(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084368
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240618BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C03C27/12 N
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198603
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】森 直也
【テーマコード(参考)】
2H199
4G061
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA19
2H199DA22
2H199DA23
2H199DA24
2H199DA28
2H199DA29
2H199DA42
2H199DA48
4G061AA20
4G061AA26
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB12
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CC03
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
4G061DA32
4G061DA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合に生じうるゴーストを低減する、ヘッドアップディスプレイシステムを提供する。
【解決手段】移動体の室外側に面する第一主面11と第二主面12を備える第一ガラス板10と、移動体の室内側に面する第四主面24と第三主面23を備える第二ガラス板20と、第一ガラス板と第二ガラス板の間にある樹脂中間膜30と機能層51と暗色部70とを含む合わせガラスと、第一画像を投影する第一投影部131と、を有するヘッドアップディスプレイシステムであって、第一画像は、第一投影部から暗色部のある領域に投影された第一投影光が、第四主面で反射して得られた虚像であり、
以下の[1]及び/又は[2]の要件を満たすヘッドアップディスプレイシステム。
[1]暗色部が、機能層よりも室内側に設けられる。
[2]機能層が、第一画像が投影される領域には設けられない。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の室外側に面する第一主面と前記第一主面の反対側の面である第二主面を備える第一ガラス板と、移動体の室内側に面する第四主面と前記第四主面の反対側の面である第三主面を備える第二ガラス板と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある樹脂中間膜と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある機能層と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある暗色部と、を含む合わせガラスと、
第一画像を投影する第一投影部と、
を有するヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記第一画像は、前記第一投影部から前記暗色部のある領域に投影された第一投影光が、前記第四主面で反射して得られた虚像であり、
以下の[1]及び/又は[2]の要件を満たすことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
[1]前記暗色部が、前記機能層よりも室内側に設けられる。
[2]前記機能層が、前記第一画像が投影される領域には設けられない。
【請求項2】
前記[1]の要件を満たしており、かつ、以下の(1A)、(1B)及び(1C)からなる群から選択された少なくとも1つの要件を満たす、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
(1A)前記暗色部が、前記第三主面に形成された着色セラミック層又は着色樹脂層である。
(1B)前記暗色部が、前記樹脂中間膜に形成されたシェードバンドである。
(1C)前記暗色部が、前記機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層である。
【請求項3】
前記機能層が基材フィルム上に形成されて、前記基材フィルムと前記機能層が機能性フィルムを構成している、請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項4】
前記機能層が以下の(A)~(D)の機能のうちの少なくとも1つの機能を有する層である、請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
(A)光の位相又は振動方向を変化させる
(B)光に含まれる特定の振動方向又は回転方向の光を透過及び/又は反射する
(C)光に含まれる赤外線を吸収、透過及び/又は反射する
(D)光に含まれる可視光線を吸収又は反射する
【請求項5】
前記暗色部の可視光線透過率が10%以下である請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項6】
前記機能層が、2枚の前記樹脂中間膜に挟まれている請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項7】
前記機能層が、前記第二主面又は前記第三主面に形成されている請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項8】
前記[1]の要件を満たしており、
前記機能層が、前記合わせガラスの全面に設けられている請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項9】
前記[1]の要件を満たしており、前記機能層が、前記合わせガラスの一部に設けられている請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
前記[2]の要件を満たしており、
前記機能層が基材フィルム上の一部に形成されて、前記基材フィルムと前記機能層が機能性フィルムを構成しており、
前記基材フィルムが前記合わせガラスの全面に設けられている、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
前記第一投影光がP偏光成分を含み、前記第四主面に対する入射角がブリュースター角+5°以上であって、90°未満である請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項12】
第二画像を投影する第二投影部をさらに有し、
前記第二画像は、前記第二投影部から前記暗色部がなく前記機能層がある領域に投影された第二投影光から得られた虚像である、請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項13】
前記機能層が、半波長層、位相差層又は偏光反射層である請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項14】
前記機能層が半波長層であり、
前記第二投影光はS偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記第四主面で反射して得られた虚像である、請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項15】
前記機能層が半波長層であり、
前記第二投影光はP偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記第一主面で反射して得られた虚像である、請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項16】
前記機能層が偏光反射層であり、
前記第二投影光はP偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記偏光反射層で反射して得られた虚像である、請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項17】
前記第二画像の焦点距離は、前記第一画像の焦点距離より大きい、請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項18】
前記第二投影光の、前記第四主面に対する入射角が(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下である請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項19】
前記第一投影光はP偏光成分を含み、前記第二投影光はS偏光である、請求項12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に対しヘッドアップディスプレイ(以下HUDと記載)機能を搭載する開発が行われている。HUDとは、自動車のウィンドシールドやコンバイナーといった透明板に映像を投影し、透明板に形成される虚像を運転手が認識することによって、運転手が運転中に視線をあまり動かさずに自動車の情報を取得することができる技術である。
特許文献1には、拡大着色部を背景にして、ヘッドアップディスプレイの表示器からの表示光をウィンドシールドの位置で反射させて、反射光による虚像による表示を行うことが開示されている。
【0003】
また、自動車のフロントガラスに熱線反射機能を持たせるため、特許文献2及び特許文献3には、熱線反射フィルム等の機能性フィルムを合わせガラスに挟み込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/065956号
【特許文献2】特開2009-035439号
【特許文献3】特開2009-035440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1のようなヘッドアップディスプレイシステムにおいて、特許文献2及び3に示すような熱線反射などの機能や、他の機能を有する機能性フィルムを合わせガラスに挟み込むことを考えた。
機能性フィルムは、特定の機能を有する機能層を備える。機能層の材料は、その周囲に存在するガラスや中間膜とは屈折率が異なる材料であることが多い。
そして、機能層を備える合わせガラスを使用したヘッドアップディスプレイシステムにおいて、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイシステムのように合わせガラスの着色部を背景として表示を行うと、表示光が機能層で反射することに起因して、ゴーストが生じることがあった。
