド金具30の端部には、連結部36が形成されており、その連結部36には連結孔37が透設されている。一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した場合において、折曲部35は開錠時に収容ケース20の外壁と当接して、スライド金具30の移動が規制される。
【0016】
図5(a)は、一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した状態の施錠時を示す正面図であり、
図5(b)は、一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した状態の施錠時を示す平面図であり、
図5(c)は、一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した状態の施錠時を示す背面図である。
図5に示すように、収容ケース20に立設されたボルト23とスライド金具30に立設されたボルト33との間には、トーションバネ40が介在している。トーションバネ40は、ナット41でボルト33に取り付けられている。このため、施錠時にはトーションバネ40の付勢力により、スライド金具30の規制部34が収容ケース20の内壁と当接して、スライド金具30の移動が規制される。このとき、一対のスライド金具30の把持部31に透設された一対の孔32の位置が一致する。
【0017】
図6(a)は、一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した状態の開錠時を示す正面図であり、
図6(b)は、一対のスライド金具30を収容ケース20に収容した状態の開錠時を示す平面図である。
図6に示すように、開錠時にはトーションバネ40の付勢力により、折曲部35が収容ケース20の外壁と当接して、スライド金具30の移動が規制される。このとき、一対のスライド金具30の把持部31に透設された一対の孔32の位置にはズレが生じて一致しない。
【0018】
図7(a)は、前カバー10から見たときの開錠時の状態を示す正面図であり、
図7(b)は、前カバー10から見たときの施錠時の状態を示す正面図である。
図7(a)に示すように、開錠時には一対のスライド金具30の把持部31が、それぞれ左右の位置に移動し、
図7(b)に示すように、施錠時には一対のスライド金具30の把持部31が中央に位置する。このとき、一対のスライド金具30の把持部31に透設された一対の孔32の位置が一致する。
【0019】
図8は、スラット50の孔あけ加工を示す正面図である。
図8に示すように、スラット50には、前カバー10の4つのボルト13に対応する位置に孔51を透設する。また、スラット50には、スライド金具30の把持部31を突出させるための突出孔52を透設する。このようにスラット50に対して、4つの孔51と1つの突出孔52とを透設する孔あけ加工を施すことにより、施錠装置1をスラット50に取り付けることができる。
【0020】
図9は、施錠装置1をスラット50に取り付けるときの手順を示す概略斜視図である。
図9に示すように、まずはスライド金具30を収容ケース20に取り付ける。このとき、スライド金具30の把持部31を施錠時の状態、換言すれば把持部31に透設された一対の孔32の位置が一致した状態にする。
【0021】
次に、前面カバー10の4つのボルト13をスラット50に透設された4つの孔51に貫通させる。スライド金具30を収容ケース20に取り付けた状態のまま、スラット50の裏側から収容ケース20の4つの孔22をスラット50に透設された4つの孔51に一致させて、前面カバー10の4つのボルト13を収容ケース20の4つの孔22に貫通させる。そして、スラット50の裏側から4つのナット41を対応する4つのボルト13に螺合させて、施錠装置1をスラット50に取り付ける。続いて、スライド金具30に形成された連結部36の連結孔37を、一対のリンクバー(不図示:
図10及び
図12のリンクバー105参照)と連結させる。
【0022】
このように施錠装置1をスラット50に取り付けた状態においては、収容ケース20がスラット50の凹部に没設されているため、収容ケース20がシャッターカーテンの巻き取りの邪魔になることはない。加えて、前面カバー10の厚みは、約1mm程度しか有しない。従って、施錠装置1をスラット50に取り付けた状態であっても、容易にシャッターカーテンを巻き取ることができる。
【0023】
図10は、収容ケース20をスラット50の裏側に取り付けた状態を示す正面図である。
図10に示すように、スライド金具30を収容ケース20に収容した状態で、収容ケース20をスラット50の裏側に取り付けると、収容ケース20はスラット50の凹部に没設する。スライド金具30の連結孔37には、一対のリンクバー105が連結されている。ここで、一対のリンクバー105の先端部には、係止部が形成されている。施錠装置1の施錠時には、係止部がガイドレールに設けられた被係止部と係止して、シャッターカーテンの上下動が規制されて、シャッターカーテンが全閉状態となる。
