(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008436
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20240112BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L23/46 A
F28D15/02 M
F28D15/02 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110316
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝典
(72)【発明者】
【氏名】内部 銀二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕地
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA03
5F136CC35
5F136CC40
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】簡素な構造の伝熱面を備え、受熱部内が狭隘な空間においても伝熱性能が低下しない沸騰冷却装置を提供すること。
【解決手段】沸騰冷却装置は、液状の冷媒と、互いに対向する第1部材5と第2部材6とを有し、第1部材5と第2部材6との間の収容室に冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、を備え、第1部材5は、第1基部51と、第1基部51から第2部材6に向かって突出し、収容室を区分する第1凸部52とを有し、第1部材5の内壁面、および第2部材6の内壁面の一方または両方は、冷媒を沸騰させる伝熱面であり、第1凸部52と第2部材6との間の距離は、平面での冷媒の沸騰により生じる気泡の離脱気泡径の2倍以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の冷媒と、
互いに対向する第1部材と第2部材とを有し、前記第1部材と前記第2部材との間の収容室に前記冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、を備え、
前記第1部材は、第1基部と、前記第1基部から前記第2部材に向かって突出し、前記収容室を区分する第1凸部とを有し、
前記第1部材の内壁面、および前記第2部材の内壁面の一方または両方は、前記冷媒を沸騰させる伝熱面であり、
前記第1凸部と前記第2部材との間の距離は、平面での前記冷媒の沸騰により生じる気泡の離脱気泡径の2倍以下である、
ことを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項2】
前記第1基部は、平板状であり、
前記第1凸部は、前記第1基部の表面に平行な長尺状である、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記第1凸部は、前記第2部材に対向する長尺な第1頂面を有し、
前記第1頂面は、前記第1凸部の長手方向に延びる2つの第1縁部を有し、
前記2つの第1縁部の一方は、面取りされている、
請求項1または2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記受熱部は、前記第1凸部を含む複数の第1凸部を有し、
前記複数の第1凸部のそれぞれは、前記第1基部の表面に平行な長尺状であり、
前記複数の第1凸部は、前記第1凸部の長手方向と交差する方向に並ぶ、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記第2部材は、第2基部と、前記第2基部から前記第1部材に向かって突出し、前記第1凸部とともに前記収容室を区分する第2凸部と、を有し、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、互いに対向する、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項6】
前記受熱部は、前記第1凸部を含む複数の第1凸部と、前記第2凸部を含む複数の第2凸部と、を有し、
前記第1基部は、平板状であり、
前記第2基部は、平板状であり、
前記複数の第1凸部のそれぞれは、前記第1基部の表面に平行な長尺状であり、
前記複数の第2凸部のそれぞれは、前記第2基部の表面に平行な長尺状であり、
前記複数の第1凸部は、前記複数の第1凸部の長手方向と交差する所定方向に並び、
前記複数の第2凸部は、前記所定方向に並ぶ、
請求項5に記載の沸騰冷却装置。
【請求項7】
前記第1凸部は、前記第2部材に対向する長尺な第1頂面を有し、
前記第1頂面は、前記第1凸部の長手方向に延びる2つの第1縁部を有し、
前記2つの第1縁部のうちの前記所定方向に位置する一方は、面取りされており、
前記第2凸部は、前記第1部材に対向する長尺な第2頂面を有し、
前記第2頂面は、記第1凸部の長手方向に延びる2つの第2縁部を有し、
前記2つの第2縁部のうちの前記所定方向に位置する一方は、面取りされている、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【請求項8】
前記受熱部は、前記第1凸部を含む複数の第1凸部を有し、
前記複数の第1凸部は、点在している、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒の沸騰に伴う潜熱による熱輸送を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却装置が知られている。当該装置として、例えば特許文献1に記載の沸騰冷却装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の沸騰冷却装置は、外部からの熱を受ける受熱部と、外部に熱を放出する放熱部と、受熱部と放熱部とを接続する流通部と、を有する。また、受熱部には、冷媒に浸漬される沸騰伝熱面を有する伝熱部材が設けられる。この沸騰冷却装置は、発熱体からの熱を沸騰伝熱面で受熱部内の冷媒に伝えることにより、当該冷媒を沸騰させる。
【0004】
また、特許文献1では、内周面が粗面である複数の穴を沸騰伝熱面に設けることにより、発熱体の冷却効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、伝熱性能の更なる向上のために、伝熱面の形状を複雑で微細にすると、長期使用時に異物による閉塞が生じるおそれがある。この結果、伝熱性能が低下するおそれがある。また、複雑で微細な形状の伝熱面を加工することは難しく、コストがかかる。
【0007】
また、沸騰冷却装置の薄型化等に伴い受熱部の内部空間が狭隘になると、当該内部空間に気泡が充満し易くなる。このため、気泡同士が合体し易く、よって、大型な気泡が発生し、伝熱面が伝熱に寄与しない乾いた領域で覆われてしまう。さらに、狭隘な内部空間であると、圧力損失が大きいため、大型な気泡が排出され難い。この結果、伝熱面が乾いた領域で覆われる時間が長くなってしまい、伝熱特性が低下してしまう。
【0008】
したがって、簡素な構造の伝熱面を備え、受熱部内が狭隘な空間においても伝熱性能が低下しない沸騰冷却装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る沸騰冷却装置は、液状の冷媒と、互いに対向する第1部材と第2部材とを有し、前記第1部材と前記第2部材との間の収容室に前記冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、を備え、前記第1部材は、第1基部と、前記第1基部から前記第2部材に向かって突出し、前記収容室を区分する第1凸部とを有し、前記第1部材の内壁面、および前記第2部材の内壁面の一方または両方は、前記冷媒を沸騰させる伝熱面であり、前記第1凸部と前記第2部材との間の距離は、平面での前記冷媒の沸騰により生じる気泡の離脱気泡径の2倍以下である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る沸騰冷却装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す第1部材および第2部材の斜視図である。
