(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008435
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電波反射装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20240112BHJP
H01Q 3/44 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110314
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大一
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】大戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA07
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB06
5J021BA02
5J021CA03
5J021DB03
5J021FA06
5J021GA02
(57)【要約】
【課題】位相差が高い電波反射装置の駆動方法を提供することを目的の一つとする。
【解決手段】電波反射装置の駆動方法は、行方向及び列方向に配列された複数の反射素子を有し、複数の反射素子に印加する電圧によって反射波の位相変化量を制御する電波反射装置の駆動方法であって、複数の反射素子の配列を、列方向に配列する複数の反射素子を1列ごとに位相変化量を制御する第1の領域と、列方向に配列する複数の反射素子を隣合う2列ごとに位相変化量を制御する第2の領域と、に区分けして、第1の領域及び前記第2の領域に属するそれぞれの複数の反射素子を同時に駆動することを特徴とする
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向及び列方向に配列された複数の反射素子を有し、前記複数の反射素子に印加する電圧によって反射波の位相変化量を制御する電波反射装置の駆動方法であって、
前記複数の反射素子の配列を、
前記列方向に配列する複数の反射素子を1列ごとに位相変化量を制御する第1の領域と、
前記列方向に配列する複数の反射素子を隣合う2列ごとに位相変化量を制御する第2の領域と、に区分けして、
前記第1の領域及び前記第2の領域に属するそれぞれの前記複数の反射素子を同時に駆動することを特徴とする電波反射装置の駆動方法。
【請求項2】
前記第2の領域に属する複数の反射素子により制御される位相変化量が、前記第1の領域に属する複数の反射素子により制御される位相変化量より大きい、請求項1に記載の電波反射装置の駆動方法。
【請求項3】
前記第1の領域および第2の領域に属する複数の反射素子は、それぞれパッチ電極と、前記パッチ電極の背面側に重なるコモン電極と、前記パッチ電極と前記コモン電極との間の液晶層と、を有し、前記第1の領域に属する複数の反射素子の複数のパッチ電極に、それぞれV0からVnの電圧をそれぞれ印加し、
前記第2の領域に属する複数の反射素子の複数のパッチ電極に、それぞれVaとVbの組み合わせの電圧をそれぞれ印加し、
前記nは、3以上の自然数であり、
前記Vbの電圧の絶対値は、前記Vaの電圧の絶対値より大きく、
前記Vnの電圧の絶対値は、前記Vaの電圧の絶対値より大きい、
請求項1に記載の電波反射装置の駆動方法。
【請求項4】
前記複数のパッチ電極のうち、前記Vnの電圧が印加される第1パッチ電極と前記Vaの電圧が印加される第2パッチ電極は、行方向に沿って並び、
前記複数のパッチ電極のうち、前記Vbの電圧が印加される第3パッチ電極と前記第2パッチ電極は、行方向に沿って並ぶ、
請求項3に記載の電波反射装置の駆動方法。
【請求項5】
前記Vaの電圧を印加される前記複数のパッチ電極は、互いに対角に配置される、
請求項3に記載の電波反射装置の駆動方法。
【請求項6】
前記Vaの電圧を印加される前記複数のパッチ電極は、対角線上に配置される、
