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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084404
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20240618BHJP
【FI】
H01S5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198661
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】望月 理光
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB52
5F173AB90
5F173AC03
5F173AC70
5F173AH03
5F173AP54
5F173AR12
(57)【要約】
【課題】第1フォトニック結晶によって共振する光の第2フォトニック結晶による散乱を低減できる発光装置を提供する。
【解決手段】第1導電型を有する第1半導体層と、前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、前記第2半導体層の前記発光層と反対側に設けられたフォトニック結晶層と、を有し、前記フォトニック結晶層は、前記発光層で発光した光を、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向と直交する方向に共振させ、かつ前記直交する方向と異なる方向に出射させない第1フォトニック結晶が設けられた第1領域と、前記積層方向からみて前記第1領域と重ならず、前記発光層で発光した光を前記直交する方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶が設けられた第2領域と、を有する、発光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型を有する第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第2半導体層の前記発光層と反対側に設けられたフォトニック結晶層と、
を有し、
前記フォトニック結晶層は、
前記発光層で発光した光を、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向と直交する方向に共振させ、かつ前記直交する方向と異なる方向に出射させない第1フォトニック結晶が設けられた第1領域と、
前記積層方向からみて前記第1領域と重ならず、前記発光層で発光した光を前記直交する方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶が設けられた第2領域と、
を有する、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2フォトニック結晶は、前記発光層で発生した光を、前記積層方向に出射する、発光装置。
【請求項3】
請求項1において、
電極と、
前記フォトニック結晶層と前記電極との間に設けられたコンタクト層と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記コンタクト層は、前記第1領域および前記第2領域と重なっている、発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
電極と、
前記フォトニック結晶層と前記電極との間に設けられたコンタクト層と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記コンタクト層は、前記第1領域と重ならず、前記第2領域と重なっている、発光装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記積層方向からみて、前記第1領域は、前記第2領域を囲んでいる、発光装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記積層方向からみて前記第1領域を囲み、前記発光層で発光した光を反射させる反射部を有する、発光装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1フォトニック結晶は、周期的に配列された複数の第1孔を有し、
前記第2フォトニック結晶は、周期的に配列された複数の第2孔を有し、
前記積層方向からみて、前記複数の第1孔の各々の形状と、前記複数の第2孔の各々の形状とは、異なる、発光装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記積層方向からみて、
前記複数の第1孔の各々の形状は、回転対称性を有し、
前記複数の第2孔の各々の形状は、回転対称性を有さない、発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載された発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶効果を利用したフォトニック結晶面発光レーザー(Photonic Crystal
Surface Emitting Laser:PCSEL)が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、分布帰還制御フォトニック結晶と、面発光制御フォトニック結晶と、が重畳されたPCSELが記載されている。分布帰還制御フォトニック結晶は、活性層をコアとして伝搬する光が活性層の面内で2次元的に分布帰還し、かつ活性層に垂直な方向に放射されないように構成されている。面発光制御フォトニック結晶は、伝搬光が活性層に垂直な方向に放射されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-208127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたPCSELでは、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔が、分布帰還制御フォトニック結晶を形成する隣り合う空孔の間に配置されている。そのため、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還する光が、面発光制御フォトニック結晶を構成する空孔によって散乱し、損失となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
