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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084392
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】トランスアクスル止水構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/029 20120101AFI20240618BHJP
   F16H 57/032 20120101ALI20240618BHJP
【FI】
F16H57/029
F16H57/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198642
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 寛輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大輔
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB13
3J063AC01
3J063AC11
3J063BB01
3J063BB02
3J063CA05
3J063CD45
3J063CD67
3J063XC02
3J063XC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケースの合わせ面にできた隙間から内部に水や砂などの異物が侵入することを抑制可能なトランスアクスル止水構造を提供する。
【解決手段】トランスアクスル止水構造1は、動力機構3に接続される動力伝達部材を収容するトランスアクスル側収容ケース10と、動力機構3を収容すると共にトランスアクスル側収容ケース10に接続される動力機構側収容ケースと、トランスアクスル側収容ケース10に取り付けられる止水部材30とを備え、トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケースの合わせ面の一部には、トランスアクスル側収容ケース10の内部に通ずる隙間40が形成されており、止水部材30は、隙間40を覆うように配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるトランスアクスル止水構造であって、
動力機構に接続される動力伝達部材を収容するトランスアクスル側収容ケースと、
前記動力機構を収容すると共に、前記トランスアクスル側収容ケースに接続される動力機構側収容ケースと、
前記トランスアクスル側収容ケースに取り付けられる止水部材と、
を備えており、
前記トランスアクスル側収容ケース及び前記動力機構側収容ケースの合わせ面の一部には、前記トランスアクスル側収容ケースの内部に通ずる隙間が形成されており、
前記止水部材は、前記隙間を覆うように配置されていること、を特徴とするトランスアクスル止水構造。
【請求項2】
前記合わせ面において、前記隙間が形成されている部分は、前記隙間が形成されていない他の前記合わせ面と比較して、薄肉に形成されていること、を特徴とする請求項1に記載のトランスアクスル止水構造。
【請求項3】
前記トランスアクスル側収容ケース及び前記動力機構側収容ケースが、第一素材により形成されており、
前記止水部材が、前記第一素材よりも剛性の高い第二素材で形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のトランスアクスル止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるトランスアクスル止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の車両にトランスアクスルが搭載されている(例えば、特許文献1)。トランスアクスルには、エンジン等の動力機構が接続されている。具体的には、トランスアクスル及び動力機構の接続は、トランスアクスルを収容するトランスアクスル側収容ケース(トランスアクスルハウジング)と、エンジン等の動力機構を収容する動力機構側収容ケースとを、合わせ面を介して接続することにより行われる。上記トランスアクスル側収容ケースには、例えば、動力機構に接続されたダンパーやフライホイール等が収容されている。
【0003】
ここで、従来のトランスアクスルにおいては、トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケースの間の合わせ面を完全に密封した場合、ダンパーやフライホイール等の回転により、両収容ケースの内部が負圧となり、動力の伝達効率が悪化する懸念がある。そのため、両収容ケースの間の合わせ面は、接着剤(例えば、液状ガスケット)は使用せずに、ボルトのみで互いの収容ケースが締結されている。すなわち、両収容ケースの間の合わせ面には、通気可能な隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-104763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トランスアクスルは、汎用化のため、大きさの異なるエンジン等が搭載された車両に流用したいという要請がある。かかる場合は、トランスアクスルを、大きさの異なるエンジンに接続する必要がある。しかしながら、トランスアクスル側収容ケースに大きさの異なる駆動機構側収容ケース(エンジン)を接続する場合は、両収容ケースの間の合わせ面の隙間が大きくなる問題がある。このように、大きな隙間が生じた場合は、当該隙間から水や砂などの異物が両収容ケースの内部に侵入する懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケースの合わせ面にできた隙間から内部に水や砂などの異物が侵入することを抑制可能なトランスアクスル止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のトランスアクスル止水構造は、車両におけるトランスアクスル止水構造であって、動力機構に接続される動力伝達部材を収容するトランスアクスル側収容ケースと、前記動力機構を収容すると共に、前記トランスアクスル側収容ケースに接続される動力機構側収容ケースと、前記トランスアクスル側収容ケースに取り付けられる止水部材と、を備えており、前記トランスアクスル側収容ケース及び前記動力機構側収容ケースの合わせ面の一部には、前記トランスアクスル側収容ケースの内部に通ずる隙間が形成されており、前記止水部材は、前記隙間を覆うように配置されていること、を特徴とするものである。
