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特開2024-84387電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム
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  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図1
  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図2
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  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図6
  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図7
  • 特開-電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084387
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240618BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240618BHJP
   H02J 1/12 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02J1/00 306L
H02J1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198635
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 斗生
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165AA01
5G165DA01
5G165EA02
5G165EA03
5G165EA10
5G165GA04
5G165HA09
5G165JA07
5G165LA03
5G503AA04
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電源装置の放電による損失を抑えて、システム全体の電力効率低下を防止する電源装置の制御方法、制御装置、電源装置、配電システムおよび制御プログラムを提供する。
【解決手段】直流配電システム100において、蓄電装置5を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置1-2~1-nに電気的に接続された電源装置1-1を制御する制御装置8は、電源装置の充放電を制御する充放電制御部を備える。充放電制御部は、電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置の制御方法であって、
前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する、制御方法。
【請求項2】
前記電源装置が第1電圧で放電動作を行っており、かつ、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、前記第1電圧とは異なる第2電圧を前記線路に印加するステップと、
前記電源装置が放電動作を行っておらず、かつ、前記線路の電圧が前記第2電圧である場合に、前記電源装置の放電を禁止するステップと、
を有する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記閾値電力は、前記電源装置が放電動作に必要とする電力と同じまたはそれより小さい電力である、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御装置であって、
前記電源装置の充放電を制御する充放電制御部を備え、
前記充放電制御部は、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する、制御装置。
【請求項5】
前記線路の電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、
前記充放電制御部は、
前記電源装置が第1電圧で放電動作を行っており、かつ、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、前記第1電圧とは異なる第2電圧を前記線路に印加し、
前記電源装置が放電動作を行っておらず、かつ、前記線路の電圧が前記第2電圧である場合に、前記電源装置の放電を禁止する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記閾値電力は、前記電源装置が放電動作に必要とする電力と同じまたはそれより小さい電力である、請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
蓄電装置と、
請求項4または5に記載の制御装置を備えた電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置を複数備え、
