(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084369
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240618BHJP
A61M 25/098 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61M25/00 552
A61M25/098
A61M25/00 624
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198605
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】ウィジャイラック サイサンパン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB14
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC10
4C267EE01
4C267FF01
4C267GG34
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】本発明は、カテーテル先端部の柔軟性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】カテーテルは、中空のシャフトと、シャフトの先端部に設けられた先端側マーカーと、シャフトの先端部に設けられ、先端側マーカーより後端側に位置する、後端側マーカーと、先端側マーカーの外周を覆う先端側チューブと、後端側マーカーの外周を覆う後端側チューブと、を備え、先端側チューブの後端と、後端側チューブの先端は離間して設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
中空のシャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられた先端側マーカーと、
前記シャフトの先端部に設けられ、前記先端側マーカーより後端側に位置する、後端側マーカーと、
前記先端側マーカーの外周を覆う先端側チューブと、
前記後端側マーカーの外周を覆う後端側チューブと、を備え、
前記先端側チューブの後端と、前記後端側チューブの先端は離間して設けられている、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記シャフトは、前記シャフトの軸方向において外径が略一定であるストレート部と、
前記ストレート部よりも後端側に設けられ、先端の外径よりも後端の外径が大きいテーパ部と、を備え、
前記先端側マーカーと、前記後端側マーカーは、前記ストレート部に設けられている、カテーテル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカテーテルであって、
前記後端側チューブは前記テーパ部の外周を覆い、
前記後端側チューブのうち、前記テーパ部の先端側を覆う部分の曲げ剛性は、前記テーパ部の後端側を覆う部分の曲げ剛性よりも小さい、カテーテル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカテーテルは、さらに、
前記先端側マーカーより先端側に位置し、前記先端側マーカーと隣接する先端チップを備える、カテーテル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテルは、
前記シャフトの一部は、前記先端側チューブの後端と前記後端側チューブの先端の間に配置されている、カテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記先端側チューブの後端は、前記先端側マーカーの後端よりも後端側に位置し、
前記後端側チューブの先端は、前記後端側マーカーの先端よりも先端側に位置している、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カテーテルを用いた動脈瘤の治療方法が知られている。特許文献1には、X線透視下において、術者が視認することが可能な2つのマーカーを先端部に有するカテーテルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カテーテルの先端部には、血管内での進行を容易にするための柔軟性が求められていた。
【0005】