【0008】
上述したトランスアクスル止水構造は、トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケース(以下、両者を併せて両収容ケースとも称する)の合わせ面の一部に形成された隙間を止水部材によって覆うことができる。そのため、上述したトランスアクスル止水構造は、隙間から砂塵や水分等の異物が侵入することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、前記隙間が形成されているので、両収容ケースの内圧が高まって、動力の伝達効率が低下することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、止水部材により隙間を覆うことができるので、トランスアクスルの汎用性が向上する。そのため、上述したトランスアクスル止水構造によれば、車両開発の迅速化や開発費の低減効果が期待できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、止水部材が、トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケースの少なくとも一方に当接するように構成されていてもよい。これにより、上述したトランスアクスル止水構造は、両収容ケース内への異物等の侵入を、より一層抑制できる。ここで、動力機構には、例えば、エンジンや駆動モータ等の各種の動力源が利用できる。
【0009】
(2)上述した本発明のトランスアクスル止水構造は、前記合わせ面において、前記隙間が形成されている部分は、前記隙間が形成されていない他の前記合わせ面と比較して、薄肉に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0010】
上述したトランスアクスル止水構造は、かかる構成とすることにより、隙間と近接してデファレンシャルギヤやドライブシャフトが配される場合であっても、デファレンシャルギヤやドライブシャフトと干渉することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、動力伝達部材に近接している部分が薄肉に形成されているので、動力伝達部材と、トランスアクスル側収容ケースとの間の空隙を広げることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造は、動力伝達部材の回転による風切り音を抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、合わせ面の薄肉に形成されている部分において形成される隙間が大きくなった場合でも、止水部材により、確実に隙間を覆うことができる。
【0011】
(3)本発明のトランスアクスル止水構造において、前記合わせ面は、前記動力伝達部材に近接している部分が、薄肉に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0012】
上述したトランスアクスル止水構造は、かかる構成とすることにより、隙間と近接してデファレンシャルギヤやドライブシャフトが配される場合であっても、デファレンシャルギヤやドライブシャフトと干渉することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、動力伝達部材に近接している部分が薄肉に形成されているので、動力伝達部材と、トランスアクスル側収容ケースとの間の空隙を広げることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造は、動力伝達部材の回転による風切り音を抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、合わせ面の薄肉に形成されている部分において形成される隙間が大きくなった場合でも、止水部材により、確実に隙間を覆うことができる。
【0013】
(4)上述した本発明のトランスアクスル止水構造は、前記トランスアクスル側収容ケース及び前記動力機構側収容ケースが、第一素材により形成されており、前記止水部材が、前記第一素材よりも剛性の高い第二素材で形成されていること、を特徴とするとよい。
【0014】
上述したトランスアクスル止水構造は、かかる構成とすることにより、両収容ケースの剛性を高めることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造は、両収容ケースのビビリ音等の異音や振動等を抑制できる。
【0015】
(5)上述した本発明のトランスアクスル止水構造は、前記第一素材が、アルミニウムを素材とするものであり、前記第二素材が、鉄を素材とするものであること、を特徴とするとよい。
【0016】