前記電源装置は前記線路を介して互いに接続されている、配電システム。
【請求項9】
蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御プログラムであって、
前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する機能をコンピュータに実現させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備えた電源装置間の電力融通に関し、特に、オフグリッドでの電源装置間の電力融通に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自然エネルギーを活用しながら、一定の地域において電力負荷を分散型電源から供給する、マイクログリッドシステムと呼ばれる電力系統が導入されている。このようなシステムでは、蓄電装置およびDC/DCコンバータを備えた複数の電源装置が線路を介して接続されており、蓄電残量の多い装置から蓄電残量の少ない電源装置へ電力融通がなされる。
【0003】
本願の発明者は、蓄電残量の少ない電源装置への充電を優先的に行うことにより、電源装置間の充電による損失を抑えることができる配電システムを発明した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2022-7928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、放電動作を行う電源装置が1台のみである場合が想定されており、放電による損失は考慮されていない。そのため、放電動作を行う電源装置が増加するほど、放電電力に対する融通動作電力(放電動作に必要とする電力)の割合が大きくなり、システム全体の電力効率が低下する。
【0006】
そこで本発明は、電源装置の放電による損失を抑えて、システム全体の電力効率低下を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置の制御方法であって、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御装置であって、前記電源装置の充放電を制御する充放電制御部を備え、前記充放電制御部は、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御プログラムは、蓄電装置を備え、商用電力系統に接続されていない線路を介して複数の他の電源装置に電気的に接続された電源装置を制御する制御プログラムであって、前記電源装置の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の電源装置の放電を禁止する機能をコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源装置の放電による損失を抑えて、システム全体の電力効率低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る直流配電システムの構成を示すブロック図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】制御装置による電源装置の制御方法のフローを示すフローチャートである。
図4】放電電力、充電電力およびグリッド電圧の変遷を示すグラフである。
図5】電源装置間における電力融通の変遷を示す概略図である。
図6】電源装置間における電力融通の変遷を示す概略図である。
図7】電源装置間における電力融通の変遷を示す概略図である。
図8】制御期間中における各電源装置の状態、グリッド電圧および融通損失率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(システム構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る直流配電システム100の構成を示すブロック図である。直流配電システム100は、複数の電源装置(以下、装置)1を備え、装置1はDCグリッド(線路)9を介して互いに接続されている。DCグリッド9は、交流電源系統に接続されないオフグリッドであり、DCグリッド9の電圧(以下、グリッド電圧Vg)は、通常は第1電圧V1=350Vである。各装置1は、発電機能および蓄電機能を有しており、各装置1が充放電を行うことにより、装置1間の電力融通が行われる。
【0014】
本実施形態では、装置1としてn個の装置1-1~1-nが設けられているが、その個数は特に限定されない。また、直流配電システム100は、電源装置以外の装置を含んでもよい。装置1-1~1-nの各々の構成は互いに異なってもよいが、本実施形態では互いに同一である。以下、装置1-1~1-nを互いに区別しない場合は、単に装置1と記載する。
【0015】
装置1は、双方向DC/DCコンバータ2と、負荷3と、発電装置4と、蓄電装置5と、電圧センサ6と、電流センサ7と、制御装置8とを備えている。
【0016】
双方向DC/DCコンバータ2は、DCグリッド(線路)9に接続されている。通常時において、双方向DC/DCコンバータ2は、DCグリッド9からの電力を250Vに変換して負荷3および/または蓄電装置5に供給し、発電装置4および/または蓄電装置5からの電力を350Vに変換してDCグリッド9に供給する。
