(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084384
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】モータ用コイル及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20240618BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H01F5/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198632
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友久
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB12
5H603CA01
5H603CB01
5H603CB17
5H603CB19
5H603CC04
5H603CC07
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD24
5H603CE05
5H603CE13
5H603EE02
5H603EE12
(57)【要約】
【課題】形成時の作業性を向上する。
【解決手段】モータ用コイルは、所定の方向に積み重なった複数の導電部材を備える。前記所定の方向において、前記複数の導電部材は互いに係合している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に積み重なった複数の導電部材を備え、
前記所定の方向において、前記複数の導電部材は互いに係合している、
モータ用コイル。
【請求項2】
前記複数の導電部材は、それぞれ係合部と被係合部とを備える、請求項1に記載のモータ用コイル。
【請求項3】
前記複数の導電部材のうち第1の導電部材の係合部は、前記所定の方向における一方側に位置する第2の導電部材の被係合部と係合し、
前記第1の導電部材の被係合部は、前記所定の方向における他方側に位置する第3の導電部材の係合部と係合し、
前記第2の導電部材と、前記第1の導電部材と、前記第3の導電部材とは、螺旋状の導電部材となる、
請求項2に記載のモータ用コイル。
【請求項4】
前記係合部は、周方向において突出した凸部であり、
前記被係合部は、周方向において凹んだ凹部である、
請求項3に記載のモータ用コイル。
【請求項5】
前記係合部は、前記所定の方向において突出した凸部であり、
前記被係合部は、前記所定の方向に形成された孔部又は凹部である、
請求項3に記載のモータ用コイル。
【請求項6】
前記所定の方向に積み重なった複数の導電部材のうち、一方の導電部材の外形は、他方の導電部材の外形より大きい、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のモータ用コイル。
【請求項7】
請求項1に記載のモータ用コイルと、
インシュレータと、当該インシュレータを介して前記モータ用コイルに囲まれたステータコアと、を有するステータと、
ロータと、
を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用コイル及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の導体を切断してモータ用コイルを製造する技術が知られている。例えば、筒状導体を螺旋状に切断して平角線を形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断面積の大きい導体を用いてモータ用コイルを形成する場合、作業性が低くなることがある。
【0005】
一つの側面では、コイルの形成時の作業性を向上できるモータ用コイル及びモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、モータ用コイルは、所定の方向に積み重なった複数の導電部材を備える。前記所定の方向において、前記複数の導電部材は互いに係合している。
【0007】
一つの態様によれば、形成時の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるモータの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるコイルのステータへの取付の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるステータに取り付けられたコイルの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態におけるコイルの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における導電部材の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