【0006】
本開示は、機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合に生じうるゴーストを低減する、ヘッドアップディスプレイシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は次のとおりである。
【0008】
本開示(1)のヘッドアップディスプレイシステムは、移動体の室外側に面する第一主面と前記第一主面の反対側の面である第二主面を備える第一ガラス板と、移動体の室内側に面する第四主面と前記第四主面の反対側の面である第三主面を備える第二ガラス板と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある樹脂中間膜と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある機能層と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある暗色部と、を含む合わせガラスと、
第一画像を投影する第一投影部と、
を有するヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記第一画像は、前記第一投影部から前記暗色部のある領域に投影された第一投影光が、前記第四主面で反射して得られた虚像であり、
以下の[1]及び/又は[2]の要件を満たすことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステムである。
[1]前記暗色部が、前記機能層よりも室内側に設けられる。
[2]前記機能層が、前記第一画像が投影される領域には設けられない。
【0009】
本開示(2)は、前記[1]の要件を満たしており、かつ、以下の(1A)、(1B)及び(1C)からなる群から選択された少なくとも1つの要件を満たす、本開示(1)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
(1A)前記暗色部が、前記第三主面に形成された着色セラミック層又は着色樹脂層である。
(1B)前記暗色部が、前記樹脂中間膜に形成されたシェードバンドである。
(1C)前記暗色部が、前記機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層である。
【0010】
本開示(3)は、前記機能層が基材フィルム上に形成されて、前記基材フィルムと前記機能層が機能性フィルムを構成している、本開示(1)又は(2)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0011】
本開示(4)は、前記機能層が以下の(A)~(D)の機能のうちの少なくとも1つの機能を有する層である、本開示(1)~(3)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
(A)光の位相又は振動方向を変化させる
(B)光に含まれる特定の振動方向又は回転方向の光を透過及び/又は反射する
(C)光に含まれる赤外線を吸収、透過及び/又は反射する
(D)光に含まれる可視光線を吸収又は反射する
【0012】
本開示(5)は、前記暗色部の可視光線透過率が10%以下である本開示(1)~(4)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0013】
本開示(6)は、前記機能層が、2枚の前記樹脂中間膜に挟まれている本開示(1)~(5)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0014】
本開示(7)は、前記機能層が、前記第二主面又は前記第三主面に形成されている本開示(1)~(5)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0015】
本開示(8)は、前記[1]の要件を満たしており、
前記機能層が、前記合わせガラスの全面に設けられている本開示(1)~(7)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0016】
本開示(9)は、前記[1]の要件を満たしており、前記機能層が、前記合わせガラスの一部に設けられている本開示(1)~(7)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0017】
本開示(10)は、前記[2]の要件を満たしており、
前記機能層が基材フィルム上の一部に形成されて、前記基材フィルムと前記機能層が機能性フィルムを構成しており、
前記基材フィルムが前記合わせガラスの全面に設けられている、本開示(1)、(4)~(7)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0018】
本開示(11)は、前記第一投影光がP偏光成分を含み、前記第四主面に対する入射角がブリュースター角+5°以上であって、90°未満である本開示(1)~(10)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0019】
本開示(12)は、第二画像を投影する第二投影部をさらに有し、
前記第二画像は、前記第二投影部から前記暗色部がなく前記機能層がある領域に投影された第二投影光から得られた虚像である、本開示(1)~(11)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0020】
本開示(13)は、前記機能層が、半波長層、位相差層又は偏光反射層である本開示(12)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0021】
本開示(14)は、前記機能層が半波長層であり、
前記第二投影光はS偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記第四主面で反射して得られた虚像である、本開示(12)又は(13)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0022】
本開示(15)は、前記機能層が半波長層であり、
前記第二投影光はP偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記第一主面で反射して得られた虚像である、本開示(12)又は(13)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0023】
本開示(16)は、前記機能層が偏光反射層であり、
前記第二投影光はP偏光であり、前記第二画像は、前記第二投影光が前記偏光反射層で反射して得られた虚像である、本開示(12)又は(13)に記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0024】
本開示(17)は、前記第二画像の焦点距離は、前記第一画像の焦点距離より大きい、本開示(12)~(16)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0025】
本開示(18)は、前記第二投影光の、前記第四主面に対する入射角が(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下である本開示(12)~(17)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【0026】
本開示(19)は、前記第一投影光はP偏光成分を含み、前記第二投影光はS偏光である、本開示(12)~(18)のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムである。
【発明の効果】
【0027】
本開示によって、機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合に生じうるゴーストを低減する、ヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、投影光が機能層で反射することに起因して、ゴーストが生じる原因を説明するための断面図である。
【
図2】
図2は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20は、第一画像と第二画像の焦点距離が異なる場合の各画像の例を、視認者からの視点で模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムについて図面を用いて説明する。なお、各図面において、P偏光を両矢印の記号、S偏光を二重丸の記号で示す。一つの光路に両方の記号が付されている場合は、P偏光とS偏光のどちらであってもよいことを意味する。
【0030】
本開示のヘッドアップディスプレイシステムは、移動体の室外側に面する第一主面と前記第一主面の反対側の面である第二主面を備える第一ガラス板と、移動体の室内側に面する第四主面と前記第四主面の反対側の面である第三主面を備える第二ガラス板と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある樹脂中間膜と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある機能層と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板の間にある暗色部と、を含む合わせガラスと、
第一画像を投影する第一投影部と、
を有するヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記第一画像は、前記第一投影部から前記暗色部のある領域に投影された第一投影光が、前記第四主面で反射して得られた虚像であり、
以下の[1]及び/又は[2]の要件を満たすことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステムである。
[1]前記暗色部が、前記機能層よりも室内側に設けられる。
[2]前記機能層が、前記第一画像が投影される領域には設けられない。
【0031】
本開示のヘッドアップディスプレイシステムは、移動体に搭載される。
移動体としては、車(乗用車、トラック、バス等)、電車、汽車、船、飛行機等が挙げられる。これらの中では乗用車であることが好ましい。
また、移動体においてヘッドアップディスプレイシステムが搭載される位置としては乗用車のウィンドシールド(フロントガラス)、バックウインドウ(リヤガラス)等が挙げられる。
以下、乗用車のウィンドシールドに使用されるヘッドアップディスプレイシステムを例にして、本開示のヘッドアップディスプレイシステムについて説明する。
【0032】
本開示のヘッドアップディスプレイシステムの説明に先立ち、合わせガラスの暗色部を背景として表示を行った場合に、表示光が機能層で反射することに起因して、ゴーストが生じる原因について説明する。
