(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084399
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】塗膜の製造方法、および塗膜の測定方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20240618BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240618BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240618BHJP
E04F 21/00 20060101ALI20240618BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240618BHJP
C09D 5/34 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B05D7/00 K
B05D7/14 P
B05D7/24 302T
E04F21/00 A
C09D175/04
C09D5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198651
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】516028185
【氏名又は名称】PLジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松川 幸弘
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075AE05
4D075BB01X
4D075BB60Z
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075CA03
4D075CA32
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA07
4D075DB04
4D075DC01
4D075DC02
4D075EA39
4D075EA41
4D075EB38
4D075EB43
4J038DG001
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】シーリング部分も含めた外壁全体について、客観的な塗膜保証を実現できる塗膜の製造方法を提供する。
【解決手段】略平滑な導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布し、ウレア樹脂層を形成する工程を含む、塗膜の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平滑な導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布し、ウレア樹脂層を形成する工程を含む、塗膜の製造方法。
【請求項2】
導電性金属部分と、導電性金属部分以外の下地との段差が2000μm以下である、請求項1に記載の塗膜の製造方法。
【請求項3】
導電性金属部分が、下地に埋設された導電性金属部材により形成されている、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項4】
導電性金属がステンレスである、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項5】
下地が、サイディングボードの目地に充填されたシーリング材の表面を含む、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項6】
ウレア樹脂層のウエット膜厚が50μm以上である、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項7】
得られる塗膜のドライ膜厚が50μm以上である、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項8】
さらに、ウレア樹脂層を形成する工程の前に、前記下地の表面にプライマー層を形成する工程を含む、請求項1または2に記載の塗膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の製造方法により、塗膜を形成する工程、および、
形成された塗膜の膜厚を、渦電流膜厚計、または電磁式膜厚計で測定する工程を含む、
膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜の製造方法、および塗膜の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内塗料市場の中で最大のシェアを持っている市場は建築塗料である。その建築塗料市場の中でも住宅改修用途が最大の割合を占める。住宅改修市場は、成長市場であるため、多くのリフォーム業者が参入している。外壁の改修時の塗膜に対する施主の要望は、塗膜の耐久性を向上し、高額な費用を要する住宅改修のスパンを極力引き延ばすことである。この要望に対し、各リフォーム会社は、テトラフルオロエチレン樹脂などを含む耐久性を有する塗料を採用すると同時に、塗膜保証を行うことで差別化をはかっている。
【0003】
しかし、これまでに行われている塗膜保証は、例えば「目視外観における著しい変化の有無」といった観念的なものであり、客観性に乏しいため、施主からは十分な信頼を得られていないのが実情である。定量的で明確な判断基準に基づく塗膜保証を行うことが求められている。
【0004】
住宅外壁の中でも、壁板の接合部であるシーリング部分には、水の侵入を防ぐ目的で、柔軟性の高いシリコーン系材料などが充填されている。シーリング部分の上に従来の一般的な外壁用塗料を塗装すると、シーリング材の変形に対する塗膜の追随性が乏しく、塗膜表面がひび割れたり、剥離したりする現象がみられた。したがって、シーリング部分は塗膜保証の対象外とされることが多かった。シーリング部分も含めた外壁全体の塗膜保証を可能とする塗装技術、および膜厚測定技術が求められている。
【0005】
特許文献1は、導電性プライマー層を含む塗膜の膜厚を、渦電流式膜厚計で計測する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シーリング部分も含めた外壁全体について、客観的な塗膜保証を実現できる塗膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、略平滑な導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布することにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、略平滑な導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布し、ウレア樹脂層を形成する工程を含む、塗膜の製造方法に関する。
【0010】
導電性金属部分と、導電性金属部分以外の下地との段差が2000μm以下であることが好ましい。
【0011】
導電性金属部分が、下地に埋設された導電性金属部材により形成されていることが好ましい。
【0012】
導電性金属がステンレスであることが好ましい。
【0013】
下地が、サイディングボードの目地に充填されたシーリング材の表面を含むことが好ましい。
【0014】
ウレア樹脂層のウエット膜厚が、50μm以上であることが好ましい。
【0015】
得られる塗膜のドライ膜厚が50μm以上であることが好ましい。
【0016】
さらに、ウレア樹脂層を形成する工程の前に、前記下地の表面にプライマー層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記製造方法により塗膜を形成する工程、および、形成された塗膜の膜厚を、渦電流式膜厚計、または電磁式膜厚計で測定する工程を含む、膜厚測定方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗膜の製造方法によれば、シーリング部分も含めた外壁全体について、客観的な塗膜保証を実現できる塗膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】サイディングボード、導電性金属部分、およびシーリング材からなる下地の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<塗膜の製造方法>>本発明の塗膜の製造方法は、導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布し、ウレア樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
<下地>下地の材質は、建築材料に用いられるものであれば特に限定されないが、導電性が低い、または導電性のない材料であることが好ましく、非金属が好ましい。非金属としては、コンクリート、けい酸カルシウム板、ALC板、石膏ボード、スレート板などの無機系材料、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系材料、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、塩化ビニルなどの樹脂材料、木質材料、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0022】
