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  • 特開-車両の走行シミュレーション方法 図1
  • 特開-車両の走行シミュレーション方法 図2
  • 特開-車両の走行シミュレーション方法 図3
  • 特開-車両の走行シミュレーション方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084408
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両の走行シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198668
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩人
(57)【要約】
【課題】車両の特性を反映した結果が得られる車両の走行シミュレーション方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる車両の走行シミュレーション方法は、車両特性を模擬した車両モデルを目標コースに沿って仮想的に走行させる車両の走行シミュレーション方法において、複数の目標座標と前記目標座標に対応する目標速度とを設定した前記目標コースを作成し、前記目標座標における前記車両モデルの車速と、前記目標座標に対応する前記目標速度との速度偏差に基づいて、アクセル及びブレーキの少なくとも一方の操作量を設定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両特性を模擬した車両モデルを目標コースに沿って仮想的に走行させる車両の走行シミュレーション方法において、
複数の目標座標と前記目標座標に対応する目標速度とを設定した前記目標コースを作成し、
前記目標座標における前記車両モデルの車速と、前記目標座標に対応する前記目標速度との速度偏差に基づいて、アクセル及びブレーキの少なくとも一方の操作量を設定する、車両の走行シミュレーション方法。
【請求項2】
前記目標座標が間隔をあけて前記目標コースに設定されている、請求項1に記載の車両の走行シミュレーション方法。
【請求項3】
対応する前記目標速度が低い前記目標座標ほど隣接する前記目標座標との間隔が小さくなるように前記目標座標を設定する、請求項2に記載の車両の走行シミュレーション方法。
【請求項4】
実車両が予め定めたコースを走行したときに所定時間毎にコース座標と前記実車両の車速を取得し、
所定時間毎に前記取得した前記コース座標及び前記実車両の車速の時間軸におけるデータの欠損を補間し、
時間軸におけるデータの欠損を補間した前記コース座標及び前記実車両の車速に基づいて、前記目標座標及び前記目標速度を決定する、請求項2に記載の車両の走行シミュレーション方法。
【請求項5】
前記目標コースに設定する前記目標座標の間隔の逆数を距離周波数とすると、前記実車両の車速と前記距離周波数との対数近似式に基づいて前記目標座標の間隔を決定する、請求項4に記載の車両の走行シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の特性や車両に装着したタイヤの特性を評価するために、実際の車両を用いることなくコンピュータ上にて車両の特性を模擬した車両モデルを仮想的に走行させる走行シミュレーションが行われている。具体的には、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作を模擬したドライバモデルを用いて、車両モデルを所定の走行パターンで走行させることで、車両やタイヤの特性評価が行われている。
【0003】
このような車両の走行シミュレーションでは、車両の特性を反映した結果が得られるように、車両モデルを適切にコントロールする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5467027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、車両の特性を反映した結果が得られる車両の走行シミュレーション方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の車両の走行シミュレーション方法は、車両特性を模擬した車両モデルを目標コースに沿って仮想的に走行させる車両の走行シミュレーション方法において、複数の目標座標と前記目標座標に対応する目標速度とを設定した前記目標コースを作成し、前記目標座標における前記車両モデルの車速と、前記目標座標に対応する前記目標速度との速度偏差に基づいて、アクセル及びブレーキの少なくとも一方の操作量を設定する方法である。
【発明の効果】
【0007】
上記の車両の走行シミュレーション方法では、車両の特性を反映したシミュレーション結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の車両の走行シミュレーション方法を実行する装置を示す図
図2】実施形態の車両の走行シミュレーション方法のフローチャート
図3】目標コースの作成方法を示すフローチャート
図4】実車両の車速と距離周波数との関係の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0010】
(1)シミュレーション装置の構成
図1に実施形態の車両の走行シミュレーション方法を実行するシミュレーション装置10を示す。シミュレーション装置10は、処理部11と、記憶部12と、実施形態のシミュレーション方法を実行するために必要な情報を入力するための入力装置13と、シミュレーション結果を表示する表示装置14とを有する。
【0011】
記憶部12には、実施形態のシミュレーション方法を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0012】
処理部11は、記憶部12に記憶されているプログラムやデータを読み込んで以下のシミュレーション方法を実行する。
【0013】
(2)車両の走行シミュレーション方法
次に、実施形態の車両の走行シミュレーション方法について図2に基づいて説明する。
【0014】
