(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084354
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/824 20230101AFI20240618BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240618BHJP
H10K 59/173 20230101ALI20240618BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20240618BHJP
H10K 59/179 20230101ALI20240618BHJP
H10K 50/814 20230101ALI20240618BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240618BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240618BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240618BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H10K50/824
H10K59/122
H10K59/173
H10K59/131
H10K59/179
H10K50/814
H10K50/844
H10K71/60
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198576
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 真一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC12
3K107CC33
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD37
3K107DD50
3K107DD89
3K107DD95
3K107EE46
3K107FF00
3K107FF15
3K107GG12
3K107GG37
5C094AA21
5C094AA24
5C094BA27
5C094DA13
5C094DA15
5C094EA04
5C094EA07
5C094EA10
5C094EC04
5G435AA16
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】 表示領域において適切な抵抗を実現可能な表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る製造方法は、下電極を形成し、リブを形成し、導電性のボトム部と、絶縁性の軸部と、軸部の側面よりも突出したトップ部とを含む隔壁をリブの上に形成することを含む。隔壁の形成は、導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を形成し、第3材料からなる層を含む第3層を形成し、第1エッチング工程により第3層をパターニングしてトップ部を形成し、第2エッチング工程により第2層をパターニングして軸部を形成し、第3エッチング工程により第1層をパターニングしてボトム部を形成することを含む。第2エッチング工程における第3材料のエッチングレートは、第2エッチング工程における第2材料のエッチングレートよりも低い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極を形成し、
前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、
導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する絶縁性の軸部と、前記軸部の上に位置し前記軸部の側面よりも突出したトップ部と、を含む隔壁を前記リブの上に形成する、
ことを含み、
前記隔壁の形成は、
導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、
絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、
第3材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、
第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、
第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、
第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、
ことを含み、
前記第2エッチング工程における前記第3材料のエッチングレートは、前記第2エッチング工程における前記第2材料のエッチングレートよりも低い、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
下電極を形成し、
前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、
導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する絶縁性の軸部と、前記軸部の上に位置し前記軸部の側面よりも突出したトップ部と、を含む隔壁を前記リブの上に形成する、
ことを含み、
前記隔壁の形成は、
導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、
絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、
第3材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、
第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、
第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、
第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、
ことを含み、
前記第3エッチング工程における前記第3材料のエッチングレートは、前記第3エッチング工程における前記第1材料のエッチングレートよりも低い、
表示装置の製造方法。
【請求項3】
下電極を形成し、
前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、
導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する絶縁性の軸部と、前記軸部の上に位置し前記軸部の側面よりも突出したトップ部と、を含む隔壁を前記リブの上に形成する、
ことを含み、
前記隔壁の形成は、
導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、
絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、