本発明は、カテーテル先端部の柔軟性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態は、カテーテルであって、中空のシャフトと、シャフトの先端部に設けられた先端側マーカーと、シャフトの先端部に設けられ、先端側マーカーより後端側に位置する、後端側マーカーと、先端側マーカーの外周を覆う先端側チューブと、後端側マーカーの外周を覆う後端側チューブと、を備え、先端側チューブの後端と、後端側チューブの先端は離間して設けられている。
【0008】
この構成によれば、先端側チューブと後端側チューブが離間していることにより、カテーテル先端部の柔軟性の向上を図ることができる。
【0009】
(2)上記形態のカテーテルにおいて、シャフトは、シャフトの軸方向において外径が略一定であるストレート部と、ストレート部よりも後端側に設けられ、先端の外径よりも後端の外径が大きいテーパ部と、を備え、先端側マーカーと、後端側マーカーは、ストレート部に設けられていてもよい。
【0010】
この構成によれば、先端側マーカーと後端側マーカーがストレート部に設けられていることにより、体内に挿入されたカテーテルのうち、より先端に近い部分の位置をX線透視下で視認することが容易となる。
【0011】
(3)上記形態のカテーテルにおいて、後端側チューブはテーパ部の外周を覆い、後端側チューブのうち、テーパ部の先端側を覆う部分の曲げ剛性は、テーパ部の後端側を覆う部分の曲げ剛性よりも小さくてもよい。
【0012】
本構成によれば、後端側チューブのうち、より先端側の部分の曲げ剛性が小さいことにより、カテーテルの先端側の柔軟性の向上を図ることができる。
【0013】
(4)上記形態のカテーテルにおいて、さらに、先端側マーカーより先端側に位置し、先端側マーカーと隣接する先端チップを備えてもよい。
【0014】
本構成によれば、例えば、先端チップを柔軟な材料で構成することにより、カテーテルの最先端の柔軟性の向上を図ることができる。
【0015】
(5)上記形態のカテーテルにおいて、シャフトの一部は、先端側チューブの後端と後端側チューブの先端の間に配置されていてもよい。
【0016】
本構成によれば、先端側チューブと後端側チューブの間にシャフトが配置されていることにより、他の医療機器をカテーテルの内部を通過させて体内に進めることが容易となる。
【0017】
(6)上記形態のカテーテルにおいて、先端側チューブの後端は、先端側マーカーの後端よりも後端側に位置し、後端側チューブの先端は、後端側マーカーの先端よりも先端側に位置していてもよい。
【0018】
本構成によれば、先端側チューブが先端側マーカーの後端を覆い、後端側チューブが、後端側マーカーの先端を覆うことで、マーカーが露出する可能性を低減することができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤ、ガイドワイヤの製造方法、カテーテル、カテーテルの製造方法、内視鏡、ダイレータ、などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のカテーテルの全体構成を例示した説明図である。
【
図2】カテーテル先端部の縦断面を例示した説明図である。
【
図3】マーカー近傍の縦断面を例示した説明図である。
【
図4】カテーテルの横断面を例示した説明図である。
【
図5】第2実施形態のカテーテルのマーカー近傍の縦断面を例示した説明図である。
【
図6】第3実施形態のカテーテルのマーカー近傍の縦断面を例示した説明図である。
【
図7】第4実施形態のカテーテルのマーカー近傍の縦断面を例示した説明図である。
【
図8】第5実施形態のカテーテルのマーカー近傍の縦断面を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のカテーテル1の全体構成を例示した説明図である。
図2は、カテーテル1の先端部の縦断面を例示した説明図である。以下では、カテーテル1の各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、各構成部材の、後端側に位置する端部を「後端」と記載し、「後端」を含み後端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「後端部」と記載する。
【0022】
カテーテル1は、血管や消化器官などに挿入され、人体の治療や診断などに用いられる医療機器である。
【0023】
図1、2に示すように、カテーテル1は、シャフト15(