における加工前の導電部材の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態における端子が取り付けられたコイルの一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態におけるコイルへの端子の取付工程の一例を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の変形例におけるコイルの一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第1の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第1の変形例におけるステータに取り付けられたコイルの一例を示す上面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態におけるコイルの一例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における導電部材の一例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態における係合機構の一例を示す拡大斜視図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態における加工前の導電部材の一例を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態における導電部材の製造工程の一例を示す平面図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態におけるコイルへの端子の取付工程の一例を示す分解斜視図である。
【
図18】
図18は、第2の変形例における加工前の端子付導電部材の一例を示す平面図である。
【
図19】
図19は、第2の変形例における加工前の端子付導電部材の別の一例を示す平面図である。
【
図20】
図20は、第2の変形例における端子付コイルの一例を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、第3の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
【
図22】
図22は、第3の変形例における係合機構の一例を示す拡大斜視図である。
【
図23】
図23は、第3の変形例におけるコイルの一例を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、第4の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、第5の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するモータ用コイル及びモータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、後に説明するロータ90の径方向における外側を、径方向における正方向側とする座標系を図示する場合がある。
【0010】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態におけるモータについて、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態におけるモータの一例を示す斜視図である。
図1に示すように、第1の実施形態におけるモータ1は、ステータ80が、ロータ90よりも径方向における外側に配置される、いわゆるインナーロータ型のモータである。
【0011】
モータ1は、
図1に示すように、コイル10と、ステータ80と、ロータ90とを備える。ステータ80は、インシュレータ83と、インシュレータ83を介してコイル10に囲まれたステータコア81とを有する。ステータコア81は、例えばステンレス鋼や磁性鋼板などの磁性体を、軸方向に複数積層することによって形成される、環状の部材である。なお、コイル10は、モータ用コイルの一例である。
【0012】
図2に示すように、ステータコア81は、径方向における内側に延在するティース82を備える。
図2は、第1の実施形態におけるコイルのステータへの取付の一例を示す分解斜視図である。
図2に示すように、ティース82には、インシュレータ83を介して、コイル10が装着される。
【0013】
インシュレータ83は、例えば樹脂等の絶縁体により形成される。
図3に示すように、インシュレータ83は、例えば、コイル10に囲まれた状態で、ティース82に挿通される。
図3は、ステータに取り付けられたコイルの一例を示す斜視図である。この場合において、ステータコア81は、インシュレータ83を介して、コイル10に囲まれる。
【0014】
