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特開2024-84418硬化性樹脂組成物、硬化物、及び電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084418
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240618BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198685
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 良祐
(72)【発明者】
【氏名】池元 亘
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓馬
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011PA07
4J011PA08
4J011PA13
4J011PA14
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J100AL91P
4J100BC04P
4J100BC12P
4J100CA01
4J100CA21
4J100CA23
4J100DA22
4J100DA25
4J100DA49
4J100DA50
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA07
4J100JA38
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】低粘度で作業性に優れ、極めて優れた耐熱性、靭性、及び、弾性を有する硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物、無機フィラー、及び、ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[化1]
(式中、Xは、n価の環式構造を含む有機基を表す。nは、2以上の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物、無機フィラー、及び、ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Xは、n価の環式構造を含む有機基を表す。nは、2以上の整数である。)
【請求項2】
前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、及び、窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーの含有量は、前記多価α-(アリルオキシメチル)(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、10質量部以上、900質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
電子部品用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を含むことを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物、及び電子部品に関する。より詳しくは、低粘度で作業性に優れ、優れた耐熱性、靭性、弾性を有する硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物、硬化物、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱や活性エネルギー線によって硬化し得る硬化性樹脂組成物は、その組成によって、様々な特性を発揮することができ、例えば、塗料、インク、接着剤、レジスト、各種成型材料等、様々な用途において広く用いられている。
【0003】
例えば、半導体装置の製造においては、半導体チップを基材上に実装する際に、半導体チップと基材の隙間を封止するための硬化性樹脂組成物が使用される。このような硬化性樹脂組成物には、隙間への浸透が良好であることや短時間で硬化すること、また、熱伝導性、耐湿性、靭性、半導体チップとの密着性等が求められ、これらの要求に応じた硬化性樹脂組成物がこれまでに種々提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/132671号
【特許文献2】特開2021-130773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電機・電子機器等の小型化・薄型化・省エネルギー化が進みつつあり、それに伴って、使用される各種部材等にはより一層高品位な性能が要望されている。そのような要望に応えるために、各種部材に用いられる従来の硬化性樹脂組成物には、まだ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、低粘度で作業性に優れ、極めて優れた耐熱性、靭性、及び、弾性を有する硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、特定の多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物と、無機フィラーと、ラジカル重合開始剤とを含むことにより、低粘度で作業性に優れ、極めて優れた耐熱性、高靭性、及び、高弾性を有する硬化物を与えることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の態様の発明を提供する。
[1]下記式(1)で表される多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物、無機フィラー、及び、ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Xは、n価の環式構造を含む有機基を表す。nは、2以上の整数である。)
[2]前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、及び、窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記無機フィラーの含有量は、前記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物100質量部に対して、10質量部以上、900質量部以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]電子部品用であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]上記[4]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
