(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084421
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】水平多関節型ロボットの原点復帰方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240618BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198689
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小川 優司
(72)【発明者】
【氏名】加納 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆良
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS24
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707DS01
3C707HS27
3C707KV01
3C707LT17
3C707LV14
3C707LV15
3C707MS05
3C707MT01
3C707NS13
5F131AA02
5F131CA54
5F131CA62
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB76
5F131DD03
5F131DD30
5F131DD33
5F131DD43
5F131DD74
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB48
5F131KB58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原点までの軌道を逐一計算しなくても原点復帰する水平多関節型ロボットの原点復帰方法を提供する。
【解決手段】基台、基台に対して直列に2本以上連結したアーム及び最先端のアームに対して連結されるハンドを備える水平多関節型ロボットの原点復帰方法であって、ハンドの位置についての複数の正規位置と、ハンドが正規位置にあるときのアーム及びハンドが他の部材と干渉しないで原点位置まで移動するための適正軌道を有する正規姿勢とを設定し、原点復帰の要求があったときにハンドが停止している停止位置を検出し、複数の正規位置のなかから1つの正規位置を選択し、停止位置にあるハンドが選択した正規位置に移動するようにアーム及びハンドを駆動し、ハンドが選択した正規位置にあるときのアーム及びハンドの姿勢が正規姿勢である場合に、選択した正規位置にあるハンドが適正軌道に基づいて原点位置まで移動するようにアーム及びハンドを駆動する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、基台に対して直列に2本以上連結したアームと、最先端の前記アームに対して連結されるハンドとを備える水平多関節型ロボットの原点復帰方法であって、
前記ハンドの位置についての複数の正規位置と、前記ハンドが前記正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドが他の部材と干渉しないで原点位置まで移動するための適正軌道を有する正規姿勢とを設定し、
原点復帰の要求があったときに前記ハンドが停止している停止位置を検出し、
前記複数の正規位置のなかから1つの正規位置を選択し、
前記停止位置にある前記ハンドが前記選択した正規位置に移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動し、
前記ハンドが前記選択した正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドの姿勢が前記正規姿勢である場合に、前記選択した正規位置にある前記ハンドが前記適正軌道に基づいて原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする水平多関節型ロボットの原点復帰方法。
【請求項2】
前記ハンドが前記選択した正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドの姿勢が前記正規姿勢でない場合に、前記選択した正規位置にある前記ハンドを最先端の前記アームに重なるように折り畳んだ後で、前記ハンドが原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする請求項1記載の水平多関節型ロボットの原点復帰方法。
【請求項3】
前記停止位置が前記複数の正規位置の全てよりも原点位置に近い場合に、前記停止位置にある前記ハンドが前記正規位置を経由しないで原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の水平多関節型ロボットの原点復帰方法。
【請求項4】
前記水平多関節型ロボットは、前記ハンドにより保持した搬送対象物を複数の処理装置に対して搬入及び搬出するように前記アーム及び前記ハンドを駆動可能であり、
前記複数の正規位置は、前記ハンドが前記複数の処理装置のそれぞれに対向する位置に設定されることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節型ロボットの原点復帰方法。
【請求項5】
前記ハンドにより保持した搬送対象物を所定の処理装置に対して搬入及び搬出動作中に停止し、原点復帰の要求があった場合、
前記複数の正規位置のなかから前記所定の処理装置に最も近い正規位置を選択することを特徴とする請求項4に記載の水平多関節型ロボットの原点復帰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基板などの搬送対象物を搬送する水平多関節型ロボットの原点復帰方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハなどの基板を収納するカセットと基板に対して所定の処理を実行する処理装置との間で基板を搬送するために搬送ロボットが使用される。例えば、水平多関節型ロボットがある。
【0003】
特許文献1の水平多関節型ロボットは、複数のカセットに対して基板をロード/アンロードできるように、最先端のアームにハンドが連結された複数のアームを互いに回転可能に連結するとともに、モータなどの回転力をアームに伝達して、伸縮等の動作をさせるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水平多関節型ロボットにおいて、動作中に何らかの理由で原点復帰を行なわなければならない場合がある。その際、原点復帰動作においてロボットのアームやハンドが周囲の他の部材や壁に衝突しないようにする必要がある。
【0006】
特許文献1の水平多関節型ロボットでは、搬送動作中に水平多関節型ロボットの座標の記録を継続して実行し、原点復帰の要求が入力したときに、要求が入力したときの水平多関節型ロボットの座標が記録された最新の座標から所定の範囲内にあるかを判定し、所定の範囲内にあるときは、原点復帰の軌跡を計算して、搬送の方向とは反対方向に水平多関節型ロボットを原点まで移動させる必要がある。