【0033】
図1は、投影光が機能層で反射することに起因して、ゴーストが生じる原因を説明するための断面図である。
図1には、ヘッドアップディスプレイシステム101の投影部131から投影光137が照射され、視認者135が虚像を観察する様子を示している。
投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者135はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0034】
投影光137の一部(参照符号140で示す)は合わせガラス100に入射される。
合わせガラス100に入射された投影光140は、合わせガラス100内の機能層50で反射を生じる。この反射によって生じた反射光の光路139を点線で示している。視認者はこの反射光に基づく光路139の延長上にある虚像136´も観察する。この虚像136´がゴーストとして観察される。
機能層50で反射を生じなかった成分は暗色部70で吸収される。
【0035】
以下に、本開示のヘッドアップディスプレイシステムについて説明する。
本開示のヘッドアップディスプレイシステムは、第一画像のみを投影する形態と、第一画像に加えてさらに第二画像を投影する形態を有する。
以下、第一画像のみを投影する形態を説明し、その後に、第一画像に加えてさらに第二画像を投影する形態を説明する。
【0036】
第一画像は、第一投影部から暗色部のある領域に投影された第一投影光が、第四主面で反射して得られた虚像である。
そのうえで、本開示のヘッドアップディスプレイシステムは、以下の[1]及び/又は[2]の要件を満たす。
[1]暗色部が、機能層よりも室内側に設けられる。
[2]機能層が、第一画像が投影される領域には設けられない。
まず、[1]暗色部が、機能層よりも室内側に設けられる。
の要件を満たすヘッドアップディスプレイシステムについて説明する。
【0037】
[1]の要件を満たす場合の具体例として、
以下の(1A)、(1B)及び(1C)からなる群から選択された少なくとも1つの要件を満たすことが好ましい。
(1A)暗色部が、第三主面に形成された着色セラミック層又は着色樹脂層である。
(1B)暗色部が、樹脂中間膜に形成されたシェードバンドである。
(1C)暗色部が、機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層である。
これらの要件を満たす場合についても、随時以下の実施形態の例において説明する。
【0038】
以下に示す各実施形態において、第一投影光としては、P偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
第一投影光は、第四主面に対してブリュースター角から外れた角度で照射されることが好ましく、第四主面に対する入射角がブリュースター角+5°以上または+10°以上であって、90°未満であることが好ましい。
【0039】
図2は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すヘッドアップディスプレイシステム1aは、移動体の室外側123に面する第一主面11と第一主面11の反対側の面である第二主面12を備える第一ガラス板10と、移動体の室内側122に面する第四主面24と第四主面24の反対側の面である第三主面23を備える第二ガラス板20と、第一ガラス板10と第二ガラス板20の間にある樹脂中間膜30と、第一ガラス板10と第二ガラス板20の間にある機能層50と、第一ガラス板10と第二ガラス板20の間にある暗色部70と、を含む合わせガラス100と、第一画像を投影する第一投影部131と、を有する。
【0040】
図2では、暗色部70が第三主面23に設けられている。
この場合、暗色部70は機能層50よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
また、暗色部70としては着色セラミック層を示している。
【0041】
図2には、投影光の光路を示している。
図2においては第一投影部131から第一投影光137が照射される。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0042】
第一投影光137の一部(参照符号140で示す)は合わせガラス100に入射される。合わせガラス100に入射された第一投影光140は、暗色部70により吸収され、機能層50には到達しない。
【0043】
図1に示したヘッドアップディスプレイシステムとは異なり、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
すなわち、暗色部が機能層よりも室内側に設けられるという[1]の要件を満たすことにより、機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合にゴーストが生じることが防止された、ヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。
【0044】
ここで、本開示のヘッドアップディスプレイシステムが備える共通の構成である、合わせガラス、暗色部、機能層及び第一投影光の好ましい構成について説明する。
【0045】
合わせガラス100を構成する第一ガラス板10及び第二ガラス板20におけるガラス材料としては、平板状のガラス板が湾曲形状に加工されたものを好適に使用することができる。第一ガラス板10及び第二ガラス板20の材質としては、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰珪酸塩ガラスの他、アルミノシリケートガラスやホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等の公知のガラス組成のものを使用することができる。第一ガラス板10及び第二ガラス板20の、それぞれの厚みは、例えば、0.4mm~3mmとしてもよい。また、第一ガラス板10及び第二ガラス板20との間隔は、0.01mm~2.5mmとしてもよい。
【0046】
合わせガラスは、第一ガラス板と第二ガラス板の間に樹脂中間膜を備える。
樹脂中間膜30として使用される材料は、第一ガラス板10及び第二ガラス板20に接着するものであれば特に限定されない。例えば、樹脂中間膜を構成するポリマーが軟化する温度で加熱することで、第一ガラス板10及び第二ガラス板20を合わせ化するもので、ポリマーとして、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を使用することができる。
また、湿気や紫外線などによって硬化する接着剤や粘着剤を用いることもできる。なお、樹脂中間膜は複数の樹脂層で構成されていても良い。
【0047】
本明細書において、接着剤(adhesive)は対象物を接着した状態で固体である材料であり、粘着剤(pressure-sensitive adhesive)は、対象物を接着した状態で液体(濡れた状態のまま)である材料である。
【0048】
第一投影光はP偏光成分を含み、第四主面に対する入射角がブリュースター角+5°以上または+10°以上、90°未満であることが好ましい。第一投影光がP偏光成分を含む光であると、S偏光成分をカットする一般的な偏光サングラス越しであっても虚像を観察することができる。
P偏光成分を含む光としては、P偏光だけでなく、無偏光、円偏光、楕円偏光であってもよい。
また、第四主面に対してP偏光をブリュースター角で照射すると第四主面での反射が生じないため、第四主面での反射光に基づく虚像を視認することができない。合わせガラスを構成するガラスがソーダ石灰珪酸塩ガラスである場合、ブリュースター角が56°であるので、第四主面に対する入射角が61°以上または66°以上、90°未満であることが好ましい。
【0049】
暗色部としては、着色セラミック層、着色樹脂層、シェードバンド等が挙げられる。
暗色部が着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
図2に示した例は、上記(1A)の要件を満たす例である。
着色セラミック層は、着色セラミック層印刷用インクをガラス板に印刷し焼成することにより形成される層である。
着色セラミック層はガラス板の周囲に形成された黒色又は濃色の不透明層であり、ガラス板をその周囲で保持しているウレタンシーラントの紫外線による劣化を防止する。また、通電用電極(バスバー)などの導電体が着色セラミック層に重ねて形成されることにより、ガラス板の周辺に取り付けられているバスバーや給電点、アンテナ線の端子などが移動体の外から透視できなくなり、外観意匠の完成度が高まるといった作用効果を備える。
着色樹脂層は、樹脂中間膜とは別の樹脂層であり、樹脂に黒色又は濃色の染料又は顔料を含有させた黒色又は濃色の不透明樹脂層である。
【0050】
着色セラミック層は、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)とガラス板の軟化点温度よりも低い軟化点温度を有するガラス材料とを有するセラミック組成物からなることが好ましい。セラミック組成物として、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末が、ビヒクルと共に混練され形成されたセラミックペーストがスクリーン印刷法によってガラス板の表面に塗布され、その塗布物が焼成されて形成されたものを用いることができる。
【0051】
耐熱性顔料は、着色セラミック層に目的の色を付与するために配合される。その粒径は、セラミックペーストへの分散性や発色性を考慮して適宜決定され、メディアン径D50において、0.1~10μm、好ましくは0.2~5μm程度のものを使用することができる。
【0052】
耐熱性顔料としては、慣用の耐熱性顔料を使用できる。黒色を呈するための顔料の例としては、銅-クロム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、コバルト-鉄-クロム複合酸化物、マグネタイト等が挙げられる。また、茶色を呈するための顔料の例としては、亜鉛-鉄複合酸化物、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物等が挙げられる。
さらに、青色系顔料の例として、コバルトブルー、緑色系顔料の例として、クロムグリーン、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物等が挙げられる。
【0053】
これら顔料の他にも、白色系顔料(チタン白、酸化亜鉛等)、赤色系顔料(ベンガラ等)、黄色系顔料(チタンイエロー、チタン-バリウム-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-クロム複合酸化物等)を使用することもできる。
【0054】