[6]上記[5]に記載の硬化物を含むことを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低粘度で作業性に優れ、非常に優れた耐熱性、靭性、及び高弾性の硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物を提供することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板における層間絶縁材料や半導体素子のアンダーフィル等の電子部品用として好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
1.硬化性樹脂組成物
本発明は、下記式(1)で表される多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物、無機フィラー、及び、ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0014】
【化2】
(式中、Xは、n価の環式構造を含む有機基を表す。nは、2以上の整数である。)
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物が、上記の構成により、低粘度で、かつ、優れた耐熱性、靭性、及び弾性を有する硬化物を与えることができるのは、所定の多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物を含むことにより、硬化性樹脂組成物の粘度を低く維持することができ、硬化時に主鎖骨格に環構造が入ることで硬化物の耐熱性や靭性を向上させることができるためと考えられる。更に、無機フィラーを均一に分散して含むことで機械物性が向上し、弾性にも優れた硬化物を与えることができるためと考えられる。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について、以下に説明する。
【0016】
(A)多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物
本発明において使用する多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物は、上記式(1)で表される化合物である。このような化合物を含むことにより、硬化性樹脂組成物の粘度を低く維持することができる。また、耐熱性や靭性にも優れた硬化物を与えることができる。
【0017】
上記式(1)において、Xは、n価の環式構造を含む有機基を表す。
nは、2以上の整数である。従って、Xは、2価以上の有機基を表す。
nは、より低粘度である点で、2~4の整数が好ましく、2~3の整数がより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0018】
上記Xで表される有機基は、環式構造を有する。
上記環式構造とは、少なくとも1種の脂環又は芳香環を含む構造であり、脂環と芳香環の双方を含むものであってもよいし、脂環又は芳香環どうし、あるいは脂環と芳香環とが縮合したものや、単結合したものであってもよい。
【0019】
上記脂環としては、シクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環等のシクロアルケン環;ノルボルナン環、イソボルニル環、アダマンタン環、トリシクロデカン環等の飽和の多環;ノルボルネン環等の不飽和の多環が挙げられる。なかでも、シクロアルケン環、飽和の多環が好ましい。
また、上記脂環は、複素環であってもよく、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、テトラヒドロピラン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0020】
上記芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
また、上記芳香環は、複素環であってもよく、例えば、フラン環、ピロール環、ピラン環、ピリジン環等が挙げられる。
【0021】
なかでも、上記環式構造は、より低粘度である点で、脂環を含むことが好ましく、シクロアルカン環、飽和の多環を含むことがより好ましい。
上記脂環及び芳香環は、置換基を有していてもよい。
【0022】
上記環式構造の炭素数は、好ましくは3~30、より好ましくは4~25、更に好ましくは5~20である。
【0023】
上記Xで表される有機基は、上記環式構造からなるものであってもよいし、上記環式構造と鎖状構造とを含むものであってもよい。
【0024】
上記鎖状構造としては、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、-O-、-COO-、-CO-、-NH-、-S-、-SO-、又は、これらの組み合わせからなる鎖状の構造が挙げられる。なかでも、アルキレン基、-O-、-R-O-、-O-(R-O)-(Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは、2以上の整数を表す)等が好ましく挙げられる。
【0025】
上記脂環、芳香環、又は、鎖状構造が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0026】
上記Xで表される有機基の炭素数は、好ましくは4~50、より好ましくは5~40、更に好ましくは6~30である。
【0027】
上記Xで表される有機基としては、好ましくは下記式(2)~(4)で表される基が挙げられる。
-O-R-A-R-O- (2)
-O-A-R-A-O- (3)
-O-(R-O)-A-R-A-(O-R-O- (4)
(いずれも式中、A~Aは、同一又は異なって、シクロヘキサン環、トリシクロデカン環、又は、ベンゼン環を表し、R~Rは、同一又は異なって、炭素数1~6のアルキレン基を表す。p及びqは、同一又は異なって、1~20の整数を表す。)
【0028】
上記式(2)において、Aは、シクロヘキサン環、トリシクロデカン環であることが好ましい。
及びRは、同一又は異なって、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。
上記式(2)で表される基としては、好ましくは下記の基が挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
上記(3)で表される基としては、好ましくは下記の基が挙げられる。
【0031】
【化4】
【0032】
上記式(4)で表される基としては、好ましくは下記の基が挙げられる。
【0033】
【化5】
【0034】
(式中、nは、1~3の整数を表し、好ましくは2又は3を表す。p及びqは、上述したものと同じであり、好ましくは、1~2の整数を表す。)
【0035】
また、上記Xで表される有機基として、好ましくは下記式(5)で表される基が挙げられる。