前記第1材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、
第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、
第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、
第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、
ことを含み、
前記第3層に含まれる前記第1材料からなる層は、前記第1層に含まれる前記第1材料からなる層よりも厚く形成されている、
表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1層は、前記第1材料からなる第1ボトム層と、前記第1材料とは異なる導電性の材料からなり、前記第1ボトム層に重ねられた第2ボトム層とを含む、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2ボトム層は、前記第1ボトム層よりも厚い、
請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3層は、前記第3材料からなる第1トップ層と、前記第3材料とは異なる材料からなり、前記第1トップ層に重ねられた第2トップ層とを含む、
請求項1または2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1トップ層および前記第2トップ層の一方が導電性を有し、他方が絶縁性を有している、
請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3層は、前記第1材料からなる第1トップ層と、前記第1材料とは異なる材料からなり、前記第1トップ層に重ねられた第2トップ層とを含む、
請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記下電極を覆うとともに、電圧の印加に応じて発光する有機層を形成し、
前記有機層を覆うとともに、前記ボトム部に接触する上電極を形成する、
ことをさらに含む請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記有機層および前記上電極を含む薄膜と、前記隔壁とを連続的に覆う封止層を形成する、
ことをさらに含む請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
複数の表示素子が配置された表示領域には、上電極に給電するための配線などの各種配線が形成される。これら配線による抵抗は適切な値に調整する必要があるが、表示素子やその周囲の構造上、必ずしもそのような調整が容易ではないケースもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、適切な抵抗を実現可能な表示装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、下電極を形成し、前記下電極の少なくとも一部を覆うリブを形成し、導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に位置する絶縁性の軸部と、前記軸部の上に位置し前記軸部の側面よりも突出したトップ部と、を含む隔壁を前記リブの上に形成する、ことを含む。
【0007】
実施形態の一つの観点によれば、前記隔壁の形成は、導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、第3材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、ことを含む。さらに、前記第2エッチング工程における前記第3材料のエッチングレートは、前記第2エッチング工程における前記第2材料のエッチングレートよりも低い。
【0008】
実施形態の他の観点によれば、前記隔壁の形成は、導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、第3材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、ことを含む。さらに、前記第3エッチング工程における前記第3材料のエッチングレートは、前記第3エッチング工程における前記第1材料のエッチングレートよりも低い。
【0009】
実施形態のさらに他の観点によれば、前記隔壁の形成は、導電性の第1材料からなる層を含む第1層を形成し、絶縁性の第2材料からなる層を含む第2層を前記第1層の上に形成し、前記第1材料からなる層を含む第3層を前記第2層の上に形成し、第1エッチング工程により前記第3層をパターニングして前記トップ部を形成し、第2エッチング工程により前記第2層をパターニングして前記軸部を形成し、第3エッチング工程により前記第1層をパターニングして前記ボトム部を形成する、ことを含む。さらに、前記第3層に含まれる前記第1材料からなる層は、前記第1層に含まれる前記第1材料からなる層よりも厚く形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、隔壁に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、表示装置の製造方法の一工程を示す概略的な断面図である。
【
図19】
図19は、表示装置の使用態様の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0013】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0014】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0015】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0016】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0017】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0018】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0019】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0020】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0021】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。
【0022】
表示領域DAには、リブ5および隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。
図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0023】
