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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084429
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】地下水利用熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/00 20060101AFI20240618BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F24F3/00 B
F25B30/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198701
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】大西 豊
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BA05
(57)【要約】
【課題】地表掘削が不要かつ熱利用後の地下水の有効利用ができ、地下水の強制攪拌が不要であり電力消費を低減する。
【解決手段】水槽10、空調機20、水槽熱交換器30、及び熱媒体ライン40を備える。水槽10は井戸ポンプ4から地下水W0が供給され、地下水W0を内部に保有する。また水槽10は上部排水ライン12、下部排水ライン14、及び排水切替弁16を有する。上部排水ライン12は、上位高さH1から保有水W1を排水する。下部排水ライン14は下位高さH2から保有水W1を排水する。排水切替弁16は上部排水ライン12と下部排水ライン14を切り替える。空調機20は、屋内を冷房又は暖房する。水槽熱交換器30は水槽内に設置される。熱媒体ライン40は水槽熱交換器30と空調機20との間で第1熱媒体F1を循環させ、かつ夏季循環経路Aと冬季循環経路Bの経路を切替可能に構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸ポンプから地下水が供給され内部に保有する水槽と、
屋内を冷房又は暖房する空調機と、
前記水槽内に設置された水槽熱交換器と、
前記水槽熱交換器と前記空調機との間で第1熱媒体を循環させる熱媒体ラインと、を備え、
前記水槽は、上端近傍の上位高さから保有水を排水する上部排水ラインと、下端近傍の下位高さから前記保有水を排水する下部排水ラインと、前記上部排水ラインと前記下部排水ラインを切り替える排水切替弁と、を有し、
前記熱媒体ラインは、前記第1熱媒体を前記空調機へ、前記水槽熱交換器の下部から供給する夏季循環経路と、前記水槽熱交換器の上部から供給する冬季循環経路とで、経路が切替可能に構成されている、地下水利用熱交換システム。
【請求項2】
前記空調機は、利用側熱交換器と熱源側熱交換器との間で第2熱媒体を循環するヒートポンプであり、
前記熱媒体ラインは、前記水槽熱交換器と前記熱源側熱交換器の間で前記第1熱媒体を循環し、かつ前記夏季循環経路と前記冬季循環経路との間で経路を切り替える第1経路切替弁を有する、請求項1に記載の地下水利用熱交換システム。
【請求項3】
前記熱源側熱交換器は、前記第1熱媒体が流入する流入口と、前記第1熱媒体が流出する流出口と、を有し、
前記第1経路切替弁は、前記水槽熱交換器の下部からの前記第1熱媒体を前記流入口に供給する第1ポジションと、前記水槽熱交換器の上部からの前記第1熱媒体を前記流入口に供給する第2ポジションとを切替え可能な四方弁である、請求項2に記載の地下水利用熱交換システム。
【請求項4】
前記排水切替弁は、前記上部排水ライン又は前記下部排水ラインと前記保有水を再利用先に供給する第3排水ラインとを排他的に切り替える三方弁である、請求項1に記載の地下水利用熱交換システム。
【請求項5】
前記下部排水ラインは、水圧により開閉して前記水槽の水位を所定範囲に維持する圧力弁を有する、請求項4に記載の地下水利用熱交換システム。
【請求項6】
前記空調機は、利用側熱交換器と前記水槽熱交換器との間で前記第1熱媒体を循環するヒートポンプであり、
前記ヒートポンプは、前記水槽熱交換器と前記利用側熱交換器との間で前記第1熱媒体を循環し、かつ前記夏季循環経路と前記冬季循環経路との間で経路を切り替える第2経路切替弁を有する、請求項1に記載の地下水利用熱交換システム。
【請求項7】