下地の形態は、サイディングボード、断熱材など、特に限定されないが、サイディングボードが好ましく、セメント、繊維系材料、木質材料、塩化ビニル等を含むサイディングボードがより好ましい。
【0023】
下地がサイディングボードである場合には、下地が、さらにサイディングボードの目地に充填されたシーリング材の表面を含むことが好ましい。すなわち、シーリング材の表面にウレア樹脂層が形成されることが好ましい。一般的に、サイディングボードの施工時には、隣り合うサイディングボードの間(目地)からの水の侵入を防ぐために、目地にシーリング材を充填する。シーリング材としては、シリコーン系樹脂などの柔軟性の高い材料が用いられることが多い。従来、サイディングボードの目地に充填されたシーリング材の上に塗料を塗布した場合、シーリング材の変形に対する塗膜の追随性が乏しく、塗膜表面がひび割れたり、剥離したりする現象がみられ、シーリング材の表面の塗膜は、保証の対象外とされていた。本発明の製造方法では、柔軟性が高く、シーリング材の変形に追随できる塗膜を製造できる。そのため、シーリング材の表面の塗膜に対しても、保証の範囲内とすることができる。
【0024】
サイディングボードの目地の幅は、一般的には10~20mmであり、10~12mmであることが好ましい。
【0025】
<導電性金属部分>下地は、略平滑な導電性金属部分を含む。下地が導電性金属部分を含むことにより、コンクリートやサイディングボードなどのように導電性や磁性を有しない外壁においても、塗膜の膜厚を電磁式膜厚計または渦電流膜厚計で精密に測定できる。導電性金属としては、特に限定されないが、ステンレス、銅、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、銀、クロム、スズなどが挙げられる。導電性金属部分の表面積は、ウレア樹脂層の膜厚を電磁式膜厚計または渦電流膜厚計で測定できれば特に限定されないが、0.8cm2以上が好ましく、1.5cm2以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、一般的には3.1cm2以下である。
【0026】
導電性金属部分を略平滑とすることにより、塗膜の膜厚を正確に測定することができる。略平滑とは、具体的には、導電性金属部分の算術平均粗さRaが0.3μm以下であることをいい、0.2μm以下であることが好ましい。
【0027】
導電性金属部分は、下地の導電性金属部分以外の部分との段差が小さいことが好ましい。この段差を小さくすることにより、ウレア樹脂層の膜厚を電磁式膜厚計または渦電流膜厚計で測定できる。前記段差は、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
【0028】
導電性金属部分の色は特に限定されず、その材質自体の色であってもよいが、下地と同色とすることが好ましい。下地と同色とすることにより、透明な塗膜を形成したときにも、導電性金属部分が目立つことによる意匠性の毀損を回避できる。
【0029】
導電性金属部分の形成方法は特に限定されず、例えば下地に導電性金属部材を埋設する方法、下地に導電性金属を含む塗膜を形成する方法などが挙げられるが、精密な膜厚測定を行える点で、下地に導電性金属部材を埋設する方法が好ましい。導電性金属部材の形態は特に限定されず、例えばボルト、ビス、ネジ、釘などが挙げられる。これらの導電性金属部材は、
図1に示すように、その一部が表れるように下地に埋設さる。
図2に示すように、下地から表れた部分が導電性金属部分となる。例えば導電性金属部材としてビスを使用する場合、ビスを下地にねじ込み、表面に表れたビスのヘッドが導電性金属部分となる。
【0030】
下地が、さらにサイディングボードの目地に充填されたシーリング材の表面を含む場合、シーリング材の表面と、導電性金属部分との距離は、20~300mmであることが好ましく、20~150mmであることがより好ましく、20~50mmであることがさらに好ましい。導電性金属部分をこの範囲に配置することにより、一般的にひび割れの生じやすいシーリング部分に対して、精密に膜厚を測定することができる。
【0031】
<ウレア樹脂塗料組成物>本発明で用いるウレア樹脂塗料組成物は、下地上にウレア樹脂層を形成できれば特に限定されず、例えばイソシアネート化合物とアミン化合物からなる2液型の組成物、イソシアネート化合物とアミン化合物を、両者が反応しない状態で混合した1液型の組成物、あらかじめイソシアネート化合物とアミンン化合物とを反応させたウレア構造を持つ樹脂を含む組成物が挙げられる。
【0032】