ガラスフリットは、ガラスの微粒子のことであり、セラミックをガラス板に結着させ、着色セラミック層を形成する機能を有する。ガラスフリットとしては、セラミックにおいて慣用的に使用されているガラスフリットを使用できる。そのようなガラスフリットの例として、ホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラスなどが挙げられる。これらのガラスフリットは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
ガラスフリットの軟化点温度は、ガラス板の曲げ成形温度(例えば、600~750℃)より低いものが好ましく、好ましくは380~600℃であり、より好ましくは400~580℃であり、更に好ましくは410~550℃である。
ガラスフリットの粒径は、スクリーン印刷時のセラミックペーストの塗布性を考慮して適宜決定され、例えば、メディアン径D50において、0.1~10μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~4μm程度のものを使用できる。
【0056】
着色セラミック層において、ガラス材料(ガラスフリットが焼成されたもの)の含有量は、好ましくは50~95重量%、より好ましくは60~80重量%とすることができる。この含有量は、着色セラミック層のガラス板への結着性、着色セラミック層の色調を考慮して、適宜調整することができる。
【0057】
ビヒクルは、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末を、ペースト化し、スクリーン印刷などの塗布工程に適用するために配合されるもので、分散媒とバインダーとを有するものである。ビヒクルは、印刷性(塗布性)を考慮して適宜配合され、例えば、セラミックペースト全体に対して、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~45重量%含有させることができる。
【0058】
分散媒は、常温での揮発性が低く、ガラスフリットが軟化する温度よりも低い温度で揮発する程度の沸点を有するものが好ましく、例えば、沸点が50~250℃程度のものを使用できる。
【0059】
分散媒の例としては、脂肪族アルコール(例えば、2-エチルー1-ヘキサノール、オクタノール、デカノール等の飽和又は不飽和脂肪族アルコール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブ類等)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブアセテート類)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルカルビトール類等)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブアセテート類)、脂肪族多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリン等)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール類(例えば、モノテルペンアルコール等)等]、芳香族力ルボン酸エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1-10)、ジブチルベンジルフタレート等のフタル酸ジアルキルアラルキルエステル(アルキル基の炭素数1-10)等)、これら混合物等が挙げられる。
【0060】
バインダーとしては、セラミックペーストに適度な粘度を与え、200~550℃、好ましくは220~400℃程度で分解できるものであればよい。
その例としては、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等)、これらの混合物等などが挙げられる。これらの中ではアクリル系樹脂が好ましい。バインダーのビヒクル全体に対する割合は、好ましくは5~80重量%、より好ましくは10~50重量%、更に好ましくは15~40重量%としてもよい。
【0061】
着色樹脂層は光硬化性樹脂を含んでいてもよい。光硬化性樹脂がアクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂であってもよく、紫外線硬化型でも可視光硬化型でもよい。さらに、光重合開始剤を含んでいてもよい。
着色樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂がポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、又はシクロオレフィンポリマー(COP)であってもよい。
着色樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂又はフェノール樹脂であってもよい。
【0062】
着色樹脂層の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0063】
着色樹脂層は、着色成分とそれを含有する樹脂からなることが好ましい。樹脂としては前述に列挙した樹脂を使用することができる。着色成分と樹脂を含む樹脂組成物がスクリーン印刷法によってガラス板の表面に塗布され、硬化等されて形成されたものを用いることができる。樹脂組成物の塗布方法としては、インクジェット法なども使用できる。
【0064】
着色成分としては、染料、顔料などの可視光線を吸収する材料を使用することができる。顔料の例としては、カーボンブラック、鉄顔料、コバルト顔料、カドミウム顔料、クロム顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、鉛顔料、マグネシウム顔料、マンガン顔料、バナジウム顔料を含む顔料が挙げられる。染料の例としては、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のフタロシアニン染料; ジスアゾイエロー等のアゾ染料; アントラキノンまたはジブロモアントラキノン等の多環式キノン染料;ジオキサンバイオレット等のジオキサン染料; スチルベン染料、クマリン染料、ナフタルイミド染料、ピリジン染料、ローダミン染料、及びオキサジン染料などが選択される。
【0065】
樹脂組成物には、シランカップリング剤などその他の添加剤を含んでもよい。ガラスとの密着性を向上させるためのシランカップリング剤としては、官能基としてアミノ基を有するシランカップリング剤(3-(2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン等)、官能基としてビニル基を有するシランカップリング剤(7-オクテニルトリメトキシシラン等)、官能基としてエポキシ基を有するシランカップリング剤(8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、又は信越化学工業株式会社製X-12-984S等)、官能基としてメルカプト基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製X-12-1154等)、官能基として酸無水物基を有するシランカップリング剤(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等)等が挙げられる。
【0066】
暗色部はその可視光線透過率が10%以下であることが好ましく、8%以下、5%以下、3%以下、1%以下であってもよい。可視光線透過率が低いと暗色部が反射光を吸収することによるゴーストの発生の防止の効果がより確実に発揮される。
可視光線透過率の測定はJIS R3212:2021(自動車用安全ガラスの試験方法)により行うことができる。前記の規格では、可視光とは波長380nm~780nmの光を意味する。
【0067】
機能層としては、以下の(A)~(D)の機能のうちの少なくとも1つの機能を有する層であることが好ましい。
(A)光の位相又は振動方向を変化させる
(B)光に含まれる特定の振動方向又は回転方向の光を透過及び/又は反射する
(C)光に含まれる赤外線を吸収、透過及び/又は反射する
(D)光に含まれる可視光線を吸収又は反射する
これらのうち、ヘッドアップディスプレイシステムが第一画像のみを投影する場合には、投影光が機能層に入射しないようにするので、機能層が(A)又は(B)の機能を有していても機能層を設ける意義が無い。そのため、機能層が、
(C)光に含まれる赤外線を吸収、透過及び/又は反射する
(D)光に含まれる可視光線を吸収又は反射する
のうちの少なくとも1つの機能を有する層であることが好ましい。
機能層が(C)又は(D)の機能を有する場合は、投影光ではない光(太陽光や照明光等)が入射した場合に機能層が入射光に対して作用することにより、機能層による効果を発揮させることができる。
【0068】
機能層は、基材フィルム上に形成されて、基材フィルムと機能層が機能性フィルムを構成していてもよい。
また、機能層は、2枚の樹脂中間膜に挟まれていてもよい。
また、機能層は第二主面又は第三主面に形成されていてもよい。
また、機能層は合わせガラスの全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。
【0069】
機能層が(A)の光の位相又は振動方向を変化させる機能を有する場合、機能層は例えば位相差層(1/2λ層、1/4λ層など)であり、機能層を基材フィルム上に形成した機能性フィルムは位相差フィルムとなる。
位相差層としては液晶性化合物を含む液晶層を使用できる。位相差層としては、配向処理したポリエチレンテレフタレート(PET)やトリアセチルセルロース(TAC)等の透明プラスチックシートなどの基材フィルム上に、液晶性化合物を塗布し、熱処理や光処理などで液晶配向を固定化したものを使用できる。液晶配向を固定化するための処理としては、基材フィルムの配向処理をラビングローラーにより行うラビング法や、フォトリソグラフィにより行う光配向法が挙げられる。
液晶性化合物として、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルイミド等の主鎖型液晶ポリマーや、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロネート、ポリエーテル等の側鎖型液晶ポリマーや、重合性液晶等が挙げられる。重合性液晶とは、分子内に重合性基を有する液晶性化合物である。
また、位相差層としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー等のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差フィルムも用いることができる。位相差層として延伸した位相差フィルムを用いる場合、基材フィルムは不要となる。
【0070】