まず、ステップS1において、複数の目標座標にそれぞれ目標速度が設定されたシミュレーションを実行するためのコース(目標コース)を作成する(ステップS1)。目標コースには、コース上に間隔をあけて設けられた複数の目標座標と、各目標座標に対応して設けられた目標速度とが設定されている。目標コースの詳細な作成方法については後述する。
【0015】
また、走行シミュレーションを行いたい車両の特性を模擬した車両モデルを作成する(ステップS2)。車両モデルは、検討対象の車両特性をパラメータ化して構築することでリアルタイムに車両動作を再現する仮想上の車両モデルである。なお、目標コースと車両モデルの作成の順序は図2に示す順序に限定されない。
【0016】
そして、シミュレーション装置10は、車両モデルを目標コースに沿って仮想的に走行させる(ステップS3)。
【0017】
具体的には、シミュレーション装置10は、目標コースに設定された目標位置における車両モデルの車速と、当該目標位置に対応付けられた目標速度との車速偏差に基づいて、アクセル及びブレーキペダルの少なくとも一方の操作量の値を車両モデルに対して出力し、車両モデルの車速が目標位置における目標車速となるように車両モデルを操作する。
【0018】
そして、車両モデルに対して出力されたアクセル及びブレーキペダル操作量の値に基づいて、車両モデルの走行状態をコンピュータ上にて演算してシミュレーションすることができる。
【0019】
(3)目標コースの作成
上記のシミュレーション方法における目標コースを作成するステップの内容について図3に基づき説明する。
【0020】
まず、人間のドライバが実車両を所定の走行パターンで試験コースに沿って走行させ、実車両に設けられた速度計などの測定手段によって、所定時間毎(例えば、0.1秒毎)に実車両の位置及び車速を測定する。これにより測定手段は、測定開始時から終了までの間、実車両の試験コース上の位置(以下、コース座標ということもある)と、各コース座標での実車両の車速(以下、実車速ということもある)について、断続的な時系列のデータを取得する(ステップS10)。測定手段で取得されたコース座標と実車速に関するデータは、入力装置13からシミュレーション装置10へ入力される。
【0021】
次いで、ステップS10において取得したコース座標と実車速の断続的な時系列のデータに対して、時間軸におけるデータの欠損を補間して、コース座標と実車速の連続的な時系列データを取得する(ステップS11)。時間軸におけるデータの欠損を補間する方法としては、スプライン補間、ラグランジュ補間、修正秋間補間等の種々の方法があるが、オーバーシュートが発生しにくく生成されるうねりが小さいことなどを考慮すると、本発明においては、修正秋間補間が好適に用いられる。
【0022】
次いで、目標コースに設定する複数の目標座標の間隔を決定する(ステップS12)。目標座標の間隔はステップS11において取得した実車速の連続的な時系列データに基づいて決定する。目標座標の間隔は一定間隔であってもよいが、試験コース上において実車速が低速な領域であるほど目標座標の間隔を狭く設定することが好ましい。
【0023】
例えば、目標コースに設定する目標座標の間隔の逆数を距離周波数とすると、実車速が、0km/h以上30km/h未満の場合に距離周波数を0.1(1/m)に設定し、30km/h以上50km/h未満の場合に距離周波数を0.05(1/m)に設定し、50km/h以上80km/h未満の場合に距離周波数を0.01(1/m)に設定する。つまり、実車速が、0km/h以上30km/h未満の場合、30km/h以上50km/h未満の場合、50km/h以上80km/h未満の場合において、目標座標の間隔をそれぞれ10m、20m、100mに設定し、試験コース上において、実車両の速度が高速な領域では目標座標の間隔を広く設定し、実車速が低速な領域では高速な領域に比べて目標座標の間隔を狭く設定する。
【0024】
他の例として、図4に示すような実車速と距離周波数との対数近似式に基づいて、実車速に対応する距離周波数を決定し、決定した距離周波数に基づいて目標座標の間隔を設定してもよい。このように対数近似式に基づいて距離周波数を決定することで、人間(ドライバー)の感覚を反映した距離周波数に設定することができる。
【0025】
次いで、ステップS12において決定した目標座標の間隔に基づいて、目標コースに設定する複数の目標座標毎に、目標コースの始点から各目標座標までの距離(以下、進行距離ということもある)を算出する(ステップS13)。
【0026】
次いで、ステップS11において取得したコース座標と実車速の連続的な時系列データを、ステップS12で算出した進行距離毎のデータに変換することで、複数の目標座標と目標座標に対応する目標速度とを設定した目標コースを取得する(ステップS14)。つまり、ステップS11において取得したコース座標と実車速の連続的な時系列データから、進行距離に相当する位置にあるコース座標とその位置における実車速を抽出し、抽出したコース座標及び実車速を目標座標及び目標速度とする。
【0027】
このような目標座標及び目標速度の抽出を、目標座標毎に算出した全ての進行距離について実行することで、複数の目標座標と、各目標座標に対応する目標速度とが設定された目標コースが作成される。このようにして作成された目標コースでは、目標速度が低い目標座標ほど隣接する目標座標との間隔が小さくなるように、複数の目標座標が設定されている。
【0028】
(4)実施形態の効果
以上のように、目標座標と目標座標に対応する目標速度とを設定した目標コースに沿って車両モデルを仮想的に走行させるため、同一のドライバが車両モデルを実際の試験コースに沿って走行させるという解析を机上で行うことができ、車両モデルに設定した車両特性を反映したシミュレーション結果を得ることができる。
【0029】
本実施形態では、目標コースにおいて間隔をあけて目標座標を設定しているため、計算コストを抑えつつ、車両特性を解析することができる。また、本実施形態では、目標速度が低い目標座標ほど隣接する目標座標との間隔が小さくなるように、間隔をあけて各目標座標を設定しているため、車両モデルの走行を正確にシミュレーションすることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…評価装置
11…処理部
12…記憶部
13…入力装置
14…表示装置
図1
図2
図3
図4