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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084334
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】水中洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/10 20060101AFI20240618BHJP
   A01K 63/10 20170101ALI20240618BHJP
【FI】
B63B59/10 A
A01K63/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198541
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁大
(72)【発明者】
【氏名】平田 大輔
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CC25
2B104CG12
(57)【要約】
【課題】水中にて洗浄対象を洗浄する洗浄作業における作業負担を低減することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な水中洗浄装置は、水中において洗浄対象を洗浄する洗浄機と、前記洗浄対象を洗浄する洗浄経路を生成する制御部と、を備える。前記洗浄機が前記洗浄経路に沿って自動移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において洗浄対象を洗浄する洗浄機と、
前記洗浄対象を洗浄する洗浄経路を生成する制御部と、
を備え、
前記洗浄機が前記洗浄経路に沿って自動移動する、水中洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄機に配置されるカメラを備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影した撮影画像に基づいて前記洗浄対象の洗浄状態を判定する、請求項1に記載の水中洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記洗浄状態の判定により得られる洗浄跡を基準に前記洗浄経路を生成する、請求項2に記載の水中洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗浄跡に基づく洗浄経路の生成ができない場合に、水深を基準に前記洗浄経路を生成する、請求項3に記載の水中洗浄装置。
【請求項5】
記憶部を備え、
前記制御部は、前記洗浄状態の判定により検出された洗い残し領域を前記記憶部に記憶する、請求項2に記載の水中洗浄装置。
【請求項6】
表示部を備え、
前記制御部は、前記洗浄対象における前記洗い残し領域の位置を示す画像を生成して前記表示部に表示させる、請求項5に記載の水中洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記洗浄状態の判定により得られる洗浄跡に基づいて、前記洗浄機の進行方向を反対向きとする折返し位置を特定する、請求項2に記載の水中洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄機から延びる接続体を備え、
前記制御部は、前記洗浄機の回転角を求めて前記接続体の捻じれを判定する、請求項1に記載の水中洗浄装置。
【請求項9】
前記回転角には、
前記接続体の支点を原点とする全体座標系の鉛直方向に設定された第1座標軸周りの前記洗浄機の回転を示す第1回転角と、
前記洗浄機の中心位置を原点とする局座標系の鉛直方向に設定された第2座標軸回りの前記洗浄機の回転を示す第2回転角と、
が含まれる、請求項8に記載の水中洗浄装置。
【請求項10】
報知部を備え、
前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合に、前記報知部に異常を報知させる、請求項8に記載の水中洗浄装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合、前記自動移動への移行を禁止する、請求項8に記載の水中洗浄装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合、前記自動移動を開始する前に捻じれを自動で解消する動作を前記洗浄機に行わせる、請求項8に記載の水中洗浄装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記洗浄機を手動で操作する手動移動から前記自動移動に切り替わる際における前記回転角に応じて前記洗浄経路を生成する、請求項8に記載の水中洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養殖魚網や船体等の清掃対象を清掃する水中清掃ロボットが知られる(例えば特許文献1参照)。水中清掃ロボットを用いた清掃時においては、清掃作業者は、陸上や船上から養殖魚網の清掃状況や、水中清掃ロボットの走行方向を確認しながら、リモコンボックスを用いて水中清掃ロボットの操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5242226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水中清掃ロボットを利用した清掃作業においては、清掃作業者は、清掃対象に洗い残しが生じないように、水中清掃ロボットの動作を常時監視する必要がある。すなわち、従来においては、清掃作業者の作業負担が大きくなり易かった。
【0005】
本発明は、水中にて洗浄対象を洗浄する洗浄作業における作業負担を低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な水中洗浄装置は、水中において洗浄対象を洗浄する洗浄機と、前記洗浄対象を洗浄する洗浄経路を生成する制御部と、を備える。前記洗浄機が前記洗浄経路に沿って自動移動する。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、水中にて洗浄対象を洗浄する洗浄作業における作業負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】水中洗浄装置の概略の構成を示すブロック図
図2】自走式洗浄機の概略の構成を示す斜視図
図3】自走式洗浄機を図2と異なる方向から見た概略斜視図
図4】自走式洗浄機の概略の構成を示す側面図
図5】水中洗浄装置を用いた養殖魚網の側面の洗浄例について説明するための図
図6】水中洗浄装置が備える制御部の機能を示すブロック図
図7A】水深変更経路について説明するための模式図
図7B】水深変更経路について説明するための模式図
図8A】自走式洗浄機に配置されるカメラで撮影された撮影画像を模式的に示す図
図8B図8Aに示す撮影画像を画像処理した状態を模式的に示す図
図9】第1例の洗浄経路の生成手法について説明するための図
図10A】第2例の洗浄経路のイメージを示す図
図10B】自走式洗浄機が備えるカメラで撮影された撮影画像の、画像処理後のイメージを示す模式図
図11A】折返し位置の特定について説明するための図
図11B】折返し位置の特定について説明するための図
図12A】洗い残し領域の検出イメージを示す図
図12B】進行方向と反対方向を撮影するカメラで撮影された撮影画像の、画像処理後のイメージを示す模式図
図13】洗い残し領域を表示する画像を例示する模式図
図14】水中洗浄装置における自動走行による洗浄の流れを例示するフローチャート
図15】養殖魚網の洗浄パターンの別例を示す模式図
図16】水中洗浄装置が備える変形例の制御部の機能を示すブロック図
図17A】接続体に生じる第1捻じれについて説明するための図