図2)と、中間チューブ20と、先端側チューブ70と、後端側チューブ90と、先端側マーカー30と、後端側マーカー50と、先端チップ110と、コネクタ120(
図1)とを備えている。
【0024】
図2に示すように、シャフト15は、カテーテル1の長手方向に延びる中空の部材である。シャフト15は、ストレート部16と、テーパ部17を有している。ストレート部16は、シャフト15のうち、シャフト15の長手方向において外径が略一定の部分である。テーパ部17は、シャフト15のうち、シャフト15の先端側から後端側に向かって外径が大きくなる部分である。テーパ部17の後端17bの外径は、テーパ部17の先端17aの外径よりも大きい。本実施形態においては、ストレート部16はシャフト15の先端側に設けられており、テーパ部17はストレート部16より後端側に設けられている。シャフト15の内側にはルーメン18が形成されている。ルーメン18は、シャフト15の内周に取り囲まれることによりシャフト15の長手方向に延びる空間である。ルーメン18には、ガイドワイヤや、動脈瘤の治療に用いられる塞栓物質を運搬するためのデリバリーデバイスなどを通過させることができる。
【0025】
中間チューブ20は、シャフト15の外周を覆う中空の部材である。中間チューブ20の内部には、カテーテル1の長手方向に沿って編組21が設けられている。編組21は、4本のワイヤ22が編み込まれることにより形成されている。
【0026】
先端側チューブ70は、中間チューブ20の外周の一部と、先端側マーカー30の外周の一部を覆う中空の部材である。先端側チューブ70は、シャフト15のストレート部16の外周上に配置されている。
【0027】
後端側チューブ90は、中間チューブ20の外周の一部と、後端側マーカー50の外周を覆う中空の部材である。後端側チューブ90は、シャフト15の長手方向において先端側チューブ70より後端側に配置されている。後端側チューブ90は、第1の後端側チューブ92と、第2の後端側チューブ93を有している。第1の後端側チューブ92は、シャフト15のテーパ部17の先端側の外周を覆っている。第2の後端側チューブ93は、シャフト15のテーパ部17の後端側の外周を覆っている。第1の後端側チューブ92と、第2の後端側チューブ93の境界を、「境界B0」と呼ぶ。
【0028】
境界B0は、シャフト15のテーパ部17の先端17aと後端17bの間であって、先端17aと後端17bからの距離が等しいテーパ部17の中間位置よりも先端側に位置している。第1の後端側チューブ92の曲げ剛性は、第2の後端側チューブ93の曲げ剛性よりも小さい。そのため、後端側チューブ90は、テーパ部17の先端側を覆う部分の曲げ剛性が、基端側を覆う部分の曲げ剛性よりも小さい。後端側チューブ90のうちのテーパ部17の先端側を覆う部分の曲げ剛性と、基端側を覆う部分の曲げ剛性のそれぞれの測定方法は以下のとおりである。
(1)テーパ部17の先端側を覆う部分の曲げ剛性
後端側チューブ90のうち、テーパ部17の先端17aと中間位置との間を等間隔に4等分し、各位置における後端側チューブ90の曲げ剛性の平均値。
(2)テーパ部17の基端側を覆う部分の曲げ剛性
後端側チューブ90のうち、テーパ部17の中間位置と後端17bの間を等間隔に4等分し、各位置における後端側チューブ90の曲げ剛性の平均値。
なお、第1の後端側チューブ92と第2の後端側チューブ93との曲げ剛性の差異は、例えば、2つのチューブを硬さの異なる材料で形成することや、2つのチューブの厚さを変化させることによって設定することができる。
【0029】
シャフト15と、中間チューブ20と、先端側チューブ70と、後端側チューブ90とのそれぞれの材料は特に限定されないが、例えば、ポリアミドなどのナイロン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0030】
先端側マーカー30は、X線の透過率が低い材料により形成された、環状の部材である。先端側マーカー30は、シャフト15の先端部に設けられている。具体的には、先端側マーカー30は、シャフト15のストレート部16の外周上に配置されている。「先端側マーカー30がシャフト15の先端部に設けられる」とは、先端側マーカー30の少なくとも一部が、シャフト15の先端部と軸方向における位置が同じであることを意味しており、先端側マーカー30は必ずしもシャフト15の先端部に直接的に接続されていなくてもよい。ここでは、先端側マーカー30は、中間チューブ20を介してシャフト15の先端部に間接的に固定されている。先端側マーカー30の先端部の外周は先端チップ110により覆われており、先端側マーカー30の後端部の外周は先端側チューブ70により覆われている。
