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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084398
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240618BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198650
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 拓展
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勲
(72)【発明者】
【氏名】有澤 秀則
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒幾
(72)【発明者】
【氏名】篠田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓典
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA21
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA15
3J063BB11
3J063BB50
3J063CA01
3J063CB06
3J063XD03
3J063XD11
3J063XD22
3J063XD32
3J063XD62
3J063XE17
3J063XE22
3J063XF04
3J063XH13
3J063XH42
(57)【要約】
【課題】遊星歯車装置のエネルギー損失を良好に低減する。
【解決手段】遊星歯車装置は、サンギヤと、複数のプラネタリギヤと、複数のプラネタリ軸と、リングギヤと、前記複数のプラネタリ軸の一端部を支持するプレートを含むキャリアと、を備える。前記キャリアの前記プレートは、油流入口と、軸線に直交する径方向において前記油流入口よりも外方にある油流出口と、を含む少なくとも1つの油排出路を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りの周方向に並んだ外歯を含むサンギヤと、
前記サンギヤの前記外歯に噛み合う外歯と、前記軸線が延びる軸線方向に開口した貫通孔と、含む複数のプラネタリギヤと、
前記複数のプラネタリギヤの前記貫通孔にそれぞれ挿通され、前記複数のプラネタリギヤを回転自在にそれぞれ支持する複数のプラネタリ軸と、
前記プラネタリギヤの前記外歯に噛み合う内歯を含むリングギヤと、
前記複数のプラネタリ軸の一端部を支持するプレートを含むキャリアと、を備え、
前記プレートは、油流入口と、前記軸線に直交する径方向において前記油流入口よりも外方にある油流出口と、を含む少なくとも1つの油排出路を有する、遊星歯車装置。
【請求項2】
前記油流出口は、前記遊星歯車装置の外部に向いている、請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記油流出口は、前記軸線方向において前記リングギヤの外方にある、請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記油流出口は、前記複数のプラネタリギヤの前記貫通孔よりも前記径方向の外方にある、請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記プレートは、前記軸線方向に向いた側面を有し、
前記油流入口は、前記側面において開口している、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遊星歯車装置。
【請求項6】
前記プレートの前記側面は、前記複数のプラネタリギヤに対向する内側面である、請求項5に記載の遊星歯車装置。
【請求項7】
前記プレートの前記側面は、前記軸線方向に向いた開口を有する凹空間を画定する凹面と、を含み、
前記油排出路は、前記凹空間と、前記凹空間から前記径方向の外方に延びて前記油流出口を有する少なくとも1つの油通路と、を含み、
前記油流入口は、前記凹空間の前記開口であり、
前記油通路は、前記凹面に開口する導入口を有する、請求項5に記載の遊星歯車装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの油通路は、複数の油通路を含み、
前記複数の油通路の前記導入口は、1つの前記凹面に開口している、請求項7に記載の遊星歯車装置。
【請求項9】
前記凹面は、前記凹空間を前記径方向の内方から画定するスロープ面を有し、
前記スロープ面は、前記油流入口に向けて前記径方向の内方に延びるように前記軸線方向に対して斜めに延びている、請求項7に記載の遊星歯車装置。