上述したトランスアクスル止水構造は、第一素材が、トランスアクスル側収容ケースや動力機構側収容ケースとして、広く用いられているアルミニウムを素材とするので、各種のトランスアクスルやエンジン等の動力機構に広く流用できる。そのため、上述したトランスアクスル止水構造によれば、車両開発の迅速化や開発費の低減効果が期待できる。また、上述したトランスアクスル止水構造は、第二素材が、鉄を素材とするので、コストが、高く付くことがない。また、上述したトランスアクスル止水構造は、両収容ケースの剛性を高めることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造は、両収容ケースのビビリ音等の異音や振動等を抑制できる。
【0017】
(6)上述した本発明のトランスアクスル止水構造は、前記止水部材が、少なくとも一部に回転抑止部を有しており、前記回転抑止部は、前記トランスアクスル側収容ケース及び前記動力機構側収容ケースの少なくとも一方に係止可能であること、を特徴とするとよい。
【0018】
上述したトランスアクスル止水構造は、かかる構成とすることにより、止水部材をトランスアクスル側収容ケースに取り付ける際に、止水部材が回転して位置ずれすることを抑制できる。これにより、止水部材の取り付け性が向上する。
【0019】
(7)上述した本発明のトランスアクスル止水構造は、前記動力伝達部材が、ダンパー及びフライホイールのいずれか一方又は双方であること、を特徴とするとよい。
【0020】
上述したトランスアクスル止水構造は、かかる構成とすることにより、ダンパーやフライホイールが、砂塵や水分等の異物に曝されることがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トランスアクスル側収容ケース及び動力機構側収容ケースの合わせ面にできた隙間から内部に水や砂などの異物が侵入することを抑制可能なトランスアクスル止水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るトランスアクスル止水構造の斜視図である。
図2図1において、動力機構側収容ケースを取り外した状態のトランスアクスル止水構造の斜視図である。
図3】(a)は、本発明のトランスアクスル止水構造を構成する止水部材の斜視図であり、(b)は、本発明のトランスアクスル止水構造を構成する止水部材の正面図である。
図4】(c)は、本発明のトランスアクスル止水構造を構成する止水部材の平面図であり、(d)は、本発明のトランスアクスル止水構造を構成する止水部材の左側面図である。
図5】本発明のトランスアクスル止水構造に用いられるトランスアクスル側収容ケースに動力伝達部材が収容された状態を表す斜視図である。
図6】本発明のトランスアクスル止水構造において、止水部材を取り外した状態を表す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るトランスアクスル止水構造1の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。また、本実施形態では、トランスアクスル止水構造1が、例えば、ハイブリッド車(車両)に搭載されるトランスアクスル2に採用される場合を例として説明する。また、本実施形態では、動力機構3として、エンジンが用いられる場合を例として説明する。
【0024】
図1に示すように、トランスアクスル止水構造1は、トランスアクスル側収容ケース10(トランスアクスルハウジング10とも称する)と、動力機構側収容ケース20(動力機構3と一体形成されているものを含む)と、止水部材30と、を備えている。なお、以下では、トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20の両者を併せて「両収容ケース10,20」と称することがある。
【0025】
図2及び図5に示すように、トランスアクスル側収容ケース10は、動力機構3(エンジン3とも称する、図1参照)に接続されるダンパー及びフライホイール(以下、動力伝達部材4とも称する)を収容するものとされている。動力伝達部材4は、中心に入力軸(図示せず)を挿入するための、挿入孔5が形成されている。
【0026】
トランスアクスル側収容ケース10は、例えば、アルミニウムを素材(第一素材とも称する)として鋳造により形成されている。トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20(図1参照)の間には合わせ面16が形成されている。また、トランスアクスル側収容ケース10には、ドライブシャフト(図示せず)を挿し通すための軸孔11が形成されている。
【0027】
合わせ面16は、トランスアクスル側収容ケース10における軸線方向(図示手前方向)に沿って立設された周壁15の突出端に形成されている。周壁15は、動力伝達部材4を取り囲むように略円形に形成されている。また、周壁15には、図5に示すように、軸孔11と近接する部分において、入力軸(図示せず)の内径方向に向けて凹む凹部17が形成されている。これにより、上述したトランスアクスル止水構造1は、トランスアクスル側収容ケース10とドライブシャフト等が干渉することを抑制している。凹部17の詳細は後述する。
【0028】
合わせ面16は、平面状に形成されており、後述する動力機構側収容ケース20(図1参照)における合わせ面(図示せず、以下、動力機構側合わせ面とも称する)と当接するものとされている。トランスアクスル側収容ケース10は、動力機構側合わせ面と合わせ面16とが当接した状態で複数のボルト50を締結することにより、動力機構側収容ケース20に接続される。
【0029】
図1に示すように、動力機構側収容ケース20は、動力機構3を収容するものとされている。本実施形態では、トランスアクスル側収容ケース10が、例えば、アルミニウムを素材(第一素材とも称する)として鋳造により形成されている。また、動力機構側収容ケース20には、トランスアクスル側収容ケース10と対向する動力機構側合わせ面(図示せず)が形成されている。
【0030】