【0024】
図11は、把持部31に透設された孔32に錠60を取り付けた状態を示す斜視図である。
図11に示すように、施錠時には一対のスライド金具30の把持部31に透設された一対の孔32の位置が一致するため、一対の孔32に錠60の掛け金61を貫通させた後、錠60を施錠すれば、シャッターカーテンの全閉状態を維持することができる。ここで、錠前を構成する錠60としては、一般に流通している汎用品を用いることができる。このため、例えば、レンタル倉庫やレンタル車庫等のシャッターカーテンに対して、施錠装置1を採用すれば、使用者が入れ替わった場合でも、錠前を交換するのみで良い。従って、施錠装置1を構成する錠前の交換の利便性を向上させることができる。
【0025】
以上、本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)スラット50に簡単な加工を施して、施錠装置1をスラット50に取り付ける。施錠装置1を構成するスライド金具30の連結孔37を既存のリンクバー(
図12参照)に連結させる。施錠装置1をスラット50に取り付けた状態では、把持部31に透設された孔32が前面カバー10よりも突出する。施錠時には一対の孔32の位置が一致するため、錠60の掛け金61を一対の孔32に貫通させることができる。錠60と鍵とからなる錠前としては汎用品を用いることができるため、錠前の交換の利便性を向上させることができる。
【0026】
(2)トーションバネ40は、収容ケース20とスライド金具30との間に介在している。このため、開錠時にはトーションバネ40の付勢力により、折曲部35が収容ケース20の外壁と当接して、スライド金具30の移動が規制される。一方、施錠時にはトーションバネ40の付勢力により、スライド金具30の規制部34が収容ケース20の内壁と当接して、スライド金具30の移動が規制される。このとき、一対のスライド金具30の把持部31に透設された一対の孔32の位置が一致する。従って、錠60の掛け金61を一対の孔32に容易に貫通させることができる。
【0027】
(3)施錠装置1をスラット50に取り付けた状態において、収容ケース20は、スラット50の凹部に没設されている。つまり、施錠装置1を構成する大部分がスラット50の凹部に没設されている。このため、収容ケース20がシャッターカーテンの巻き取りの邪魔になることはない。加えて、前面カバー10の厚みは、約1mm程度しか有しない。しかも、前面カバー10の突出孔12から突出する把持部31は、シャッターカーテンの巻き取りの際に、スラット50の凹部に没入するため、把持部31が前面カバー10より突出していても、シャッターカーテンの巻き取りの邪魔になることはない。従って、施錠装置1をスラット50に取り付けた状態であっても、容易にシャッターカーテンを巻き取ることができる。
【0028】
(4)シャッターカーテンの上下動を規制するための構造、即ち既存のリンクバーの係止部とガイドレールの被係止部との係止による規制機構を有効活用すべく、リンクバーに連結する連結孔37をスライド金具30に透設している。一方、スラット50には、前カバー10の4つのボルト13に対応する位置に4つの孔51と、スライド金具30の把持部31を突出させるための突出孔52を透設するだけであり、スラット50への加工工程も少ない。しかも、施錠には汎用品の錠60と鍵とからなる錠前を採用することができる。従って、簡単かつローコストで施錠装置1の取り付けを実現することができる。
【0029】
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・シャッターカーテンの上下動を規制する係止箇所は、建物の開口部の左右に立設されたガイドレールの被係止部の2箇所であったが、係止箇所は1箇所でも良く、例えば左右に立設されたガイドレールの被係止部のいずれか一方のみでも良い。また、被係止部を床面に設け、その被係止部と係止する構成であっても良い。
・錠はダイヤル錠であっても良い。
・シャッターカーテンとしては、パネル、パイプ、シート状物、ネット状物を開閉方向へ単数または複数設けた態様、或いはスラット、パネル、パイプ、シート状物、ネット状物等を適宜組み合わせた態様であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1…施錠装置、30…連結手段を構成するスライド金具、31…把持部、32…取付孔としての孔、36…連結手段を構成する連結部、37…連結手段を構成する連結孔、40…付勢手段としてのトーションバネ、50…スラット、60…錠、100…スラット式シャッター、101…開口部、102…ガイドレール、103…シャッターカーテン、105…規制手段を構成するリンクバー、106…規制手段を構成する係止部、107…規制手段を構成する被係止部。