第1導電型を有する第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第2半導体層の前記発光層と反対側に設けられたフォトニック結晶層と、
を有し、
前記フォトニック結晶層は、
前記発光層で発光した光を、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向と直交する方向に共振させ、かつ前記直交する方向と異なる方向に出射させない第1フォトニック結晶が設けられた第1領域と、
前記積層方向からみて前記第1領域と重ならず、前記発光層で発光した光を前記直交する方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶が設けられた第2領域と、
を有する。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図2】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図6】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図7】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図8】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
図9】本実施形態の変形例に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 発光装置
1.1. 構成
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す図1のII-II線断面図である。なお、図1および図2では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0011】
発光装置100は、図1および図2に示すように、例えば、基板10と、第1半導体層20と、発光層30と、第2半導体層40と、フォトニック結晶層50と、第3半導体層60と、コンタクト層70と、第1電極80と、第2電極82と、を有している。発光装置100は、PCSELである。なお、便宜上、図1では、フォトニック結晶層50以外の部材の図示を省略している。
【0012】
基板10は、例えば、第1導電型を有している。第1導電型は、例えば、n型である。基板10は、例えば、Siがドープされたn型のGaAs基板である。
【0013】
第1半導体層20は、図2に示すように、基板10上に設けられている。第1半導体層20は、基板10と発光層30との間に設けられている。第1半導体層20は、例えば、n型の導電型を有している。第1半導体層20は、例えば、高屈折率層と、高屈折率層よりも屈折率が低い低屈折率層とが、交互に積層されたDBR(Distributed Bragg Reflector)である。高屈折率層は、例えば、Siがドープされたn型のAl0.1Ga0.9As層である。低屈折率層は、例えば、Siがドープされたn型のAl0.9Ga0.1As層である。高屈折率層および低屈折率層の数は、特に限定されない。第1半導体層20は、発光層30で発生した光を、コンタクト層70側に向けて反射させる。
【0014】
なお、本明細書では、第1半導体層20と発光層30との積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層30を基準とした場合、発光層30から第2半導体層40に向かう方向を「上」とし、発光層30から第1半導体層20に向かう方向を「下」として説明する。図示の例では、積層方向は、Z軸方向である。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。
【0015】
発光層30は、第1半導体層20上に設けられている。発光層30は、第1半導体層20と第2半導体層40との間に設けられている。発光層30は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層30は、例えば、ウェル層と、バリア層と、を有している。ウェル層およびバリア層は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。ウェル層は、例えば、GaAs層、InGaAs層である。バリア層は、例えば、AlGaAs層(例えば、AlGa1-xAs層、0.1≦x≦0.3)である。発光層30は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有して
いる。
【0016】
なお、発光層30を構成するウェル層およびバリア層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよい。この場合、発光層30は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0017】
第2半導体層40は、発光層30上に設けられている。第2半導体層40は、発光層30とフォトニック結晶層50との間に設けられている。第2半導体層40は、第1導電型と異なる第2導電型を有している。第2導電型は、例えば、p型である。第2半導体層40は、例えば、C(炭素)がドープされたp型のAlGaAs層(例えばAl0.5Ga0.5As層)である。
【0018】