【請求項10】
前記プレートは、前記複数のプラネタリ軸の前記一端部がそれぞれ配置され、前記周方向に並んだ複数の支持孔を有し、
前記凹面は、前記複数の支持孔のうち前記周方向に互いに隣接した2つの支持孔の間にある、請求項7に記載の遊星歯車装置。
【請求項11】
前記プレートは、第1プレートであり、
前記キャリアは、前記複数のプラネタリ軸の他端部を支持する第2プレートと、前記第1プレートの外周部を前記第2プレートの外周部に接続するブリッジと、を含み、
前記凹面は、前記ブリッジの前記径方向の内方にある、請求項10に記載の遊星歯車装置。
【請求項12】
前記プレートは、前記複数のプラネタリ軸の前記一端部がそれぞれ配置され、前記周方向に並んだ複数の支持孔を有し、
前記油流入口は、前記複数の支持孔の1つの前記径方向の外方にある、請求項6に記載の遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構を収容するハウジングと、を備えたギヤボックスが開示されている。前記遊星歯車機構は、サンギヤ、複数のプラネタリギヤ、リングギヤ、及び、キャリアを含む。前記ギヤボックスは、前記遊星歯車機構に潤滑油を供給する供給ポートと、前記遊星歯車機構を潤滑した潤滑油を前記ハウジングの外部に排出する排出ポートと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-151060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記遊星歯車機構を潤滑した潤滑油は、前記排出ポートに到達せずに前記遊星歯車機構に干渉する場所に滞留し得る。滞留した潤滑油は、前記遊星歯車機構の動作抵抗となり、エネルギー損失が発生する。
【0005】
そこで本開示の一態様は、遊星歯車装置のエネルギー損失を良好に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遊星歯車装置は、軸線周りの周方向に並んだ外歯を含むサンギヤと、前記サンギヤの前記外歯に噛み合う外歯と、前記軸線が延びる軸線方向に開口した貫通孔と、含む複数のプラネタリギヤと、前記複数のプラネタリギヤの前記貫通孔にそれぞれ挿通され、前記複数のプラネタリギヤを回転自在にそれぞれ支持する複数のプラネタリ軸と、前記プラネタリギヤの前記外歯に噛み合う内歯を含むリングギヤと、前記複数のプラネタリ軸の一端部を支持するプレートを含むキャリアと、を備える。前記プレートは、油流入口と、前記軸線に直交する径方向において前記油流入口よりも外方にある油流出口と、を含む少なくとも1つの油排出路を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、遊星歯車装置に干渉する場所に滞留した潤滑油に遠心力が付与されたとき、その潤滑油がキャリアのプレートの油流入口に流入し、油排出路を径方向外方に流れて油流出口から排出される。よって、遊星歯車装置を潤滑した潤滑油が滞留することが抑制され、遊星歯車装置のエネルギー損失を良好に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る遊星歯車装置の回転軸線方向から見た断面図である
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、図2のキャリアの断面斜視図である。
図4図4は、図2に示された油排出路の拡大断面図である。
図5図5は、図4の油排出路の変形例の拡大断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る遊星歯車装置の断面図である。
図7図7は、第3実施形態に係る遊星歯車装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る遊星歯車装置1の軸線方向Xから見た断面図である。なお、遊星歯車装置1の軸線Xが延びる方向を軸線方向Xと称することとする。図1に示すように、遊星歯車装置1は、例えば、航空機エンジンの減速機として用いられるが、これに限られない。図1に示すように、遊星歯車装置1は、サンギヤ2、複数のプラネタリギヤ3、リングギヤ4、複数のプラネタリ軸5、複数の軸受6、キャリア7、複数の締結具8、及び、複数のバッフル9を備える。
【0011】
サンギヤ2は、軸線X周りの周方向に並んだ外歯2aを有する。各プラネタリギヤ3は、サンギヤ2の外周に沿って互いに間隔をあけて配置されている。プラネタリギヤ3は、外歯3aを有する。プラネタリギヤ3は、軸線方向Xの両側に開口した貫通孔3bを有する。プラネタリギヤ3の外歯3aは、サンギヤ2の外歯2aに噛み合う。リングギヤ4は、内歯4aを有する。リングギヤ4の内歯4aは、各プラネタリギヤ3の外歯3aに噛み合う。各プラネタリ軸5は、それぞれプラネタリギヤ3の貫通孔3bに挿通されている。軸受6は、対応するプラネタリ軸5と対応するプラネタリギヤ3との間に介在している。即ち、プラネタリギヤ3は、軸受6を介してプラネタリ軸5に回転自在に支持されている。
