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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084422
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240618BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240618BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240618BHJP
   B61J 1/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B61B13/00 V
G05D1/02 G
G05D1/02 P
B65G1/04 551Z
B61J1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198691
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊人
(72)【発明者】
【氏名】位田 章太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】岸 遼司
(72)【発明者】
【氏名】川波 絢佳
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】伊井 太津喜
(72)【発明者】
【氏名】生田 規之
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
【テーマコード(参考)】
3D101
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3D101BA05
3D101BB05
3D101BB17
3D101BB34
3D101BB39
3D101BB49
3D101BB55
3F022AA08
3F022DD01
3F022EE05
3F022JJ08
3F022LL12
3F022LL14
3F022MM11
3F022NN05
3F022PP06
3F022QQ12
3F022QQ13
5H301AA03
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE02
5H301KK04
5H301KK08
5H301KK18
5H301QQ01
5H301QQ02
(57)【要約】
【課題】昇降装置の設置位置における搬送車の走行を効率化し、ひいては物品搬送設備全体としての搬送効率を向上させる。
【解決手段】物品搬送設備は、複数の搬送車と、第1走行レールと、第1走行レールよりも下側に配置され第2走行レールと、昇降レールを有する昇降装置と、制御システムとを備える。制御システムは、対象搬送車から先行要求信号(Sdp)を受信した場合に、昇降レール上に非対象搬送車がおらず、かつ、非対象搬送車から進入要求信号(Sdi)を受信していないことを条件の1つとして、昇降レールを対象位置に移動させる事前昇降処理を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送車が走行する第1走行レールと、
前記第1走行レールよりも下側に配置され、前記搬送車が走行する第2走行レールと、
前記第1走行レールと前記第2走行レールとの間で前記搬送車を昇降させる昇降装置と、
前記搬送車及び前記昇降装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1走行レールは、前記昇降装置が配置された昇降領域に対して上流側の第1上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第1下流側領域とに分断されており、
前記第2走行レールは、前記昇降領域に対して上流側の第2上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第2下流側領域とに分断されており、
前記昇降装置は、前記搬送車が走行可能であって前記昇降領域において昇降する昇降レールを備え、
前記昇降レールは、第1位置にある状態で、前記第1走行レールの前記第1上流側領域と前記第1下流側領域とを接続し、第2位置にある状態で、前記第2走行レールの前記第2上流側領域と前記第2下流側領域とを接続し、
前記搬送車は、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれに設定された進入要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して前記昇降レールへの進入許可を求める進入要求信号を送信し、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれにおける前記進入要求区間よりも上流側に設定された先行要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して先行要求信号を送信するように構成され、
複数の前記搬送車のうち、対象とする前記搬送車を対象搬送車とし、前記対象搬送車以外の前記搬送車を非対象搬送車とし、
前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のうち、前記対象搬送車がいる方を対象上流側領域とし、
前記第1位置と前記第2位置とのうち、前記対象上流側領域に対応する方を対象位置とし、前記対象位置とは異なる方を非対象位置として、
前記制御システムは、
前記対象搬送車から前記進入要求信号を受信した場合に、前記昇降レールが前記対象位置にあり、かつ、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいないことを条件として、前記対象搬送車に対して前記昇降レールへの進入を許可する進入許可信号を送信し、
前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した場合に、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がおらず、かつ、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信していないことを条件として、前記昇降レールが前記対象位置にない場合には前記昇降レールを前記対象位置に移動させる事前昇降処理を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御システムは、前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した場合に、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信していないことを条件として、前記昇降レールが前記対象位置にある場合には前記昇降レールの位置を前記対象位置に維持する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御システムは、
前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいる場合には、前記昇降レール上の前記非対象搬送車の進路に応じた前記昇降装置の動作を前記事前昇降処理よりも優先し、
前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいない場合において、前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した後で当該対象搬送車から前記進入要求信号を受信する前に、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信した場合には、前記非対象搬送車の進路に応じた前記昇降装置の動作を前記事前昇降処理よりも優先する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記第1下流側領域及び前記第2下流側領域のうち、前記対象搬送車が通行する方を対象下流側領域として、
前記対象搬送車は、
前記進入許可信号を受信したことを条件として前記昇降レールに進入し、
前記昇降レールに進入後に、前記制御システムに対して前記対象下流側領域への進入許可を求める退出要求信号を送信し、
前記制御システムは、
前記対象搬送車から前記退出要求信号を受信した場合に、前記昇降レールが前記第1位置と前記第2位置とのうち前記対象下流側領域に対応する方の位置にあることを条件として、前記対象搬送車に対して前記対象下流側領域への進入を許可する退出許可信号を送信し、
前記対象搬送車は、
