(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084376
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】逆潮流防止装置およびそれを用いた交流電源システムならびにその作動方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240618BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240618BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
H02J3/38 130
H02J3/38 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198619
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】502139910
【氏名又は名称】株式会社クリーンベンチャー21
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室園 幹男
(72)【発明者】
【氏名】金森 洋一
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AC05
5G064AC09
5G064DA07
5G066HA10
5G066HA15
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】宅内配線を通して負荷に電力を供給することができる、低コストかつ導入が容易な逆潮流防止装置を提供する。
【解決手段】独立電源と宅内配線の間に設置され、かつ出力調整機能部および通信機能付き制御装置を有する逆潮流防止装置であり、独立電源からの出力は、DC/AC変換装置を有するインバーターを介して宅内配線に供給され、通信機能付き制御装置は、逆潮流防止装置が宅内配線に接続されて電源が入った状態で無線機能付きスマートメーターと通信を行って通信データを取得し、出力調整機能部は、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上であれば、独立電源からの出力を開始し、もしくは出力状態を維持し、インバーターのDC/AC変換装置を稼働させて宅内配線から負荷に電力供給し、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が所定の値未満であれば、電力供給を停止等する逆潮流防止装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立電源と宅内配線の間に設置され、かつ出力調整機能部および通信機能付き制御装置を有する逆潮流防止装置であり、
前記独立電源からの出力は、DC/AC変換装置を有するインバーターを介して宅内配線に供給され、
前記通信機能付き制御装置は、前記逆潮流防止装置が前記宅内配線に接続されて電源が入った状態で無線機能付きスマートメーターと通信を行って通信データを取得し、
前記出力調整機能部は、
取得した前記通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上であれば、前記独立電源からの出力を開始し、もしくは出力状態を維持し、前記インバーターのDC/AC変換装置を稼働させて前記宅内配線から負荷に電力供給し、
取得した前記通信データが示す電力供給に関する計測値が前記所定の値未満であれば、前記通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上になるまで前記インバーターからの電力供給を減少させ、0近傍まで絞り込み、または電力供給を停止することを特徴とする、逆潮流防止装置。
【請求項2】
太陽光発電パネルと、
DC/AC変換装置およびMPPT出力コントロール装置を有するインバーターと、
通信機能付き制御装置および出力調整機能部を有する逆潮流防止装置と、
を有する、交流電源システムであって、
前記インバーターは、宅内配線との接続部を有し、
前記逆潮流防止装置は、前記太陽光発電パネルと前記インバーターとの間に接続されており、
系統電源と分電盤の入力側の間に無線機能付きスマートメーターが設置されており、
前記逆潮流防止装置は、前記無線機能付きスマートメーターの出力側に設置された前記分電盤の出力側で前記宅内配線と接続され、
前記通信機能付き制御装置が、前記無線機能付きスマートメーターの通信データを受信し、
前記出力調整機能部は、前記通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上であれば、前記インバーターから前記宅内配線に電力供給することを特徴とする、交流電源システム。
【請求項3】
前記宅内配線に前記インバーターから電力供給した後、
前記通信データが示す電力供給に関する計測値が前記所定の値未満にならないよう、前記DC/AC変換装置の入力側で前記太陽光発電パネルの出力を制御することを特徴とする、請求項2記載の交流電源システム。
【請求項4】
前記通信データが示す電力供給に関する計測値が、瞬時電流計測値である、請求項2または3に記載の交流電源システム。
【請求項5】
