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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084375
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】移動用車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20240618BHJP
   B62B 5/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61H3/04
B62B5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198615
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴大
【テーマコード(参考)】
3D050
4C046
【Fターム(参考)】
3D050CC05
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE14
3D050GG02
3D050JJ01
3D050JJ07
4C046AA24
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD08
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD46
(57)【要約】
【課題】上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、各フレーム部に支持された一対のブレーキレバー又は一対のハンドルである一対の所定部材とを備える移動用車において、各所定部材について所望の長さを確保しながら、各フレーム部を左右に接近させた際に各所定部材が互いに干渉するのを回避すること。
【解決手段】歩行車10は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部11と、各フレーム部11の上端側に支持され左右方向の内側に延びるように設けられた一対の前方レバー32とを備える。各フレーム部11は、左右に接近する接近状態と左右に離間する離間状態とに移行可能となっている。各前方レバー32は、回動可能な可動レバー部45を有する。各前方レバー32の可動レバー部45は、回動することにより、各フレーム部11が接近状態にある場合において他方の前方レバー32に干渉するのを回避できる退避位置に退避可能となっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、
前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、左右方向の内側に延びるように設けられた一対のブレーキレバー又は一対のハンドルである一対の所定部材と、を備え、
前記各フレーム部が左右に離間する離間状態と左右に接近する接近状態とに移行可能となっている移動用車であって、
前記一対の所定部材のうち少なくとも一方の所定部材は、動作可能な可動部を有し、
前記可動部は、動作することにより、前記各フレーム部が前記接近状態にある場合において他方の前記所定部材との干渉を回避できる退避位置へと退避可能とされている、移動用車。
【請求項2】
前記一対の所定部材は前記一対のブレーキレバーであり、
前記一対のブレーキレバーのうち少なくとも一方のブレーキレバーが前記可動部を有している、請求項1に記載の移動用車。
【請求項3】
前記一対のブレーキレバーは、第1方向に向けてブレーキ操作を行うものであり、
前記可動部が前記退避位置へ退避する際の退避方向は、前記第1方向と異なる方向である、請求項2に記載の移動用車。
【請求項4】
前記一対のブレーキレバーは、前記第1方向と異なる第2方向に向けて車輪の回転をロックするロック操作を行うことが可能であり、
前記退避方向は、前記第2方向と異なる方向である、請求項3に記載の移動用車。
【請求項5】
前記可動部は、前記所定部材における先端側の一部により構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の移動用車。
【請求項6】
前記一対のハンドルと、
前記一対のブレーキレバーと、
前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、左右方向の内側に延びるように設けられた左右一対の肘置き部と、を備え、
前記各肘置き部は、前記フレーム部に回動可能に支持され、その回動により、前記各フレーム部が前記離間状態にある場合には左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近状態にある場合には上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす凸状態とされる移動用車であって、