-O-R-(O-A-R-A-O-R-O- (5)
(式中、A及びAは、同一又は異なって、シクロヘキサン環、又は、ベンゼン環を表す。R、及びRは、同一又は異なって、有機基を表す。Rは、炭素数1~3のアルキレン基を表す。rは、1~3の整数を表す。)
【0036】
上記A及びAは、ベンゼン環であることが好ましい。
上記R及びRで表される有機基としては、鎖状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基としては好ましくは水酸基が挙げられる。
上記R及びRで表される有機基としては、好ましくは、-CH-CH(-OH) -CH-が挙げられる。
上記rは、1~2の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0037】
上記式(5)で表される基としては、好ましくは下記の基が挙げられる。
【0038】
【化6】
(式中、rは、上述したものと同じである。)
【0039】
なかでも、上記Xで表される有機基としては、より低粘度である点で、上記式(2)で表される基がより好ましい。
【0040】
上記式(1)で表される多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物の合成方法としては、特に限定されず、例えば、特開2011-74068号公報に記載される架橋性化合物の製造方法等の公知の方法を用いることができる。
【0041】
上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは5~95質量%であり、より好ましくは7~93質量%であり、更に好ましくは10~90質量%である。
なお、固形分とは、上記硬化性樹脂組成物において、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く)の総量を意味する。
【0042】
(B)無機フィラー
本発明において使用する無機フィラーとしては、通常、樹脂組成物において無機フィラーとして使用される無機化合物であれば特に限定されず、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸化合物;タルク、マイカ等の粘土鉱物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のフェロブスカイト型結晶構造化合物;等からなる無機化合物粒子が挙げられる。無機フィラーは、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
なかでも、樹脂組成物における分散性が高くなる傾向にある点で、無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、及び、窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、シリカ、及び、アルミナからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0044】
無機フィラーは、表面処理されたものであってもよい。表面処理された無機フィラーを用いることにより、上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物との親和性が良好になり、より低粘度で、靭性や弾性にも優れた硬化物を与えることができる。
【0045】
上記表面処理としては、特に限定されず、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミネートカップリング剤等のカップリング剤による表面処理、イオン結合性有機化合物による表面処理等、公知の表面処理が挙げられる。なかでも、種々官能基を選択できる点で、上記表面処理は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミネートカップリング剤による表面処理が好ましく、シランカップリング剤による表面処理がより好ましい。
【0046】
シランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;ジエトキシ(グリシディルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0047】
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。
【0048】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0049】
アルミネートカップリング剤としては、例えば、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0050】
無機フィラーの平均粒子径は、分散性の確保の観点で、好ましくは0.01~30μmであり、より好ましくは0.02~20μmであり、更に好ましくは0.03~10μmである。
上記平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(D50)である。
【0051】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、球状、板状、薄片状、六角板状、不定形等のいずれの形状であってもよい。
【0052】
無機フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは5~95質量%であり、より好ましくは7~93質量%であり、更に好ましくは10~90質量%である。
【0053】
無機フィラーの含有量は、均一に混合可能である点で、上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物100質量部に対して、10質量部以上、900質量部以下であることが好ましく、15質量部以上、850質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上、800質量部以下であることが更に好ましい。
【0054】
(C)ラジカル重合開始剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を更に含む。上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物は、加熱及び/又は電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル重合を開始し、硬化性樹脂組成物を硬化させることができるが、ラジカル重合開始剤を含むことでより効果的に硬化させることができる。
【0055】
上記ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、必要に応じて通常用いられるラジカル重合促進剤、光増感剤等を1種又は2種以上添加してもよい。
