(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084415
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ケーブル巻回装置及び水中ロボット
(51)【国際特許分類】
B65H 75/48 20060101AFI20240618BHJP
H02G 11/02 20060101ALI20240618BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240618BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B65H75/48 E
H02G11/02
B63C11/00 B
B63C11/48 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198679
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】390008338
【氏名又は名称】広和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】新堀 貴
【テーマコード(参考)】
3F068
5G371
【Fターム(参考)】
3F068AA14
3F068BA11
3F068DA04
3F068EA04
3F068FA06
3F068JA07
5G371AA05
5G371BA05
5G371CA04
(57)【要約】
【課題】スリップリングを用いないケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボットを提供すること。
【解決手段】ケーブル4の先端に接続された作業機と、ケーブル巻回装置3と、を備えた、水中ロボットにおいて、ケーブル巻回装置3は、巻回部31と非巻回部32とを有しており、ケーブル4の基端は外部接続用端子に固定されており、巻回部31は、ケーブル4の巻出し長さ分を巻取るドラム33を、有しており、非巻回部32は、ケーブル4の所定長さ分を渦巻き状に収容する空間部34を、有しており、非巻回部32は、ドラム33がケーブル4を巻出すように回転する間は所定長さ分の渦巻きを半径方向に緩め、ドラム33がケーブル4を巻取るように回転する間は所定長さ分の渦巻きを半径方向に締めるようになっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回状態で保持したケーブルの巻出し及び巻取りを行うケーブル巻回装置において、
前記ケーブルは、巻出される側の先端が作業機に連結されるようになっており、且つ、基端が外部接続用端子に接続されるようになっており、
巻回部と、非巻回部と、を備えており、
前記巻回部は、前記ケーブルを巻回状態で保持するとともに、前記ケーブルの前記先端から途中部分までの内の巻出し長さ分を、巻出したり巻取ったりする、ドラムを、有しており、
前記非巻回部は、前記ケーブルの前記途中部分から前記基端までの内の所定長さ分を、渦巻き状で収容する、空間部を、有しており、
前記ドラムと前記空間部との間には、前記ドラムと共に回転する仕切り部材が介設されており、
前記ケーブルの前記途中部分は、前記仕切り部材に固定されており、
前記空間部は、前記ドラムと共に回転する回転軸を、有しており、
前記所定長さ分の渦巻きは、前記空間部の前記回転軸を中心として形成されており、
前記非巻回部は、前記ドラムが前記ケーブルを巻出すように回転する間は前記所定長さ分の渦巻きを前記空間部内で半径方向に緩め、前記ドラムが前記ケーブルを巻取るように回転する間は前記所定長さ分の渦巻きを前記空間部内で半径方向に締めるようになっている、
ことを特徴とするケーブル巻回装置。
【請求項2】
前記ドラムは、前記ケーブルの前記巻出し長さ分を第1周方向に巻取るようになっており、
前記所定長さ分の渦巻きは、前記ケーブルの前記基端側が半径方向外側に来るように、半径方向内側から半径方向外側に向けて、前記第1周方向とは反対の第2周方向に、巻かれた形態を有している、
請求項1記載のケーブル巻回装置。
【請求項3】
前記所定長さ分は、前記ドラムが前記ケーブルを巻出す前において、第2巻数が第1巻数と同じ又はそれ以上となる長さに、設定されており、
前記第1巻数は、前記ドラムに巻回された前記巻出し長さ分の前記ケーブルの巻数であり、
前記第2巻数は、前記空間部における前記ケーブルの渦巻き形態における巻数である、