【
図5】
図3に示す第1部材および第2部材の断面図である。
【
図12】収容室での気泡の挙動を示す断面図である。
【
図13】収容室での気泡の挙動を示す斜視図である。
【
図14】比較例の伝熱面における気泡の成長を示す図である。
【
図15】比較例の伝熱面における気泡の成長を示す図である。
【
図16】比較例の伝熱面における気泡の成長を示す図である。
【
図17】比較例の伝熱面における気泡の成長を示す図である。
【
図18】第2実施形態の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図19】第1変形例の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図20】第2変形例の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図21】第3変形例の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図22】第3実施形態の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図23】収容室での気泡の挙動を示す断面図である。
【
図24】第4実施形態の第1部材を示す斜視図である。
【
図25】第4実施形態の第1部材および第2部材の断面図である。
【
図28】第1部材および第2部材の配置の一例を示す図である。
【
図29】第1部材および第2部材の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.沸騰冷却装置の概要
図1は、第1実施形態に係る沸騰冷却装置1の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。また、XY平面は、水平面に平行である。また、Z軸は、鉛直線に平行であり、Z1方向が鉛直上方に相当し、Z2方向が鉛直下方に相当する。なお、実空間でのZ軸の向きは、沸騰冷却装置1の設置姿勢に応じて決められる。また、「鉛直線に沿う方向」とは、完全に鉛直線に平行な方向に加え、本明細書に記載の発明を逸脱しない範囲で鉛直線に対して若干傾斜している方向も含む。また、本明細書において「等しい」とは、厳密に等しい場合だけでなく、製造誤差等の範囲内を含む。
【0013】
沸騰冷却装置1は、
図1中に二点鎖線で示す2つの発熱体100を冷却する。各発熱体100は、例えば、ダイオードまたはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。パワー半導体素子は、例えば、鉄道車両、自動車または家庭用電気機械等に搭載されるインバーターまたは整流器等のパワーエレクトロニクス製品に搭載される。なお、発熱体100は、パワー半導体素子に限定されず、冷却を必要とするのであれば、駆動または通電等により発熱する他の電気部品または電子部品でもよい。
【0014】
図1に示す例では、2つの発熱体100は、沸騰冷却装置1を挟むように、Y軸に沿う方向に並んで配置される。各発熱体100は、XZ平面に沿う扁平形状をなす。なお、
図1では、各発熱体100の外形が概略的に示される。各発熱体100の
図1に示す形状は一例であり、適宜所望の形状とすることができる。なお、発熱体100の数は、2個に限定されず、1個でもよいし、3個以上でもよい。3個以上である場合、例えば、沸騰冷却装置のY1方向に2個以上配置されてもよい。
【0015】
図2は、
図1に示す沸騰冷却装置1の断面図である。
図2に示す沸騰冷却装置1は、気化した冷媒REと液化した冷媒REとの密度差を利用したループ型サーモサイフォンの冷却器である。沸騰冷却装置1は、受熱部10と放熱部20と第1管部30と第2管部40とを有する。
【0016】
1―1a.受熱部10
受熱部10は、箱状の容器11を有する。容器11は、冷媒REを収容する収容室S10を内部空間として有する。受熱部10は、発熱体100からの熱によって冷媒REを加熱し、冷媒REを気化せて気相冷媒を生成する。
【0017】
近年、例えば複数の発熱体100および沸騰冷却装置1の配置効率を高める観点から、沸騰冷却装置1の薄型化が図られている。沸騰冷却装置1の薄型化によって、受熱部10の収容室S10は、従来よりも狭隘になっている。
【0018】
図示の例では、容器11は、底板111と天板112と側壁113とを有する。底板111と天板112と側壁113とで囲まれた空間が収容室S10である。また、側壁113は、第1部材5と、第2部材6とを有する。
【0019】
底板111および天板112のそれぞれは、XY平面に沿って広がる平板である。底板111および天板112は、互いに平行となるように配置されており、天板112は、底板111に対してZ1方向に配置される。また、天板112には、第1管部30および第2管部40との接続のための孔が設けられる。底板111と天板112との間には、側壁113が配置される。
【0020】
側壁113は、底板111および天板112の外周同士を全周にわたって連結する。側壁113の外周面には、2つの発熱体100が接触する。
図1に示す例では、側壁113は、角筒であり、4つの平板状の部材で構成される。当該4つの平板状の部材のうち、Y1方向に位置する平板状の部分が、第1部材5である。当該4つの平板状の部材のうち、Y2方向に位置する平板状の部分が、第2部材6である。したがって、第1部材5と第2部材6とは、互いに対向しており、第1部材5と第2部材6との間に収容室S10が位置する。第1部材5は、2つの発熱体100のうちの一方から熱を受ける。第2部材6は、2つの発熱体100のうちの他方から熱を受ける。なお、各発熱体100と容器11との間には、他の部材、または接着剤等が介在していてもよい。
【0021】
第1部材5の内壁面は、伝熱面50である。第2部材6の内壁面は、伝熱面60である。伝熱面50および60のそれぞれは、冷媒REと接触する。伝熱面50および60の各近傍の冷媒REが沸点以上の温度に過熱されることにより、伝熱面50および60のそれぞれに複数の気泡Bが発生する。
【0022】
第1部材5および第2部材6のそれぞれは、熱伝導率に優れる材料により形成される。具体的には、第1部材5および第2部材6の各材料は、例えば、アルミニウムおよび銅等の金属、または当該金属を含む合金等である。また、容器11のうち第1部材5および第2部材6を除く部分の材料は、特に限定されないが、第1部材5および第2部材6の材料と同様に、例えば、アルミニウムおよび銅等の金属、または当該金属を含む合金等である。
【0023】
なお、
図1に示す例では、第1部材5および第2部材6は、容器11の容器の一部であるが、容器11と別体であってもよい。また、第1部材5および第2部材6のそれぞれは、1部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。また、
図1に示す容器11の形状は一例であり、適宜所望の形状とすることができる。また、収容室S10の形状は、四角柱であるが、この形状は一例であり、適宜所望の形状とすることができる。
【0024】
1―1b.放熱部20
図2に示す放熱部20は、受熱部10に対してZ1方向に配置される。放熱部20は、容器21と複数の放熱フィン22とを有する。容器21は、冷媒REを気化した状態から凝縮液化させる凝縮室S20を内部空間として有する。放熱部20では、受熱部10で生成された気相冷媒が凝縮されることにより液相冷媒が生成される。
【0025】
図示の例では、容器21は、底板211と天板212と側壁213とを有する。底板211と天板212と側壁213とで囲まれた空間が凝縮室S20である。
【0026】
底板211および天板212のそれぞれは、XY平面に沿って広がる平板である。底板211および天板212は、互いに平行となるように配置されており、底板211は、天板212に対してZ2方向に配置される。また、底板211には、第1管部30および第2管部40との接続のための孔が設けられる。底板211と天板212との間には、側壁213が配置される。側壁213は、底板211および天板212の外周同士を全周にわたって連結する。なお、
図1に示す容器21の形状は一例であり、適宜所望の形状とすることができる。また、側壁213は円筒状であり、凝縮室S20は円柱状であるが、これらの形状は一例であり、適宜所望の形状とすることができる。