太陽光発電パネルと、
DC/AC変換装置およびMPPT出力コントロール装置を有するインバーターと、
通信機能付き制御装置および出力調整機能部を有する逆潮流防止装置と、
を有し、
前記インバーターは、ACプラグを有し、
前記逆潮流防止装置は、前記太陽光発電パネルと前記インバーターとの間に接続されており、
宅内配線のコンセントに前記ACプラグを差し込むことで、前記通信機能付き制御装置の電源が入る交流電源システムの操作方法であって、
前記通信機能付き制御装置が前記無線機能付きスマートメーターと通信を行って通信データを取得する工程と、
取得した前記通信データが示す電力供給に関する計測値が、0以上の所定の値以上のとき、前記出力調整機能部が、前記DC/AC変換装置および前記MPPT出力コントロール装置を稼働させて前記太陽光発電パネルが最適動作で発電した電力を前記宅内配線の周波数位相に同期させて、100Vに変換し、前記インバーターから前記ACプラグを通じて前記宅内配線に電力供給し、前記宅内配線から負荷に電力供給する工程と、
取得した前記通信データが示す電力供給に関する計測値が、前記所定の値未満のとき、前記出力調整機能部は、前記電力供給を低減させ、0近傍まで絞り込み、または電力供給を停止する工程と、
を含むことを特徴とする、交流電源システムの作動方法。
【請求項6】
前記宅内配線に前記インバーターから電力供給した後、
前記太陽光発電パネルの発電量が前記負荷の消費電力未満のときは、前記MPPT出力コントロール装置による最適動作を継続し、宅内配線の周波数位相に同期させ、前記太陽光発電パネルで発電した電力を100Vに変換して前記ACプラグを通じて負荷に供給する工程と、
前記太陽光発電パネルの発電量が前記負荷の消費電力以上のときは、前記通信データが示す電力供給に関する計測値が前記所定の値未満にならないよう、前記MPPT出力コントロール装置により前記太陽光発電パネルの動作電圧を調整する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の交流電源システムの作動方法。
【請求項7】
前記逆潮流防止装置の通信データが示す電力供給に関する計測値が、瞬時電流計測値である、請求項5または6に記載の交流電源システムの作動方法。
【請求項8】
前記スマートメーターの瞬時電流計測値の所定の値が100mAである、請求項7に記載の交流電源システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電源への逆潮流防止装置および太陽光発電パネルからの電力を、宅内配線を通して負荷に供給できる交流電源システムならびにその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽光発電パネルによる自家消費型発電システムは屋根上などに設置して、各家の宅内配線と接続し負荷に供給できる仕組みとなっている。これらはパワーコンディショナー(PCS)により制御されており、電力会社との契約が逆潮流無しの場合は負荷よりも太陽光発電パネルの発電量が多くなった時でも系統電源への逆潮流が起こらない。これには一般的に逆電力継電器(Reverse Power Replay:RPR)が用いられ逆潮流が防止されている。
【0003】
一方、特許文献1に記載のように、宅内電源コンセントを通して負荷に電力を供給する仕組みも提案されている。この方法は設置が容易であるが、自家消費型発電システムからの電力が負荷を上回った場合に自家消費型発電システムから系統電源に電気が流れ逆潮流となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の逆電力継電器(RPR)を用いた逆潮流防止方法は、直接宅内配線を流れる電力量を測定し、この値を基に逆潮流防止を行っている。このため電力量の測定装置などの設置が必要であり、工事の手間と高額な費用がかかり、容易に逆潮流防止装置を備えることが難しい。
また、一般的な太陽電池モジュールの設置方法である分電盤を通した接続には、電気専門家の工事が必要であり、個人で容易に設置することはできない。
一方、現在使われている宅内配線のコンセントを通して負荷に電力を供給する仕組みは、太陽光発電システムからの電力が負荷を上回った場合に系統電源側に逆潮流とならない制御方法、さらには逆潮流になってしまう場合の制止方法が考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、独立電源と宅内配線の間に設置され、かつ出力調整機能部および通信機能付き制御装置を有する逆潮流防止装置であり、独立電源からの出力は、DC/AC変換装置を有するインバーターを介して宅内配線に供給され、通信機能付き制御装置は、逆潮流防止装置が宅内配線に接続されて電源が入った状態で無線機能付きスマートメーターと通信を行って通信データを取得し、出力調整機能部は、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上であれば、独立電源からの出力を開始し、もしくは出力状態を維持し、インバーターのDC/AC変換装置を稼働させて宅内配線から負荷に電力供給し、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が所定の値未満であれば、通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上になるまでインバーターからの電力供給を減少させ、0近傍まで絞り込み、または電力供給を停止することを特徴とする、逆潮流防止装置に関する。