【0007】
本発明は、原点までの軌道を逐一計算しないでも水平多関節型ロボットの原点復帰を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法は、基台と、基台に対して直列に2本以上連結したアームと、最先端の前記アームに対して連結されるハンドとを備える水平多関節型ロボットの原点復帰方法であって、前記ハンドの位置についての複数の正規位置と、前記ハンドが前記正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドが他の部材と干渉しないで原点位置まで移動するための適正軌道を有する正規姿勢とを設定し、原点復帰の要求があったときに前記ハンドが停止している停止位置を検出し、前記複数の正規位置のなかから1つの正規位置を選択し、前記停止位置にある前記ハンドが前記選択した正規位置に移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動し、前記ハンドが前記選択した正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドの姿勢が前記正規姿勢である場合に、前記選択した正規位置にある前記ハンドが前記適正軌道に基づいて原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする。
【0010】
本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法では、原点復帰させる場合に、ハンドが正規位置に移動してから原点位置に戻ることで、正規位置から原点位置に戻るまでの軌道を使いまわすことができる。よって、原点復帰させるために、原点までの軌道を逐一計算したり、ハンドの停止位置から原点までの軌道をいくつも記録したりする必要がなくなる。
【0011】
本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法において、前記ハンドが前記選択した正規位置にあるときの前記アーム及び前記ハンドの姿勢が前記正規姿勢でない場合に、前記選択した正規位置にある前記ハンドを最先端の前記アームに重なるように折り畳んだ後で、前記ハンドが原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、停止位置にあるハンドを選択した正規位置に移動した後、アーム及びハンドの姿勢が適正軌道を有する正規姿勢でない場合、ハンドを最先端のアームに重なるように折り畳むことで、アーム及びハンドを他の部材と干渉させないで原点位置まで移動させることができる。
【0013】
本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法において、前記停止位置が前記複数の正規位置の全てよりも原点位置に近い場合に、前記停止位置にある前記ハンドが前記正規位置を経由しないで原点位置まで移動するように前記アーム及び前記ハンドを駆動することを特徴とする。
【0014】
このように構成すると、アーム及びハンドを他の部材と干渉させないで最短経路で原点位置まで移動させることができる。
【0015】
本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法において、前記水平多関節型ロボットは、前記ハンドにより保持した搬送対象物を複数の処理装置に対して搬入及び搬出するように前記アーム及び前記ハンドを駆動可能であり、前記複数の正規位置は、前記ハンドが前記複数の処理装置のそれぞれに対向する位置に設定されることを特徴とする。
【0016】
このように構成すると、正規位置を各処理装置に対向する位置に設定することで、原点復帰動作において、通常の動作に用いる軌道を使用するため、アーム及びハンドを他の部材と干渉させないで確実に原点位置まで移動させることができる。
【0017】
本発明の水平多関節型ロボットの原点復帰方法において、前記ハンドにより保持した搬送対象物を所定の処理装置に対して搬入及び搬出動作中に停止し、原点復帰の要求があった場合、前記複数の正規位置のなかから前記所定の処理装置に最も近い正規位置を選択することを特徴とする。
【0018】
このように構成すると、ハンドが処理装置に対して搬入及び搬出動作中に停止し、原点復帰の要求があった場合でも、搬送対象物の出し入れ動作をする際の軌道を利用してハンドを正規位置に移動させた後、アーム及びハンドを他の部材と干渉させないで確実に原点位置まで移動させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明によれば、水平多関節型ロボットが保有するメモリ容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送ロボット12の原点復帰方法が行われる基板処理装置1の構成を示す図である。
【
図2】搬送ロボット12が原点位置N0にある状態を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、ハンド33が処理装置T2についての待機位置にある状態を示す図であり、
図3(b)は、ハンド33が処理装置T2内にある状態を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、ハンド33が処理装置T1についての待機位置にある状態を示す図であり、
図4(b)は、ハンド33が処理装置T2についての待機位置にある状態を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、ハンド33が処理装置T3についての待機位置にある状態を示す図であり、
図5(b)は、ハンド33が処理装置T4についての待機位置にある状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、ハンド33が処理装置T5についての待機位置にある状態を示す図であり、
図6(b)は、ハンド33が処理装置T6についての待機位置にある状態を示す図である。
【
図7】搬送ロボット12の原点位置N0及び正規位置N1~N6を示す図である。
【
図9】第1実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作を説明するフローチャートである。
【
図10】搬送ロボット12の原点復帰動作の第1実施例を説明する図である。
【
図11】搬送ロボット12の原点復帰動作の第1実施例を説明する図である。
【
図12】搬送ロボット12の原点復帰動作の第2実施例を説明する図である。
【
図13】搬送ロボット12の原点復帰動作の第2実施例を説明する図である。
【
図14】搬送ロボット12の原点復帰動作の第2実施例を説明する図である。
【
図15】搬送ロボット12の原点復帰動作の第3実施例を説明する図である。
【
図16】搬送ロボット12の原点復帰動作の第3実施例を説明する図である。
【
図17】第2実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作を説明するフローチャートである。
【
図18】基板を保持したハンド33の折り畳み可能な第2アーム先端領域を説明する図である。
【