機能層が(B)の光に含まれる特定の振動方向又は回転方向の光を透過及び/又は反射する機能を有する場合、機能層は例えば偏光層、偏光反射層などであり、機能層を基材フィルム上に形成した機能性フィルムは偏光フィルム又は偏光反射フィルムとなる。
偏光層としては、ヨウ素化合物分子を含むPVA(ポリビニルアルコール)層を使用できる。偏光層としては、PVA(ポリビニルアルコール)にヨウ素化合物分子を吸着させ、延伸してヨウ素化合物分子が一方向に配向したものを使用できる。基材フィルムに上記のPVA層を積層することで、偏光フィルムとなる。
偏光反射層としては、コレステリック液晶を含む液晶層を使用することができる。さらにその液晶層の前後に液晶性化合物を含む液晶層を1/4λ層として有してもよい。偏光反射フィルムとしては、基材フィルムの表面にコレステリック液晶を固定化したものを使用できる。
【0071】
機能層が(C)の光に含まれる赤外線を吸収、透過及び/又は反射する機能を有する場合、機能層は例えば熱線吸収層や熱線反射層などであり、機能層を基材フィルム上に形成した機能性フィルムは赤外線吸収/反射フィルムとなる。
熱線吸収層や熱線反射層としては、赤外線を吸収及び/又は反射する染料又は顔料を含む樹脂層を使用できる。赤外線吸収/反射フィルムとしては、樹脂材料に前述の染料又は顔料を混合して、基材フィルム上に塗布し、乾燥させたものを使用できる。
熱線反射層としては、屈折率の異なる2種類以上の樹脂や誘電体薄膜を積層してなる多層膜、偏光性を有する液晶層の積層膜、及び金属膜や金属膜の積層膜等が挙げられる。
熱線吸収層や熱線反射層は、ガラス板の主面に直接形成されたAgスパッタ膜のような形態であっても良い。
また、基材フィルムの所定の位置に、市販の赤外線吸収/反射シートを貼り付けてもよい。
【0072】
機能層が(D)の光に含まれる可視光線を吸収する機能を有する場合、機能層は例えば可視光線吸収層であり、機能層を基材フィルム上に形成した機能性フィルムは可視光線吸収フィルムとなる。可視光線吸収層としては、染料、顔料やカーボンブラックなど可視光線を吸収する材料を含む樹脂層を使用できる。可視光線吸収フィルムとしては、機能層を構成する樹脂材料に可視光線を吸収する材料を混合して、基材フィルム上に塗布し、乾燥させたものを使用できる。
また、基材フィルムの所定の位置に、市販の可視光線吸収シートを貼り付けてもよい。
また、機能層が(D)の光に含まれる可視光線を反射する機能を有する場合、機能層は例えば増反射層などであり、機能性フィルムは可視光線反射フィルムとなる。
増反射層としては、可視光線を反射する材料を含む樹脂層を使用できる。可視光線反射フィルムとしては、機能層を構成する樹脂材料に可視光線を反射する材料を混合して、基材フィルム上に金属や金属化合物の薄膜を製膜したものを使用できる。ほかにも、増反射層として、樹脂間の屈折率差で光を反射する、屈折率が異なる樹脂層(例えば、PETとPMMAなど)を交互に数百層重ねた層を使用することができる。
また、基材フィルムの所定の位置に、市販の可視光線反射シートを貼り付けてもよい。
【0073】
また、光の干渉効果を有する光学薄膜を機能層として用いることもできる。
また、機能層が光に影響を与える機能以外の機能を有する場合、その機能としては音や振動の減衰や増幅(遮音・防振)外部刺激による光制御(調光)等が挙げられる。
【0074】
図2に示す機能層50は、基材フィルムを有さない層として描いているが、基材フィルムと機能層を有する機能性フィルムに置換してもよい。
また、
図2に示す機能層は2枚の樹脂中間膜に挟まれており、合わせガラスの全面に設けられている。
【0075】
図3は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示すヘッドアップディスプレイシステム1bでは、暗色部71が樹脂中間膜30に設けられている。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
この場合、暗色部71は機能層50よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部71としてはシェードバンドを示している。
暗色部が樹脂中間膜に設けられたシェードバンドであるので、上記(1B)の要件を満たしている。
【0076】
シェードバンドは、樹脂中間膜の一部が、顔料や染料により帯状に着色されて得られ、透明領域と不透明領域にグラデーションを有する。
シェードバンドには、樹脂中間膜を構成する樹脂と着色顔料が含まれていることが好ましい。着色顔料は、シェードバンド部分の可視光線透過率を低くすることができるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0077】
図2において説明した、暗色部が着色セラミック層である場合と同様に、
図3に示すヘッドアップディスプレイシステム1bにおいては、合わせガラス100に入射された第一投影光140がシェードバンドである暗色部71により吸収され、機能層50には到達しない。合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0078】
図4は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示すヘッドアップディスプレイシステム1cでは、暗色部72が機能層50の室内側の面50aに設けられている。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
この場合、暗色部72は機能層50よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部72としては着色樹脂層を示している。
暗色部が機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層であるので、上記(1C)の要件を満たしている。着色樹脂層としては上記(1A)の要件を満たす着色樹脂層として説明したものを用いることができる。
【0079】
図2において説明した、暗色部が着色セラミック層である場合と同様に、
図4に示すヘッドアップディスプレイシステム1cにおいては、合わせガラス100に入射された第一投影光140が着色樹脂層である暗色部72により吸収され、機能層50には到達しない。合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0080】
図5は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示すヘッドアップディスプレイシステム1dでは、暗色部70が第三主面23に設けられている。
機能層50は、暗色部70と重なる領域では暗色部70よりも室外側に設けられ、暗色部70と重ならない領域では第三主面23に設けられている。機能層50を第三主面23及び暗色部70に貼り付け又は直接形成した構成となっている。
【0081】
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
図5に示すヘッドアップディスプレイシステム1dでは、暗色部70は機能層50よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
【0082】
図5に示すヘッドアップディスプレイシステム1dにおいては、合わせガラス100に入射された第一投影光140が暗色部70により吸収され、機能層50には到達しない。合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0083】
次に、ヘッドアップディスプレイシステムが下記[2]の要件を満たす場合の例について説明する。
[2]機能層が、第一画像が投影される領域には設けられない。
【0084】
図6は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すヘッドアップディスプレイシステム1eでは、機能層50が、第一画像が投影される領域には設けられていない。なお、
図6、
図7、
図8及び
図9に示すヘッドアップディスプレイシステムの機能層50は、後述する第二画像が投影される領域に設けられれば良く、機能層50をさらに小さくしてもよい。すなわち、機能層50は、暗色部70のある領域と重なっていなくてもよい。また、機能層50は合わせガラス100の端部にまで達していなくてもよい。
「第一画像が投影される領域」とは、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路と重なる領域を意味する。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
図6は、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層50が設けられていないことを示しており、[2]の要件を満たしている。
【0085】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層50が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
すなわち、機能層が、第一画像が投影される領域には設けられないという[2]の要件を満たすことにより、機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合にゴーストが生じることが防止された、ヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。
【0086】
[2]の要件を満たす場合の暗色部の位置(合わせガラスの厚さ方向における位置)は特に限定されず、機能層が設けられている部分における機能層よりも室内側であっても室外側であってもよい。
図6に示すヘッドアップディスプレイシステム1eでは、暗色部70は第二主面12に設けられている。
合わせガラス100に入射された第一投影光140は暗色部70により吸収され、それ以上の反射を生じない。
暗色部としては特に限定されず、着色セラミック層、着色樹脂層、シェードバンド等のいずれであってもよい。
【0087】
[2]の要件を満たす場合の機能層の位置(合わせガラスの厚さ方向における位置)は特に限定されず、基材フィルム上に形成されて、基材フィルムと機能層が機能性フィルムを構成していてもよい。
また、機能層は、2枚の樹脂中間膜に挟まれていてもよい。
また、機能層は第二主面又は第三主面に形成されていてもよい。
[2]の要件を満たす場合に機能層が第三主面に形成されていると、機能層より室外側に位置することになる樹脂中間膜には紫外線吸収剤を含むことが多いため、機能層を太陽光の紫外線から保護できる。
【0088】
図6に示す機能層50は、基材フィルムを有さない層として描いているが、基材フィルムと機能層を有する機能性フィルムに置換してもよい。
また、
図6に示す機能層は2枚の樹脂中間膜に挟まれている。
【0089】