【0056】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、公知の有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤が挙げられる。
有機過酸化物系開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0057】
アゾ系開始剤としては、例えば、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0058】
上記熱ラジカル重合開始剤とともに使用できるラジカル重合促進剤としては、上記熱ラジカル重合開始剤の分解(開始ラジカルの発生)を促進するものであれば特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。上記ラジカル重合促進剤としては、例えば、金属の有機塩、無機塩、酸化物、又は金属錯体や、アミン化合物、4級アンモニウム塩、チオ尿素化合物、ケトン化合物等の通常用いられるものを使用できる。上記ラジカル重合促進剤の具体例としては、例えば、特開2011-74068号公報の段落[0089]に記載のものが挙げられる。
【0059】
上記光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロメチル化トリアジン系化合物、ハロメチル化オキサジアゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、安息香酸エステル系化合物、アクリジン系化合物が好ましく挙げられ、具体例としては、下記が挙げられる。
【0060】
2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物。
【0061】
2-トリクロロメチル-5-(2’-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物。
【0062】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光増感剤やラジカル重合促進剤を使用してもよい。このような光増感剤やラジカル重合促進剤としては、特に限定されず、通常用いられるものを使用することができる。上記光ラジカル重合開始剤とともに使用される光増感剤やラジカル重合促進剤の具体例としては、例えば、特開2011-74068号公報の段落[0092]に記載のものが挙げられる。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記ラジカル重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
上記ラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されず、目的、用途に応じて適宜設計することができるが、通常、上記硬化性樹脂組成物の無機フィラーを除く固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、更に好ましくは2~8質量%である。
【0064】
上記ラジカル重合促進剤、光増感剤の添加量総量としては、特に限定されず、目的、用途に応じて適宜結成することができるが、通常、上記硬化性樹脂組成物の無機フィラーを除く固形分総量100質量%に対して0~8質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが更に好ましい。
【0065】
(D)他の単量体化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物以外のラジカル重合可能な他の任意の単量体化合物を含んでいてもよい。
上記他の単量体化合物としては、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体や、2つ以上有する多官能単量体が挙げられる。
【0066】
上記単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、4-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等のオキソ基含有単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;α-アリルオキシメチルアクリル酸;α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸3-メトキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-メチルシクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル等の一価のα-(アリルオキシメチル)アクリレート系単量体;等が挙げられる。
【0067】
上記多官能単量体としては、ジビニルベンゼン;1,3-ブタジエン;トリビニルベンゼン;ジビニルナフタレン;トリビニルシクロヘキサン;ジビニルエーテル;ジアリルエーテル;多価(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
上記多価(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
上記他の単量体の含有量は、上記多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物100質量部に対して、0質量部以上、900質量部以下であることが好ましく、0質量部以上、850質量部以下であることがより好ましく、0質量部以上、800質量部以下であることが更に好ましい。
【0070】
(E)他の添加剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物の目的、用途に応じて更に他の添加剤を含んでもよい。上記他の添加剤としては、例えば、溶剤、反応性希釈剤、ドライヤー等の硬化促進剤、安定化剤、色材、分散剤、密着性向上剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、表面改質剤、カップリング剤、酸発生剤等が挙げられる。これらの添加剤は、特に限定されず、目的、用途に応じて公知のものから適宜選択して使用すればよい。また、これらの添加剤の含有量についても、公知技術から適宜設定することができる。
【0071】
上記硬化性樹脂組成物の粘度は、作業性が良好な点で、好ましくは0.01~10Pa・sであり、より好ましくは0.02~8Pa・sであり、更に好ましくは0.05~5Pa・sである。上記粘度は、コーンプレート型粘度計(例えば、TV-20L、東機産業社製)等の粘度計を使用して、25℃の温度で測定した値である。
【0072】
(硬化性樹脂組成物の調製方法)