図19】搬送ロボット12の原点復帰動作の第4実施例を説明する図である。
【
図20】搬送ロボット12の原点復帰動作の第4実施例を説明する図である。
【
図21】正規位置の設定可能領域を説明する図である。
【
図22】搬送ロボット12の変形例である搬送ロボット112を説明する図である。
【
図23】搬送ロボット112の原点復帰動作を説明するフローチャートである。
【
図24】搬送ロボット112のハンド133a,133bを折り畳む動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
(第1実施形態)
基板処理装置1は、
図1に示すように、ウエハなどの基板(搬送対象物)を搬送する装置である基板搬送装置10と、基板搬送装置10に接続された6個の処理装置T1~T6とを有している。基板搬送装置10は、各処理装置T1~T6に対する基板の搬入および処理装置T1~T6からの基板の搬出を行う搬送ロボット12を有している。
【0023】
処理装置T1~T6は、基板に対して各種の処理を行う装置であり、処理対象となる基板を載置する処理ステージなどを含んで構成される。処理装置T1~T6で行われる処理は何であってもよく、基板処理装置1に複数の処理装置T1~T6が設けられる場合に、各処理装置T1~T6で行われる処理が互いに異なるものであってもよい。
【0024】
基板搬送装置10は、搬送チャンバ11と、搬送チャンバ11の内部に配置された搬送ロボット12と、搬送ロボット12の動作を制御する制御部50(
図8参照)とを有している。
【0025】
搬送チャンバ11は、内部に搬送ロボット12を収容する略直方体形状のチャンバである。搬送チャンバ11の内部空間は、平面視で長方形状であり、搬送ロボット12の動作空間を形成する。搬送チャンバ11には、各処理装置T1~T6が接続されており、各接続部分には、搬送ロボット12を各処理装置T1~T6内にアクセスさせるための開口(図示省略)が設けられる。
【0026】
搬送ロボット12は、いわゆる水平多関節型ロボットであり、基台30と、基台30に対して接続された第1アーム31と、第1アーム31に対して接続された第2アーム32と、第2アーム32に対して接続されたハンド33とを有している。
【0027】
基台30は、搬送ロボット12の基台となる部分であり、例えば搬送チャンバ11の床面の下方に設けられて、床面に設けられた貫通孔などを通じて、第1アーム31と連結される。
【0028】
第1アーム31は、略水平姿勢で延在する長尺の部材であり、その基端において基台30に対して水平旋回自在に連結される。第1アーム31の基端に形成された第1アーム軸(図示省略)は、モータ31aにより回転駆動されて、第1アーム31を基台30に対して水平旋回させる。
【0029】
第2アーム32は、略水平姿勢で延在する長尺の部材であり、その基端において第1アーム31の先端部に対して水平旋回自在に連結される。第2アーム32の基端に形成された第2アーム軸(図示省略)は、モータ32aにより回転駆動されて、第2アーム32を第1アーム31に対して水平旋回させる。
【0030】
ハンド33は、略水平姿勢で延在する長尺の部材であり、その基端において第2アーム32の先端部に対して水平旋回自在に連結される。ハンド33は、その先端部において搬送対象となる基板を保持する部材である。ハンド33は、例えば先端部が二股状に分岐したフォーク状を呈している。ハンド33の基端に形成されたハンド軸(図示省略)は、モータ33aにより回転駆動されて、ハンド33を第2アーム32に対して水平旋回させる。
【0031】
このように、搬送ロボット12では、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の各々が制御部50からの指示に応じて旋回されることによって、搬送ロボット12がさまざまな搬送動作(例えば、各処理装置T1~T6との間で基板を搬送する搬送動作など)を行うことができる。
【0032】
本実施形態の搬送ロボット12において、ハンド33の長さ(ハンド33のハンド軸から、ハンド33の先端で半径rの円板形状の基板を保持したときの基板の中心位置までの距離)をL3、搬送チャンバ11の短辺方向長さをLとすると、(式1)を満たす。
【数1】
【0033】
3個の処理装置T1~T3は、基板搬送装置10の長辺側の一側面に配置され、3個の処理装置T4~T6は、基板搬送装置10の長辺側の他側面に配置される。
【0034】
基台30は、搬送チャンバ11内の長手方向中央部において処理装置T5と近接した位置に配置される。搬送ロボット12は、
図2に示すように、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なるように配置される原点位置N0を有している。すなわち、原点位置N0では、第1アーム31が基端から先端に向かうにつれて処理装置T5から処理装置T2に向かう方向に沿って配置され、第2アーム32が基端から先端に向かうにつれて処理装置T2から処理装置T5に向かう方向に沿って配置され、ハンド33が基端から先端に向かうにつれて処理装置T5から処理装置T2に向かう方向に沿って配置される。そのとき、第1アーム31が最も下方に配置され、上方に向かって、第2アーム32、ハンド33の順に配置される。
【0035】
搬送ロボット12は、処理装置T1~T6に対する基板の搬入および処理装置T1~T6からの基板の搬出を行うが、例えば処理装置T2に対する基板の搬入および処理装置T2からの基板の搬出を行う際の動作について、
図3に基づいて説明する。
【0036】
図3(a)は、基板を保持したハンド33が処理装置T2と対向する位置に配置される状態を示している。そのとき、ハンド33の長手方向は、処理装置T2内にアクセスするための開口に対して垂直な方向に沿っている。このように、搬送ロボット12は、処理装置T2に対する基板の搬入を行う場合、基板を保持したハンド33が、搬送チャンバ11内において処理装置T2と対向する待機位置N2に配置される。
【0037】
この状態から、基板を保持したハンド33が、
図3(b)に示すように、処理装置T2内に向かって移動することで、基板が処理装置T2内に搬入される。そのとき、ハンド33の長手方向が変化しない状態(ハンド33の長手方向が処理装置T2の開口に対して垂直な状態)で処理装置T2内に移動するように、第1アーム31及び第2アーム32が伸縮される。
【0038】
ハンド33により保持された基板が処理装置T2内の処理ステージに載置されると、基板を保持しないハンド33が、
図3(a)に示すように、処理装置T2内から、搬送チャンバ11内において処理装置T2と対向する待機位置N2に戻される。このように、処理装置T2に対する基板の搬入を行う場合、ハンド33が処理装置T2と対向する待機位置N2に配置された後で、待機位置N2と処理装置T2内との間を往復移動するように駆動される。
【0039】
なお、処理装置T2から基板の搬出を行う場合も同様に、基板を保持しないハンド33が処理装置T2と対向する待機位置N2に配置された後で、待機位置N2と処理装置T2内との間を往復移動するように駆動されることで、処理装置T2内の処理ステージに載置された基板が搬送チャンバ11内に搬出される。
【0040】