請求項3に記載の電波反射装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、反射した電波の進行方向を制御することのできる電波反射装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナ(Phased Array Antenna)装置は、面状に配列された複数のアンテナ素子のそれぞれに対し、印加する高周波信号の振幅と位相を調整することでアンテナを固定した状態で指向性を制御している。フェーズドアレイアンテナ装置は移相器を必要とする。液晶の配向状態による誘電率の変化を利用した移相器を用いたフェーズドアレイアンテナ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェーズドアレイアンテナ装置のように、液晶を利用して反射方向を制御できる電波反射板を用いた電波反射装置は、反射方向をあらゆる方向に制御する反射位相の可変範囲を広くする必要があるが、反射位相の可変範囲が狭いという問題がある。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の一実施形態は、電波反射装置の反射位相の可変範囲を広くする駆動方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る電波反射装置の駆動方法は、行方向及び列方向に配列された複数の反射素子を有し、複数の反射素子に印加する電圧によって反射波の位相変化量を制御する電波反射装置の駆動方法であって、複数の反射素子の配列を、列方向に配列する複数の反射素子を1列ごとに位相変化量を制御する第1の領域と、列方向に配列する複数の反射素子を隣り合う2列ごとに位相変化量を制御する第2の領域と、に区分けして、第1の領域及び第2の領域に属するそれぞれの複数の反射素子を同時に駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射素子であり、(A)はその平面図を示し、(B)は平面図に示すA1-A2間の断面構造を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射素子が動作するときの2つの状態を示し、(A)はパッチ電極とコモン電極との間に電圧が印加されない状態であり、(B)はパッチ電極とコモン電極との間に電圧が印加された状態を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電波反射装置の構成を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電波反射装置によって反射波の進行方向が変化することを模式的に示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電波反射装置の構成を示す。
【
図6】
図3および
図5で示した電波反射装置の各反射素子のアドレスの一例を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る電波反射装置の駆動方法において、複数の反射素子に印加される電圧を説明する図を示す。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電波反射装置の駆動方法において、複数の反射素子に印加される電圧を説明する図を示す。
【
図9】本発明の一実施形態に係る電波反射装置の駆動方法において、複数の反射素子に印加される電圧を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0009】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0010】
1.反射素子
図1(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る電波反射装置100に用いられる反射素子102を示す。
図1(A)は、反射素子102を上方(電波が入射する側)からみたときの平面図を示し、
図1(B)は平面図に示すA1-A2間の断面図を示す。
【0011】
図1(A)及び(B)に示すように、反射素子102は、誘電体基板104、対向基板106、パッチ電極108、コモン電極110、液晶層114、第1配向膜112a、第2配向膜112bを含む。反射素子102の中で誘電体基板104は一つの層をなすものとして誘電体層とみなすこともできる。パッチ電極108は誘電体基板(誘電体層)104に設けられ、コモン電極110は対向基板106に設けられる。誘電体基板(誘電体層)104にはパッチ電極108を覆うように第1配向膜112aが設けられ、対向基板106にはコモン電極110を覆うように第2配向膜112bが設けられる。パッチ電極108とコモン電極110とは対向するように配置され、両者の間に液晶層114が設けられる。パッチ電極108と液晶層114との間には第1配向膜112aが介在し、コモン電極110と液晶層114との間には第2配向膜112bが介在する。
【0012】
パッチ電極108は、入射する電波の垂直偏波及び水平偏波に対して対称となる形状を有していることが好ましく、平面視で正方形又は円形の形状を有する。