本発明の硬化性樹脂組成物を調製する方法としては、特に限定されず、上述した多価α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物、無機フィラー、及び、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて上述した他の添加剤等とを、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を用いて混合することにより調製することができる。
【0073】
(硬化性樹脂組成物の硬化方法)
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、上記硬化性樹脂組成物の目的、用途に応じて、加熱、活性エネルギー線の照射、酸素を含む雰囲気下への暴露等の公知の方法から適宜選択すればよい。これらの方法は、1種のみ行なってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記加熱硬化の温度条件としては、上記硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜設定すればよいが、例えば硬化促進剤を併用しない場合には、硬化促進と熱分解低減の観点から、30~400℃が好ましく、50~350℃がより好ましく、60~350℃が更に好ましい。硬化促進剤を併用する場合には、併用しない場合よりも低い温度で硬化させることができ、0~400℃が好ましく、10~350℃がより好ましく、20~350℃が更に好ましい。
【0075】
加熱による硬化は、1段階で行ってもよく、2段階以上に分けて行ってもよく、また活性エネルギー線の照射及び/又は酸素を含む雰囲気下への曝露による硬化の前に行っても、後に行ってもよい。例えば、低温での加熱や、短時間の活性エネルギー線照射などにより、一旦ある程度架橋させた後に、好ましくは、150℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上の高温で硬化させる工程は、ポストベーク、或いはポストキュアとも呼ばれ、より架橋反応を進行させることができ、好ましい。
【0076】
上記活性エネルギー線の照射による硬化方法における活性エネルギー線としては、通常用いられるものを使用することができ、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線などの電磁波や、電子線、中性子線、陽子線などの粒子線などが挙げられる。これらの中では、エネルギーの強さ、エネルギー線の発生装置などの点から、ガンマ線、X線、極紫外線、紫外線、可視光線、電子線が好ましく、極紫外線、紫外線、可視光線、電子線がより好ましく、紫外線が最も好ましい。硬化促進剤を併用しない場合には、ガンマ線、X線、電子線などのエネルギーの強い活性エネルギー線を用いるのが好ましく、硬化促進剤を併用する場合には、紫外線、可視光線などの、エネルギーは比較的弱いが発生が容易で経済的な活性エネルギー線を好ましく用いることができる。
【0077】
上記酸素を含む雰囲気下への曝露による硬化方法とは、酸素を含む雰囲気に、上記硬化性樹脂組成物を曝露することにより硬化させる方法であり、雰囲気中の酸素濃度としては、5容量%以上が好ましく、より好ましくは10容量%以上、最も好ましくは18容量%以上である。すなわち、空気中の酸素濃度と同等以上の濃度であることが最も好ましい。また、上記加熱による硬化方法及び/又は活性エネルギー線の照射による硬化方法と併用してもよい。特に、空気中で加熱、及び/又は活性エネルギー線の照射を行う硬化方法は、簡易に併用できる硬化方法として好ましい硬化方法である。
【0078】
2.硬化物
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、優れた耐熱性、高い靭性、及び、高い弾性を有する。このような上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物もまた、本発明の一つである。
【0079】
本発明の硬化物は、5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましい。上記5%重量減少温度が上述の範囲であると、優れた耐熱分解性を有する。上記5%重量減少温度は、より好ましくは325℃以上、更に好ましくは350℃以上である。
上記5%重量減少温度は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0080】
上記硬化物の破断伸びは、4.0~100%であることが好ましい。上記破断伸びが上述の範囲であると、優れた靭性を有する。上記破断伸びは、より好ましくは4.2~100%、更に好ましくは4.4~100%である。
上記破断伸びは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0081】
上記硬化物の曲げ弾性率は、3.0~20.0GPaであることが好ましい。上記曲げ弾性率が上記の範囲であると、優れた弾性を有する。上記硬化物の曲げ弾性率は、より好ましくは4.0~20.0GPa、更に好ましくは5.0~20.0GPaである。
上記曲げ弾性率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0082】
上記硬化物のガラス転移温度(Tg)は、耐熱変形性が良好な点で、好ましくは150~300℃、より好ましくは160~300℃、更に好ましくは180~300℃である。上記ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠した方法により測定して得られる値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0083】
上記硬化物が硬化膜である場合、その厚みは、目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、好ましくは1~1000μm、より好ましくは5~600μm、更に好ましくは10~400μmである。
【0084】
3.用途
本発明の硬化性樹脂組成物は、低粘度に優れる。また、優れた耐熱性、高靭性、及び、高弾性の硬化物を与えることができる。そのため、低粘度、耐熱性、高靭性、又は、高弾性が必要とされる用途に好適に使用することができる。
このような本発明の硬化性樹脂組成物は、接着剤、粘着剤、生体材料、歯科材料、光学部材、情報記録材料、光ファイバー用材料、カラーフィルターレジスト、ソルダーレジスト、めっきレジスト、ブラックレジスト、半導体フォトレジスト、TFT形成レジスト、EUV・KrF・ArF・g線・i線レジスト、3Dプリント樹脂、UV硬化型インクジェットインキ、フォトスペーサー/ブラックカラム、自動車用UV硬化型塗料・コーティング材、光ファイバー用コーティング材、フィルム用ハードコーティング材、電化製品用UV硬化型塗料・コーティング材、バッファーコート、再配線形成材料、バックグラインドテープ、ダイシングテープ、UV硬化型塗料、絶縁材料、封止材、インクジェットインク、印刷インク、塗料、注型材料、化粧版、WPC、被覆材、感光性印刷版、タッチパネル用OCA・OCR、カバーレイフィルム、ドライフィルム、ドライフィルムレジスト、ライニング材、土木建築材料、パテ、補修材、床材、舗装材ゲルコート、オーバーコート、ハンドレイアップ・スプレーアップ・引抜成形・フィラメントワインディング・SMC・BMC等の成形材料、高分子固体電解質、レンズ成形用樹脂、マイクロレンズ成形用樹脂等の広範囲な種々の用途に好適に用いることができる。