このように、搬送ロボット12において、処理装置T1~T6に対して基板の搬入および搬出を行う場合、
図4~
図6に示すように、ハンド33が処理装置T1~T6と対向する待機位置N1~N6に配置された後で、待機位置N1~N6と処理装置T1~T6内との間を往復移動するように、第1アーム31及び第2アーム32が駆動される。
【0041】
図4~
図6に示すように、搬送ロボット12において、ハンド33が待機位置N1~N6に配置された状態の第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の待機姿勢が記憶されている。そのため、ハンド33が待機位置N1~N6に配置された状態に対して、それぞれ、第1アーム31の基台30に対する角度α、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β、ハンド33の第2アーム32に対する角度γが記憶されている。
【0042】
例えば、
図4~
図6では、ハンド33が待機位置N1~N6に配置された状態の待機姿勢について記憶された第1アーム31の基台30に対する角度α1~α6、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β1~β6、ハンド33の第2アーム32に対する角度γ1~γ6を図示している。
【0043】
そのため、搬送ロボット12では、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が原点位置N0と待機位置N1~N6との間を移動するときの軌道、及び、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が待機位置N1~N6の何れかとそれと異なる他の待機位置N1~N6との間を移動するときの軌道も記憶されている。よって、通常の搬送動作を行う場合、
図7に示す原点位置N0と待機位置N1~N6との間、及び、異なる2つの待機位置N1~N6間をハンド33が移動する場合に、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33は、他の部材と干渉しないで移動可能である。
【0044】
制御部50は、基板搬送装置10が備える各部の動作を制御するとともに、各種の演算処理を行う要素であり、例えばコンピュータなどによって構成される。制御部50は、具体的には、中央演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)といったプロセッサ、基本プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)、CPUが所定の処理(データ処理)を行う際の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク装置などの不揮発性記憶装置によって構成される記憶装置などを含んで構成される。
【0045】
制御部50は、例えば記憶装置に格納されたプログラムをCPUが実行することによって、プログラムによって規定された処理を実行する。制御部50は、搬送ロボット12と電気的に接続されており、搬送ロボット2を制御可能であり、
図8に示すように、位置姿勢記憶部51と、停止位置検出部52と、正規位置選択部53と、正規姿勢判定部54とを有している。また、制御部50には、モータ31a、32a、33aが接続され、モータ31a、32a、33aには、エンコーダ31c、32c、33cがそれぞれ取り付けられる。
【0046】
位置姿勢記憶部51は、ハンド33の原点位置N0と、処理装置T1~T6に対して基板の搬入および搬出を行う場合にハンド33が待機する待機位置N1~N6と、ハンド33が原点位置N0に配置されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の原点姿勢と、ハンド33が待機位置N1~N6に配置されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の待機姿勢(第1アーム31の基台30に対する角度α、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β、ハンド33の第2アーム32に対する角度γ)とを記憶する。
【0047】
本実施形態の搬送ロボット12では、動作中に何らかの理由で原点復帰動作を行なわなければならない場合があるため、位置姿勢記憶部51は、ハンド33の位置についての複数の正規位置を記憶している。正規位置とは、原点復帰動作を行う際に、原点復帰の要求があったときにハンド33が停止している停止位置から原点位置に移動するまでに経由する位置である。
【0048】
本実施形態では、複数の正規位置として待機位置N1~N6と同一の位置が設定される。そのため、位置姿勢記憶部51は、複数の正規位置として待機位置N1~N6と同一の位置を記憶するとともに、ハンド33が各正規位置に配置されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の正規姿勢として、ハンド33が待機位置N1~N6に配置されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の待機姿勢と同一の姿勢を記憶する。以下の説明では、複数の正規位置と待機位置N1~N6は同一の位置であるため、複数の正規位置N1~N6として説明する。
【0049】
停止位置検出部52は、原点復帰の要求があったときにハンド33が停止している停止位置を検出する。具体的には、停止位置検出部52は、第1アーム軸、第2アーム軸及びハンド軸をそれぞれ回転駆動するモータ31a、32a、33aに取り付けられたエンコーダ31c、32c、33cの値より、第1アーム31の基台30に対する角度α、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β、ハンド33の第2アーム32に対する角度γを検知して、それに基づいてハンド33の停止位置を検出する。
【0050】
正規位置選択部53は、複数の正規位置のなかから、原点復帰の要求があったときにハンド33の停止位置と最も近い正規位置(以下「選択正規位置」と称する場合がある)を選択する。なお、停止位置が、複数の正規位置の全てよりも原点位置に近い場合、正規位置選択部53は、複数の正規位置のなかから1つの正規位置を選択しない。
【0051】
正規位置選択部53では、下記の数式により、複数の正規位置N1~N6のそれぞれについて停止位置Aと正規位置N1~N6との距離を算出するとともに、停止位置Aと原点位置N0との距離を算出する。
【0052】
【0053】
正規姿勢判定部54は、原点復帰動作において、ハンド33が選択正規位置に移動されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢が、位置姿勢記憶部51に記憶された正規姿勢であるか否かを判定する。
【0054】
本実施形態において、ハンド33が各正規位置に移動されたときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢が、正規姿勢と同一である場合、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が他の部材と干渉しないで原点位置まで移動可能な適正軌道を有している。