前記下部排水ラインは、前記水槽に前記下位高さで下端部が連通し、上方に延び、上端が前記上位高さより上方で開口している中空管と、
上端が前記上位高さで前記中空管に連通し、下端が前記上位高さより下方に位置する第2排水ラインと、を有する、請求項1に記載の地下水利用熱交換システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水利用熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下水は年間を通じてほぼ一定の温度(例えば17~19℃)を有することから、地下水を冷暖房に利用するシステムが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の「揚水型熱交換装置」は、井戸、熱交換井、熱交換器、揚水手段、循環手段、水温センサ、及び制御手段を備える。熱交換井は、地表から地中に向けて掘削される。熱交換器は、熱交換井内に収納される。揚水手段は、井戸から地下水を汲み上げて熱交換井内に給水する。循環手段は、熱交換器内に利用側の熱媒体を循環させる。水温センサは、熱交換井内に溜められている貯留水の温度WTを検出する。制御手段は、水温センサの検出信号に基づいて揚水手段を制御する。
制御手段には、基準水温としての地下水温度EWと、地下水温度EWよりも高い第1の閾値温度HTと、地下水温度EWよりも低い第2の閾値温度LTとが設定されている。制御手段は、貯留水の温度WTが、WT≧HTもしくはWT≦LTのとき、揚水手段を駆動して井戸から地下水を汲み上げて熱交換井に給水し、貯留水の温度WTをLT<WT<HTの範囲内に保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-133232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の地下水利用システムには、以下の問題点があった。
(1)特許文献1の熱交換井は地表から地中に向けて掘削して形成されている。しかし遺跡の多い地区(例えば、奈良県の明日香村)では、地中に熱交換井を掘削することができない。
(2)特許文献1では、熱利用後の地下水を地中に浸透させている。また制御手段により、貯留水の温度に応じて地下水の汲み上げ量を制御するので、地下水の汲み上げ量の変動が大きい。
そのため、熱利用後の地下水の回収自体が困難であり、家屋内のその他の水需要に有効利用できない。
(3)熱交換井内の地下水を強制攪拌しており、電力消費が大きい。また、これを省略すると、熱交換井内の地下水に温度勾配が生じ、貯留水の温度を所定の温度範囲内に保つことが困難になる。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、井戸以外に地表の掘削が不要であり、熱利用後の地下水の回収とその有効利用が可能であり、かつ地下水の強制攪拌が不要であり電力消費を大幅に低減できる地下水利用熱交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、井戸ポンプから地下水が供給され内部に保有する水槽と、
屋内を冷房又は暖房する空調機と、
前記水槽内に設置された水槽熱交換器と、
前記水槽熱交換器と前記空調機との間で第1熱媒体を循環させる熱媒体ラインと、を備え、
前記水槽は、上端近傍の上位高さから保有水を排水する上部排水ラインと、下端近傍の下位高さから前記保有水を排水する下部排水ラインと、前記上部排水ラインと前記下部排水ラインを切り替える排水切替弁と、を有し、
前記熱媒体ラインは、前記第1熱媒体を前記空調機へ、前記水槽熱交換器の下部から供給する夏季循環経路と、前記水槽熱交換器の上部から供給する冬季循環経路とで、経路が切替可能に構成されている、地下水利用熱交換システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、上部排水ラインと下部排水ラインを切り替える排水切替弁を有するので、夏季に排水切替弁を上部排水ラインに切り替えることで、温度が相対的に高い水槽上部の保有水を排水して水槽内の保有水の平均温度を外気温より低く維持することができる。また、冬季に排水切替弁を下部排水ラインに切り替えることで、温度が相対的に低い水槽下部の保有水を排水して水槽内の保有水の平均温度を外気温より高く維持することができる。
【0009】