【0017】
発電装置4は、本実施形態では、ソーラーパネルなどの自然エネルギーを利用した発電装置である。なお、発電装置4は、燃料を用いて発電する発電機であってもよい。
【0018】
蓄電装置5としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
【0019】
電圧センサ6および電流センサ7は、双方向DC/DCコンバータ2のDCグリッド9側の配線の電流および電流をそれぞれ計測する。
【0020】
制御装置8は、装置1を制御するコンピュータであり、特に、装置1と他の装置1との間の充放電を制御する機能を有している。
【0021】
図2は、制御装置8の構成を示すブロック図である。制御装置8は、残量検出部81と、電圧検出部82と、電流検出部83と、電力検出部84と、充放電制御部85とを備えている。これらの各機能ブロックは、制御装置8のCPUなどのプロセッサ(不図示)が所定の制御プログラムを主記憶装置(不図示)に読み出して実行することによってソフトウェア的に実現される。制御プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介して制御装置8にダウンロードしてもよいし、CD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に制御プログラムを記録しておき、当該記録媒体を介して制御装置8にインストールしてもよい。
【0022】
残量検出部81は、蓄電装置5の蓄電残量(state of charge:SOC)を検出する。なお、蓄電残量は百分率(%)で表される。
【0023】
電圧検出部82および電流検出部83は、それぞれ電圧センサ6および電流センサ7からの計測値を取得する。電力検出部84は、電圧検出部82および電流検出部83が取得した電圧Vおよび電流Iに基づいて、充放電の電力Pを算出する。なお、電力Pは、双方向DC/DCコンバータ2からDCグリッド9への放電電力PoutおよびDCグリッド9から双方向DC/DCコンバータ2への充電電力Pinを含む概念であり、以下、放電電力Poutおよび充電電力Pinを区別しないときは単に電力Pと称する。
【0024】
本実施形態では、SOC、電圧Vおよび電流Iの検出は常時行われるが、これらを所定の時間間隔で検出してもよい。
【0025】
充放電制御部85は、上述のSOC、電圧V、電流I、電力P等に基づいて、双方向DC/DCコンバータ2に対し、充放電の制御を行う。特に、充放電制御部85は、装置1の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の装置1の放電を禁止する機能を有する。具体的な制御内容は、以下詳述する。
【0026】
(制御手順)
図3は、制御装置8(主に充放電制御部85)による装置1の制御方法のフローを示すフローチャートである。
【0027】
ステップS1:充放電制御部85は、SOCがC1以上であるかを判定する。本実施形態において、C1は50%であるが、負荷3の消費電力や発電装置4の発電能力等により適宜設定される。SOC≧C1である場合(ステップS1においてYES)、充放電制御部85は、他の装置1からの充電は不必要であると判断し、ステップS2に移行する。一方、SOC<C1である場合(ステップS1においてNO)、充放電制御部85は、他の装置1からの充電が必要であると判断し、ステップS7に移行する。
【0028】
ステップS2:ステップS1においてSOC<C1である場合、充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に対して充電開始を指示する。これに応じて、双方向DC/DCコンバータ2が起動する。
【0029】
ステップS3:充放電制御部85は、電流Iが流れているか、すなわち、他の装置1から電力が供給されているかを判定する。I=0、すなわち、他の装置1から電力が供給されていない場合(ステップS3においてNO)、ステップS4に移行する。一方、I>0、すなわち、他の装置1から電力が供給されている場合(ステップS3においてYES)、ステップS5に移行する。
【0030】
ステップS4:充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に対して、DCグリッド9に電圧V3を印加するように指示する。本実施形態において、V3は第1電圧V1(350V)よりも低い320Vである。
【0031】
ステップS5:充放電制御部85は、SOCがC2以上になるまで双方向DC/DCコンバータ2に充電を継続させる。本実施形態において、C2は70%であるが、負荷3の消費電力や発電装置4の発電能力等により適宜設定される。SOCがC2以上になった場合(ステップS5においてYES)、ステップS6に移行する。
【0032】
ステップS6:充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に充電を終了させ、ステップS1に戻る。
【0033】