隔壁6は、隣り合う副画素SPの境界に配置され、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yとを有している。複数の第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う2つの画素開口AP1の間、および、第2方向Yに隣り合う画素開口AP2,AP3の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1,AP2の間、および、第1方向Xに隣り合う画素開口AP1,AP3の間にそれぞれ配置されている。
【0024】
図2の例においては、第1隔壁6xおよび第2隔壁6yが互いに接続されている。これにより、隔壁6は全体として画素開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状である。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0025】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3を備えている。
【0026】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層をさらに含んでもよい。リブ5および隔壁6は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0027】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
図2の例においては、コンタクトホールCH1,CH2,CH3が全体的にリブ5および隔壁6と重なっているが、この例に限られない。
【0028】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0029】
回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1,CH2,CH3は絶縁層12に設けられている。
【0030】
下電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0031】
隔壁6は、リブ5の上に配置されたボトム部61と、ボトム部61の上に配置された軸部62と、軸部62の上に配置されたトップ部63とを備えている。トップ部63は、ボトム部61および軸部62よりも大きい幅を有している。これにより、
図3においてはトップ部63の両端部がボトム部61および軸部62の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0032】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。
【0033】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3が配置されている。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0034】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む積層体を薄膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む積層体を薄膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む積層体を薄膜FL3と呼ぶ。
【0035】
薄膜FL1の一部は、トップ部63の上に位置している。当該一部は、薄膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、薄膜FL2の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、薄膜FL3の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0036】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、薄膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、薄膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、薄膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0037】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0038】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0039】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0040】
絶縁層12は、有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成することができる。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、いずれかの無機絶縁材料の単層構造を有してもよいし、2種類以上の無機絶縁材料の層が重ねられた積層構造を有してもよい。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3をそれぞれ形成する無機絶縁材料は、同一であってもよいし、異なってもよい。
【0041】
樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0042】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0043】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0044】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば、透明な複数の薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1,UE2,UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1,SE2,SE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3は省略されてもよい。
【0045】
ボトム部61は、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデン-タングステン合金(MoW)、モリブデン-ニオブ合金(MoNb)、ITOおよびIZOのような導電性の材料によって形成することができる。ボトム部61は、これらのいずれかの材料で形成された単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。
【0046】
軸部62は、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料によって形成することができる。軸部62は、これらのいずれかの材料で形成された単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。