また、水槽熱交換器と空調機との間で第1熱媒体を循環させる熱媒体ラインが、夏季循環経路と冬季循環経路とで、経路が切替可能に構成されている。夏季に熱媒体ラインを夏季循環経路に切り替えることで、水槽熱交換器の下部から温度が相対的に低い第1熱媒体を空調機へ供給して空調機による冷房効率を高めることができる。また、冬季に熱媒体ラインを冬季循環経路に切り替えることで、水槽熱交換器の上部から温度が相対的に高い第1熱媒体を空調機へ供給して空調機による暖房効率を高めることができる。
【0010】
また、水槽を地下に設置する必要がないので、井戸以外に地表の掘削が不要である。
また、上部排水ライン又は下部排水ラインから排水された保有水(処理水)は、再利用先(ビオトープの池や潅水、トイレ洗浄水等)に利用できるので、熱利用後の地下水(処理水)の回収とその有効利用が可能である。
さらに、水槽内の保有水の強制攪拌が不要であり電力消費を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】地下水利用熱交換システムの第1実施形態図であり、夏季の使用形態を示す。
図2】地下水利用熱交換システムの第1実施形態図であり、冬季の使用形態を示す。
図3】地下水利用熱交換システムの第2実施形態図であり、夏季の使用形態を示す。
図4】地下水利用熱交換システムの第2実施形態図であり、冬季の使用形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
図1図2は、本発明による地下水利用熱交換システム100の第1実施形態図である。なお、図1は夏季の使用形態、図2は冬季の使用形態を示している。
この例において、地下水利用熱交換システム100は、水槽10、空調機20、水槽熱交換器30、及び熱媒体ライン40を備える。
【0014】
水槽10は、井戸2に設置された井戸ポンプ4から地下水W0が供給され、地下水W0を内部に保有する。井戸ポンプ4から供給された時点での地下水W0の温度は例えば年間を通して約17~19℃である。以下、井戸ポンプ4から供給された時点の地下水W0の代表温度をT0=18℃とする。
【0015】
水槽10は、上部が外気と連通し、水槽熱交換器30を内部に保有可能な大きさを有する中空容器である。水槽10は、断熱容器であることが好ましい。以下、水槽10内の保有水W1の温度をT1とする。
例えば、夏季の気温の代表温度が30℃であり、冬季の気温の代表温度が6℃とすると、強制攪拌しない水槽内の保有水W1の温度T1は、夏季には例えば18℃(=T0)から30℃の温度勾配を有し、冬季には例えば6℃から18℃(=T0)の温度勾配を有する。
【0016】
図1図2において、水槽10は、上部排水ライン12、下部排水ライン14、及び排水切替弁16を有する。
上部排水ライン12は、水槽10の上端近傍の上位高さH1から保有水W1を排水する。上位高さH1は、オーバーフロー高さであるのがよい。下部排水ライン14は、水槽10の下端近傍の下位高さH2から保有水W1を排水する。
排水切替弁16は、上部排水ライン12と下部排水ライン14を切り替える。
排水切替弁16は、この例で、三方弁である。排水切替弁16(三方弁)は、上部排水ライン12又は下部排水ライン14と第3排水ライン18とを排他的に切り替える。
第3排水ライン18は、上部排水ライン12又は下部排水ライン14から排水された保有水W1(以下、処理水W2)を再利用先6(ビオトープの池や潅水、トイレ洗浄水等)に供給するようになっている。
【0017】
この例において、下部排水ライン14は、水圧により開閉して水槽10の水位を所定範囲に維持する圧力弁17を有する。
この構成により、夏季において排水切替弁16を上部排水ライン12に切り替えることで、水槽10の上位高さH1からオーバーフローした保有水W1を第3排水ライン18を介して処理水W2として再利用先6に供給することができる。
また、冬季において排水切替弁16を下部排水ライン14に切り替えることで、水槽10の下位高さH2から圧力弁17で水位を制御しながら保有水W1を第3排水ライン18を介して処理水W2として再利用先6に供給することができる。
排水切替弁16の切替えは、手動でも自動でもよい。
【0018】
空調機20は、屋内を冷房又は暖房する。
この例において、空調機20は、利用側熱交換器21と熱源側熱交換器22との間で第2熱媒体F2を循環するヒートポンプ20Aである。
ヒートポンプ20Aは、さらに、膨張弁23、圧縮機24、四方弁25、及びこれらを連通する循環管路26を有する。循環管路26には第2熱媒体F2が充填されている。
第2熱媒体F2は、ヒートポンプ20Aに通常用いられる低沸点の冷媒(代替フロンなど)である。