2液型の組成物を使用する場合、イソシアネート化合物とアミン化合物を、塗装の直前に混合して塗装し、塗装後、化学反応によりウレア構造が形成される。イソシアネート化合物とアミン化合物の選択の幅が広く、塗膜品質を制御しやすい。
【0033】
1液型の組成物では、イソシアネート化合物とアミン化合物が接触しないよう、カプセル化などにより1液化しており、取り扱いが容易であり、品質を制御しやすい。
【0034】
あらかじめイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させたウレア構造を持つ樹脂を含む組成物では、既に反応を終了させたウレア樹脂を含むため、取り扱いが容易であり、1液型の塗料とすることができる。また、この組成物は、ウレア樹脂を内蔵するエマルション型の水性塗料とすることにより、ウレア樹脂の品質を持ちながら環境負荷を低減できる。
【0035】
ウレア樹脂塗料組成物は、溶剤系塗料であってもよく、水性塗料であってもよい。これらのウレア樹脂塗料組成物を、スプレー、ハケ、ローラーなどの一般的な手法で塗布することにより、ウレア樹脂層を形成する。
【0036】
1回の塗装工程で形成されるウレア樹脂層の厚みは、ウエット膜厚で、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。ウエット膜厚は、ウレア樹脂層を塗布した下地の平滑部に、ウエットゲージを当てる方法により測定する。また、下地に平滑部がない場合、単位面積当たりの塗付重量により膜厚を測定することができる。塗付重量は、ウエット膜厚で、50g/m2以上が好ましく、100g/m2以上がより好ましく、150g/m2以上がさらに好ましい。複数のウレア樹脂層を形成する場合には、各ウレア樹脂層のウエット膜厚が、前述した範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明の方法で形成される塗膜は、ウレア樹脂塗料により形成されるため優れた耐久性を有する。下地がシーリング材の表面を含む場合、シーリング材上の塗付面において15年以上の期待耐用年数を持つことが好ましい。また、シーリング材の表面以外の部分においては、30年以上の期待耐用年数を持つことが好ましい。
【0038】
<プライマー層>下地の上にウレア樹脂層を形成する工程の前に、下地の表面にプライマー層を形成する工程を含むことが好ましい。プライマー層は、下地上にシリコーン系プライマー、エポキシ系プライマー等を塗装することにより形成できる。プライマー層の厚みは、ウエット膜厚で、50μm以上が好ましく、80μmがより好ましく、120μm以上がさらに好ましい。本発明の塗膜がプライマー層を有する場合、ウレア樹脂層は、プライマー層の上に積層することができる。また、ウレア樹脂層は複数積層してもよく、例えば、下地、プライマー層、中塗りとしてのウレア樹脂層、および上塗りとしてのウレア樹脂層を有する塗膜が挙げられる。
【0039】
<膜厚>塗膜の膜厚は、ドライ膜厚で50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。ドライ膜厚は、電磁式膜厚計または渦電流式膜厚計により測定することができる。なお、ここでいう塗膜の厚みは、下地上に存在する総膜厚のことをいい、プライマー層や、複数のウレア樹脂層を有する場合には、それらを合計した厚みである。
【0040】
<<膜厚測定方法>>本発明の膜厚測定方法は、ウレア樹脂層を含む塗膜を形成する工程、および、形成された塗膜の膜厚を、渦電流式膜厚計、または電磁式膜厚計で測定する工程を含む、膜厚測定方法に関する。ウレア樹脂層を含む塗膜を形成する工程では、塗膜の製造方法に関して前述した下地、および塗料組成物を用いて、ウレア樹脂層を含む塗膜を形成する。
【0041】
膜厚を測定する工程では、ウレア樹脂層を含む、乾燥後の塗膜のドライ膜厚を、膜厚計で測定する。膜厚の測定時には、
図1に示すように、膜厚計の検出ヘッドを下地の導電性金属部分に押し当てる。膜厚計としては、渦電流式膜厚計、または電磁式膜厚計を用いる。渦電流式膜厚計を用いる場合、検出ヘッドと導電性金属部分の間の電気抵抗に基づき塗膜を測定する。電磁式膜厚計を用いる場合、検出ヘッドと導電性金属部分の間の磁気に基づき塗膜を測定する。渦電流式膜厚計と電磁式膜厚計のいずれを用いるかは、導電性金属部分の導電性、磁性により適宜選択することができる。例えば、導電性金属部分がステンレス製である場合には、渦電流式膜厚計、電磁式膜厚計のいずれを用いてもよい。導電性金属部分がアルミニウム製、銅製である場合には、渦電流式膜厚計を用いることが好ましい。
【0042】
本発明における下地、および膜厚測定方法を、図面に即して説明する。