【0055】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作について、
図9に基づいて説明する。搬送ロボット12の原点復帰動作は、ハンド33の先端に基板を保持している場合も、ハンド33の先端に基板を保持していない場合も同様である。
【0056】
ステップS1において、原点復帰要求があったか否かを繰り返し判定する。原点復帰要求があった場合、ステップS2に進む。
【0057】
ステップS2において、複数の正規位置及びその位置についての正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されているか否かを判定する。正規位置及び正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されている場合、ステップS3に進む。正規位置及び正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されていない場合、ステップS12に進む。
【0058】
ステップS3において、停止位置検出部52により、第1アーム31に形成された第1アーム軸、第2アーム32に形成された第2アーム軸及びハンド33に形成されたハンド軸をそれぞれ回転駆動するモータ31a、32a、33aに取り付けられたエンコーダ31c、32c、33cの値より、第1アーム31の基台30に対する角度α、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β、ハンド33の第2アーム32に対する角度γを検知して、それに基づいて原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置Aを検出する。
【0059】
ステップS4において、正規位置選択部53により、原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置Aから複数の正規位置N1~N6までのそれぞれの距離と、原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置Aから原点位置N0までの距離とを算出して、原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置が、複数の正規位置N1~N6のなかにあるか否かを判定する。原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置がある場合、停止位置Aに最も近い正規位置を、選択正規位置として1つ選択して、ステップS5に進む。原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置がない場合、1つの正規位置を選択しないで、ステップS9に進む。
【0060】
ステップS5において、停止位置にあるハンド33を選択正規位置に移動させるように、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動する。その後、ステップS6に進む。
【0061】
ステップS6において、ハンド33を選択正規位置に移動させたときの第1アーム31の基台30に対する角度と、位置姿勢記憶部51に記憶された選択正規位置に対応した第1アーム31の基台30に対する角度αとを比較する。その後、ステップS7に進む。
【0062】
ステップS7において、ハンド33を選択正規位置に移動させた場合において、第1アーム31の基台30に対する角度が、位置姿勢記憶部51に記憶された正規姿勢に対応した第1アーム31の基台30に対する角度αと一致する場合、ステップS8に進む。第1アーム31の基台30に対する角度が、位置姿勢記憶部51に記憶された正規姿勢に対応した第1アーム31の基台30に対する角度αと一致しない場合、ステップS9に進む。
【0063】
ステップS8において、選択正規位置にあるハンド33を、位置姿勢記憶部51に記憶された選択正規位置に対応した適正軌道に基づいて原点位置まで移動する。すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置されるため、原点復帰動作が終了する。
【0064】
ステップS9において、選択正規位置にあるハンド33を第2アーム32に対して回転させて、ハンド33を第2アーム32に重なるように折り畳む。その後、ステップS10に進む。
【0065】
ステップS10において、ハンド33が第2アーム32に重なる状態で、第2アーム32を第1アーム31に対して回転させて、第2アーム32を第1アーム31に重なるように折り畳む。その後、ステップS11に進む。
【0066】
ステップS11において、ハンド33及び第2アーム32が第1アーム31に重なる状態で、第1アーム31を基台30に対して回転させて原点位置まで移動する。すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置されるため、原点復帰動作が終了する。
【0067】
ステップS2において、複数の正規位置が位置姿勢記憶部51に記憶されていないと判定され、原点復帰動作を自動的に行うことが不可能であるため、ステップS12にてエラー表示を行う。
【0068】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作の実施例について、
図10~
図16に基づいて説明する。
【0069】
(第1実施例)
搬送ロボット12が
図10(a)に示す状態において原点復帰要求があった場合、正規位置N1~N6及び原点位置N0のなかで、ハンド33の停止位置Aとの距離が最も近い位置は、正規位置N2であるため、ハンド33を移動させる正規位置として正規位置N2が選択される。その後、
図10(b)に示すように、ハンド33を正規位置N2に移動させるように、第1アーム31第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0070】
そのとき、第1アーム31の基台30に対する角度が、正規位置N2にした正規姿勢のアーム角度α2と一致するため、そのときの姿勢は、正規位置N2に対応した正規姿勢(
図4(b))と一致すると判定される。
【0071】
正規位置N2に対応した正規姿勢から原点位置まで移動する際の適正軌道は、位置姿勢記憶部51に記憶されているため、その適正軌道に基づいて、
図11に示すように、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なるように原点位置まで移動させる。
【0072】
(第2実施例)
搬送ロボット12が
図12(a)に示す状態において原点復帰要求があった場合、正規位置N1~N6及び原点位置N0のなかで、ハンド33の停止位置Aとの距離が最も近い位置は、正規位置N2であるため、ハンド33を移動させる正規位置として正規位置N2が選択される。その後、
図12(b)に示すように、ハンド33を正規位置N2に移動させるように、第1アーム31第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0073】