前記退出許可信号を受信したことを条件として前記昇降レールから退出して前記対象下流側領域に進入する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記対象搬送車は、前記昇降レールからの退出後、前記制御システムに対して前記対象下流側領域に進入したことを通知する本線進入通知信号を送信する、請求項4に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記制御システムは、複数の前記搬送車の搬送経路に沿うそれぞれの推定位置を把握可能であり、前記対象搬送車に対して前記退出許可信号を送信した後、所定時間内に前記対象搬送車からの前記本線進入通知信号を受信しない場合には、前記対象搬送車の推定位置に基づいて前記対象搬送車の前記対象下流側領域への進入の有無を判定する、請求項5に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記制御システムは、前記昇降装置を制御する昇降制御装置と、複数の前記搬送車及び前記昇降制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
前記搬送車は、前記上位制御装置と、電波を用いた無線通信によって信号の送受信を行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する複数の搬送車と、これらを制御する制御システムとを備えた物品搬送設備が利用されている。このような物品搬送設備の一例が、特開2006-313463号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の物品搬送設備では、搬送車(5)が走行レール(1)の分岐部又は合流部の手前に差しかかった際に、搬送車が制御システム(ゾーンコントローラ11)に対して進入要求信号(特許文献1における「ブロッキング要求」)を送信する。進入要求信号を受信した制御システムは、分岐部等への進入の可否を判定し、許可する場合には当該搬送車に進入許可信号(特許文献1における「許可」)を返送する。このような進入調整処理を実行することで、分岐部等での搬送車どうしの衝突を回避することができる。
【0004】
ところで、例えば特開2022-96668号公報(特許文献2)に開示されているように、搬送車(天井搬送車12)の走行経路を上下に並列させた物品搬送設備も知られている(特許文献2の段落0027、図3等)。このような物品搬送設備では、第1走行レール(上方走行レール11A)と、当該第1走行レールよりも下側に配置された第2走行レール(下方走行レール11B)との間で搬送車を移動可能とするため、それらの間に昇降装置が設けられる場合がある。
【0005】
昇降装置が設けられる位置は、特許文献1の物品搬送設備における分岐部又は合流部と同様に考えることができ、当該位置において、特許文献1と同様の進入調整処理を適用することが考えられる。このような場合において、単に搬送車どうしの衝突を回避できるようにするだけでなく、昇降装置が設けられる位置を搬送車が効率的に通過できるようになっていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-313463号公報
【特許文献2】特開2022-96668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、昇降装置の設置位置における搬送車の走行を効率化し、ひいては物品搬送設備全体としての搬送効率を向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る物品搬送設備は、
物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送車が走行する第1走行レールと、
前記第1走行レールよりも下側に配置され、前記搬送車が走行する第2走行レールと、
前記第1走行レールと前記第2走行レールとの間で前記搬送車を昇降させる昇降装置と、
前記搬送車及び前記昇降装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1走行レールは、前記昇降装置が配置された昇降領域に対して上流側の第1上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第1下流側領域とに分断されており、
前記第2走行レールは、前記昇降領域に対して上流側の第2上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第2下流側領域とに分断されており、
前記昇降装置は、前記搬送車が走行可能であって前記昇降領域において昇降する昇降レールを備え、
前記昇降レールは、第1位置にある状態で、前記第1走行レールの前記第1上流側領域と前記第1下流側領域とを接続し、第2位置にある状態で、前記第2走行レールの前記第2上流側領域と前記第2下流側領域とを接続し、
前記搬送車は、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれに設定された進入要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して前記昇降レールへの進入許可を求める進入要求信号を送信し、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれにおける前記進入要求区間よりも上流側に設定された先行要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して先行要求信号を送信するように構成され、
複数の前記搬送車のうち、対象とする前記搬送車を対象搬送車とし、前記対象搬送車以外の前記搬送車を非対象搬送車とし、
前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のうち、前記対象搬送車がいる方を対象上流側領域とし、
前記第1位置と前記第2位置とのうち、前記対象上流側領域に対応する方を対象位置とし、前記対象位置とは異なる方を非対象位置として、
前記制御システムは、
前記対象搬送車から前記進入要求信号を受信した場合に、前記昇降レールが前記対象位置にあり、かつ、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいないことを条件として、前記対象搬送車に対して前記昇降レールへの進入を許可する進入許可信号を送信し、
前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した場合に、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がおらず、かつ、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信していないことを条件として、前記昇降レールが前記対象位置にない場合には前記昇降レールを前記対象位置に移動させる事前昇降処理を実行する。
【0009】
この構成によれば、対象搬送車が進入要求区間よりも上流側の先行要求区間にいるときに、進入要求信号に先立って先行要求信号を制御システムに対して送信する。このため、制御システムは、対象搬送車が昇降レールを通行しようとしていることを事前に把握することができる。先行要求信号を受信した制御システムは、昇降レールが対象位置にない場合には、非対象搬送車の走行の妨げとならないようにしつつ、昇降レールを事前に対象位置に移動させることができる。よって、昇降レールを通過しようとする対象搬送車が進入可能となるまで昇降レールの手前で待つ時間を短縮でき、昇降領域における対象搬送車の走行を効率化することができる。これにより、物品搬送設備全体としての搬送効率を向上させることができる。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】走行レール及び搬送車の正面図
図3】昇降領域及びその前後の領域の模式図
図4】制御システムのブロック図
図5】昇降領域を通過する搬送車に対する処理のフローチャート
図6】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例1)
図7】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例2)
図8】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例3)
図9】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例4)
図10】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例5)
図11】搬送車が昇降領域を経由して走行する場合の説明図(例6)
【発明を実施するための形態】
【0012】
物品搬送設備の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、物品搬送設備1は、搬送車2と、第1走行レール3と、第2走行レール4と、昇降装置5と、制御システム6とを備えている。第1走行レール3と第2走行レール4とは、平面視で重なっている。