【0031】
後端側マーカー50は、X線の透過率が低い材料により形成された、環状の部材である。後端側マーカー50は、シャフト15の先端部に設けられている。具体的には、後端側マーカー50は、シャフト15のストレート部16の外周上に配置されている。「後端側マーカー50がシャフト15の先端部に設けられる」とは、後端側マーカー50の少なくとも一部が、シャフト15の先端部と軸方向における位置が同じであることを意味しており、後端側マーカー50は必ずしもシャフト15の先端部に直接的に接続されていなくてもよい。ここでは、後端側マーカー50は、中間チューブ20を介してシャフト15の先端部に間接的に固定されている。後端側マーカー50は、先端側マーカー30より後端側に設けられている。後端側マーカー50の外周は、後端側チューブ90により覆われている。
【0032】
先端側マーカー30と後端側マーカー50の形状は環状に限定されず、例えば、中間チューブ20の外周の一部のみを覆う板状でもよく、後述する第3実施形態において説明されるようなコイル状でもよい。
【0033】
先端側マーカー30の材料と、後端側マーカー50の材料は、特に限定されないが、例えば、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金)等を用いることができる。または、先端側マーカー30の材料と、後端側マーカー50の材料は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等に対して、三酸化ビスマス、タングステン、硫酸バリウム等の放射線不透過材料を混ぜて形成した樹脂材料を用いることができる。
【0034】
先端チップ110は、シャフト15のルーメン18と連通する空間を備える、中空の部材である。先端チップ110は、シャフト15の先端と、中間チューブ20の先端と、先端側チューブ70の先端と、先端側マーカー30の先端と接続されている。先端チップ110の後端部は、先端側マーカー30の先端部の外周を覆っている。
【0035】
先端チップ110の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどの樹脂材料等を用いることができる。
【0036】
コネクタ120は、後端側チューブ90の後端部に接続された、カテーテル1と、図示しないシリンジなどの他の医療機器を接続するための部材である。
【0037】
図3は、カテーテル1のうちの、マーカー(30、50)近傍の縦断面を例示した説明図である。上述したように、先端側チューブ70は、先端側マーカー30の外周の一部を覆っている。先端側チューブ70の後端71は、先端側マーカー30の後端31よりも後端側に位置している。これにより、先端側マーカー30の外周は、外部に露出していない。後端側チューブ90は、後端側マーカー50の外周を覆っている。後端側チューブ90の先端91は、後端側マーカー50の先端51よりも先端側に位置している。これにより、後端側マーカー50の外周は、外部に露出していない。
【0038】
先端側チューブ70の後端71と後端側チューブ90の先端91は、離間して設けられている。カテーテル1のうち、先端側チューブ70の後端71と後端側チューブ90の先端91の間の区間を「区間S0」と呼ぶ。区間S0に設けられた、先端側チューブ70の後端71と、後端側チューブ90の先端91との間の空間を「隙間80」と呼ぶ。隙間80は、中間チューブ20の外周に沿って形成されている。カテーテル1のうち、先端側マーカー30の先端から先端側チューブ70の後端71までの区間を「区間S1」と呼ぶ。カテーテル1のうち、後端側マーカー50の後端から後端側チューブ90の先端91までの区間を「区間S2」と呼ぶ。
【0039】
図4は、カテーテル1の横断面を例示した説明図である。
図4の(A)から(E)には、それぞれ、
図2のA-A断面、B-B断面、C-C断面、D-D断面、E-E断面、が例示されている。以下に、各図の説明を記載する。
・
図4(A)は、
図2のA-A断面であり、区間S1(
図3)の先端側の横断面である。
図4(A)に示されるように、先端側マーカー30の外周は先端側チューブ70により覆われている。
・
図4(B)は、
図2のB-B断面であり、区間S1(
図3)の後端側の横断面である。
図4(B)に示されるように、先端側マーカー30の後端31(