そのとき、第1アーム31の基台30に対した角度αが、正規位置N2に対応した正規姿勢のアーム角度α2と一致しないため、そのときの姿勢は、正規位置N2に対応した正規姿勢(
図4(b))と一致しないと判定される。
【0074】
その場合、
図13(a)に示すように、ハンド33を第2アーム32に対して回転させて、ハンド33が第2アーム32に重なるように移動させる。その後、
図13(b)に示すように、第2アーム32を第1アーム31に対して回転させて、第2アーム32が第1アーム31に重なるように移動させる。その後、
図14に示すように、第1アーム31を基台30に対して回転させて、第1アーム31を原点位置まで移動させると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置される。
【0075】
(第3実施例)
搬送ロボット12が
図15(a)に示す状態において原点復帰要求があった場合、正規位置N1~N6及び原点位置N0のなかで、ハンド33の停止位置Aとの距離が最も近い位置は、原点位置N0であるため、正規位置N1~N6のなかからハンド33を移動させる正規位置は選択されない。
【0076】
その後、
図15(b)に示すように、ハンド33を第2アーム32に対して回転させて、ハンド33が第2アーム32に重なるように移動させる。その後、
図16(a)に示すように、ハンド33が第2アーム32に重なる状態で、第2アーム32を第1アーム31に対して回転させて、第2アーム32を第1アーム31に重なるように折り畳む。ハンド33及び第2アーム32が第1アーム31に重なる状態で、第1アーム31を基台30に対して回転させて原点位置まで移動する。すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置される。
【0077】
以上のように本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法は、基台30と、基台30に対して直列に2本以上連結した第1アーム31及び第2アーム32と、最先端の第2アーム32に対して連結されるハンド33とを備える水平多関節型ロボットの原点復帰方法であって、ハンド33の位置についての複数の正規位置N1~N6と、ハンド33が正規位置N1~N6にあるときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が他の部材と干渉しないで原点位置N0まで移動するための適正軌道を有する正規姿勢とを設定し、原点復帰の要求があったときにハンド33が停止している停止位置Aを検出し、複数の正規位置N1~N6のなかから1つの正規位置を選択し、停止位置Aにあるハンド33が選択した正規位置に移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動し、ハンド33が選択した正規位置にあるときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢が正規姿勢である場合に、選択した正規位置にあるハンド33が適正軌道に基づいて原点位置N0まで移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0078】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法では、原点復帰させる場合に、ハンド33が正規位置に移動してから原点位置に戻ることで、正規位置から原点位置に戻るまでの適正軌道を使いまわすことができる。よって、原点復帰させるために、原点までの軌道を逐一計算したり、ハンド33の停止位置から原点までの軌道をいくつも記録したりする必要がなくなる。
【0079】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法において、ハンド33が選択した正規位置にあるときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢が正規姿勢でない場合に、選択した正規位置にあるハンド33を最先端の第2アーム32に重なるように折り畳んだ後で、ハンド33が原点位置N0まで移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0080】
このように構成すると、停止位置Aにあるハンド33を選択した正規位置に移動した後、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢が適正軌道を有する正規姿勢でない場合、ハンド33を最先端の第2アーム32に重なるように折り畳むことで、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を他の部材と干渉させないで原点位置N0まで移動させることができる。
【0081】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法において、停止位置Aが複数の正規位置N1~N6の全てよりも原点位置N0に近い場合に、停止位置Aにあるハンド33が正規位置N1~N6を経由しないで原点位置N0まで移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0082】
このように構成すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を他の部材と干渉させないで最短経路で原点位置N0まで移動させることができる。
【0083】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法において、搬送ロボット12は、ハンド33により保持した基板を複数の処理装置T1~T6に対して搬入及び搬出するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動可能であり、複数の正規位置N1~N6は、ハンド33が複数の処理装置T1~T6のそれぞれに対向する位置に設定される。
【0084】
このように構成すると、正規位置N1~N6を各処理装置T1~T6に対向する位置に設定することで、原点復帰動作において、通常の動作に用いる軌道を使用するため、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を他の部材と干渉させないで確実に原点位置N0まで移動させることができる。
【0085】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法において、ハンド33により保持した基板を所定の処理装置に対して搬入及び搬出動作中に停止し、原点復帰の要求があった場合、複数の正規位置N1~N6のなかから所定の処理装置に最も近い正規位置を選択する。
【0086】
このように構成すると、ハンド33が処理装置T1~T6に対して搬入及び搬出動作中に停止し、原点復帰の要求があった場合でも、基板の出し入れ動作をする際の軌道を利用してハンド33を正規位置N1~N6の何れかに移動させた後、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を他の部材と干渉させないで確実に原点位置N0まで移動させることができる。