請求項1記載のケーブル巻回装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載のケーブル巻回装置を内蔵しており、
前記ケーブルは、前記先端が前記作業機に連結されており、且つ、前記基端が前記外部接続用端子に接続されており、
前記ケーブル巻回装置は、前記作業機の水中への放出及び水中からの回収を行うために前記ケーブルの巻出し及び巻取りを行うようになっている、
ことを特徴とする水中ロボット。
【請求項5】
前記巻出し長さ分が、前記作業機を放出する際の最大放出距離に設定されている、
請求項4記載の水中ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回状態で保持したケーブルの巻出し及び巻取りを行うケーブル巻回装置、及び、該ケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボット、に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボットは、公知である。そのような水中ロボットにおいて、ケーブル巻回装置は、ケーブルの先端に連結された作業機を、ロボット本体から放出したりロボット本体内に回収したりするために、ケーブルの巻出し及び巻取りを行うようになっている。
【0003】
ところで、ケーブルは、一般に、多数本の電線が束ねられた形態を有している。そして、従来のケーブル巻回装置においては、ケーブルと外部電源の接続用端子(外部接続用端子)との接続に、スリップリングが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、スリップリングによる接続では、ノイズが発生しやすい、また、装置構成が複雑である故に故障しやすい、という不具合がある。
【0006】
本発明は、スリップリングを用いないケーブル巻回装置、及び、該ケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボット、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、巻回状態で保持したケーブルの巻出し及び巻取りを行うケーブル巻回装置において、
前記ケーブルは、巻出される側の先端が作業機に連結されるようになっており、且つ、基端が外部接続用端子に接続されるようになっており、
巻回部と、非巻回部と、を備えており、
前記巻回部は、前記ケーブルを巻回状態で保持するとともに、前記ケーブルの前記先端から途中部分までの内の巻出し長さ分を、巻出したり巻取ったりする、ドラムを、有しており、
前記非巻回部は、前記ケーブルの前記途中部分から前記基端までの内の所定長さ分を、渦巻き状で収容する、空間部を、有しており、
前記ドラムと前記空間部との間には、前記ドラムと共に回転する仕切り部材が介設されており、
前記ケーブルの前記途中部分は、前記仕切り部材に固定されており、
前記空間部は、前記ドラムと共に回転する回転軸を、有しており、
前記所定長さ分の渦巻きは、前記空間部の前記回転軸を中心として形成されており、
前記非巻回部は、前記ドラムが前記ケーブルを巻出すように回転する間は前記所定長さ分の渦巻きを前記空間部内で半径方向に緩め、前記ドラムが前記ケーブルを巻取るように回転する間は前記所定長さ分の渦巻きを前記空間部内で半径方向に締めるようになっている、
ことを特徴としている。
【0008】
本発明の第2態様は、前記第1態様のケーブル巻回装置を内蔵しており、
前記ケーブルは、前記先端が前記作業機に連結されており、且つ、前記基端が前記外部接続用端子に接続されており、
前記ケーブル巻回装置は、前記作業機の水中への放出及び水中からの回収を行うために前記ケーブルの巻出し及び巻取りを行うようになっている、
ことを特徴とする水中ロボットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様及び第2態様によれば、ケーブル巻回装置によるケーブルの巻出し及び巻取りの作業を、ケーブルの基端が不動のまま、実行できる。したがって、本発明によれば、ケーブルの基端が外部接続用端子に固定されていても、ケーブルの巻出し及び巻取りを、支障なく実行できる。すなわち、本発明によれば、ケーブルの外部との接続を、スリップリングを用いることなく、実現できる。よって、スリップリングを用いた場合の不具合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の水中ロボットの部分透視側面図である。