【0019】
図1の夏季の使用形態において、四方弁25は、第2熱媒体F2を圧縮機24、熱源側熱交換器22、膨張弁23、利用側熱交換器21、及び圧縮機24の順で循環するように切替えられる。
この結果、熱源側熱交換器22において気体の第2熱媒体F2が凝縮されて放熱し、利用側熱交換器21において液体の第2熱媒体F2が蒸発して吸熱することで、利用側熱交換器21が設置された屋内を冷房することができる。
【0020】
逆に、図2の冬季の使用形態において、四方弁25は、第2熱媒体F2を圧縮機24、利用側熱交換器21、膨張弁23、熱源側熱交換器22、及び圧縮機24の順で循環するように切替えられる。
この結果、利用側熱交換器21において気体の第2熱媒体F2が凝縮されて放熱し、熱源側熱交換器22において液体の第2熱媒体F2が蒸発して吸熱することで、利用側熱交換器21が設置された屋内を暖房することができる。
四方弁25の切替えは、手動でも自動でもよい。
【0021】
水槽熱交換器30は、水槽内に設置されている。
水槽熱交換器30は、この例では上下方向に伝熱管が螺旋状に巻かれた螺旋熱交換器30Aである。
熱交換器の熱交換率を高めるためには、伝熱管の表面積を大きくすることが重要である。伝熱管を螺旋状にすることで、水槽の単位体積当たりの伝熱管の表面積を大きくすることができる。
なお、水槽熱交換器30は、螺旋熱交換器30Aに限定されず、第1熱媒体F1が上向き又は下向きの一方向に流れる熱交換器であればよい。
【0022】
熱媒体ライン40は、水槽熱交換器30と空調機20(ヒートポンプ20A)との間で第1熱媒体F1を循環させる。この例で、第1熱媒体F1は、ヒートポンプ20Aの第2熱媒体F2と相違してもよく、例えば水又は不凍液であってもよい。
【0023】
この例で、ヒートポンプ20Aは、熱媒体ライン40の第1熱媒体F1が流入する流入口(熱源側熱交換器22の流入口22a)と、第1熱媒体F1が流出する流出口(熱源側熱交換器22の流出口22b)と、を有する。
【0024】
熱媒体ライン40は、夏季循環経路Aと冬季循環経路Bとの間で第1熱媒体F1の経路を切り替える第1経路切替弁42Aを有する。
この例で、第1経路切替弁42Aは、四方弁であり、a,b,c,dの4つの連結口を有する。
【0025】
また、この例で、熱媒体ライン40は、さらに上端ライン44、下端ライン45、入口ライン46、及び出口ライン47を有する。
上端ライン44は、第1経路切替弁42Aの連結口aと水槽熱交換器30の上端32を連結する。下端ライン45は、第1経路切替弁42Aの連結口cと水槽熱交換器30の下端34を連結する。入口ライン46は、第1経路切替弁42Aの連結口bと熱源側熱交換器22の流入口22aを連結する。出口ライン47は、第1経路切替弁42Aの連結口dと熱源側熱交換器22の流出口22bを連結する。
この例で、出口ライン47には第1熱媒体F1を循環させる循環ポンプ48が設けられている。
【0026】
図1の夏季の使用形態において、第1経路切替弁42A(四方弁)は、連結口a,dを連通し、連結口b,cを連通する。
第1経路切替弁42A(四方弁)は、第1ポジションと第2ポジションとを切替え可能に構成されている。図1の第1ポジションでは、水槽熱交換器30の下部(下端34)からの第1熱媒体F1を流入口22aに供給する。図2の第2ポジションでは、水槽熱交換器30の上部(上端32)からの第1熱媒体F1を流入口22aに供給する。
【0027】
従って、夏季循環経路Aは、水槽熱交換器30の下部(下端34)から第1熱媒体F1を、下端ライン45、第1経路切替弁42A、及び入口ライン46を介してヒートポンプ20A(熱源側熱交換器22の流入口22a)へ供給する。また、ヒートポンプ20A(熱源側熱交換器22の流出口22b)から出た第1熱媒体F1は、出口ライン47、第1経路切替弁42A、及び上端ライン44を介して水槽熱交換器30の上部(上端32)に戻る。
【0028】
また、図2の冬季の使用形態において、第1経路切替弁42A(四方弁)は、連結口a,bを連通し、連結口c,dを連通する。
従って、冬季循環経路Bは、水槽熱交換器30の上部(上端32)から第1熱媒体F1を、上端ライン44、第1経路切替弁42A、及び入口ライン46を介してヒートポンプ20A(熱源側熱交換器22の流入口22a)へ供給する。また、ヒートポンプ20A(熱源側熱交換器22の流出口22b)から出た第1熱媒体F1は、出口ライン47、第1経路切替弁42A、及び下端ライン45を介して水槽熱交換器30の下部(下端34)に戻る。