ロータ90は、モータ1において回転軸であるシャフト99を中心に回転可能に設けられる。ロータ90は、シャフト99と、ロータヨーク91(ヨーク)と、ロータヨークの外周部を囲む環状のマグネット92とを備える。
【0015】
シャフト99は、回転軸であって、ロータ90の径方向における最も内側において、円柱状に形成される。ロータヨーク91は、例えば鉄などの磁性材料で円筒状に形成される。そして、ロータヨーク91の内周面は、シャフト99の外周面に接触するように配置される。
【0016】
第1の実施形態において、
図4に示すコイル10は、
図5に示す導電部材100を、ロータ90の径方向に複数積層することにより形成される。
図4は、第1の実施形態におけるコイルの一例を示す斜視図である。
図5は、第1の実施形態における導電部材の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、第1の実施形態におけるコイル10は、ロータ90の径方向に積み重なった複数の導電部材100を備える。また、ロータ90の径方向において、複数の導電部材100は互いに係合している。この場合において、コイル10の巻回軸方向は、ロータ90の径方向となる。なお、ロータ90の径方向は、所定の方向の一例である。また、以下において、複数の導電部材100をそれぞれ区別して表現する場合に、導電部材1a0乃至1j0と表現する場合がある。
【0017】
図5に示すように、導電部材100は、第1平面101と、傾斜面104と、第2平面105と、第3平面106とを備える。第1の実施形態において、第1平面101、傾斜面104、第2平面105及び第3平面106の径方向における厚さは略同一である。
【0018】
第1平面101は、軸方向における負方向側において周方向に延在する部分と、当該部分の周方向における両端部から、軸方向における正方向側にそれぞれ延在する部分とを備える。第2平面105は、第1平面101の周方向における一方側の軸方向における正方向側の端部から、周方向における他方側に延在する。傾斜面104は、第1平面101の周方向における他方側の軸方向における正方向側の部分から、軸方向における正方向側に延在する。また、傾斜面104は、径方向における正方向側に向かって傾斜する。第3平面106は、傾斜面104の軸方向における正方向側の端部から、軸方向における正方向側に延在する。
【0019】
また、
図5に示すように、複数の導電部材100は、それぞれ被係合部107と係合部108とを備える。被係合部107と係合部108とは、係合機構109を構成する。
図5に示すように、被係合部107は、第2平面105の周方向における他方側の端部から、周方向における一方側に向かって切り欠かれた凹部である。また、係合部108は、第3平面106の軸方向における正方向側の部分から、周方向における一方側に突出する凸部である。すなわち、第1の実施形態において、係合部108は、周方向に突出した凸部であり、被係合部107は、周方向において凹んだ凹部である。
【0020】
第1の実施形態において、
図5に示すように、係合部108は、被係合部107、第2平面105及び第1平面101に対して、径方向における外側に位置する。なお、径方向における内側は、所定の方向における一方側の一例であり、径方向における外側は、所定の方向における他方側の一例である。
【0021】
この場合において、
図4に示す複数の導電部材100のうち第1の導電部材1b0の被係合部107は、径方向における内側に位置する第2の導電部材1a0の係合部108と係合する。また、第1の導電部材1b0の係合部108は、径方向における外側に位置する第3の導電部材1c0の被係合部107と係合する。また、
図1に示すように、第2の導電部材1a0と、第1の導電部材1b0と、第3の導電部材1c0とは、螺旋状の導電部材を構成している。
【0022】
複数の導電部材100において、螺旋状に係合される際、巻回軸方向において隣接する2つの導電部材100が有する被係合部107及び係合部108は、相互に電気的に接続される。一方、被係合部107及び係合部108以外の部分での短絡が生じないように、巻回軸方向において隣接する2つの導電部材100は、相互に間隙を設けて係合される。また、螺旋状に係合された複数の導電部材100には、例えば電着塗装等により絶縁被膜(被膜)が施され、この絶縁被膜が隣接する2つの導電部材100の間隙を埋めている。これにより、巻回軸方向において互いに係合された導電部材100間では、被係合部107と係合部108とでの電気的な接続を維持しながら、その他の部分における短絡が抑制される。
【0023】
第1の実施形態における導電部材100は、例えば
図6に示す板材199を加工することにより形成される。
図6は、第1の実施形態における加工前の導電部材の一例を示す平面図である。板材199は、例えば
図6に示すような空洞10rを囲む、銅等の導電性を有する材料からなる、環状の板状の部材である。
【0024】
