(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084417
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/574 20210101AFI20240618BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20240618BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240618BHJP
H01G 11/16 20130101ALI20240618BHJP
H01G 2/18 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M50/574
H01M50/296
H01M50/55 101
H01M50/298
H02J7/00 S
H01G11/16
H01G2/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198683
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜一
(72)【発明者】
【氏名】野津 正太
【テーマコード(参考)】
5E078
5G503
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA04
5G503FA14
5G503GA12
5H040AA06
5H040AS05
5H043AA19
5H043BA19
5H043GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイナスターミナルと接続されている部品の誤作動を抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電素子3と、プラスターミナル51およびマイナスターミナル52と、プラスターミナル51と蓄電素子3とマイナスターミナル52とを接続するパワーライン53a,53bと、蓄電素子3およびマイナスターミナル52間のパワーライン53bに設けられた第一半導体スイッチ55と、パワーライン53a,53bに並列に設けられてプラスターミナル51および蓄電素子3間のパワーライン53aとマイナスターミナル52とを接続する配線53cと、配線53cに設けられた第二半導体スイッチ58とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
プラスターミナルおよびマイナスターミナルと、
前記プラスターミナルと前記蓄電素子と前記マイナスターミナルとを接続するパワーラインと、
前記蓄電素子および前記マイナスターミナル間の前記パワーラインに設けられた第一半導体スイッチと、
前記パワーラインに並列に設けられて前記プラスターミナルおよび前記蓄電素子間の前記パワーラインと前記マイナスターミナルとを接続する配線と、
前記配線に設けられた第二半導体スイッチと、を備える。蓄電装置。
【請求項2】
前記第一半導体スイッチおよび前記第二半導体スイッチを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第一半導体スイッチをオフすると同時に、前記第二半導体スイッチをオンする、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第一半導体スイッチがNチャネル型またはNPN型であり、前記第二半導体スイッチがPチャネル型またはPNP型であり、
前記第一半導体スイッチおよび前記第二半導体スイッチのゲートが、共通の配線に接続される、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
外部機器と有線通信する機能を有しない、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
外部機器と無線通信する機能を有する、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車では、エンジン始動用の蓄電装置として鉛蓄電池が用いられているが、特許文献1は、複数のリチウムイオン二次電池(蓄電素子)を備えた蓄電装置を自動二輪車に適用している。
【0003】