図7は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すヘッドアップディスプレイシステム1fは、暗色部70が第三主面23に設けられており、暗色部70が設けられた位置が
図6に示すヘッドアップディスプレイシステム1eとは異なる。その他の構成は同様である。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
【0090】
図7に示すヘッドアップディスプレイシステム1fでは、機能層50が、第一画像が投影される領域には設けられていないので、[2]の要件を満たしている。
また、暗色部70が機能層50よりも室内側に設けられているので[1]の要件も満たしている。
また、暗色部70が第三主面23に形成された着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
【0091】
図7に示すヘッドアップディスプレイシステム1fでは、合わせガラス100に入射された第一投影光140は、暗色部70により吸収され、機能層50には到達しない。そのため、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
従って、この構成の場合にゴーストの発生を防止する効果は[1]の要件を満たすことにより主に発揮されているといえる。
【0092】
図8は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示すヘッドアップディスプレイシステム1gでは、暗色部70が第三主面23に設けられている。
機能層50は、暗色部70と重ならない領域において第三主面23に設けられている。機能層50を第三主面23に貼り付け又は直接形成した構成となっている。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
図8に示すヘッドアップディスプレイシステム1gでは、機能層50が、第一画像が投影される領域には設けられていないので、[2]の要件を満たしている。
【0093】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層50が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0094】
また、合わせガラス100に入射された第一投影光140は暗色部70により吸収され、それ以上の反射を生じない。
【0095】
図9は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図9に示すヘッドアップディスプレイシステム1hでは、機能層50が、第三主面23に貼り付け又は直接形成されている。
第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
図9に示すヘッドアップディスプレイシステム1hでは、機能層50が、第一画像が投影される領域には設けられていないので、[2]の要件を満たしている。
【0096】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層50が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層50での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0097】
図9に示すヘッドアップディスプレイシステム1hでは、暗色部70は第二主面12に設けられている。
また、合わせガラス100に入射された第一投影光140は暗色部70により吸収され、それ以上の反射を生じない。
【0098】
続いて、第一画像に加えてさらに第二画像を投影する形態について説明する。
第二画像は、第二投影部から暗色部がなく機能層がある領域に投影された第二投影光から得られた虚像である。
第二画像を投影する場合、機能層が第二投影光に対して(A)又は(B)の機能のうちの少なくとも1つの機能を有することが好ましく、具体的には、機能層が、半波長層、位相差層又は偏光反射層であることが好ましい。
(A)光の位相又は振動方向を変化させる
(B)光に含まれる特定の振動方向又は回転方向の光を透過及び/又は反射する
【0099】
第一画像に加えてさらに第二画像を投影する、以下に説明するいずれの実施形態においても、第一投影光としては、P偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
第一投影光は、第四主面に対してブリュースター角から外れた角度で照射されることが好ましく、第四主面に対する入射角がブリュースター角+5°以上または+10°以上であって、90°未満であることが好ましい。
第二投影光としては、S偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。ただし、機能層として偏光反射層を用いる場合は第二投影光としてP偏光を用いることが好ましい。
S偏光とは、S偏光成分を90%以上含む光のことである。S偏光として、S偏光成分を90%以上含む光を用いてもよく、S偏光成分を95%以上含む光を用いてもよく、S偏光成分を99%以上含む光を用いてもよい。
P偏光とは、P偏光成分を90%以上含む光のことである。P偏光として、P偏光成分を90%以上含む光を用いてもよく、P偏光成分を95%以上含む光を用いてもよく、P偏光成分を99%以上含む光を用いてもよい。
第二投影光は、前記第四主面に対する入射角が(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下であることが好ましい。
第一投影光と第二投影光の組み合わせとしては、第一投影光がP偏光成分を含む光であり、第二投影光がS偏光であることが好ましい。
【0100】
以下に、機能層が第二投影光に対して作用する半波長層である場合の例を中心に、各実施形態について説明する。
半波長層は、入射された光の直線偏光を90°回転させる機能を持つ層で、半波長層にS偏光成分が入射すると半波長層によって偏光の振動方向が90°回転し、P偏光成分に変換される。逆に、半波長層にP偏光が入射すると、半波長層によってS偏光に変換される。
半波長層にS偏光を入射させる場合の代表例を
図10に示し、半波長層にP偏光を入射させる場合の代表例を
図11に示す。
【0101】
図10は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aは、
図2に示したヘッドアップディスプレイシステム1aにおいて、第二画像を投影する第二投影部141をさらに有する。
このヘッドアップディスプレイシステム2aでは、機能層51が半波長層である。
第二投影光147はS偏光であり、第二画像は、第二投影光147が第四主面24で反射して得られた虚像である。
【0102】
図10には、第二投影光の光路を示している。
図10において第二投影部141から第二投影光147が照射される。第二投影光147としてはS偏光が照射された場合を仮定している。第二投影光147の第四主面24に対する入射角が(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下であることが好ましい。
【0103】
第二投影光147は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者135はこの反射光に基づく光路148の延長上にある虚像146(第二虚像)を観察する。
虚像146と視認者135の間には暗色部70はないので、虚像146は暗色部70を背景としない像として観察される。
【0104】
S偏光である第二投影光147の一部(参照符号150で示す)は合わせガラス100に入射される。
S偏光である、合わせガラス100に入射された第二投影光150は、機能層51である半波長層に入射されると振動方向が変わりP偏光となる。
P偏光は第一主面11にブリュースター角で入射すれば、第一主面11で反射を生じず室外側に向かって透過する。そのため、合わせガラス100に入射された第二投影光150の第一主面11での反射に起因するゴーストが生じることが抑制される。
【0105】
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aでは、
図2に示したヘッドアップディスプレイシステム1aの場合と同様に、暗色部70が第三主面23に設けられている。
この場合、暗色部70は機能層51よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
また、暗色部70としては着色セラミック層を示している。
暗色部が着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
【0106】
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0107】
第一投影光137の一部(参照符号140で示す)は合わせガラス100に入射される。合わせガラス100に入射された第一投影光140は、暗色部70により吸収され、機能層51には到達しない。
【0108】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
すなわち、暗色部が機能層よりも室内側に設けられるという[1]の要件を満たすことにより、機能層を備える合わせガラスの暗色部を背景として表示を行う場合にゴーストが生じることが防止された、ヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。
【0109】
第二投影部を有する本開示のヘッドアップディスプレイシステムにおいて、機能層は、基材フィルム上に形成されて、基材フィルムと機能層が機能性フィルムを構成していてもよい。
また、機能層は、2枚の樹脂中間膜に挟まれていてもよい。
また、機能層は第二主面に形成されていてもよい。
また、機能層は合わせガラスの全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。
【0110】
図10に示す機能層51は、基材フィルムを有さない層として描いているが、基材フィルムと機能層を有する機能性フィルムに置換してもよい。
また、
図10に示す機能層51は2枚の樹脂中間膜30に挟まれており、合わせガラス100の全面に設けられている。
【0111】
図11は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bでは、
図10に示したヘッドアップディスプレイシステム2aにおいて、第二投影光147がP偏光であり、第二画像は、第二投影光147が第一主面11で反射して得られた虚像である。
ヘッドアップディスプレイシステム2bでは、機能層51が半波長層である。
【0112】
