(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008438
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240112BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20240112BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240112BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240112BHJP
G09F 9/46 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1343
G02F1/1347
G09F9/30 349E
G09F9/46 A
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G09F9/30 349C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110320
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 洋祐
【テーマコード(参考)】
2H092
2H189
2H291
5C094
【Fターム(参考)】
2H092GA25
2H092GA26
2H092GA29
2H092JA24
2H092JA46
2H092JB54
2H092KB04
2H092PA09
2H092PA11
2H092PA13
2H092QA06
2H189AA21
2H189JA14
2H189LA10
2H189LA17
2H189LA20
2H291FA15Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA81Z
2H291GA19
2H291HA15
5C094AA01
5C094AA06
5C094BA43
5C094DA03
5C094DA15
5C094ED14
5C094ED15
5C094JA08
5C094JA09
(57)【要約】
【課題】偏光軸に対して15度以上の角度で屈曲しながら延在する信号線の側面からの反射に起因するコントラストの低下を防止する。
【解決手段】画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、前記輝度調整パネルには、走査線1が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線21が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、前記信号線21は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、前記信号線21の下には、絶縁膜を介して、前記走査線と同じ層に形成された遮光膜が、平面で視て前記信号線に沿って、かつ重複して形成され、前記遮光膜の幅は前記信号線の幅よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、
前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、
前記輝度調整パネルには、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、
前記信号線は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、
前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、
前記信号線の下には、絶縁膜を介して、前記走査線と同じ層に形成された遮光膜が、平面で視て前記信号線に沿って、かつ重複して形成され、
前記遮光膜の幅は前記信号線の幅よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
遮光膜は、前記走査線と同じ構成で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記走査線は、複数の層で形成され、前記遮光膜は、前記走査線の複数の層の内の1層で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光膜の底面から前記信号線の上面までの距離をhとした場合、前記信号線の幅と前記遮光膜の幅の差は、2h/tan30以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記屈曲の方向は、前記第1の方向に対して15度以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、
