(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084402
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の表面被覆材及び表面被覆方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/63 20060101AFI20240618BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240618BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240618BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20240618BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C04B41/63
C04B28/02
C04B24/26 F
C04B20/00 A
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198659
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】辻 総一朗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 誠
【テーマコード(参考)】
2E176
4G028
4G112
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB04
4G028CA01
4G028CB01
4G112MD01
4G112PA15
4G112PA24
4G112PB26
4G112PB31
4G112PC03
(57)【要約】
【課題】夏場等の高気温時の施工性に優れたコンクリート構造物の表面被覆材を提供する。
【解決手段】セメント、細骨材、セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン、短繊維及び、ポリカルボン酸系のスランプ保持剤からなる、コンクリート構造物の表面被覆材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、細骨材、セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン、短繊維及び、ポリカルボン酸系のスランプ保持剤からなる、
コンクリート構造物の表面被覆材。
【請求項2】
前記スランプ保持剤は、前記セメントに対して0.05~0.8wt%であることを特徴とする、
請求項1に記載のコンクリート構造物の表面被覆材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンクリート構造物の表面被覆材を圧縮空気によって噴出するノズルと、前記表面被覆材を圧送するポンプと、前記ノズルに前記圧縮空気を送るコンプレッサと、を有する吹き付け装置を用いて、前記表面被覆材をコンクリート構造物の表面に吹き付ける、
コンクリート構造物の表面被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物の表面を被覆するポリマーセメント系モルタル(PCM)製の表面被覆材及びコンクリート構造物の表面被覆方法に関し、特に夏場等の高気温時の施工性に優れたコンクリート構造物の表面被覆材及び表面被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したコンクリート構造物の表面の補修や、耐震基準の強化に伴うコンクリート構造物の補強を目的として、PCM製の表面被覆材でコンクリート構造物の表面を被覆することが知られている。
特に、特許文献2には、表面被覆材を吹き付ける施工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-44498号公報
【特許文献2】特開2022-70468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCMは夏場等の高気温時にはすぐ固くなる性状を有しており、施工性・ワーカビリティが低下する。特に、吹き付け施工では、ポンプ圧送時に配管内で閉塞する可能性が高くなる。
その対応として、水量(ポリマー混和液)の増量や材料の冷却を行っている。
しかし、水量(ポリマー混和液)が多くなるとモルタルの強度が下がってしまうため、増量できる量に限界がある。代わりとしてコンクリート用の減水剤や流動化剤の添加が考えられるが、添加により初期の粘度が低下し、モルタルの厚付け性が下がる。また、施工しやすい粘度を保持する性能が低くなってしまうため、ポンプ圧送時に材料が配管内で閉塞しやすくなる。
遅延剤の添加も同様に、初期の粘度が低下してモルタルの厚付け性が下がる他、添加量が多いとモルタルの強度に悪影響を及ぼしてしまう。
また、近年の酷暑によって、施工現場における材料の冷却にも限界がある。
【0005】