【0014】
搬送車2は、物品Bを搬送する。搬送車2は、走行経路Rに沿って走行して物品Bを搬送する。本実施形態では、走行経路Rは、環状に形成された主搬送経路Rmと、それぞれ環状に形成されるとともに主搬送経路Rmから分岐して再度主搬送経路Rmに合流する複数の副搬送経路Rsとを含んでいる。これらの走行経路Rに沿って、複数の搬送車2が、制御システム6からの搬送指令に基づいて、それぞれ物品Bを搬送するように構成されている。
【0015】
なお、物品搬送設備1で取り扱われ、搬送車2によって搬送される物品Bとしては、様々なものがある。例えば物品搬送設備1が半導体製造工場で用いられる場合には、ウェハを収容するウェハ収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)等が、物品Bとされる。この場合、搬送車2は、ウェハ収容容器やレチクル収容容器等の物品Bを、走行経路Rに沿って各工程間に亘って搬送する。
【0016】
搬送車2としては、本実施形態では天井9の付近を走行する無人搬送車が用いられる。図2に示すように、本実施形態の搬送車2は、走行部21と、移載部22とを有している。走行部21は、天井9の付近に設置された第1走行レール3又は第2走行レール4上を走行する。移載部22は、走行部21から吊下支持されており、走行部21の走行中に物品Bを保持するとともに、走行部21の停止中に物品Bの供給部や処理装置等との間で物品Bを移載する。
【0017】
本実施形態では、第1走行レール3は、天井9の直下の位置に設けられている。第1走行レール3は、走行経路Rに沿って設置されている。第1走行レール3は、第1レール体31と、第1支持体32とを有する。第1レール体31は、搬送車2の走行部21が走行する軌道となるものであり、左右に分かれて一対設けられている。これら一対の第1レール体31は、第1支持体32によって、天井9から直接吊下支持されている。
【0018】
第2走行レール4は、天井9の付近であって第1走行レール3よりも下側に設けられている。第2走行レール4は、走行経路Rに沿って設置されている。第2走行レール4は、第2レール体41と、第2支持体42とを有する。第2レール体41は、搬送車2の走行部21が走行する軌道となるものであり、左右に分かれて一対設けられている。これら一対の第2レール体41は、第2支持体42によって、第1走行レール3を走行する搬送車2の移載部22よりもさらに下側に水平面に沿って設けられた支持壁9Aから吊下支持されている。
【0019】
図3に示すように、第1走行レール3及び第2走行レール4は、走行経路Rの全体に亘って連続している訳ではなく、一部が分断されている。第1走行レール3及び第2走行レール4は、昇降装置5の付近で分断されている。ここで、本実施形態では、昇降装置5が配置された領域を昇降領域ALと称する。
【0020】
第1走行レール3は、昇降領域ALに対して上流側の第1上流側領域AU1と、昇降領域ALに対して下流側の第1下流側領域AD1とに分断されている。同様に、第2走行レール4は、昇降領域ALに対して上流側の第2上流側領域AU2と、昇降領域ALに対して下流側の第2下流側領域AD2とに分断されている。言うまでもないが、「上流側」及び「下流側」は、搬送車2の走行方向を基準とする概念であり、前進する先が下流側であり、その反対側が上流側である。走行経路Rに沿う第1上流側領域AU1の範囲と第2上流側領域AU2の範囲とは同じであり、同様に、走行経路Rに沿う第1下流側領域AD1の範囲と第2下流側領域AD2の範囲とは同じとなっている。
【0021】
昇降装置5は、第1走行レール3と第2走行レール4との間(昇降領域AL)に設置されており、昇降領域ALで搬送車2を昇降させる。昇降装置5は、昇降レール51と、図示が省略された昇降機構とを備えている。昇降レール51は、搬送車2の走行部21が走行可能な一対のレール体を有している。昇降レール51は、昇降機構によって、第1位置P1と、それよりも下方の第2位置P2との間で昇降可能に構成されている。なお、昇降機構は、例えば油圧駆動機構やモータ駆動機構等、各種の方式のものを採用することができる。
【0022】
第1位置P1は、第1走行レール3の設置高さに設定されている。昇降レール51が第1位置P1まで上昇すると、第1走行レール3の分断された部分が昇降レール51で補完される。すなわち、昇降レール51は、第1位置P1にある状態で、第1走行レール3の第1上流側領域AU1と第1下流側領域AD1とを接続する。この状態で、搬送車2は、第1走行レール3の第1上流側領域AU1から昇降レール51へと進入し、また、昇降レール51から第1下流側領域AD1へと退出することができる。
【0023】
第2位置P2は、第2走行レール4の設置高さに設定されている。昇降レール51が第2位置P2まで下降すると、第2走行レール4の分断された部分が昇降レール51で補完される。すなわち、昇降レール51は、第2位置P2にある状態で、第2走行レール4の第2上流側領域AU2と第2下流側領域AD2とを接続する。この状態で、搬送車2は、第2走行レール4の第2上流側領域AU2から昇降レール51へと進入し、また、昇降レール51から第2下流側領域AD2へと退出することができる。
【0024】
本実施形態では、第1走行レール3の第1上流側領域AU1に、第1通過地点Pp1と、第1進入地点Pi1と、第1停止地点Ps1とが設定されている。また、第1走行レール3の第1下流側領域AD1に、第1退出地点Po1が設定されている。
【0025】
第1通過地点Pp1は、第1走行レール3を走行している搬送車2が昇降領域ALに近づいていることの目安となる地点である。第1進入地点Pi1は、第1通過地点Pp1よりも下流側に設定されており、搬送車2が昇降領域ALの手前にさしかかったことの目安となる地点である。第1停止地点Ps1は、第1進入地点Pi1よりもさらに下流側に設定されており、搬送車2が昇降領域ALの手前で停止する場合の目安となる地点である。第1退出地点Po1は、搬送車2が昇降領域AL(昇降レール51)から退出したことの目安となる地点である。
【0026】
同様に、第2走行レール4の第2上流側領域AU2に、第2通過地点Pp2と、第2進入地点Pi2と、第2停止地点Ps2とが設定されている。また、第2走行レール4の第2下流側領域AD2に、第2退出地点Po2が設定されている。
【0027】
第2通過地点Pp2は、第2走行レール4を走行している搬送車2が昇降領域ALに近づいていることの目安となる地点である。第2進入地点Pi2は、第2通過地点Pp2よりも下流側に設定されており、搬送車2が昇降領域ALの手前にさしかかったことの目安となる地点である。第2停止地点Ps2は、第2進入地点Pi2よりもさらに下流側に設定されており、搬送車2が昇降領域ALの手前で停止する場合の目安となる地点である。第2退出地点Po2は、搬送車2が昇降領域AL(昇降レール51)から退出したことの目安となる地点である。
【0028】
また、本実施形態では、第1走行レール3の第1上流側領域AU1及び第2走行レール4の第2上流側領域AU2のそれぞれに、進入要求区間ZIと先行要求区間ZPとが設定されている。
【0029】
進入要求区間ZIは、当該区間にいる搬送車2が制御システム6に対して昇降領域AL(昇降レール51)への進入許可を求める区間である。進入要求区間ZIは、第1上流側領域AU1においては第1進入地点Pi1と第1停止地点Ps1との間の区間として設定され、第2上流側領域AU2においては第2進入地点Pi2と第2停止地点Ps2との間の区間として設定されている。搬送車2は、進入要求区間ZIにいる場合(例えば、第1進入地点Pi1又は第2進入地点Pi2に到達したとき)に、制御システム6に対して進入要求信号Sdiを送信する。
【0030】
なお、搬送車2は、許可を得て進入要求区間ZIから昇降領域ALに進入したとき(第1停止地点Ps1又は第2停止地点Ps2を通過したとき)、制御システム6に対して退出要求信号Sdoを送信する。また、搬送車2は、許可を得て昇降領域ALから退出してその先の領域に進入したとき(第1退出地点Po1又は第2退出地点Po2を通過したとき)、制御システム6に対して本線進入通知信号Snrを送信する。
【0031】
先行要求区間ZPは、進入要求区間ZIよりも上流側に設定されている。先行要求区間ZPは、当該区間にいる搬送車2が、進入要求区間ZIに到達する前に先行して、制御システム6に対して昇降レール51を第1位置P1及び第2位置P2のうちの所望の位置とするように要求する区間である。先行要求区間ZPは、第1上流側領域AU1においては第1通過地点Pp1と第1進入地点Pi1との間の区間として設定され、第2上流側領域AU2においては第2通過地点Pp2と第2進入地点Pi2との間の区間として設定されている。搬送車2は、先行要求区間ZPにいる場合(例えば、第1通過地点Pp1又は第2通過地点Pp2に到達したとき)に、制御システム6に対して先行要求信号Sdpを送信する。
【0032】