【0027】
容器21は、熱伝導性に優れる材料により形成される。容器21の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。
【0028】
各放熱フィン22は、容器21に熱的に接続される。各放熱フィン22は、平板状の部材である。複数の放熱フィン22は、互いに厚さ方向に離間している。各放熱フィン22は、熱伝導性に優れる材料により形成される。放熱フィン22の材料は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料である。また、各放熱フィン22には、容器21を挿入するための孔が設けられる。放熱フィン22は、例えば、容器21に対して拡管、圧入、接着剤、ネジ止め、ロウ付けまたは溶接等により固定される。なお、各放熱フィン22と容器21との間には、他の部材、または接着剤等が介在していてもよい。
【0029】
また、放熱フィン22の形状は、
図1に示す例に限定されず、適宜所望の形状とすることができる。また、放熱フィン22は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。ただし、放熱部20が複数の放熱フィン22を有することにより、気相冷媒を効率的に凝縮液化させることができる。
【0030】
1―1c.第1管部30
第1管部30は、受熱部10および放熱部20のそれぞれに接続される直線状の蒸気管である。第1管部30は、第1流路S30を内部空間として有する。第1流路S30は、受熱部10で冷媒REが気化されることにより生成された気相冷媒を放熱部20に輸送する。図示の例では、第1管部30の一端は、収容室S10内の冷媒REに接触しておらず、第1管部30の他端は、底板211から凝縮室S20内に突出している。また、第1流路S30の幅は一定であり、第1流路S30の断面積は一定であるが、これらは一定でなくてもよい。また、第1流路S30の横断面の形状は、円形であるが、これは一例であり、適宜所望の形状とすることができる。
【0031】
第1管部30の材料は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料である。なお、第1管部30の材料は、金属材料に限定されず、例えば、セラミックス材料または樹脂材料等でもよい。また、第1管部30は、天板112および底板211に対してロウ付け等により固定される。
【0032】
1―1d.第2管部40
第2管部40は、受熱部10および放熱部20のそれぞれに接続される直線状の液管である。第2管部40は、第2流路S40を内部空間として有する。第2流路S40は、放熱部20で気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を受熱部10に輸送する。第2管部40の一端は、凝縮室S20内に露出しておらず、第2管部40の他端は、収容室S10内に露出しており、かつ冷媒REに接触している。また、第2流路S40の幅は一定であり、第2流路S40の断面積は一定であるが、これらは一定でなくてもよい。また、第2流路S40の横断面の形状は、円形であるが、これは一例であり、適宜所望の形状とすることができる。
【0033】
第2管部40の材料は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料である。なお、第2管部40の材料は、金属材料に限定されず、例えば、セラミックス材料または樹脂材料等でもよい。また、第2管部40は、天板112および底板211に対してロウ付け等により固定される。
【0034】
かかる沸騰冷却装置1では、2つの発熱体100の熱が第1部材5または第2部材6を介して容器11内の冷媒REに伝わることにより、冷媒REが伝熱面50および60の近傍で沸騰する。この結果、伝熱面50および60には、気泡Bが発生する。発生した気泡Bは、浮力により伝熱面50および60から離脱した後、冷媒REの液面よりも上方で気体状の冷媒REとなる。当該気体状の冷媒REは、受熱部10から第1管部30を介して放熱部20に輸送される。放熱部20に輸送された気体状の冷媒REは、放熱部20で凝縮されることにより液状の冷媒REに戻る。当該液状の冷媒REは、放熱部20から第2管部40を介して受熱部10に輸送される。
【0035】
沸騰冷却装置1では、伝熱面50および60の近傍の冷媒REの相変化により、2つの発熱体100を冷却させることができる。また、冷媒REの受熱部10での気化と放熱部20での液化とが繰り返されることにより、発熱体100を継続的かつ安定的に冷却することができる。
【0036】
なお、沸騰冷却装置1は、
図1に示す構成に限定されず、例えば、受熱部10、放熱部20、第1管部30および第2管部40が一体で構成されるサーモサイフォンであってもよい。また、沸騰冷却装置1は、プール沸騰式でもよいし、冷媒REの流れを強制的に生じさせる強制対流沸騰式であってもよい。強制対流沸騰式である場合、例えば、第1管部30に、図示しないポンプが接続される。
【0037】
1-2.冷媒RE
冷媒REは、溶媒と界面活性剤とを含む。溶媒は、冷媒REの主成分であり、典型的には所定圧力のもと常温で液状となる媒体である。当該溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノールまたはエタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類、フロリナート等のフッ化炭素類、HFC134a等のフロン類、およびブタン等の炭化水素類が挙げられる。これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を混合液等の態様で組み合わせて用いることができる。
【0038】
界面活性剤は、例えば気泡B同士の合体の抑制ために用いられる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤でもよいし、陰イオン界面活性剤または陽イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤でもよい。陰イオン界面活性剤または陽イオン界面活性剤を用いることで、例えば界面活性剤のクーロン力に基づく反発力によって、気泡B同士の合体が抑制される。また、非イオン性界面活性剤を用いることで、例えば非イオン性界面活性剤の立体障害によって、気泡B同士の合体が抑制される。
【0039】
界面活性剤の具体例としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、および炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。冷媒REに含まれる溶媒が水である場合、水に対する溶解性に優れる炭化水素系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0040】
冷媒REが界面活性剤を含むことにより、冷媒REの表面張力γを小さくすることができる。このため、気泡Bの内外の圧力差Δpおよび過熱度ΔTを小さくすることができる。この結果、気泡Bが成長し易くなる。また、冷媒REの表面張力が小さくなることにより、伝熱面50および60に対する気泡Bの付着力を小さくすることができる。このため、気泡Bが伝熱面50および60から離脱するための浮力が小さくて済むので、伝熱面50および60からの離脱時の気泡Bの径を小さくすることができる。
【0041】
また、前述のように、冷媒REが界面活性剤を含むことにより、隣り合う気泡B同士の合体が抑制される。このため、伝熱面50および60で発生した各気泡Bが小さな径のまま離脱し易くなる。この結果、気泡Bの発生周期を短くすることができる。すなわち、単位時間あたりの気泡Bの発生数を多くすることができる。さらに、隣り合う気泡B同士の合体が抑制されることで、1個あたりの気泡Bに接する伝熱面50および60の面積の大型化を抑制することができる。このため、伝熱に寄与しない乾いた領域で伝熱面50および60が長時間覆われることが抑制される。よって、界面活性剤を含むことにより、含まない場合に比べ、伝熱面50および60の伝熱特性の向上を図ることができる。それゆえ、沸騰冷却装置1の冷却性能を向上させることができる。
【0042】