前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、
前記輝度調整パネルには、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、
前記信号線は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、
前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、
前記信号線は、最下層である第1層と、第1層の上に形成された第2層を有する複数の膜で構成され、
前記信号線の側面は、前記第1層の底面に対して30度以下のテーパを有していることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
前記第2層は、前記第1層よりも膜厚が大きく、前記第2層は、さらに複数の層で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記信号線の第1層の幅と、前記信号線の上面の幅との差は、前記信号線の厚さをhとしたとき、
2h/tan30以上であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを複数重ねて用いることによって、高コントラストを実現する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置において、コントラストを向上させるために、表示パネルに重畳して、輝度調整のみ行う輝度調整パネルを使用することが知られている。すなわち、黒表示部分には、輝度調整パネルによってバックライトを遮断して、より深い黒を実現するものである。
【0004】
一方、偏光板の偏光軸が配線の延在方向に対して傾いた場合、この部分において、光もれが生ずる現象が存在する。特許文献1には、偏光軸方向が垂直方向または水平方向かられた場合の構成において、TFTと画素電極を結ぶコンタクト電極を偏光軸方向に傾けることによって、この電極からの光漏れを防止する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号の書き込み速度を確保するには、信号線の電気抵抗を小さく抑える必要がある。電気抵抗を小さくするために、信号線の厚さを大きくすると、信号線の側面からの反射が問題となる。すなわち、バックライトからの光は、色々な方向から映像信号線に入射するので、斜め方向から入射したバックライトは映像信号線の側面で反射して、画面方向に向かうことによってコントラストが低下する。
【0007】
一方、表示パネルに重ねて輝度調整パネルを用いることによって、画像のコントラストを向上させることが出来る。輝度調整パネルにおいては、表示パネルの配線とのモアレ等の現象を防止するために、信号配線のパターンを表示パネルとは異ならせることがある。この場合、表示パネルには生じなかったような、信号線に起因する光漏れが観測されることがある。
【0008】
信号線の側面からの反射は、偏光板の偏光軸(または透過軸)と信号線等の側面とのなす角度によっても影響を受ける。表示パネルの配線方向と輝度調整パネルの配線方向とは、異なる場合があり、表示パネルにおいて生じなかった、配線からの反射が輝度調整パネルにおいて生ずることがある。
【0009】
本発明課題は、液晶表示装置において、また、特に、輝度調整パネルを用いた液晶表示装置において、信号線からの反射に起因する光漏れを対策することである。これによって、高いコントラストを有する液晶表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0011】
(1)画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、前記輝度調整パネルには、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、前記信号線は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、前記信号線の下には、絶縁膜を介して、前記走査線と同じ層に形成された遮光膜が、平面で視て前記信号線に沿って、かつ重複して形成され、前記遮光膜の幅は前記信号線の幅よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【0012】