また、本実施形態では、昇降領域ALに、第1センサSe1と、第2センサSe2と、第3センサSe3とが設置されている。第1センサSe1は、昇降レール51が第1位置P1にあるか否かを検出する。第2センサSe2は、昇降レール51が第2位置P2にあるか否かを検出する。第3センサSe3は、昇降レール51と共に昇降するように設けられており、昇降レール51上における搬送車2の存否を検出する。これらの第1センサSe1、第2センサSe2、及び第3センサSe3としては、例えば反射型又は透過型の光電センサや、レーザセンサ等、各種の検出原理に基づくものを採用することができる。
【0033】
制御システム6は、第1センサSe1及び第2センサSe2の検出結果に基づき、その時点における昇降レール51の位置を把握することができる。制御システム6は、第3センサSe3の検出結果に基づき、その時点における昇降レール51の空席状況を把握することができる。そして、制御システム6は、その時点における昇降レール51の位置や空席状況に基づき、搬送車2からの先行要求に対して応じるか否か、進入要求に対して許可するか否か、退出要求に対して許可するか否か等を判定する。
【0034】
制御システム6は、搬送車2からの進入要求に対して許可を与える場合には、その搬送車2に対して進入許可信号Saiを送信する。また、制御システム6は、搬送車2からの退出要求に対して許可を与える場合には、その搬送車2に対して退出許可信号Saoを送信する。また、制御システム6は、搬送車2からの先行要求に対して応諾する場合には、昇降装置5に対して動作コマンドを送信する。
【0035】
制御システム6は、搬送車2及び昇降装置5を制御する。図4に示すように、制御システム6は、上位制御装置61と、昇降制御装置62とを備え、これらのうち上位制御装置61は、エリア制御装置611と、統合制御装置612とを備えている。上位制御装置61は、複数の搬送車2を制御するとともに、昇降制御装置62を制御する。エリア制御装置611は、昇降装置5を含むその上流側及び下流側のエリアにおける複数の搬送車2の動作と、昇降制御装置62とを制御する。統合制御装置612は、物品搬送設備1の全体における複数の搬送車2の動作を統括的に制御する。統合制御装置612は、搬送経路に沿って設置された例えばICタグやバーコード等の搬送車2による読取情報に基づき、複数の搬送車2の搬送経路に沿うそれぞれの推定位置を把握可能である。昇降制御装置62は、昇降装置5を制御する。
【0036】
なお、図4の機能ブロック図において補助的に破線で示すように、本実施形態では、エリア制御装置611と昇降制御装置62とが、第1制御ユニットCU1に実装されている。また、統合制御装置612が、第1制御ユニットCU1とは異なる第2制御ユニットCU2に実装されている。第1制御ユニットCU1と第2制御ユニットCU2とは、互いに通信可能に構成されている。
【0037】
複数の搬送車2と、昇降装置5と、制御システム6とは、互いに通信可能に構成されている。本実施形態では、複数の搬送車2と、制御システム6(ここでは特に、上位制御装置61)とは、電波を用いた無線通信(例えば、Wi-Fi等のIEEE802.11規格の無線LAN)によって通信可能に構成されている。複数の搬送車2は、電波を用いた無線通信によって、先行要求信号Sdp、進入要求信号Sdi、及び退出要求信号Sdo等の各種信号を、制御システム6(上位制御装置61)に対して送信可能である。また、制御システム6(上位制御装置61)は、電波を用いた無線通信によって、進入許可信号Sai及び退出許可信号Sao等の各種信号を、搬送車2に対して送信可能である。
【0038】
また、本実施形態では、昇降装置5と制御システム6(ここでは特に、昇降制御装置62)とは、通信ケーブルを用いた有線通信(例えば、AS-i等)によって通信可能に構成されている。制御システム6(昇降制御装置62)は、通信ケーブルを用いた有線通信によって、昇降装置5を制御するための動作コマンドを送信可能である。
【0039】
以下、搬送車2が、第1走行レール3の第1上流側領域AU1又は第2走行レール4の第2上流側領域AU2から、昇降領域ALを経由して、第1走行レール3の第1下流側領域AD1又は第2走行レール4の第2下流側領域AD2へと進む場合の制御について説明する。
【0040】
なお、以下の説明では、複数の搬送車2のうち、対象とする搬送車2を「対象搬送車2T」と言い、対象搬送車2T以外の搬送車2を「非対象搬送車2N」と言う場合がある。また、第1上流側領域AU1及び第2上流側領域AU2のうち、対象搬送車2Tがいる方を「対象上流側領域AUT」と言い、対象搬送車2Tがいない方を「非対象上流側領域AUN」と言う場合がある。また、第1位置P1と第2位置P2とのうち、対象上流側領域AUTに対応する方を「対象位置PT」と言い、対象位置PTとは異なる方(すなわち、非対象上流側領域AUNに対応する方)を「非対象位置PN」と言う場合がある。また、第1下流側領域AD1及び第2下流側領域AD2のうち、対象搬送車2Tが通行する方を「対象下流側領域ADT」と言い、対象搬送車2Tが通行しない方を「非対象下流側領域ADN」と言う場合がある。
【0041】
図5に示すように、対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達すると(ステップ#01)、対象搬送車2Tは、上位制御装置61(ここでは特に、エリア制御装置611)に対して先行要求信号Sdpを送信する(ステップ#02)。なお、対象搬送車2Tは、先行要求信号Sdpを送信した後も、そのまま進行を続ける。上位制御装置61は、対象搬送車2Tから先行要求信号Sdpを受信すると、その先行要求に対して応諾するか否かを判定する。
【0042】
上位制御装置61は、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがいる場合には、対象搬送車2Tからの先行要求には応じないと判定する。この場合、上位制御装置61は、昇降レール51上に既にある非対象搬送車2Nの進路に応じた昇降装置5の動作を優先的に行わせる。具体的には、上位制御装置61は、昇降レール51を、第1位置P1と第2位置P2とのうち、その非対象搬送車2Nにとっての対象下流側領域ADTに対応する方の位置へと移動させる。
【0043】
また、上位制御装置61は、非対象搬送車2Nから進入要求信号Sdiを既に受信している場合にも、対象搬送車2Tからの先行要求には応じないと判定する。この場合、上位制御装置61は、受信済の進入要求信号Sdiの送信元の非対象搬送車2Nの進路に応じた昇降装置5の動作を優先的に行わせる。具体的には、上位制御装置61は、昇降レール51を、第1位置P1と第2位置P2とのうち、その非対象搬送車2Nにとっての対象上流側領域AUTに対応する方の位置へと移動させる。
【0044】
上位制御装置61は、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがおらず、かつ、非対象搬送車2Nから進入要求信号Sdiを受信していない場合に、対象搬送車2Tからの先行要求を応諾すると判定する。この場合、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して先行要求を応諾する旨の応諾応答信号Srpを返送する(ステップ#03)。そして、上位制御装置61は、先行要求を応諾する場合において、昇降レール51が対象位置PTにない場合には、原則として、事前昇降処理を実行する(ステップ#04)。ここで、事前昇降処理は、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達する前に、先行して昇降レール51を対象位置PTに移動させ始める処理である。
【0045】
なお、上位制御装置61は、先行要求を応諾する場合において、昇降レール51が既に対象位置PTにある場合には、原則として、昇降レール51の位置を対象位置PTに維持する。
【0046】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達すると(ステップ#05)、対象搬送車2Tは、上位制御装置61に対して進入要求信号Sdiを送信する(ステップ#06)。なお、対象搬送車2Tは、進入要求信号Sdiを送信した後も、そのまま第1停止地点Ps1又は第2停止地点Ps2まで進行を進める。上位制御装置61は、対象搬送車2Tから進入要求信号Sdiを受信すると、その進入要求に対して許可するか否かを判定する。
【0047】
上位制御装置61は、昇降レール51が未だ対象位置PTにない場合には、対象搬送車2Tからの進入要求を許可しない。また、上位制御装置61は、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがいる場合も、対象搬送車2Tからの進入要求を許可しない。上位制御装置61は、昇降レール51が対象位置PTにあり、かつ、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがいない場合に、対象搬送車2Tからの進入要求に対して許可を与える。この場合、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを送信する(ステップ#07)。