図1は、塗膜の膜厚測定時の断面模式図である。下地10には導電性金属部材20が埋設されている。下地10と、導電性金属部材20の上にはウレア樹脂層30が積層されている。下地中の導電性金属部材20が存在する箇所に膜厚計40の検出ヘッド41を押し当てて、ウレア樹脂層の膜厚を測定する。
【0043】
図2は、下地材料としてサイディングボードを用いた場合の上面模式図である。サイディングボード70には導電性金属部分60が存在する。隣り合うサイディングボード70の間には、シーリング材50が充填されている。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特にことわりのない限り、「部」は重量部を意味する。
【0045】
(1)実施例1
(1-1)シーリング材および金属ビスの施工
サイディングボードの溝部分に、シーリング材(製品名:レジリエンスシーラント PLジャパン(株)製変性シリコンシーリング材)を塗り込んだ。また、サイディングボード面(サイディングボードの溝からの距離が50mmの位置)に、金属ビス(製品名:レジリエンス膜厚測定ピン PLジャパン(株)製ステンレスビス)をねじ込んだ。
【0046】
(1-2)下塗り
サイディングボード面、およびシーリング材を塗り込んだ部分を覆うように、プライマー(製品名:レジリエンスハイブリッドバインダーSi PLジャパン(株)製シリコン系プライマー)を塗装し、ウエット膜厚が100μm以上ある事を確認した。
【0047】
(1-3)中塗り
下塗り塗装の5時間後、ウレア樹脂塗料(製品名:レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、中塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。
【0048】
(1-4)上塗り
中塗り塗装の16時間後、ウレア樹脂塗料(レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、上塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。なお、中塗り塗料と上塗り塗料は、同じ塗料であり、合計2回塗装した。
【0049】
(1-5)膜厚測定
上塗り塗装を行った1日後、乾燥塗膜の膜厚を、電磁式膜厚計(製品名:SWT-9300 サンコウ電子研究所製膜厚計)を用いて測定したところ、ドライ膜厚が170μmであった。また、塗膜の表面状態を、目視で評価したところ、意匠性に大きな変化は見られなかった。
【0050】
(1-6)塗膜の評価
このサイディングボードを、スーパーUV促進耐候性試験機(製品名:アイスーパーUVテスター 岩崎電気(株)製スーパーUV試験機)に設置し、2000時間後の、サイディングボード面上、及びシーリング材面上の塗膜状態を観察したところ、シーリング材上ではない一般壁面部の光沢に大きな低下は見られなかった。また、シーリング材上の塗膜にひび割れなどの外観異常は認められなかった。
【0051】
なお、スーパーUV促進対候性試験機(岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスター)の測定条件は下記の通りである。
波長:295~450nm
紫外線照射度:150mW/cm2
BP温度:63℃
【0052】
(2)実施例2
(2-1)シーリング材および金属ビスの施工
サイディングボードの溝部分に、シーリング材(製品名:レジリエンスシーラント PLジャパン(株)製変性シリコンシーリング材)を塗り込んだ。また、サイディングボード面(サイディングボードの溝からの距離が80mmの位置)に、金属ビス(製品名:レジリエンス膜厚測定ピン PLジャパン(株)製ステンレスビス)をねじ込んだ。
【0053】
(2-2)下塗り
サイディングボード面、およびシーリング材を塗り込んだ部分を覆うように、プライマー(製品名:レジリエンスハイブリッドバインダーSiクリヤー、PLジャパン(株)製シリコン系プライマー)を塗装し、ウエット膜厚が100μm以上ある事を確認した。
【0054】
(2-3)中塗り
下塗り塗装の5時間後、ウレア樹脂塗料(製品名:レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、中塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。
【0055】
(2-4)上塗り
中塗り塗装の16時間後、ウレア樹脂塗料(レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、上塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。なお、中塗り塗料と上塗り塗料は、同じ塗料であり、合計2回塗装した。
【0056】