【0047】
トップ部63は、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料によって形成されてもよいし、アルミニウム、チタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、モリブデン-ニオブ合金(MoNb)、ITOおよびIZOのような導電性の材料によって形成されてもよい。トップ部63は、これらのいずれかの材料で形成された単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。積層構造を有する場合、トップ部63は、導電性の材料で形成された導電層と絶縁性の材料で形成された絶縁層を含んでもよい。この場合において、導電層の上に絶縁層が配置されてもよいし、反対に、絶縁層の上に導電層が配置されてもよい。
【0048】
上電極UE1,UE2,UE3は、ボトム部61の側面に接触している。ボトム部61には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0049】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0050】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0051】
図4は、隔壁6に適用し得る構成の一例を示す概略的な断面図である。この例において、ボトム部61は、第1ボトム層611と、第1ボトム層611の上に配置された第2ボトム層612とを有している。また、トップ部63は、第1トップ層631と、第1トップ層631の上に配置された第2トップ層632とを有している。なお、軸部62は、単層構造を有している。
【0052】
第1ボトム層611および第2ボトム層612の材料は、ボトム部61の材料として上述した導電性の材料の中から適宜に選定し得る。第1トップ層631および第2トップ層632の材料は、トップ部63の材料として上述した絶縁性の材料および導電性の材料の中から適宜に選定し得る。
【0053】
なお、ボトム層611,612に付す「第1」および「第2」は、単にこれらボトム層611,612を区別するためのものにすぎない。すなわち、「第1ボトム層」と「第2ボトム層」の位置関係は、必ずしも
図4の例のように「第1ボトム層」が下で「第2ボトム層」が上である必要はない。他の例として、ボトム部61を構成する複数の層のうち、上方に位置するものを「第1ボトム層」と呼び、その下方に位置するものを「第2ボトム層」と呼んでもよい。
【0054】
同様に、トップ層631,632に付す「第1」および「第2」も単にこれらトップ層631,632を区別するためのものにすぎない。すなわち、「第1トップ層」と「第2トップ層」の位置関係は、必ずしも
図4の例のように「第1トップ層」が下で「第2トップ層」が上である必要はない。他の例として、トップ部63を構成する複数の層のうち、上方に位置するものを「第1トップ層」と呼び、その下方に位置するものを「第2トップ層」と呼んでもよい。
【0055】
図4に示すように、第1トップ層631および第2トップ層632の両端部は、第1ボトム層611、第2ボトム層612および軸部62の各側面よりも隔壁6の幅方向に突出している。
図4の例においては、第1ボトム層611および第2ボトム層612の幅が軸部62の幅よりも僅かに大きい。他の例として、第1ボトム層611および第2ボトム層612の幅と軸部62の幅が同等であってもよい。
【0056】
ボトム部61は厚さT1を有し、軸部62は厚さT2を有し、トップ部63は厚さT3を有している。
図4の例においては、厚さT2が厚さT1よりも大きく(T1<T2)、厚さT3が厚さT2よりも小さい(T2>T3)。厚さT1,T3は、例えば同等である。ただし、厚さT1,T2,T3の関係は、ここで例示したものに限られない。
【0057】
なお、
図4に示した隔壁6の構成は一例にすぎない。ボトム部61およびトップ部63は、単層構造を有してもよいし、3層以上の積層構造を有してもよい。また、軸部62は、2層以上の積層構造を有してもよい。
【0058】
続いて、隔壁6が
図4に示す構成を有する場合を例に、表示装置DSPの製造方法について説明する。
図5は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6乃至
図18は、それぞれ表示装置DSPの製造方法の一工程を示す概略的な断面図である。
図6乃至
図12においては、基板10、回路層11および絶縁層12を省略している。また、
図13乃至
図18においては、基板10および回路層11を省略している。
【0059】
表示装置DSPの製造においては、先ず基板10の上に回路層11、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR1)。さらに、リブ5および隔壁6が形成される(工程PR2)。
【0060】
工程PR2においては、
図6に示すように、リブ5の基となる絶縁層5aが形成され、絶縁層5aの上にボトム部61の基となる第1層L1が形成され、第1層L1の上に軸部62の基となる第2層L2が形成され、第2層L2の上にトップ部63の基となる第3層L3が形成される。さらに、隔壁6の平面形状にパターニングされたレジストR1が第3層L3の上に形成される。
【0061】
第1層L1は、第1ボトム層611aと、第1ボトム層611aを覆う第2ボトム層612aとを含む。また、第3層L3は、第1トップ層631aと、第1トップ層631aを覆う第2トップ層632aとを含む。
【0062】
続いて、
図7に示す第1エッチング工程により第3層L3がパターニングされる。第1エッチング工程は、第2トップ層632aのうちレジストR1から露出した部分を除去するエッチングと、第1トップ層631aのうちレジストR1から露出した部分を除去するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、第1トップ層631および第2トップ層632を含むトップ部63が形成される。
【0063】
トップ部63の形成の後、第2エッチング工程により第2層L2がパターニングされる。第2エッチング工程においては、先ず
図8に示すように、異方性のエッチングによって第2層L2のうちレジストR1から露出した部分が除去される。さらに、
図9に示すように、等方性のエッチングによって第2層L2の幅が低減される。これにより、トップ部63よりも幅が小さい軸部62が形成される。
【0064】
軸部62の形成の後、
図10に示す第3エッチング工程により第1層L1がパターニングされる。第3エッチング工程は、第2ボトム層612aのうち軸部62から露出した部分を除去するエッチングと、第1ボトム層611aのうち軸部62から露出した部分を除去するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、第1ボトム層611および第2ボトム層612を含むボトム部61が形成される。
【0065】
このように、第1層L1、第2層L2および第3層L3が第1乃至第3エッチング工程によってパターニングされることにより隔壁6が形成される。隔壁6の形成の後、レジストR1が除去される。