図3)より後端側には、中間チューブ20の外周が先端側チューブ70により覆われた部分が設けられている。
・
図4(C)は、
図2のC-C断面であり、区間S0(
図3)の横断面である。
図4(C)に示されるように、区間S0(
図3)においては、中間チューブ20の外周は、先端側チューブ70や後端側チューブ90に覆われておらず、露出している。つまり、隙間80(
図3)が中間チューブ20の外周に沿って形成されている。
・
図4(D)は、
図2のD-D断面であり、区間S2(
図3)の先端側の横断面である。
図4(D)に示されるように、後端側マーカー50の先端51(
図3)より先端側には、中間チューブ20の外周が後端側チューブ90により覆われた部分が設けられている。
・
図4(E)は、
図2のE-E断面であり、区間S2(
図3)の後端側の横断面である。
図4(E)に示されるように、後端側マーカー50の外周は、後端側チューブ90により覆われている。
【0040】
区間S1におけるカテーテル1は、シャフト15と、中間チューブ20と、先端側チューブ70と、先端側マーカー30と、により構成されている。区間S2におけるカテーテル1は、シャフト15と、中間チューブ20と、後端側チューブ90と、後端側マーカー50と、により構成されている。区間S0におけるカテーテル1には、先端側チューブ70、後端側チューブ90、先端側マーカー30、および後端側マーカー50が配置されていない。これによって、区間S0におけるカテーテル1の曲げ剛性は、区間S1におけるカテーテル1の曲げ剛性や区間S2におけるカテーテル1の曲げ剛性と比較して小さい。つまり、カテーテル1の先端側チューブ70と後端側チューブ90の間の部分の柔軟性が高い。また、区間S0には、チューブ(70、90)やマーカー(30、50)が配置されていないため、区間S0におけるカテーテル1の外径は、区間S1におけるカテーテル1の外径や区間S2におけるカテーテル1の外径よりも小さい。
【0041】
編組21は、中間チューブ20の長手方向に沿って、第1の方向に巻かれた2本のワイヤ22と、第1の方向とは異なる第2の方向に巻かれた2本のワイヤ22の組合せにより形成されている。ワイヤ22の材料は、特に限定されないが、例えば、タングステンを用いることができる。
【0042】
以上説明した第1実施形態のカテーテル1によれば、先端側チューブ70の後端71と後端側チューブ90の先端91が離間している。区間S0には、外層のチューブ(70、90)や、マーカー(30、50)が配置されていないため、区間S0におけるカテーテル1の曲げ剛性は、区間S0と隣接する区間(S1、S2)におけるカテーテル1の曲げ剛性よりも小さい。また、区間S0におけるカテーテル1の外径は、区間(S1、S2)におけるカテーテル1の外径よりも小さい。これらにより、カテーテル1の先端部の柔軟性の向上を図ることができる。区間S0は、先端側マーカー30と後端側マーカー50の間に位置しているため、カテーテル1のうちの、先端側マーカー30と後端側マーカー50の間の柔軟性の向上を図ることができる。
【0043】
カテーテル1は、動脈瘤の治療に用いることができる。先端側マーカー30と後端側マーカー50は、X線透視下においてカテーテル1の先端部の位置を表示するために機能し、また、動脈瘤の治療に用いる塞栓物質を運搬するためのデリバリーデバイスの位置合わせに用いることができる。具体的には、カテーテル1の先端部が治療部近傍に配置されたことをマーカー(30、50)の位置で確認し、デリバリーデバイスの先端部に備えられているマーカーと、マーカー(30、50)の位置を合わせることで、デリバリーデバイスの先端部を治療部近傍の適切な位置に配置することができる。カテーテル1のうちの区間Sに含まれる部分は、先行して血管内に挿入されたガイドワイヤに沿って、血管の末端に向かって進められる。カテーテル1は、湾曲する血管から受ける抵抗などにより、ガイドワイヤに追従して血管内を進むことが難しい場合があるが、カテーテル1のうちの区間Sに含まれる部分が柔軟であることで、ガイドワイヤに追従することが容易となる。
【0044】
先端側マーカー30と後端側マーカー50は、シャフト15のストレート部16に設けられている。カテーテル1の先端側に設けられたストレート部16にマーカー(30,50)が設けられることによって、体内に挿入されたカテーテル1の先端部の位置をX線透視下で視認することが容易となる。
【0045】