【0012】
キャリア7は、締結具8によって各プラネタリ軸5の端部に固定されている。キャリア7が軸線X周りに回転することで、各プラネタリギヤ3が自己の軸線周りに自転しながら軸線X周りに公転する。キャリア7の詳細な構造は、後述する。キャリア7の後述するブリッジ23は、リングギヤ4の径方向内方に配置され、かつ、軸線X周りの周方向Cに隣り合うプラネタリギヤ3の間に配置されている。ブリッジ23は、サンギヤ2、各プラネタリギヤ3及びリングギヤ4から離間している。バッフル9は、キャリア7のブリッジ23の径方向内方に配置され、かつ、周方向Cに隣り合うプラネタリギヤ3の間に配置されている。バッフル9は、サンギヤ2、プラネタリギヤ3及びキャリア7から離間している。
【0013】
図2は、図1のII-II線断面図である。図2に示すように、サンギヤ2は、入力軸11と一体回転するように入力軸11に接続されている。キャリア7は、出力軸12と一体回転するように出力軸12に接続されている。リングギヤ4は、静止体13に固定されている。即ち、本実施形態の遊星歯車装置1は、プラネタリ型である。例えば、入力軸11は航空エンジンのタービンに接続された駆動軸とし、出力軸12は航空エンジンのファンに接続される軸とし、静止体13は航空エンジンのケーシングに接続されたブラケットとし得る。入力軸11及び出力軸12は、中空軸とし得る。入力軸11は、サンギヤ2の内周面にスプライン結合している。出力軸12は、キャリア7の外周部に固定されている。なお、軸線方向Xにおいて、遊星歯車装置1から見て出力軸12のある側を第1側と称し、遊星歯車装置1から見て入力軸11のある側を第2側と称することとする。
【0014】
キャリア7は、第1プレート21、第2プレート22及び複数のブリッジ23を備える。第1プレート21は、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群に対して軸線方向Xの第1側に配置されている。第2プレート22は、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群に対して軸線方向Xの第2側に配置されている。第1プレート21及び第2プレート22は、その主面が軸線方向Xに向くように配置されている。第1プレート21の内側面33は、軸線方向Xの第2側に向いている。第1プレート21の外側面34は、軸線方向Xの第1側に向いている。第2プレート22の内側面43は、軸線方向Xの第1側に向いている。第2プレート22の外側面44は、軸線方向Xの第2側に向いている。即ち、第1プレート21及び第2プレート22の内側面33,43は、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群に対向している。
【0015】
軸線方向Xにおいて、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群と第1プレート21の内側面33との間には隙間がある。軸線方向Xにおいて、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群と第2プレート22の内側面43との間にも隙間がある。第1プレート21は、その中央部分において中心孔31を有する。第1プレート21は、周方向Cにおいて互いに間隔をあけて配置された複数の支持孔32を有する。
【0016】
キャリア7は、リングギヤ4よりも軸線方向Xのサイズが大きい。具体的には、第1プレート21及び第2プレート22は、軸線方向Xにおいてリングギヤ4の外側に位置している。即ち、第1プレート21及び第2プレート22は、軸線方向Xに直交する径方向Rから見てリングギヤ4と重ならない。複数のブリッジ23は、第1プレート21の外周部を第2プレート22の外周部に連結している。複数のブリッジ23は、周方向Cに互いに間隔をあけて配置されている。ブリッジ23は、中空であるが中実であってもよい。ブリッジ23は、リングギヤ4の径方向Rの内側に配置されている。即ち、ブリッジ23は、径方向Rから見てリングギヤ4と重なる。
【0017】
バッフル9は、キャリア7に接続されている。バッフル9は、潤滑油がギヤ噛み合い箇所に向かうように潤滑油を案内する。バッフル9は、キャリア7と別体でもよいしキャリア7と一体であってもよい。
【0018】