図17B】接続体に生じる第2捻じれについて説明するための図
図18】養殖魚網の側面を洗浄する場合における自走式洗浄機の経路選択について説明するための図
図19図18の内容の理解を容易とするための補助図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。水中洗浄装置が備える自走式洗浄機の説明における方向は、図面中に示す3次元直交座標系であるxyz座標系に基づく。以下では、このxyz座標系における、x方向を前後方向、y方向を左右方向、z方向を上下方向とする。なお、+x側が前側、-x側が後側とする。+y側が左側、-y側が右側とする。+z側が上側、-z側が下側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0010】
<1.水中洗浄装置の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る水中洗浄装置100の概略の構成を示すブロック図である。図1に示すように、水中洗浄装置100は、自走式洗浄機1と、制御部2と、記憶部3と、高圧水ポンプ4と、操作部5と、表示部6とを備える。
【0011】
自走式洗浄機1は、水中において洗浄対象を走行しながら洗浄する。本実施形態では、洗浄対象は養殖魚網である。養殖魚網は、例えば化繊や金属によって構成される。養殖魚網は、例えば、直径30m、深さ15mの円筒形状である。ただし、養殖魚網の形状やサイズは、適宜変更可能である。養殖魚網は、例えば、四角柱状や、海面側から海底側に向けて直径が小さくなる円錐台形状等であってもよい。また、洗浄対象は、例えば、橋脚、船体、又は、プール等の養殖魚網以外のものであってもよい。なお、本実施形態では、洗浄対象を洗浄する洗浄機を自走式洗浄機としているが、これは例示にすぎない。洗浄機は、例えば、洗浄対象を浮遊或いは航行しながら洗浄する構成であってもよい。すなわち、本発明の洗浄機は、自走式のものだけでなく、それ自体に備わった動力で移動するものを広く含む。本発明の洗浄機は、水中において洗浄対象を洗浄する洗浄機を広く含む。
【0012】
図1に示すように、自走式洗浄機1は、モータ1aと、カメラ1bと、水深センサ1cと、IMU(Inertial Measurement Unit)1dとを備える。モータ1aは、自走式洗浄機1が養殖魚網上を走行するための駆動力を与える。カメラ1bは、自走式洗浄機1の周囲の状況を撮影可能に設けられる。水深センサ1cは、圧力センサで構成される。水深センサ1cは、自走式洗浄機1の適所に配置されて、自走式洗浄機1が存在する水深を検知可能に設けられる。IMU1dは、自走式洗浄機1の適所に配置されて、自走式洗浄機1の姿勢を検知可能に設けられる。IMU1dは、3軸角速度センサと3軸加速度センサとを含む。自走式洗浄機1の構成の詳細については、後述する。
【0013】
制御部2は、水中洗浄装置100の全体を制御する。制御部2の制御対象には、自走式洗浄機1の動作も含まれる。制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を含むプロセッサであってよい。制御部2は、複数のプロセッサを含んで構成されてもよい。本実施形態では、制御部2は、例えば陸上又は船上に配置される。制御部2は、例えば通信線および給電線を含む複数の電線を束ねた電線束7によって自走式洗浄機1と電気的に接続される。なお、制御部2は、自走式洗浄機1に配置されてもよい。また、制御部2は、自走式洗浄機1と、船上等の他の場所とに分散して配置されてもよい。
【0014】
記憶部3は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含んで構成される。揮発性メモリには、例えばRAM(Random Access Memory)が含まれてよい。不揮発性メモリには、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、又は、ハードディスドライブが含まれてよい。不揮発性メモリには、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータが格納されてよい。記憶部3は、制御部2に含まれる構成であっても、制御部2とは別の装置として設けられてもよい。記憶部3は、制御部2と同様、自走式洗浄機1に配置されても、自走式洗浄機1外に配置されてもよい。
【0015】
高圧水ポンプ4は、高圧水を自走式洗浄機1に供給する。高圧水ポンプ4は、例えば、陸上又は船上に配置される。高圧水ポンプ4は、ホース8によって自走式洗浄機1と接続される。自走式洗浄機1は、高圧水ポンプ4からホース8を介して供給される高圧水を利用して養殖魚網の洗浄を行う。
【0016】
操作部5は、自走式洗浄機1の手動操作を可能とする。操作部5は、制御部2と電気的に接続される。清掃作業員が操作部5を用いて行った動作指令に応じて、制御部2が自走式洗浄機1の動作を制御する。また、操作部5は、自走式洗浄機1の運転モードの選択を可能とする。詳細には、操作部5は、手動モードと、自動モードとの選択を可能に設けられる。手動モードが選択されると、清掃作業員は、操作部5を用いて自走式洗浄機1の手動操作を行うことができる。自動モードが選択されると、自走式洗浄機1は、自動走行しながら養殖魚網の洗浄を行う。なお、操作部5は、清掃作業員が操作するために、陸上又は船上に配置される。
【0017】
表示部6は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置によって構成され、制御部2と電気的に接続される。表示部6は、操作部5と同様に、陸上又は船上に配置される。表示部6は、例えば、自走式洗浄機1が備えるカメラ1bで撮影された画像を表示可能に設けられる。また、表示部6は、制御部2によって生成された画像を表示可能に設けられる。なお、表示部6は、制御部2を介することなく、カメラ1bと直接接続される構成であってもよい。
【0018】
<2.自走式洗浄機の概要>
図2は、本発明の実施形態に係る自走式洗浄機1の概略の構成を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る自走式洗浄機1を図2と異なる方向から見た概略斜視図である。図2は、自走式洗浄機1を斜め上方から見た図である。図3は、自走式洗浄機1を斜め下方から見た図である。図4は、本発明の実施形態に係る自走式洗浄機1の概略の構成を示す側面図である。図4は、自走式洗浄機1を右方から見た図である。
【0019】
図2から図4に示すように、自走式洗浄機1は、走行体11と、洗浄ユニット12と、プロペラ13と、環状体14とを備える。
【0020】
走行体11は、走行体本体部111と、4つの車輪112とを有する。4つの車輪112は、詳細には、左前輪112a、右前輪112b、左後輪112c、および、右後輪112dで構成される。各車輪112は、走行体本体部111内に配置される別々のモータ1aからの回転動力を伝達可能に、走行体本体部111の側部に配置される。換言すると、走行体本体部111内に配置されるモータ1aには、左前輪112a用のモータと、右前輪112b用のモータと、左後輪112c用のモータと、右後輪112d用のモータとが含まれる。各車輪112は、各モータ1aの駆動によって別々に回転する。なお、各モータ1aは、上述の電線束7(図1参照)に含まれる信号線および給電線に接続される。
【0021】
各モータ1aの回転数を同じとして同方向に回転させることにより、走行体11は前後方向に直進する。すなわち、走行体11は前後方向に直進走行する。走行体11が前進走行するか、後進走行するかは、モータ1aの回転方向によって決まる。また、例えば、走行体11が前進走行している状態で、右側の車輪112b、112d用のモータの回転数を、左側の車輪112a、112c用のモータの回転数よりも大きくすると、走行体11は左に向けて曲がる。逆に、左側の車輪112a、112c用のモータの回転数を、右側の車輪112b、112d用のモータの回転数よりも大きくすると、走行体11は右に向けて曲がる。