図1(A)は、パッチ電極108が平面視で正方形である場合を示す。コモン電極110の形状には特段の限定はなく、パッチ電極108よりも広い面積を有するように対向基板106の略全面に広がる形状を有する。パッチ電極108及びコモン電極110を形成する材料に限定はなく、導電性を有する金属、金属酸化物を用いて形成される。誘電体基板(誘電体層)104には第1配線118が設けられていてもよい。第1配線118はパッチ電極108に接続される。第1配線118はパッチ電極108に制御信号を印加するときに用いることができる。また、第1配線118は、複数の反射素子が配列する場合、あるパッチ電極とそれに隣接するパッチ電極とを接続するときに用いることができる。
【0013】
図1(A)及び(B)には示されないが、誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106とは、シール材により貼り合わされる。誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106とは間隙を有するように対向配置され、液晶層114はシール材で囲まれる領域内に設けられる。液晶層114は誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106との間隙を充填するように設けられる。誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106との間隔は20~100μmであり、例えば、50μmの間隔を有する。誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106との間には、パッチ電極108、コモン電極110、第1配向膜112a、第2配向膜112bが設けられるため、正確には誘電体基板104と対向基板106の各々に設けられた第1配向膜112a及び第2配向膜112bの間の間隔が液晶層114の厚さとなる。なお、
図1(B)には図示されないが、誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106との間には間隔を一定に保つためのスペーサが設けられていてもよい。
【0014】
パッチ電極108には液晶層114の液晶分子の配向を制御する制御信号が印加される。制御信号は直流電圧の信号、又は正の直流電圧と負の直流電圧が交互に反転する極性反転信号である。コモン電極110は接地又は極性反転信号の中間レベルの電圧が印加される。パッチ電極108に制御信号が印加されることで液晶層114に含まれる液晶分子の配向状態が変化する。液晶層114には誘電異方性を有する液晶材料が用いられる。例えば、液晶層114として、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶を用いることができる。誘電異方性を有する液晶層114は、液晶分子の配向状態の変化により誘電率が変化する。反射素子102は、パッチ電極108に印加する制御信号によって液晶層114の誘電率を変化させることができ、それによって電波を反射するときに反射波の位相を遅延させることができる。
【0015】
反射素子102が反射する電波の周波数帯は、超短波(VHF:Very High Frequency)帯、極超短波(UHF:Ultra-High Frequency)帯、マイクロ波(SHF:Super High Frequency)帯、サブミリ波(THF:Tremendously high frequency)、ミリ波(EHF:Extra High Frequency)帯である。液晶層114の液晶分子はパッチ電極108に印加される制御信号に応答して液晶分子の配向が変化するが、パッチ電極108に照射される電波の周波数にはほとんど追従しない。したがって、反射素子102は、電波の影響を受けずに反射する電波の位相を制御することができる。
【0016】
図2(A)は、パッチ電極108とコモン電極110との間に電圧が印加されない状態(「第1の状態」とする)を示す。
図2(A)は、第1配向膜112a及び第2配向膜112bが水平配向膜である場合を示す。第1の状態における液晶分子116の長軸は、第1配向膜112a及び第2配向膜112bによりパッチ電極108及びコモン電極110の表面に対して水平に配向している。
図2(B)は、パッチ電極108に制御信号(電圧信号)が印加された状態(「第2の状態」とする)を示す。第2の状態において、液晶分子116は電界の作用を受けて長軸がパッチ電極108及びコモン電極110の表面に対し垂直に配向する。液晶分子116の長軸が配向する角度は、パッチ電極108に印加する制御信号の大きさ(対向電極とパッチ電極間の電圧の大きさ)によって、水平方向と垂直方向の中間の方向に配向させることもできる。