特許文献1では、蓄電素子を保護する遮断器として、蓄電素子の負極と蓄電装置のマイナスターミナルとの間に(すなわち、蓄電素子のロウサイドに)、Nチャネル型の電界効果トランジスタ(FET)が設けられている。FETは、過充電や過電流といった蓄電素子の異常事象が発生した場合にオフ(オープン)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、マイナスターミナルと接続されている部品の誤作動を抑制できる蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、プラスターミナルおよびマイナスターミナルと、前記プラスターミナルと前記蓄電素子と前記マイナスターミナルとを接続するパワーラインと、前記蓄電素子および前記マイナスターミナル間の前記パワーラインに設けられた第一半導体スイッチと、前記パワーラインに並列に設けられて前記プラスターミナルおよび前記蓄電素子間の前記パワーラインと前記マイナスターミナルとを接続する配線と、前記配線に設けられた第二半導体スイッチと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、マイナスターミナルの電位が浮くことを防いで、マイナスターミナルと接続されている部品の誤作動を抑制可能な蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】蓄電装置の構成例を示す電気ブロック図である。
【
図5】Nチャネル型FETおよびPチャネル型FETの状態に応じたマイナスターミナル電位を説明する図である。
【
図6】蓄電装置の他の構成例を示す電気ブロック図である。
【
図7】Pチャネル型FETと抵抗素子を有しない例においてマイナスターミナルがグランドと切り離された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の概要を説明する。
【0010】
本発明者らは、Nチャネル型FETのゲート電圧生成用の昇圧回路(チャージポンプ回路やスイッチングレギュレータ回路)の削減のために、
図7のように、Nチャネル型FET55を蓄電素子3のロウサイドに配置することを検討した。
図7の構成では、FET55のオフ時に、蓄電装置50のマイナスターミナル52と電池管理ユニット(BMU)53のグランドGNDとが電気的に分離される。その状況で蓄電装置50が、負荷や車両との接続をなくすと(スタンドアローンの状態になると)、マイナスターミナル52の電位が浮いてしまい、マイナスターミナル52と接続されている部品が、点線で示すノイズ等の影響を受けて誤作動を起こす可能性がある。
【0011】
BMU53を構成する回路基板に、マイナスターミナル52に接続されて、外部充電器(図示せず)の接続有無を検知するスイッチ素子56が設けられる場合がある。BMU53が、蓄電素子3を過放電から保護するためにFET55をオフした後に外部充電器が蓄電装置50に接続されると、スイッチ素子56がオンし、それによりBMU53がFET55を再びオンして外部充電器による蓄電素子3の充電を可能にする。
しかし、
図7の構成では、FET55がオフの状況で、マイナスターミナル52の電位が浮くと、外部充電器が蓄電装置50cに接続されていないにもかかわらずスイッチ素子56が誤作動でオンし、BMU53がFET55をオンして結果として蓄電素子3を過放電させてしまう可能性がある。
【0012】
そこで、本発明者らは、以下の構成を考案した。
(1)蓄電装置は、蓄電素子と、プラスターミナル(正外部端子)およびマイナスターミナル(負外部端子)と、前記プラスターミナルと前記蓄電素子と前記マイナスターミナルとを接続するパワーラインと、前記蓄電素子および前記マイナスターミナル間の前記パワーラインに設けられた第一半導体スイッチと、前記パワーラインに並列に設けられて前記プラスターミナルおよび前記蓄電素子間の前記パワーラインと前記マイナスターミナルとを接続する配線(プルアップ配線)と、前記配線に設けられた第二半導体スイッチと、を備える。
【0013】
ここで、「半導体スイッチ」は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型のFETであってもよいが、その形態に限定はされない。半導体スイッチは、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、または窒化ガリウムヘテロ結合(GaN)トランジスタであってもよい。
性能とコストのバランスの観点から、第一半導体スイッチとしてNチャネル型MOSFETを用い、第二半導体スイッチとしてPチャネル型MOSFETを用いることができる。
【0014】
上記の蓄電装置によれば、第一半導体スイッチのオフ時に、第二半導体スイッチをオンして蓄電装置のマイナスターミナルの電位をプルアップし、安定化させることができる。こうして、マイナスターミナルの電位が浮くことを防いで、マイナスターミナルと接続されている部品の誤作動を抑制できる。
【0015】
(2)上記(1)の蓄電装置において、前記第一半導体スイッチおよび前記第二半導体スイッチを制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記第一半導体スイッチをオフすると同時に、前記第二半導体スイッチをオンしてもよい。
【0016】
上記構成によれば、制御部によって第一半導体スイッチおよび第二半導体スイッチを同期して動作させることができ、複雑なハードウェア構成は不要となる。
【0017】