【0022】
なお、走行体11が後進走行している状態においても、同様に進行方向を変えることができる。また、左側の車輪112a、112c用のモータと、右側の車輪112b、112d用のモータとを、互いに逆方向に回転させると、走行体11を旋回(超信地旋回)させることもできる。また、走行体本体部111内に収容されるモータの数は、4つに限らず、例えば2つであってもよい。例えば、左前輪112a用のモータと右前輪112b用のモータとの2つのモータを備える構成としてもよい。この構成の場合、左前輪112aと左後輪112cとをベルト機構またはチェーン機構で連結し、右前輪112bと右後輪112dとを同様にベルト機構またはチェーン機構で連結する構成としてもよい。
【0023】
洗浄ユニット12は、走行体11の下方に配置され、洗浄対象を洗浄する。詳細には、洗浄ユニット12は、高圧水ポンプ4からホース8を介して供給される高圧水を洗浄対象である養殖魚網に向かって噴射し、当該噴射により生じる噴流によって養殖魚網の洗浄を行う。
【0024】
洗浄ユニット12は、円盤状の回転体121を有する。回転体121は、上下に延びる回転軸15の下端部に取り付けられ、回転軸15と共に回転する。なお、回転軸15は、走行体本体部111に回転可能に支持される。詳細には、回転軸15は、走行体本体部111内に配置されるロータリジョイント(不図示)によって回転可能に支持されている。高圧水ポンプ4からロータリジョイントに供給された高圧水は、回転軸15および回転体121内を通って、回転体121の下面に配置される洗浄ノズル122に送られる。本実施形態では、洗浄ノズル122の数は2つである。ただし、洗浄ノズル122の数は適宜変更されてよい。
【0025】
洗浄ノズル122は、所定角度だけ下方に傾斜して配置されており、洗浄時において洗浄ノズル122の高圧水の噴射方向は、養殖魚網の表面に向く。洗浄ノズル122から高圧水が噴射された場合、この高圧水の噴射に伴って発生する噴射反力により、回転体121が回転軸15と共に回転する。洗浄ユニット12は、回転軸15を中心として回転しながら養殖魚網の表面に高圧水を噴射することによって、養殖魚網に付着している海草藻や貝類等を広範囲に亘って除去することができる。
【0026】
プロペラ13は、走行体11の上方に配置される。プロペラ13は、回転軸15の上端部に取り付けられる。プロペラ13は、回転軸15と共に回転する。洗浄ノズル122から高圧水が噴射され、その噴射の反力によって回転体121と共に回転軸15が回転すると、プロペラ13も回転する。プロペラ13は、回転により走行体11を洗浄対象に押し付ける推力を発生する。
【0027】
環状体14は、プロペラ13を囲む。環状体14は、上下方向からの平面視において、中央部に大径の開口141を有する環状である。プロペラ13は、環状体14が有する開口141内に配置される。環状体14は、詳細には、走行体本体部111との上下方向間に配置される連結体16によって走行体11と連結される。連結体16は、上下方向に延びる支柱である。本実施形態では、連結体16の数は2つであり、2つの連結体16は、走行体本体部111の前後方向の中央部に配置される。2つの連結体16のうちの一方は、走行体本体部111の左端部に配置され、他方は走行体本体部111の右端部に配置される。
【0028】
環状体14はフロートとしての機能を有する。フロートとして機能する環状体14が設けられることにより、自走式洗浄機1は、水の中に入れられた際に浮く。本実施形態では、自走式洗浄機1は、水の中に入れられた際に、環状体14を上、走行体11を下とする姿勢となり、環状体14の上面が水面と同等の高さ位置になって浮く。自走式洗浄機1が浮いた状態において、プロペラ13は水中に存在する。
【0029】
なお、本実施形態においては、環状体14の前端部と後端部とのそれぞれに、カメラ1bが取り付けられる。すなわち、水中洗浄装置100は、自走式洗浄機1に配置されるカメラ1bを備える。カメラ1bには、自走式洗浄機1の前方を撮影するフロントカメラ1bFと、後方を撮影するリアカメラ1bRとが含まれる。なお、カメラ1bの数や配置は適宜変更されてよい。
【0030】
走行体11と環状体14とは上下方向に離れており、走行体11と環状体14との上下方向間には、水の導入路として機能する導入空間SPが形成されている。プロペラ13が回転すると、導入空間SPからプロペラ13に向けて水が導入され、開口141から水が吹き出す水流が発生する。プロペラ13の回転により生じる水流によって、自走式洗浄機1に推進力が発生し、各車輪112が養殖魚網に所定の圧力で当接した状態が維持される。
【0031】
<3.水中洗浄装置を用いた洗浄の概要>
水中洗浄装置100を用いて養殖魚網の洗浄を行う場合には、陸上または船上からクレーンを利用して、自走式洗浄機1が養殖魚網で囲まれた養殖用スペース内(水の中)に入れられる。水の中に入れられた時点で、自走式洗浄機1は浮く。この後、高圧水ポンプ4の駆動により、高圧水がホース8を介して自走式洗浄機1の洗浄ユニット12に供給される。これにより、洗浄ユニット12と共にプロペラ13が回転する。プロペラ13の回転による推進力によって、自走式洗浄機1は養殖魚網に押し付けられる。この状態で、モータ1aを駆動して車輪112を回転させると、自走式洗浄機1は養殖魚網の表面に沿って走行する。当該走行中に洗浄ユニット12が回転しながら洗浄ノズル122から高圧水を噴射するために、養殖魚網を広範囲に洗浄することができる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る水中洗浄装置100を用いた養殖魚網200の側面の洗浄例について説明するための図である。養殖魚網200の側面の洗浄に際しては、操作部5を利用した手動移動(本実施形態では手動走行)により、自走式洗浄機1がスタート位置に移動される。スタート位置は、養殖魚網200の海面に近い位置に設定される。自走式洗浄機1は、スタート位置から自動移動(本実施形態では自動走行)による洗浄を開始する。
【0033】
図5に示す例では、自走式洗浄機1は、スタート位置から一定の水深(目標水深)を保ちながら前進或いは後進を行う。養殖魚網200の、自走式洗浄機1が走行した部分は、洗浄ユニット12の動作により洗浄される。自走式洗浄機1は、一定の水深を維持しながら、養殖魚網200の内周面に沿って一周する。
【0034】
自走式洗浄機1は、養殖魚網200の内周面に沿って一周すると、現在の水深より深い目標水深まで自機の位置を下げる。図5に示す例において、太線で示す目標水深TD1から破線で示す目標水深TD2へと変更することが、目標水深の変更の一例に該当する。そして、自走式洗浄機1は、変更された目標水深を維持しながら、養殖魚網200の内周面に沿って一周する。この際、自走式洗浄機1は、前回の目標水深の場合と反対方向に走行する。例えば、前回の走行方向が反時計回り方向であれば、今回の走行方向は時計回り方向とされる。このように進行方向を反対方向とするのは、自走式洗浄機1から延びるホース8等が捻じれることを抑制するためである。
【0035】
自走式洗浄機1は、目標水深を維持した周回動作と、目標水深の変更とを繰り返す。これにより、自走式洗浄機1は、養殖魚網200の側面について、海面側の端部から海底側の端部までの洗浄を行う。なお、以上の説明からわかるように、本実施形態では、自走式洗浄機1は、養殖魚網200の内周面を一周すると、その地点で目標水深を変えつつ、進行方向を反対とする折返しを行う。この点を考慮して、自走式洗浄機1が内周面の周回を完了する地点のことを、以下、折返し位置と表現することがある。
【0036】
<4.制御部の機能>