なお、界面活性剤は省略してもよい。また、冷媒REは、溶媒および界面活性剤以外の添加剤等の物質を含んでもよい。ただし、この場合、当該物質は、冷媒REの作用に悪影響を与えない範囲内の含有率で冷媒REに含まれる。
【0043】
1-3.第1部材5および第2部材6
図3は、
図1に示す第1部材5および第2部材6の斜視図である。
図4は、
図3に示す第1部材5の斜視図である。
【0044】
図3に示すように、第1部材5および第2部材6が、互いに対向し、互いに離間している。各第1部材5は、Z軸に沿って配置される。同様に、各第2部材6は、Z軸に沿って配置される。伝熱面50は、第1部材5の第2部材6に対向する面である。伝熱面60は、第2部材6の第1部材5に対向する面である。伝熱面50および60のそれぞれは、Z軸に沿って配置される。伝熱面50および60のそれぞれは、Z軸に沿った長尺な複数の凹凸を有する。
【0045】
図3および4に示すように、第1部材5は、第1基部51と、複数の第1凸部52とを有する。第1基部51は、XY平面に沿った平板状である。各第1凸部52は、第1基部51から第2部材6に向かってY2方向に突出している。各第1凸部52は、第1基部51の表面に平行な長尺状である。特に、図示の例では、各第1凸部52の長手方向は、Z軸に沿った方向に平行である。複数の第1凸部52は、互いに離間し、等ピッチで配置される。複数の第1凸部52は、各第1凸部52の長手方向に交差する「所定方向」であるX2方向に並ぶ。
【0046】
同様に、第2部材6は、第2基部61と、複数の第2凸部62とを有する。第2基部61は、XY平面に沿った平板状である。各第2凸部62は、第2基部61から第1部材5に向かってY1方向に突出している。各第2凸部62は、第2基部61の表面に平行な長尺状である。特に、図示の例では、各第2凸部62の長手方向は、Z軸に沿った方向に平行である。複数の第2凸部62は、互いに離間し、等ピッチで配置される。複数の第2凸部62は、「所定方向」であるX2方向に並ぶ。また、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62は、1対1で対向し、互いに離間する。
【0047】
なお、図示の例では、第1凸部52の数は、4であるが、1以上3以下でもよいし、5以上であってもよい。同様に、第2凸部62の数は、4であるが、1以上3以下でもよいし、5以上であってもよい。ただし、本実施形態では、第1凸部52と第2凸部62とが1対1で対向しているため、第1凸部52の数と第2凸部62の数とは、互いに等しい。
【0048】
図5は、
図3に示す第1部材5および第2部材6の断面図である。
図5に示すように、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62は、互いに対向しており、収容室S10を区分している。具体的には、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62によって、収容室S10は、複数の第1空間V1と複数の第2空間V2とに区分される。
【0049】
各第1空間V1は、1つの第1凸部52と1つの第2凸部62との間に位置する。各第1空間V1は、Z軸に沿った長尺な空間である。複数の第1空間V1は、互いに離間し、X2方向に並ぶ。また、各第2空間V2は、2つの第1空間V1の間に位置する。各第2空間V2は、Z軸に沿った長尺な空間である。複数の第1空間V1と複数の第2空間V2とは、X2方向に交互に並ぶ。また、各第2空間V2の容積は、各第1空間V1の容積よりも非常に小さい。したがって、複数の第1部材5および複数の第2部材6は、非常に狭隘な第1空間V1と、第1空間V1よりも広域な第2空間V2とに、収容室S10を区分している。
【0050】
また、伝熱面50は、複数の第1頂面501、複数の第1側面502および複数の接続面503を有する。複数の第1頂面501および複数の第1側面502は、複数の第1凸部52に属する面である。具体的には、各第1凸部52は、1つの第1頂面501と、2つの第1側面502とを有する。各第1頂面501は、第2部材6に対向する。各第1頂面501は、Z軸に沿って延び、ZX平面に平行である。また、第1頂面501は、第1凸部52の長手方向に延びる2つの第1縁部504を有する。また、各第1側面502は、Z軸に沿って延び、YZ平面に平行である。各第1側面502は、第1頂面501と接続面503とを接続する。複数の接続面503は、第1基部51に属する面であり、隣り合う2つの第1凸部52の間に位置する。
【0051】
同様に、伝熱面60は、複数の第2頂面601、複数の第2側面602および複数の接続面603を有する。複数の第2頂面601および複数の第2側面602は、複数の第2凸部62に属する面である。具体的には、各第2凸部62は、1つの第2頂面601と、2つの第2側面602とを有する。各第2頂面601は、第1部材5に対向する。各第2頂面601は、Z軸に沿って延び、ZX平面に平行である。また、第2頂面601は、第2凸部62の長手方向に延びる2つの第2縁部604を有する。また、各第2側面602は、Z軸に沿って延び、YZ平面に平行である。各第2側面602は、第2頂面601と接続面603とを接続する。複数の接続面603は、第2基部61に属する面であり、隣り合う2つの第2凸部62の間に位置する。
【0052】
第1凸部52の幅W51と、第2凸部62の幅W61とは、互いに等しい。また、隣り合う2つの第1凸部52の間の距離W52、隣り合う2つの第2凸部62の間の距離W62とは、互いに等しい。なお、図示の例では、幅W51は、幅W52よりも大きいが、幅W51は、幅W52以下でもよい。また、幅W61は、幅W62よりも大きいが、幅W61は、幅W62以下でもよい。また、幅W51とW61とは互いに異なっていてもよい。距離W52とW62とは互いに異なっていてもよい。
【0053】
また、複数の第1凸部52のピッチと複数の第2凸部62のピッチは、互いに等しい。当該ピッチは、中心間距離である。なお、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62は、互いに対向していればよく、等ピッチでなくてもよい。また、第1凸部52の高さH51と第2凸部62の高さH61とは、互いに等しい。なお、高さH51とH61とは互いに異なっていてもよい。
【0054】
また、第1凸部52と第2凸部62との間の距離L1は、第1基部51と第2基部61との間の距離L2よりも非常に小さい。また、距離L1は、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseの2倍以下である。なお、距離L1は、第1凸部52と第2部材6との間の距離とも捉えられる。
【0055】
離脱気泡径Dbaseは、伝熱面50または60から離脱する際における気泡Bの直径である。離脱気泡径Dbaseは、例えば、減圧場での純水に対するCole and Rohsenowの式を用いた計算により求められる。当該式は、以下の式(1)で表される。
Dbase=1.5×10-4√(σ/g(ρL-ρV))×Ja5/4 ・・・(1)
Ja=ρLcPLTsat/ρVhfg
Tsatは飽和温度であり、σは表面張力であり、ρLは液密度であり、ρVは蒸気密度であり、cPLは液比熱であり、hfgは蒸発腺熱であり、gは重力加速度である。
【0056】
例えば、圧力50kPaでの純水の離脱気泡径Dbaseを求める場合、
飽和温度Tsat:355[K]
表面張力σ:62.4[mN/m]
液密度ρL:971[kg/m3]
蒸気密度ρV:0.309[kg/m3]
液比熱cPL:4.20[kJ/kg・K]
蒸発潜熱hfg:2305[kJ/kg]
重力加速度g=9.81[m/s2]
であり、式(1)を用いて計算すると、離脱気泡径Dbaseは、5.24[mm]である。
【0057】
なお、前述のように、冷媒REへの界面活性剤の添加により冷媒REの表面張力が低下する。このため、例えば、表面張力σを26.5[mN/m]とすると、離脱気泡径Dbaseは、3.41[mm]となる。
【0058】
また、離脱気泡径Dbaseは、例えば、カメラ等の撮像装置を用いて計測してもよい。この場合、離脱気泡径Dbaseは、冷媒REに強制対流が生じていない状態で計測される。
【0059】
3-2.気泡の挙動
図6、7および8のそれぞれは、気泡Bの成長を説明するための図である。気泡Bは、発熱体100の熱を受け、例えば、第1頂面501および第2頂面601で発生する。