【
図3】
図2のIII-III断面図、すなわち、ケーブル巻回装置の縦断面図である。
【
図6】作業機を放出する前の状態のケーブル巻回装置におけるケーブルのみを示す斜視図である。
【
図7】作業機の放出作業途中の状態のケーブル巻回装置の縦断面図であり、
図3に対応する図である。
【
図10】作業機を放出した後の状態のケーブル巻回装置におけるケーブルのみを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明のケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボットに関するものである。
図1は、水中ロボット1の部分透視側面図である。この水中ロボット1は、前後に延びた円筒状形態のロボット本体10を有しており、ケーブル4の巻出し及び巻取りを行うケーブル巻回装置3を内蔵している。ケーブル4の先端41には作業機2が連結されている。ケーブル巻回装置3は、作業機2をロボット本体10から放出したりロボット本体10内に回収したりするために、ケーブル4の巻出し及び巻取りを行うようになっている。
【0012】
本体10の前端面11は、前方に向かった半球面の形態を有している。本体10の後端面12には、推力プロペラ13が設けられている。本体10全体は、耐圧構造を有している。なお、本体10内には、水中ロボット1の作動に必要なその他の機器、例えば、プロペラ13を駆動する駆動モータ(図示せず)、ケーブル巻回装置3を駆動する駆動モータ91(
図2)、作業機2を制御する制御装置(図示せず)などが、設けられている。
【0013】
作業機2は、水中において所望の作業を行うための機器である。作業機2としては、例えば、探査を行うためのセンサーを使用できるが、これに限るものではない。
【0014】
図2は、ケーブル巻回装置3の斜視図である。
図2は、作業機2を放出する前の状態のケーブル巻回装置3を示している。なお、
図2では、作業機2の図示を省略している。ケーブル巻回装置3は、ケーブル4を巻回状態で保持するようになっており、ケーブル4の巻出し及び巻取りを行うようになっている。「巻出し」とは、ケーブル4を矢印A方向に前進させることを意味し、「巻取り」とは、ケーブル4を矢印B方向に後退させることを意味する。ケーブル4は、多数本の電線が束ねられた形態を有している。そして、
図1に示されるように、ケーブル4の先端41には作業機2が連結されており、ケーブル4の基端42はロボット本体10内において外部接続用端子5に固定されている。
【0015】
図3は、
図2のIII-III断面図、すなわち、ケーブル巻回装置3の縦断面図である。ケーブル巻回装置3は、巻回部31と非巻回部32とを有している。
【0016】
巻回部31は、外壁301と仕切り壁302との間に構成されており、ケーブル4を巻回するドラム33を有している。ドラム33は、ケーブル4を外周壁331に並べて巻回するようになっている。外周壁331には、ケーブル4が嵌まる溝332が形成されている。仕切り壁302は、ドラム33と共に回転するようになっている。
図4は、
図3のIV-IV断面図であり、巻回部31に巻回されているケーブル4の状態を示す図である。
図4に示されるように、ケーブル4は、ドラム33に対して第1周方向(矢印X方向)に巻回されている。
【0017】
非巻回部32は、仕切り壁302と外壁303との間に構成された空間部34を、有している。空間部34は、ドラム33の回転軸330(
図4)と同一軸である、すなわち、ドラム33と共に回転する、回転軸340を、有している。
図5は、
図3のV-V断面図である。空間部34の幅Wは、1本のケーブル4の太さwに対して、w<W<2wに設定されているので、空間部34は、ケーブル4を半径方向に並んだ渦巻き形態で収容するようになっている。空間部34におけるケーブル4の渦巻き形態は、回転軸340を中心として、ケーブル4の基端42が半径方向外側に来るように、半径方向内側から半径方向外側に向けて、第2周方向(矢印Y方向)に巻かれた形態を有している。第2周方向は、第1周方向とは反対の方向である。
【0018】
ケーブル4は、途中部分43が仕切り壁302に固定されている。
図6は、
図2~