(2)画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、前記輝度調整パネルには、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、前記信号線は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、前記信号線は、最下層である第1層と、第1層の上に形成された第2層を有する複数の膜で構成され、前記第1層の上面の幅は、前記第2層の下面の幅よりも大きく、前記信号線の前記第2層の上面における幅と前記第1層の下面における幅の差は、前記信号線の厚さをhとしたとき、2h/tan30以上であることを特徴とする表示装置。
【0013】
(3)画像を表示する表示パネルと前記表示パネルと重ねて用いられる輝度調整パネルを有する表示装置であって、前記輝度調整パネルの光の入射側には第1の偏光板が貼り付けられ、光の出射側には第2の偏光板が貼り付けられ、前記輝度調整パネルには、走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、信号線が第2の方向に延在して第1の方向に配列し、前記信号線は屈曲を繰り返しながら第2の方向に延在し、前記屈曲の方向は、前記第1の偏光板の偏光軸に対して、15度以上傾斜しており、前記信号線は、最下層である第1層と、第1層の上に形成された第2層を有する複数の膜で構成され、前記信号線の側面は、前記第1層の底面に対して30度以下のテーパを有していることを特徴とする表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】輝度調整パネルを有する表示装置の分解斜視図である。
【
図12】輝度調整パネルの画素の他の例を示す平面図である。
【
図16】輝度信号線の側面からの反射を示す断面図である。
【
図20】実施例2の製造プロセスを示す断面図である。
【
図25】実施例3の製造プロセスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の内容を、実施例を用いて説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明における液晶表示装置の分解斜視図である。
図1において、第1液晶表示パネル10(以後表示パネル10)と第2液晶表示パネル20(以後輝度調整パネル20)が重ねて使用される。第2液晶表示パネル20の背面にバックライト1000が配置している。この方式はローカルディミングと呼ばれることもある。すなわち、画像において、黒表示される領域には、光を照射しない。これによって、非常にコントラストの高い画像を実現することが出来る。
【0017】
表示パネル10と輝度調整パネル20は同じ液晶表示パネルを用いてもよいが、表示装置全体としての画面の輝度、画質の向上のために、表示パネル10と輝度調整20パネルの仕様は、一部変えている。例えば、全体として輝度を向上させるために、カラーフィルタは輝度調整パネル20には使用されない。また、表示パネル10と輝度調整パネル20の間におけるモアレ等の干渉を防止するために、配線構成を表示パネル10と輝度調整パネル20との間で異ならせる等の対策がとられる。
【0018】
図2は、
図1の構成を組み立てた状態における
図1のA-A断面図である。
図2において、上側に配置する表示パネル10は配線やTFTが形成されたTFT基板100と対向基板200で構成され、TFT基板100と対向基板200との間に、液晶層が挟持され、画素毎にバックライトからの光を制御する。液晶は、偏光光のみ制御できるので、表示パネル10の下側には、下偏光板33が配置し表示パネル10の上側には、上偏光板34が配置している。
【0019】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が1枚になっている部分には、端子領域が形成されている。端子領域には、表示パネルを駆動するためのドライバIC180等が配置されている。一方、TFT基板100と対向基板200が重複している部分には表示領域が形成されている。
【0020】
図2において、輝度調整パネル20も表示パネル10と同じ構成になっている。すなわち、配線やTFT等が形成されたTFT基板100と対向基板200が対向し、TFT基板100と対向基板200が重複している部分に表示領域が形成され、TFT基板100が1枚になっている部分に端子領域が形成されている。TFT基板100の下には、下偏光板31が貼り付けられ、対向基板200の上には、上偏光板32が貼り付けられている。
【0021】
表示パネル10と輝度調整パネル20の接着、すなわち、表示パネル10の下偏光板33と輝度調整パネル20の上偏光板32とは、光カップリングを考慮して、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)40が使用されている。OCA40はシート状であり、厚さは、例えば100nmである。