次に、水中洗浄装置100が備える制御部2の機能について説明する。図6は、水中洗浄装置100が備える制御部2の機能を示すブロック図である。図6に示すように、制御部2は、その機能として、走行制御部21と、洗浄状態判定部22と、経路生成部23と、折返し位置判定部24と、洗い残し領域検出部25とを備える。本実施形態においては、制御部2の機能は、記憶部3に記憶されるプログラムにしたがった演算処理をCPU等の演算回路が実行することによって実現される。
【0037】
なお、各機能部21~25は、1つのプログラムにより纏めて実現されてもよいが、例えば、機能部ごとに別々のプログラムにより実現される等、複数のプログラムにより実現されてもよい。また、各機能部21~25は、別々の演算装置により実現されてもよい。
【0038】
また、各機能部21~25は、上述のように、CPU等のプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されてよいが、他の手法により実現されてもよい。各機能部21~25の少なくとも一部は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてもよい。すなわち、各機能部21~25は、専用のIC等を用いてハードウェアにより実現されてもよい。また、各機能部21~25は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。また、各機能部21~25は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能が、複数の構成要素に分散されてよい。また、複数の構成要素が有する機能が1つの構成要素に統合されてもよい。
【0039】
走行制御部21は、操作部5を用いて選択された運転モードに応じて自走式洗浄機1の走行制御を行う。運転モードが手動モードであれば、走行制御部21は、清掃作業員の操作部5を用いた指令にしたがって自走式洗浄機1の走行制御を行う。また、運転モードが自動モードであれば、走行制御部21は、経路生成部23によって生成された洗浄経路に沿って走行するように、自走式洗浄機1の走行制御を行う。すなわち、本実施形態の水中洗浄装置100においては、自走式洗浄機1は、制御部2によって生成された洗浄経路に沿って自動走行する。自走式洗浄機1の自動走行に伴い、自走式洗浄機1が通過した部分について自動的に養殖魚網の洗浄を行うことができる。このために、清掃作業員の作業負担を低減することができる。
【0040】
例えば、図5に示す養殖魚網200の側面の洗浄例においては、洗浄経路には、目標水深を維持して養殖魚網200の内周面を一周する経路(水深維持経路)が含まれる。水深維持経路を走行する場合、走行制御部21は、水深センサ1cおよびIMU1d(図1参照)からの情報を用いて、自走式洗浄機1が目標水深を維持して養殖魚網200の周回を行うように制御を行う。
【0041】
より詳細には、自走式洗浄機1が目標水深に対して所定範囲内の位置に存在すれば、IMU1dから得られる自走式洗浄機1のヨー角が0°となる(水平を維持する)ように、左右の車輪112のうちの片方側の車輪112の速度を減速する等の制御を行う。また、自走式洗浄機1が目標水深に対して所定範囲外の位置となった場合には、目標水深に戻るように自走式洗浄機1の進行方向を変更して目標水深に戻す制御を行う。目標水深に戻った後は、上述の水平を維持する制御を行う。
【0042】
また、図5に示す養殖魚網200の側面の洗浄例においては、洗浄経路には、自走式洗浄機1の進行方向を反転させつつ、水深を下げる経路(水深変更経路)が含まれる。図7Aおよび図7Bは、水深変更経路について説明するための模式図である。図7A図7Bとは、異なる種類の水深変更経路を例示する。
【0043】
図7Aに示す例では、走行制御部21は、折返し位置で自走式洗浄機1を一旦停止させる。その後、走行制御部21は、自走式洗浄機1の左右の車輪の回転方向を互いに反対として、自走式洗浄機1を水平方向に対して傾ける(ヨー角を0°から所定角度に変更する)。自走式洗浄機1が水平方向に対して所定の角度傾けられると、走行制御部21は、自走式洗浄機1を、停車前の進行方向と反対方向に走行させ、次の目標水深までは走行させる。自走式洗浄機1が次の目標水深に到達すると、走行制御部21は、自走式洗浄機1の左右の車輪の回転方向を互いに反対として、自走式洗浄機1を水平方向(ヨー角0°)に向かせる。自走式洗浄機1が水平方向に向けられると、走行制御部21は、次の目標水深の水深維持経路に沿って自走式洗浄機1を走行させる。
【0044】
なお、自走式洗浄機1がフロントカメラ1bFのみを有する構成の場合には、走行制御部21は、折返し位置で自走式洗浄機1を一旦停止させた後に、前後の向きを反転させる超信地旋回や信地旋回等を行わせる構成が追加されてよい。
【0045】
図7Bに示す例では、走行制御部21は、自走式洗浄機1を折返し位置でUターン走行させる。走行制御部21は、自走式洗浄機1が自機の右側を海底側に向けて進行している場合には、右旋回を行わせる。そして、走行制御部21は、右旋回により、自走式洗浄機1を、次の目標水深の洗浄走行を可能な姿勢へと移行させる。なお、走行制御部21は、自走式洗浄機1が自機の左側を海底側に向けて走行している場合には、左旋回を行わせる。そして、走行制御部21は、左旋回により、自走式洗浄機1を、次の目標水深の洗浄走行を可能な姿勢へと移行させる。
【0046】
洗浄状態判定部22(図6参照)は、カメラ1bから撮影画像を取得する。そして、洗浄状態判定部22は、カメラ1bで撮影した撮影画像に基づいて養殖魚網の洗浄状態を判定する。すなわち、制御部2は、カメラ1bで撮影した撮影画像に基づいて洗浄対象の洗浄状態を判定する。なお、本実施形態では、フロントカメラ1bFとリアカメラ1bRとで撮影した撮影画像に基づいて養殖魚網の洗浄状態を判定することができる。洗浄状態を判定することによって、例えば、洗浄が行われたことを示す洗浄跡や、本来洗浄済みである領域に存在する洗い残し領域を検出することができる。
【0047】
例えば、洗浄跡の検出手法としては、洗浄前後の領域を分割し、領域の境界を検出する手法や、画像中のエッジ検出によって洗浄前後の境界を直接検出する手法等を利用することができる。画像領域の分割手法として、例えば、画像の特徴量を用いたルールベース分割手法や、深層学習を用いたセマンティックセグメンテーション等の手法を利用することができる。
【0048】
図8Aは、自走式洗浄機1に配置されるカメラ1bで撮影された撮影画像300を模式的に示す図である。図8Aに示す撮影画像300には、洗浄前領域301と洗浄後領域302とが写っている。洗浄前領域301においては、養殖魚網200が海草藻や貝類等によって覆われている。洗浄後領域302においては、海草藻や貝類等が除去されて養殖魚網200が明確に写った状態となっている。
【0049】
図8Bは、図8Aに示す撮影画像300を画像処理した状態を模式的に示す図である。図8Bにおける画像処理は、詳細には、セマンティックセグメンテーションである。セマンティックセグメンテーションにより、洗浄前後の領域301、302を分割する境界線303が得られる。すなわち、画像処理により、洗浄後領域302である洗浄跡を検出することができる。
【0050】
経路生成部23(図6参照)は、養殖魚網を洗浄する洗浄経路を生成する。すなわち、制御部2は、洗浄対象を洗浄する洗浄経路を生成する。以下、経路生成部23が洗浄経路を生成する手法について、2つの例を示す。
【0051】
まず、洗浄経路の生成手法の第1例について説明する。第1例においては、水深センサ1cやIMU1d(図1参照)から得られる情報によって自機の水中自己位置を推定して、洗浄経路が生成される。第1例の洗浄経路の生成手法では、入力情報として、養殖魚網の形状(例えば上面直径、底面直径、および、深さ等)、自走式洗浄機1の洗浄幅(左右方向の洗浄範囲)、洗浄時に必要とされるオーバーラップ幅、および、現在の水深が利用される。なお、オーバーラップ幅は、自走式洗浄機1の洗浄時の位置制御の誤差を見込んで予め設定される量であり、例えば実験やシミュレーション等によって求められる。