【0087】
(第2実施形態)
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作が、第1実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作と異なる点は、複数の正規位置から1つの正規位置を選択した後のハンド33の位置を原点位置まで移動させる方法である。本実施形態の搬送ロボット12の構成は、第1実施形態の搬送ロボット12と同様であるため、説明は省略する。
【0088】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作について、
図17に基づいて説明する。
【0089】
ステップS101において、原点復帰要求があったか否かを繰り返し判定する。原点復帰要求があった場合、ステップS102に進む。
【0090】
ステップS102において、複数の正規位置及びその位置についての正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されているか否かを判定する。正規位置及び正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されている場合、ステップS103に進む。正規位置及び正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されていない場合、ステップS112に進む。
【0091】
ステップS103において、停止位置検出部52により、第1アーム31に形成されたアーム軸、第2アーム32に形成されたアーム軸及びハンド33に形成されたハンド軸をそれぞれ回転駆動するモータ31a、32a、33aに取り付けられたエンコーダ31c、32c、33cの値より、第1アーム31の基台30に対する角度α、第2アーム32の第1アーム31に対する角度β、ハンド33の第2アーム32に対する角度γを検知して、それに基づいて原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置を検出する。
【0092】
ステップS104において、正規位置選択部53により、原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置Aから複の正規位置N1~N6までのそれぞれの距離と、原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置Aから原点位置N0までの距離とを算出して、原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置が複数の正規位置N1~N6のなかにあるか否かを判定する。原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置がある場合、停止位置Aに最も近い正規位置を、選択正規位置として1つ選択して、ステップS105に進む。原点位置N0よりも停止位置Aに近い正規位置がない場合、1つの正規位置を選択しないで、ステップS109に進む。
【0093】
ステップS105において、第2アーム32の先端位置が、基板を保持したハンド33の折り畳み可能な第2アーム先端領域内か否かを判定する。第2アーム32の先端位置が第2アーム先端領域内である場合、ステップS106に進む。第2アーム32の先端位置が第2アーム先端領域内でない場合、ステップS112に進む。
【0094】
なお、基板を保持したハンド33の折り畳み可能な第2アーム先端領域とは、チャンバ11内において基板を保持したハンド33を、チャンバ11と干渉しないで第2アーム32と重なるように折り畳み可能な第2アーム先端の領域である。
【0095】
すなわち、
図18に示すように、第1アーム31に形成された第1アーム軸と第2アーム32に形成された第2アーム軸との距離をL1、第2アーム32に形成された第2アーム軸とハンド33に形成されたハンド軸との距離をL2、ハンド33に形成されたハンド軸とハンド33の位置(ハンド33により保持された基板の中心位置)との距離をL3とすると、第2アーム32の先端位置(Xu,Yu)は、(式3)で表される。
【数3】
【0096】
そのため、T軸上を(0,0)として基板の直径をLwとした場合、基板を保持したハンド33の折り畳み可能な第2アーム先端領域は、(式4)で表される領域となる。
【数4】
図18において、搬送チャンバ11の内部空間がXmin、Xmax、Ymin、Ymaxで表される領域である場合、第2アーム32の先端位置(Xu,Yu)が第2アーム先端領域に配置される場合に、基板を保持したハンド33を、チャンバ11と干渉しないで第2アーム32と重なるように折り畳み可能である。
【0097】
ステップS106において、停止位置にあるハンド33を第2アーム32に対して回転させて、ハンド33を第2アーム32に重なるように折り畳む。その後、ステップS107に進む。
【0098】
ステップS107において、ハンド33を重なるように折り畳んだ状態の第2アーム32の先端A’を、選択適正規位置に対応した正規姿勢において第2アーム32の先端に対応した位置に移動させるように、第1アーム31及び第2アーム32を駆動する。その後、ステップS108に進む。
【0099】
ステップS108において、ハンド33を、位置姿勢記憶部51に記憶された選択正規位置に対応した適正軌道に基づいて原点位置まで移動する。なお、そのときの第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の姿勢は、ハンド33が正規位置(待機位置)にあるときの正規姿勢と一致しないで、ハンド33が第2アーム32に折り畳まれた姿勢であるが、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33の位置を検知可能であり、正規姿勢から原点位置まで移動する際の適正軌道に基づいて原点位置まで移動することができる。すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置されるため、原点復帰動作が終了する。
【0100】
ステップS109において、停止位置にあるハンド33を基台30に対して回転させて、ハンド33を第2アーム32に重なるように折り畳む。その後、ステップS110に進む。
【0101】
ステップS110において、ハンド33が第2アーム32に重なる状態で、第2アーム32を第1アーム31に対して回転させて、第2アーム32を第1アーム31に重なるように折り畳む。その後、ステップS111に進む。
【0102】
ステップS111において、ハンド33及び第2アーム32が第1アーム31に重なる状態で、第1アーム31を基台30に対して回転させて原点位置まで移動する。すると、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置に配置されるため、原点復帰動作が終了する。
【0103】
ステップS102において、複数の正規位置及び正規姿勢が位置姿勢記憶部51に記憶されていないと判定され、原点復帰動作を自動的に行うことが不可能であるため、ステップS112にてエラー表示を行う。