【0048】
対象搬送車2Tは、上位制御装置61から進入許可信号Saiを受信すると、第1停止地点Ps1又は第2停止地点Ps2を超えて、昇降レール51に進入する(ステップ#08)。加えて、対象搬送車2Tは、上位制御装置61に対して退出要求信号Sdoを送信する(ステップ#09)。上位制御装置61は、対象搬送車2Tから退出要求信号Sdoを受信すると、その退出要求に対して許可するか否かを判定する。
【0049】
上位制御装置61は、昇降レール51が、第1位置P1と第2位置P2とのうち、未だ対象下流側領域ADTに対応する方の位置にない場合には、対象搬送車2Tからの退出要求を許可しない。上位制御装置61は、昇降レール51が対象下流側領域ADTに対応する方の位置にある場合に、対象搬送車2Tからの退出要求に対して許可を与える。この場合、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを送信する(ステップ#10)。
【0050】
対象搬送車2Tは、上位制御装置61から退出許可信号Saoを受信すると、昇降レール51から退出して対象下流側領域ADTに進入し、そのまま進行を続ける(ステップ#11)。
【0051】
対象搬送車2Tは、第1退出地点Po1又は第2退出地点Po2を通過する際(例えば当該地点に設けられたICタグやバーコード等を読み取ると)、対象下流側領域ADTに進入したことを通知する本線進入通知信号Snrを上位制御装置61に対して送信する(ステップ#12)。この本線進入通知信号Snrを受信したことをもって、上位制御装置61は、対象搬送車2Tが昇降レール51から退出して実際に対象下流側領域ADTに進入したことを把握できる。上位制御装置61は、本線進入通知信号Snrを受信すると、対象搬送車2Tに対してそれを受理した旨の進入応答信号Srrを返送する(ステップ#13)。
【0052】
これらの場合において、対象搬送車2Tは、必要に応じて、先行要求信号Sdp、進入要求信号Sdi、退出要求信号Sdo、及び本線進入通知信号Snrのリトライ送信を行う。対象搬送車2Tは、応諾応答信号Srpを上位制御装置61から受信するまでは、上位制御装置61に対して所定周期で先行要求信号Sdpを繰り返し送信する。また、対象搬送車2Tは、進入許可信号Saiを上位制御装置61から受信するまでは、上位制御装置61に対して所定周期で進入要求信号Sdiを繰り返し送信する。また、対象搬送車2Tは、退出許可信号Saoを上位制御装置61から受信するまでは、上位制御装置61に対して所定周期で退出要求信号Sdoを繰り返し送信する。また、対象搬送車2Tは、進入応答信号Srrを上位制御装置61から受信するまでは、上位制御装置61に対して所定周期で本線進入通知信号Snrを繰り返し送信する。
【0053】
なお、上位制御装置61(ここでは特に、エリア制御装置611)は、退出許可信号Saoを送信した後、所定時間内に対象搬送車2Tからの本線進入通知信号Snrを受信しない場合には、上位制御装置61(ここでは特に、統合制御装置612)にて把握している対象搬送車2Tの推定位置を参照する。そして、上位制御装置61は、対象搬送車2Tの推定位置に基づいて、対象搬送車2Tの対象下流側領域ADTへの進入の有無を判定する。
【0054】
本実施形態では、上位制御装置61は、対象搬送車2Tからの先行要求を応諾する場合において、昇降レール51が対象位置PTにない場合であっても、一定条件下、例外的に事前昇降処理を中断するように構成されている。具体的には、上位制御装置61は、対象搬送車2Tから先行要求信号Sdpを受信した後で、当該対象搬送車2Tから進入要求信号Sdiを受信する前に、非対象搬送車2Nから進入要求信号Sdiを受信した場合には、応諾条件を満たしている場合であっても事前昇降処理を中断する。この場合、上位制御装置61は、割り込んできた進入要求信号Sdiの送信元の非対象搬送車2Nの進路に応じた昇降装置5の動作を優先的に行わせる。具体的には、上位制御装置61は、昇降レール51を、第1位置P1と第2位置P2とのうち、その非対象搬送車2Nにとっての対象上流側領域AUTに対応する方の位置へと移動させる。
【0055】
図6図11は、対象搬送車2Tが、第1走行レール3又は第2走行レール4の上流側領域AU1/AU2から、昇降領域ALを経由して、第1走行レール3又は第2走行レール4の下流側領域AD1/AD2へと進む場合の具体例を示している。
【0056】
[例1]
図6に示す例1は、第1走行レール3の第1上流側領域AU1を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第1走行レール3の第1下流側領域AD1へと進む場合の一具体例である。例1では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側には他の搬送車2はおらず、また、昇降レール51は初期段階で空席の状態で第2位置P2にあるものとする。本例では、第1上流側領域AU1が対象上流側領域AUTであり、第1位置P1が対象位置PTであり、第2位置P2が非対象位置PNであり、第1下流側領域AD1が対象下流側領域ADTである。
【0057】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第1通過地点Pp1を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがおらず、昇降レール51が非対象位置PNである第2位置P2にあり、さらに非対象搬送車2Nからの別の先行要求信号Sdpも送信されていないため、上位制御装置61は、昇降制御装置62を介して昇降装置5を制御し、昇降レール51を対象位置PTである第1位置P1へと上昇させる(言い換えれば、事前昇降処理を実行する)。
【0058】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第1進入地点Pi1を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nはいないため、昇降レール51が第1位置P1に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0059】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は既に対象下流側領域ADT(本例では第1下流側領域AD1)に対応する位置である第1位置P1にあるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第1走行レール3を再度進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第1退出地点Po1を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0060】
[例2]
図7に示す例2は、第1走行レール3の第1上流側領域AU1を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第2走行レール4の第2下流側領域AD2へと進む場合の一具体例である。例2では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側には他の搬送車2はおらず、また、昇降レール51は初期段階で空席の状態で第2位置P2にあるものとする。本例では、第1上流側領域AU1が対象上流側領域AUTであり、第1位置P1が対象位置PTであり、第2位置P2が非対象位置PNであり、第2下流側領域AD2が対象下流側領域ADTである。
【0061】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第1通過地点Pp1を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがおらず、昇降レール51が非対象位置PNである第2位置P2にあり、さらに非対象搬送車2Nからの別の先行要求信号Sdpも送信されていないため、上位制御装置61は、昇降制御装置62を介して昇降装置5を制御し、昇降レール51を対象位置PTである第1位置P1へと上昇させる(言い換えれば、事前昇降処理を実行する)。