図5に示された状態すなわち作業機2を放出する前の状態のケーブル巻回装置3におけるケーブル4のみを示している。巻回部31のドラム33は、ケーブル4の先端41から途中部分43までの内の巻出し長さ分L1を巻き取っており、非巻回部32の空間部34は、ケーブル4の途中部分43から基端42までの内の所定長さ分L2を渦巻き形態で収容している。巻出し長さ分L1は、作業機2を放出する際の最大放出距離に設定されている。所定長さ分L2は、巻数N2が巻数N1と同じ又はそれ以上となる長さに、設定されている。巻数N1は、ドラム33に巻回された巻出し長さ分L1のケーブル4の巻数である。巻数N2は、空間部34におけるケーブル4の渦巻き形態における巻数である。
図6では、すなわち、作業機2を放出する前の状態では、巻数N2は、
図5に示されるように、「5」である。
図5に示されるように、作業機2を放出する前においては、非巻回部32におけるケーブル4の渦巻き形態は締められている。
【0019】
図7は、作業機2の放出作業途中すなわち巻出し作業途中の状態のケーブル巻回装置3の縦断面図であり、
図3に対応する図である。
図8は、
図7のVIII-VIII断面図であり、巻回部31における巻出し途中のケーブル4の状態を示す図である。
図9は、
図7のIX-IX断面図であり、空間部34に収容されているケーブル4の渦巻き形態を示す図である。
図10は、作業機2を放出した後のケーブル巻回装置3におけるケーブル4のみを示している。
図9に示されるように、ケーブル4の巻出し作業を行うと、非巻回部32におけるケーブル4の渦巻き形態は緩んでいく。
【0020】
上記構成の水中ロボット1においては、ケーブル巻回装置3において、作業機2を放出するためにケーブル4の巻出しを行うと、ドラム33の矢印Y方向への回転に伴って空間部34の回転軸340が回転し、それに伴って、空間部34に収容されているケーブル4が矢印Y方向へ回転するので、空間部34のケーブル4の渦巻き形態が、
図9に示されるように半径方向に緩んでいく。これは、放出作業が完了するまで続く。このとき、ケーブル4の基端42は、空間部34のケーブル4の渦巻き形態が緩むだけであるので、不動である。逆に、作業機2を回収するためにケーブル4の巻取りを行うと、ドラム33の回転に伴って空間部34の回転軸340が回転し、それに伴って、空間部34に収容されているケーブル4が矢印X方向へ回転するので、空間部34のケーブル4の渦巻き形態が、半径方向に締まっていく。これは、回収作業が完了するまで続く。このとき、ケーブル4の基端42は、空間部34のケーブル4の渦巻き形態が締まるだけであるので、不動である。
【0021】
以上のように、上記構成の水中ロボット1のケーブル巻回装置3によれば、ケーブル4の巻出し及び巻取りの作業を、ケーブル4の基端42が不動のまま、実行できる。したがって、上記構成の水中ロボット1によれば、ケーブル4の基端42が外部接続用端子5に固定されていても、ケーブル4の巻出し及び巻取り、すなわち、作業機2の放出及び回収を、支障なく実行できる。すなわち、本発明によれば、ケーブル4の外部との接続を、スリップリングを用いることなく、実現できる。よって、スリップリングを用いた場合の不具合を解消できる。
【0022】
[別の実施形態]
第1実施形態はケーブル巻回装置を内蔵した水中ロボットを示しているが、本発明のケーブル巻回装置は、水中ロボットに用いることができるだけではなく、単独で又はその他の装置に付属させて、用いることができる。
【0023】
(単独で用いる場合)
例えば、高い場所での作業に使用できる。すなわち、本発明のケーブル巻回装置を地上に設置しておき、ケーブルの先端に連結した作業機を巻出して高い場所まで移動させ、その場で作業を行うことができる。
【0024】
(その他の装置の付属として用いる場合)
例えば、消防作業と共に用いることができる。すなわち、本発明のケーブル巻回装置を消防車に搭載しておき、現地においてケーブルの先端に連結した作業機を巻出して要作業場所まで移動させ、その場で作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のケーブル巻回装置は、ケーブルの外部との接続を、スリップリングを用いることなく、実現できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0026】
1 水中ロボット
2 作業機
3 ケーブル巻回装置
302 仕切り壁(仕切り部材)
340 回転軸
31 巻回部
32 非巻回部
33 ドラム
34 空間部
4 ケーブル
41 先端
42 基端
43 途中部分