ステップS7:充放電制御部85は、SOCがC3以上であるかを判定する。本実施形態において、C3はC2と同じであり70%であるが、負荷3の消費電力や発電装置4の発電能力等により適宜設定される。SOC<C3である場合(ステップS7においてNO)、充放電制御部85は、他の装置1へ放電(電力融通)する余裕はないと判断し、ステップS1に戻る。一方、SOC≧C3である場合(ステップS1においてNO)、充放電制御部85は、他の装置1へ放電する余裕があると判断し、ステップS8に移行する。
【0034】
ステップS8:充放電制御部85は、グリッド電圧VgがV3(320V)であるか(充電を必要とする他の装置1がDCグリッド9に電圧V3を印加しているか)、およびグリッド電圧Vgが低下したかを判定する。グリッド電圧VgがV3ではない場合、かつ、グリッド電圧Vgが変化しない場合(ステップS8においてNO)、ステップS1に戻る。一方、グリッド電圧VgがV3である場合、または、グリッド電圧Vgが低下した場合(ステップS8においてYES)、ステップS9に移行する。
【0035】
ステップS9:充放電制御部85は、カウントを開始する。カウント期間中に、ステップS10、S11が実行される。
【0036】
ステップS10:充放電制御部85は、グリッド電圧Vgが第2電圧V2に変化したかを判定する。グリッド電圧VgがV1のままである場合(ステップS10においてNO)、ステップS11に移行する。グリッド電圧VgがV2に変化した場合(ステップS10においてYES)、ステップS13に移行する。第2電圧V2については後述する。
【0037】
ステップS11:充放電制御部85は、カウント開始から所定時間経過したかを判定する。所定時間はSOCが大きいほど短く、本実施形態では(100-SOC)秒である。例えば、SOC=90%の場合、充放電制御部85は、カウント開始から10秒経過したかを判定する。所定時間経過していない場合(ステップS11においてNO)、ステップS10に戻る。所定時間経過した場合(ステップS11においてYES)、ステップS12に移行する。
【0038】
ステップS12:充放電制御部85は、カウント開始からグリッド電圧VgがV2に変化せず(ステップS10においてNO)、かつ、所定時間経過した場合(ステップS11においてYES)、双方向DC/DCコンバータ2に放電開始を指示する。所定時間をSOCが大きいほど短くなるように設定することで、SOCが大きい装置1の順に放電を開始することができる。
【0039】
ステップS13:充放電制御部85は、カウント開始から所定時間経過するまでの間に、グリッド電圧VgがV2に変化した場合(ステップS10においてYES)、双方向DC/DCコンバータ2に動作を禁止し、ステップS1に戻る。すなわち、充放電制御部85は、装置1が放電動作を行っておらず、かつ、線路9の電圧が第2電圧V2である場合に、放電を禁止する。第2電圧V2は、後述するステップS18において、装置1が第1電圧V1で放電動作を行っており、かつ、装置1の放電電力が閾値電力Pth未満である場合に、線路9に印加される電圧である。
【0040】
ステップS14:放電が開始された後、充放電制御部85は、電流Iが流れているか(他の装置1への電力供給が継続しているか)、および、SOCがC3以上であるかを判定する。I=0になった場合(他の装置1の充電が完了し、他の装置1への電力供給が終了した場合)、または、SOC<C3になった場合(ステップS14においてNO)、ステップS15に移行する。一方、I>0、かつ、SOC≧C3である場合(ステップS14においてYES)、ステップS16に移行する。
【0041】
ステップS15:充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に放電を終了させ、ステップS1に戻る。
【0042】
ステップS16:充放電制御部85は、放電電力Poutが閾値電力Pth未満であるかを判定する。閾値電力Pthは、特に限定されないが、本実施形態では、放電電力Poutに対する融通動作電力(双方向DC/DCコンバータ2が動作時に消費する電力)の割合(以下、融通損失率)が大きく、直流配電システム100全体の電力効率が低いと判断される電力より若干大きい電力であり、例えば、装置1が放電動作に必要とする電力(主に双方向DC/DCコンバータ2の駆動電力)と同じまたはそれより小さい電力に設定できる。放電電力Poutが閾値電力Pth以上の場合(ステップS16においてNO)、ステップS14に戻る。放電電力Poutが閾値電力Pth未満になった場合(ステップS16においてYES)、ステップS17に移行する。
【0043】
ステップS17:充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に対して、DCグリッド9に電圧V1とは異なる電圧V2を印加するように指示する。すなわち、装置1が第1電圧V1で放電動作を行っており、かつ、装置1の放電電力が閾値電力Pth未満である場合に、第2電圧V2を線路9に印加する。本実施形態において、V2は第1電圧V1(350V)よりも高い380Vである。
【0044】
線路9に電圧V2が印加されることにより、グリッド電圧Vg=V2となるため(ステップS10においてYES)、放電動作を行っていない他の装置1は、放電が禁止される(ステップS13)。これにより、放電を行う装置1がさらに増加して、融通損失率が低下し、直流配電システム100全体の電力効率低下を防止できる。