図2において、輝度調整パネル20の背面には、バックライト1000が配置している。
【0022】
図3は、
図1の構成を組み立てた状態における
図1のB-B断面図である。
図3の構成は、端子領域が無い他は、
図2で説明したのと同じである。すなわち、表示パネル10の背面に輝度調整パネル20が配置し、表示パネル10と輝度調整パネル20はOCA40を介して接着している。輝度調整パネル20の背面にはバックライト1000が配置している。
【0023】
図4は、表示パネル10の平面図である。
図4において、TFT基板100と対向基板200がシール材150によって接着し、TFT基板100と対向基板200の間に液晶が挟持されている。TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成されており、TFT基板100と対向基板200が重なっていない部分は端子領域170となっている。端子領域170には、液晶表示パネルを駆動するICドライバ180が搭載されている。端子領域には、液晶表示パネルに電源、映像信号、走査信号等を供給するためのフレキシブル配線基板が接続されるが、
図4では省略されている。
【0024】
TFT基板100と対向基板200が重なった部分に表示領域160が形成されている。表示領域160において、走査線1が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線2が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線1と映像信号線2に囲まれた部分にサブ画素3が形成されている。サブ画素3は、対応するカラーフィルタによって、赤サブ画素、緑サブ画素、青サブ画素となり、並んで形成されている。赤サブ画素3、緑サブ画素3、青サブ画素3がセットになって画素4を形成している。但し、以後、画素とサブ画素を区別なく呼ぶ場合もある。
【0025】
図4では、映像信号線2は直線状に描かれているが、画素電極の形状によっては、くの字状に屈曲しながら、縦方向に延在する場合もある。本実施例では、
図6に示すように、映像信号線は、屈曲を繰り返しながら縦方向に延在している。
【0026】
図5は輝度調整パネル20の平面図である。
図5における輝度調整パネル20の構造は、
図4で説明した表示パネルの構造とほとんど同じである。しかし、表示領域160の配線構造が異なっている。
図5において、走査線1は、
図4と同様に横方向(x方向)に延在して、縦方向(y方向)に配列している。輝度信号線21が縦方向に延在して、横方向に配列している。
【0027】
本実施例では、輝度調整パネル20の輝度は、画素毎に制御される。したがって、輝度調整パネル20ではサブ画素は形成されないので、輝度信号線21の横方向のピッチは、
図4に示す表示パネルの3倍である。また、本実施例における輝度信号線21は、屈曲しながら縦方向に延在しているが、
図8に示すように、y方向に対する屈曲の角度φ2は、
図6に示す映像信号線2のy方向に対する角度φ1よりも大きい。
図5のその他の構成は
図4と同じである。
【0028】
図6は、表示パネル10における画素の平面図である。画素は3個のサブ画素から形成されている。3個のサブ画素は同じ構成である。対向基板200に形成される対応するカラーフィルタによって、赤サブ画素、緑サブ画素、青サブ画素となる。
図6以後に示す本実施例における液晶表示パネル10あるいは輝度調整パネル20には、いわゆる、IPS(In Plane Switchng)方式が使用されている。IPS方式は、優れた視野角特性を有している。
【0029】
IPS方式では、液晶分子を回転させることによって液晶の透過率を制御している。画素電極に電圧を印加した時、液晶分子の回転する方向が決まっていないと、液晶分子は回転することが出来ず、この部分において制御不能な領域、いわゆるドメインが発生する。このドメインの発生を防止するために画素電極がy軸方向に対して傾いて形成される。この屈曲方向は、画素電極の縦方向(y軸方向)の中央付近において屈曲の向きを変える。視野角特性を均一に保つためである。
【0030】
図6において、配向膜の配向方向は矢印Aで示されているようにy軸方向である。本実施例においては、下偏光板の偏光軸の方向と配向膜の配向方向は同じである。ドメインの発生を防止するための櫛歯電極のy軸方向に対する角度φ1は、8度乃至13である。
【0031】
図6において、屈曲している画素電極111に合わせて映像信号線2も同様にy軸方向に対して屈曲させている。