第1の実施形態において、板材199が、切断された板材199が、折り線10uにおいて谷折りに折り曲げられ、また折り線10tにおいて山折りに折り曲げられることにより、第1平面101と、径方向における正方向側に傾いた傾斜面104とが形成される。また、折り曲げられた板材199が、切断線10sに沿って切断されることにより、被係合部107を備える第2平面105と、係合部108を備える第3平面106とが形成される。この場合において、空洞10rは、導電部材100が積層されたコイル10において、
図2に示すティース82に挿通される貫通孔となる。
【0025】
以上説明したように、第1の実施形態におけるモータ1は、モータ用コイル10と、インシュレータ83と、インシュレータ83を介してモータ用コイル10に囲まれたステータコア81と、を有するステータ80と、ロータ90と、を備える。また、第1の実施形態におけるモータ用コイル10は、所定の方向に積み重なった複数の導電部材100を備え、所定の方向において、複数の導電部材100は互いに係合している。かかる構成によれば、モータ用コイルの形成時の作業性を向上できる。
【0026】
なお、第1の実施形態におけるコイル10には、
図7に示すように端子31及び32が取り付けられてもよい。
図7は、第1の実施形態における端子が取り付けられたコイルの一例を示す斜視図である。
図8は、第1の実施形態におけるコイルへの端子の取付工程の一例を示す分解斜視図である。端子31及び32は、例えば、銅などの導電性を有する材料で形成された、略円柱状の導体である。
【0027】
第1の実施形態において、端子31及び32は、
図7に示すように、軸方向における正方向側に延在する。端子31及び32は、例えば、半田付け等により、導電部材100に取りつけられる。第1の実施形態において、端子31は、径方向における負方向側において、導電部材100の第2平面105における破線で示す位置に電気的に接続され、端子32は、径方向における正方向側において、導電部材100の第3平面106における破線で示す位置に電気的に接続される。かかる構成によれば、端子付コイル10aを容易に形成できる。
【0028】
また、端子31及び32が延在する方向は、例えば径方向や周方向などのその他の方向であってもよく、接続される位置も
図7及び
図8に示すものに限られない。また、コイル10の径方向における負方向側の端部に位置する導電部材1a0と、径方向における正方向側の端部に位置する導電部材1j0とのうち、いずれか一方だけに端子31又は32が接続されるような構成であってもよい。
【0029】
[第1の変形例]
第1の実施形態においては、コイル10は、同一の複数の導電部材100により形成されるが、これに限られず、
図9に示すように、大きさや形状が異なる複数の導電部材を螺旋状に係合することにより、コイルを形成してもよい。
図9は、第1の変形例におけるコイルの一例を示す斜視図である。なお、以下の各実施形態及び各変形例において、先に説明した図面に示す部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
図9に示すように、第1の変形例におけるコイル20は、複数の導電部材1a0乃至1g0と、導電部材100とは周方向における大きさが異なる、他の複数の導電部材2h0乃至2j0とを備える。なお、以下において、複数の導電部材2h0乃至2j0を区別せずに表現する場合に、単に導電部材200と表記する場合がある。
【0031】
図10は、第1の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。導電部材200は、
図5に示す導電部材100と同様に、第1平面201と、傾斜面204と、第2平面205と、第3平面206とを備える。第1平面201、傾斜面204、第2平面205及び第3平面206は、導電部材100の第1平面101、傾斜面104、第2平面105及び第3平面106と、それぞれ略同一の方向に延在する。また、傾斜面204は、折り線20t及び20uにおいて折り曲げることにより形成される。
【0032】
図10に示すように、第1の変形例における導電部材200は、導電部材100よりも周方向において張り出す部分(オーバーハング部20k及び20m)を1又は複数備える。
【0033】
第1の変形例において、オーバーハング部20k及び20mを備える導電部材200の係合機構109は、導電部材100の係合機構109と同一の形状を備える。また、導電部材200の空洞10rの形状及び大きさも、導電部材100の空洞10rの形状及び大きさと略同一である。これにより、導電部材100と導電部材200とを容易に係合できるので、導電部材の外形の大きさが異なるコイル20を容易に形成し、ステータ80に装着できる。
【0034】
以上説明したように、第1の変形例において、所定の方向に積み重なった複数の導電部材100,200のうち、一方の導電部材200の外形は、他方の導電部材100の外形より大きい。かかる構成によれば、
図11に示すように、コイル20の占積率を向上できる。
図11は、第1の変形例におけるステータに取り付けられたコイルの一例を示す上面図である。