プラネタリギヤ3の貫通孔3bには、軸受6を介してプラネタリ軸5が挿入されている。軸受6は、転がり軸受でも滑り軸受でもよい。プラネタリ軸5は、中空軸である。プラネタリ軸5は、キャリア7に支持されている。プラネタリ軸5の第1端部は、第1プレート21の支持孔32に嵌合している。プラネタリ軸5の第2端部は、第2プレート22の支持孔42に嵌合している。プラネタリ軸5の中空空間には、締結具8が挿通されている。締結具8は、プラネタリ軸5の第1端部を第1プレート21に固定するとともに、プラネタリ軸5の第2端部を第2プレート22に固定している。
【0019】
プラネタリ軸5の内周面と締結具8の外周面との間には、貯油室15が画定されている。プラネタリ軸5には、貯油室15から軸受6に潤滑油を導く給油孔5aが設けられている。キャリア7の第2プレート22及びプラネタリ軸5は、貯油室15と連通する潤滑油通路16を有する。潤滑油通路16は、オイルポンプと連通している。即ち、オイルポンプから潤滑油通路16に供給された潤滑油は、貯油室15及び給油孔5aを順に流れて軸受6に到達する。
【0020】
キャリア7の第1プレート21は、油排出路35を有する。油排出路35は、油流入口35a及び油流出口35bを含む。油流入口35aは、第1プレート21の内側面33において開口している。油流入口35aは、キャリア7のブリッジ23よりも径方向Rの内方に位置している。
【0021】
油流出口35bは、径方向Rにおいて油流入口35aよりも外方にある。具体的には、油流出口35bは、プラネタリ軸5よりも径方向Rの外方にある。好ましくは、油流出口35bは、プラネタリギヤ3の貫通孔3bよりも径方向Rの外方にある。本実施形態では、油流出口35bは、キャリア7の外周部において開口している。
【0022】
油流出口35bは、遊星歯車装置1の外部に向いている。本実施形態では、油流出口35bは、サンギヤ2、プラネタリギヤ3、リングギヤ4、プラネタリ軸5及びキャリア7の組立体の外部に向いている。具体的には、油流出口35bは、軸線方向Xにおいてリングギヤ4の外方にあり、径方向Rの外方に向いている。
【0023】
第1プレート21の内側面33は、凹空間35cを画定する凹面36を有する。凹面36は、ブリッジ23の径方向Rの内方にある。凹空間35cは、サンギヤ2及びプラネタリギヤ3からなる群と第1プレート21との間の隙間に向くように軸線方向Xの第2側に向いている。凹空間35cは、油排出路35の一部となっている。凹空間35cの軸線方向Xに向いた開口は、油流入口35aである。
【0024】
第2プレート22は、第1プレート21と同様に、油流入口45a及び油流出口45bを含む油排出路45を有する。第2プレート22の油排出路45も、第1プレート21の油排出路35と同様の構成であるため、以下、第1プレート21の油排出路35について代表的に詳細に説明する。
【0025】
図3は、図2のキャリア7の断面斜視図である。図3に示すように、第1プレート21は、複数の油排出路35を備える。油排出路35は、第1プレート21の内側面33において開口した1つの凹空間35cと、1つの凹空間35cに連通する2つの油通路35dと、を有する。なお、1つの凹空間35cに連通する油通路35dの数は、2個に限られず、1個又は3個以上でもよい。
【0026】
凹空間35cは、ブリッジ23の径方向Rの内方に配置され、かつ、周方向Cに互いに隣り合う2つの支持孔32の間に配置されている。本実施形態では、凹空間35cの周方向Cの長さは、凹空間35cの径方向Rの長さよりも長い。例えば、凹空間35cの周方向Cの長さは、隣り合う2つの支持孔32の周方向Cの距離の50%以上90%以下とし得る。例えば、凹空間35cの径方向Rの長さは、中心孔31の外縁からブリッジ23までの径方向Rの距離の50%以上90%以下とし得る。
【0027】
凹空間35cの開口は、油排出路35の油流入口35aである。油通路35dは、凹空間35cから径方向Rの外方に延びている。油通路35dは、軸線方向Xから見て支持孔32とブリッジ23との間に配置されている。油通路35dは、その径方向Rの内端において、凹空間35cに開口する導入口35eを有する。油通路35dは、その径方向Rの外端において油流出口35bを有する。油流出口35bは、例えば、第1プレート21の外周面において開口している。なお、油流出口35bは、第1プレート21の外周部における前記外周面の近傍の異なる部位に配置されてもよい。
【0028】
図4は、図2に示された油排出路35の拡大断面図である。図4に示すように、第1プレート21の内側面33の凹面36は、凹空間35cを径方向Rの内方から画定するスロープ面36aを有する。スロープ面36aは、油流入口35aに向けて径方向Rの内方に延びるように軸線方向Xに対して斜めに延びている。即ち、スロープ面36aは、凹空間35cの軸線方向Xの深さが径方向Rの内方にいくにつれて浅くなるように延びている。