【0062】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第1進入地点Pi1を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nはいないため、昇降レール51が第1位置P1に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0063】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は非対象下流側領域ADN(本例では第1下流側領域AD1)に対応する位置である第1位置P1にあるため、上位制御装置61は、退出許可信号Saoの送信を留保する。そして、上位制御装置61は、昇降制御装置62を介して昇降装置5を制御し、対象搬送車2Tが乗り入れている昇降レール51を、対象下流側領域ADT(本例では第2下流側領域AD2)に対応する位置である第2位置P2へと下降させる。昇降レール51が第2位置P2に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第2走行レール4を進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第2退出地点Po2を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0064】
[例3]
図8に示す例3は、第1走行レール3の第1上流側領域AU1を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第2走行レール4の第2下流側領域AD2へと進む場合の一具体例である。例3では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側には他の搬送車2はおらず、また、昇降レール51は初期段階で空席の状態で第1位置P1にあるものとする。本例では、第1上流側領域AU1が対象上流側領域AUTであり、第1位置P1が対象位置PTであり、第2位置P2が非対象位置PNであり、第2下流側領域AD2が対象下流側領域ADTである。
【0065】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第1通過地点Pp1を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、昇降レール51が既に対象位置PTである第1位置P1にあるため、上位制御装置61は、昇降装置5に対して新たな制御を実施せず、昇降レール51を第1位置P1に維持させる。
【0066】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第1進入地点Pi1を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51が既に第1位置P1あり、かつ、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがいないため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0067】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は非対象下流側領域ADN(本例では第1下流側領域AD1)に対応する位置である第1位置P1にあるため、上位制御装置61は、退出許可信号Saoの送信を留保する。そして、上位制御装置61は、昇降制御装置62を介して昇降装置5を制御し、対象搬送車2Tが乗り入れている昇降レール51を、対象下流側領域ADT(本例では第2下流側領域AD2)に対応する位置である第2位置P2へと下降させる。昇降レール51が第2位置P2に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第2走行レール4を進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第2退出地点Po2を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0068】
[例4]
図9に示す例4は、第1走行レール3の第1上流側領域AU1を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第1走行レール3の第1下流側領域AD1へと進む場合の一具体例である。例4では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側の第1走行レール3及び第2走行レール4には他の搬送車2はいないが、昇降レール51が他の搬送車2を乗せた状態で第2位置P2に向けて下降中であるものとする。本例では、第1上流側領域AU1が対象上流側領域AUTであり、第1位置P1が対象位置PTであり、第2位置P2が非対象位置PNであり、第1下流側領域AD1が対象下流側領域ADTである。
【0069】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第1通過地点Pp1を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、昇降レール51上に既に非対象搬送車2Nがいるため、上位制御装置61は、昇降装置5に対して新たな制御を実施せず、第2位置P2への昇降レール51の下降をそのまま継続させる。
【0070】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第1進入地点Pi1を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがいるか、仮にいなかったとしても少なくとも昇降レール51が非対象位置PNである第2位置P2にあるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対する進入許可信号Saiの送信を留保する。その間、対象搬送車2Tは、第1停止地点Ps1で待機する。やがて、先行の非対象搬送車2Nが退出して空席となった昇降レール51が上昇して対象位置PTである第1位置P1に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0071】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は既に対象下流側領域ADT(本例では第1下流側領域AD1)に対応する位置である第1位置P1にあるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第1走行レール3を再度進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第1退出地点Po1を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0072】
[例5]
図10に示す例5は、第2走行レール4の第2上流側領域AU2を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第2走行レール4の第2下流側領域AD2へと進む場合の一具体例である。例5では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側(具体的には、進入要求区間ZI)の第1走行レール3を非対象搬送車2Nが走行している。本例では、第2上流側領域AU2が対象上流側領域AUTであり、第2位置P2が対象位置PTであり、第1位置P1が非対象位置PNであり、第2下流側領域AD2が対象下流側領域ADTである。
【0073】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第2通過地点Pp2を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、先行の非対象搬送車2Nが既に進入要求区間ZIにあり、当該非対象搬送車2Nからの進入要求信号Sdiが送信されているため、上位制御装置61は、昇降装置5に対して新たな制御を実施せず、非対象搬送車2Nからの先行要求信号Sdpに基づく昇降レール51の移動をそのまま継続させる。図示の例では、進入要求区間ZIにある非対象搬送車2Nにとっての対象位置PTである第1位置P1に向けて、昇降レール51をそのまま上昇させる。
【0074】
その後、対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第2進入地点Pi2を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51上に先行の非対象搬送車2Nがいるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対する進入許可信号Saiの送信を留保する。その間、対象搬送車2Tは、第2停止地点Ps2で待機する。やがて、先行の非対象搬送車2Nが退出して空席となった昇降レール51が最終的に対象位置PTである第2位置P2に到達すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0075】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は既に対象下流側領域ADT(本例では第2下流側領域AD2)に対応する位置である第2位置P2にあるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第2走行レール4を再度進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第2退出地点Po2を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0076】