後端側チューブ90のうち、第1の後端側チューブ92の曲げ剛性は、第2の後端側チューブ93の曲げ剛性よりも小さい。これによって、カテーテル1の先端側の柔軟性の向上を図ることができる。後端側チューブ90の曲げ剛性が変化する部分(境界B0)は、テーパ部17の先端17aと後端17bの間に位置している。ストレート部16におけるカテーテル1の曲げ剛性の変化を抑制することができ、ストレート部16が、先行して体内に挿入されたガイドワイヤに沿って追従することが容易となる。
【0046】
カテーテル1は、先端側マーカー30より先端側に位置し、先端側マーカー30と隣接する先端チップ110を有している。例えば、先端チップ110に柔軟な材料を用いることによって、カテーテル1が体内を傷つけるおそれを低減することができる。
【0047】
先端側チューブ70の後端71と、後端側チューブ90の先端91の間(区間S0)には、シャフト15の一部が配置されている。これにより、区間S0においてもルーメン18を設けることができ、他の医療機器をルーメン18を通過させて体内に挿入させることが容易となる。
【0048】
先端側チューブ70の後端71は、先端側マーカー30の後端31よりも後端側に位置し、後端側チューブ90の先端91は、後端側マーカー50の先端51よりも先端側に位置している。これにより、先端側マーカー30の後端31が先端側チューブ70により覆われ、後端側マーカー50の先端51が後端側チューブ90により覆われる。これにより、マーカー(30、50)が外部に露出する可能性を低減することができ、マーカー(30、50)と体内壁が接触して体内壁が傷付けられてしまうおそれを低減することができる。
【0049】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のカテーテル1Bのマーカー(30B、50B)近傍の縦断面を例示した説明図である。カテーテル1Bは、第1実施形態のカテーテル1と比較して、マーカー(30B、50B)が中間チューブ20に埋設されているという点で異なる。カテーテル1Bの構成のうち、カテーテル1の構成と共通する点については説明を省略する。
【0050】
先端側マーカー30Bと後端側マーカー50Bは、中間チューブ20の先端部に埋設されている。先端側マーカー30Bの外周の一部は、先端側チューブ70により覆われている。後端側マーカー50Bの外周の一部は、後端側チューブ90により覆われている。マーカー(30B、50B)が中間チューブ20に埋設することにより、カテーテル1Bの外径を小さくすることが容易となる。カテーテル1Bによっても、カテーテル1Bの先端部の柔軟性の向上を図ることができる。
【0051】
<第3実施形態>
図6は、第3施形態のカテーテル1Cのマーカー(30C、50C)近傍の縦断面を例示した説明図である。カテーテル1Cは、第1実施形態のカテーテル1と比較して、マーカー(30C、50C)がコイル形状であるという点で異なる。カテーテル1Cの構成のうち、カテーテル1の構成と共通する点については説明を省略する。
【0052】
先端側マーカー30Cは、素線32Cをカテーテル1Cの長手方向に螺旋状に巻くことにより形成されたコイルである。後端側マーカー50Cは、素線52Cをカテーテル1Cの長手方向に螺旋状に巻くことにより形成されたコイルである。素線(32C、52C)は、上述した第1実施形態のカテーテル1のマーカー(30、50)と同様に、放射線不透過性の材料により形成することができる。先端側チューブ70は、素線32Cの外周を覆い、後端側チューブ90は、素線52Cの外周を覆っている。マーカー(30C、50C)がコイル状であることにより、カテーテル1Cの曲げ剛性がマーカー(30C、50C)によって増加することを抑制することができる。カテーテル1Cによっても、カテーテル1Cの先端部の柔軟性の向上を図ることができる。
【0053】
<第4実施形態>
図7は、第4施形態のカテーテル1Dのマーカー(30、50)近傍の縦断面を例示した説明図である。カテーテル1Dは、第1実施形態のカテーテル1と比較して、先端側チューブ70Dがシャフト15の先端よりも先端側に延びているという点で異なる。カテーテル1Dの構成のうち、カテーテル1の構成と共通する点については説明を省略する。
【0054】