フォトニック結晶層50は、第2半導体層40上に設けられている。フォトニック結晶層50は、第2半導体層40の発光層30と反対側に設けられている。フォトニック結晶層50は、第2半導体層40と第3半導体層60との間に設けられている。フォトニック結晶層50は、半導体層と、半導体層に形成された第1孔53および第2孔55と、で構成されている。当該半導体層は、例えば、Cがドープされたp型のGaAs層である。第1孔53および第2孔55は、空孔であってもよいし、例えばp型のInGaPが充填されていてもよい。
【0019】
フォトニック結晶層50は、第1フォトニック結晶52が設けられた第1領域50aと、第2フォトニック結晶54が設けられた第2領域50bと、を有している。第1領域50aは、図1に示すように、積層方向からみて、第2領域50bを囲んでいる。第2領域50bは、積層方向からみて、第1領域50aと重なっていない。図示の例では、第2領域50bは、正方形である。
【0020】
第1フォトニック結晶52は、積層方向からみて、第2フォトニック結晶54を囲んでいる。第1フォトニック結晶52は、周期的に配列された複数の第1孔53を有している。第1フォトニック結晶52は、複数の第1孔53と、隣り合う第1孔53の間の半導体層と、で構成されている。
【0021】
第1フォトニック結晶52の第1孔53は、積層方向からみて、例えば、回転対称性を有している。図示の例では、第1孔53の形状は、円である。複数の第1孔53は、例えば、X軸方向およびY軸方向に、正方格子状に配列されている。第1フォトニック結晶52を形成する複数の第1孔53の基本的な形状F1は、例えば、回転対称性を有している。図示の例では、形状F1は、4つの円(2×2周期)で構成されている。
【0022】
第1フォトニック結晶52は、発光層30で発生した光を、面内方向に共振させる。第1フォトニック結晶52は、発光層30で発生した光を、奇数次の回折、好ましくは1次の回折を用いて分布帰還(面内方向に回折)させる。1次の回折で分布帰還させることにより、第1フォトニック結晶52は、面内方向に伝搬する光をより強く面内に閉じ込めることができる。そのため、第1孔53と発光層30との間の距離D1を大きくしても、発光層30で発生した光を、面内方向に共振させることができる。距離D1を大きくすることにより、発光層30の信頼性を高めることができる。距離D1は、例えば、50nm以上500nm以下であり、好ましくは100nm以上300nm以下である。1次の回折で分布帰還させることにより、第一に、面外への回折による光の損失が発生しなくなるため、面外への光損失が低減される。第二に、フォトニック結晶52を構成する屈折率界面、具体的には、例えば+X軸方向に伝搬する光が、任意の第1孔53に向かって入射する面と、その面を透過し第1孔53から出射する面とにおいて、それぞれの-X軸方向に反射する光成分が相殺されることを抑制できる。
【0023】
第1フォトニック結晶52は、分布帰還に奇数次の回折を用いるため、発光層30で発生した光を、面内方向と直交する方向に回折させない。第1フォトニック結晶52は、発光層30で発生した光を、積層方向に回折させない。
【0024】
第2フォトニック結晶54は、周期的に配列された複数の第2孔55を有している。第2フォトニック結晶54は、複数の第2孔55と、隣り合う第2孔55の間の半導体層と、で構成されている。積層方向からみて、第1孔53の形状と、第2孔55の形状とは、異なる。
【0025】
第2フォトニック結晶54の第2孔55は、積層方向からみて、例えば、回転対称性を有していない。図示の例では、第2孔55の形状は、直角二等辺三角形である。第2孔55は、X軸およびY軸に対して45°傾斜した傾斜面56を有している。複数の第2孔55は、例えば、正方格子状に配列されている。第2フォトニック結晶54を形成する複数の第2孔55の基本的な形状F2は、例えば、回転対称性を有していない。図示の例では、形状F1は、4つの直角二等辺三角形(2×2周期)で構成されている。複数の第2孔55のピッチは、複数の第1孔53のピッチと異なる。図示の例では、複数の第2孔55のピッチは、複数の第1孔53のピッチよりも大きい。
【0026】
なお、「孔のピッチ」とは、所定の方向に隣り合う孔の中心間の距離である。「孔の中心」とは、孔の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、孔の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、孔の中心は、孔の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、孔の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0027】
第2フォトニック結晶54は、発光層30で発生した光を、面内方向と異なる方向に出射させることができる。第2フォトニック結晶54は、例えば、発光層30で発生した光を、積層方向に出射させる。第2フォトニック結晶54は、発光層30で発生した光を、例えば、1次の回折を用いて積層方向に出射させる。なお、第2フォトニック結晶54は、発光層30で発生した光を、例えば、3次の回折を用いて、積層方向に対して斜めの方向に出射させてもよい。第2フォトニック結晶54は、発光層30で発生した光を、面内方向にも回折させてもよい。
【0028】
第2フォトニック結晶54の第2孔55と発光層30との間の距離D2は、図2に示すように、例えば、第1フォトニック結晶52の第1孔53と発光層30との間の距離D1よりも大きい。これにより、発光層30の第2フォトニック結晶54と重なる部分の信頼性を保つことができる。具体的には、例えば、この領域における転位の発生や、経時とともに転位が発光層30に達することを抑制することができる。
【0029】
なお、図示はしないが、距離D1は、距離D2よりも小さくてもよい。これにより、発光層30の第1フォトニック結晶52と重なる部分の信頼性を保ちつつ、積層方向に出射される光の強度を強めることができる。また、距離D1および距離D2は、同じであってもよい。これにより、第1孔53および第2孔55を容易に製造できる。
【0030】