【0017】
液晶分子116が正の誘電異方性を有する場合、第1の状態に対して第2の状態の方が、誘電率が大きくなる。また、液晶分子116が負の誘電異方性を有する場合、第1の状態に対して第2の状態の方が見かけ上の誘電率が小さくなる。誘電異方性を有する液晶層114は、可変誘電体層とみなすこともできる。反射素子102は、液晶層114の誘電異方性を利用して、反射波の位相を遅らせる(又は遅らせない)ように制御することができる。
【0018】
反射素子102は、電波を所定の方向に反射する電波反射板に用いられる。反射素子102は、反射した電波の振幅がなるべく減衰しないことが好ましい。
図1(B)に示す構造から明らかなように、空中を伝搬する電波が反射素子102で反射されるとき電波は誘電体基板(誘電体層)104を2回通過する。誘電体基板(誘電体層)104は、例えば、ガラス、樹脂などの誘電体材料で形成される。
【0019】
2.電波反射装置
次に、反射素子が集積された電波反射装置の構成を示す。
【0020】
2-1.電波反射装置A(一軸反射制御)
図3は、本発明の一実施形態に係る電波反射装置100aの構成を示す。電波反射装置100は電波反射板120を有する。電波反射板120は複数の反射素子102により構成される。複数の反射素子102は、例えば、列方向(
図3に示すX軸方向)及び列方向に交差する行方向(
図3に示すY軸方向)に配列される。反射素子102は、パッチ電極108が電波の入射面に向くように配置される。電波反射板120は平板状であり、この平板状の面内に複数のパッチ電極108がマトリクス状に配列される。
【0021】
電波反射装置100aは、一つの誘電体基板(誘電体層)104に複数の反射素子102が集積化された構造を有する。
図3に示すように、電波反射装置100は、複数のパッチ電極108が配列された誘電体基板(誘電体層)104と、コモン電極110が設けられた対向基板106とが重ねて配置され、2つの基板間に液晶層(図示されず)が設けられた構造を有する。電波反射板120は、複数のパッチ電極108とコモン電極110とが重畳する領域に形成される。電波反射板120の断面構造は、個々のパッチ電極108について見れば、
図1(B)に示す反射素子102の構造と同じである。誘電体基板(誘電体層)104と対向基板106とはシール材128で貼り合わされており、図示されない液晶層はシール材128の内側の領域に設けられる。
【0022】
誘電体基板(誘電体層)104は対向基板106と対向する領域に加え、対向基板106より外側に広がる周辺領域122を有する。周辺領域122には第1駆動回路124及び端子部126が設けられる。第1駆動回路124はパッチ電極108に制御信号を出力する。端子部126は外部回路との接続を形成する領域であり、例えば、図示されないフレキシブルプリント回路基板が接続される。端子部126には第1駆動回路124を制御する信号が入力される。
【0023】
上記のように、誘電体基板(誘電体層)104には複数のパッチ電極108が列方向(X軸方向)及び行方向(Y軸方向)に配列される。また、誘電体基板(誘電体層)104には行方向(Y軸方向)に伸びる複数の第1配線118が配設される。複数の第1配線118のそれぞれは、行方向(Y軸方向)に配列する複数のパッチ電極108と電気的に接続される。別言すれば、行方向(Y軸方向)に配列する複数のパッチ電極108は第1配線118により連結される。電波反射板120は、第1配線118によって連結された一列のパッチ電極アレイが列方向(X軸方向)に複数個配列された構成を有する。
【0024】
電波反射板120に配設された複数の第1配線118は周辺領域122に伸びて第1駆動回路124と接続される。第1駆動回路124は、複数の第1配線118のそれぞれに異なる電圧レベルの制御信号を出力することが可能である。これにより、電波反射板120では、列方向(X軸方向)及び行方向(Y軸方向)に配列された複数のパッチ電極108に対し、列ごと(行方向(Y軸方向)に配列されたパッチ電極108ごと)に制御信号が印加される。
【0025】
電波反射装置100aは行方向(Y軸方向)に配列された複数のパッチ電極108の組ごとに制御信号が印加され、それにより電波反射板120に入射した電波の反射波の反射方向を制御することができる。すなわち、電波反射装置100aは、電波反射板120に照射された電波を、行方向(Y軸方向)に平行な反射軸VRを中心として図面の左右方向に反射波の進行方向を制御することができる。
【0026】
