(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084353
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】滑落性評価装置および滑落性評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 13/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01N13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198575
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】狩野 直也
(57)【要約】
【課題】評価対象物に対する付着物の滑落性を安定して評価することができる滑落性評価装置および滑落性評価方法を提供する。
【解決手段】滑落性評価装置EAは、評価対象物WKに対する付着物DPの滑落性を評価する装置であって、付着物DPが付着した評価対象物WKを支持する支持手段10と、支持手段10を移動させる移動手段20と、移動手段20で支持手段10を移動させた際の評価対象物WKに対する付着物DPの移動量MDを測定する測定手段30とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象物に対する付着物の滑落性を評価する滑落性評価装置であって、
前記付着物が付着した評価対象物を支持する支持手段と、
前記支持手段を移動させる移動手段と、
前記移動手段で前記支持手段を移動させた際の前記評価対象物に対する前記付着物の移動量を測定する測定手段とを備えていることを特徴とする滑落性評価装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記支持手段を振動させることで当該支持手段を移動させることを特徴とする請求項1に記載の滑落性評価装置。
【請求項3】
前記支持手段は、複数の前記評価対象物を支持可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑落性評価装置。
【請求項4】
評価対象物に対する付着物の滑落性を評価する滑落性評価方法であって、
前記付着物が付着した評価対象物を支持手段で支持する支持工程と、
前記支持手段を移動させる移動工程と、
前記移動工程で前記支持手段を移動させた際の前記評価対象物に対する前記付着物の移動量を測定する測定工程とを実施することを特徴とする滑落性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑落性評価装置および滑落性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
評価対象物に対する付着物の滑落性を評価する滑落性評価装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された撥液特性評価装置100(滑落性評価装置)では、傾斜させたステージ14(支持手段)に対して離れた位置から液滴(付着物)を滴下して支持手段上を滑落させるため、付着物が支持手段に衝突した際の跳ね返りの影響を受けて滑落することになり、滑落性の評価が安定しないという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、評価対象物に対する付着物の滑落性を安定して評価することができる滑落性評価装置および滑落性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る滑落性評価装置は、評価対象物に対する付着物の滑落性を評価する滑落性評価装置であって、前記付着物が付着した評価対象物を支持する支持手段と、前記支持手段を移動させる移動手段と、前記移動手段で前記支持手段を移動させた際の前記評価対象物に対する前記付着物の移動量を測定する測定手段とを備えている。
【0007】
本発明の一態様に係る滑落性評価装置において、前記移動手段は、前記支持手段を振動させることで当該支持手段を移動させてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る滑落性評価装置において、前記支持手段は、複数の前記評価対象物を支持可能に構成されてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る滑落性評価方法は、評価対象物に対する付着物の滑落性を評価する滑落性評価方法であって、前記付着物が付着した評価対象物を支持手段で支持する支持工程と、前記支持手段を移動させる移動工程と、前記移動工程で前記支持手段を移動させた際の前記評価対象物に対する前記付着物の移動量を測定する測定工程とを実施する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、付着物が付着した評価対象物を支持手段で支持し、支持手段を移動させた際の評価対象物に対する付着物の移動量を測定するので、付着物が支持手段に衝突した際の跳ね返りの影響を受けて滑落することを防止し、評価対象物に対する付着物の滑落性を安定して評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る滑落性評価装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を
図1、2に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0013】
滑落性評価装置EAは、評価対象物WKに対する付着物としての液滴DPの滑落性を評価する装置であって、液滴DPが付着した評価対象物WKを支持する支持手段10と、支持手段10を移動させる移動手段20と、移動手段20で支持手段10を移動させた際の評価対象物WKに対する液滴DPの移動量MDを測定する測定手段30とを備えている。なお、滑落性とは、評価対象物WKに加速度を与えた場合の評価対象物WKに対する付着物の移動のし易さをいい、例えば、付着物が液体の場合であれば、撥液性と同義になる。
【0014】
支持手段10は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面11Aを有するテーブル11を備えている。
本実施形態の場合、支持手段10は、支持面11A上に複数の評価対象物WKを支持可能に構成されている。
【0015】
移動手段20は、駆動機器としての回動モータ21と、回動モータ21の出力軸21Aに支持され、その駆動力をテーブル11に伝達して当該テーブル11を前後方向に移動させる動力伝達手段としてのボールねじ22とを備えている。
本実施形態の場合、移動手段20は、支持手段10を振動させることで当該支持手段10を移動させる構成とされ、前方移動と後方移動とで加速度が異なるようにテーブル11を振動させることが可能になっている。
【0016】
測定手段30は、カメラや投影機等の撮像手段や、光学センサや超音波センサ等の各種センサ等で構成された測定機器31を備えている。
【0017】
以上の滑落性評価装置EAの動作を説明する。
先ず、