図6において、映像信号線2から画素電極111に対してTFTを介して映像信号が送られる。TFTを形成するために、半導体膜102が、平面で視て、U字状に形成されている。
図6において、半導体膜102が走査線1の下を通過するときにTFTが形成される。すなわち、
図6では、2個のTFTが直列に形成されている。
【0032】
図6において、映像信号線2がTFTのドレイン電極を兼ね、走査線1がゲート電極を兼ねている。映像信号線2は、スルーホール121によって半導体膜102と接続している。半導体膜102は、走査線1の下以外には、不純物、例えば、リンがイオンインプランテーション(I.I.)によってドープされ、導電性となっている。半導体膜102の他の端部は、スルーホール122を介してソース電極107と接続する。ソース電極107は、有機パッシベーションに形成されたスルーホール130を介して画素電極111と接続する。スルーホール130は厚く形成された有機パッシベーション膜に形成されるので、スルーホール130の径は大きい。
【0033】
図7は
図6のC-C断面図である。
図6において、例えばガラスで形成されたTFT基板100の上に下地膜101が形成されている。下地膜101は、ガラスからの不純物が後で形成される半導体層102を汚染することを防止する役割を有する。下地膜101は一般には、窒化シリコン膜(以後SiN膜という)と酸化シリコン膜(以下SiO膜という)の2層膜から形成される。下地膜101の上に半導体層102が形成される。半導体層102は、まずCVDによってa-Siを形成し、その後、エキシマレーザを照射することによってPoly-Siに変換したものである。なお、下地膜101を構成するSiN、SiO、半導体層となるa-Siは、CVDによって連続して形成される。
【0034】
半導体層102をパターニングした後、これを覆ってゲート絶縁膜103を形成する。ゲート絶縁膜103はTEOS(テトラエトキシシラン)を原料としたSiO膜である。ゲート絶縁膜103の上にゲート電極104が形成される。ゲート電極104は例えば、MoW(モリブデンタングステン)合金で形成され、MoW合金をスパッタリング等で成膜した後、パターニングして形成する。
図6の構成では、走査線1がゲート電極104を兼用しており、半導体層102が走査線1の下を2回通過することによって、2個のTFTが形成されるので、
図7においては、ゲート電極104が2個形成されている。
【0035】
ゲート電極104をパターニングした後、P(リン)、B(ボロン)等のイオンインプランテーションを行い、ゲート電極104で覆われた領域以外の半導体層102に導電性を付与する。これによって、半導体層102にドレイン領域1021及びソース領域1022を形成する。
【0036】
その後、ゲート電極を覆ってSiNあるいはSiO、または、SiNとSiOの積層膜によって層間絶縁膜105を形成する。層間絶縁膜105はCVDによって形成することが出来る。層間絶縁膜105およびゲート絶縁膜103にスルーホール121を形成して、半導体層のドレイン領域1021と映像信号線2を接続する。この場合、映像信号線2がドレイン電極106となる。一方、半導体層102のソース領域1022は層間絶縁膜105及びゲート絶縁膜103に形成されたスルーホール122を介してソース電極107と接続する。
【0037】
ドレイン電極106およびソース電極107を覆ってアクリル樹脂等によって、有機パッシベーション膜108を形成する。有機パッシベーション膜108は平坦化膜の役割を有しているので、2乃至4μmと、厚く形成される。有機パッシベーション膜108はアクリルの他、シリコン樹脂あるいはポリイミド等で形成することも出来る。
【0038】
有機パッシベーション膜108の上に、平面状にコモン電極109がITO(Indium Tin Oxide)等の酸化物透明導電膜によって形成される。コモン電極109は各画素共通に形成されるが、スルーホール130内には形成されない。コモン電極109をパターニング後、コモン電極109を覆って容量絶縁膜110がSiNによって形成される。容量絶縁膜110はCVDによって形成される。容量絶縁膜110は有機パッシベーション膜108を形成した後形成されるので、高温で形成することが出来ず、200℃程度の低温CVDによって形成される。
【0039】
容量絶縁膜110の上に、櫛歯状、あるいはストライプ状に画素電極111がITO等の酸化物透明導電膜によって形成される。コモン電極109と画素電極111との間の絶縁膜110は画素電極111とコモン電極109との間の保持容量を形成するものであるから、容量絶縁膜110と呼ばれる。
【0040】
容量絶縁膜110には、有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホール130内において、スルーホールが形成され、画素電極111とソース電極107が接続される。