前記一対のハンドルはそれぞれ前記各肘置き部と一体で設けられ、前記各フレーム部が前記接近状態へ移行する際には前記凸状態へ移行する前記各肘置き部とともに上方に回動するようになっており、
前記一対のブレーキレバーは、前記各フレーム部に固定されたレバー支持部に支持され、前記各フレーム部が前記接近状態に移行するのに伴い左右に接近するようになっており、
前記一対の所定部材は前記一対のブレーキレバーであり、
前記一対のブレーキレバーのうち少なくとも一方のブレーキレバーが前記可動部を有している、請求項1に記載の移動用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動用車に関する。
【背景技術】
【0002】
人や荷物の移動を補助する移動用車としては、従来、例えば高齢者等の歩行を補助する歩行車や、荷物を運ぶ際に用いられるキャリーカート、車椅子、ベビーカー等が知られている。移動用車は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、各フレーム部の上端側に支持された左右一対のハンドル及び左右一対のブレーキレバーとを備える。
【0003】
特許文献1には、各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となっている歩行車が開示されている。この歩行車は、各フレーム部が左右に離間することで展開状態となり、各フレーム部が左右に接近することで折り畳み状態となる。また、特許文献1の歩行車では、一対のハンドルと一対のブレーキレバーとがそれぞれ上下に延びる向きで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-126023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の歩行車において、一対のハンドル及び一対のブレーキレバーを、それらの使い勝手の点等から、上下に延びる向きで配置することに代え、左右に延びる向きで配置することが考えられる。この場合、例えば一対のハンドル及び一対のブレーキレバーをフレーム部に対して左右方向の内側に延びるように配置することが考えられる。
【0006】
しかしながら、一対のハンドル及び一対のブレーキレバーを上記のように配置した場合、各フレーム部を左右に接近させて歩行車を折り畳んだ際に、左右のブレーキレバー又は左右のハンドルが互いに干渉するおそれがある。
【0007】
また、ブレーキレバーやハンドルの長さを短くすれば上記の干渉を回避できるものの、そうすると今度は、ブレーキレバーを操作しにくくなったり、ハンドルを把持しにくくなったりする等の不都合が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、各フレーム部に支持された一対のブレーキレバー又は一対のハンドルである一対の所定部材とを備える移動用車において、各所定部材について所望の長さを確保しながら、各フレーム部を左右に接近させた際に各所定部材が互いに干渉するのを回避することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の移動用車は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、左右方向の内側に延びるように設けられた一対のブレーキレバー又は一対のハンドルである一対の所定部材と、を備え、前記各フレーム部が左右に離間する離間状態と左右に接近する接近状態とに移行可能となっている移動用車であって、前記一対の所定部材のうち少なくとも一方の所定部材は、動作可能な可動部を有し、前記可動部は、動作することにより、前記各フレーム部が前記接近状態にある場合において他方の前記所定部材との干渉を回避できる退避位置へと退避可能とされている。
【0010】
第1の発明によれば、一対の所定部材のうち少なくとも一方の所定部材が、動作可能な可動部を有している。可動部は、動作することにより、各フレーム部が接近状態にある場合において他方の所定部材との干渉を回避できる退避位置へ退避可能とされている。これにより、可動部を退避位置へ退避させることにより、各フレーム部を左右に接近させた際に可動部が他方の所定部材と干渉するのを回避できる。また、可動部の退避により各所定部材の干渉を回避しているため、各所定部材の長さについては所望の長さを確保することができる。よって、以上より、各所定部材の長さを確保しながら、各フレーム部が接近状態にある場合に各所定部材が干渉するのを回避できる。
【0011】
第2の発明の移動用車は、第1の発明において、前記一対の所定部材は前記一対のブレーキレバーであり、前記一対のブレーキレバーのうち少なくとも一方のブレーキレバーが前記可動部を有している。