【0052】
図9は、第1例の洗浄経路の生成手法について説明するための図である。図9において、TD_Cは現在の目標水深を示し、TD_nは次の洗浄経路の目標水深(次回の目標水深)を示す。W1は自走式洗浄機1の洗浄幅を示す。W2はオーバーラップ幅を示す。θは、養殖魚網の側面の傾斜角である。傾斜角θは、例えば、現在の目標水深を走行した際にIMU1dにより得られた自走式洗浄機1のロール角の平均値で与えられる。次回の目標水深TD_nが求まると、当該目標水深を維持しながら養殖魚網の内周を1周する経路が次回の洗浄経路として生成される。なお、初回の洗浄経路は、現在の水深を目標水深として、当該目標水深を維持しながら養殖魚網の内周面を1周する経路である。
【0053】
図9に示すように、次回の目標水深TD_nは、現在の目標水深TD_C、洗浄幅W1、オーバーラップ幅W2、および、傾斜角θを用いて求めることができる。図9において、W3は、洗浄幅W1からオーバーラップ幅W2を差し引いて求まるオフセット幅である。次回の目標水深TD_nは、オフセット幅W3と傾斜角θとから求まる。詳細には、次回の目標水深TD_nは、オフセット幅W3にsinθを乗じて得られる値を、現在の目標水深に加算して求まる。
【0054】
なお、目標水深TD_nによって定まる洗浄経路の終了位置は、例えば、養殖魚網の形状データと、目標水深TD_nとから求めることができる。目標水深TD_nにおける養殖魚網の内周の長さは、養殖魚網の形状データから求まる。当該養殖魚網の内周の長さと、洗浄経路のスタート位置とから、洗浄経路の終了位置を算出することが可能である。
【0055】
次に、洗浄経路の生成手法の第2例について説明する。第2例においては、洗浄経路は、カメラ1bによって撮影された画像に基づいて生成される。なお、洗浄経路を生成するために利用されるカメラ1bは、自走式洗浄機1が前進走行するか、後進走行するかに応じて、フロントカメラ1bFであったり、リアカメラ1bRであったりする。
【0056】
図10Aは、第2例の洗浄経路のイメージを示す図である。図10Aにおいて、破線は、養殖魚網200の側面に設定される洗浄経路305を示す。図10Aに示すように、第2例においては、洗浄経路305は、自走式洗浄機1が洗浄跡302の倣い走行を行うように生成される。なお、洗浄跡302の倣い走行を行うように設定される洗浄経路は、水深を維持する経路である必要はない。
【0057】
図10Bは、自走式洗浄機1が備えるカメラ1bで撮影された撮影画像の、画像処理後のイメージを示す模式図である。画像処理は、上述のように、例えばセマンティックセグメンテーションである。経路生成部23は、洗浄跡302と洗浄前領域301との境界を形成する直線304を検出する。そして、経路生成部23は、検出した直線304に対して、自走式洗浄機1の洗浄幅W1(図9参照)を考慮して予め設定されたオフセット量だけずれた位置に、洗浄経路305を設定する。経路生成部23は、時系列で順次得られる撮影画像の取得に応じて洗浄経路305を随時生成する。
【0058】
なお、撮影画像から洗浄跡302と洗浄前領域301との境界を形成する直線304が得られないことが起こり得る。例えば、養殖魚網200の洗浄開始時には、境界を形成する直線304は得られない。また、洗浄跡302が検出された場合でも、境界を形成する直線304が得られないことも起こり得る。境界を形成する直線304が得られない場合には、例えば、自走式洗浄機1が現在の水深を維持して走行する洗浄経路が生成される構成としてよい。そして、境界を形成する直線304が検出された時点で、洗浄跡302の倣い走行を行うための洗浄経路が生成される構成としてよい。
【0059】
本実施形態では、水中洗浄装置100は、好ましい形態として、第2例の洗浄経路の生成手法を採用する。すなわち、制御部2は、カメラ1bで撮影した撮影画像を利用した洗浄状態の判定により得られる洗浄跡302を基準に洗浄経路305を生成する。また、制御部2は、洗浄跡302に基づく洗浄経路305の生成ができない場合に、水深を基準に洗浄経路を生成する。基準とされる水深は、詳細には、洗浄跡302に基づく洗浄経路305の生成ができないと判定した時点で、自走式洗浄機1が存在する水深(現在の水深)であってよい。
【0060】
養殖魚網200は、例えば波や潮流等によって撓み等の形状変化が生じ易い。特に、養殖魚網200が化繊で構成される場合に、撓み等の形状変化が生じ易くなる。このために、養殖魚網200を自走式洗浄機1で洗浄する場合において、自走式洗浄機1の養殖魚網200上の位置を正確に検出することは必ずしも容易ではない。この点、本実施形態では、カメラ1bで撮影した撮影画像から得られる洗浄跡302に倣う洗浄経路305を生成して、当該洗浄経路に沿って走行することで養殖魚網200の洗浄を行う。すなわち、養殖魚網200の洗浄に際して、養殖魚網200上の正確な位置を常に検出する必要はない。このために、本実施形態の構成によれば、養殖魚網200の形状変化にかかわらず、洗い残しの少ない洗浄経路の設定を行うことができる。また、撓み等の形状変化の影響を受け難くすることができるために、上述した位置制御の誤差を考慮したオーバーラップ幅を小さくすることができる。このために、洗浄効率を向上することができる。
【0061】
また、養殖魚網200の洗浄跡302については、網の汚れ具合等によっては画像から洗浄跡として認識することが難しいことが起こり得る。このために、認識できる洗浄跡302がまだらに分布し、洗浄跡302の倣い走行を可能とする洗浄経路305の生成が難しいことが起こり得る。この点、本実施形態では、洗浄跡302の倣い走行を可能とする洗浄経路305の生成が難しい場合には、水深を基準として洗浄経路を生成する構成となっている。このために、自走式洗浄機1が洗浄経路を得られず、途中で自動走行を停止するといった事態が生じることを防止できる。
【0062】
なお、以上では、養殖魚網200の側面を自動走行するための洗浄経路の生成について説明した。養殖魚網200の底面を自動走行する場合についても、自走式洗浄機1が洗浄跡302の倣い走行を行うように洗浄経路を生成してよい。
【0063】
本実施形態では、養殖魚網200を洗浄する洗浄経路には、進行方向を反対とする折返し位置が含まれる。折返し位置判定部24(図6参照)は、カメラ1bで撮影した撮影画像を利用した洗浄状態の判定により得られる洗浄跡に基づいて折返し位置を特定する。すなわち、制御部2は、洗浄状態の判定により得られる洗浄跡に基づいて、自走式洗浄機1の進行方向を反対向きとする折返し位置を特定する。撮影画像を利用して折返し位置が特定されることによって、水深を変えつつ、進行方向を反対とする折返し動作を自走式洗浄機1が自動で行うことができる。すなわち、清掃作業員の監視負担を低減することができる。
【0064】
図11Aおよび図11Bは、折返し位置の特定について説明するための図である。図11A図11Bとでは、折返し位置の特定の仕方が異なる。なお、図11Aおよび図11Bでは、自走式洗浄機1が、養殖魚網200の内周面の周回と、周回後の水深変更とを繰り返しながら洗浄のための走行を行うことを想定している。
【0065】
図11Aに示す例においては、折返し位置判定部24は、養殖魚網200の内側面を周回する際に進行方向を撮影するカメラ1bで得られる撮影画像を利用して折返し位置を特定する。詳細には、折返し位置判定部24は、撮影画像中の洗浄跡302と洗浄前領域301との境界線306を検出することで折返し位置を特定する。より詳細には、折返し位置判定部24は、進行方向と交差する(例えば直交する)方向に延びる境界線306を検出することで折返し位置を特定する。折返し位置は、例えば境界線306の位置であってよいが、境界線306から進行方向に所定量オフセットした位置等であってもよい。
【0066】