【0066】
次に、
図11に示すようにリブ5の平面形状にパターニングされたレジストR2が配置される。さらに、
図12に示すように、絶縁層5aのうちレジストR2から露出した部分がエッチングにより除去される。これにより、画素開口AP1,AP2,AP3を有するリブ5が形成される。当該エッチングの後、レジストR2が除去される。
【0067】
なお、
図6乃至
図12の例においては、隔壁6が形成された後にリブ5の開口AP1,AP2,AP3が形成される場合を示した。他の例として、開口AP1,AP2,AP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。
【0068】
リブ5および隔壁6の形成の後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0069】
表示素子DE1の形成にあたっては、先ず
図13に示すように、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆う有機層OR1、有機層OR1を覆うとともにボトム部61の側面に接触した上電極UE1、上電極UE1を覆うキャップ層CP1が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP1や隔壁6を連続的に覆う封止層SE1がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される(工程PR3)。
【0070】
有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む薄膜FL1は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2,SP3や隔壁6の上にも配置されている。薄膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE1は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL1および隔壁6を連続的に覆っている。
【0071】
工程PR3の後、薄膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR4)。このパターニングにおいては、
図14に示すように、封止層SE1の上にレジストR3が配置される。レジストR3は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0072】
その後、レジストR3をマスクとしたエッチングにより、
図15に示すように薄膜FL1および封止層SE1のうちレジストR3から露出した部分が除去される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。
【0073】
図15に示した工程の後、レジストR3が除去される。これにより、
図16に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2,SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0074】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR4の後、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆う有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、上電極UE2を覆うキャップ層CP2が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP2や隔壁6を連続的に覆う封止層SE2がCVDによって形成される(工程PR5)。
【0075】
有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む薄膜FL2は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP2だけでなく副画素SP1,SP3や隔壁6の上にも配置される。薄膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE2は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL2および隔壁6を連続的に覆う。
【0076】
工程PR5の後、薄膜FL2および封止層SE2がウェットエッチングやドライエッチングによりパターニングされる(工程PR6)。このパターニングの流れは工程PR4と同様である。
【0077】
工程PR6を経ると、
図17に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0078】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、工程PR6の後、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆う有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、上電極UE3を覆うキャップ層CP3が蒸着によって順に形成されるとともに、キャップ層CP3や隔壁6を連続的に覆う封止層SE3がCVDによって形成される(工程PR7)。
【0079】
有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む薄膜FL3は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP3だけでなく副画素SP1,SP2や隔壁6の上にも配置される。薄膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE3は、表示領域DAの全体に対して形成され、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL3および隔壁6を連続的に覆う。
【0080】
工程PR7の後、薄膜FL3および封止層SE3がウェットエッチングやドライエッチングによりパターニングされる(工程PR8)。このパターニングの流れは工程PR4と同様である。
【0081】
工程PR8を経ると、
図18に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子DE3および封止層SE3が形成された基板を得ることができる。
【0082】
表示素子DE1,DE2,DE3および封止層SE1,SE2,SE3が形成された後、
図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR9)。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る表示装置DSPの製造方法においては、蒸着により形成される薄膜FL1,FL2,FL3がオーバーハング状の隔壁6によって分断される。さらに、このように分断された薄膜FL1,FL2,FL3をそれぞれ封止層SE1,SE2,SE3によって覆うことにより、個別に封止された表示素子DE1,DE2,DE3を得ることができる。隔壁6は、上電極UE1,UE2,UE3に給電する配線としての役割も担う。