【0007】
さらに、本発明の別の局面は、太陽光発電パネルと、DC/AC変換装置およびMPPT出力コントロール装置を有するインバーターと、通信機能付き制御装置および出力調整機能部を有する逆潮流防止装置とを有する、交流電源システムであって、インバーターは、宅内配線との接続部を有し、逆潮流防止装置は、太陽光発電パネルとインバーターとの間に接続されており、系統電源と分電盤の入力側の間に無線機能付きスマートメーターが設置されており、逆潮流防止装置は、無線機能付きスマートメーターの出力側に設置された分電盤の出力側で宅内配線と接続され、通信機能付き制御装置が、無線機能付きスマートメーターの通信データを受信し、出力調整機能部は、通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上であれば、インバーターから宅内配線に電力供給することを特徴とする、交流電源システムに関する。
【0008】
さらに、本発明の別の局面は、太陽光発電パネルと、DC/AC変換装置およびMPPT出力コントロール装置を有するインバーターと、通信機能付き制御装置および出力調整機能部を有する逆潮流防止装置とを有し、インバーターは、ACプラグを有し、逆潮流防止装置は、太陽光発電パネルとインバーターとの間に接続されており、宅内配線のコンセントにACプラグを差し込むことで、通信機能付き制御装置の電源が入る交流電源システムの操作方法であって、通信機能付き制御装置が無線機能付きスマートメーターと通信を行って通信データを取得する工程と、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が、0以上の所定の値以上のとき、出力調整機能部が、DC/AC変換装置およびMPPT出力コントロール装置を稼働させて太陽光発電パネルが最適動作で発電した電力を宅内配線の周波数位相に同期させて、100Vに変換し、インバーターからACプラグを通じて宅内配線に電力供給し、宅内配線から負荷に電力供給する工程と、取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が、所定の値未満のとき、出力調整機能部は、電力供給を低減させ、0近傍まで絞り込み、または電力供給を停止する工程と、を含むことを特徴とする、交流電源システムの作動方法に関する。
【0009】
なお、本発明の中ではインバーターと記載しているが、インバーターと同じ機能を有しているマイクロインバーターあるいはパワーコンディショナーなどを置き換えて用いることも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の逆潮流防止装置によれば、一般家庭に設置されているスマートメーターから得られるデータを活用して逆潮流を防止することができる。さらに、本発明の逆潮流防止装置を用いた交流電源システムによれば、交流電源システムのACプラグを各家庭に備えられている宅内配線のコンセントに差し込むだけで、太陽光発電パネルにより発電した電気を家庭の電化製品などの負荷に送ることができる。また、本発明の逆潮流防止装置を用いた交流電源システムは、スマートメーターが送信した通信データを、逆潮流防止装置が受信し制御することにより、系統電源への逆潮流の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態の逆潮流防止装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態の交流電源システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態の交流電源システムの逆潮流防止装置およびインバーターの機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】本実施の形態の通信機能付き制御装置の動作例を説明するフローチャート図である。
【
図5】本実施の形態のMPPT出力コントロール装置を制御することによる逆潮流防止の動作例を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は実施の形態に記載した内容に限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
本実施の形態である逆潮流防止装置の構成を説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の逆潮流防止装置の構成例を示すブロック図である。逆潮流防止装置102は、出力調整機能部207および通信機能付き制御装置203を有する。さらに、逆潮流防止装置102は、独立電源106とインバーター103との間に接続されており、インバーター103に接続されたACプラグ104により宅内配線のコンセントと接続できる。
【0015】
逆潮流防止装置102は、逆潮流防止装置102の電源が入った状態で無線機能付きスマートメーター105と無線通信し、得られた通信データにより交流電源システムの動作の調整を行う。
【0016】