(2-5)膜厚測定
上塗り塗装を行った1日後、乾燥塗膜の膜厚を、電磁式膜厚計(製品名:SWT-9300 サンコウ電子研究所製膜厚計)を用いて測定をしたところ、ドライ膜厚は180μmであった。また、塗膜の表面状態を、目視で評価したところ、意匠性に大きな変化は見られなかった。
【0057】
(2-6)塗膜の評価
このサイディングボードを、スーパーUV促進耐候性試験機(製品名:アイスーパーUVテスター 岩崎電気(株)製スーパーUV試験機)に設置し、2000時間後の、サイディングボード面上、及びシーリング材面上の塗膜状態を観察したところ、シーリング材上ではない一般壁面部の光沢に大きな低下は見られなかった。また、シーリング材上の塗膜にひび割れなどの外観異常は認められなかった。
【0058】
(3)比較例1
(3-1)下地の準備および塗装
金属ビスのねじ込みを行わなかった以外は、実施例1と同様に、シーリング材の施工、下塗り、中塗り、上塗りを行った。
【0059】
(3-2)膜厚測定
上塗り塗装を行った1日後、乾燥塗膜の膜厚を、渦電流式膜厚計(製品名:SWT-9300 サンコウ電子研究所製)を用いて測定したところ、ドライ膜厚は、測定できなかった。
【0060】
(3-3)塗膜の評価
このサイディングボードを、スーパーUV促進耐候性試験機(製品名:アイスーパーUVテスター 岩崎電気(株)製スーパーUV試験機)に設置し、2000時間後の、サイディングボード面上、及びシーリング材面上の塗膜状態を観察したところ、シーリング材上ではない一般壁面部の光沢に大きな低下は見られなかった。また、シーリング材上の塗膜にひび割れなどの外観異常は認められなかった。
【0061】
(4)比較例2
(4-1)シーリング材および金属ビスの施工
実施例1と同様に、シーリング材および金属ビスの施工を行った。
【0062】
(4-2)下塗り
サイディングボード面、およびシーリング材を塗り込んだ部分を覆うように、プライマー(製品名:1液ファインシーラー 日本ペイント(株)エポキシ系シーラー)を塗装し、ウエット膜厚を測定し、50μm程度であった事を確認した。
【0063】
(4-3)中塗り
下塗り塗装の3時間後、ウレタン塗料(製品名:1液ファインウレタン 日本ペイント(株)製ウレタン塗料)を塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上である事を確認した。
【0064】
(4-4)上塗り
中塗り塗装の15時間後、ウレタン塗料(製品名:1液ファインウレタン 日本ペイント(株)製ウレタン塗料)を塗装した後、ウエット膜厚を測定し、150μm以上である事を確認した。
【0065】
(4-5)膜厚測定
上塗り塗装を行った1日後、乾燥塗膜の膜厚を、渦電流膜厚計(製品名:SWT-9300 サンコウ電子研究所製膜厚計)を用いて測定し、ドライ膜厚が180μmであることを確認した。
【0066】
(4-6)塗膜の評価
このサイディングボードを、スーパーUV促進耐候性試験機(製品名:アイスーパーUVテスター 岩崎電気(株)製スーパーUV試験機)に設置し、2000時間後の、サイディングボード面上、及びシーリング材面上の塗膜状態を観察したところ、シーリング材上ではない一般壁面部の光沢低下は大きく、ほとんど光沢の無い状態となった。また、塗膜のひび割れは激しく、一部剥離脱落していた。また、シーリング材上の塗膜は、ほとんどが剥離し、外観異常は顕著であった。
【0067】
(5)比較例3
(5-1)シーリング材および金属テープの施工
サイディングボードの溝部分に、シーリング材(製品名:レジリエンスシーラント PLジャパン(株)製変性シリコンシーリング材)を塗り込んだ。サイディングボード面に、銅箔テープ(Nitto製銅箔テープ、膜厚0.03mm)を10cm角に貼り付けた。
【0068】
(5-2)下塗り
サイディングボード面、およびシーリング材を塗り込んだ部分を覆うように、プライマー(製品名:レジリエンスハイブリッドバインダーSi PLジャパン(株)製シリコン系プライマー)を塗装し、ウエット膜厚が100μm以上であることを確認した。
【0069】
(5-3)中塗り
下塗り塗装の5時間後、ウレア樹脂塗料(製品名:レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、中塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。
【0070】
(5-4)上塗り
中塗り塗装の16時間後、ウレア樹脂塗料(製品名:レジリエンスウレア PLジャパン(株)製1液形ウレア樹脂塗料)を、上塗り塗料として1回塗装し、ウエット膜厚を測定し、150μm以上であることを確認した。なお、中塗り塗料と上塗り塗料は、同じ塗料であり、合計2回塗装した。
【0071】