【0029】
図3図4は、本発明による地下水利用熱交換システム100の第2実施形態図である。なお、図3は夏季の使用形態、図4は冬季の使用形態を示している。
【0030】
この例で、下部排水ライン14は、中空管15aと第2排水ライン15bを有する。
中空管15aは、水槽10に下位高さH2で下端部が連通し、上方に延び、上端が上位高さH1より上方で開口している。この構成により、中空管15aの水位は、水槽10と常に同じに保たれる。
また、第2排水ライン15bは、その上端が上位高さH1で中空管15aに連通し、下端が上位高さH1より下方に位置する。
この構成により、中空管15aの上位高さH1から第2排水ライン15bにオーバーフローする保有水W1は、水槽10の下位高さH2から中空管15aに流入するので、下位高さH2から保有水W1を排水することができる。
また、この構成により、上述した圧力弁17を省略することができる。
上部排水ライン12と排水切替弁16の構成は、第1実施形態と同じである。
【0031】
この例で、水槽熱交換器30は、上部集合板36、下部集合板37、及び複数の伝熱管38を有する縦型熱交換器30Bである。
上部集合板36は、水槽10の上位高さH1より下方に位置する中空の平板である。上記上端32は、上部集合板36に設けられている。
下部集合板37は、水槽10の下位高さH2より上方に位置する中空の平板である。上記下端34は、下部集合板37に設けられている。
複数の伝熱管38は、上端が上部集合板36に連通し、下端が下部集合板37に連通し、全体として上下方向に延びる。伝熱管38は鉛直管であるのが好ましいが、傾斜管でも、曲管でもよい。
水槽熱交換器30のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0032】
この例で、空調機20は、利用側熱交換器21と水槽熱交換器30との間で第1熱媒体F1を循環するヒートポンプ20Bである。また、この例で、第1熱媒体F1は、ヒートポンプに通常用いられる低沸点の冷媒(代替フロンなど)である。
【0033】
ヒートポンプ20Aは、さらに、膨張弁23、圧縮機24、第2経路切替弁42B、及びこれらを連通する屋内側の循環管路26を有する。
屋内側の循環管路26は、上端ライン44と連結された第1連結口27aと、下端ライン45と連結された第2連結口27bを有する。
この例で第1連結口27aは第2経路切替弁42Bと直接連通し、第2連結口27bは膨張弁23と直接連通する。
【0034】
なお、この例では、第1実施形態の熱源側熱交換器22、第1経路切替弁42A、入口ライン46、出口ライン47、及び循環ポンプ48は省略されている。
【0035】
第2経路切替弁42Bは、水槽熱交換器30と利用側熱交換器21との間で第1熱媒体F1を循環し、かつ夏季循環経路Aと冬季循環経路Bとの間で経路を切り替える。第2経路切替弁42Bは、第1実施形態の四方弁25と同様の四方弁であるのがよい。
【0036】
第2経路切替弁42B(四方弁)は、第1ポジションと第2ポジションとを切替え可能に構成されている。図3の第1ポジションでは、水槽熱交換器30の下部(下端34)からの第1熱媒体F1を第2連結口27bに供給する。図4の第2ポジションでは、水槽熱交換器30の上部(上端32)からの第1熱媒体F1を第1連結口27aに供給する。
【0037】
図3の夏季の使用形態において、第2経路切替弁42B(四方弁)は、第1熱媒体F1を圧縮機24、水槽熱交換器30、膨張弁23、利用側熱交換器21、及び圧縮機24の順で循環するように切替えられる。
この結果、水槽熱交換器30において気体の第1熱媒体F1が凝縮されて放熱し、利用側熱交換器21において液体の第1熱媒体F1が蒸発して吸熱することで、利用側熱交換器21が設置された屋内を冷房することができる。
【0038】
逆に、図4の冬季の使用形態において、第2経路切替弁42B(四方弁)は、第1熱媒体F1を圧縮機24、利用側熱交換器21、膨張弁23、水槽熱交換器30、及び圧縮機24の順で循環するように切替えられる。
この結果、利用側熱交換器21において気体の第1熱媒体F1が凝縮されて放熱し、水槽熱交換器30において液体の第1熱媒体F1が蒸発して吸熱することで、利用側熱交換器21が設置された屋内を暖房することができる。
空調機20と熱媒体ライン40のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0039】
