(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008443
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】中底及び靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/38 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A43B13/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110326
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390010571
【氏名又は名称】株式会社リーガルコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦史
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA55
4F050CA03
4F050CA07
4F050HA01
4F050HA05
4F050HA11
4F050HA26
(57)【要約】
【課題】 屈曲性を維持しつつフィッティング性を向上できるようにする。
【解決手段】 本発明の中底は、靴の前方側に位置する前方部と靴の後方側に位置する後方部を備え、前方部は着用者の足が乗る前方足乗せ部と前方足乗せ部の外側に張り出す張り出し部を備え、後方部は着用者の足が乗る後方足乗せ領域を備え、後方足乗せ領域の外側に張り出し部に相当する領域が設けられていないものである。本発明の靴は、表底、本発明の中底及び甲部材を備えたものであり、中底の後方部の下側には中入れ底張り出し部を備えた中入れ底が設けられている。甲部材は表材と内折りつり込み部を有する裏材を備えている。内折りつり込み部は中底の下側につり込まれ、表材のうち、張り出し部に重ねられた部分は中底と共に表底に縫い付けられ、中入れ底張り出し部に重ねられた部分は中入れ底と共に表底に縫い付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中底において、
前記靴の前方側に位置する前方部と当該靴の後方側に位置する後方部を備え、
前記前方部は、着用者の足が乗る前方足乗せ部と、当該前方足乗せ部の外側に張り出す張り出し部を備え、
前記後方部は、着用者の足が乗る後方足乗せ領域を備え、当該後方足乗せ領域の外側に前記張り出し部に相当する領域が設けられていない、
ことを特徴とする中底。
【請求項2】
請求項1記載の中底において、
前方部を構成する前方側パーツと後方部を構成する後方側パーツを備え、
前記前方側パーツと後方側パーツが一体に連結された、
ことを特徴とする中底。
【請求項3】
請求項2記載の中底において、
前方側パーツは後方側パーツと連結される前方連結部を備え、
後方側パーツは前方側パーツと連結される後方連結部を備えた、
ことを特徴とする中底。
【請求項4】
請求項3記載の中底において、
前方連結部は前方側パーツの他の部分よりも肉薄に構成され、
後方連結部は後方側パーツの他の部分よりも肉薄に構成された、
ことを特徴とする中底。
【請求項5】
請求項2記載の中底において、
前方側パーツと後方側パーツが異なる素材で構成された、
ことを特徴とする中底。
【請求項6】
表底、中底及び甲部材を備えた靴において、
前記中底が請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の中底であり、
前記中底の後方部の下側に中入れ底が設けられ、
前記中入れ底は、前記中底と重ねた際に当該中底の後方部の外側に張り出す中入れ底張り出し部を備え、
前記甲部材は、表材と当該表材の内側且つ後方側の領域に設けられた裏材を備え、
前記裏材は内向きに折り返された内折りつり込み部を備え、
前記裏材のうち、内折りつり込み部が前記中底の下側につり込まれ、
前記表材のうち、前記中底の張り出し部に重ねられた部分は、当該中底と共に表底に縫い付けられ、
前記表材のうち、前記中入れ底張り出し部に重ねられた部分は、当該中入れ底と共に表底に縫い付けられた、
ことを特徴とする靴。
【請求項7】
請求項6記載の靴において、
表材の内側であって当該表材の爪先側の領域に先裏材が設けられ、
前記先裏材は外向きに広げられた状態で張り出し部に重ねられ、中底及び表底に縫い付けられた、
ことを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中底と当該中底を備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴の製法の一つとしてステッチダウン製法が知られている。ステッチダウン製法で製造される靴(以下「ステッチダウン靴」という)は、他の製法で製造される靴に比べて屈曲性に優れる一方、ホールド力が弱く、フィッティング性に劣るという側面がある。
【0003】
本件出願人は、ステッチダウン靴の改良品(以下「改良靴」という)として、爪先部から踏まず部付近までの長さを有する中底を備えた靴(特許文献1)を開発した。この改良靴は、裏革のうち、中底に対応する部分のみが内側につり込まれ、中底に対応しない部分及び甲革の全周縁部が中入れ底又は表底に対して外側につり込まれたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の改良靴では、甲部材の裏革のうち中底に対応する部分が内側につり込まれることによってフィッティング性が向上する半面、ステッチダウン靴が本来持つ屈曲性が損なわれ、この点に改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、従来のステッチダウン靴の屈曲性を維持しつつ、フィッティング性を向上させることができる中底と、当該中底を用いた靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[中底]
本発明の中底は、靴の前方側に位置する前方部と靴の後方側に位置する後方部を備え、前方部は着用者の足が乗る前方足乗せ部と前方足乗せ部の外側に張り出す張り出し部を備え、後方部は着用者の足が乗る後方足乗せ領域を備え、後方足乗せ領域の外側に張り出し部に相当する領域が設けられていないものである。
【0008】
[靴]