図11に示すコイル20は、第1の実施形態におけるコイル10と比較して、導電部材200のオーバーハング部20k及び20mに相当する部分だけ、ステータ80におけるコイル20の占積率を向上することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
以上、係合機構が周方向において形成される実施形態について説明したが、これに限られず、係合機構が他の方向において形成されるような実施形態であってもよい。
図12は、第2の実施形態におけるコイルの一例を示す斜視図である。
図13は、第2の実施形態における導電部材の一例を示す斜視図である。第2の実施形態において、
図12に示すコイル40は、
図13に示す導電部材400を、径方向において複数積層することにより形成される。
【0036】
図13に示すように、導電部材400は、
図5に示す導電部材100と同様に、第1平面401と、傾斜面404と、第2平面405と、第3平面406とを備える。第1平面401、傾斜面404、第2平面405及び第3平面406は、導電部材100の第1平面101、傾斜面104、第2平面105及び第3平面106と、それぞれ略同一の方向に延在する。また、傾斜面404は、折り線40t及び40uにおいて折り曲げることにより形成される。
【0037】
一方、導電部材400の第1平面401には、周方向における他方側の部分に、2つの凹部40p及び40qが形成される。凹部40qのような溝の形状を凹部は概念として含む。なお、以下において、第1平面401のうち、凹部40qよりも周方向における他方側に位置する部分を、第1平面401の第2部分402と表記する場合がある。
【0038】
また、導電部材400においては、
図14に示すように、第2平面405の一部と、第3平面406の一部とが、径方向において対向する。
図14は、第2の実施形態における係合機構の一例を示す拡大斜視図である。
図14は、
図13の枠S1に示す部分を拡大した図である。
【0039】
図14に示すように、被係合部407は、導電部材400の第2平面405のうち、第3平面406と対向する部分に形成され、係合部408は、第3平面406のうち、第2平面405と対向する部分に形成される。この場合において、係合部408及び被係合部407は、径方向において相互に対向する。係合部408と被係合部407とは、係合機構409を構成する。
【0040】
第2の実施形態において、係合部408は、径方向における正方向側に突出している。なお、係合部408の径方向における負方向側には、
図14に示すように径方向における正方向側に向けて凹んだ凹部408aが形成されてもよい。この凹部408aは孔部であっても構わない。
【0041】
また、第2の実施形態において、被係合部407は、径方向において開口した孔部である。なお、被係合部407は、径方向に形成された凹部であってもよい。すなわち、第2の実施形態において、係合部408は、所定の方向において突出した凸部であり、被係合部407は、前記所定の方向に形成された孔部又は凹部である。
【0042】
この場合において、
図13に示す導電部材4b0の係合部408は、径方向における正方向側に位置する他の導電部材4c0の被係合部407と係合する。また、導電部材4b0の被係合部407は、径方向における負方向側に位置する他の導電部材4a0の係合部408と係合する。かかる構成においても、導電部材4c0と、導電部材4b0と、導電部材4a0とは、螺旋状の導電部材となる。また、第2の実施形態においても、螺旋状に係合された複数の導電部材400に、例えば電着塗装等により絶縁被膜が施されることにより、巻回軸方向において互いに係合された導電部材400間では、係合部408と被係合部407とでの電気的な接続を維持しながら、その他の部分における短絡が抑制される。
【0043】
第2の実施形態における導電部材400は、例えば
図15に示す板材499を加工することにより形成される。
図15は、第2の実施形態における加工前の導電部材の一例を示す平面図である。
図15に示すように、板材499において、第1平面401の第2部分402は、軸方向に対して、周方向における一方側に傾いた方向に延在する。
【0044】
第2の実施形態において、導電部材400は、板材499のうち、第1平面401の第2部分402、傾斜面404及び第3平面406をふくむ部分403を、
図15及び
図16に示す矢印の方向、例えば径方向に対して直交する方向に折り曲げることにより形成される。
図16は、第2の実施形態における導電部材の製造工程の一例を示す平面図である。かかる折り曲げ工程において、
図16に示すように、凹部40pの周方向に対する角度は次第に大きくなり、逆に凹部40qの周方向に対する角度は次第に小さくなる。
【0045】
その後、部分403は、