[例6]
図11に示す例6は、第2走行レール4の第2上流側領域AU2を走行してきた対象搬送車2Tが、昇降領域ALを経由して、第2走行レール4の第2下流側領域AD2へと進む場合の一具体例である。例6では、対象搬送車2Tよりも昇降装置5側(具体的には、先行要求区間ZP)の第1走行レール3を非対象搬送車2Nが走行している。本例では、第2上流側領域AU2が対象上流側領域AUTであり、第2位置P2が対象位置PTであり、第1位置P1が非対象位置PNであり、第2下流側領域AD2が対象下流側領域ADTである。
【0077】
対象搬送車2Tが先行要求区間ZPに到達(第2通過地点Pp2を通過)すると、対象搬送車2Tは先行要求信号Sdpを送信する。本例では、昇降レール51上に非対象搬送車2Nがおらず、昇降レール51が非対象位置PNである第1位置P1にあり、さらに先行の非対象搬送車2Nから先行要求信号Sdpも未だ送信されていないため、上位制御装置61は、昇降制御装置62を介して昇降装置5を制御し、昇降レール51を対象位置PTである第2位置P2へと下降させ始める(言い換えれば、事前昇降処理を開始する)。
【0078】
但し本例では、その後まもなく、先行の非対象搬送車2Nが先に進入要求区間ZIに到達(第1進入地点Pi1を通過)して、先に進入要求信号Sdiを送信することになる。非対象搬送車2Nからの進入要求信号Sdiを受信した上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対する事前昇降処理を中断し、非対象搬送車2Nからの進入要求に応じた昇降装置5の動作制御を優先的に行う。本例では、上位制御装置61は、昇降レール51を、非対象搬送車2Nにとっての対象位置PTである第1位置P1へと上昇させる。そして、非対象搬送車2Nのその後の進路に応じて昇降装置5の動作を制御する。
【0079】
対象搬送車2Tが進入要求区間ZIに到達(第2進入地点Pi2を通過)すると、対象搬送車2Tは進入要求信号Sdiを送信する。本例では、昇降レール51上に先行の非対象搬送車2Nがいるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対する進入許可信号Saiの送信を留保する。その間、対象搬送車2Tは、第2停止地点Ps2で待機する。やがて、昇降レール51が対象位置PTである第2位置P2に到達して先行の非対象搬送車2Nが退出すると、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して進入許可信号Saiを返送する。
【0080】
対象搬送車2Tは、昇降レール51に進入すると同時に退出要求信号Sdoを送信する。本例では、昇降レール51は既に対象下流側領域ADT(本例では第2下流側領域AD2)に対応する位置である第2位置P2にあるため、上位制御装置61は、対象搬送車2Tに対して退出許可信号Saoを返送する。その後、対象搬送車2Tは、昇降レール51から退出して第2走行レール4を再度進行していく。その際、対象搬送車2Tは、第2退出地点Po2を通過するときに本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信した上位制御装置61は、進入応答信号Srrを返送する。
【0081】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、対象搬送車2Tからの先行要求に対して、制御システム6が、その後に非対象搬送車2Nからの進入要求信号Sdiを先に受信した場合に、その非対象搬送車2Nの進路に応じた昇降装置5の動作を優先させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば制御システム6は、先に受け付けた方の要求(対象搬送車2Tからの先行要求)を優先するように構成されても良い。或いは、制御システム6が、トータルでの処理時間が最も短くなる順序で各処理を行うように、各処理の優先度を決定しても良い。
【0082】
(2)上記の実施形態では、制御システム6が上位制御装置61と昇降制御装置62とを備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、制御システム6が他の機能部をさらに備えていても良いし、上位制御装置61及び昇降制御装置62の両方を兼ねる機能部を備えていても良い。
【0083】
(3)上記の実施形態では、搬送車2と上位制御装置61と昇降制御装置62とが、電波を用いた無線通信によって通信可能に構成され、昇降装置5と昇降制御装置62とが、通信ケーブルを用いた有線通信によって通信可能に構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、各装置間の通信方式としては、各種の方式を任意に採用することができる。
【0084】
(4)上記の実施形態では、対象搬送車2Tが第1退出地点Po1又は第2退出地点Po2を通過する際に本線進入通知信号Snrを送信し、それを受信したことをもって上位制御装置61側で対象搬送車2Tの対象下流側領域ADTへの進入完了を把握する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、対象搬送車2Tが本線進入通知信号Snrを送信しないように構成しても良い。この場合、統合制御装置612で把握している対象搬送車2Tの推定位置に基づいて対象搬送車2Tの対象下流側領域ADTへの進入の有無を判定しても良い。或いは、第1走行レール3の第1下流側領域AD1及び第2走行レール4の第2下流側領域AD2の入口付近に、例えば第3センサSe3と同様の在席センサを設置しても良い。
【0085】
(5)上記の実施形態では、第1走行レール3における搬送車2の進行方向と第2走行レール4における搬送車2の進行方向とが同じ向きである構成を想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1走行レール3と第2走行レール4とで搬送車2の走行方向が逆向きであっても良い。この場合、第1上流側領域AU1と第2下流側領域AD2とが昇降領域ALに対して一方側に配置され、第1下流側領域AD1と第2上流側領域AU2とが昇降領域ALに対して他方側に配置される。昇降装置5によって搬送車2が第1走行レール3と第2走行レール4との間で移動する場合には、搬送車2は、昇降領域ALの位置で上下方向の位置を変えつつUターンすることになる。
【0086】
(6)上記の実施形態では、エリア制御装置611と昇降制御装置62とが第1制御ユニットCU1に実装され、統合制御装置612が第2制御ユニットCU2に実装されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばエリア制御装置611と統合制御装置612とが第1の制御ユニットに実装され、昇降制御装置62が第2の制御ユニットに実装されても良い。或いは、エリア制御装置611、統合制御装置612、及び昇降制御装置62の全てが1つの制御ユニットに実装されても良い。或いは、エリア制御装置611、統合制御装置612、及び昇降制御装置62が、それぞれ独立した制御ユニットに実装されても良い。このように、制御システム6は、全体として必要な機能を果たすものであれば、任意の仕様のハードウェア構成を採用することができる。
【0087】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0088】
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係る物品搬送設備は、好適には、以下の各構成を備える。
【0089】
物品搬送設備であって、
物品を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送車が走行する第1走行レールと、
前記第1走行レールよりも下側に配置され、前記搬送車が走行する第2走行レールと、
前記第1走行レールと前記第2走行レールとの間で前記搬送車を昇降させる昇降装置と、
前記搬送車及び前記昇降装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1走行レールは、前記昇降装置が配置された昇降領域に対して上流側の第1上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第1下流側領域とに分断されており、
前記第2走行レールは、前記昇降領域に対して上流側の第2上流側領域と、前記昇降領域に対して下流側の第2下流側領域とに分断されており、
前記昇降装置は、前記搬送車が走行可能であって前記昇降領域において昇降する昇降レールを備え、