(3)上記(1)又は(2)の蓄電装置において、前記第一半導体スイッチがNチャネル型またはNPN型であり、前記第二半導体スイッチがPチャネル型またはPNP型であり、前記第一半導体スイッチおよび前記第二半導体スイッチのゲートが、共通の配線に接続されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、シンプルな回路構成で、Nチャネル型(NPN型)半導体スイッチのオフ時に、Pチャネル型(PNP型)半導体スイッチをオンしてマイナスターミナルの電位をプルアップし、安定化させることができる。
【0019】
(4)上記の蓄電装置は、外部機器との有線通信機能を有しなくてもよい。
上記構成の蓄電装置は、自動二輪車用途に好適である。
(5)上記の蓄電装置は、外部機器との無線通信機能を有してもよい。
外部機器は、車両の乗員が所持する携帯端末装置や、車両側ECUであってもよい。蓄電装置は、スマートフォン等の端末装置に、状態情報や、メッセージを送信してもよい。
【0020】
以下、実施形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1に示すように、実施形態1に係るバッテリ50(蓄電装置の一例)は自動二輪車10に搭載される二輪車用のバッテリである。バッテリ50は、従来の鉛蓄電池からの置き換え(例えば、レトロフィット)が可能な、定格12ボルト(V)である。
【0022】
図2に示すように、バッテリ50には自動二輪車10に搭載されているスタータ10A、オルタネータ10B(車両充電器の一例)および補機類10C(ヘッドライト、カーナビゲーションシステム等)が接続されている。バッテリ50は、スタータ10Aに12Vの電力を供給してエンジン(内燃機関)を始動させる。バッテリ50は、エンジン動作中にオルタネータ10Bによって充電される。
【0023】
図3に示すように、バッテリ50は、管理ユニット53、複数の蓄電セル3(蓄電素子の一例)、およびそれらを収容する直方体状の収容ケース40を備える。蓄電セル3は、リチウムイオン二次電池等の電池セルであってもよいし、キャパシタ等の電気化学セルであってもよい。管理ユニット53は、本実施形態ではBMUである。
【0024】
蓄電セル3は、4個が直列接続されて組電池30を構成している。代替的に、蓄電セル3のうちのいくつかは並列に接続されてもよい。例えば、組電池30は、2並列で4直列に接続された、8個の蓄電セル3を有してもよいし、3並列で4直列に接続された、12個の蓄電セル3を有してもよい。
【0025】
収容ケース40は合成樹脂製である。収容ケース40は、ケース本体41と、ケース本体41の開口部を閉塞する蓋部42と、蓋部42に設けられた収容部43と、収容部43を覆うカバー44と、中蓋(バスバープレートまたはバスバーフレーム)45と、仕切り板46とを備える。中蓋45や仕切り板46は、設けられなくてもよい。ケース本体41の仕切り板46の間に、蓄電セル3が挿入される。
【0026】
中蓋45には、複数の金属製のバスバー61(導電部材)が載置されている。蓄電セル3のセル端子32が設けられている端子面付近に中蓋45が配置されて、隣り合う蓄電セル3の隣り合うセル端子32がバスバー61により接続され、蓄電セル3が直列に接続されている。
【0027】
収容部43は、箱状をなし、平面視における一長辺の中央部に、外側に突出した突出部43aを有する。蓋部42における突出部43aの両側には、鉛合金等の金属製の、プラスターミナル51およびマイナスターミナル52が設けられている。収容部43に、BMU53が収容される。BMU53は、図示しない配線部材およびバスバー61を介して蓄電セル3と接続されている。BMU53は、収容部43に収容される代わりに、例えば組電池30の上方又は側方に隣接して配置されてもよい。BMU53は、複数の回路基板を有してもよい。
【0028】
蓄電セル3は、中空直方体状のケース31と、ケース31の一側面(端子面、上面)に設けられた、極性が異なる一対のセル端子32,32とを備える。ケース31には、正極、セパレータ、および負極を積層してなる電極体33と、図示しない電解質(電解液)とが収容されている。
【0029】
電極体33は、詳細は図示しないが、シート状の正極と、負極とを、2枚のシート状のセパレータを介して重ね合わせ、これらを巻回(縦巻き又は横巻き)することにより構成されている。セパレータは、多孔性の樹脂フィルムにより形成される。多孔性の樹脂フィルムとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂からなる多孔性樹脂フィルムを使用できる。
【0030】
正極は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等からなる長尺帯状の正極基材の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を使用できる。正極活物質としては、例えばLiFePO4が用いられるが、それに限定はされず、いわゆる3元系の正極活物質が用いられてもよい。正極活物質層は、導電助剤、バインダ等を更に含んでもよい。