【0041】
画素電極111及び容量絶縁膜110を覆って配向膜112が形成される。配向膜112は液晶の初期配向を決めるものであり、配向処理はラビング処理か光配向処理によって行われる。IPS方式では、光配向による配向処理が適している。画素電極111に映像信号が印加されると、コモン電極109との間に矢印のような電気力線が発生し、液晶分子301を回転し、画素毎に液晶層300の透過率を制御して画像を形成する。
【0042】
図7において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200の内側にカラーフィルタ201と遮光層202が形成される。バックライトからの光を制御して画像を形成したい部分にはカラーフィルタ201を配置し、カラー表示を可能にする。一方、バックライトからの光を制御することが難しい、例えば、スルーホール130等が形成された部分等には遮光層202を形成し、光漏れを防止する。
【0043】
カラーフィルタ201及び遮光層202を覆ってアクリル等の透明有機材料によってオーバーコート膜203が形成される。オーバーコート膜の上に配向膜204が形成される。配向膜204の配向処理はラビング処理か光配向処理によって行われることは配向膜112と同様である。
【0044】
図8は、輝度調整パネルの画素の平面図である。
図8において、画素には表示パネルのサブ画素と同様な位置に同じ形状の画素電極111が形成されている。すなわち、画素電極111は、y軸方向に対してφ1だけ傾斜している。ただし、輝度調整パネル20では、画素内では画素電極111は共通につながっている。本実施例では、輝度調整パネル20は画素毎に制御されるからである。したがって、輝度信号線21は1画素に1個のみ対応している。
【0045】
図8において、輝度信号線21は屈曲しているが、屈曲の角度φ2は、
図6における映像信号線2の屈曲角度φ1よりも大きい。表示パネル10のサブ画素内において、輝度調整パネル20の輝度信号線21の影響を均一化するためである。
図8において、サブ画素の幅をx1、画素電極の櫛歯部分のy軸方向の長さをy1とすると、tan φ2=x1/(y1/2)である。そして、φ2>φ1である。
【0046】
このように、輝度信号線21は、一番左側のサブ画素にのみ形成されている。そうすると、他の2個のサブ画素との間に輝度差が生ずる。これを解消するために、
図8では、2個のサブ画素の各々に対してダミー信号線25を配置している。ただし、ダミー信号線25には輝度信号は供給されない。
図8ではフロートとなっている。また、ダミー信号線25は遮光が目的なので、作りやすい構造が使用される。例えば、走査線1と同じ層に、走査線1と同じ構造の膜、あるいは、走査線1が複数層の形成されている場合、そのうちの1層のみを使用する等である。
【0047】
図8において、TFT部分の構造を示すD-D断面は、表示パネルにおけるTFT部分の構造と同じである。すなわち、
図6のC-C断面図である
図7と同じである。ただし、
図9では、映像信号線2の代わりに輝度信号線21が形成されている。一方、対向基板200側では、
図9は、
図7とは、異なり、画素電極111に対応する部分には、カラーフィルタは形成されていない。輝度調整パネル20は画面の輝度のみ制御してコントラストを向上させることが目的だからである。
図9のその他の構成は
図7と同じである。
【0048】
図10は、
図8のE-E断面図であり、輝度信号線21が形成されている部分の断面図構造である。
図10の基本的な断面構造は、
図7及び
図9で説明したとおりである。
図10において、層間絶縁膜絶縁膜105の上に輝度信号線21が形成されている。輝度信号線21に対応する部分に画素電極111が形成されている。
【0049】
図11は、
図8のF-F断面図であり、輝度信号線は形成されておらず、代わりにダミー信号線25が形成された部分のサブ画素の断面構造である。
図11において、走査線1が形成されているのと同じ層にダミー信号線25が形成されている。ダミー信号線25は、走査線1と同じ断面図構造を有していてもよいし、走査線を構成する複数層のうちの1層を使用するものでもよい。ダミー信号線25に対応する部分に画素電極111が形成されている。
図8のG-G断面図も
図11と同じである。
【0050】
バックライトに対する遮光効果は
図10と
図11で同じである。つまり、
図8の3個のサブ画素は、同じ遮光効果を受ける。なお、本明細書においては、ダミー信号線25という言葉を用いるが、信号が供給されるわけではない。平面形状を輝度信号線21に似せて形成するのでこのように呼ばれるが、代わりに、遮光膜という言葉に置き換えてもよい。