動力機構側合わせ面は、動力機構側収容ケース20における軸線方向(図示奥側方向)に沿って立設された周壁25の突出端に平面状に形成されている。周壁25は、略円形に形成されている。また、周壁25には、トランスアクスル側収容ケース10における凹部17と対向する部分において、内径方向に向けて凹む凹部27が形成されている。これにより、上述したトランスアクスル止水構造1は、動力機構側収容ケース20とドライブシャフト等が干渉することを抑制できる。
【0031】
トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20は、合わせ面16及び動力機構側合わせ面を互いに当接させた状態で、ボルト50により締結することで接続される。ここで、合わせ面16には、トランスアクスル側収容ケースの内部に通ずる隙間40が形成されている。以下、図6を参照しながら隙間40について説明する。
【0032】
図6は、隙間40を視認可能なように、トランスアクスル止水構造1から後述の止水部材30を取り外した状態を表す説明斜視図である。また、図6は、トランスアクスル2を他の車両に流用した状態を表すものである。このように、トランスアクスル2を他の車両に流用する場合には、合わせ面16及び動力機構側合わせ面の形状が異なるため、合わせ面16及び動力機構側合わせ面の間にトランスアクスル側収容ケース10の内部に通ずる隙間40が形成される。隙間40は、例えば、動力伝達部材4が視認可能な大きさに形成されている。そのため、上述したトランスアクスル止水構造1は、メンテナンス時に、後述する止水部材30を取り外すことで、隙間40から動力伝達部材4を確認できる。
【0033】
ここで、上述した凹部17について説明する。トランスアクスル側収容ケース10における周壁15は、図5に示すように、凹部17の近傍において、凹部17以外の部分に比べて薄肉化されている。すなわち、合わせ面16において、隙間40(図6参照)が形成されている部分は、隙間40が形成されていない他の合わせ面16と比較して、薄肉に形成されている。言い換えると、合わせ面16は、動力伝達部材4に近接している部分が、薄肉に形成されている。
【0034】
したがって、上述したトランスアクスル止水構造1は、隙間40と近接してデファレンシャルギヤやドライブシャフトが配される場合であっても、デファレンシャルギヤやドライブシャフトと干渉することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造1は、動力伝達部材4に近接している部分が薄肉に形成されているので、動力伝達部材4と、トランスアクスル側収容ケース10との間の空隙を広げることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造1は、動力伝達部材4の回転による風切り音を抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造1は、合わせ面16の薄肉に形成されている部分において形成される隙間40が大きくなった場合でも、後述する止水部材30により、確実に隙間40を覆うことができる。
【0035】
図3及び図4に示すように、止水部材30は、本実施形態では、第一素材よりも剛性の高い、例えば、鉄を素材(第二素材とも称する)として、板状に形成されている。止水部材30は、隙間40(図1参照)の形状に合わせて、板状部材を曲げることによって形成されている。本実施形態における止水部材30は、隙間40を覆う止水部31と、止水部31の両端に設けられた締結部32,33と、を備えている。
【0036】
止水部31は、図3(a)及び図3(b)に示すように、外形が隙間40を覆うよう隙間40に沿う形状に形成されている。
【0037】
締結部32,33は、止水部31の両端側を折り曲げることによって形成されている。締結部32,33には、ボルト51を挿し通すためのボルト穴32A,33Aが開口形成されている。止水部材30は、ボルト穴32A,33Aにボルト51,51(図1参照)を挿し通して、トランスアクスル側収容ケース10のネジ穴(図示せず)に捩じ込むことにより固定される。これにより、止水部材30がトランスアクスル側収容ケース10に取り付けられる。また、締結部32,33の少なくとも一方側(本実施形態では、締結部32)には、回転抑止部32Bが形成されている。
【0038】
回転抑止部32Bは、トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20の少なくとも一方(本実施形態では、トランスアクスル側収容ケース10)に係止可能に構成されている。回転抑止部32Bは、本実施形態では、締結部32の先端側に突出する2つの突起として形成されている。図1に示すように、回転抑止部32Bは、ボルト51で締結する際に、トランスアクスル側収容ケース10の壁面の凸部13に係止されることにより、回り止めとして機能する。したがって、上述したトランスアクスル止水構造1は、止水部材30をトランスアクスル側収容ケース10に取り付ける際に、止水部材30が回転して位置ずれすることを抑制できる。これにより、止水部材30の取り付け性が向上する。
【0039】
また、本実施形態では、止水部材30が、トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20を構成する第一素材(アルミニウム)よりも剛性の高い第二素材(鉄)で形成されているので、両収容ケース10,20の剛性を高めることができる。これにより、上述したトランスアクスル止水構造1は、両収容ケース10,20のビビリ音等の異音や振動等を抑制できる。
【0040】
以上が、本発明の一実施形態に係るトランスアクスル止水構造1の構成であり、次にトランスアクスル止水構造1の作用効果について説明する。
【0041】
上述したトランスアクスル止水構造1は、両収容ケース10,20の合わせ面16の一部に形成された隙間40を止水部材30によって覆うことができる。そのため、上述したトランスアクスル止水構造1は、隙間40から砂塵や水分等の異物が侵入することを抑制できる。