【0031】
負極は、例えば銅又は銅合金等からなる長尺帯状の負極基材の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を使用できる。負極活物質としては、例えば黒鉛(グラファイト)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。負極活物質層は、バインダ、増粘剤等を更に含んでもよい。
【0032】
電極体33と共に収容ケース40に収容される電解質には、従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用できる。例えば、電解質として、有機溶媒中に支持塩を含有させた電解質を使用できる。有機溶媒として、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒が用いられる。支持塩として、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 等のリチウム塩が好適に用いられる。電解質は、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0033】
図3は、蓄電セル3の一例として、巻回型の電極体33を備える角型のリチウムイオン電池を示す。代替的に、蓄電セル3は、円筒型リチウムイオン電池であってもよく、ラミネート型(パウチ型)リチウムイオン電池であってもよい。蓄電セル3は、積層型電極体を備えるリチウムイオン電池であってもよい。蓄電セル3は、固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池であってもよい。
【0034】
図4は、バッテリ50の電気ブロック図である。プラスターミナル51と、組電池30とは、パワーライン53aで接続されている。組電池30を構成する直列接続された4個の蓄電セル3のうち、プラスターミナル51に直接接続されるものを第4セル3dと呼ぶ。第4セル3dに隣接するものを第3セル3c、第3セル3cに隣接するものを第2セル3b、第2セル3bに隣接するものを第1セル3aと呼ぶ。第1セル3aとマイナスターミナル52とは、パワーライン53bで接続されている。
パワーライン53a,53bの少なくとも一部は、バスバー61により構成される。
【0035】
パワーライン53bに、直列に、電流センサ54と、Nチャネル型FET55とが設けられている。第1セル3aは、電流センサ54およびNチャネル型FET55を介してマイナスターミナル52に接続されている。電流センサ54は、設けられなくてもよい。電流センサ54を除去し、過電流から蓄電セル3を保護するためのヒューズ等の保護素子が、パワーライン53aに設けられてもよい。
【0036】
本実施形態では、電流センサ54としてシャント抵抗が用いられている。電流センサ54は、それに限定はされない。
第1セル3aと電流センサ54とを繋ぐパワーライン53bが、グランド(シグナルグランド)GNDに接続されている。
【0037】
本実施形態では、Nチャネル型FET55として、直列に設けられた、充電遮断用のNチャネル型FET55aと放電遮断用のNチャネル型FET55bとからなるFETセットが、パワーライン53bに複数並列に設けられている。パワーライン53bを流れる電流は、並列に接続された複数のFETセットに分散されて、異常事象発生時にこれら複数のFETセットにより遮断される。
【0038】
BMU53はさらに、パワーラン53a,53bに並列に設けられて、パワーライン53aとマイナスターミナル52とを接続するプルアップ配線53cを有する。プルアップ配線53cに、Pチャネル型のFET58と、抵抗素子としての抵抗60とが直列に設けられている。抵抗素子は、プラスターミナル51とマイナスターミナル52の短絡を防ぐべく抵抗成分を発現するものであればよい。本実施形態では、安価な受動部品である抵抗60が用いられている。
【0039】
本実施形態では、プルアップ配線53cの、一端は、パワーライン53aの、プラスターミナル51と第4セル3dとの間の箇所に接続され、他端は、パワーライン53bの、Nチャネル型FET55とマイナスターミナル52との間の箇所に接続されている。一端がパワーライン53aのプラスターミナル51と第4セル3dとの間の箇所に接続されているため、各蓄電セル3のセル電圧(Vcell1,Vcell2,Vcell3,Vcell4)が低下した状態でもPチャネル型FET58をオン可能なゲート-ソース間電圧を確保できる。
ゲート-ソース間電圧を確保できるのであれば、プルアップ配線53cの一端は、パワーライン53aの、第4セル3dと第3セル3cとの間の箇所、第3セル3cと第2セル3bとの間の箇所、または第2セル3bと第1セル3aとの間の箇所に接続されてもよい。
【0040】
BMU53はさらに、Nチャネル型FET55およびPチャネル型FET58を制御する制御部21を有する。