【0045】
ステップS18:その後、ステップS14と同様に、I=0になった場合、または、SOCがC3未満になった場合(ステップS18においてNO)、ステップS15に移行し、充放電制御部85は放電を終了させる。
【0046】
ステップS19:電圧V2で放電中に、何らかの原因(例えば、充電動作を行う装置1の増加)により放電電力Poutが閾値電力Pth以上になった場合(ステップS19においてYES)、ステップS20に移行する。放電電力Poutが閾値電力Pth未満のままである場合(ステップS19においてNO)、ステップS18に戻る。
【0047】
ステップS20:充放電制御部85は、双方向DC/DCコンバータ2に対して、DCグリッド9に第1電圧V1を印加するように指示する。放電電力Poutが大きくなれば融通損失率が低下するため、他の装置1に対する放電の禁止を解除して、放電する装置1の台数増加を許容する。これにより、既に放電している装置1のSOCが急激に減少することを防止できる。
【0048】
(システム全体の動作例)
以下、図1に示す直流配電システム100の装置1-1~1-6間における電力融通の流れについて説明する。便宜上、直流配電システム100では、装置1-1~1-6以外の装置1は存在せず(n=6)、各装置1-1~1-6の融通動作電力(双方向DC/DCコンバータ2の駆動電力)は互いに等しいものとする。以下の説明では、装置1-1、1-2、1-3、1-4の放電電力はそれぞれPout1、Pout2、Pout3、Pout4である。また、装置1-5、1-6の充電電力はそれぞれPin5、Pin6であり、Pin5=Pin6である。また、閾値電力Pth=0.4×Pin5(Pin6)に設定されている。
【0049】
図4は、装置1-1~1-4の放電電力、装置1-5の充電電力およびグリッド電圧の変遷を示すグラフである。図5図7は、装置1-1~1-6間における電力融通の変遷を示す概略図である。なお、図4では、装置1-6の充電電力は省略している。
【0050】
図5(a)に示すように、制御開始時点t0において、装置1-1、1-2、1-3、1-4、1-5、1-6における蓄電装置5のSOCはそれぞれ、90%、85%、80%、75%、40%、51%であり、グリッド電圧は350V(第1電圧V1)である。
【0051】
装置1-5では、SOCがC1(50%)未満であるため(図3のステップS1においてNO)、装置1-5の制御装置8(充放電制御部85)は、充電開始を指示する(ステップS2)。このとき、放電している装置1が存在しないため(ステップS3においてNO)、時点t1において、装置1-5の充放電制御部85は、DCグリッド9に電圧V3を印加するように制御する(ステップS4)。
【0052】
装置1-1~1-4では、SOCがC3(70%)以上であり(ステップS7においてYES)、グリッド電圧Vgが電圧V3になったため(ステップS8においてYES)、各装置1-1~1-4の充放電制御部85は、カウントを開始する(ステップS9)。
【0053】
SOCが90%である装置1-1では、時点t1から100-90=10秒後の時点t2において、充放電制御部85が放電開始を指示する(ステップS12)。これにより、図5(b)に示すように、Pout1=Pin5となる。このとき、Pout1≧Pthであるため(ステップS16においてNO)、DCグリッド9に電圧V2は印加されない。
【0054】
SOCが85%である装置1-2では、時点t1から100-85=15秒後の時点t3において、充放電制御部85が放電開始を指示する(ステップS12)。これにより、図5(c)に示すように、Pout1+Pout2=Pin5となる。このとき、Pout1=Pout2=0.5×Pin5≧Pthであるため(ステップS16においてNO)、DCグリッド9に電圧V2は印加されない。
【0055】
SOCが80%である装置1-3では、時点t1から100-80=20秒後の時点t4において、充放電制御部85が放電開始を指示する(ステップS12)。これにより、図6(a)に示すように、Pout1+Pout2+Pout3=Pin5となる。このとき、Pout1=Pout2=Pout3≒0.33×Pin5<Pthであるため(ステップS16においてYES)、時点t5において、各装置1-1~1-3の充放電制御部85は、DCグリッド9に電圧V2(380V)を印加するように制御する。
【0056】
これにより、グリッド電圧Vgが電圧V2になるため(ステップS10においてYES)、SOCが75%である装置1-4では、充放電制御部85が放電を禁止する(ステップS13)。すなわち、図6(b)に示すように、装置1-4、1-6は放電禁止状態となる。そのため、SOCが75%である装置1-4は、時点t1から100-75=25秒後の時点t6が到来しても、放電を行わない。これにより、放電する装置の台数が増加して、融通損失率が増大することを防止できる。
【0057】
その後、時点t7において、装置1-6のSOCが49%に低下し、装置1-6の充電が開始されると、図7(a)に示すように、Pout1+Pout2+Pout3=Pin5+Pin6となる。このとき、Pout1=Pout2=Pout3≒0.67×Pin5≧Pthであるため(ステップS19においてYES)、時点t8において、各装置1-1~1-3の充放電制御部85は、DCグリッド9に電圧V1(350V)を印加するように制御する。