【0051】
ところで、輝度調整パネル20における
図8の画素電極111の構成は、対応する表示パネル10における
図6の画素電極111と同じ構成となっている。しかし、輝度調整パネル20では、サブ画素の区別なく、画素全体で輝度制御されるので、画素電極111は、表示パネル10の画素電極111に完全に一致させなくともよい。
【0052】
図12は、画素電極111の櫛歯部分を画素全体に均一に配置した例である。但し、この場合も、輝度信号線21の平面形状、ダミー信号線25の平面形状は
図8と同じである。
図12の輝度調整パネル20も
図8の輝度調整パネル20と同様な効果を得ることが出来る。ただし、以後の説明は、
図8を基準に説明する。
【0053】
図8における輝度調整パネル20の問題点は次のとおりである。すなわち、輝度信号線21の側面に対応する部分において光もれが生ずる。一方、ダミー信号線25においてはこのような現象は生じていない。また、走査線1からもこのような現象は生じていない。さらには、表示パネル10における映像信号線2、走査線1等においてもこのような現象は生じていない。
【0054】
図13は、
図8における輝度信号線21の断面形状である。信号を高速で書き込むためには、輝度信号線21の抵抗を小さくしなければならない。
図13では、輝度信号線21として電気抵抗の小さいアルミニウム(Al)を厚さ500μmで形成し、輝度信号線21の抵抗を小さくしている。一方、アルミニウムの表面には、酸化アルミニウムが形成されるので、ベースメタル211として、アルミニウム膜212の下層にTiを厚さ50nmで形成している。また、アルミニウム表面からは、ヒロック等が発生して、絶縁を破壊する場合があるので、これを防止するために、キャップメタル213として、アルミニウム膜212の上層にチタン(Ti)膜を厚さ50nmで形成する。ここで、ベースメタルを第1層、アルミニウムを第2層、キャップメタルを第3層と呼ぶと、第1層から第3層までの合計は600nmになる。
【0055】
一方、
図8における走査線1は2層構造であり、上層がモリブデン(Mo)、下層がMo合金である。
図14は、走査線1の断面図であり、上層252のMoの厚さは、45nm、下層251のMo合金の厚さは210nmであり、上層252と下層251の合計は255nmである。エッジ部のテーパ角θ1は20乃至30度である。
【0056】
図8におけるダミー信号線25は、走査線1と同じ断面構造を使用する場合もあるし、走査線1の上層である、Mo層252のみを使用する場合もある。
図15は、ダミー信号線25が走査線1の上層である、Moのみで形成されている場合の断面図である。
図15においてダミー信号線25の厚さは、45nm、エッジ部のテーパ角θ2は20乃至30度である。
【0057】
図13乃至
図15は輝度調整パネル20における配線の断面図であるが、表示パネル10における配線の断面形状も同様である。すなわち、表示パネル10における映像信号線2の断面形状は
図13と同じであり、表示パネル10における走査線1は、
図14と同じである。
【0058】
以上のような、配線構成において、輝度調整パネル20の輝度信号線21のみにおいて、バックライトからの光の光漏れが生じた。これは、次のような原因によるものと考えられる。
図8において、配向膜112の配向方向は、y軸方向であり、偏光板31の偏光軸の方向と同じである。
図8に示す、輝度信号線21の配向方向となす角度φ2は、
図6に示す、映像信号線の配向方向となす角度φ1よりも大きい。すなわち、信号線21の偏光板31の偏光軸(すなわち、配向膜の配向方向)とのなす角度が大きくなると、信号線の側面で反射した光において偏光乱れが生じ、これが光もれの原因になるものと考えられる。
【0059】
一方、ダミー信号線25においては、配線の偏光板31の偏光軸となす角度が大きくても、光もれは生じていない。これは、ダミー信号線25の膜厚が小さいので、側面で反射する光の量自体が非常に小さいためと考えられる。しかし、ダミー信号線25を走査線1と同じ構成で形成した場合、
図14に示すように、ダミー信号線25の厚さは例えば255nmになる。この場合、ダミー信号線25のエッジ部のテーパ角θ1は、例えば15度乃至30度である。このように、ダミー信号線25を厚くしても光漏れが生じない大きな原因の一つは、ダミー信号線25のエッジ部のテーパ角θ1であると考えることが出来る。
【0060】
理論的には、バックライトからの光がθ1よりも小さい角度で入射すれば、信号線の側面において、反射が生ずる。しかし、バックライトからの光は所定の配向角分布を有しており、法線方向に対して、ある角度以上の光の量は非常に小さくなる。したがって、仮に、信号線の側面で反射しても、視認できない程度の光量であれば、実質的に光漏れの問題は生じない。