図16において破線で示す位置まで折り曲げられるとともに、折り線40t及び40uにおいて折り曲げられる。これにより、周方向における一方側に傾いていた部分403が、軸方向における正方向側に延在する。その際、例えば、第2平面405における略円形状の部分40vと、第3平面406における略円形状の部分40wとが、径方向において相互に対向する。また、第1平面401、傾斜面404、第2平面405及び第3平面406で囲まれた部分には、第1の実施形態における空洞10rと略同一の大きさの空洞40rが形成される。
【0046】
そして、径方向において対向する略円形状の部分40v及び40wを、例えば径方向における正方向側に押し出すことにより、凸部である係合部408と、貫通孔である被係合部407とが形成される。
【0047】
なお、被係合部407は、径方向において開口した孔部ではなく、径方向における正方向側に凹んだ凹部であってもよい。この場合、例えば複数の導電部材400を径方向に並べた状態で、径方向において重なっている複数の略円形状の部分40v及び40wをまとめて打ち抜くような構成であってもよい。これにより、個別に係合機構409を形成する工程を省略できる。
【0048】
以上説明したように、第2の実施形態において、係合部408は、所定の方向において突出した凸部であり、被係合部407は、所定の方向に形成された孔部又は凹部である。かかる構成においても、モータ用コイルの形成時の作業性を向上できる。
【0049】
また、
図17に示すように、第2の実施形態においても、コイル40に端子が取り付けられてもよい。
図17は、第2の実施形態におけるコイルへの端子の取付工程の一例を示す分解斜視図である。
図17に示すように、端子43には、径方向における正方向側に突出する凸部47が形成され、端子44には径方向における正方向側に凹んだ凹部48が形成される。
【0050】
第2の実施形態において、端子43の凸部47は、径方向において負方向側に位置する導電部材4a0の被係合部407に係合し、端子44の凹部48には、径方向において正方向側に位置する導電部材4i0の係合部408が係合する。かかる構成により、端子43及び44を備える端子付コイル40aが形成される。
【0051】
[その他の変形例]
以上、各実施形態における構成及び変形例について説明したが、実施形態及び変形例はこれらに限られない。例えば、例えば、第1の実施形態において、被係合部107及び係合部108の形状は、
図4乃至
図6に示すものに限られず、例えば曲線上の部分等を備えていてもよい。
【0052】
また、第2の実施形態において、第2平面405と第3平面406とは、周方向の他方側における端面及び軸方向正方向側における端面が、いずれも略面一となるように形成されているが、これに限られない。例えば、
図18に示すように、第2平面505の一部が、第3平面406に対して、いずれかの方向に突出していてもよい。また、
図19に示すように、第3平面506の一部が、第2平面405に対して、いずれかの方向に突出していてもよい。
図18は、第2の変形例における加工前の端子付導電部材の一例を示す平面図である。
図19は、第2の変形例における加工前の端子付導電部材の別の一例を示す平面図である。この場合において、第2平面605又は第3平面606から突出した部分を、
図20に示すように端子付コイルの端子部分として用いてもよい。
図20は、第2の変形例における端子付コイルの一例を示す斜視図である。
図20に示すように、第2の変形例における端子付コイル40bは、導電部材4b0乃至4h0と、
図18に示すように端子部51が形成された端子付導電部材5a0と、
図19に示すように端子部52が形成された端子付導電部材5i0とを備える。
【0053】
端子付導電部材5a0は、
図18に示すような板材5a9を、板材499と同様に折り曲げることにより形成され、端子付導電部材5i0は、
図19に示すような板材5i9を折り曲げることにより形成される。
図18に示すように、端子部51は、端子付導電部材5a0の第2平面505から、軸方向における正方向側に延在する。また、
図19に示すように、端子部52は、端子付導電部材5i0の第3平面506から、軸方向における正方向側に延在する。
【0054】
また、第2の実施形態における板材499と同様に、板材5a9の略円形状の部分40wは、径方向における正方向側に突出する係合部408を形成し、板材5i9の略円形状の部分40vは、径方向において開口した被係合部407を形成する。かかる端子付導電部材5a0の係合部408が導電部材4b0の被係合部407に係合し、端子付導電部材5i0の被係合部407に導電部材4h0の係合部408が係合する。これにより、
図19に示すように、径方向における負方向側に端子部51を備え、径方向における正方向側に端子部52を備える端子付コイル40bが形成される。
【0055】
なお、端子部51又は52が形成される位置は、
図18乃至
図20に示すものに限られず、例えば周方向におけるいずれかの方向や、軸方向に対して傾いた方向等、その他の方向に形成されていてもよい。他の実施形態における端子31,32,43及び44についても同様である。また、導電部材600と同様に、第1の実施形態における導電部材100に、端子部が形成されるような構成であってもよい。