前記昇降レールは、第1位置にある状態で、前記第1走行レールの前記第1上流側領域と前記第1下流側領域とを接続し、第2位置にある状態で、前記第2走行レールの前記第2上流側領域と前記第2下流側領域とを接続し、
前記搬送車は、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれに設定された進入要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して前記昇降レールへの進入許可を求める進入要求信号を送信し、前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のそれぞれにおける前記進入要求区間よりも上流側に設定された先行要求区間にいる場合に、前記制御システムに対して先行要求信号を送信するように構成され、
複数の前記搬送車のうち、対象とする前記搬送車を対象搬送車とし、前記対象搬送車以外の前記搬送車を非対象搬送車とし、
前記第1上流側領域及び前記第2上流側領域のうち、前記対象搬送車がいる方を対象上流側領域とし、
前記第1位置と前記第2位置とのうち、前記対象上流側領域に対応する方を対象位置とし、前記対象位置とは異なる方を非対象位置として、
前記制御システムは、
前記対象搬送車から前記進入要求信号を受信した場合に、前記昇降レールが前記対象位置にあり、かつ、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいないことを条件として、前記対象搬送車に対して前記昇降レールへの進入を許可する進入許可信号を送信し、
前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した場合に、前記昇降レール上に前記非対象搬送車がおらず、かつ、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信していないことを条件として、前記昇降レールが前記対象位置にない場合には前記昇降レールを前記対象位置に移動させる事前昇降処理を実行する。
【0090】
この構成によれば、対象搬送車が進入要求区間よりも上流側の先行要求区間にいるときに、進入要求信号に先立って先行要求信号を制御システムに対して送信する。このため、制御システムは、対象搬送車が昇降レールを通行しようとしていることを事前に把握することができる。先行要求信号を受信した制御システムは、昇降レールが対象位置にない場合には、非対象搬送車の走行の妨げとならないようにしつつ、昇降レールを事前に対象位置に移動させることができる。よって、昇降レールを通過しようとする対象搬送車が進入可能となるまで昇降レールの手前で待つ時間を短縮でき、昇降領域における対象搬送車の走行を効率化することができる。これにより、物品搬送設備全体としての搬送効率を向上させることができる。
【0091】
一態様として、
前記制御システムは、前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した場合に、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信していないことを条件として、前記昇降レールが前記対象位置にある場合には前記昇降レールの位置を前記対象位置に維持することが好ましい。
【0092】
この構成によれば、先行要求信号を受信した制御システムは、昇降レールが対象位置にある場合には、昇降レールをそのまま対象位置に維持して、非対象搬送車の走行の妨げとならないようにしつつ対象搬送車の走行に備える。よって、対象搬送車が先行要求区間に到達した際の昇降レールの位置によらずに、昇降レールを通過しようとする対象搬送車が昇降レールの手前で待つ時間を短縮でき、昇降領域における対象搬送車の走行を効率化することができる。
【0093】
一態様として、
前記制御システムは、
前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいる場合には、前記昇降レール上の前記非対象搬送車の進路に応じた前記昇降装置の動作を前記事前昇降処理よりも優先し、
前記昇降レール上に前記非対象搬送車がいない場合において、前記対象搬送車から前記先行要求信号を受信した後で当該対象搬送車から前記進入要求信号を受信する前に、前記非対象搬送車から前記進入要求信号を受信した場合には、前記非対象搬送車の進路に応じた前記昇降装置の動作を前記事前昇降処理よりも優先することが好ましい。
【0094】
この構成によれば、事前昇降処理を実行することが却って昇降レールを通過しようとする非対象搬送車の走行の妨げとなってしまう可能性を低減できる。よって、対象搬送車の走行だけでなく非対象搬送車の走行も含めた複数の搬送車全体の走行を効率化することができ、物品搬送設備全体としての搬送効率を向上させることができる。
【0095】
一態様として、
前記第1下流側領域及び前記第2下流側領域のうち、前記対象搬送車が通行する方を対象下流側領域として、
前記対象搬送車は、
前記進入許可信号を受信したことを条件として前記昇降レールに進入し、
前記昇降レールに進入後に、前記制御システムに対して前記対象下流側領域への進入許可を求める退出要求信号を送信し、
前記制御システムは、
前記対象搬送車から前記退出要求信号を受信した場合に、前記昇降レールが前記第1位置と前記第2位置とのうち前記対象下流側領域に対応する方の位置にあることを条件として、前記対象搬送車に対して前記対象下流側領域への進入を許可する退出許可信号を送信し、
前記対象搬送車は、
前記退出許可信号を受信したことを条件として前記昇降レールから退出して前記対象下流側領域に進入することが好ましい。
【0096】
この構成によれば、対象搬送車を適切に昇降レールへと進入させ、その後、対象下流側領域へと進ませることができる。よって、対象搬送車に昇降レールを適切に通過させることができる。
【0097】
一態様として、
前記対象搬送車は、前記昇降レールからの退出後、前記制御システムに対して前記対象下流側領域に進入したことを通知する本線進入通知信号を送信することが好ましい。
【0098】
この構成によれば、対象搬送車が昇降レールから退出して実際に対象下流側領域に進入したことを、本線進入通知信号の受信をもって制御システム側で把握できる。よって、第1下流側領域及び第2下流側領域への、搬送車の存否を検出するための在席センサの設置を不要とでき、低コスト化を図ることができる。
【0099】
一態様として、
前記制御システムは、複数の前記搬送車の搬送経路に沿うそれぞれの推定位置を把握可能であり、前記対象搬送車に対して前記退出許可信号を送信した後、所定時間内に前記対象搬送車からの前記本線進入通知信号を受信しない場合には、前記対象搬送車の推定位置に基づいて前記対象搬送車の前記対象下流側領域への進入の有無を判定することが好ましい。
【0100】
この構成によれば、例えば通信エラー等によって制御システムが本線進入通知信号を受信できない場合等に、対象下流側領域に未だ搬送車が進入していないと誤認識してしまうことを回避できる。よって、物品搬送設備全体としての搬送効率の低下を回避することができる。
【0101】
一態様として、
前記制御システムは、前記昇降装置を制御する昇降制御装置と、複数の前記搬送車及び前記昇降制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
前記搬送車は、前記上位制御装置と、電波を用いた無線通信によって信号の送受信を行うことが好ましい。
【0102】
この構成によれば、上位制御装置と複数の搬送車との間の信号の送受信を、電波を用いた無線通信によって行うことで、各搬送車を適切に制御することができる。また、例えば光通信装置等の通信装置を構成するハードウェアを別途設置する必要なく、各搬送車の位置情報を取得することができる。よって、ハード面での制約をなくして進入要求区間及び先行要求区間の設定の自由度を高めることができるとともに、物品搬送設備の低コスト化を図ることができる。
【0103】
本開示に係る物品搬送設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
【符号の説明】
【0104】
1 物品搬送設備
2 搬送車
2T 対象搬送車
2N 非対象搬送車
3 第1走行レール
4 第2走行レール
5 昇降装置
6 制御システム
51 昇降レール
61 上位制御装置
62 昇降制御装置
611 エリア制御装置
612 統合制御装置
B 物品
AU1 第1上流側領域
AU2 第2上流側領域
AUT 対象上流側領域
AD1 第1下流側領域
AD2 第2下流側領域
ADT 対象下流側領域
AL 昇降領域
ZI 進入要求区間
ZP 先行要求区間
P1 第1位置
P2 第2位置
PT 対象位置
PN 非対象位置
Sdp 先行要求信号
Sdi 進入要求信号
Sdo 退出要求信号
Snr 本線進入通知信号
Sai 進入許可信号
Sao 退出許可信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11