図4は、2つの反射素子102によって反射波の進行方向が変化することを模式的に示す。第1反射素子102aと第2反射素子102bに同じ位相で電波が入射した場合において、第1反射素子102aと第2反射素子102bに異なる制御信号(V1≠V2)が印加されているために、第1反射素子102aに比べ第2反射素子102bによる反射波の位相変化が大きい場合を示す。その結果、第1反射素子102aで反射した反射波R1の位相と、第2反射素子102bで反射した反射波R2の位相が異なり(
図4では反射波R2の位相が反射波R1の位相より進んでいる)、見かけ上、反射波の進行方向が斜め方向に変化する。
【0027】
このような原理を
図3に示す電波反射装置100aに適用し、例えば、反射素子による位相変化量の制御を列ごとに制御することにより、反射方向を一軸方向に制御することができる。
【0028】
2-2.電波反射装置B(二軸反射制御)
図3に示す電波反射装置100aは反射軸VRが一軸であるため、反射軸VRを回転軸とした方向に反射角を制御することができる。これに対し本実施形態は、二軸反射制御をすることができる電波反射装置100bの一例を示す。以下の説明においては電波反射装置100aと異なる部分を中心に説明を行う。
【0029】
電波反射装置100bは、列方向(X軸方向)に延伸する複数の第2配線132を有する。複数の第1配線118と複数の第2配線132は図示されない絶縁層を挟んで交差するように配置される。複数の第1配線118は第1駆動回路124に接続され、複数の第2配線132は第2駆動回路130に接続される。第2駆動回路130は走査信号を出力する。
【0030】
図5は、4つのパッチ電極108と、2つの第1配線118及び第2配線132の配置を拡大した挿入図を示す。4つのパッチ電極108のそれぞれにはスイッチング素子134が設けられる。スイッチング素子134のスイッチング(オン及びオフ)は第2配線132に印加される走査信号により制御される。スイッチング素子134がオンになったパッチ電極108は、第1配線118と導通し制御信号が印加される。スイッチング素子134は、例えば、薄膜トランジスタで形成される。このような構成によれば、列方向(X軸方向)に配列する複数のパッチ電極108を行ごとに選択し、各行に異なる電圧レベルの制御信号を印加することができる。
【0031】
図5に示す電波反射装置100bは、電波反射板120に照射された電波を、行方向(Y軸方向)に平行な反射軸VRを中心として図面の左右方向に反射波の進行方向を制御することができることに加え、列方向(X軸方向)に平行な反射軸HRを中心として図面の上下方向へも反射波の進行方向を制御することができる。すなわち、電波反射装置100は、行方向(Y軸方向)に平行な反射軸VRと、列方向(X軸方向)に平行な反射軸HRを有するため、反射軸VRを回転軸とした方向、反射軸HRを回転軸とした方向に反射角を制御することができる。
【0032】
このような原理を
図5に示す電波反射装置100bに適用し、例えば、反射素子による位相変化量の制御を列、行ともに独立して制御することにより、反射方向を一軸方向および二軸方向に制御することができる。
【0033】
3.駆動方法
次に、電波反射装置100の駆動方法を説明する。
【0034】
図6は、
図3および
図5に示す電波反射装置100における反射素子102の配列を示す。
図6に示すように、反射素子102は、1行目(R1)から10行目(R10)までの列方向(X軸方向)に配列し、1列目(C1)から11列目(C11)までの行方向(Y軸方向)に配列する。
【0035】
3-1.反射方向制御-1
図6を参照し、列方向(X軸方向)に反射方向を制御する電波反射装置100aの駆動方法を説明する。
【0036】
電波反射装置100aの複数の反射素子102の配列は、
図6に示すように、第1の領域136および第2の領域138に区分けされる。第1の領域136と第2の領域138は隣り合って配置され、少なくとも列方向(X軸方向)または行方向(Y軸方向)の一方向に繰り返し配置される。
【0037】
第1の領域136に区分けされる複数の反射素子102は、列方向に配列し、1列ごとに位相変化量が制御される。第2の領域138に区分けされる複数の反射素子102は、列方向に配列し、隣り合う2列ごとに位相変化量が制御される。さらに、第1の領域136および第2の領域138に属するそれぞれの複数の反射素子102は、同時に駆動される。これら第2の領域138に属する反射素子102により制御される位相変化量は、第1の領域136に属する反射素子102により制御される位相変化量より大きい。
【0038】
図7を参照し、具体的に
図6に示した電波反射装置100の駆動方法を説明する。
図7に示す電圧設定は、一次元方向に反射制御をするときの一例を示す。