【0061】
図16乃至
図18は、実施例1の具体的な構成を説明する断面図であり、
図8のH-H断面図に相当する、輝度信号線21の断面図である。
図16は、実施例1を適用する前の輝度信号線21の断面図である。
図16において、輝度信号線の側面に入射した光は反射してコントラストを低下させる。特に、
図8に示すように、輝度信号線21の延在方向が、偏光板の偏光軸に対する角度φに対して大きくなると、輝度信号線の側面からの反射光に偏向の乱れが生じ、光もれの影響が一層大きくなる。
【0062】
反射光の偏光乱れの影響は、
図6に示すように、信号線の延在方向が偏光板の偏光軸に対する角度がφ1すなわち、13度程度までは、小さい。つまり、表示パネル10において、映像信号線2による偏光乱れの影響による光漏れは観測されていない。しかし、
図8に示すように、輝度信号線の屈曲方向がφ2になると顕著に影響が生ずる。この結果を考慮すると、輝度信号線21の屈曲方向の、偏光板の偏光軸に対する角度が15度以上となる場合は、反射光の偏向乱れ考慮する必要があるということである。
【0063】
言い換えると、輝度信号線21の屈曲方向が偏光板の偏光軸に対する角度が15度以上になることが予想されると、
図16に示すような、信号線の側面からの反射は出来るだけ抑える必要がある。しかし、すべての入射光に対して、輝度信号線21の側面における反射をゼロにすることは、出来ない。そこで、
図13乃至
図15で説明したように、輝度信号線21の主面に対する光の角度θを30度以下にすることによって、偏光乱れの影響による光漏れを実質的に防止することが出来る。つまり、パックライトからの光は、所定の配光角分布を有しているからである。
【0064】
図17は、走査線1と同じ層、すなわち、ゲート絶縁膜103の上にダミー信号線25と同じ、厚さ45nmのMo膜252で形成された遮光膜22によって、輝度信号線21の主面に対する角度θ1が30度以上である光を遮断する構成を示す断面図である。
図17において、遮光膜22の幅は、片側において、輝度信号線21の幅よりもdw1大きくなる。この場合、層間絶縁膜105と遮光層22の厚さの合計を100μmとし、輝度信号線の厚さを600nmとすると、tan30は0.577であるから、dw2=700/0.577=1213nm、すなわち、片側で1.2μm大きくなる。その分、光透過率が減少する。これが問題になる値になるか否かは、元の輝度信号線21の幅wwがどの程度であるかにもよるが、高精細表示装置でない限り許容範囲である。
【0065】
図18は、走査線1と同じ層、すなわち、ゲート絶縁膜103の上に走査線1と同じ断面構成を有する2層膜、すなわち、Mo層252及びMo合金層251によって、遮光膜22を形成した場合である。つまり、
図18は、この遮光膜22によって、輝度信号線21の主面に対する角度θ1が30度以上である光を遮断する構成を示す断面図である。
図18において、遮光膜22の幅は、片側において、輝度信号線の幅よりもdw2、両側の合計で2dw2大きくなる。
図18では、遮光膜22の厚さが
図17の場合よりも厚くなり、255nmである。層間絶縁膜105と遮光膜22の合計の厚さを300μmと仮定し、輝度信号線21の厚さを600nmであると仮定した場合、tan30は0.577であるから、dw2=900/0.577=1559nm、すなわち、片側で1.55μm大きくなる。その分、光透過率が減少する。これが問題になる値になるか否かは、元の輝度信号線21の幅wwがどの程度であるかにもよるが、高精細表示装置でない限り許容範囲である。
【0066】
図17及び
図18の場合、輝度信号線21による遮光は、実質的には、遮光膜22の幅によって決められる。つまり、画素における光透過率は、
図17では、輝度信号線21よりも幅の広い、幅w1の遮光膜22によって決められる。この場合、ダミー信号線25の幅も輝度信号線21の幅wwではなく、遮光膜22の幅w1に合わせて設定することになる。また、
図18では、光透過率は、輝度信号線21よりも幅の広い、幅w2の遮光膜22によって決められる。この場合、ダミー信号線25の幅も輝度信号21の幅wwではなく、遮光膜22の幅w1に合わせて設定することになる。
実施例1は、輝度信号線21の下層に遮光膜22を配置することによって、特定角度以上の光が輝度信号線21側面から反射しない構成である。実施例2では、輝度信号線21の断面構造のみによって、特定角度以上の光が輝度信号線21の側面から反射しない構成とすることによって、光漏れを防止する構成を与えるものである。
以上の説明は、輝度信号線21が3層構成であるとして説明したが、本実施例は、3層構成に限らず、2層構成、あるいは4層以上の構成の場合にも適用することが出来る。