【0012】
第2の発明によれば、一対のブレーキレバーのうち少なくとも一方のブレーキレバーが可動部を有している。この場合、ブレーキレバーの長さを確保してブレーキレバーを操作し易くしながらも、各フレーム部の接近時に左右のブレーキレバーが干渉するのを回避できる。
【0013】
第3の発明の移動用車は、第2の発明において、前記一対のブレーキレバーは、第1方向に向けてブレーキ操作を行うものであり、前記可動部が前記退避位置へ退避する際の退避方向は、前記第1方向と異なる方向である。
【0014】
第3の発明によれば、可動部の退避方向がブレーキレバーによるブレーキ操作の方向(第1方向)と異なる方向となっている。この場合、ブレーキ操作された際に、可動部が意図せず退避位置へ移動してしまうのを抑制できる。
【0015】
第4の発明の移動用車は、第3の発明において、前記一対のブレーキレバーは、前記第1方向と異なる第2方向に向けて車輪の回転をロックするロック操作を行うことが可能であり、前記退避方向は、前記第2方向と異なる方向である。
【0016】
移動用車には、ブレーキレバーによりブレーキ操作に加え、ロック操作を行えるものがある。第4の発明では、かかる移動用車において、可動部の退避方向を、ブレーキレバーによるロック操作の方向(第2方向)とも異ならせている。この場合、ブレーキレバーによりブレーキ操作された場合だけでなく、ロック操作された際にも、可動部が意図せず退避位置へ移動してしまうのを抑制できる。
【0017】
第5の発明の移動用車は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記可動部は、前記所定部材における先端側の一部により構成されている。
【0018】
第5の発明によれば、所定部材における先端側の一部が可動部となっているため、所定部材における可動部以外の部分(基端側の部分)をフレーム部側に支持させることができる。これにより、所定部材の全体が可動部となっている場合と比べて、所定部材の支持構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0019】
第6の発明の移動用車は、第1の発明において、前記一対のハンドルと、前記一対のブレーキレバーと、前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、左右方向の内側に延びるように設けられた左右一対の肘置き部と、を備え、前記各肘置き部は、前記フレーム部に回動可能に支持され、その回動により、前記各フレーム部が前記離間状態にある場合には左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近状態にある場合には上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす凸状態とされる移動用車であって、前記一対のハンドルはそれぞれ前記各肘置き部と一体で設けられ、前記各フレーム部が前記接近状態へ移行する際には前記凸状態へ移行する前記各肘置き部とともに上方に回動するようになっており、前記一対のブレーキレバーは、前記各フレーム部に固定されたレバー支持部に支持され、前記各フレーム部が前記接近状態に移行するのに伴い左右に接近するようになっており、前記一対の所定部材は前記一対のブレーキレバーであり、前記一対のブレーキレバーのうち少なくとも一方のブレーキレバーが前記可動部を有している。
【0020】
移動用車には、ユーザの肘を置くための肘置き部が設けられている場合がある。かかる移動用車では、各肘置き部がフレーム部に回動可能に支持され、その回動により、各肘置き部が、左右に展開される展開状態と、上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす凸状態とに移行可能となっている場合がある。第6の発明では、かかる移動用車において、一対のハンドルを各肘置き部と一体に設ける一方、一対のブレーキレバーについては各フレーム部に固定されたレバー支持部に支持させる構成としている。ここで、仮にブレーキレバーを肘置き部と一体で設けた場合、ブレーキレバーの支持構造が著しく複雑になるおそれがある。その点、第6の発明では、ブレーキレバーをフレーム部に固定したレバー支持部に支持させているため、上記の問題が生じることがない。
【0021】
しかしながら、ブレーキレバーをレバー支持部に支持させる上述の構成では、各フレーム部が互いに接近すると、各ブレーキレバーが左右に接近して干渉するおそれがある。その点、第6の発明では、かかる構成において、ブレーキレバーに上記第1の発明を適用している。そのため、このような構成であっても、各ブレーキレバーが互いに干渉するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】展開状態における歩行車を斜め前方から見た斜視図。