先端側チューブ70Dの先端は、カテーテル1の長手方向において、シャフト15の先端、中間チューブ20の先端および先端側マーカー30の先端よりも先端側に配置されている。カテーテル1Dは、第1実施形態のカテーテル1が有している先端チップ110を有していないが、先端側チューブ70Dの先端部が先端チップ110と同じ機能を有することができる。つまり、先端側チューブ70Dに柔軟な材料を用いることにより、カテーテル1が体内を傷付けるおそれを低減することができる。また、先端チップ110と先端側チューブ70Dの接続部で、先端チップ110と先端側チューブ70Dが破断するというおそれがないため、カテーテル1の耐久性の向上を図ることができる。カテーテル1Dによっても、カテーテル1Dの先端部の柔軟性の向上を図ることができる。
【0055】
<第5実施形態>
図8は、第5施形態のカテーテル1Eのマーカー(30、50)近傍の縦断面を例示した説明図である。カテーテル1Eは、第1実施形態のカテーテル1と比較して、先端側チューブ70Eの後端71Eと、後端側チューブ90E(第1後端側チューブ92E)の先端91Eの形状がテーパ形状であるという点で異なる。カテーテル1Eの構成のうち、カテーテル1の構成と共通する点については説明を省略する。
【0056】
本実施形態において、先端側チューブ70Eの膜厚を「膜厚t1」と呼び、後端側チューブ90Eの膜厚を「膜厚t2」と呼ぶ。先端側チューブ70Eの後端71Eは、カテーテル1Eの先端側から後端側に向かって膜厚t1が徐々に小さくなるテーパ形状をしている。後端側チューブ90Eの先端91Eは、カテーテル1Eの後端側から先端側に向かって膜厚t2が徐々に小さくなるテーパ形状をしている。また、先端側チューブ70Eの後端71Eと後端側チューブ90Eの先端91Eは、外周面の一部が曲面により形成されている。これにより、先端側チューブ70Eの後端71Eの付近と後端側チューブ90Eの先端91E付近における、カテーテル1Eの長手方向における曲げ剛性の変化を緩やかにすることができる。カテーテル1Eによっても、カテーテル1Eの先端部の柔軟性の向上を図ることができる。
【0057】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
<変形例1>
第1実施形態から第5実施形態のカテーテル(1、1B、1C、1D、1E)において、先端側マーカー(30、30B、30C)と、後端側マーカー(50、50B、50C)は、シャフト15のストレート部16に設けられていた。しかし、先端側マーカー(30、30B、30C)と、後端側マーカー(50、50B、50C)は、シャフト15のテーパ部17に設けられていてもよい。
【0059】
<変形例2>
第1実施形態から第5実施形態のカテーテル(1、1B、1C、1D、1E)は、シャフト15と、中間チューブ20と、先端側チューブ(70、70D、70E)と、後端側チューブ(90,90E)が重なることにより構成されている。しかし、カテーテル(1、1B、1C、1D、1E)は、シャフト15を有していなくてもよく、また、中間チューブ20を有していなくてもよい。例えば、カテーテル(1、1B、1C、1D、1E)は、先端側マーカー(30、30B、30C)の外周を覆う先端側チューブ(70、70D、70E)と、後端側マーカー(50、50B、50C)の外周を覆う後端側チューブ(90,90E)により構成されてもよい。
【0060】
<変形例3>
第1実施形態から第5実施形態のカテーテル(1、1B、1C、1D、1E)において、先端側チューブ(70、70D、70E)の後端(71、71E)は先端側マーカー(30、30B、30C)の後端31よりも後端側に位置し、後端側チューブ(90,90E)の先端(91、91E)は、後端側マーカー(50、50B、50C)の先端51よりも先端側に位置していた。しかし、先端側チューブ(70、70D、70E)の後端(71、71E)は先端側マーカー(30、30B、30C)の後端31よりも先端側に位置してもよく、後端側チューブ(90,90E)の先端(91、91E)は、後端側マーカー(50、50B、50C)の先端51よりも後端側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…カテーテル
15…シャフト
16…ストレート部
17…テーパ部
18…ルーメン
20…中間チューブ
21…編組
22…ワイヤ
30…先端側マーカー
31…先端側マーカーの後端
50…後端側マーカー
51…後端側マーカーの先端
70…先端側チューブ
71…先端側チューブの後端
90…後端側チューブ
91…後端側チューブの先端
110…先端チップ
120…コネクタ
S0…先端側チューブと後端側チューブの間の区間
S1…先端側マーカーの先端から先端側チューブの後端までの区間
S2…後端側マーカーの後端から後端側チューブの先端までの区間