【0084】
薄膜FL1,FL2,FL3を良好に分断するためには、隔壁6のボトム部61および軸部62の厚さや、軸部62の側面からのトップ部63の突出長さを大きくする必要がある。仮に、ボトム部61および軸部62の全体を導電性の材料で形成し、かつこれらを厚くした場合、隔壁6の抵抗が大幅に低下する。
【0085】
表示装置DSPの使用態様によっては、隔壁6の抵抗の大幅な低下が好ましくない場合がある。
図19は、その一例を示す模式図である。この図において、表示装置DSPは、電子機器100に搭載されている。電子機器100は、例えばスマートフォンなどのモバイル端末や、スマートウォッチなどのウェアラブル端末である。
【0086】
電子機器100は、表示装置DSPの表示面側(
図3に示した樹脂層15の上面側)に配置されたカバー部材CMと、表示装置DSPの裏面側(
図3に示した基板10の下面側)に配置されたアンテナATとを備えている。カバー部材CMは、例えばガラスによって形成されている。アンテナATは、近距離無線通信(NFC)のための電波を送受信する。
【0087】
このような構成の電子機器100を読み取り機200と近距離無線通信させる際、電子機器100は、例えばカバー部材CMが読み取り機200と対向する姿勢で読み取り機200にかざされる。このとき、アンテナATと読み取り機200の間に表示装置DSPが介在する。この場合、隔壁6の抵抗が低すぎると、隔壁6がアンテナATと読み取り機200の通信の感度に影響を及ぼす可能性がある。
【0088】
これに対し、本実施形態における隔壁6は、導電性のボトム部61と、絶縁性の軸部62とを備えている。このような構成においては、隔壁6の全体、あるいは隔壁6のうちトップ部63を除く部分の全体を導電性の材料で形成する場合に比べ、隔壁6の抵抗を上げることができる。結果として、
図19に示す態様で表示装置DSPを用いる場合において、近距離無線通信の感度を良好に保つことが可能となる。
【0089】
なお、隔壁6の抵抗は、
図4に示したボトム部61の厚さT1によって適切な値に調整することができる。すなわち、隔壁6の抵抗を上げるべき場合には厚さT1を小さくすればよい。また、抵抗を下げるべき場合には厚さT1を大きくすればよい。厚さT1の調整により、表示装置DSPに求められる性能に応じた所望の隔壁6の抵抗を実現することが可能である。また、主に軸部62の厚さT2で隔壁6の高さを調整すれば、抵抗とは独立して隔壁6の高さを制御することができる。
【0090】
本実施形態において開示した製造方法において、良好な形状の隔壁6を形成するためには、以下の条件が満たされることが好ましい。
[条件1]
第1層L1が導電性の第1材料からなる層を含み、第2層L2が絶縁性の第2材料からなる層を含み、第3層L3が第3材料からなる層を含む場合において、
図9に示した第2エッチング工程における第3材料のエッチングレートが、当該第2エッチング工程における第2材料のエッチングレートよりも低い。
【0091】
[条件2]
第1層L1が導電性の第1材料からなる層を含み、第2層L2が絶縁性の第2材料からなる層を含み、第3層L3が第3材料からなる層を含む場合において、
図10に示した第3エッチング工程における第3材料のエッチングレートが、当該第3エッチング工程における第1材料のエッチングレートよりも低い。
【0092】
[条件3]
第1層L1が導電性の第1材料からなる層を含み、第2層L2が絶縁性の第2材料からなる層を含み、第3層L3が第1材料からなる層を含む場合において、第3層L3に含まれる第1材料からなる層が、第1層L1に含まれる第1材料からなる層よりも厚く形成されている。
【0093】
条件1を満たすことにより、第2エッチング工程におけるトップ部63の侵食が抑制され、トップ部63の幅を良好に保つことができる。同様に、条件2を満たすことにより、第3エッチング工程におけるトップ部63の侵食が抑制され、トップ部63の幅を良好に保つことができる。これにより、隔壁6のオーバーハング形状が安定する。
【0094】
また、条件3のように第1層L1および第3層L3が同じ第1材料の層を含む場合には、第1層L1を対象とした第3エッチング工程において第3層L3も侵食され得るところ、第3層L3に含まれる第1材料の層が厚く形成されていれば、この層の消失が抑制される。したがって、条件1,2の場合と同じく、隔壁6のオーバーハング形状が安定する。
【0095】
続いて、隔壁6のいくつかの実施例を示す。なお、これらの実施例においては、
図4に示したようにボトム部61が第1ボトム層611および第2ボトム層612を有し、トップ部63が第1トップ層631および第2トップ層632を有し、軸部62が単層構造を有する場合を想定する。隔壁6の構成はこれら実施例に限られず、例えば条件1乃至3の少なくとも1つを満たす種々の構成を適用し得る。
【0096】
[実施例1]
図20は、実施例1に係る隔壁6を示す図である。実施例1においては、第1ボトム層611がモリブデン-タングステン合金によって形成され、第2ボトム層612がアルミニウムによって形成され、軸部62がシリコン窒化物によって形成され、第1トップ層631がチタンによって形成され、第2トップ層632がITOによって形成されている。
【0097】
例えば、第1ボトム層611の厚さは50nmであり、第2ボトム層612の厚さは第1ボトム層611よりも厚い100nmであり、軸部62の厚さは800nmであり、第1トップ層631の厚さは100nmであり、第2トップ層632の厚さは第1トップ層631よりも薄い50nmである。
【0098】
なお、モリブデン-タングステン合金、アルミニウム、チタンおよびITOの成膜には、スパッタリングを用いることができる。また、シリコン窒化物の成膜には、CVDを用いることができる。
【0099】
ITOで形成された第2トップ層632は、例えばシュウ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングによりパターニングされる。チタンで形成された第1トップ層631、シリコン窒化物で形成された軸部62、モリブデン-タングステン合金で形成された第1ボトム層611は、例えばフッ素系のエッチングガスを用いたドライエッチングによりパターニングされる。アルミニウムで形成された第2ボトム層612は、例えばリン酸、硝酸および酢酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングによりパターニングされる。
【0100】
実施例1において、第1ボトム層611を形成するモリブデン-タングステン合金および第2ボトム層612を形成するアルミニウムはそれぞれ第1材料の一例であり、軸部62を形成するシリコン窒化物は第2材料の一例であり、第1トップ層631を形成するチタンは第3材料の一例である。
【0101】
すなわち、シリコン窒化物(第2材料)からなる軸部62を加工するためのドライエッチング(第2エッチング工程)におけるチタン(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるシリコン窒化物(第2材料)のエッチングレートよりも低い。そのため、実施例1は条件1を満たす。