【0060】
図6に示すように、第1頂面501で発生した気泡B1が成長すると、気泡B1と第1頂面501との間には、ミクロ液膜F1が形成される。同様に、第2頂面601で発生した気泡B2が成長すると、気泡B2と第2頂面601との間には、ミクロ液膜F2が形成される。
【0061】
図7に示すように、気泡B1がさらに成長して気泡B1の半径が増大すると、気泡B1と第1頂面501との間には、伝熱に寄与しない乾いた領域S1が形成される。同様に、気泡B2がさらに成長して気泡B2の半径が増大すると、気泡B2と第2頂面601との間には、伝熱に寄与しない乾いた領域S2が形成される。
【0062】
図8に示すように、気泡B1およびB2のそれぞれがさらに成長すると、気泡B1と気泡B2とが合体し、大型な気泡B0が形成される。前述のように、距離L1は、離脱気泡径D
baseの2倍以下であるため、第1空間V1は、第2空間V2に比べ非常に狭隘である。このため、第2空間V2に比べて、第1空間V1では、気泡B1およびB2同士は接触して合体し易い。気泡B0は、第1頂面501およびと第2頂面601に接触している。気泡B0と第1頂面501との間には、ミクロ液膜F1および乾いた領域S1が存在し、気泡B0と第2頂面601との間には、ミクロ液膜F2および乾いた領域S2が存在する。
【0063】
図9、10および11のそれぞれは、気泡B0の離脱を説明するための図である。
図9および10に示すように、気泡B0が成長すると、気泡B0は、第1空間V1から第2空間V2に流出しようとする。気泡B0の第1空間V1から第2空間V2に流出しようとする過程で、乾いた領域S1およびS2は消失し、ミクロ液膜F1およびF2のみが存在する。よって、第1頂面501および第2頂面601は、乾いた領域S1およびS2で長期間覆われない。そして、
図11に示すように、気泡B0は、第1空間V1から第2空間V2に排出される。
【0064】
前述のように、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62は1対1で対向配置される。また、各第1凸部52とこれに対向する第2凸部62との間の距離L1は、離脱気泡径Dbaseの2倍以下である。そして、第1凸部52と第2凸部62とは、収容室S10を狭隘な第1空間V1と広域な第2空間V2とに区分している。このため、狭隘な第1空間V1と広域な第2空間V2とを隣接させることができる。広域な第2空間V2は、狭隘な第1空間V1に比べて圧力損失が小さい。よって、第1空間V1の気泡B0は隣接する第2空間V2へ容易に排出され易い。それゆえ、気泡B1およびB2が合体して大型な気泡B0が形成されても、当該気泡B0がすぐに第2空間V2へと排出される。別の言い方をすれば、気泡B1およびB2を意図的に合体させることで、第1空間V1に存在する気泡Bの第2空間V2への円滑な排出を促進させている。このため、第1頂面501および第2頂面601が乾いた領域S1およびS2に覆われる期間を短くすることができる。よって、収容室S10が従来よりも狭隘な空間であっても、伝熱性能の低下の抑制、または伝熱性能の向上を図ることができる。
【0065】
このように、距離L1が離脱気泡径Dbaseの2倍以下であることで、気泡B1およびB2の合体、および気泡B0の第2空間V2への円滑な排出を促進させることができる。これに対して、距離L1が離脱気泡径Dbaseの2倍を超えると、気泡B1およびB2同士が合体し難く、よって、第1空間V1が多数の気泡B1およびB2で充満し易くなってしまう。この結果、伝熱性能が低下してしまう。なお、第1凸部52および第2凸部62は、互いに離間していればよい。よって、距離L2は、0<L1<離脱気泡径Dbase×2の関係を満たす。
【0066】
また、伝熱面50および60は、長尺な凹凸を備えた簡素な構造である。複雑で微細な構造では、異物の閉塞により伝熱性能が低下するおそれがある。これに対し、伝熱面50および60は長尺な凹凸を備えた簡素な構造であるため、異物による閉塞のおそれがない。また、簡素な構造であるため、コストの増大を抑制することができる。したがって、伝熱面50および60であれば、簡単な構成で、長期にわたって伝熱特性の向上を図ることができる。
【0067】
図12は、収容室S10での気泡Bの挙動を示す断面図である。
図13は、収容室S10での気泡Bの挙動を示す斜視図である。
図12に示すように、複数の第1頂面501および複数の第2頂面601に加え、複数の接続面503および複数の各接続面603で気泡B5が発生する。また、
図13に示すように、第1空間V1に存在する気泡B5は、鉛直線に沿って浮力により上昇する。よって、気泡B5は、矢印A1に示すように上昇し、第1部材5と第2部材6との間から排出される。
【0068】
また、前述のように、第2空間V2の気泡B0は、第1空間V1から第2空間V2に排出される。よって、気泡B0は、矢印A2に示すように第2空間V2から第1空間V1に移動する。そして、気泡B0は、第1空間V1において、鉛直線に沿って浮力により上昇する。よって、気泡B0は、矢印A3に示すように上昇し、第1部材5と第2部材6との間から排出される。
【0069】
前述のように、各第1凸部52は長尺状であり、同様に、各第2凸部62は長尺状である。各第1凸部52および各第2凸部62が長尺であることで、第1空間V1において、気泡B0およびB5を第1凸部52および第2凸部62に沿って移動させ易い。したがって、第1凸部52および第2凸部62の各長手方向を気泡Bの排出方向と一致させることで、気泡Bを排出させ易くすることができる。別の言い方をすると、第1凸部52および第2凸部62の並び方向を気泡Bの排出方向と交差する方向にすることで、気泡Bを排出させ易くすることができる。具体的には、本実施形態では、第1部材5および第2部材6が鉛直線に沿って配置される場合、各第1凸部52および各第2凸部62の各長手方向を鉛直線に沿って配置することで、鉛直上方への気泡B0およびB5を排出し易くなる。
【0070】
また、複数の第1凸部52および複数の第2凸部62を有することで、第1凸部52および第2凸部62がそれぞれ1つである場合に比べ、収容室S10を複数の空間に区分することができる。複数の空間に区分することで、
図5に示す幅W51およびW61を短くすることができるので、第1空間V1から第2空間V2に気泡B0を排出し易くなる。よって、伝熱性能の向上を図ることができる。
【0071】
また、前述のように、距離L1が離脱気泡径Dbaseの2倍以下であることで、気泡B1およびB2の合体、および気泡B0の第2空間V2への円滑な排出を促進させることができる。したがって、距離L1は、離脱気泡径Dbaseの2倍以下であればよいが、離脱気泡径Dbaseの1.8倍以下であることがより好ましく、離脱気泡径Dbaseの1.5倍以下であることがさらに好ましい。距離L1が小さくなることで、気泡B1およびB2の合体、および気泡B0の第2空間V2への円滑な排出をより促進させることができる。
【0072】
また、距離L2は、特に限定されないが、距離L1の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが好ましい。距離L2が大きくなることで、第2空間V2での気泡B0の充満を抑制することができる。
【0073】
また、第1空間V1の容積は、第2空間V2の容積の10倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。第1空間V1の容積が第2空間V2よりも非常に小さいことで、第2空間V2の圧力損失を第1空間V1の圧力損失に比べて非常に小さくすることができる。よって、気泡B0の第2空間V2への円滑な排出をより促進させることができる。
【0074】
また、気泡B1およびB2の合体、および気泡B0の第2空間V2への円滑な排出を促進する観点から、幅W51およびW61のそれぞれは、特に限定されないが、離脱気泡径Dbaseの2倍以上10倍以下であることが好ましい。また、第2空間V2での気泡B0の充満を抑制する観点から、幅W52およびW62のそれぞれは、特に限定されないが、離脱気泡径Dbaseの5倍以上10倍以下であることが好ましい。
【0075】
図14、15、16および
図17のそれぞれは、比較例の容器11xが有する伝熱面50xおよび60xにおける気泡Bの成長を示す図である。