【0056】
また、各実施形態において、第2平面及び第3平面の径方向における厚さは、第1平面と略同一であったが、
図21乃至
図23に示すように、各部位によって径方向における厚さが異なる構成であってもよい。
図21は、第3の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
図22は、第3の変形例における係合機構の一例を示す拡大斜視図である。
図23は、第3の変形例におけるコイルの一例を示す斜視図である。
図22は、
図21の枠S2に示す部分を拡大した図である。
【0057】
図21及び
図22に示すように、第3の変形例において、第2平面605の径方向における厚さW2は、第1平面401の径方向における厚さW1よりも小さい。同様に、第3平面606の径方向における厚さW3も、厚さW1よりも小さい。なお、厚さW2と厚さW3とを合わせた厚さは、例えば厚さW1と略同一である。
【0058】
第3の変形例においても、導電部材600は、被係合部607と係合部608とを含む係合機構609により、径方向において相互に係合される。この場合において、
図23に示すように、径方向において隣接する2つの導電部材600の間隔W4は、
図12に示すコイル40における、2つの導電部材400の間隔W0よりも小さい。かかる構成によれば、導電部材600間の径方向における距離を小さくできるため、コイル60の占積率を向上できる。例えば、
図12に示すコイル40は、9個の導電部材4a0乃至4i0を有するのに対し、
図23に示すコイル60は、コイル40と同様のコイルサイズにおいて、10個の導電部材6a0乃至6j0を有することができる。
【0059】
なお、第3の変形例における係合部608は、例えば
図22に示す第3平面606の径方向における正方向側の面606aを、径方向における負方向側に向かって、係合部608を残して削り出すことによって形成してもよい。
【0060】
また、導電部材において、係合機構が形成される位置及び方向も上に示すものに限られず、
図24に示すように、異なる位置に、軸方向において係合する係合機構が形成されてもよい。
図24は、第4の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
図24に示すように、第4の変形例において、導電部材700の係合機構709を構成する係合部707は、第2平面705から、軸方向における負方向側に突出する凸部である。また、被係合部708は、第3平面706から、軸方向における負方向側に凹んだ凹部である。
【0061】
また、第2の実施形態において、係合機構は上で示すものに限られず、第1の実施形態と同様に、周方向において係合する構成であってもよい。また、
図25に示すように、係合機構が、軸方向において係合する構成であってもよい。
図25は、第5の変形例における導電部材の一例を示す斜視図である。
図25に示す導電部材800は、環状の部材を打ち抜くのではなく、例えば導電部材400と同様に、凹部40p及び40qが形成された板材を、径方向に対して直交する方向に折り曲げることにより形成される。
【0062】
図25に示すように、係合機構809の係合部807は、第4の変形例における係合部707と同様に、軸方向における負方向側に突出し、被係合部808は、被係合部708と同様に、軸方向における負方向側に凹んでいる。なお、
図25に示すように、係合部807は、例えば第2平面805の軸方向における負方向側の端面805bよりも、軸方向における正方向側に形成される。この場合において、第3平面806の軸方向における正方向側の端面806cは、第2平面805の端面805bよりも、軸方向における正方向側に突出する。なお、第4の変形例における導電部材700の空洞70r及び第5の変形例における導電部材800の空洞80rも、第1の実施形態における空洞10rと略同一の大きさを有する。
【0063】
以上、本発明を各実施形態及び各変形例に基づき説明したが、本発明は各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0064】
1 モータ、10,20,40,60 コイル、10a,40a,40b 端子付コイル、100,200,400,600,700,800 導電部材、101,201,401 第1平面、104,204,404 傾斜面、105,205,405,505,605,705,805 第2平面、106,206,406,506,606,706,806 第3平面、108,408,608,707,807 係合部、107,407,607,708,808 被係合部、109,409,609,709,809 係合機構、31,32,43,44 端子、51,52 端子部、40p,40q 凹部、80 ステータ、81 ステータコア、82 ティース、83 インシュレータ、90 ロータ、91 ロータヨーク、92 マグネット、99 シャフト