【0085】
なかでも、本発明の硬化性樹脂組成物は、電子部品用であることが好ましい。電子部品用硬化性樹脂組成物としては、プリント配線板における層間絶縁材料、半導体素子のアンダーフィル、ソルダーレジスト、半導体フォトレジスト等が挙げられる。
このような本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を含む電子部品もまた、本発明の一つである。
【0086】
以上のとおり、本発明の硬化性樹脂組成物は、低粘度で作業性に優れ、優れた耐熱性、靭性、弾性を有する硬化物を与えることができる。このような本発明の硬化性樹脂組成物は電子部品用として好適に使用される。
【実施例0087】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
本実施例において、各種物性の測定は以下の方法により行った。
<粘度>
硬化性樹脂組成物の粘度について、コーンプレート型粘度計(DV-1、ブルックフィールド社製)を用いて25℃の温度条件下で測定した。
【0089】
<熱分解温度>
硬化性樹脂組成物の硬化物の熱分解温度について、熱重量示唆熱分析装置(Thermo plus EVO2、リガク社製)を用いて下記条件で測定した。重量が5%減少した時点の温度(5%重量減少温度)を評価した。
測定温度範囲:室温~500℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気及び流量:窒素-100ml/分
【0090】
<ガラス転移温度>
(評価サンプル)
硬化性樹脂組成物を型枠に流し込み、熱硬化することで評価サンプル(厚み1.5mm×幅4.0mm×長さ40mm)を得た。
(評価方法)
得られた硬化物の動的粘弾性を下記条件にて測定し、各温度に対する貯蔵弾性率、損失弾性率を測定した。損失弾性率を貯蔵弾性率で除することによって得られる値(tanδ)が極大になるときの温度をガラス転移温度とした。
装置:RSA-G2(TA instruments社製)
測定モード:曲げ
周波数:10Hz
昇温速度:5℃/分
【0091】
<破断伸び>
(評価サンプル)
硬化性樹脂組成物を型枠に流し込み、熱硬化することで評価サンプル(厚み0.5mm、ダンベル状3号形:JIS K 6251に準拠)を得た。
(評価方法)
得られた硬化物の引張試験を下記条件にて測定し、破断伸びを測定した。
装置:島津オートグラフAG-1kNNX(島津製作所社製)
チャック間距離:60mm
試験速度:1mm/分
伸び計算:(引張移動量/20mm(ダンベル状試験片の標線間距離))×100
【0092】
<曲げ弾性率>
(評価サンプル)
硬化性樹脂組成物を型枠に流し込み、熱硬化することで評価サンプル(厚み4.0mm×幅10mm×長さ80mm)を得た。
(評価方法)
得られた硬化物の曲げ試験を下記条件にて測定し、曲げ弾性率を測定した。
装置:インストロン強度試験機 68TM-50(インストロン社製)
支点間距離:64mm
試験速度:2mm/分
曲げ弾性率計算:割線法
【0093】
(製造例1)AOMA-CDMの製造
攪拌子、冷却管、蒸留塔を備えたセパラブルフラスコにチタンテトライソプロポキシド(TTIP)3.55g(12.5mmol)、シクロヘキサンジメタノール60.0g(416mmol、東京化成工業株式社製)、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA)196.9g(1248mmol)、重合禁止剤(6-t-ブチル-2,4-キシレノール、東京化成工業株式社製)200mg(AOMAに対して1000ppmとなる量)、重合禁止剤(ポリストップ7300P、伯東株式社製)200mg(AOMAに対して1000ppmとなる量)、共沸剤ヘプタン13gを秤量した。系内を300Torrに減圧しながら、110℃まで昇温し全還流状態で反応させた。適宜留分を取り除き、反応温度が110℃となるようにヘプタンを新たに系中に添加しながら反応させ、モノエステルに対してのジエステルの比率が>96%になるまで加熱を続けた。反応終了後、反応溶液を7wt%のシュウ酸水溶液50gで2回、イオン交換水50gで1回洗浄した後、系中の軽沸分を留去し薄黄色の透明液体(AOMA-CDM)120gを取得した。
【0094】
(製造例2)AOMA-TCDの製造
製造例1において、シクロヘキサンジメタノールの代わりにトリシクロデカンジメタノールを使用した点以外は、製造例1と同様の方法により、AOMA-TCDを得た。
【0095】
(実施例1~4、比較例1~2)
表1に示される処方(質量部)に従って、アクリレート化合物、無機フィラー、ラジカル重合開始剤等を混合し、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物について、粘度を評価した。また、硬化性樹脂組成物をシリコン型枠に流し込み、離型PETを貼付したSUS板で挟みクリップで固定し、熱風乾燥機にて60℃で2時間、次いで、110℃で1時間硬化させた。シリコン型枠から剥がして得られた硬化物について、熱分解温度、ガラス転移温度、破断伸び、曲げ弾性率を評価した。結果を表1に示す。
【0096】
なお、用いた表1中の各成分は下記のとおりである。
(樹脂成分)
AOMA:α-アリルオキシメチルアクリレート(日本触媒社製)
AOMA-CDM:シクロヘキサンジメタノールジ(2-(アリルオキシメチル))アクリレート(製造例1)
AOMA-TCD:トリシクロデカンジメタノールジ(2-(アリルオキシメチル))アクリレート(製造例2)
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製)
フタル酸ジアリル:東京化成社製
(無機フィラー)
SiO:シーホスターS30-HG(日本触媒社製)球状シリカ(平均粒子径0.3μm)
Al:DAW-01(デンカ社製)球状アルミナ(平均粒子径1.9μm)
BN:ショウビーエヌUHP-S2(昭和電工社製)鱗片状窒化ホウ素(平均粒子径0.7μm)
(ラジカル重合開始剤)
PHPV:パーヘキシルPV(日油社製)
PHHC:パーヘキサHC(日油社製)
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、実施例の硬化性樹脂組成物は、比較例の硬化性樹脂組成物と比べて、粘度が低く作業性に優れており、硬化後は耐熱性、靭性、弾性に優れることが明らかになった。