【0102】
また、モリブデン-タングステン合金(第1材料)からなる第1ボトム層611を加工するためのドライエッチング(第3エッチング工程)におけるチタン(第3材料)のエッチングレートは、当該ドライエッチングにおけるモリブデン-タングステン合金(第1材料)のエッチングレートよりも低い。同様に、アルミニウム(第1材料)からなる第2ボトム層612を加工するためのウェットエッチング(第3エッチング工程)におけるチタン(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるアルミニウム(第1材料)のエッチングレートよりも低い。これらのことから、実施例1は条件2を満たす。
【0103】
[実施例2]
図21は、実施例2に係る隔壁6を示す図である。実施例2においては、第1トップ層631がシリコン酸化物によって形成されている。なお、第1トップ層631以外の構成は、実施例1と同様である。
【0104】
第1トップ層631の厚さは、例えば100nmである。シリコン酸化物の成膜には、CVDを用いることができる。また、シリコン酸化物で形成された第1トップ層631は、例えばフッ素系のエッチングガスを用いたドライエッチングによりパターニングされる。
【0105】
実施例2において、第1ボトム層611を形成するモリブデン-タングステン合金および第2ボトム層612を形成するアルミニウムはそれぞれ第1材料の一例であり、軸部62を形成するシリコン窒化物は第2材料の一例であり、第1トップ層631を形成するシリコン酸化物は第3材料の一例である。
【0106】
すなわち、シリコン窒化物(第2材料)からなる軸部62を加工するためのドライエッチング(第2エッチング工程)におけるシリコン酸化物(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるシリコン窒化物(第2材料)のエッチングレートよりも低い。そのため、実施例2は条件1を満たす。
【0107】
また、モリブデン-タングステン合金(第1材料)からなる第1ボトム層611を加工するためのドライエッチング(第3エッチング工程)におけるシリコン酸化物(第3材料)のエッチングレートは、当該ドライエッチングにおけるモリブデン-タングステン合金(第1材料)のエッチングレートよりも低い。同様に、アルミニウム(第1材料)からなる第2ボトム層612を加工するためのウェットエッチング(第3エッチング工程)におけるシリコン酸化物(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるアルミニウム(第1材料)のエッチングレートよりも低い。これらのことから、実施例2は条件2を満たす。
【0108】
[実施例3]
図22は、実施例3に係る隔壁6を示す図である。実施例3においては、第1ボトム層611および第1トップ層631が窒化チタンによって形成されている。なお、第1ボトム層611および第1トップ層631以外の構成は、実施例1と同様である。
【0109】
例えば、第1ボトム層611の厚さは20nmであり、第1トップ層631の厚さは100nmである。窒化チタンの成膜には、スパッタリングを用いることができる。また、窒化チタンで形成された第1ボトム層611および第1トップ層631は、例えばフッ素系のエッチングガスを用いたドライエッチングによりパターニングされる。
【0110】
実施例3において、第2ボトム層612を形成するアルミニウムは第1材料の一例であり、軸部62を形成するシリコン窒化物は第2材料の一例であり、第1トップ層631を形成する窒化チタンは第3材料の一例である。
【0111】
この場合において、シリコン窒化物(第2材料)からなる軸部62を加工するためのドライエッチング(第2エッチング工程)における窒化チタン(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるシリコン窒化物(第2材料)のエッチングレートよりも低い。そのため、実施例3は条件1を満たす。
【0112】
また、アルミニウム(第1材料)からなる第2ボトム層612を加工するためのウェットエッチング(第3エッチング工程)における窒化チタン(第3材料)のエッチングレートは、当該エッチングにおけるアルミニウム(第1材料)のエッチングレートよりも低い。そのため、実施例3は条件2を満たす。
【0113】
さらに、実施例3においては、第1ボトム層611および第1トップ層631を形成する窒化チタンを第1材料とみなすこともできる。この場合においては、第1ボトム層611の厚さが20nmであり、第1トップ層631の厚さが100nmであるため、実施例3は条件3を満たす。
【0114】
なお、
図21に示した実施例2において、シリコン酸化物で形成された第1トップ層631は絶縁性であり、ITOで形成された第2トップ層632は導電性である。すなわち、トップ部63は、導電層と絶縁層の積層構造を有している。
【0115】
このような積層構造としては、実施例2の他にも種々の態様が想定される。例えば、トップ部63の導電層は、アルミニウム、チタン、窒化チタン、モリブデン、モリブデン-タングステン合金、タングステンおよびIZOのいずれかによって形成されてもよい。また、トップ部63の絶縁層は、シリコン窒化物およびシリコン酸窒化物のいずれかによって形成されてもよい。
【0116】
仮にトップ部63が絶縁性の材料のみで形成されている場合、同じく絶縁性の材料で形成された軸部62のエッチングにおいて両者のエッチングレートが近くなる可能性がある。この場合、軸部62のエッチングに際してトップ部63も侵食され、オーバーハング形状を保てなくなる可能性がある。
【0117】
これに対し、トップ部63が導電層と絶縁層の積層構造を有し、この導電層に、軸部62のエッチングに対してエッチング速度の遅い材料を用いれば、軸部62のエッチングに際して絶縁層が侵食されたとしても、導電層によってオーバーハング形状を良好に保つことができる。
【0118】
また、仮にトップ部63が導電性の材料のみで形成されている場合、同じく導電性の材料で形成されたボトム部61のエッチングにおいて両者のエッチングレートが近くなる可能性がある。この場合にも、ボトム部61のエッチングに際してトップ部63も侵食され、オーバーハング形状を保てなくなる可能性がある。
【0119】
これに対し、トップ部63が導電層と絶縁層の積層構造を有し、この絶縁層にボトム部61のエッチングに対してエッチング速度の遅い材料を用いれば、ボトム部61のエッチングに際して導電層が侵食されたとしても、絶縁層によってオーバーハング形状を良好に保つことができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0121】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0122】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0123】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、1…画素回路、5…リブ、6…隔壁、61…ボトム部、62…軸部、63…トップ部。