【0104】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰動作の実施例について、
図19~
図20に基づいて説明する。
【0105】
(第4実施例)
搬送ロボット12が
図19(a)に示す状態において原点復帰要求があった場合、正規位置N1~N6及び原点位置N0のなかで、ハンド33の停止位置Aとの距離が最も近い位置は、正規位置N2であるため、ハンド33を移動させる正規位置として正規位置N2が選択される。その後、ハンド33の停止位置Aが、基板を保持したハンド33の折り畳み可能領域にある場合、
図19(b)に示すように、ハンド33を第2アーム32に対して回転移動させて、ハンド33が第2アーム32に重なるように移動させる。
【0106】
その後、
図20(a)に示すように、ハンド33を重なるように折り畳んだ状態の第2アーム32の先端A’を、正規位置N2に対応する正規姿勢において第2アーム32の先端に対応した位置に移動させるように、第1アーム31及び第2アーム32を駆動する。その後、正規位置N2に対応する正規姿勢においてハンド33を折り畳んだ状態から原点位置まで移動する際の適正軌道は、位置姿勢記憶部51に記憶されているため、その適正軌道に基づいて、
図20(b)に示すように、第1アーム31、第2アーム32及びハンド33が重なった状態で原点位置まで移動させる。
【0107】
以上のように本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法は、基台30と、基台30に対して直列に連結した第1アーム31及び第2アーム32と、最先端の第2アーム32に対して連結されるハンド33とを備える水平多関節型ロボットの原点復帰方法であって、ハンド33の位置についての正規位置N1~N6と、ハンド33が正規位置N1~N6にあるときの第1アーム31、及び第2アーム32及びハンド33が他の部材と干渉しないで原点位置N0まで移動するための適正軌道を有する正規姿勢とを設定し、原点復帰の要求があったときにハンド33が停止している停止位置Aをエンコーダ31c~33cにより検出し、複数の正規位置N1~N6のなかから1つの正規位置を選択し、停止位置Aにあるハンド33を最先端の第2アーム32に重なるように折り畳んだ後で、原点復帰の要求があったときの第2アーム32の先端A’が、選択した正規位置に対応した正規姿勢において第2アーム32の先端に対応する適正位置に移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動し、その後、適正位置にある第2アーム32の先端A’が原点位置まで移動するように第1アーム31、第2アーム32及びハンド33を駆動する。
【0108】
本実施形態の搬送ロボット12の原点復帰方法では、原点復帰させる場合に、ハンド33が重なった状態の第2アーム32の先端A’が、正規位置に対応した正規姿勢において第2アーム32の先端に対応する適正位置に移動してから原点位置に戻ることで、正規位置から原点位置に戻るまでの適正軌道を使いまわすことができる。よって、原点復帰させるために、原点までの軌道を逐一計算したり、ハンド33の停止位置から原点までの軌道をいくつも記録したりする必要がなくなる。
【0109】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0110】
上記実施形態では、複数の正規位置N1~N6が、ハンド33が複数の処理装置T1~T6のそれぞれに対向する待機位置に設定されるが、それに限られない。複数の正規位置N1~N6は、チャンバ11内の任意の位置に設定可能である。
【0111】
例えば、複数の正規位置N1~N6は、基板を保持したハンド33がチャンバ11内においてチャンバ11と干渉しないで移動可能な領域に設定可能である。
【0112】
すなわち、
図21に示すように、第1アーム31に形成された第1アーム軸と第2アーム32に形成された第2アーム軸との距離をL1、第2アーム32に形成された第2アーム軸とハンド33に形成されたハンド軸との距離をL2、ハンド33に形成されたハンド軸とハンド33の位置(ハンド33により保持された基板の中心位置)との距離をL3とすると、基板の中心位置(X,Y)は、(式5)で表される。
【数5】
【0113】
そのため、T軸上を(0,0)として基板の直径をLwとした場合、基板を保持したハンド33の動作可能領域は、(式6)で表される領域となる。
【数6】
図21において、搬送チャンバ11の内部空間がXmin、Xmax、Ymin、Ymaxで表される領域である場合、正規位置は、その内側に形成される基板を保持したハンド33の動作可能領域内に設定可能である。
【0114】
上記実施形態では、正規位置選択部53において、複数の正規位置N1~N6から1つの正規位置を選択する際に、停止位置Aに最も近い正規位置が選択されるが、それに限られない。正規位置選択部53が、複数の正規位置N1~N6から1つの正規位置を選択する方法は任意に設定してよい。
【0115】
上記実施形態では、搬送ロボット12が1つのハンド33を有しているが、それに限られない。
図22に示すように、2つのハンド133a、133bを有する搬送ロボット112においてもハンド133a、133bを原点位置に移動させることができる。その場合、
図23に示すように、第1実施形態の原点復帰動作のフローチャート(
図9)に対してステップS2とステップS3との間に、ステップS2a及びステップS2bを追加すればよい。すなわち、ステップS2aにおいて、2つのハンド133a、133bのなかで基準ハンドを指定し、ステップS2bにおいて、
図24に示すように、指定した基準ハンド以外の他のハンドを第2アームと重なるように折り畳む。このようにすれば、1つのハンド33を有する搬送ロボット12と同様に、ハンドを原点位置に移動させることができる。
【0116】
なお、2つのハンド133a、133bを有する搬送ロボット112において、ハンド133a、133bの第2アーム32に対する角度(基準方向からの角度)θが0°≦θ≦360°とする場合、180°を境に折りたたむ方向を決定する。基準方向から左回り方向を正方向とし、右回り方向を負方向とする。例えば、
図22において、ハンド133aの場合、0°≦α°<180°であるため、ハンド133aを左回りに回転させて折りたたむ。ハンド133bの場合、180°≦β°<360°であるため、ハンド133bを右回りに回転させて折りたたむ。
【0117】
上記実施形態では、原点復帰要求があったときのハンド33の停止位置を検出する際に、モータの回転角度を検出する位置検出センサとして、エンコーダ311c、32c、33cを使用したが、それに限られない。位置検出センサとして、任意のセンサを使用可能であり、例えばレゾルバを使用してもよい。
【0118】
上記実施形態では、6個の処理装置T1~T6が基板搬送装置10に接続されているが、基板搬送装置10に接続された処理装置の数は任意である。
【符号の説明】
【0119】
12 搬送ロボット(水平多関節型ロボット)
30 基台
31 第1アーム
32 第2アーム
33 ハンド
31a モータ
32a モータ
33a モータ
31c エンコーダ
32c エンコーダ
33c エンコーダ
A 停止位置
N0 原点位置
N1~N6 正規位置
T1~T6 処理装置