独立電源106は、電力会社から供給される電源とは別の、太陽光発電等の独立した電源であり、蓄電池、燃料電池等を含む。
【0017】
通信機能付き制御装置203は、逆潮流防止装置102が宅内配線に接続されて電源が入った状態で無線機能付きスマートメーター105と通信を行って通信データを取得する。出力調整機能部207は、無線機能付きスマートメーター105から取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上のとき、独立電源からの出力を開始し、かつ出力状態を維持し、インバーター103のDC/AC変換装置206を稼働させて宅内配線から負荷に電力供給を開始する。取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が、所定の値未満であれば、通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上になるまでインバーター103からの電力供給を減少させ、0近傍まで絞り込み、または電力供給を停止する。
【0018】
なお、本発明の中ではインバーターと記載しているが、インバーターと同じ機能を有しているマイクロインバーターあるいはパワーコンディショナーなどを置き換えて用いることも含まれる。
【0019】
(実施の形態2)
別の実施形態である交流電源システムの構成を説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態の交流電源システムの構成例を示すブロック図である。交流電源システムは、太陽光発電パネル101、逆潮流防止装置102、およびインバーター103を有する。さらに、逆潮流防止装置102は、太陽光発電パネル101とインバーター103との間に接続されており、インバーターに接続されたACプラグ104により宅内配線のコンセントと接続できる。
【0021】
太陽光発電パネル101は、複数の太陽電池セルを直列および/または並列に接続し一枚の板上に作製した状態で、周囲を枠体(構造体)により囲い固定しパネル状にすることによって構成されており、この太陽光発電パネル101に、太陽光を照射し直流の電力として出力する。使用する太陽光発電パネルは、1枚でもよく、または複数枚を直列および/または並列接続することにより目的とする電力を得ることができる。
【0022】
インバーター103は、太陽光発電パネル101で発電した直流の電力を、宅内配線に流すために電力供給会社が供給する電力と同じ周波数の電力を持つ交流の電力に変換して出力するものである。交流電源システムは、宅内配線のコンセントにACプラグ104を差し込むと、宅内電源の周波数位相に同期させた交流電源を出力する。
【0023】
逆潮流防止装置102は、無線機能付きスマートメーター105と無線通信し、得られた通信データに応じて出力を調整することができる。例えば、逆潮流防止装置102に出力調整機能部207(
図1)が備えられている場合、電力出力のレベル調整の制御を行うことができる。また、出力調整機能部207(
図1)の下位概念である太陽光出力切り替えリレー204(
図3)が備えられている場合、交流電源システムの動作のONとOFFの切り替えの制御のみを行うことができる。
【0024】
宅内配線とは、電力会社から配電盤を通して、各家庭内の分電盤に送られ、そこから各室内に分岐している配線のことである。宅内配線との接続部とは、宅内配線のコンセントにACプラグを接続した部分のことを指すが、これに限定されない。
【0025】
無線機能付きスマートメーター105は、電力使用量をデジタルで計測し、かつ測定データを無線で遠隔地に通信できる機能を持つ電子式電力量計である。系統電力を電柱から各需要設備に電線を引き込み供給する電力量を無線機能付きスマートメーター105でデジタル計測し、家庭内機器に無線で送信することができる。通信規格として、920MHz帯特定小電力無線を利用したWi-SUN Profile for ECHONET Lite(登録商標)が主に用いられている。この無線機能付きスマートメーター105は、系統電源と分電盤の入力側との間に設置される。逆潮流防止装置102は、無線機能付きスマートメーター105の出力側に設置された分電盤の出力側(二次側)で宅内配線と接続される。無線機能付きスマートメーター105は、逆潮流防止装置102からの要求に従って通信データを送信する。通信データが示す電力供給に関する計測値として、例えば、瞬時電流計測値や瞬時電力計測値が挙げられる。逆潮流防止装置102が受信する通信データとして、瞬時電流計測値が特に好ましい。この受信した計測値が0以上の所定の値以上である場合、インバーター103から宅内配線に電力供給を開始する。さらに、計測値が該所定の値未満である場合、インバーター103は動作せず、宅内配線に電力供給しない。また、インバーター103が動作を開始した後であっても、無線機能付きスマートメーター105から受信した瞬時電流計測値が該所定の値を下回った場合、インバーター103の動作は停止し、宅内配線への電力供給が停止する。この交流電源システムにより、逆潮流を防止することができる。
【0026】
本実施の形態では、逆潮流防止装置102とインバーター103を個別のハードウェアとしているが、これらを一体型の装置として構成してもよい。
【0027】
(実施の形態3)