上述した本発明の実施形態によれば、上部排水ライン12と下部排水ライン14を切り替える排水切替弁16を有する。夏季に排水切替弁16を上部排水ライン12に切り替えることで、温度が相対的に高い水槽上部の保有水W1を排水して水槽内の保有水W1の平均温度を外気温より低く維持することができる。
例えば、夏季の保有水W1が18℃から30℃の温度勾配を有する場合に、水槽上部の保有水W1は30℃に近い温度である。この温度の保有水W1を排水することで、水槽内の保有水W1の平均温度を外気温(代表温度30℃)より低い温度(例えば、18℃から26℃)に維持することができる。
【0040】
また、冬季に排水切替弁16を下部排水ライン14に切り替えることで、温度が相対的に低い水槽下部の保有水W1を排水して水槽内の保有水W1の平均温度を外気温より高く維持することができる。
例えば、冬季の保有水W1が6℃から18℃の温度勾配を有する場合に、水槽下部の保有水W1は6℃に近い温度である。この温度の保有水W1を排水することで、水槽内の保有水W1の平均温度を外気温(代表温度6℃)より高い温度(例えば、10℃から18℃)に維持することができる。
【0041】
また、水槽熱交換器30と空調機20との間で第1熱媒体F1を循環させる熱媒体ライン40が、夏季循環経路Aと冬季循環経路Bとで、経路が切替可能に構成されている。夏季に熱媒体ライン40を夏季循環経路Aに切り替えることで、水槽熱交換器30の下部から温度が相対的に低い第1熱媒体F1を空調機20へ供給して空調機20による冷房効率を高めることができる。
すなわち、水槽熱交換器30の下部は、温度勾配(例えば、18℃から26℃)の最低温度に近い保有水W1と熱交換しているので、水槽熱交換器30の下部から供給される第1熱媒体F1の温度は夏季であっても外気より低い温度(例えば、20~26℃)となる。
【0042】
また、冬季に熱媒体ライン40を冬季循環経路Bに切り替えることで、水槽熱交換器30の上部から温度が相対的に高い第1熱媒体F1を空調機20へ供給して空調機20による暖房効率を高めることができる。
すなわち、水槽熱交換器30の上部は、温度勾配(例えば10℃から18℃)の最高温度に近い保有水W1と熱交換しているので、水槽熱交換器30の上部から供給される第1熱媒体F1の温度は冬季であっても外気より高い温度(例えば、12~16℃)となる。
【0043】
また、水槽10を地下に設置する必要がないので、井戸以外に地表の掘削が不要である。
また、上部排水ライン12又は下部排水ライン14から排水された保有水W1(処理水W2)は、再利用先6(ビオトープの池や潅水、トイレ洗浄水等)に利用できるので、熱利用後の地下水(処理水W2)の回収とその有効利用が可能である。
さらに、水槽内の保有水W1の強制攪拌が不要であり電力消費を大幅に低減できる。
また、上述の構成により、地下水W0の補給が少ない(例えばゼロの)場合、熱媒体ライン40を夏季循環経路Aと冬季循環経路Bに切替えることで、水槽10の温度ムラを低減できる。
【0044】
なお、夏季及び冬季の保有水W1の温度勾配(上下の温度差)は一例であり、夏季(冷房時)及び冬季(暖房時)の水槽上下の温度差は10℃以下(例えば約5℃)であってもよい。
【0045】
また、本発明の範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0046】
A 夏季循環経路、B 冬季循環経路、a,b,c,d 連結口、
F1 第1熱媒体、F2 第2熱媒体、H1 上位高さ、H2 下位高さ、
W0 地下水、W1 保有水、W2 処理水、2 井戸、4 井戸ポンプ、
6 再利用先、10 水槽、12 上部排水ライン、14 下部排水ライン、
15a 中空管、15b 第2排水ライン、16 排水切替弁(三方弁)、
17 圧力弁、18 第3排水ライン、20 空調機、
20A,20B ヒートポンプ、21 利用側熱交換器、22 熱源側熱交換器、
22a 流入口、22b 流出口、23 膨張弁、24 圧縮機、25 四方弁、
26 循環管路、27a 第1連結口、27b 第2連結口、30 水槽熱交換器、
30A 螺旋熱交換器、30B 縦型熱交換器、32 上端、34 下端、
36 上部集合板、37 下部集合板、38 伝熱管、40 熱媒体ライン、
42A 第1経路切替弁(四方弁)、42B 第2経路切替弁(四方弁)、
44 上端ライン、45 下端ライン、46 入口ライン、47出口ライン、
48 循環ポンプ、100 地下水利用熱交換システム

図1
図2
図3
図4