図14に示すように、伝熱面50xおよび60xは、凹凸を有さない。このため、伝熱面50xおよび60xとの間の距離は一定である。したがって、比較例としての容器11xが有する収容室S10xのY軸に沿った長さは一様である。また、収容室S10xは、配置効率を高める観点等から、従来よりも狭隘な空間を想定している。
【0076】
図14に示すように、収容室S10xでは、伝熱面50x上には複数の気泡B1が発生し、伝熱面60x上には複数の気泡B2が発生する。気泡B1が成長すると、気泡B1と伝熱面50xとの間には、ミクロ液膜F1に加え、伝熱に寄与しない乾いた領域S1が形成される。同様に、気泡B2が成長すると、気泡B2と伝熱面60xとの間には、ミクロ液膜F2に加え、伝熱に寄与しない乾いた領域S2が形成される。
【0077】
図15に示すように、気泡B1と気泡B2とがそれぞれ成長すると、気泡B1と気泡B2とが合体し、気泡B0が形成される。その後、他の気泡B1およびB2が成長すると、当該他の気泡B1およびB2は、気泡B0に接触して合体する。その結果、
図16に示すように、気泡B0は、さらに巨大化する。そして、ミクロ液膜F1およびF2のそれぞれは蒸発損耗し、乾いた領域S1およびS2が時間経過とともに拡大していく。この結果、
図17に示すように、伝熱面50xは、伝熱に寄与しない乾いた領域S1に覆われ、伝熱面60xは、伝熱に寄与しない乾いた領域S2に覆われる。
【0078】
さらに、従来よりも狭隘な収容室S10xであるため、狭隘な収容室S10x内は圧力損失が大きい。このため、気泡B0は狭隘な収容室S10xの外部へ排出され難く、よって、伝熱面50x上および60x上に気泡B0が滞在する期間が長期化する。この結果、伝熱面50xが伝熱に寄与しない乾いた領域S1によって覆われる期間、および伝熱面60xが伝熱に寄与しない乾いた領域S2によって覆われる期間が増加する。したがって、伝熱性能が低下してしまう。このように、収容室S10xが従来よりも狭隘であると、気泡Bが排出され難く、よって、伝熱性能が低下してしまう。
【0079】
これに対し、本実施形態では、
図5に示すように、伝熱面50および60は、凹凸を有する。このため、収容室S10は、収容室S10xと同様に狭隘な空間であるものの、収容室S10xとは異なり、互いに容積の異なる第1空間V1および第2空間V2とを有する。このため、本実施形態の凹凸を有する伝熱面50および60の間に形成された収容室S10であれば、前述のように、気泡Bを収容室S10から円滑に排出することができる。よって、収容室S10は従来よりも狭隘であっても、伝熱性能の低下の抑制、または伝熱性能の向上を図ることができる。よって、配置効率を高める観点等から収容室S10が従来よりも狭隘な空間になっても、伝熱性能の低下の抑制、または伝熱性能の向上を図ることができる。
【0080】
なお、前述の各第1頂面501、各第1側面502および各接続面503は、平坦面であるが、これに限定されず、凹凸または曲面を有していてもよい。
【0081】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の第1実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0082】
図18は、第2実施形態の第1部材5Aおよび第2部材6Aの断面図である。
図18に示すように、第1部材5Aの第1凸部52Aが有する第1頂面501Aは、2つの第1縁部504および504Aを有する。第1縁部504および504Aは、Z軸に沿って延びる。2つの第1縁部504および504Aのうちの一方の第1縁部504Aは、面取りされている。具体的には、第1縁部504Aは、R面取りされており、丸みを帯びている。同様に、第2部材6Aの第2凸部62Aが有する第2頂面601Aは、2つの第2縁部604および604Aを有する。第2縁部604および604Aは、Z軸に沿って延びる。2つの第2縁部604および604Aのうちの一方の第2縁部604Aは、面取りされている。具体的には、第2縁部604Aは、R面取りされており、丸みを帯びている。
【0083】
第1縁部504Aおよび第2縁部604Aのそれぞれが面取りされていることで、第1凸部52Aと第2凸部62Aとの間には、距離L1が第2空間V2に向かう方向に大きくなる部分がある。このため、第1縁部504Aおよび第2縁部604Aに沿って、第1空間V1の気泡B0を第2空間V2に排出し易くなる。
【0084】
また、第1縁部504Aは、第1縁部504に対して「所定方向」であるX2方向に位置し、第2縁部604Aは、第2縁部604に対して「所定方向」であるX2方向に位置する。したがって、第1縁部504Aおよび第2縁部604Aは、同一方向に位置している。このため、第1空間V1に対してX2方向に位置する第2空間V2に気泡B0を排出し易くなる。
【0085】
そして、複数の第1頂面502Aが有する第1縁部504Aが、全て同一方向に位置している。同様に、複数の第2頂面602Aが有する第2縁部604Aが、全て同一方向に位置している。このため、各第1空間V1の気泡B0は、同一方向に排出され易い。よって、1つの第2空間V2での気泡B0同士の衝突を低減することができる。よって、気泡B0を第1空間V1から第2空間V2を経由して収容室S10の外部へと円滑に排出させることができる。
【0086】
2A.変形例
前述の第2実施形態は、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0087】
2A―1.第1変形例
図19は、第1変形例の第1部材5Aaおよび第2部材6Aaの断面図である。
図19に示すように、第1部材5Aaの第1凸部52Aaが有する第1頂面501Aaは、2つの第1縁部504および504Aaを有する。2つの第1縁部504および504Aaのうちの一方の第1縁部504Aaは、面取りされている。具体的には、第1縁部504Aaは、C面取りされており、第1頂面501Aaのうちの第1縁部504Aaを除く部分に対して傾斜している。また、第1縁部504Aaは、第1縁部504に対してX2方向に位置する。
【0088】
同様に、第2部材6Aaの第2凸部62Aaが有する第2頂面601Aaは、2つの第2縁部604および604Aaを有する。2つの第2縁部604および604Aaのうちの一方の第2縁部604Aaは、面取りされている。具体的には、第2縁部604Aaは、C面取りされており、第2頂面601Aaのうちの第2縁部604Aaを除く部分に対して傾斜している。また、第2縁部604Aaは、第2縁部604に対してX2方向に位置する。したがって、第1縁部504Aaおよび第2縁部604Aaは、同一方向に位置している。
【0089】
第1縁部504Aaおよび第2縁部604Aaが設けられていることで、前述の第2実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0090】
2A―2.第2変形例
図20は、第2変形例の第1部材5Abおよび第2部材6Abの断面図である。
図20に示すように、第1部材5Abの第1凸部52Abが有する第1頂面501Abは、2つの第1縁部504Aを有する。2つの第1縁部504Aのそれぞれは、R面取りされており、丸みを帯びている。同様に、第2部材6Abの第2凸部62Abが有する第2頂面601Abは、2つの第2縁部604Aを有する。2つの第2縁部604Aのそれぞれは、R面取りされており、丸みを帯びている。かかる第2変形例においても第2実施形態と同様に、第1空間V1の気泡B0を第2空間V2に排出し易くなる。
【0091】
2A―3.第3変形例
図21は、第3変形例の第1部材5Acおよび第2部材6Acの断面図である。
図21に示すように、第1部材5Acの第1凸部52Acが有する第1頂面501Acは、2つの第1縁部504Aaを有する。2つの第1縁部504Aaのそれぞれは、C面取りされており、第1頂面501Acのうちの第1縁部504Aaを除く部分に対して傾斜している。同様に、第2部材6Acの第2凸部62Acが有する第2頂面601Acは、2つの第2縁部604Aaを有する。2つの第2縁部604Aaのそれぞれは、C面取りされており、第2頂面601Acのうちの第2縁部564Aaを除く部分に対して傾斜している。かかる第3変形例においても第1変形例と同様に、第1空間V1の気泡B0を第2空間V2に排出し易くなる。
【0092】