第3半導体層60は、図2に示すように、フォトニック結晶層50上に設けられている。第3半導体層60は、フォトニック結晶層50とコンタクト層70との間に設けられている。第3半導体層60の材質は、例えば、第2半導体層40と同じである。第3半導体層60によって、発光層30とコンタクト層70との間の距離を大きくすることができる。これにより、発光層30で発生した光のコンタクト層70による吸収を低減できる。
【0031】
コンタクト層70は、第3半導体層60上に設けられている。コンタクト層70は、第3半導体層60と第2電極82との間に設けられている。コンタクト層70は、積層方向からみて、第1領域50aおよび第2領域50bと重なっている。コンタクト層70は、積層方向からみて、第1フォトニック結晶52および第2フォトニック結晶54と重なっている。
【0032】
コンタクト層70は、例えば、Cがドープされたp型のGaAs層である。コンタクト層70の不純物濃度は、第2半導体層40、フォトニック結晶層50、および第3半導体層60の不純物濃度よりも高い。コンタクト層70の抵抗率は、第2半導体層40、フォトニック結晶層50、および第3半導体層60の抵抗率よりも低い。
【0033】
第1電極80は、基板10の下に設けられている。基板10は、第1電極80と第1半導体層20との間に設けられている。基板10は、第1電極80とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極80は、基板10を介して、第1半導体層20と電気的に接続されている。第1電極80としては、例えば、基板10側から、Ti層、Au層、Pt層、Au層の順序で積層されたものなどを用いる。第1電極80は、発光層30に電流を注入するための一方の電極である。
【0034】
第2電極82は、コンタクト層70上に設けられている。コンタクト層70は、第2電極82とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極82は、コンタクト層70、第3半導体層60、およびフォトニック結晶層50を介して、第2半導体層40と電気的に接続されている。第2電極82としては、例えば、コンタクト層70側から、Ti層、Al層、Au層の順序で積層されたものなどを用いる。第2電極82は、発光層30に電流を注入するための他方の電極である。
【0035】
第2電極82には、開口部84が形成されている。開口部84は、積層方向からみて、第2フォトニック結晶54と重なっている。第2電極82は、積層方向からみて、第1フォトニック結晶52と重なっている。
【0036】
1.2. 動作
発光装置100では、p型の第2半導体層40、i型の発光層30、およびn型の第1半導体層20により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極80と第2電極82との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層30に電流が注入されて発光層30において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層30で発生した光は、利得を受けつつ発光層30を伝搬し、第1フォトニック結晶52および第2フォトニック結晶54の分布帰還効果(各フォトニック結晶における面内方向への回折)により面内方向に共振することで、レーザー発振する。
【0037】
レーザー発振した光は、第2フォトニック結晶54によるフォトニック結晶の効果により、面内方向と異なる方向に出射される。第2フォトニック結晶54は、レーザー発振した光を、例えば、1次の回折を用いて積層方向に出射させる。第1半導体層20側に向かう光は、第1半導体層20で反射されて、コンタクト層70側から出射される。発光装置100は、開口部84から光を出射する。
【0038】
図1に示す例では、積層方向からみて、第1フォトニック結晶52の第1孔53は、X軸方向およびY軸方向に正方格子状に配列され、第2フォトニック結晶54の第2孔55は、X軸およびY軸に対して45°傾斜した傾斜面56を有している。そのため、第2フォトニック結晶54において、X軸方向の共振と、Y軸方向の共振と、を接続することができ、光の二次元的な共振を強めることができる。
【0039】
なお、図示はしないが、発光装置100は、図示せぬ実装基板に、ジャンクションダウン実装されていてもよい。この場合、第1半導体層20は、DBRを構成せず、第2半導体層40または第3半導体層60がDBRを構成していてもよい。
【0040】
また、上記では、InGaAs系の発光層30について説明したが、発光層30としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、InGaN系、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaInP系などの半導体材料を用いることができる。
【0041】
1.3. 作用効果
例えば、分布帰還制御フォトニック結晶と、面発光制御フォトニック結晶と、が重畳され、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔が、分布帰還制御フォトニック結晶を形成する隣り合う空孔の間に配置されている場合、分布帰還制御のフォトニック結晶においては、本来の周期性は保持されていない。この場合、平面視において同一の領域に、2種類のフォトニック結晶構造が混在するため、少なくとも一方のフォトニック結晶において、他方のフォトニック結晶の影響により、本来の周期構造が保持されず、散乱損失が生じる。
【0042】
発光装置100では、第1導電型を有する第1半導体層20と、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体層40と、第1半導体層20と第2半導体層40との間に設けられた発光層30と、第2半導体層40の発光層30と反対側に設けられたフォトニック結晶層50と、を有する。フォトニック結晶層50は、発光層30で発光した光を、面内方向に共振させ、かつ面内方向と異なる方向に出射させない第1フォトニック結晶52が設けられた第1領域50aと、積層方向からみて第1領域50aと重ならず、発光層30で発光した光を面内方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶54が設けられた第2領域50bと、を有する。