(5-5)膜厚測定
上塗り塗装を行った1日後、乾燥塗膜の膜厚を、渦電流膜厚計(製品名:SWT-9300 サンコウ電子研究所製膜厚計)を用いて測定したところ、測定部位による膜厚の数値変化が大きく、50μm以上のばらつきが見られた。銅箔の平滑性が無いため、凹凸部による膜厚変化が大きかったものと思われる。
【0072】
(5-6)塗膜の評価
このサイディングボードを、スーパーUV促進耐候性試験機(製品名:アイスーパーUVテスター 岩崎電気(株)製スーパーUV試験機)に設置し、2000時間後の、サイディングボード面上、及びシーリング材面上の塗膜状態を観察したところ、シーリング材上ではない一般壁面部の光沢の大きな低下は見られなかった。また、シーリング材上の塗膜にひび割れなどの外観異常は認められなかった。
【0073】
(6)実施例1~2、比較例1~3の結果を表1にまとめた。
各評価項目の基準は下記の通りである。
【0074】
(6-1)塗膜の柔軟性
シーリング材上の塗膜状態が、ひび割れや剥離を起こしていないか、目視により下記の基準で評価した。
◎ 塗膜表面の変化が全く見られない
〇 塗膜表面の変化が見られない
△ 塗膜表面に僅かに変化が見られる
× 塗膜表面に、ひび割れ、剥離、粘着性などが見られる
【0075】
(6-2)塗膜の外観
塗膜の平滑性が毀損されたり、剥離が見られたりしていないかを目視により下記の基準で評価した。
◎ 塗膜の外観に全く変化が見られない
〇 塗膜の外観に変化が見られない
△ 塗膜の外観に変化が見られる
× 塗膜の外観に異常が見られる
【0076】
(6-3)塗膜の耐候性
スーパーUVによる耐候性試験で、塗膜の光沢低下で判断した。
◎ 光沢変化が全くみられない(光沢保持率70%以上)
〇 光沢変化がほとんどみられない(光沢保持率50%以上70%未満)
△ 光沢変化がみられる(光沢保持率30%以上50%未満)
× 光沢低下がみられる(光沢保持率30%未満)
【0077】
(6-4)客観的膜厚測定
膜厚計により、ドライ膜厚を測定した。同一の塗膜に対する測定を繰り返し、最大値と最小値の差に基づき下記の基準で評価した。
◎ 最大値と最小値の差が2μm未満である
〇 最大値と最小値の差が2μm以上5μm未満である
△ 最大値と最小値の差が5μm以上50μm未満である
× 最大値と最小値の差が50μm以上であるか、膜厚測定できない
【0078】
【0079】
比較例1では導電性部材を使用しなかったため客観的な膜厚測定ができなかった。比較例2ではウレタン樹脂を含む塗料を使用したため塗膜の柔軟性および耐候性が不十分であった。比較例3では導電性部材として銅箔テープを使用したため、導電性部分の平滑性が不十分であり客観的な膜厚測定ができず、耐候性がやや低下した。実施例1~2では、塗膜の柔軟性、外観、および耐候性が優れており、客観的な膜厚測定も可能であった。実施例2ではクリヤー(透明)のプライマーを用いたため、透明な塗膜が形成された。
【0080】
本開示(1)は略平滑な導電性金属部分を含む下地の上にウレア樹脂塗料組成物を塗布し、ウレア樹脂層を形成する工程を含む、塗膜の製造方法である。
【0081】
本開示(2)は導電性金属部分と、導電性金属部分以外の下地との段差が2000μm以下である、本開示(1)に記載の塗膜の製造方法である。
【0082】
本開示(3)は導電性金属部分が、下地に埋設された導電性金属部材により形成されている、本開示(1)または(2)に記載の塗膜の製造方法である。
【0083】
本開示(4)は導電性金属がステンレスである、本開示(1)~(3)のいずれかに記載の塗膜の製造方法である。
【0084】
本開示(5)は下地が、サイディングボードの目地に充填されたシーリング材の表面を含む、本開示(1)~(4)のいずれかに記載の塗膜の製造方法である。
【0085】
本開示(6)はウレア樹脂層のウエット膜厚が、50μm以上である、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の塗膜の製造方法である。
【0086】
本開示(7)は得られる塗膜のドライ膜厚が50μm以上である、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の塗膜の製造方法である。
【0087】
本開示(8)はさらに、ウレア樹脂層を形成する工程の前に、前記下地の表面にプライマー層を形成する工程を含む、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の塗膜の製造方法である。
【0088】
本開示(9)は本開示(1)~(8)のいずれかに記載の製造方法により、塗膜を形成する工程、および、形成された塗膜の膜厚を、渦電流式膜厚計、または電磁式膜厚計で測定する工程を含む、膜厚測定方法である。