3.第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の第1実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0093】
3-1.第1部材5および第2部材6B
図22は、第3実施形態の第1部材5および第2部材6Bの断面図である。
図22に示すように、第2部材6Bは、平板状である。第2部材6Bは、第1部材5に対向配置される。第2部材6Bの第1部材5に対向する面は、冷媒を沸騰させる伝熱面60Bである。なお、第2部材6Aは、第1部材5と同様に、Z軸に沿って配置される。
【0094】
第1部材5の複数の第1凸部52は、収容室S10を区分する。具体的には、複数の第1凸部52によって、収容室S10は、複数の第1空間V1Bと複数の第2空間V2Bとに区分される。第1空間V1Bは、第1凸部52と第2部材6Aとの間の空間である。第2空間V2Bは、接続面503と第2部材6Bとの間の空間である。第1空間V1Bおよび第2空間V2BのそれぞれはZ軸に沿った長尺な空間である。複数の第1空間V1Bと複数の第2空間V2Bとは、X軸に沿って交互に並ぶ。また、各第1空間V1Bの容積は、各第2空間V2Bの容積よりも非常に小さい。したがって、複数の第1部材5は、非常に狭隘な第1空間V1Bと、第1空間V1Bよりも広域な第2空間V2Bとに、収容室S10を区分している。
【0095】
第1凸部52と第2部材6Aとの間の距離L1は、第1基部51と第2部材6Aとの間の距離L2よりも非常に小さい。また、距離L1は、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseの2倍以下である。
【0096】
2-2.気泡Bの挙動
図23は、収容室S10での気泡Bの挙動を示す断面図である。
図23に示すように、第1空間V1Bは、第2空間V2Bよりも非常に狭隘である。したがって、第1実施形態と同様に、第1空間V1Bでは、気泡B0が形成される。なお、気泡B0と第1頂面501との間には、ミクロ液膜F1および乾いた領域S1が存在し、気泡B0と伝熱面60Bの間には、ミクロ液膜F2および乾いた領域S2が存在する。また、第1実施形態と同様に、気泡B0が成長すると、気泡B0は、第1空間V1Bから第2空間V2Bに排出される。また、第1実施形態と同様に、第2空間V2では、各接続面503で気泡B5が発生する。
【0097】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第2空間V2Bで発生した気泡B5は、第2空間V2Bにおいて鉛直線に沿って浮力により上昇し、第1部材5と第2部材6Bとの間から排出される。一方、第1空間V1Bで発生した気泡B0は、第1空間V1Bよりも圧力損失の小さい第2空間V2Bに排出される。よって、気泡B0は、第1空間V1Bから第2空間V2Bに移動した後、第2空間V2Bにおいて鉛直線に沿って浮力により上昇する。そして、第1部材5と第2部材6Bとの間から排出される。
【0098】
前述のように、本実施形態では、第2部材6Bは平板状であるが、第1部材5は複数の第1凸部52と有する。また、第2部材6Bと各第1凸部52との間の距離L1は、離脱気泡径Dbaseの2倍以下であり、第1空間V1Bは、第2空間V2Bに比べて狭隘である。そして、第1凸部52は、収容室S10を狭隘な第1空間V1Bと広域な第2空間V2Bとに区分している。このため、収容室S10では狭隘な第1空間V1Bと広域な第2空間V2Bとを隣接させることができる。広域な第2空間V2Bは、狭隘な第1空間V1Bに比べて圧力損失が小さい。このため、気泡B0は第1空間V1Bから第2空間V2Bへ容易に排出され易い。よって、第1頂面501および伝熱面60Bが長期間乾いた領域S1およびS2で覆われることが抑制される。それゆえ、従来よりも狭隘な収容室S10であっても、伝熱性能の低下の抑制、または伝熱性能の向上を図ることができる。
【0099】
また、前述のように、伝熱面50は、長尺な凹凸を有するという簡素な構造であり、伝熱面60Bは平坦面という簡素な構造である。複雑で微細な構造では、異物の閉塞により伝熱性能が低下するおそれがあるが、伝熱面50および60Bは簡素な構造であるため、異物による閉塞のおそれがない。また、簡素な構造であるため、コストの増大を抑制することができる。それゆえ、伝熱面50および60Bであれば、簡単な構成で、長期にわたって伝熱特性の向上を図ることができる。
【0100】
また、前述のように、各第1凸部52は長尺である。各第1凸部52が長尺であることで、第1空間V1Bにおいて、気泡Bを第1凸部52に沿って移動させ易い。したがって、第1凸部52の各長手方向を気泡Bの排出方向と一致させることで、気泡Bを排出させ易くすることができる。具体的には、本実施形態では、第1部材5および第2部材6Bが鉛直線に沿って配置される。この場合、各第1凸部52を鉛直線に沿って配置することで、鉛直上方への気泡Bを排出し易くなる。
【0101】
さらに、複数の第1凸部52を有することで、第1凸部52が1つである場合に比べ、収容室S10を複数の空間に区分することができる。複数の空間に区分することで、第1空間V1Bから第2空間V2Bに気泡B0を排出し易い。よって、伝熱性能の向上を図ることができる。
【0102】
3A.変形例
前述の第3実施形態は、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0103】
前述の第2実施形態および第1変形例で説明したように、第1凸部52が有する2つの第1縁部504のいずれか一方は、面取りされていてもよい。かかる場合であっても、第1空間V1の気泡B0が排出され易くなり、かつ第1空間V1での気泡B0の充満を抑制することができる。
【0104】
前述の第2変形例および第3変形例で説明したように、2つの第1縁部504の双方は、面取りされていてもよい。この場合であっても、第1空間V1の気泡B0が排出され易くなる。
【0105】
4.第4実施形態
以下、本開示の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の第1実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0106】
図24は、第4実施形態の第1部材5Cを示す斜視図である。
図25は、第4実施形態の第1部材5Cおよび第2部材6Cの断面図である。
図24または25に示すように、第1部材5Cおよび第2部材6Cのそれぞれは、点在する複数の突起を有する。
【0107】
図24または
図25に示すように、第1部材5Cは、第1基部51Cと、複数の第1凸部52Cとを有する。第1基部51Cは、XY平面に沿った平板状である。各第1凸部52Cは、第1基部51CからY2方向に突出している。各第1凸部52Cは、四角柱状である。複数の第1凸部52は、互いに離間している。複数の第1凸部52Cは、点在している。図示の例では、複数の第1凸部52Cは、平面視で行列状に配置される。
【0108】
同様に、第2部材6Cは、第2基部61Cと、複数の第2凸部62Cとを有する。詳細な図示はしないが、第2部材6Cは、第1部材5Cと同様の構成である。したがって、第2基部61Cは、XY平面に沿った平板状である。各第2凸部62Cは、第2基部61Cから第1部材5Cに向かってY1方向に突出している。各第2凸部62Cは、四角柱状である。複数の第2凸部62は、互いに離間している。複数の第2凸部62Cは、点在している。図示の例では、複数の第2凸部62Cは、平面視で行列状に配置される。また、第1凸部52Cと第2凸部62Cとは、1対1で対向配置され、互いに離間する。
【0109】
なお、第1凸部52Cおよび第2凸部62Cのそれぞれの数は、特に限定されず、任意である。ただし、本実施形態では、第1凸部52Cと第2凸部62Cとが対向するよう、第1凸部52Cの数と第2凸部62Cの数とは、互いに等しい。また、複数の第1凸部52Cおよび複数の第2凸部62Cは、行列状に配置されているが、これらは、点在していればよく、ランダムに配置されてもよい。
【0110】
複数の第1部材5Cおよび複数の第2部材6Cは、収容室S10を区分する。具体的には、複数の第1凸部52Cおよび複数の第2凸部62Cによって、収容室S10は、複数の第1空間V1Cと第2空間V2Cとに区分される。
【0111】