スロープ面36aは、湾曲した凹状の面としているが平面であってもよい。
【0029】
凹面36は、凹空間35cを径方向Rの外方から画定する受け面36bを有する。受け面36bは、径方向Rの内方に向いている。例えば、受け面36bは、軸線方向Xに平行である。油通路35dの導入口35eは、受け面36bにおいて凹空間35cに向けて開口している。即ち、油通路35dの導入口35eは、径方向Rの内方に向けて開口している。なお、油通路35dの導入口35eは、凹空間35cに向けて軸線方向Xに開口していてもよい。また、凹面36は、スロープ面36aを有さない凹面であってもよい。
【0030】
第1プレート21の内側面33付近に滞留する潤滑油は、油流入口35aに到達するとスロープ面36aに案内されて凹面36に捕捉される。その凹面36に捕捉された潤滑油には、キャリア7の回転によって遠心力が付与される。凹空間35cにおいて遠心力が付与された潤滑油は、導入口35eから油通路35dに進入し、油通路35dを径方向Rの外方に流れ、油流出口35bから排出される。これにより、第1プレート21の内側面33付近に滞留する潤滑油は遊星歯車装置1の外部に排出される。それゆえ、遊星歯車装置1を潤滑した潤滑油が遊星歯車装置1の内部で滞留することが抑制され、遊星歯車装置1のエネルギー損失が良好に低減される。
【0031】
図5は、図4の油排出路35の変形例の拡大断面図である。図5に示すように、第1変形例の油排出路135は、1つの油流出口135bに対応して1つの油流入口135aを備える。油排出路135は、径方向Rに対して傾斜して斜めに延びた第1油通路135cと、第1油通路135cに連続し且つ径方向Rに延びた第2油通路135dとを含む。第1油通路135cの径方向Rの内端は、油流入口135aであり、プレート121の内側面33において開口している。第2油通路135dの径方向Rの外端は、油流出口135bであり、プレート121の外周面において開口している。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0032】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る遊星歯車装置201の断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図6に示すように、第2実施形態では、キャリア207の第1プレート221において、油通路235の油流入口235aの向きが第1実施形態とは異なる。第1プレート221の油通路235の油流入口235aは、第1プレート221の外側面234において開口している。即ち、油流入口235aは、中空の出力軸12の内部空間に向けて開口している。これにより、出力軸12の中空空間に滞留した潤滑油は、油流入口235aから油通路235に流入し、遠心力によって油流出口235bから遊星歯車装置1の外部に排出される。
【0033】
第1プレート221及び第2プレート222の外周部にも、追加的に油通路237,247が設けられている。油排出路237と油排出路247とは、互いに対称であるため、油排出路237について代表的に説明する。油排出路237は、第1プレート221の内側面233において開口する油流入口237aを有する。油流入口237aは、軸受6に対向している。油流入口237aは、支持孔32の径方向Rの外方に配置されている。油排出路237の基本形状は、油排出路35の形状に実質的に同じである。
【0034】
軸受6を潤滑した潤滑油は、油流入口237aから油排出路237に流入して油流出口237bから遊星歯車装置1の外部に排出される。油排出路237は、第1実施形態の油排出路35を有する第1プレート21に設けられてもよい。第1プレート221の油排出路237及び第2プレート222の油排出路247のいずれか一方は省略されてもよい。プレート221,222は、油排出路235,45を有さずに油排出路237,247を有してもよい。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る遊星歯車装置301の断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図3に示すように、第3実施形態の遊星歯車装置301では、リングギヤ304が油排出路360を有するとともに、キャリア307がブリッジ323において油排出路350を有する。
【0036】
リングギヤ304は、径方向Rの両側に開口した油排出路360を有する。リングギヤ304の油排出路360は、その径方向Rに内端において開口した油流入口360aを有する。油流入口360aは、径方向Rにおいてキャリア307のブリッジ323に対向し得る。リングギヤ304の油排出路360は、その径方向Rの外端において開口した油流出口360bを有する。油流出口360bは、遊星歯車装置301の外部に向けて開口している。