【0043】
そのため、発光装置100では、第1フォトニック結晶52によって共振する光の第2フォトニック結晶54による散乱、すなわち、第1フォトニック結晶52において、本来の周期性が保持されないことによる散乱損失、を低減できる。これにより、閾値の上昇およびスロープ効率の低下を抑制できる。
【0044】
さらに、発光装置100では、2つのフォトニック結晶52,54を用いるので、発光層30で発生した光は、多波長化される。そのため、スペックルの影響を小さくすることができる。
【0045】
さらに、発光装置100では、発光層30で発生した光を面内方向に共振させる第1フォトニック結晶52と、発光層30で発生した光を面内方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶54と、を個別に制御して最適化することができる。
【0046】
さらに、発光装置100では、積層方向からみて第1フォトニック結晶52と重なる領域から光が出射されないため、その分、低損失で効率的に光を共振させることができる。そのため、より小さい面積でレーザー発振させることができる。そのため、例えば、複数の発光装置100をアレイ状に配列させた場合、アレイの間隔が小さくなり、小さな領域ごとに光の強度を調整することができる。
【0047】
発光装置100では、第2フォトニック結晶54は、発光層30で発生した光を、積層方向に出射する。そのため、発光装置100では、発光層30で発生した光を、1次の回折を用いて出射できる。
【0048】
発光装置100では、第2電極82と、フォトニック結晶層50と第2電極82との間に設けられたコンタクト層70と、を有し、積層方向からみて、コンタクト層70は、第1領域50aおよび第2領域50bと重なっている。そのため、発光装置100では、例えばコンタクト層が第1領域と重なっていない場合に比べて、第1フォトニック結晶52によって面内方向に共振する光の強度を強めることができる。
【0049】
発光装置100では、積層方向からみて、第1領域50aは、第2領域50bを囲んでいる。そのため、発光装置100では、第1フォトニック結晶52によって面内方向に共振する光を、効率よく第2フォトニック結晶54に導くことができる。
【0050】
発光装置100では、積層方向からみて、第1孔53の形状は、回転対称性を有し、第2孔55の形状は、回転対称性を有さない。そのため、発光装置100では、発光装置100の真上において、対称性が良すぎて光が打ち消し合うことで生じる光らないスポットを抑制できる。
【0051】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0052】
図3に示すように、基板10上に、第1半導体層20、発光層30、および第2半導体層40を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0053】
次に、第2半導体層40上に、フォトニック結晶層50をエピタキシャル成長させる。フォトニック結晶層50のエピタキシャル成長の途中で、パターニングを行うことにより、第1孔53および第2孔55を形成する。これにより、第1フォトニック結晶52および第2フォトニック結晶54を有するフォトニック結晶層50を形成することができる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチング、電子線リソグラフィーおよびエッチングによって行われる。
【0054】
図2に示すように、フォトニック結晶層50上に、第3半導体層60およびコンタクト層70を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0055】
次に、基板10の下に、第1電極80を形成する。次に、コンタクト層70上に、第2電極82を形成する。第1電極80および第2電極82は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法によって形成される。なお、第1電極80と第2電極82との形成の順序は、特に限定されない。
【0056】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0057】
3. 発光装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。
【0058】
以下、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200において、上述した本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2,第3変形例に係る発光装置において、同様である。
【0059】
上述した発光装置100では、第1フォトニック結晶52は、発光層30で発生した光を分布帰還させた。
【0060】
これに対し、発光装置200では、第1フォトニック結晶52は、発光層30で発生した光を分布反射させる。
【0061】
発光装置200では、図4に示すように、第1孔53は、コンタクト層70の上面から第1半導体層20まで貫通している。図示の例では、第1孔53の底面は、積層方向において、第1半導体層20の上面と下面との間に位置している。
【0062】
発光装置200では、イオン注入により、プロトン(H)が注入された注入領域210を有している。注入領域210は、発光層30、第2半導体層40、フォトニック結晶層50の第2領域50b、第3半導体層60、およびコンタクト層70の側方に設けられている。注入領域210は、例えば、積層方向からみて、発光層30、第2半導体層40、第2領域50b、第3半導体層60、およびコンタクト層70を囲んでいる。フォトニック結晶層50の第1領域50aは、注入領域210で構成されている。注入領域210は、絶縁性を有している。