図7は、
図6に示す複数の反射素子102に設定される反射波の位相変化量(位相設定)とそれぞれの位相変化量に対応する反射素子102に印加される電圧(電圧設定)を示す。
【0039】
なお、
図7に示す駆動方法に用いる電波反射装置は、
図5に示す、反射素子による位相変化量の制御を列、行ともに独立して制御する電波反射装置を用いることが好ましい。
【0040】
図7に示すように、同列に配列する複数の反射素子102は、同じ電圧が印加され、同行に配置される複数の反射素子102は、異なる電圧が印加される。
【0041】
図6で示される第1の領域136の列C1からC5に配列する反射素子102は、
図7に示すように、それぞれ1列ごとに0°、60°、120°、180°、240°の位相変化量が設定される。位相変化量0°が設定されるC1に配列する反射素子102は、電圧V0が印加される。列C2からC5に配列する反射素子102も、それぞれ1列ごとに電圧V1、V2、V3、V4が印加される。このとき、第1の領域136に属する反射素子102のうち列C1からC5に配列する反射素子102に印加される電圧の絶対値は、位相変化量の大小関係と同様に、電圧V0から電圧V4の順に大きい。電圧V0から電圧V4の変化は、電圧が直線的に増加するのではなく、液晶の印加電圧に対する誘電率の変化を考慮して適宜設定される。
【0042】
さらに、第1の領域136における列C8からC11に配列する反射素子102に関しても、列C1からC5に配列する反射素子102と同様に、1列ごとに位相変化量が設定され、1列ごとに位相変化量に対応する電圧V1からV4がそれぞれ印加される。
【0043】
第2の領域138に属する反射素子102は列C6とC7にそれぞれ配列し、列C6およびC7の2列で、例えば、高位相差とされる330°の位相変化量が設定される。ここで、第2の領域138に設定される位相差は、270°以上360°以下であることが好ましい。このとき列C6に配列する反射素子102は、電圧V5が印加され、列C7に配列する反射素子102は、電圧V6が印加される。電圧V5の絶対値は、電圧V6の絶対値より小さく、また第1の領域136の列C5に配列する反射素子102に印加される電圧V4の絶対値より小さい。別言すると、列C6に配列する反射素子102は、隣り合う列C5およびC6に配列する反射素子102に印加される電圧の絶対値より小さい。
【0044】
図6および
図7では、第1の領域136に属する複数の反射素子102が配列する列C1からC5および第2の領域138に属する複数の反射素子102が配列する列C6とC7の例を示したが、第1の領域136に属する複数の反射素子102の列の数に制限はない。例えば、第1の領域136に属する複数の反射素子102が配列する列C1からCn(nは3以上の自然数)まであり、それぞれ1列ごとに列C1からCnに配列する複数の反射素子102に位相変化量を設定する。さらに、列C1からCnに配列する反射素子102に、それぞれ1列ごとに電圧V0からVnを印加する。
【0045】
次に、第2の領域138に属する複数の反射素子102が、隣り合う列Cn+1およびCn+2に配列する。この隣り合う2列に配列する複数の反射素子102に、第1の領域136の反射素子102に設定される位相変化量より大きい位相変化量を設定する。さらに、列Cn+1およびCn+2に配列する反射素子102に、電圧VaとVbの組み合わせの電圧をそれぞれ印加する。ここで、電圧Vaの絶対値は電圧Vbの絶対値および電圧Vnの絶対値より小さく、別言すると、電圧Vbおよび電圧Vnの絶対値は、電圧Vaの絶対値より大きい。また、電圧Vaと電圧Vbの組み合わせは、電圧Vaが印加された反射素子による反射波と電圧Vbが印加された反射素子による反射波との合成波が第1の領域136に設定される位相変化量より大きくなる電圧を設定すればよい。
【0046】
また、電圧Vnが印加される第1の領域136に属する反射素子102は、電圧Vaが印加される第2の領域138に属する反射素子102および電圧Vbが印加される第2の領域138に属する反射素子102と行方向に並ぶことができる。
【0047】
さらに、反射素子102に印加される電圧は、上述したように、反射素子102を構成するパッチ電極108に印加される。したがって、電圧Vnが印加される第1の領域136に属する反射素子102のパッチ電極108は、電圧Vaが印加される第2の領域138に属する反射素子102のパッチ電極108および電圧Vbが印加される第2の領域138に属する反射素子102のパッチ電極108と行方向に並ぶことができる。
【0048】