本発明は、夏場等の高気温時の施工性に優れたコンクリート構造物の表面被覆材及び表面被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第一発明は、セメント、細骨材、セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン、短繊維及び、ポリカルボン酸系のスランプ保持剤からなる、コンクリート構造物の表面被覆材を提供する。
前記スランプ保持剤は、前記セメントに対して0.05~0.8wt%であってもよい。
【0007】
また、本願の第二発明は、第一発明のコンクリート構造物の表面被覆材を圧縮空気によって噴出するノズルと、前記表面被覆材を圧送するポンプと、前記ノズルに前記圧縮空気を送るコンプレッサと、を有する吹き付け装置を用いて、前記表面被覆材をコンクリート構造物の表面に吹き付ける、コンクリート構造物の表面被覆方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上の構成により、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>コンクリート用のスランプ保持材を添加したPCMは、夏場等の高気温時においてもすぐ固くならず、施工性・ワーカビリティが低下しない。
<2>スランプ保持材を添加しても初期の粘度が低下せず、モルタルの厚付け性が下がることなく、施工しやすい粘度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のコンクリート構造物の表面被覆方法の説明図
【
図2】本発明のコンクリート構造物の表面被覆材のフロー値と経過時間の関係図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明のコンクリート構造物の表面被覆材及び表面被覆方法について詳細に説明する。
【実施例0011】
<1>コンクリート構造物の表面被覆方法
本発明のコンクリート構造物の表面被覆方法は、老朽化したコンクリート構造物の表面の補修や、耐震基準の強化に伴うコンクリート構造物の補強を目的として、コンクリート構造物1の表面に表面被覆材2を吹き付けて被覆するものである。
コンクリート構造物1は、例えば橋梁、橋脚、PC床版、トンネル、高架道路、建築物、水路等の各種のコンクリート製の構造物を含む。
吹き付け工法には、表面被覆材2を圧送するポンプ3、圧縮空気によって表面被覆材2を噴出するノズル4及び、ノズル4に圧縮空気を送るコンプレッサ5を有する吹き付け装置を用いる(
図1)。
【0012】
<2>表面被覆材
表面被覆材2は、従来のPCMにコンクリート用のスランプ保持剤を添加したものである。
従来のPCMは、セメント、細骨材、セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン及び短繊維を含むものであり、具体的には、予めPVA短繊維を混合した無機質主材のマグネコンパウンドと、複合高分子エマルジョンのマグネエマルジョンを現場において配合して使用する「マグネライン(登録商標)(前田工繊株式会社製)」が使用可能である。
そして、表面被覆材2はさらに、セメントに対して0.05~0.8wt%のコンクリート用のスランプ保持剤を添加して構成する。
【0013】
<3>スランプ保持剤
従来のPCMに添加するコンクリート用のスランプ保持剤は、ベースコンクリートの初期スランプや空気量等にほとんど影響を及ぼすことなく、現場までの運搬や現場内運搬(圧送等)におけるスランプ及びスランプフローの保持性能を向上させることができるポリカルボン酸系の混和剤である。
本発明においては、コンクリート用のスランプ保持剤を従来のPCMに添加することにより、夏場等の高気温時の施工性に優れた、コンクリート構造物1の表面に吹き付けて被覆する表面被覆材2となった。
【0014】
<4>実験結果
PCMの吹き付け施工を行う場合、ポンプによる圧送と吹き付け時の厚付け性を考慮すると、フロー値は180mm~150mmが施工に適した粘度であり、可使時間は30分程度が好ましい。
図2は、高気温である気温35℃の環境下、セメント100質量部に対し、細骨材200、短繊維0.3、セメント混和用ポリマー固形分10.9~12.5、水29.6~34.0のPCMに各混和剤を添加したときの、経過時間とフロー値の関係を示したものである。
スランプ保持剤は、セメント100に対して0.3wt%添加した。
【0015】
遅延型の減水剤を添加した場合と遅延剤を添加した場合は、初期の粘度が低く、モルタルの厚付け性が低い、また、施工しやすい粘度であるフロー値180mm~150mmを保持する時間が短く、施工性・ワーカビリティの低下が早い。
これに比べて減水剤を添加した場合は、フロー値180mm~150mmを保持する時間は比較的長くなるが、初期の粘度は同様に低いためモルタルの厚付け性が低い。
これらに対して、コンクリート用のスランプ保持剤を添加した本発明の表面被覆材2は、初期の粘度が混和剤添加なしの場合(ブランク)と同等である一方、フロー値180mm~150mmを保持する時間がさらに長くなり、かつ、30分間の粘度の変化も少ない。このため、モルタルの厚付け性が下がることなく、施工しやすい粘度を保持することができる。
【0016】
【表1】
表1は、上述の条件における、ブランクと本発明の表面被覆材2の材齢28日の強度を比較したものである。
本発明の、スランプ保持剤を添加した表面被覆材2は添加なしの場合(ブランク)とほぼ同等の強度である。