図2】折り畳み状態における歩行車を斜め前方から見た斜視図。
図3】展開状態における歩行車を示す正面図。
図4】折り畳み状態における歩行車を示す正面図。
図5】フレーム部の上端側に設けられた各部の構成を示す側面図。
図6】前方レバーの可動レバー部周辺を可動レバー部の回動方向と直交する方向から見た図。
図7】前方レバーの可動レバー部周辺を示す斜視図。
図8】前方レバーの先端側部分をレバー本体部から離した状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の移動用車を、高齢者等の歩行を補助する歩行車として具体化した一実施の形態について説明する。本実施形態では、歩行車10が左右方向に展開及び折り畳み可能となっている。図1及び図2は、歩行車10を斜め前方から見た斜視図である。図3及び図4は、歩行車10を示す正面図である。図1及び図3では歩行車10の展開状態を示し、図2及び図4では歩行車10の折り畳み状態を示している。なお、以下の説明では、歩行車10を移動させる際の移動方向を前後方向とし、その前後方向に対して直交する方向を左右方向として説明を行う。
【0024】
図1及び図3に示すように、歩行車10は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部11と、各フレーム部11の下端側に設けられた前輪12及び後輪13とを備える。各フレーム部11は、アルミニウム等の軽金属により形成されている。各フレーム部11は、その下部に設けられ前後方向に延びる下部フレーム15と、下部フレーム15の中間部から上方に延びる縦フレーム16とを有する。各下部フレーム15の前端部に前輪12が取り付けられ、後端部に後輪13が取り付けられている。なお、歩行車10が移動用車に相当する。
【0025】
各フレーム部11は、左右に離間する離間状態(図1図3の状態)と、左右に接近する接近状態(図2図4の状態)とに移行可能となっている。各フレーム部11は、連結部材17を介して互いに連結されている。連結部材17は、X字状をなして交差する一対のリンク部17aを有している。各リンク部17aは、互いの交差部に設けられた軸部17bを介して回動可能に連結されている。軸部17bは前後方向に延びている。各リンク部17aの回動により、連結部材17が左右に展開及び折り畳み変形可能となっている。また、各リンク部17aの両端部はそれぞれ各フレーム部11に連結されている。
【0026】
各フレーム部11が離間状態とされると、連結部材17が左右に展開される。このとき、歩行車10は展開状態(図1図3の状態)とされる。また、各フレーム部11が接近状態とされると、連結部材17が左右に折り畳まれる。このとき、歩行車10は折り畳み状態(図2図4の状態)とされる。
【0027】
各フレーム部11の間には、腰掛け可能な座部18が設けられている。また、座部18の下面側には、物を収容可能な収容かご19が設けられている。座部18と収容かご19とはいずれも可撓性を有するシート材により形成され、各フレーム部11が接近状態とされるとそれに追従して折り畳み変形するようになっている。また、座部18の前方には、物を載せ置くことが可能なトレイ23が設けられている。トレイ23は、各フレーム部11が接近状態にある場合には取り外される。
【0028】
続いて、各フレーム部11の上端側の構成について、図1及び図3に加え、図5を用いながら説明する。図5は、フレーム部11の上端側に設けられた各部の構成を示す側面図である。
【0029】
図1図3及び図5に示すように、各フレーム部11の縦フレーム16の上端側には、ハンドル21とアームレスト22とが設けられている。ハンドル21は、ユーザが歩行車10を走行させる際に把持する部分である。ハンドル21は、ハンドルフレーム24により構成されている。ハンドルフレーム24はパイプ材からなる。
【0030】
各縦フレーム16の上端部には、ハンドルフレーム24の基端側が挿入された挿入部25が固定されている。挿入部25は、前後方向に延びる円筒状に形成されている。ハンドルフレーム24は、前後方向に延び挿入部25に挿入された基端側部分と、基端側部分よりも前方に延びる先端側部分とを有している。ハンドルフレーム24の先端側部分にはハンドルカバー26が被せられている。この場合、ハンドルフレーム24の先端側部分とハンドルカバー26とによりハンドル21が構成されている。
【0031】
各ハンドル21は、左右方向の内側に向けて延びており、換言すると左右方向において互いに近づく側に延びている。詳しくは、各ハンドル21は、左右方向の内側に向かうほど上方にかつ前方に位置するよう斜めに延びる傾斜部分21aと、傾斜部分21aの先端から左右方向の内側に水平に延びる水平部分21bとを有している。
【0032】