さらに別の実施形態である交流電源システムの逆潮流防止装置102およびインバーター103の構成ならびに交流電源システムの動作方法を説明する。
【0028】
図3は、本実施の形態の交流電源システムの逆潮流防止装置102およびインバーター103の機能構成例を示すブロック図である。逆潮流防止装置102は、ID・パスワード入力部201、表示部202、通信機能付き制御装置203および太陽光出力切り替えリレー204を有する。インバーター103は、MPPT出力コントロール装置205およびDC/AC変換装置206を有する。
【0029】
通信機能付き制御装置203は、無線機能付きスマートメーター105との接続を開始するための認証IDおよびパスワードを、ID・パスワード入力部201から取得する。情報供給手段は、外部ストレージデバイスを用いる方法の他、有線または無線通信を用いる方法、あらかじめ装置内の不揮発性メモリに書き込む方法等を採用することができる。
【0030】
通信機能付き制御装置203は、取得したID・パスワードに基づき無線機能付きスマートメーター105と通信し、通信結果に基づき太陽光出力切り替えリレー204のONとOFFを制御する。太陽光出力切り替えリレー204がONの場合、インバーター103に太陽光発電パネル101から直流電力が供給され、太陽光出力切り替えリレー204がOFFの場合、インバーター103への直流電力の供給が遮断される。
【0031】
表示部202は、無線機能付きスマートメーター105との接続状態や、太陽光出力切り替えリレー204の状態などを必要に応じて表示する。
【0032】
太陽光出力切り替えリレー204がONの場合、インバーター103は、太陽光発電パネル101から直流電力が供給されると、MPPT出力コントロール装置205によって太陽光発電パネル101の電力が最大になる出力電圧で電流を取り出し、DC/AC変換装置206によって直流電力を交流電力に変換し、ACプラグ104を通じて宅内配線に電力供給し、宅内配線から負荷に電力供給を行う。
【0033】
太陽光出力切り替えリレー204がOFFの場合、インバーター103への太陽光発電パネル101からの直流電力の供給が遮断され、ACプラグ104を通じた宅内配線への電力供給は停止する。
【0034】
MPPT出力コントロール装置205のMPPTは「最大電力点追従制御」のことである。MPPT出力コントロール装置205は、太陽光発電パネル101の電力が最大になる出力電圧で電流を取り出せるための制御機能装置である。
【0035】
(実施の形態4)
さらに別の実施形態である通信機能付き制御装置の動作方法をフローチャートにより説明する。
【0036】
図4は、本実施の形態の通信機能付き制御装置203の動作例を説明するフローチャート図である。通信機能付き制御装置203は、動作開始後、ステップS301からステップS305の初期設定を実施した後、一定時間周期でステップS306からステップS310の処理を繰り返す(無限ループ)。
【0037】
通信機能付き制御装置203は、ステップS301において太陽光出力切り替えリレー204をOFFにする。次に、通信機能付き制御装置203は、ステップS302においてID・パスワード入力部201から無線機能付きスマートメーター105のID・パスワードを取得する。次に、通信機能付き制御装置203は、ステップS303においてアクティブスキャンによって周囲のスマートメーターを探索する。この際、IDの下位8桁の情報(PairingID)を含めたアクティブスキャンを実行することで、PairingIDが一致した無線機能付きスマートメーター105のみを応答させることができる。アクティブスキャンに成功した場合、通信機能付き制御装置203は、ステップS304において無線機能付きスマートメーター105から無線接続情報(PANIDおよび周波数情報)が取得できる。次に、通信機能付き制御装置203は、ステップS305において、ID・パスワード、無線接続情報(PANIDおよび周波数情報)を用いて、無線機能付きスマートメーター105とPANA暗号化認証を実施する。ここまでの初期設定を実施した後、次の処理に移行する。
【0038】
通信機能付き制御装置203は、ステップS306において無線機能付きスマートメーター105に瞬時電流計測値または瞬時電力計測値を要求する。要求に成功し計測値を取得できた場合、ステップS307において通信機能付き制御装置203は、無線機能付きスマートメーター105から瞬時電流計測値または瞬時電力計測値を取得することができる。
【0039】
次にステップS308において、通信機能付き制御装置203は取得した通信データの瞬時電流計測値または瞬時電力計測値の値が0以上の所定の値以上かどうか判定する。例えば、通信データが瞬時電流計測値の場合、所定の値を最低測量値である100mAと設定することができる。通信データが瞬時電力計測値の場合、所定の値を1Wと設定することができる。
【0040】
取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が0以上の所定の値以上である場合、ステップS309において、太陽光出力切り替えリレー204がONとなる。取得した通信データが示す電力供給に関する計測値が所定の値以下である場合、ステップS310において太陽光出力切り替えリレー204がOFFとなる。これによって、瞬時電流計測値または瞬時電力計測値が0もしくは負の値になること、すなわち太陽光発電パネル101から電力供給会社の系統電源へ逆潮流することを防ぐことができる。