このように、電波反射装置の面内において、1列ごとに位相変化量を設定しそれに対応する電圧を印加する第1の領域に対し、位相変化量の設定値が第1の領域より大きい第2の領域においては、隣合う2列を一組として、その列内で所定の電圧を印加することで、電波反射装置の反射面内において反射位相の可変範囲を広げることができる。
【0049】
3-2.反射方向制御-2
図8を参照し、列方向(X軸方向)に反射方向を制御する電波反射装置100の駆動方法を説明する。
図7に示す駆動方法と異なる点は、第2の領域138に属する複数の反射素子102のうち同列に配列する反射素子102に異なる電圧が印加される点である。なお、
図7に示す駆動方法と同一、または、類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0050】
第2の領域138に属する複数の反射素子102は、列方向に沿って並ぶ。具体的には、
図8に示すように、列C6および列C7に沿って並ぶ。また、上述したように、電圧Vaと電圧Vbがそれぞれ第2の領域138に属する複数の反射素子102に印加され、第2の領域138に属する複数の反射素子102は行方向に沿って並ぶ。具体的には、
図8に示すように、列C6および列C7に沿って並ぶ複数の反射素子に電圧V5または電圧V6が印加される。
【0051】
同様に、第2の領域138に属する複数の反射素子102の複数のパッチ電極108は、列方向に沿って並び、具体的には、
図8に示すように、列C6および列C7に沿って並ぶ。また、電圧Vaと電圧Vbがそれぞれそれら複数のパッチ電極108に印加され、それら複数のパッチ電極108は行方向に沿って並ぶ。具体的には、
図8に示すように、列C6および列C7に沿って並ぶ複数のパッチ電極に電圧V5または電圧V6が印加される。
【0052】
第2の領域138において、電圧Vaが印加される反射素子102と列方向に隣り合う反射素子102は電圧Vbが印加される。また、第2の領域138において、電圧Vbが印加される反射素子102と列方向に隣り合う反射素子102は電圧Vaが印加される。また、第2の領域138において、電圧Vaが印加される複数の反射素子102は、互いに対角に配置される。さらに、第2の領域138において、電圧Vbが印加される複数の反射素子102は、互いに対角に配置される。
【0053】
具体的には、
図8に示すように、第2の領域138は列C6およびC7に配置され、列C6の行R1に配列する反射素子に電圧V5が印加される。列C6の行R1に配列する反射素子の列方向に隣り合う反射素子、列C6の行R2に配列する反射素子は電圧V6が印加される。また、列C7の行R1に配列する反射素子に電圧V6が印加される。列C7の行R1に配列する反射素子の列方向に隣り合う反射素子、列C7の行R2に配列する反射素子は電圧V5が印加される。
【0054】
上述した電圧V5が印加される列C6の行R1に配列する反射素子と電圧V5が印加される列C7の行R2に配列する反射素子は、互いに対角に配置される。また、上述した電圧V6が印加される列C6の行R2に配列する反射素子と電圧V6が印加される列C7の行R1に配列する反射素子は、互いに対角に配置される。
【0055】
図8では、互いに対角に配置される反射素子は、4つの反射素子の組み合わせを示したが、組み合わせた反射素子の数に制限はない。例えば、電圧V5が印加される反射素子を列C6およびC7の行R1およびR2の4つの反射素子およびそれらの対角に位置する列C8およびC9の行R3およびR4の4つの反射素子に設定し、次に、電圧V6が印加される反射素子を列C8およびC9の行R1およびR2の4つの反射素子およびそれらの対角に位置する列C6およびC7の行R3およびR4の4つの反射素子に設定することができる。
【0056】
また、上述した反射素子の数だけでなく、上述した互いに対角に配置される4つの反射素子をさらに、行方向および列方向に配置することもできる。例えば、
図8に示した列C6およびC7の反射素子の電圧設定を、さらに、列C8およびC9に設定することができる。具体的には、電圧V5を列C8の行R1、R3、、、と奇数行目および列C9の行R2、R4の偶数行目に印加し、電圧V6を列C9の行R1、R3、、、と奇数行目および列C8の行R2、R4の偶数行目に印加することができる。
【0057】
上述した反射素子102を構成するパッチ電極108についても、同様に電圧が印加され、配置される。
【0058】
このように4つの反射素子のうち対角に位置する反射素子またはそれらのパッチ電極に印加する電圧を等しく制御することで、行方向、列方向ともに電圧Vaと電圧Vbの組み合わせの電圧が印加され、電波反射装置100の水平、垂直偏波に対する反射特性は等しくなりやすく、さらに印加する電圧を電圧Vzと電圧Vbの組み合わせにすることで、電波反射装置100に高位相差を設定することができる。