アームレスト22は、ユーザが歩行車10を走行させる際に肘を置く部分であり、ハンドル21よりも後方に設けられている。各アームレスト22は、左右方向の内側に延びるように設けられ、換言すると互いに近づく側に延びるように設けられている。また、各アームレスト22は、左右に近接して配置されている。各アームレスト22は、ハンドルフレーム24に取付部28を介して取り付けられている。そのため、アームレスト22は、ハンドルフレーム24と一体に設けられ、ひいてはハンドル21と一体に設けられている。なお、アームレスト22が肘置き部に相当する。
【0033】
各ハンドルフレーム24は、挿入部25に挿入された基端側部分を回動軸として回動可能となっている。これにより、ハンドルフレーム24と一体に設けられたアームレスト22も回動可能となっている。この場合、各アームレスト22は、フレーム部11の上端側にハンドルフレーム24を介して回動可能に支持された状態となっている。
【0034】
各アームレスト22は、各フレーム部11が左右に離間する離間状態と、左右に接近する接近状態とに移行するのに連動して回動するようになっている。具体的には、各アームレスト22は、各フレーム部11が離間状態にある場合には左右に展開された展開状態(図1図3の状態)とされ、各フレーム部11が接近状態にある場合には上方に凸となるように折り曲げられた形状をなす凸状態(図2図4の状態)とされる。
【0035】
なお、各アームレスト22の境界部には、各アームレスト22を連結する連結部29が設けられている。連結部29はヒンジ構造を有しており、各アームレスト22が展開状態及び凸状態に移行可能なようにそれら各アームレスト22を連結している。
【0036】
各ハンドル21は、上述のようにアームレスト22と一体に設けられている。そのため、各アームレスト22が展開状態及び凸状態に移行(回動)するのに伴い、各ハンドル21も回動するようになっている。各アームレスト22が展開状態から凸状態に移行すると、各ハンドル21はアームレスト22とともに上方に回動して上向きに突出した状態(図2図4の状態)とされる。
【0037】
各フレーム部11の縦フレーム16の上端側には、レバー支持部31を介して前方レバー32及び後方レバー33が取り付けられている。レバー支持部31は樹脂製のケースであり、各縦フレーム16の上端部にそれぞれ固定されている。このレバー支持部31に前方レバー32及び後方レバー33がそれぞれ支持されている。前方レバー32及び後方レバー33はいずれも棒状に形成されている。前方レバー32はレバー支持部31に対して前方に延びており、後方レバー33はレバー支持部31に対して後方に延びている。
【0038】
前方レバー32及び後方レバー33は、歩行車10にブレーキをかけるためのレバーである。これら各レバー32,33は、レバー支持部31の内部でブレーキワイヤ35と接続されている。ブレーキワイヤ35は、下部フレーム15の後端側に設けられたブレーキ作動部36と接続されている。前方レバー32又は後方レバー33が操作されると、ブレーキ作動部36が作動して後輪13に制動力(ブレーキ力)が付与される。なお、ブレーキワイヤ35は、軟質製のチューブ37内に挿通されている。
【0039】
各前方レバー32は、ハンドル21の下方に設けられている。各前方レバー32は、ハンドル21に沿って左右方向の内側に延びており、換言すると左右方向において互いに近づく側に延びている。この場合、各前方レバー32は、ハンドル21の傾斜部分21aに沿って延びる部分と、水平部分21bに沿って延びる部分とをそれぞれ有している。なお、前方レバー32が「ブレーキレバー」及び「所定部材」に相当する。
【0040】
各前方レバー32は、その基端側(後端側)がレバー支持部31に回動可能に支持されている。詳しくは、前方レバー32は、左右方向に延びる回動軸34を介してレバー支持部31に回動可能に支持されている。前方レバー32は、待機位置(図5の実線参照)と、待機位置よりも上方にあるブレーキ位置(図5の一点鎖線参照)と、待機位置よりも下方にあるロック位置(図5の二点鎖線参照)との間で回動可能となっている。
【0041】
前方レバー32が待機位置からブレーキ位置に操作(つまりブレーキ操作)されると、後輪13に制動力が付与される。これにより、後輪13にブレーキがかけられる。また、前方レバー32が待機位置からロック位置に操作(つまりロック操作)されると、ブレーキ操作された場合と同様、後輪13に制動力が付与される。具体的には、前方レバー32がロック操作されると、前方レバー32がロック位置において保持され、後輪13に制動力が継続して付与される。これにより、後輪13にブレーキが継続してかけられ、後輪13がロック状態(回転禁止状態)とされる。
【0042】