【0063】
第1フォトニック結晶52の第1孔53は、注入領域210に形成されている。複数の第1孔53は、半導体層と貫通孔との間の大きな屈折率差により、フォトニックバンドギャップを形成している。
【0064】
コンタクト層70は、積層方向からみて、第2領域50bと重なっている。コンタクト層70は、積層方向からみて、第1領域50aと重なっていない。第2電極82は、積層方向からみて、第2領域50bと重なっている。第2電極82は、積層方向からみて、第1領域50aと重なっていない。
【0065】
発光層30で発生した光は、第1フォトニック結晶52によって面内方向に分布反射され、積層方向からみて第1フォトニック結晶52に囲まれた領域で、ファブリ・ペロー共振する。第2フォトニック結晶54は、ファブリ・ペロー共振した光を、例えば、積層方向に出射する。なお、積層方向からみて、第2フォトニック結晶54から離れる方向に伝搬する光は、第1フォトニック結晶52と重なる領域においてフォトニックバンドギャップにより徐々に減衰する。
【0066】
発光装置200では、積層方向からみて、コンタクト層70は、第1領域50aと重ならず、第2領域50bと重なっている。そのため、発光装置200では、第1フォトニック結晶52に電流が注入され難く、発光領域ではないため、転位等が発生しても光への影響は小さく、信頼性を高めることができる。なお、第1領域50aに電流が注入されないことにより、平面視においてその領域と重なる領域の発光層30の吸収が発生する場合がある。これを抑制するために、第1領域50aの発光層30に対しZn拡散等の処理を行ってもよい。Zn拡散により、この領域の発光層30の量子井戸構造を崩し、吸収損失を低減させることができる。
【0067】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する
図5は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す平面図である。
【0068】
発光装置300では、図5に示すように、反射部310を有している点において、上述した発光装置100と異なる。なお、便宜上、図5では、フォトニック結晶層50および反射部310以外の部材の図示を省略している。
【0069】
反射部310は、積層方向からみて、フォトニック結晶層50の第1領域50aを囲んでいる。反射部310は、積層方向からみて、第1フォトニック結晶52を囲んでいる。反射部310は、発光層30の側方に設けられている。反射部310の材質は、例えば、金属、誘電体などである。反射部310は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成される。
【0070】
反射部310は、発光層30で発生した光を反射させる。具体的には、反射部310は、発光層30で発生し、積層方向からみて、第2フォトニック結晶54から離れる方向に伝搬する光を、反射させる。
【0071】
発光装置300では、積層方向からみて第1領域50aを囲み、発光層30で発光した光を反射させる反射部310を有する。そのため、発光装置300では、積層方向からみて、第1領域50aから漏れる光を、第1領域50aに戻すことができる。
【0072】
3.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図6では、第1フォトニック結晶52の第1孔53および第2フォトニック結晶54の第2孔55以外の部材の図示を省略している。
【0073】
上述した発光装置100では、図1に示すように、積層方向からみて、第1フォトニック結晶52の複数の第1孔53は、正方格子状に配列されていた。第2フォトニック結晶54の複数の第2孔55は、正方格子状に配列されていた。
【0074】
これに対し、発光装置400では、図6に示すように、積層方向からみて、複数の第1孔53は、正三角格子状に配列されている。複数の第2孔55は、正三角格子状に配列されている。
【0075】
図示の例では、隣り合う第1孔53は、X軸方向に並んでいる。隣り合う第2孔55は、X軸方向に並んでいる。積層方向からみて、第2孔55の形状は、菱形である。第2孔55は、第1傾斜面57と、第2傾斜面58と、を有している。
【0076】
第1傾斜面57は、X軸に対して(+X軸方向に対して)30°傾斜している。第1傾斜面57は、例えば、+X軸方向に伝搬する光を、矢印Aのように、X軸に対して60°傾斜した方向に反射させる。
【0077】
第2傾斜面58は、X軸に対して60°傾斜している。第2傾斜面58は、例えば、+X軸方向に伝搬する光を、矢印Bのように、X軸に対して120°傾斜した方向に反射させる。
【0078】
発光装置400では、第2フォトニック結晶54において、X軸方向の共振と、X軸に対して60°傾斜した方向の共振と、X軸に対して120°傾斜した方向の共振と、を接続することができる。このように、発光装置400では、互いに異なる3方向の共振を接続することができ、光の二次元的な共振を強めることができる。
【0079】
なお、互いに異なる3方向の共振を接続することができれば、傾斜面57,58のX軸に対する傾斜角は、特に限定されない。図7に示すように、積層方向からみて、第1傾斜面57は、X軸に対して90°傾斜していてもよく、第2傾斜面58は、X軸に対して60°傾斜していてもよい。また、図示はしないが、積層方向からみて、第1傾斜面57は、X軸に対して90°傾斜していてもよく、第2傾斜面58は、X軸に対して120°傾斜していてもよい。また、第1傾斜面57は、X軸に対して150°傾斜していてもよく、第2傾斜面58は、X軸に対して180°傾斜していても(すなわち平行であっても)よい。また、第1傾斜面57は、X軸に対して30°傾斜していてもよく、第2傾斜面58は、X軸に対して0°傾斜していても(すなわち平行であっても)よい。
【0080】
4. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るプロジェクター500を模式的に示す図である。