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bでは、第二投影部141から投影する第二投影光147としてP偏光を用いて、P偏光を第四主面24に対して(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下の入射角で照射する。
P偏光が第四主面24に対してブリュースター角で照射されると、第四主面24での反射が生じずに、第二投影光147は合わせガラス100に入射される(合わせガラス100に入射された第二投影光を参照符号150で示す)。合わせガラス100に入射されたP偏光は機能層51である半波長層に入射されると振動方向が変わりS偏光となる。
【0113】
S偏光である第二投影光150は第一主面11において、その一部が室外側に向かって透過する。
また、その一部が反射し、機能層51に再度入射して、半波長層で振動方向が変わりP偏光となって、第四主面24から出射される。視認者135は第四主面24から出射されたP偏光に基づく光路148の延長上にある虚像146(第二虚像)を観察する。
【0114】
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bでは、
図10に示したヘッドアップディスプレイシステム2aの場合と同様に、暗色部70が第三主面23に設けられている。
この場合、暗色部70は機能層51よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部が着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
【0115】
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
第一投影光137の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様とすることができる。
【0116】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0117】
図12は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図12に示すヘッドアップディスプレイシステム2cでは、暗色部71が樹脂中間膜30に設けられている。暗色部71としてはシェードバンドを示している。
【0118】
図12に示すヘッドアップディスプレイシステム2cは、
図10における暗色部70に代えて樹脂中間膜30に設けられているシェードバンドである暗色部71を設けている他は
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様の構成である。
ヘッドアップディスプレイシステム2cでは、機能層51が半波長層である。
この場合、暗色部71は機能層51よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部が樹脂中間膜に設けられたシェードバンドであるので、上記(1B)の要件を満たしている。
【0119】
図12に示すヘッドアップディスプレイシステム2cでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図12には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0120】
図12に示すヘッドアップディスプレイシステム2cでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間にはシェードバンドである暗色部71があるので、虚像136はシェードバンドである暗色部71を背景として観察される。
【0121】
第一投影光137の一部(参照符号140で示す)は合わせガラス100に入射される。合わせガラス100に入射された第一投影光140は、シェードバンドである暗色部71により吸収され、機能層51には到達しない。
【0122】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0123】
図13は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図13に示すヘッドアップディスプレイシステム2dでは、暗色部72が機能層51の室内側の面51aに設けられている。
暗色部72としては着色樹脂層を示している。
【0124】
図13に示すヘッドアップディスプレイシステム2dは、
図10における暗色部70に代えて機能層51の室内側の面51aに設けられた着色樹脂層である暗色部72を設けている他は
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様の構成である。
ヘッドアップディスプレイシステム2dでは、機能層51が半波長層である。
この場合、暗色部72は機能層51よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部が機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層であるので、上記(1C)の要件を満たしている。着色樹脂層としては上記(1A)の要件を満たす着色樹脂層として説明したものを用いることができる。
【0125】
図13に示すヘッドアップディスプレイシステム2dでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図13には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0126】
図13に示すヘッドアップディスプレイシステム2dでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部72があるので、虚像136は暗色部72を背景として観察される。
【0127】
第一投影光137の一部(参照符号140で示す)は合わせガラス100に入射される。合わせガラス100に入射された第一投影光140は、着色樹脂層である暗色部72により吸収され、機能層51には到達しない。
【0128】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0129】
本開示のヘッドアップディスプレイシステムにおいて、機能層は偏光反射層であってもよい。偏光反射層は、特定の偏光を反射する層である。
図14は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eは、機能層52として偏光反射層を有する。機能層52は2枚の樹脂中間膜30に挟まれており、合わせガラス100の全面に設けられている。
【0130】
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eでは、第二投影部141から投影する第二投影光147としてP偏光を用いて、P偏光を第四主面24に対して(ブリュースター角-10°)以上であって、(ブリュースター角+10°)以下の入射角で照射する。
P偏光が第四主面24に対してブリュースター角で照射されると、第四主面24での反射が生じずに、合わせガラス100に入射される(合わせガラス100に入射された第二投影光を参照符号150で示す)。合わせガラス100に入射された第二投影光150は偏光反射層(機能層52)で反射し、第四主面24から出射される。視認者135は第四主面24から出射されたP偏光に基づく光路148の延長上にある虚像146(第二虚像)を観察する。
虚像146と視認者135の間には暗色部70はないので、虚像146は暗色部70を背景としない像として観察される。
【0131】
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eでは、
図10に示したヘッドアップディスプレイシステム2aの場合と同様に、暗色部70が第三主面23に設けられている。
この場合、暗色部70は機能層52よりも室内側に設けられているので、[1]の要件を満たしている。
暗色部が着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
【0132】
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。
第一投影光137の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様とすることができる。
【0133】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層52での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0134】
次に、ヘッドアップディスプレイシステムが、第一画像に加えてさらに第二画像を投影する形態であって、下記[2]の要件を満たす場合の例について説明する。
[2]機能層が、第一画像が投影される領域には設けられない。
【0135】
図15は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図15に示すヘッドアップディスプレイシステム2fは、
図6に示したヘッドアップディスプレイシステム1eにおいて、第二画像を投影する第二投影部141をさらに有する。
ヘッドアップディスプレイシステム2fでは、機能層51が半波長層である。
【0136】
図15に示すヘッドアップディスプレイシステム2fでは、機能層51が、第一画像が投影される領域には設けられていない。
図15は、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないことを示しており、[2]の要件を満たしている。
【0137】
図15に示すヘッドアップディスプレイシステム2fでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図15には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0138】
図15に示すヘッドアップディスプレイシステム2fでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0139】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないため、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0140】
図16は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図16に示すヘッドアップディスプレイシステム2gは、
図7に示したヘッドアップディスプレイシステム1fにおいて、第二画像を投影する第二投影部141をさらに有する。
ヘッドアップディスプレイシステム2gでは、機能層51が半波長層である。
【0141】
図16に示すヘッドアップディスプレイシステム2gでは、機能層51が、第一画像が投影される領域には設けられていない。