【0041】
さらに、太陽光発電パネル101が最適動作で発電した電力を宅内配線の周波数位相に同期させて、100Vに変換する工程と、ACプラグ104を通じて宅内配線コンセントから負荷に電力供給を開始する工程とを含む。
【0042】
「最適動作」とは、太陽光の変動に対応して電流と電圧の調整を行い、常に最大出力が得られるよう調整を行うことである。
【0043】
加えて、ステップS301からステップS310までの各動作において正常に処理が完了しなかった場合、ステップS301から処理を再開することができる。これによって、例えば通信障害などの例外が発生した場合、ステップS301において太陽光出力切り替えリレー204がOFFとなるため、安全を確保したうえで自動復帰動作が可能となる。
【0044】
(実施の形態5)
さらに、
図3の破線aが示すように、通信機能付き制御装置203は、MPPT出力コントロール装置205を制御することで、逆潮流を防ぐこともできる。本実施の形態ではMPPT出力コントロール装置を制御することによる逆潮流防止の動作例を説明する。
【0045】
図5は、本実施の形態のMPPT出力コントロール装置205を制御することによる逆潮流防止の動作例を説明するフローチャート図である。ステップS301からステップS307の動作は
図4と同様であるため説明を省略する。
【0046】
ステップS307において、通信機能付き制御装置203は無線機能付きスマートメーター105から通信データが示す電力供給に関する計測値として、瞬時電流計測値または瞬時電力計測値を取得した後、ステップS401において取得した値が0以上の所定以上の値かどうかを判定する。通信データが瞬時電流計測値の場合、所定の値は最低測量値である100mAが好ましい。
【0047】
通信データが瞬時電力計測値の場合、所定の値は1Wが好ましい。これにより、瞬時電力計測値が1W以上であれば交流電源システムは稼働し、稼働後も瞬時電力計測値が1W未満となると電力供給を停止することになる。
【0048】
取得した値が所定の値以上である場合、ステップS402において太陽光出力切り替えリレー204はONとなり、MPPT出力コントロール装置205へ電力供給が開始される。以降、最大電力点追従制御の山登り法を応用した動作により、逆潮流防止と最大電力追従を両立した制御が実現される。
【0049】
まずステップS403において現在の動作電圧Vを所定の値ΔVだけ変化させる。次に、ステップS404において現在の動作電力Pを求められ、ステップS405において現在の動作電力Pと変化前の動作電力Poを比較される。
【0050】
現在の動作電力Pが変化前の動作電力Poより大きい場合、すなわち電力が増加した場合、ステップS406において再度、瞬時電流計測値または瞬時電力計測値が所定の値以上であるか判定し、所定の値以上であれば、ステップS408においてΔVの符号が反転しない。これにより、動作電力が最大電力点に近づくことができる。一方、所定の値未満であれば、ステップS409においてΔVの符号が反転する。これにより、動作電力が減少し、逆潮流の発生を防ぐことができる。
【0051】
現在の動作電力Pが変化前の動作電力Po以下である場合、すなわち電力が減少した場合、ステップS407において再度、瞬時電流計測値または瞬時電力計測値が所定の値以上であるか判定され、所定の値以上であれば、ステップS410においてΔVの符号が反転する。これにより、動作電力Pが最大電力点に近づくことができる。一方、所定の値未満であれば、ステップS411においてΔVの符号が反転しない。これにより、動作電力Pが減少し、逆潮流の発生を防ぐことができる。
【0052】
なお、本発明の装置と宅内配線との接続には接続方法が簡易であること、操作性が良いことからACプラグをコンセントに差し込む方法が用いられたが、直接接続するなど他の方法でも可能である。
【0053】
以上、本発明に係る逆潮流防止装置およびそれを用いた交流電源システムならびにその作動方法の好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態は例示に過ぎず、逆潮流防止装置およびそれを用いた交流電源システムならびにその作動方法の実施形態は上記に限定されない。本発明に係る逆潮流防止装置の各部の具体的構成は、適宜、設計変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明はスマートメーターからの通信データを通信機能付き制御装置が受信し制御することで逆潮流を防止でき、各家庭に備わる宅内配線のコンセントにACプラグを差し込むだけで家庭の電化製品などに独立電源からの電気が送れるシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
101 太陽光発電パネル
102 逆潮流防止装置
103 インバーター
104 ACプラグ
105 無線機能付きスマートメーター
106 独立電源
201 ID・パスワード入力部
202 表示部
203 通信機能付き制御装置
204 太陽光出力切り替えリレー
205 MPPT出力コントロール装置
206 DC/AC変換装置
207 出力調整機能部