【0081】
プロジェクター500は、図8に示すように、例えば、光源510と、光変調装置520と、クロスダイクロイックプリズム530と、投射装置540と、筐体550と、を有している。プロジェクター500は、例えば、バックライト型のプロジェクターである。
【0082】
光源510は、3つ設けられている。3つの光源510のうちの第1光源510Rは、赤色光を出射する。3つの光源510のうちの第2光源510Gは、緑色光を出射する。3つの光源510のうちの第3光源510Bは、青色光を出射する。
【0083】
光源510は、例えば、PCSELアレイ512と、サブマウント514と、ベース516と、ペルチェモジュール517と、ヒートシンク518と、冷却部519と、を有している。
【0084】
PCSELアレイ512は、例えば、複数の発光装置100を有している。複数の発光装置100は、アレイ状に配列されている。複数の発光装置100の数は、特に限定されない。複数の発光装置100の基板10は、共通であってもよい。
【0085】
第1光源510RのPCSELアレイ512は、発光装置100として、赤色光を出射する第1発光装置100Rを有している。第2光源510GのPCSELアレイ512は、発光装置100として、緑色光を出射する第2発光装置100Gを有している。第3光源510BのPCSELアレイ512は、発光装置100として、青色光を出射する第3発光装置100Bを有している。
【0086】
サブマウント514は、PCSELアレイ512を支持している。サブマウント514の材質は、例えば、SiCである。ベース516は、サブマウント514を支持している。サブマウント514の材質は、例えば、銅である。ペルチェモジュール517は、サブマウント514を支持している。ヒートシンク518は、ペルチェモジュール517を支持している。冷却部519は、ヒートシンク518を冷却する。冷却部519は、例えば、送風機である。
【0087】
光源510では、発光装置100で発生した熱を、サブマウント514、ベース516、およびペルチェモジュール517を介して、ヒートシンク518から放熱させることができる。
【0088】
光変調装置520には、光源510から出射された光が入射する。光変調装置520は、光源510の数に対応して、3つ設けられている。光変調装置520は、入射した光を
画像情報に応じて変調させる。光変調装置520は、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。
【0089】
クロスダイクロイックプリズム530には、光変調装置520で変調された3つの色光が入射する。クロスダイクロイックプリズム530は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成されている。クロスダイクロイックプリズム530の内面には、赤色光を反射する誘電体多層膜と、青色光を反射する誘電体多層膜とが、設けられている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。
【0090】
投射装置540には、クロスダイクロイックプリズム530で合成された光が入射する。投射装置540は、合成された光を、例えば、図示せぬスクリーン上に投射する。投射装置540は、例えば、投射レンズである。
【0091】
筐体550は、光源510、光変調装置520、クロスダイクロイックプリズム530、および投射装置540の一部を収容している。筐体550の形状は、特に限定されない。
【0092】
5. プロジェクターの変形例
次に、本実施形態の変形例に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態の変形例に係るプロジェクター600を模式的に示す図である。
【0093】
以下、本実施形態の変形例に係るプロジェクター600において、上述した本実施形態に係るプロジェクター500の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0094】
上述したプロジェクター500では、図8に示すように、光源510は、3つ設けられ、第1光源510Rは、赤色光を出射し、第2光源510Gは、緑色光を出射し、第3光源510Bは、青色光を出射した。
【0095】
これに対し、プロジェクター600では、図9に示すように、1つの光源510は、赤色光、緑色光、および青色光を出射する。そのため、プロジェクター600は、例えばプロジェクター500に比べて、小型化を図ることができる。
【0096】
光源510は、複数設けられている。図示の例では、複数の光源510のヒートシンク518は、共通である。複数の光源510の冷却部519は、共通である。PCSELアレイ512は、例えば、赤色光を出射する第1発光装置100Rと、緑色光を出射する第2発光装置100Gと、青色光を出射する第3発光装置100Bと、を有している。第1発光装置100R、第2発光装置100G、および第3発光装置100Bは、例えば、この順でマトリックス状に配置されている。複数の発光装置100の数は、特に限定されない。1つの発光装置100は、例えば、第2フォトニック結晶領域において、3次の回折により面内方向に共振させつつ、1次および2次の回折(それぞれX軸方向・Y軸方向を有する)により、積層方向に対して傾いた合計4方向に光を出射する。
【0097】
光変調装置520は、1つだけ設けられている。光源510から出射されて光は、光変調装置520に入射する。光変調装置520から出射された光は、クロスダイクロイックプリズムを介さずに、投射装置540に入射する。
【0098】
なお、図示はしないが、光源510と光変調装置520との間の光路に、マイクロレンズアレイやプリズムなどの光学素子が設けられていてもよい。
【0099】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、反射型のライトバルブを用いてもよいし、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)などの液晶以外のライトバルブを用いてもよい。なお、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0100】