【0037】
キャリア307のブリッジ323は、径方向Rに延びた油排出路350を有する。ブリッジ323は、中実であるが、油排出路350以外の場所に肉抜き穴があってもよい。ブリッジ323の油排出路350は、その径方向Rに内端において開口した油流入口350aを有する。油流入口350aは、径方向Rにおいてバッフル9に対向し得る。バッフル9が無い遊星歯車装置の場合は、油流入口350aは、径方向Rにおいてサンギヤ2に対向する。ブリッジ323の油排出路350は、その径方向Rの外端において開口した油流出口350bを有する。油流出口350bは、リングギヤ4の内周に向けて開口している。
【0038】
ブリッジ323の内周面は、凹空間350cを画定する凹面351を有する。油排出路350は、凹空間350cと、凹空間350cに連通して径方向Rに延びた油通路350dと、を有する。凹空間350cの径方向Rの内方に向いた開口は、油流入口350aである。油通路350dの径方向Rの外方に向いた開口は、油流出口350bである。なお、1つの凹空間350cに連通する油通路350dの数は、1又は複数とし得る。
【0039】
キャリア307のブリッジ323の内周面付近に滞留する潤滑油は、油流入口350aに到達して凹面351に捕捉される。その凹面351に捕捉された潤滑油には、キャリア7の回転によって遠心力が付与される。凹空間350cにおいて遠心力が付与された潤滑油は、油通路350dに進入し、油通路350dを径方向Rの外方に流れ、油流出口350bからリングギヤ304に向けて排出される。油流出口350bから排出された潤滑油は、リングギヤ304の油排出路360を通じて遊星歯車装置301の外部に排出される。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0040】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、前述した実施形態では、遊星歯車装置が航空機エンジンの減速機構に用いられる例を示したが、他の用途の動力伝達機構の一部として用いられてもよい。前述した実施形態では、リングギヤが固定され且つサンギヤ及びキャリアが回転するプラネタリ型の遊星歯車装置を例示したが、遊星歯車装置は、キャリアが固定され且つサンギヤ及びリングギヤが回転するスター型であってもよい。遊星歯車装置は、サンギヤが固定され且つリングギヤ及びキャリアが回転するソーラ型であってもよい。
【0041】
遊星歯車装置は、バッフル9を備えなくてもよい。油排出路は、第1プレート、第2プレート及びブリッジの群から選ばれる少なくとも1つに設けられ得る。即ち、油排出路は、第1プレート、第2プレート及びブリッジのうち1つだけに設けられてもよいし、第1プレート、第2プレート及びブリッジのうち2つだけに設けられてもよいし、第1プレート、第2プレート及びブリッジの全てに設けられてもよい。
【0042】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0043】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0044】
[項目1]
軸線周りの周方向に並んだ外歯を含むサンギヤと、
前記サンギヤの前記外歯に噛み合う外歯と、前記軸線が延びる軸線方向に開口した貫通孔と、含む複数のプラネタリギヤと、
前記複数のプラネタリギヤの前記貫通孔にそれぞれ挿通され、前記複数のプラネタリギヤを回転自在にそれぞれ支持する複数のプラネタリ軸と、
前記プラネタリギヤの前記外歯に噛み合う内歯を含むリングギヤと、
前記複数のプラネタリ軸の一端部を支持するプレートを含むキャリアと、を備え、
前記プレートは、油流入口と、前記軸線に直交する径方向において前記油流入口よりも外方にある油流出口と、を含む少なくとも1つの油排出路を有する、遊星歯車装置。
【0045】
この構成によれば、遊星歯車装置に干渉する場所に滞留した潤滑油に遠心力が付与されたとき、その潤滑油がキャリアのプレートの油流入口に流入し、油排出路を径方向外方に流れて油流出口から排出される。よって、遊星歯車装置を潤滑した潤滑油が滞留することが抑制され、遊星歯車装置のエネルギー損失を良好に低減できる。
【0046】
[項目2]
前記油流出口は、前記遊星歯車装置の外部に向いている、項目1に記載の遊星歯車装置。
【0047】
この構成によれば、キャリアのプレートの油流入口に流入した潤滑油が油排出路を介して遊星歯車装置の外部に直接的に排出される。よって、遊星歯車装置を潤滑した潤滑油が滞留することが好適に抑制され、遊星歯車装置のエネルギー損失を良好に低減できる。
【0048】
[項目3]