なお、図11Aに示す例において、折返し位置判定部24は、予め算出される養殖魚網200の周回距離と、自走式洗浄機1の周回開始からの走行距離との関係を考慮して折返し位置の判定を行ってもよい。自走式洗浄機1の周回開始からの走行距離は、例えば車輪112の回転数(回転速度)と移動時間とから求められてもよいし、水深センサ1cおよびIMU1dから特定される自走式洗浄機1の位置情報から求められてもよい。自走式洗浄機1の走行距離が、養殖魚網の形状から求まる周回距離、或いは、当該周回距離に基づき決められた規定量に到達していない場合には、撮影画像から洗浄跡302が検出された場合でも折返し位置の判定を行わない構成としてよい。これにより、洗浄跡302の検出エラーにより生じる折返し位置の誤判定の発生を低減することができる。
【0067】
図11Bに示す例においても、図11Aに示す例と同様に、折返し位置判定部24は、養殖魚網200の内周面を周回する際に進行方向を撮影するカメラ1bで得られる撮影画像を利用して折返し位置を特定する。ただし、図11Bに示す例では、折返し位置判定部24は、予め自走式洗浄機1の手動操作で形成したマーキング307を検出し、検出したマーキングの位置を折返し位置と特定する。この点、図11Aに示す例とは異なる。
【0068】
図11Bに示す例において、マーキング307は、手動操作により養殖魚網200の水面側の端部から海底側の端部へと自走式洗浄機1を垂直に走行させることで得られた洗浄跡である。折返し位置判定部24は、例えば、進行方向と直交する方向に規定幅以上に延びる洗浄跡をマーキング307と判定し、折返し位置の特定を行う。
【0069】
なお、本実施形態では、折返し位置判定部24は、カメラ1bで撮影された撮影画像を用いて折返し位置を特定する構成としたが、これは例示にすぎない。折返し位置判定部24は、例えば、自走式洗浄機1の走行距離に応じて折返し位置を判定してもよい。また、自走式洗浄機1の方位角の変化量に応じて折返し位置を判定してもよい。なお、方位角は、養殖魚網200の中心を通る鉛直方向に延びる軸を基準とした回転方向の角度で定義される。養殖魚網200の内周面を周回すると方位角が360°変化する。折返し位置判定部24は、自走式洗浄機1の走行距離が目標距離以上、且つ、方位角が目標変化量(例えば360°)以上変化した場合に折返し位置を検出してよい。
【0070】
洗い残し領域検出部25(図6参照)は、カメラ1bで撮影した撮影画像を利用した洗浄状態の判定により洗い残し領域を検出する。そして、洗い残し領域検出部25は、検出された洗い残し領域を記憶部3(図1参照)に記憶する。すなわち、制御部2は、洗浄状態の判定により検出された洗い残し領域を記憶部3に記憶する。記憶部3に洗い残し領域の情報が記憶されることで、洗い残し領域の情報を利用し易くすることができる。
【0071】
図12Aは、洗い残し領域308の検出イメージを示す図である。図12Aに示す例では、洗い残し領域検出部25は、進行方向(図中に白抜き矢印で示す)と反対方向を撮影するカメラ1bで撮影された撮影画像を用いて洗い残し領域308を検出する。この構成では、洗浄直後に洗い残し領域308が生じていないか否かを確認することができる。ただし、洗い残し領域検出部25は、進行方向を撮影するカメラ1bで撮影された撮影画像を用いて洗い残し領域308を検出してもよい。
【0072】
図12Bは、進行方向と反対方向を撮影するカメラ1bで撮影された撮影画像の、画像処理後のイメージを示す模式図である。洗い残し領域検出部25は、画像処理後の画像において、2つの洗浄跡302に挟まれたり、複数の洗浄跡302に囲まれたりする領域を洗い残し領域308として検出する。
【0073】
洗い残し領域検出部25は、洗い残し領域308を検出すると、その養殖魚網200上の位置を特定する。そして、洗い残し領域検出部25は、位置情報を含む洗い残し領域情報を記憶部3に記憶する。なお、洗い残し領域308の養殖魚網200上の位置情報は、例えば、水深センサ1cおよびIMU1dから得られる情報を用いて算出することができる。
【0074】
本実施形態では、洗い残し領域検出部25は、検出した洗い残し領域308の養殖魚網200上の位置を示す画像を生成して表示部6(図1参照)に表示させる。すなわち、制御部2は、洗浄対象における洗い残し領域308の位置を示す画像を生成して表示部6に表示させる。このような構成とすると、清掃作業員が洗い残し領域308の位置を把握し易くすることができる。
【0075】
図13は、洗い残し領域308を表示する画像を例示する模式図である。図13に示す例では、表示部6に表示される、自走式洗浄機1の現在位置を示すマップ400上に洗い残し領域308の位置を示す洗い残し領域画像308Gが表示されている。マップ400中の符号1Gは、自走式洗浄機1の位置を示すアイコンである。図13に示す例によれば、清掃作業員が自走式洗浄機1と洗い残し領域308との位置関係を簡単に把握することができる。このために、手動操作で洗い残し領域308を洗浄する仕上げ洗浄を効率良く行うことができる。なお、仕上げ洗浄は、手動操作である必要はない。記憶部3に記憶されている位置情報に基づいて、自走式洗浄機1が自動的に洗い残し領域308の位置に自動的に移動して仕上げ洗浄を実行してもよい。
【0076】
<5.自動走行による洗浄の流れ>
次に、水中洗浄装置100における自動走行による洗浄の流れについて説明する。図14は、水中洗浄装置100における自動走行による洗浄の流れを例示するフローチャートである。なお、図14に示す例では、円筒形状の養殖魚網の側面を洗浄する場合が想定されている。図14に示すフローチャートは、例えば、自走式洗浄機1が養殖魚網の水面側の端部に配置されることにより開始される。
【0077】
ステップS1では、自走式洗浄機1が初期設定経路に沿って自動走行を開始する。初期設定経路は、目標水深を維持しながら養殖魚網を周回する経路である。自動走行は、走行制御部21の制御下で行われる。養殖魚網の自動走行によって自走式洗浄機1が通過した部分について、洗浄が行われる。初期設定経路に沿った自動走行が開始されると、次のステップS2に処理が進められる。
【0078】
ステップS2では、折返し位置判定部24によって折返し位置が検出されたか否かが判定される。折返し位置の検出は、カメラ1bによって撮影された撮影画像を利用して行われる。折返し位置が検出されると(ステップS2でYes)、次のステップS2に処理が進められる。折返し位置が検出されない場合(ステップS2でNo)、ステップS2の処理が繰り返される。
【0079】
ステップS3では、養殖魚網の側面の全領域の洗浄が完了したか否かが判定される。全領域の洗浄が完了したか否かは、例えば、自走式洗浄機1の水深位置が養殖魚網の底面の水深位置に到達しているか否かで判定されてよい。また、例えば、水深に加えて、カメラ1bで撮影された撮影画像を用いて判定が行われてもよい。養殖魚網の側面の全領域の洗浄が完了していると判定された場合(ステップS3でYes)、養殖魚網の側面の自動走行により洗浄が終了する。養殖魚網の側面の全領域の洗浄が完了していないと判定された場合(ステップS3でNo)、次のステップS4に処理が進められる。
【0080】
ステップS4では、経路生成部23によって次の洗浄経路が生成される。洗浄経路の生成は、撮影画像から検出される洗浄跡を基準に生成される。洗浄経路は、洗浄跡の倣い走行が行われるように生成される。ただし、洗浄跡が検出されない場合には、目標水深が設定され、当該目標水深を維持する経路が洗浄経路として設定される。洗浄経路の設定が行われると、次のステップS5に処理が進められる。
【0081】
ステップS5では、生成された洗浄経路に沿った自動走行が開始される。なお、生成された洗浄経路に沿った新たな自動走行の開始に際して、自走式洗浄機1は、進行方向の反転および水深の変更を行う。また、洗浄跡を基準に生成される洗浄経路は、自動走行の開始後に順次得られる撮影画像によって随時更新される。自走式洗浄機1は、随時更新される洗浄経路に沿って自動走行を行う。自動走行が開始されると、先に説明したステップS2に処理が戻され、ステップS2以降の処理が行われる。