また、光変調装置520を用いずに、光源510の発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、直接的に映像を形成してもよい。
【0101】
また、光源510を、光源510からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0102】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクターにも用いられることが可能である。上述した実施形態に係る発光装置は、例えば、三次元造形装置、ヘッドマウントディスプレイ、植物の構造性を促進させるための光源、屋内外の照明、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いる脈計測機器などのセンシング機器、通信機器等の光源に用いられる。
【0103】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0104】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0105】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0106】
発光装置の一態様は、
第1導電型を有する第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第2半導体層の前記発光層と反対側に設けられたフォトニック結晶層と、
を有し、
前記フォトニック結晶層は、
前記発光層で発光した光を、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向と直交する方向に共振させ、かつ前記直交する方向と異なる方向に出射させない第1フォトニック結晶が設けられた第1領域と、
前記積層方向からみて前記第1領域と重ならず、前記発光層で発光した光を前記直交する方向と異なる方向に出射させる第2フォトニック結晶が設けられた第2領域と、
を有する。
【0107】
この発光装置によれば、第1フォトニック結晶によって共振する光の第2フォトニック結晶による散乱を低減できる。
【0108】
発光装置の一態様において、
前記第2フォトニック結晶は、前記発光層で発生した光を、前記積層方向に出射してもよい。
【0109】
この発光装置によれば、発光層で発生した光を、1次の回折を用いて出射できる。
【0110】
発光装置の一態様において、
電極と、
前記フォトニック結晶層と前記電極との間に設けられたコンタクト層と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記コンタクト層は、前記第1領域および前記第2領域と重なっていてもよい。
【0111】
この発光装置によれば、第1フォトニック結晶によって面内方向に共振する光の強度を強めることができる。
【0112】
発光装置の一態様において、
電極と、
前記フォトニック結晶層と前記電極との間に設けられたコンタクト層と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記コンタクト層は、前記第1領域と重ならず、前記第2領域と重なっていてもよい。
【0113】
この発光装置によれば、第1フォトニック結晶に電流が注入され難く、信頼性を高めることができる。
【0114】
発光装置の一態様において、
前記積層方向からみて、前記第1領域は、前記第2領域を囲んでいてもよい。
【0115】
この発光装置によれば、第1フォトニック結晶によって面内方向に共振する光を、効率よく第2フォトニック結晶に導くことができる。
【0116】
発光装置の一態様において、
前記積層方向からみて前記第1領域を囲み、前記発光層で発光した光を反射させる反射部を有してもよい。
【0117】
この発光装置によれば、積層方向からみて、第1領域から漏れる光を、第1領域に戻すことができる。
【0118】
発光装置の一態様において、
前記第1フォトニック結晶は、周期的に配列された複数の第1孔を有し、
前記第2フォトニック結晶は、周期的に配列された複数の第2孔を有し、
前記積層方向からみて、前記複数の第1孔の各々の形状と、前記複数の第2孔の各々の形状とは、異なってもよい。
【0119】
発光装置の一態様において、
前記積層方向からみて、
前記複数の第1孔の各々の形状は、回転対称性を有し、
前記複数の第2孔の各々の形状は、回転対称性を有さなくてもよい。
【0120】
この発光装置によれば、発光装置の真上において、対称性が良すぎて光が打ち消し合うことで生じる光らないスポットを抑制できる。
【0121】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0122】
10…基板、20…第1半導体層、30…発光層、40…第2半導体層、50…フォトニック結晶層、50a…第1領域、50b…第2領域、52…第1フォトニック結晶、53…第1孔、54…第2フォトニック結晶、55…第2孔、56…傾斜面、57…第1傾斜面、58…第2傾斜面、60…第3半導体層、70…コンタクト層、80…第1電極、82…第2電極、84…開口部、100…発光装置、100R…第1発光装置、100G…第2発光装置、100B…第3発光装置、200…発光装置、210…注入領域、300…発光装置、310…反射部、400…発光装置、500…プロジェクター、510…光源、510R…第1光源、510G…第2光源、510B…第3光源、512…PCSELアレイ、514…サブマウント、516…ベース、517…ペルチェモジュール、518…ヒートシンク、519…冷却部、520…光変調装置、530…クロスダイクロイックプリズム、540…投射装置、550…筐体、600…プロジェクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9