前記油流出口は、前記軸線方向において前記リングギヤの外方にある、項目2に記載の遊星歯車装置。
【0049】
この構成によれば、油流出口から流出した潤滑油を遊星歯車装置の外部に簡単に排出できる。
【0050】
[項目4]
前記油流出口は、前記複数のプラネタリギヤの前記貫通孔よりも前記径方向の外方にある、項目2又は3に記載の遊星歯車装置。
【0051】
この構成によれば、遊星歯車装置を潤滑した潤滑油を遊星歯車装置の外部に速やかに排出できる。
【0052】
[項目5]
前記プレートは、前記軸線方向に向いた側面を有し、
前記油流入口は、前記側面において開口している、項目1乃至4のいずれか1項に記載の遊星歯車装置。
【0053】
この構成によれば、プレートの側面付近の潤滑油が油排出路に流入し、プレートの側面付近での潤滑油の滞留を抑制できる。
【0054】
[項目6]
前記プレートの前記側面は、前記複数のプラネタリギヤに対向する内側面である、項目5に記載の遊星歯車装置。
【0055】
この構成によれば、プラネタリギヤとプレートとの間の隙間にある潤滑油が油排出路に流入し、当該隙間における潤滑油の滞留を抑制できる。
【0056】
[項目7]
前記プレートの前記側面は、前記軸線方向に向いた開口を有する凹空間を画定する凹面と、を含み、
前記油排出路は、前記凹空間と、前記凹空間から前記径方向の外方に延びて前記油流出口を有する少なくとも1つの油通路と、を含み、
前記油流入口は、前記凹空間の前記開口であり、
前記油通路は、前記凹面に開口する導入口を有する、項目5又は6に記載の遊星歯車装置。
【0057】
この構成によれば、プレートの側面付近にある潤滑油がプレートの側面の凹面に捕捉される。その捕捉された潤滑油は、導入口から油通路に進入して油流出口から排出される。よって、プレートの側面付近にある潤滑油を油排出路に効果的に導くことができる。
【0058】
[項目8]
前記少なくとも1つの油通路は、複数の油通路を含み、
前記複数の油通路の前記導入口は、1つの前記凹面に開口している、項目7に記載の遊星歯車装置。
【0059】
この構成によれば、複数の油通路によって1つの凹面に捕捉された潤滑油を速やかに排出できる。
【0060】
[項目9]
前記凹面は、前記凹空間を前記径方向の内方から画定するスロープ面を有し、
前記スロープ面は、前記油流入口に向けて前記径方向の内方に延びるように前記軸線方向に対して斜めに延びている、項目7又は8に記載の遊星歯車装置。
【0061】
この構成によれば、プレートの側面付近にある潤滑油がスロープ面に滑らかに案内され、潤滑油を凹面で捕捉しやすくできる。
【0062】
[項目10]
前記プレートは、前記複数のプラネタリ軸の前記一端部がそれぞれ配置され、前記周方向に並んだ複数の支持孔を有し、
前記凹面は、前記複数の支持孔のうち前記周方向に互いに隣接した2つの支持孔の間にある、項目7乃至9のいずれかに記載の遊星歯車装置。
【0063】
この構成によれば、凹空間を広く形成でき、凹面で捕捉される潤滑油を増やすことができる。
【0064】
[項目11]
前記プレートは、第1プレートであり、
前記キャリアは、前記複数のプラネタリ軸の他端部を支持する第2プレートと、前記第1プレートの外周部を前記第2プレートの外周部に接続するブリッジと、を含み、
前記凹面は、前記ブリッジの前記径方向の内方にある、項目10に記載の遊星歯車装置。
【0065】
この構成によれば、キャリアのブリッジの径方向内側にある潤滑油を油排出路によって排出できる。
【0066】
[項目12]
前記プレートは、前記複数のプラネタリ軸の前記一端部がそれぞれ配置され、前記周方向に並んだ複数の支持孔を有し、
前記油流入口は、前記複数の支持孔の1つの前記径方向の外方にある、項目6乃至11のいずれかに記載の遊星歯車装置。
【0067】
この構成によれば、プラネタリ軸とプラネタリギヤとの間から流出した潤滑油を油排出路に円滑に導くことができる。
【符号の説明】
【0068】
1,201,301 遊星歯車装置
2 サンギヤ
2a 外歯
3 プラネタリギヤ
3a 外歯
3b 貫通孔
4,304 リングギヤ
4a 内歯
5 プラネタリ軸
6 軸受
7,307 キャリア
8 締結具
21,121,221 第1プレート
22,222 第2プレート
23,323 ブリッジ
32,42 支持孔
33,43,233,243 内側面
34,44,234 外側面
35,45,235,237,247,350 油排出路
35a,45a,235a,237a,247a,350a 油流入口
35b,45b,235b,237b,247b,350b 油流出口
35c,350c 凹空間
35d,350d 油通路
35e 導入口
36 凹面
36a スロープ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7