【0058】
これにより、グリッド電圧VgがV2(380V)からV1に低下するため(ステップS8においてYES)、装置1-4では、放電禁止が解除され、充放電制御部85がカウントを開始し(ステップS9)、さらに時点t8から100-70=30秒後の時点t9において、放電開始を指示する(ステップS12)。このとき、図7(b)に示すように、Pout1+Pout2+Pout3+Pout4=Pin5+Pin6となり、Pout1=Pout2=Pout3=Pout4=0.5×Pin5≧Pth(ステップS16においてNO)、DCグリッド9に電圧V2は印加されない。
【0059】
図8は、制御期間中における各装置1-1~1-6の状態、グリッド電圧および融通損失率を示す表である。ここで、期間T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8はそれぞれ、図4における時間t2~t3、t3~t4、t4~t5、t5~t6、t6~t7、t7~t8、t8~t9の各期間である。
【0060】
期間T2では、1台の装置1-5に対して装置1-1のみが放電動作を行っているため、放電に必要な電力は、装置1-1の双方向DC/DCコンバータ2の消費電力のみであり、融通損失率は非常に小さい。しかし、この状態が続くと、装置1-1のSOCが急激に減少する恐れがある。
【0061】
期間T3では、1台の装置1-5に対して2台の装置1-1、1-2が放電動作を行っているため、融通損失率は比較的小さいが、この状態が続くと、装置1-1、1-2のSOCが急激に減少する恐れがある。
【0062】
期間T4~T6では、1台の装置1-5に対して3台の装置1-1、1-2、1-3が放電動作を行っているため、放電電力が閾値電力未満になり、融通損失率は中程度となる。このとき、放電動作を行う装置1がさらに増加しないように、各装置1-1~1-3がDCグリッド9に電圧V2を印加する。これにより、装置1-4の放電が禁止される。
【0063】
期間T7~T8では、2台の装置1-5、1-6に対して3台の装置1-1、1-2、1-3が放電動作を行っているため、放電電力が閾値電力以上になり、融通損失率は比較的小さくなる。そのため、各装置1-1~1-3がDCグリッド9に電圧V1を印加することにより、装置1-4の放電禁止が解除される。
【0064】
(総括)
このように、本実施形態に係る制御方法では、装置1の放電電力が閾値電力未満である場合に、放電動作を行っていない他の装置1の放電を禁止する。これにより、装置1の放電による損失を抑えて、システム全体の電力効率低下を防止できる。
【0065】
また、グリッド電圧Vgによって各装置1の放電禁止/禁止解除を一斉に決定することで、充電側と放電側のそれぞれの動作判定タイミングの不一致による動作不安定を低減できる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0067】
上記実施形態では、放電動作を行っていない他の装置1の放電を禁止するために、放電動作を行っている装置1がDCグリッド9に電圧V2を印加しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、装置1が通信機能を有している場合、放電動作を行っている装置1が放電動作を行っていない他の装置1に対して、放電を禁止する信号を送信してもよい。また、直流配電システム100を統括するサーバ等が、放電を禁止/禁止解除する信号を各装置1に送信してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、電圧V2が電圧V1よりも高い電圧であるが、本発明はこれに限定されず、電圧V2が電圧V1よりも低い電圧であってもよい。この場合、電圧V3を電圧V1よりも高く設定してもよい。また、電圧V2と電圧V3を同じ電圧に設定してもよい。この場合、充放電制御部85は、充電が必要になったときに電圧V3を瞬間的に印加し、一方、電圧V2をある一定時間検出し続けたときに放電を禁止するようにすればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、直流配電システム100は、充電が必要となる装置1が現れた場合に、SOCが大きい装置1の順に放電を開始するように構成されているが、本発明はこれに限定されず、SOCが所定値以上の装置1が同時に放電を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1-1~1-n 装置(電源装置)
2 双方向DC/DCコンバータ
3 負荷
4 発電装置
5 蓄電装置
6 電圧センサ
7 電流センサ
8 制御装置
81 残量検出部
82 電圧検出部
83 電流検出部
84 電力検出部
85 充放電制御部
9 DCグリッド(線路)
100 直流配電システム
in 充電電力
out 放電電力
th 閾値電力
V1 電圧(第1電圧)
V2 電圧(第2電圧)
V3 電圧
Vg グリッド電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8