【0082】
以上によれば、洗浄の状況に応じて自走式洗浄機1の洗浄経路が決められながら養殖魚網の洗浄が行わる。このために、洗浄の状況に関係なく養殖魚網の形状から決められた洗浄経路に沿って自動走行を行う場合に比べて、洗い残しが発生する確率を低減することができる。なお、養殖魚網の形状から決められた洗浄経路に沿って洗浄を行う構成では、波や潮流によって養殖魚網の形状が変化したり、車輪112のスリップによって移動量の推定精度が低下したりするので、適切な範囲の洗浄が難しくなり易い。撮影画像から得られる洗浄跡の倣い走行によれば、養殖魚網の形状変化や、車輪112のスリップの影響を抑制して適切な範囲の洗浄を行うことができる。
【0083】
なお、以上においては、養殖魚網の内周面の周回と、周回後の水深の変更とを繰り返しながら養殖魚網の側面の洗浄を行う構成とした。ただし、これは例示である。養殖魚網の網目の形状によっては、以上に説明した洗浄パターンとは異なる洗浄パターンで洗浄した方が、洗浄効率が良くなる場合がある。
【0084】
図15は、養殖魚網200の洗浄パターンの別例を示す模式図である。図15に示す例では、自走式洗浄機1が水深方向(縦方向)への移動と、方位角の変更とを繰り返しながら、養殖魚網200の側面全体の洗浄を行う。縦方向の移動は、水面側から底面側への移動と、底面側から水面側への移動とが順番に行われる。このような洗浄パターンで洗浄する場合でも、洗浄跡の倣い走行を利用することにより、洗い残し領域が発生する確率を低減して、自動走行による洗浄を行うことができる。
【0085】
<6.変形例>
図16は、水中洗浄装置100が備える変形例の制御部2Aの機能を示すブロック図である。変形例の制御部2Aは、捻じれ判定部26を備える点が、上述した実施形態の制御部2と異なる。以下、この異なる点について説明を行う。
【0086】
上述したように、水中洗浄装置100は、電線の束7とホース8とを備える。これらは、概ね一纏めとされて自走式洗浄機1に接続されている。すなわち、水中洗浄装置100は、自走式洗浄機1から延びる接続体70(後述の図17A参照)を備える。接続体70は、例えば、陸上又は船上から自走式洗浄機1まで延びる長尺の接続体である。
【0087】
接続体70は、自走式洗浄機1の水中における走行によって捻じれを生じる可能性がある。自走式洗浄機1の自動走行時においては、上述のように、折返し位置での進行方向の反転により、接続体70に捻じれが生じないようにしている。ただし、例えば自走式洗浄機1を手動操作する場合等に、捻じれを生じる可能性がある。捻じれ判定部26は、この捻じれに関わる判定を行う。
【0088】
捻じれ判定部26は、自走式洗浄機1が養殖魚網を走行する際に生じる接続体70の捻じれを判定する。詳細には、捻じれ判定部26(制御部2A)は、自走式洗浄機1の回転角を求めて接続体70の捻じれを判定する。このような捻じれ判定部26が設けられることにより、例えば、自走式洗浄機1の手動操作時に接続体70に捻じれが生じたか否かの判定を行うことができる。
【0089】
自走式洗浄機1が例えば養殖魚網の側面を走行する場合には、接続体70には2つの捻じれが生じる。この2つの捻じれについて、図17Aおよび図17Bを参照して説明する。図17Aは、接続体70に生じる第1捻じれについて説明するための図である。図17Bは、接続体70に生じる第2捻じれについて説明するための図である。
【0090】
図17Aに示すように、第1捻じれは、接続体70の支点500を原点とする全体座標系の鉛直方向に設定されたZ軸回りの自走式洗浄機1の回転により生じる。図17Bに示すように、第2捻じれは、自走式洗浄機1の中心位置501を原点とする局座標系の鉛直方向に設定されたz軸回りの自走式洗浄機1の回転により生じる。
【0091】
この点を考慮して、捻じれ判定部26(制御部2A)により求められる回転角には、接続体70の支点500を原点とする全体座標系の鉛直方向に設定された第1座標軸周りの自走式洗浄機1の回転を示す第1回転角αが含まれる。また、捻じれ判定部26(制御部2A)により求められる回転角には、自走式洗浄機1の中心位置501を原点とする局座標系の鉛直方向に設定された第2座標軸回りの自走式洗浄機1の回転を示す第2回転角βが含まれるこのように第1回転角αと第2回転角βとに分けて自走式洗浄機1の回転角を求めることによって、接続体70の捻じれを適切に判定することができる。
【0092】
第1回転角αおよび第2回転角βは、水深センサ、傾斜センサ、ジャイロセンサ、方位センサ、および、車輪112の回転数センサのうちの少なくとも一部を用いて求めることができる。上述のように、本例では、自走式洗浄機1にIMU1d(図1参照)が搭載されている。本例では、IMU1dによって得られる情報を用いて、第1回転角αおよび第2回転角βを求めることができる。
【0093】
捻じれ判定部26(制御部2A)は、回転角が規定量以上である場合に、報知部に異常を報知させてよい。報知部は、例えば表示部6であってよい。すなわち、本例の水中洗浄装置100は報知部を備える。表示部6を用いた報知では、接続体70が捻じれ異常を起していることを表示画面に表示する構成であってよい。また、表示画面には、自走式洗浄機1の回転角が規定量以上にならないように操作することを促す表示が行われてよい。これに応じて、清掃作業員は、手動操作で自走式洗浄機1を走行させて捻じれを解消してよい。
【0094】
なお、報知部は、表示部6以外であってもよい。例えば、報知部は、表示部6の代わりに、或いは、表示部6に加えて、音声出力装置や発光装置等であってよい。すなわち、捻じれ異常が発生していることが、音や光によって報知されてもよい。
【0095】
また、本例では、回転角は、第1回転角αと第2回転角βとを含む。捻じれ判定部26は、第1回転角αと第2回転角βとのうち、少なくともいずれか一方が規定量以上である場合に、異常(捻じれ異常)を検知する構成であってよい。なお、第1回転角αと第2回転角βとで、異常であるか否かを判定する規定量は異なってよい。第1回転角αが第1規定量以上であれば、捻じれ異常が検知されてよい。第2回転角βが第2規定量以上であれば、捻じれ異常が検知されてよい。
【0096】
捻じれ判定部26が捻じれ異常を検知した場合には、自走式洗浄機1を手動で操作する手動走行から自動走行への切り替えが禁止される構成としてよい。すなわち、制御部2Aは、回転角が規定量以上である場合、自動走行への移行を禁止する構成であってよい。詳細には、制御部2Aは、第1回転角αが第1規定量以上ある場合と、第2回転角βが第2規定量以上である場合とのうちいずれか一方が成立する場合に、自動走行への移行を禁止してよい。
【0097】
捻じれが規定量を超える捻じれ異常が生じている場合には、捻じれによる負荷が加わるために、自走式洗浄機1の自動走行の精度が低下したり、速度が低下したりする。このために、本例のように、捻じれ異常が生じている際に自動走行への移行を禁止することによって、走行精度が低い自動走行が行われたり、効率の悪い洗浄が行われたりすることを抑制できる。自動走行への移行が禁止された場合には、その旨を清掃作業員に報知することによって、清掃作業員が手動操作によって捻じれを解消させてよい。
【0098】
また、捻じれ判定部26が捻じれ異常を検知した場合には、自動走行を開始作する前に捻じれを自動で解消する動作を自走式洗浄機1に行わせる構成としてよい。すなわち、制御部2Aは、回転角が規定量以上である場合、自動走行を開始する前に捻じれを自動で解消する動作を自走式洗浄機1に行わせる構成であってよい。捻じれを自動で解消する動作は、例えば、その場旋回であってよい。その場旋回は、超信地旋回や信地旋回であってよい。このような構成とすると、捻じれ負荷による走行精度の悪化や走行速度の低下を抑制して、自動走行を適切に行わせることができる。
【0099】