【0059】
3-3.反射方向制御-3
図9を参照し、列方向(X軸方向)と行方向(Y軸方向)に跨る方向(斜め方向)に反射方向を制御する電波反射装置100の駆動方法を説明する。
図7に示す駆動方法と異なる点は、第2の領域138に属する複数の反射素子102の配置が、行ごとに1列ずつ異なる点である。なお、
図7に示す駆動方法と同一、または、類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0060】
各行に設けられる複数の第2の領域138は、次行に設けられる第2の領域138と異なる列に配置される。隣り合う行に配置される複数の第2の領域138において、電圧Vaが印加される複数の反射素子102は、対角線上に配置される。また、隣り合う行に配置される複数の第2の領域138において、電圧Vbが印加される複数の反射素子102は、対角線上に配置される。隣り合う行に配置される複数の第2の領域138において、電圧Vaまたは電圧Vbが印加される複数の反射素子102は、同じ列に配置することができる。
【0061】
具体的には、
図9に示すように、行R1に設けられる第2の領域138は、列C6および列C7に配置され、行R1と隣り合う行R2に設けられる第2の領域138は、列C7および列C8に配置される。行R1に配置される第2の領域138の複数の反射素子のうち列C6に配列する反射素子は、電圧V5が印加され、行R2に配置される第2の領域138の複数の反射素子のうち列C7に配列する反射素子は、電圧V5が印加される。したがって、上述した行R1の列C6に配列する反射素子と行R2の列C7に配列する反射素子は、対角線上に配置される。なお、
図9では、第2の領域138は、破線で囲む反射素子を示される。
【0062】
また、
図9に示すように、行R1に配置される第2の領域138の複数の反射素子のうち列C7に配列する反射素子は、電圧V6が印加され、行R2に配置される第2の領域138の複数の反射素子のうち列C8に配列する反射素子は、電圧V6が印加される。したがって、上述した行R1の列C7に配列する反射素子と行R2の列C8に配列する反射素子は、対角線上に配置される。
【0063】
また、上述した反射素子102を構成するパッチ電極108についても、同様に電圧が印加され、配置される。
【0064】
このように、第2の領域138に属する複数の反射素子102の配置が行ごとに1列ずつ異なることで、反射素子の沿って並べられる行方向と列方向に対し斜め方向に反射方向を制御することができる。さらに、第2の領域138に属する複数の反射素子の同電圧が印加される複数の反射素子102が対角線上に配置されることで、電波反射装置100は、高位相差の設定をすることができる。
【0065】
以上のように、本発明の一実施形態に係る電波反射装置100の駆動方法は、1列ごとに位相差を制御する第1の領域136と2列ごとに位相差を制御する第2の領域138とを有し、第2の領域138に属する複数の反射素子102に、電圧Vaと電圧Vaの絶対値より大きい電圧Vbをそれぞれ印加することで、高位相差を設定することができ、電波反射装置100の反射位相の可変範囲を広くすることができる。また、同列に設けられる第2の領域138に属する複数の反射素子102において、対角に配列する反射素子102に電圧VaまたはVbの同電圧を印加することで、電波反射装置100は、水平、垂直偏波に対して等しい反射特性を示すことができる。
【0066】
本発明の一実施形態として例示した電波反射装置100の駆動方法は相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。また、本明細書及び図面に開示された電波反射装置100の駆動方法を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
本明細書に開示された実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0068】
100:電波反射装置、100a:電波反射装置、100b:電波反射装置、102:反射素子、102a:第1反射素子、102b:第2反射素子、104:誘電体基板(誘電体層)、106:対向基板、108:パッチ電極、110:コモン電極、112a:第1配向膜、112b:第2配向膜、114:液晶層、116:液晶分子、118:第1配線、120:電波反射板、122:周辺領域、124:第1駆動回路、126:端子部、128:シール材、130:第2駆動回路、132:第2配線、134:スイッチング素子、136:第1の領域、138:第2の領域