【0041】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える演算回路である。制御部21が備えるCPUは、ROMや記憶部(図示せず)に格納された各種コンピュータプログラムを実行し、Nチャネル型FET55およびPチャネル型FET58や、その他のハードウェアの動作を制御する。制御部21は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えていてもよい。制御部21は、代替的に、CPU等を備えない集積回路(IC)であってもよいし、トランジスタ等を含むハードウェア回路であってもよい。
【0042】
図5に示すように、制御部21によってNチャネル型FET55がオンし、Pチャネル型FET58がオフしている(Nチャネル型FET55のゲート電圧とPチャネル型FET58のゲート電圧が共にHIGHである)場合、マイナスターミナル52の電位はグランドGNDに等しい。
【0043】
本実施形態によれば、蓄電セル3の過放電などの異常事象発生時に、制御部21からの信号によってNチャネル型FET55がオフし、Pチャネル型FET58がオンする(Nチャネル型FET55のゲート電圧とPチャネル型FET58のゲート電圧が共にLOWになる)と、マイナスターミナル52の電位は各蓄電セル3のセル電圧の総和に等しくなる。つまり、蓄電セル3のロウサイドに配置されたNチャネル型FET55のオフ時に、マイナスターミナル52の電位をプルアップして安定化させることができる。
【0044】
外部充電器(図示せず)の接続有無を検知するスイッチ素子56や、その他の集積回路57を含む、マイナスターミナル52と接続されている部品57aが、ノイズ等の影響を受けにくい。そのため、部品57aの誤作動が抑制される。
【0045】
また、制御部21によって、Nチャネル型FET55およびPチャネル型FET58を同期して動作させることができる。複雑なハードウェア構成は不要となる。
【0046】
本実施形態は、蓄電素子のロウサイドに半導体スイッチが搭載されるシステムに好適である。蓄電装置(バッテリ)に、外部機器(例えば、車両側ECU)との有線通信機能が求められる場合、管理ユニット53のグランド電位と外部機器のグランド電位(=マイナスターミナル52の電位)は、同じである必要がある。ロウサイドに半導体スイッチが配置されて半導体スイッチがオフすると、管理ユニット53のグランドGNDと外部機器のグランドであるマイナスターミナル52とが分離され、正常な通信を行えない可能性が生じる。自動二輪車に搭載されるバッテリ50には、車両側ECUや、車両充電器としてのオルタネータ10bとの通信機能が必ずしも求められない。本実施形態は、そのような用途に好適である。
本実施形態は、蓄電装置(バッテリ)に、外部機器との無線通信機能が求められる場合にも好適である。無線通信では、管理ユニット53のグランド電位と外部機器のグランド電位とが同じでなくても、通信が可能なためである。
【0047】
図6に、蓄電装置の他の構成例を示す。
図6では、組電池、電流センサ、BMU回路基板の図示を省略している。
図6の例では、Nチャネル型FET55およびPチャネル型FET58のゲートが、制御部21から延びた共通の配線21aに接続されている。Nチャネル型FET55として、直列に設けられた、充電遮断用のNチャネル型FET55aと放電遮断用のNチャネル型FET55bとからなるFETセットが、パワーライン53bに複数並列に設けられている。それら全てのFETセットの、充電遮断用のNチャネル型FET55aのゲートと、放電遮断用のNチャネル型FET55bのゲートが、ゲート抵抗を介して配線21aに接続されている。
【0048】
そのため、シンプルな回路構成で、Nチャネル型FET55のオフ時に、Pチャネル型FET58をオンしてマイナスターミナル52の電位をプルアップし、安定化させることができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定はされない。
バッテリ50,50bは、エンジンを有しない電気自動二輪車に搭載されて、補機類に12Vの電力を供給してもよい。代替的に、バッテリ50,50bは、エンジンを有する自動車、電気自動車、(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に搭載されてもよい。バッテリは、飛行体、鉄道列車、船舶等の他の移動体に搭載されてもよい。バッテリの定格電圧は、12Vに限定はされず、48Vや、いわゆる「低電圧」の範囲のその他の電圧であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 自動二輪車(車両、移動体)
50,50b,50c バッテリ(蓄電装置)
51 プラスターミナル
52 マイナスターミナル
53a,53b パワーライン
53c プルアップ配線(配線)
55 Nチャネル型FET(第一半導体スイッチ)
58 Pチャネル型FET(第二半導体スイッチ)
60 抵抗(抵抗素子)
62 蓄電セル(蓄電素子)