【0042】
また、上述したトランスアクスル止水構造1は、隙間40が形成されているので、両収容ケース10,20の内圧が高まって、動力の伝達効率が低下することを抑制できる。また、上述したトランスアクスル止水構造1は、止水部材30により隙間40を覆うことができるので、トランスアクスル2の汎用性が向上する。そのため、上述したトランスアクスル止水構造1によれば、車両開発の迅速化や開発費の低減効果が期待できる。
【0043】
また、上述したトランスアクスル止水構造1は、止水部材30が、両収容ケース10,20の少なくとも一方に当接するように構成されていてもよい。これにより、上述したトランスアクスル止水構造1は、両収容ケース10,20内への異物等の侵入を、より一層抑制できる。このように、上述したトランスアクスル止水構造1によれば、動力伝達部材4としてのダンパーやフライホイールが、砂塵や水分等の異物に曝されることがないので、トランスアクスル2や動力機構3の耐久性向上(品質向上)が期待できる。
【0044】
また、上述したトランスアクスル止水構造1は、両収容ケース10,20を形成する第一素材が、アルミニウムを素材とするものであり、止水部材30を形成する第二素材が、鉄を素材とするものとして構成されている。
【0045】
したがって、上述したトランスアクスル止水構造1は、第一素材が、トランスアクスル側収容ケース10や動力機構側収容ケース20として、広く用いられているアルミニウムを素材とするので、各種のトランスアクスル2やエンジン等の動力機構に広く流用できる。そのため、上述したトランスアクスル止水構造1によれば、車両開発の迅速化や開発費の低減効果が期待できる。また、上述したトランスアクスル止水構造1は、第二素材が、鉄を素材とするので、コストが、高く付くことがない。
【0046】
以上が、本発明の一実施形態及に係るトランスアクスル止水構造1の構成及び作用効果であるが、本発明のトランスアクスル止水構造1は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0047】
本実施形態では、動力機構3が、ハイブリッド車におけるエンジン3である場合を例示したが、動力機構3は、これには限定されず、各種の駆動源を利用できる。例えば、動力機構3が電気自動車における駆動モータであってもよい。また、本発明のトランスアクスル止水構造1は、車両だけではなく、駆動源及びトランスアクスル2を有する各種の装置等にも利用できる。また、トランスアクスル側収容ケース10に収容される動力伝達部材4は、ダンパーやフライホイールに限定されるものではなく、トランスミッション関連部材などを含む各種の動力伝達部材4の収容が可能である。トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20の形状や大きさも、適宜、各種のものに変更できる。止水部材30の形状や大きさも、形成される隙間40の形状や大きさに応じて、各種の形状や大きさのものに変更できる。また、合わせ面16の隙間40は、動力伝達部材4の配置等に応じて、各種の形状や大きさに形成できる。
【0048】
また、本実施形態では、合わせ面16において、隙間40が形成されている部分は、隙間40が形成されていない他の合わせ面16と比較して、薄肉に形成されているが、これには限定されず、合わせ面16は、必要に応じて各種の厚みに形成できる。例えば、合わせ面16全体が均一の厚みに形成されていてもよい。また、合わせ面16と対向する動力機構側合わせ面も合わせ面16と同様に各種の厚みに形成できる。また、本実施形態では、合わせ面16における動力伝達部材4に近接している部分が、薄肉に形成されているが、上述したように合わせ面16及び動力機構側合わせ面は、各種の厚みに形成できる。
【0049】
また、本実施形態では、トランスアクスル側収容ケース10及び動力機構側収容ケース20を形成する第一素材がアルミニウムを素材とするものであり、止水部材30を形成する第二素材が鉄を素材とするものであるが、これには限定されず、第一素材及び第二素材には、各種の素材のものが利用できる。また、本実施形態では、止水部材30が、第一素材よりも剛性の高い第二素材で形成されているが、これには限定されず、第二素材が第一素材よりも剛性が低い樹脂等で形成されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、止水部材30が、少なくとも一部に回転抑止部32Bを有しているが、回転抑止部32Bは、必要に応じて設ければよく、回転抑止部32Bを有しない構成とすることもできる。また、回転抑止部32Bは、各種の形状や大きさに形成でき、設ける数量も単数のものだけではなく複数のものであってもよい。また、回転抑止部32Bを設ける位置は、止水部材30の回転を抑制可能な各種の位置に設けることができ、トランスアクスル側収容ケース10や動力機構側収容ケース20に係止させる位置も各種の位置に変更できる。
【0051】
以上が、本発明に係るトランスアクスル止水構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のトランスアクスル止水構造は、各種の車両(例えば、ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車)等におけるトランスアクスルに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :トランスアクスル止水構造
2 :トランスアクスル
3 :動力機構(エンジン)
4 :動力伝達部材
10 :トランスアクスル側収容ケース(トランスアクスルハウジング、収容ケース)
16 :合わせ面
20 :動力機構側収容ケース(収容ケース)
30 :止水部材
32B:回転抑止部
40 :隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6