ここで、上述したように、各前方レバー32は左右方向の内側に向けて延びるように設けられている。そのため、各フレーム部11を左右に接近させた際に、各前方レバー32が互いに干渉することが懸念される。そこで、本実施形態では、その点を鑑み、各前方レバー32に上記干渉を回避するための構成を設けている。以下では、その干渉を回避するための構成について、図5に加え、図6図8を用いながら説明する。図6は、前方レバー32の可動レバー部45周辺を可動レバー部45の回動方向と直交する方向から見た図である。図7は、前方レバー32の可動レバー部45周辺を示す斜視図である。図8は、前方レバー32の先端側部分42をレバー本体部41から離した状態で示す斜視図である。
【0043】
図5図8に示すように、各前方レバー32は、レバー支持部31に取り付けられたレバー本体部41と、レバー本体部41の先端側に接続された先端側部分42とを有する。レバー本体部41は、レバー支持部31に回動軸34(図5参照)を介して取り付けられたレバー基部41aと、レバー基部41aの先端側に接続されたレバー棒部41bとを有する。レバー棒部41bは、ハンドル21の傾斜部分21aに沿って斜めに延びており、つまりは、左右方向の内側に向かうほど上方にかつ前方に位置するよう斜めに延びている。
【0044】
先端側部分42は、レバー棒部41bの先端側に接続されたベース部44と、ベース部44の先端側に接続された可動レバー部45とを有する。ベース部44は、レバー棒部41bの先端側が挿入される筒状部44aを有している。レバー棒部41bの先端側は細くされており、その先端側が筒状部44aに挿入されている。ベース部44は、筒状部44aに挿入された上記先端側にビス47により取り付けられている。これにより、ベース部44は、レバー本体部41に着脱可能に取り付けられている。
【0045】
可動レバー部45は、その基端部がベース部44に接続され、その接続された基端部から左右方向の内側に向けて延びている。詳しくは、可動レバー部45は、その基端側がハンドル21の傾斜部分21aに沿って斜めに延びており、先端側がハンドル21の水平部分21bに沿って水平に延びている。
【0046】
可動レバー部45の基端部には、溝部45aが形成されている。溝部45aは、可動レバー部45の基端において開放されている。可動レバー部45は、溝部45aにベース部44の先端側を入り込ませた状態で、ベース部44の先端側に軸部46を介して接続されている。軸部46は、上下方向に延びており、詳しくは上下方向に対して後方に傾斜するする方向に延びている。これにより、可動レバー部45は、軸部46を中心として左右方向に回動可能となっている。また、軸部46の延びる方向は、前方レバー32の回動軸34の延びる方向(つまり左右方向)とは異なる方向となっている。なお、可動レバー部45が「可動部」に相当する。
【0047】
可動レバー部45は、回動することにより、通常位置(図1図3に示す位置)と、通常位置から退避された退避位置(図2図4に示す位置)との間で変位可能となっている。通常位置とは、ユーザにより前方レバー32が使用される際に可動レバー部45が配置される位置のことである。それに対して、退避位置とは、各フレーム部11が接近状態にある場合において、可動レバー部45が他方の前方レバー32(詳しくは、当該可動レバー部45を有する前方レバー32とは別の前方レバー32)との干渉を回避できる位置のことである。なお、図6では、退避位置にある可動レバー部45を二点鎖線で示している。
【0048】
各可動レバー部45が通常位置から退避位置に退避する際には、各可動レバー部45が左右方向の外側に向けて回動する。換言すると、各可動レバー部45が左右方向において互いに離れる側に回動する。したがって、可動レバー部45が退避する際の退避方向は、左右方向の外側に向けた方向となっている。この場合、可動レバー部45の退避方向は、前方レバー32が待機位置からブレーキ位置へとブレーキ操作される際の方向(図5参照)、つまり上方向とは異なる方向となっている。また、可動レバー部45の退避方向は、前方レバー32が待機位置からロック位置へロック操作される際の方向(図5参照)、つまり下方向とも異なる方向となっている。
【0049】
可動レバー部45は、溝部45aを挟んで対向する一対の対向部45bを有している。各対向部45bの内面にはそれぞれ突起部49が設けられている。図8では、各突起部49のうち一方の突起部49のみ示されている。可動レバー部45が通常位置にある場合には、各突起部49のうちいずれか一方の突起部49(図示略)がベース部44に設けられた係合部(図示略)に係合する。この係合により、可動レバー部45は通常位置において保持される。また、可動レバー部45が退避位置にある場合には、他方の突起部49がベース部44に設けられた係合部(図示略)に係合する。この係合により、可動レバー部45は退避位置において保持される。このように、可動レバー部45は、通常位置及び退避位置のそれぞれで保持可能となっている。なお、各突起部49が「保持手段」に相当する。
【0050】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0051】