各第1空間V1Cは、1つの第1凸部52と1つの第2凸部62との組同士の間に位置する。複数の第1空間V1Cは、平面視で行列状に配置される。また、第2空間V2Cは、複数の第1空間V1Cを除く空間である。第2空間V2Cは、平面視で格子状である。また、各第1空間V1Cの容積は、第2空間V2Cの容積よりも非常に小さい。したがって、複数の第1部材5Cおよび複数の第2部材6Cは、非常に狭隘な複数の第1空間V1Cと、各第1空間V1Cよりも広域な第2空間V2Cとに、収容室S10を区分している。
【0112】
また、伝熱面50Cは、複数の第1頂面501C、複数の第1側面502Cおよび接続面503Cを有する。複数の第1頂面501Cおよび複数の第1側面502Cは、複数の第1凸部52Cに属する面である。具体的には、各第1凸部52Cは、1つの第1頂面501Cと、1つの第1側面502Cとを有する。各第1頂面501Cは、第2部材6Cに対向する。各第1頂面501Cは、平面視で四角形である。また、各第1側面502Cは、第1頂面501Cと接続面503Cとを接続する。接続面503は、第1基部51Cに属する面であり、第1基部51Cのうち複数の第1凸部52Cが設けられていない部分である。
【0113】
同様に、伝熱面60Cは、複数の第2頂面601C、複数の第2側面602Cおよび接続面603Cを有する。複数の第2頂面601Cおよび複数の第2側面602Cは、複数の第2凸部62Cに属する面である。具体的には、各第2凸部62Cは、1つの第2頂面601Cと、1つの第2側面602Cとを有する。各第2頂面601Cは、第1部材5Cに対向する。各第2頂面601Cは、平面視で四角形である。また、各第2側面602Cは、第2頂面601Cと接続面603Cとを接続する。接続面603Cは、第2基部61に属する面であり、第2基部61Cのうち複数の第2凸部62Cが設けられていない部分である。
【0114】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1凸部52Cと第2凸部62Cとの間の距離L1は、第1基部51Cと第2基部61Cとの間の距離L2よりも非常に小さい。また、距離L1は、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseの2倍以下である。そして、第1凸部52Cと第2凸部62Cとは、収容室S10を狭隘な第2空間V2Cと広域な第1空間V1Cとに区分している。このため、収容室S10では狭隘な第2空間V2Cと広域な第1空間V1Cとを隣接させることができる。よって、気泡B0は第1空間V1Cから第2空間V2Cへ容易に排出され易い。それゆえ、第1頂面501Cおよび第2頂面601Cが長期間乾いた領域で覆われることが抑制される。したがって、従来よりも狭隘な収容室S10であっても、伝熱性能の低下の抑制、または伝熱性能の向上を図ることができる。
【0115】
また、伝熱面50Cおよび60Cは、複数の突起が点在している簡素な構造である。複雑で微細な構造では、異物の閉塞により伝熱性能が低下するおそれがある。これに対し、伝熱面50Cおよび60Cは複数の突起が点在している簡素な構造であるため、異物による閉塞のおそれがない。また、簡素な構造であるため、コストの増大を抑制することができる。それゆえ、伝熱面50Cおよび60Cであれば、簡単な構成で、長期にわたって伝熱特性の向上を図ることができる。
【0116】
4A.変形例
前述の第4実施形態は、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0117】
第1頂面501Cと第1側面502Cとの接続部分は、面取りされていてもよい。同様に、第2頂面601Cと第2側面602Cとの接続部分は、面取りされていてもよい。面取りされている場合、面取りされている部分は、気泡B0の排出方向に設けられていることが好ましい。第1部材5Bおよび第2部材6Bが鉛直線に沿って配置される場合、浮力により気泡B0は鉛直上方に排出される。したがって、この場合、面取りされている部分は、第1頂面501Cおよび第2頂面601Cのうちの各鉛直上方の部分に設けられていることが好ましい。これにより、第1空間V1の気泡B0が排出され易くなる。
【0118】
第1凸部52Cおよび第2凸部62Cの各形状は、四角柱に限定されず、任意である。第4変形例および第5変形例に第1凸部52Cの形状の例を示す。
【0119】
4A-1.第4変形例
図26は、第4変形例の第1部材5Caを示す図である。
図26に示すように、第1部材5Caが有する各第1凸部52Caは、円筒状であってもよい。この場合、第1頂面501Caは、円形である。なお、図示はしないが第2凸部62Cの形状についても同様の変形が可能である。
【0120】
4A-2.第5変形例
図27は、第5変形例の第1部材5Cbを示す図である。
図26に示すように、第1部材5Cbが有する各第1凸部52Cbは、第1基部51Cから離れるに従って、断面積が小さくなる。なお、図示はしないが第2凸部62Cの形状についても同様の変形が可能である。
【0121】
また、第1凸部52Cの形状と第2凸部62Cの形状は同一であっても、異なっていてもよい。
【0122】
また、第4実施形態では、第2部材6Cの代わりに、第3実施形態の第2部材6Bを用いてもよい。なお、第4、5変形例にていても同様である。
【0123】
以上、本発明の沸騰冷却装置について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0124】
また、前述の各実施形態および各変形例では、「第1部材」および「第2部材」は鉛直線に沿って配置されたが、これらは鉛直線に沿って配置されていなくてもよい。
【0125】
図28および29のそれぞれは、第1部材5および第2部材6の配置の一例を示す図である。例えば、
図28に示すように、第1実施形態の第1部材5および第2部材6は、水平面および鉛直線の双方に対して角度θで傾斜していてもよい。この場合、当該傾斜している方向に沿って、第1凸部52および第2凸部62の各長手方向が配置されていることで、気泡Bを円滑に排出することができる。それゆえ、第2空間V2で発生した気泡B5は、矢印A1に示すように第1部材5と第2部材6との間から排出される。第1空間V1で発生した気泡B0は、矢印A2に示すように第2空間V2に移動した後、矢印A3に示すように第1部材5と第2部材6との間から排出される。
【0126】
また、例えば、
図29に示すように、第1実施形態の第1部材5および第2部材6は、水平面に沿って配置されていてもよい。この場合であっても、第2空間V2で発生した気泡B5は、矢印A1に示すように第1部材5と第2部材6との間から排出される。第1空間V1で発生した気泡B0は、矢印A2に示すように第2空間V2に移動した後、矢印A3に示すように第1部材5と第2部材6との間から排出される。
【0127】
前述の各実施形態では、「第1部材」および「第2部材」のそれぞれが「伝熱面」を有するが、いずれか一方のみが発熱体100からの熱を受ける「伝熱面」を有していてもよい。したがって、「第1部材」および「第2部材」の一方は、発熱体100と熱的に接触していてもよい。
【0128】
また、本発明は、パワー半導体素子の冷却装置以外に、沸騰現象による熱伝達を利用する幅広い装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1…沸騰冷却装置、5…第1部材、5A…第1部材、6…第2部材、10…受熱部、11…容器、20…放熱部、21…容器、22…放熱フィン、30…第1管部、40…第2管部、50…伝熱面、51…第1基部、52…第1凸部、60…伝熱面、60x…伝熱面、61…第2基部、62…第2凸部、100…発熱体、111…底板、112…天板、113…側壁、211…底板、212…天板、213…側壁、501…第1頂面、502…第1側面、503…接続面、504…第1縁部、601…第2頂面、602…第2側面、603…接続面、604…第2縁部、A1…矢印、A2…矢印、A3…矢印、B0…気泡、B1…気泡、B2…気泡、B5…気泡、F1…ミクロ液膜、F2…ミクロ液膜、H51…高さ、H61…高さ、L1…距離、L2…距離、RE…冷媒、S1…領域、S2…領域、S10…収容室、S10x…狭隘な収容室、S20…凝縮室、S30…第1流路、S40…第2流路、V1…第1空間、V2…第2空間、W52…距離、W62…距離、θ…角度。