図1中実線で示す初期位置に各部材が配置された滑落性評価装置EAに対し、当該滑落性評価装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の操作手段を介して、移動手段20によるテーブル11の振動時の加速度やテーブル11の移動回数を入力するとともに、自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、
図1に示すように、評価対象物WKを支持面11A上の所定の位置に載置する。
図1では、互いに異なる複数の評価対象物WKが載置されている。その後、支持手段10が図示しない減圧手段を駆動し、支持面11Aでの評価対象物WKの吸着保持を開始する。次に、使用者または、液体を供給する供給管やスポイト等の図示しない液体供給手段が、各評価対象物WK上の所定の位置PBに、同じ液体かつ同じ量の液滴DPを付着させる。
【0018】
このようにして、液滴DPが付着した評価対象物WKが支持面11Aに支持されると、移動手段20が回動モータ21を駆動し、後方移動時よりも前方移動時の加速度が大きくなるようにして、
図2中二点鎖線で示すように、テーブル11を前後方向に振動させた後、回動モータ21の駆動を停止する。そして、測定手段30が測定機器31を駆動し、
図2に示すように、テーブル11を移動させる前の液滴DPの位置PBから、テーブル11を移動させた後の液滴DPの位置PAまでの移動量MDを測定する。これにより、評価対象物WKごとに液滴DPの移動量MDが測定されるため、各評価対象物WKに対する液滴DPの滑落性を一度に評価することができる上、互いの移動量MDを比較することで滑落性を相対的に評価することができる。なお、複数の評価対象物WKに対する液滴DPの移動量MDを別々に測定する場合でも、各々の測定時にテーブル11の加速度や移動回数を同じにすることで、滑落性を相対的に評価することができる。次いで、支持手段10が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面11Aでの評価対象物WKの吸着保持を解除した後、使用者または図示しない搬送手段が支持面11Aから評価対象物WKを取り除き、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0019】
以上のような実施形態によれば、液滴DPが付着した評価対象物WKを支持手段10で支持し、支持手段10を移動させた際の評価対象物WKに対する液滴DPの移動量MDを測定するので、液滴DPが支持手段10に衝突した際の跳ね返りの影響を受けて滑落することを防止し、評価対象物WKに対する液滴DPの滑落性を安定して評価することができる。
【0020】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0021】
例えば、支持手段10は、支持面11A上を評価対象物WKが移動することを防止するために、支持面11Aに評価対象物WKを囲む移動防止枠が設けられたテーブル11が採用されてもよいし、支持面11Aで吸着保持ができないテーブル11が採用されてもよいし、付着物が評価対象物WKに付着した後に当該評価対象物WKが支持面11Aに載置されてもよいし、評価対象物WKを1つだけ支持してもよいし、滑落性が既知で評価の基準となる基準サンプルを、評価対象物WKとともに支持してもよい。
【0022】
移動手段20は、例えば、駆動機器としての多関節ロボットや、駆動機器としての直動モータの出力軸でテーブル11を支持し、当該駆動機器でテーブル11を移動させてもよいし、回動モータ21の出力軸21Aと交差する方向にテーブル11を移動させてもよいし、テーブル11を左右方向または、前後方向および左右方向に交差する交差方向に振動させてもよいし、テーブル11を水平面内で回転する回転方向に振動させてもよいし、テーブル11を水平面に対して傾斜する傾斜方向に揺動するように振動させてもよいし、テーブル11を振動させずに前方、後方、右方、左方、交差方向、回転方向、または傾斜方向のうちの1方向に1回または複数回移動させてもよい。
動力伝達手段は、駆動機器の駆動力を伝達してテーブル11を移動させるものであれば、どのようなものでもよく、例えば、回動モータ21の出力軸21Aに支持されたウォームギヤとテーブル11とを接続するにラック・ピニオン機構であってもよいし、回動モータ21の出力軸21Aに支持されたプーリを含むベルト・プーリ機構であってもよい。
【0023】
測定手段30は、支持手段10に基準サンプルと評価対象物WKとが支持されている場合、基準サンプルにおける付着物の移動量MDと、評価対象物WKにおける付着物の移動量MDとを測定してもよい。これにより、基準サンプルと評価対象物WKとの両方における付着物の移動量MDが同時に測定されるため、評価対象物WKに対する付着物の滑落性を、基準サンプルを基準として相対評価することができる。
測定手段30は、テーブル11に設けられた目盛であってもよく、使用者がこの目盛を利用して目視で液滴DPの移動量MDを測定するようにしてもよい。
【0024】
付着物は、評価対象物WKに付着する物質であれば、どのようなものでもよく、例えば、砂や塵埃等の粒子であってもよいし、液滴DPが水滴、インク等であってもよい。
【0025】
評価対象物WKの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、評価対象物WKは、フィルム、紙、布、基材シート等の基材であってもよいし、当該基材上にインク、粘着剤、接着剤、コート剤、剥離剤等の塗膜が形成されたものであってもよいし、被着体に貼付される接着シートであってもよい。また、評価対象物WKの材質は、樹脂、金属、木材、セラミック等であってもよいし、評価対象物WKの形状は、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよい。
接着シートは、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよいし、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材と接着剤層とが積層された2層のもの、基材と接着剤層との間に1または複数の中間層が積層された3層または3層以上のもの、基材の上面に1または複数のカバー層が積層された3層または3層以上のもの、基材、中間層またはカバー層が剥離可能に設けられたもの、接着剤層のみからなる単層の両面接着シート、1または複数の中間層の両最外面に接着剤層が積層された両面接着シート等、どのようなものでもよい。なお、接着シートは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。
【0026】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、測定手段は、移動手段で支持手段を移動させた際の評価対象物に対する付着物の移動量を測定するものであればどんなものでもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0027】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
EA…滑落性評価装置
10…支持手段
20…移動手段
30…測定手段
DP…液滴(付着物)
MD…移動量
WK…評価対象物