図16は、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないことを示しており、[2]の要件を満たしている。
また、暗色部70が機能層51よりも室内側に設けられているので[1]の要件も満たしている。
また、暗色部70が第三主面23に形成された着色セラミック層又は着色樹脂層であると、上記(1A)の要件を満たす。
【0142】
図16に示すヘッドアップディスプレイシステム2gでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図16には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0143】
図16に示すヘッドアップディスプレイシステム2gでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
【0144】
合わせガラス100に入射された第一投影光140は、暗色部70により吸収され、機能層51には到達しない。そのため、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
従って、この構成の場合にゴーストの発生を防止する効果は[1]の要件を満たすことにより主に発揮されているといえる。
【0145】
図17は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図17に示すヘッドアップディスプレイシステム2hは、機能層52として偏光反射層を有しており、
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eにおいて、機能層52を第一画像が投影される領域には設けられないようにして、暗色部70を第二主面12に設けられるようにしたものである。
【0146】
第二投影光147の光路については、
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eと同様である。
【0147】
図17は、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層52が設けられていないことを示しており、[2]の要件を満たしている。
【0148】
図17に示すヘッドアップディスプレイシステム2hでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0149】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層52が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層52での反射が生じないため、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0150】
図18は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図18に示すヘッドアップディスプレイシステム2iにおいて、機能層51は、基材フィルム61上に形成されて、基材フィルム61と機能層51が機能性フィルム60を構成している。
機能層51は基材フィルム61の一部に設けられている。そして、機能性フィルム60は2枚の樹脂中間膜30に挟まれており、合わせガラス100の全面に設けられている。
その結果、基材フィルム61は合わせガラス100の全面に設けられているが、機能層51は合わせガラス100の一部に設けられていることになる。
そして、第一画像が投影される領域を機能層51が設けられていない領域とすることにより、[2]の要件を満たすようにしている。
【0151】
基材フィルムに機能層となる成分を塗工する際に、基材フィルムの一部に機能層を設けないようにすることは容易である。また、基材フィルムのうち帯状の領域に機能層を形成しないようにすることが容易である。
また、機能性フィルムを合わせガラスの全面に設けるほうが、機能性フィルムを合わせガラスの一部に設けるよりも合わせガラスの製造工程上容易である。
そのため、機能層が合わせガラスの一部に設けられているようにするためには、基材フィルムの一部に機能層が設けられた機能性フィルムを使用することが有効である。
【0152】
図18に示すヘッドアップディスプレイシステム2iでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図18には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
基材フィルム61は透明フィルムであり、基材フィルムの屈折率を樹脂中間膜の屈折率と同様にしておくことで、投影光に対して反射や振動方向の変化といった作用を及ぼさない。
そのため、第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0153】
図18に示すヘッドアップディスプレイシステム2iでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
【0154】
基材フィルム61は透明フィルムであり、基材フィルムの屈折率を樹脂中間膜の屈折率と同様にしておくことで、投影光に対して反射や振動方向の変化といった作用を及ぼさない。合わせガラス100に入射された第一投影光140は、反射光を生じることなく基材フィルム61を透過して、第二主面12に設けられた暗色部70に吸収される。
【0155】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないために、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0156】
図19は、本開示のヘッドアップディスプレイシステムの構成の別の一例を模式的に示す断面図である。
図19に示すヘッドアップディスプレイシステム2jにおいては、位相差層(半波長層)となる成分を第二ガラス板20の第三主面23に転写又は塗工することにより、機能層51を第三主面23に直接設けている。
【0157】
図19に示すヘッドアップディスプレイシステム2jでは、機能層51が、第一画像が投影される領域には設けられていない。また、機能層51が、後述する第二画像が投影される領域を覆うように島状に設けられており、機能層51は暗色部70のある領域や合わせガラス100の端部にまで達していない。
図19は、合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないことを示しており、[2]の要件を満たしている。
【0158】
図19に示すヘッドアップディスプレイシステム2jでは、第二投影光としてS偏光を用いてもよく、P偏光を用いてもよい。
図19には、第二投影光としてS偏光を用いた場合の光路を代表として示している。
第二投影光としてS偏光を用いる場合の光路は、
図10に示すヘッドアップディスプレイシステム2aと同様にすることができる。
第二投影光としてP偏光を用いる場合の光路は、
図11に示すヘッドアップディスプレイシステム2bと同様にすることができる。
なお、半波長層である機能層51に代えて、偏光反射層である機能層52を使用することもできる。その場合は
図14に示すヘッドアップディスプレイシステム2eの第二投影光と同様の光路となる。
【0159】
図19に示すヘッドアップディスプレイシステム2jでは、第一投影光137としてはP偏光成分を含む投影光が照射されてもよく、S偏光成分を含む投影光が照射されてもよい。第一投影光137は合わせガラス100の第四主面24で反射して、視認者はこの反射光に基づく光路138の延長上にある虚像136を観察する。
虚像136と視認者135の間には暗色部70があるので、虚像136は暗色部70を背景として観察される。
【0160】
合わせガラス100に入射された第一投影光140の光路に機能層51が設けられていないと、合わせガラス100に入射された第一投影光140の機能層51での反射が生じないため、当該反射による反射光に起因するゴーストの発生が防止される。
【0161】
本開示のヘッドアップディスプレイシステムでは、第二画像の焦点距離が第一画像の焦点距離より大きいことが好ましい。
図20は、第一画像と第二画像の焦点距離が異なる場合の各画像の例を、視認者からの視点で模式的に示す説明図である。
図20においては、自動車のウィンドシールドである合わせガラス100の下部に設けられた暗色部71(シェードバンド)に第一投影光が投影され、第一画像としての虚像136であるスピードメーターが視認される。スピードメーターの虚像136は暗色部71の位置に視認される。
合わせガラス100の透明部分に第二投影光が投影され、第二画像としての虚像146である、進行方向の表示が視認される。虚像146は合わせガラスの奥の位置に視認される。
すなわち、視認者からの焦点距離につき、第二画像の焦点距離が第一画像の焦点距離よりも大きくなっている。
【0162】
なお、第二画像を投影する形態について、第二投影光に偏光を利用するいわゆる偏光HUD方式について説明してきたが、それに代えていわゆる楔HUD方式を採用してもよい。楔HUD方式では、合わせガラスを厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備え、乗員から第二画像が鮮明に見えやすくなる。合わせガラスが楔角プロファイルを備えるために、第一ガラス板、樹脂中間膜及び第二ガラス板からなる群から選ばれる一つ以上を、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを持つ楔状にする。楔HUD方式において、第二投影光が無偏光、円偏光、楕円偏光であってもよい。
【符号の説明】
【0163】
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、101 ヘッドアップディスプレイシステム
10 第一ガラス板
11 第一主面
12 第二主面
20 第二ガラス板
23 第三主面
24 第四主面
30 樹脂中間膜
50 機能層
50a 機能層の室内側の面
51 機能層(半波長層)
51a 機能層の室内側の面
52 機能層(偏光反射層)
60 機能性フィルム
61 基材フィルム
70 暗色部(着色セラミック層)
71 暗色部(シェードバンド)
72 暗色部(機能層の室内側の面に設けられた着色樹脂層)
100 合わせガラス
122 移動体の室内側
123 移動体の室外側
131 投影部、第一投影部
135 視認者
136、136´ 虚像
137 第一投影光
138 第一投影光が第四主面で反射した反射光の光路
139 第一投影光が機能層で反射した反射光の光路
140 合わせガラスに入射された第一投影光
141 第二投影部
146 虚像(第二虚像)
147 第二投影光
148 第二投影光が第四主面で反射した反射光の光路
150 合わせガラスに入射された第二投影光