また、経路生成部23は、捻じれ判定部26により求められ回転角に応じて洗浄経路を生成してもよい。すなわち、制御部2Aは、手動走行から自動走行に切り替わる際における回転角に応じて洗浄経路を生成してよい。このように構成すると、洗浄経路を自動走行しながら捻じれを解消することができ、効率良く捻じれの解消を行うことができる。
【0100】
捻じれを解消する洗浄経路は、例えば、図7Bで示すような折返し位置でUターンを行う経路であってよい。また、捻じれを解消する洗浄経路は、捻じれを解消する「その場旋回」を行うポイントを有する経路であってもよい。また、捻じれを解消する洗浄経路は、自走式洗浄機1の初回の進行方向を適切な方向とする経路であってよい。
【0101】
図18は、養殖魚網200の側面を洗浄する場合における自走式洗浄機1の経路選択について説明するための図である。図18において、回転角αは、上述の第1回転角αと同義である。また、回転方向ccwは反時計回り方向の回転を意味し、回転方向cwは時計回り方向の回転を意味する。また、図18に示す例では、自走式洗浄機1は、養殖魚網200の内周面の周回と、水深の変更とを繰り返しながら洗浄を行うことが想定されている。
【0102】
図18のパターン1では、自走式洗浄機1がZ軸(図17A参照)を基準として、反時計回り方向に規定量以上回転している。すなわち、接続体70が反時計回り方向に捻じれて、捻じれ異常を生じている。そして、パターン1では、図19に示す状態と同じく、自動走行を行う予定の自走式洗浄機1は、海底側に右側の車輪112を配置する姿勢となっている。なお、図19は、図18の内容の理解を容易とするための補助図である。パターン1のような状況の場合、洗浄経路としては、自走式洗浄機1が前進する経路が選択される。自走式洗浄機1が前進することで、自走式洗浄機1が時計回り方向に回転するために、接続体70の捻じれを解消することができる。
【0103】
また、図18のパターン2では、パターン1と同様に、自走式洗浄機1がZ軸を基準として、反時計回り方向に規定量以上回転している。すなわち、接続体70が反時計回り方向に捻じれて、捻じれ異常を生じている。そして、パターン2では、パターン1の場合と違って、自走式洗浄機1が海底側に左側の車輪112を配置する姿勢となっている。パターン2のような状況の場合、洗浄経路としては、自走式洗浄機1が後進する経路が選択される。自走式洗浄機1が後進することで、自走式洗浄機1が時計回り方向に回転するために、接続体70の捻じれを解消することができる。
【0104】
また、図18のパターン3では、自走式洗浄機1がZ軸を基準として、時計回り方向に規定量以上回転している。すなわち、接続体70が時計回り方向に捻じれて、捻じれ異常を生じている。そして、パターン3では、パターン1の場合と同様に、自走式洗浄機1が海底側に右側の車輪112を配置する姿勢となっている。パターン3のような状況の場合、洗浄経路としては、自走式洗浄機1が後進する経路が選択される。自走式洗浄機1が後進することで、自走式洗浄機1が反時計回り方向に回転するために、接続体70の捻じれを解消することができる。
【0105】
また、図18のパターン4では、パターン3と同様に、自走式洗浄機1がZ軸を基準として、時計回り方向に規定量以上回転している。すなわち、接続体70が時計回り方向に捻じれて、捻じれ異常を生じている。そして、パターン4では、パターン2の場合と同様に、自走式洗浄機1が海底側に左側の車輪112を配置する姿勢となっている。パターン4のような状況の場合、洗浄経路としては、自走式洗浄機1が前進する経路が選択される。自走式洗浄機1が前進することで、自走式洗浄機1が反時計回り方向に回転するために、接続体70の捻じれを解消することができる。
【0106】
<7.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0107】
<8.付記>
本明細書における例示的な水中洗浄装置は、水中において洗浄対象を洗浄する洗浄機と、前記洗浄対象を洗浄する洗浄経路を生成する制御部と、を備え、前記洗浄機が前記洗浄経路に沿って自動移動する構成(第1の構成)であってよい。
【0108】
上記第1の構成の水中洗浄装置は、前記洗浄機に配置されるカメラを備え、前記制御部は、前記カメラで撮影した撮影画像に基づいて前記洗浄対象の洗浄状態を判定する構成(第2の構成)であってよい。
【0109】
上記第2の構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記洗浄状態の判定により得られる洗浄跡を基準に前記洗浄経路を生成する構成(第3の構成)であってよい。
【0110】
上記第3の構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記洗浄跡に基づく洗浄経路の生成ができない場合に、水深を基準に前記洗浄経路を生成する構成(第4の構成)であってよい。
【0111】
上記第2から第4のいずれかの構成の水中洗浄装置は、記憶部を備え、前記制御部は、前記洗浄状態の判定により検出された洗い残し領域を前記記憶部に記憶する構成(第5の構成)であってよい。
【0112】
上記第5の構成の水中洗浄装置は、表示部を備え、前記制御部は、前記洗浄対象における前記洗い残し領域の位置を示す画像を生成して前記表示部に表示させる構成(第6の構成)であってよい。
【0113】
上記第2から第6のいずれかの構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記洗浄状態の判定により得られる洗浄跡に基づいて、前記洗浄機の進行方向を反対向きとする折返し位置を特定する構成(第7の構成)であってよい。
【0114】
上記第1から第7のいずれかの構成の水中洗浄装置は、前記洗浄機から延びる接続体を備え、前記制御部は、前記洗浄機の回転角を求めて前記接続体の捻じれを判定する構成(第8の構成)であってよい。
【0115】
上記第8の構成の水中洗浄装置において、前記回転角には、前記接続体の支点を原点とする全体座標系の鉛直方向に設定された第1座標軸周りの前記洗浄機の回転を示す第1回転角と、前記洗浄機の中心位置を原点とする局座標系の鉛直方向に設定された第2座標軸回りの前記洗浄機の回転を示す第2回転角と、が含まれる構成(第9の構成)であってよい。
【0116】
上記第8又は第9の構成の水中洗浄装置は、報知部を備え、前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合に、前記報知部に異常を報知させる構成(第10の構成)であってよい。
【0117】
上記第8から第10のいずれかの構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合、前記自動移動への移行を禁止する構成(第11の構成)であってよい。
【0118】
上記第8から第11のいずれかの構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記回転角が規定量以上である場合、前記自動移動を開始する前に捻じれを自動で解消する動作を前記洗浄機に行わせる構成(第12の構成)であってよい。
【0119】
上記第8から第12のいずれかの構成の水中洗浄装置において、前記制御部は、前記洗浄機を手動で操作する手動移動から前記自動移動に切り替わる際における前記回転角に応じて前記洗浄経路を生成する構成(第13の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0120】
1・・・自走式洗浄機(洗浄機)
1b・・・カメラ
2、2A・・・制御部
3・・・記憶部
6・・・表示部(報知部)
70・・・接続体
100・・・水中洗浄装置
200・・・養殖魚網(洗浄対象)
302・・・洗浄跡
305・・・洗浄経路
308・・・洗い残し領域
500・・・接続体の支点
501・・・自走式洗浄機の中心(洗浄機の中心)
α・・・第1回転角
β・・・第2回転角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19