各前方レバー32は、回動可能な可動レバー部45を有している。可動レバー部45は、回動することにより、各フレーム部11が接近状態にある場合において他方の前方レバー32との干渉を回避できる退避位置へ退避可能とされている。これにより、可動レバー部45を退避位置へ退避させることにより、各フレーム部11を左右に接近させた際に可動レバー部45が他方の前方レバー32と干渉するのを回避できる。また、可動レバー部45の退避により各前方レバー32の干渉を回避するようにしているため、各前方レバー32の長さについては所望の長さを確保することができる。よって、以上より、各前方レバー32の長さを確保しながら、各フレーム部11が接近状態にある場合に各前方レバー32が干渉するのを回避できる。
【0052】
可動レバー部45の退避方向は、前方レバー32によるブレーキ操作の方向(第1方向に相当)と異なる方向となっている。この場合、ブレーキ操作された際に、可動レバー部45が意図せず退避位置へ移動してしまうのを抑制することができる。
【0053】
可動レバー部45の退避方向は、前方レバー32によるロック操作の方向(第2方向に相当)と異なる方向となっている。この場合、ロック操作された際に、可動レバー部45が意図せず退避位置へ移動してしまうのを抑制することができる。
【0054】
前方レバー32における先端側の一部が可動レバー部45となっているため、前方レバー32における可動レバー部45以外の部分(基端側の部分)をフレーム部11側(詳しくはレバー支持部31)に支持させることができる。これにより、前方レバー32全体が可動部となっている場合と比べて、前方レバー32の支持構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0055】
可動レバー部45を通常位置及び退避位置のそれぞれで保持できるようにしたため、前方レバー32を使用している際や、可動レバー部45を退避させている際に、可動レバー部45が意図せず動作してしまうのを確実に防止することができる。
【0056】
先端側部分42のベース部44は、レバー本体部41に着脱可能に取り付けられている。これにより、市場に流通されている歩行車10の前方レバーに対して先端側部分42を後付けすることが可能となる。
【0057】
各前方レバー32が可動レバー部45を有しているため、各前方レバー32のうち一方だけが可動レバー部45を有している場合と比べ、各前方レバー32の長さをより確保することができ、その結果、各前方レバー32の操作をよりし易くすることができる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、可動レバー部45を左右方向の外側に回動することにより退避位置に退避させる構成としたが、例えば可動レバー部45を上方又は下方に回動することにより退避位置に退避させる構成としてもよい。要するに、可動レバー部45を退避位置に退避させることができれば、可動レバー部45の回動方向はいずれの方向であってもよい。
【0060】
・可動レバー部45は必ずしも回動可能とする必要はなく、例えばスライド可能としてもよい。この場合、可動レバー部を、前方レバー32における可動レバー部以外の部分に沿ってスライド可動とし、そのスライドにより退避位置に退避させる構成とすることが考えられる。
【0061】
・各フレーム部11が接近状態にある場合に各前方レバー32の干渉を回避できるのであれば、各前方レバー32のうちいずれか一方にのみ可動レバー部45を設ける構成としてもよい。
【0062】
・歩行車には、各ハンドルがフレーム部11に固定されているものがある。かかる歩行車では、各フレーム部11が接近状態になると、各ハンドルが互いに干渉するおそれがある。そこで、このような歩行車において、各ハンドルが、回動可能な可動部を有する構成とすることが考えられる。この場合、可動部が回動することにより、可動部が、各フレーム部11が接近状態にある場合において他方のハンドルとの干渉を回避できる退避位置に退避可能な構成とする。かかる構成によれば、各ハンドルについて所望の長さを確保しながら、各フレーム部11が接近状態にある場合に各ハンドルが互いに干渉するのを回避することができる。なお、この構成では、ハンドルが「所定部材」に相当する。
【0063】
・上記実施形態では、本発明の移動用車を歩行車10として具体化したが、歩行車10に限らず、例えばシルバーカーやベビーカー、キャリーカート、車椅子等、種々の移動用車に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…移動用車としての歩行車、11…フレーム部、21…ハンドル、22…肘置き部としてのアームレスト、31…レバー支持部、32…ブレーキレバー及び所定部材としての前方レバー、45…可動部としての可動レバー部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8