本発明の靴は、表底、本発明の中底及び甲部材を備えたものであり、中底の後方部の下側には中入れ底が設けられている。中入れ底は、中底と重ねた際に中底の後方部の外側に張り出す中入れ底張り出し部を備え、甲部材は、表材と表材の内側且つ後方側の領域に設けられた裏材を備え、裏材は内向きに折り返された内折りつり込み部を備えている。裏材のうち内折りつり込み部が中底の下側につり込まれ、表材のうち中底の張り出し部に重ねられた部分は中底と共に表底に縫い付けられ、表材のうち中入れ底張り出し部に重ねられた部分は中入れ底と共に表底に縫い付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のステッチダウン靴の屈曲性を維持しつつ、フィッティング性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】(a)は本発明の中底の一例を示す斜視図、(b)は(a)を前方側パーツと後方側パーツに分けた状態の詳細説明図。
【
図5】(a)は癖付けを行う前の中底の一例を示す正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
【
図6】(a)は癖付けを行った後の中底の一例を示す正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図、(g)は(e)のA-A断面図。
【
図7】(a)は
図1の靴の爪先側の横断方向の断面図、(b)は
図1の靴の踵側の横断方向の断面図。
【
図8】(a)は先裏材を備えた甲部材を用いた靴の縦断方向の断面図、(b)は先裏材を備えた甲部材の分解説明図。
【
図9】
図8(a)に示す靴の爪先側の横断方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明の中底20及び靴の一例を、図面を参照して説明する。一例として
図1~
図3に示す靴は、表底10と、中底20と、甲部材30とを主要構成として備えている。
【0012】
前記表底10は地面に接触する部分である。この実施形態の表底10は、靴の前後方向に長い瓢箪形の部材である。表底10は各種材質製とすることができ、革、EVAスポンジ、ポリウレタン(PU)、サーモプラスチックラバー(TPR)製、ゴム製等とすることができる。
【0013】
表底10の底面側の踵側の位置にはヒール11が設けられている。ヒール11は、革やEVAスポンジ、PU、TPR、ABS(強化プラスチック)といった各種材質製とすることができる。
【0014】
図示する表底10は裏面側と内面側の双方がフラットな薄板状であるが、表底10には踵部分が裏面側に突出したユニットソールを用いることもできる。この場合、ヒール11は省略することもできる。
【0015】
表底10の上側には、足を支える機能を担う中底20が設けられている。この実施形態の中底20は、靴の前方側に位置する前方部と、靴の後方側に位置する後方部を備え、前方部が前方側パーツ21で、後方部が後方側パーツ22で構成されている。
【0016】
図4(a)(b)に示すように、前方側パーツ21は、着用者の足が乗る(足を支える)領域(以下「前方足乗せ部」という)21aと、前方足乗せ部21aの外側に張り出して設けられた領域(以下「張り出し部」という)21bと、後方側パーツ22と連結される前方連結部21cを備えている。
【0017】
前方足乗せ部21aと張り出し部21bは、表底10の周縁よりも外側にはみ出すことなく表底10に重なるように、表底10の上面側の前方部と同様の形状としてある。ただし、張り出し部21bを表底10の周縁よりも外側にはみ出すようにしておき、はみ出した部分を事後的に切除するようにしてもよい。
【0018】
前方連結部21cは前方足乗せ部21aの後方側に突出して設けられている。
図4(b)に示すように、前方連結部21cの底面は前方足乗せ部21aから後方に向けて傾斜する(肉薄になる)傾斜面を備えている。
【0019】
図4(a)(b)に示すように、後方側パーツ22は、着用者の足が乗る後方足乗せ領域22aと、前方側パーツ21と連結される後方連結部22bを備えている。後方側パーツ22には、後方足乗せ領域22aの外側に張り出す領域(張り出し部21bに相当する領域)は設けられておらず、前方側パーツ21よりも幅狭に構成されている。
【0020】
別の言い方をすると、後方側パーツ22の横幅は、後方側パーツ22を中入れ底23の上側に重ねた際に、後方足乗せ領域22aの外側に中入れ底23の一部、具体的には、後方側パーツ22や後述する中物24が配置される領域(以下「配置部」という)23bの外側に張り出す領域(以下「中入れ底張り出し部」という)23c(
図2)が露出する横幅にしてある。
【0021】
後方側パーツ22は、表底10及び後述する中入れ底23の外形よりも小さく、中入れ底23の上側に重ねた際に、後方側パーツ22の周縁が中入れ底23の中入れ底張り出し部23cに重ならないようにしてある。
【0022】
この実施形態では、後方側パーツ22と中入れ底23を重ねた際に、張り出し部21bと中入れ底張り出し部23cがリング状に連続する張り出し部となり、この部分に、後述する甲部材30の重ね部(以下「表材外折り部31a」という)が重ねられるようにしてある。
【0023】
後方連結部22bは後方足乗せ領域22aの前方側に設けられている。
図4(b)に示すように、前方連結部21cの上面は後方足乗せ領域22aの先端部側から前方に向けて傾斜する(肉薄になる)傾斜面を備えている。
【0024】
前方側パーツ21と後方側パーツ22は、薄肉に構成された前方連結部21cと後方連結部22bの傾斜面同士が対向する向きで重ねられ、接着剤で連結されている。前方連結部21cと後方連結部22bの部分は、肉薄の傾斜面同士が重なることで、連結された際に前方側パーツ21及び後方連結部22bの厚さと同じ又は略同じ厚さとなるようにしてある。
【0025】
前方側パーツ21と後方側パーツ22は、同じ材料で構成することも異なる材料で構成することもできる。材料としては、たとえば、天然皮革や合成皮革、レザーボード、パルプボード等を用いることができる。必要に応じて、これら各材料に不織布や寒冷紗等が貼付されたものを用いることもできる。
【0026】
この実施形態では、中底20を二つのパーツで構成する場合を一例としているが、中底20は一つのパーツで構成することも、三つ以上のパーツを連結して構成することもできる。一つのパーツで構成する場合、前方連結部21c及び後方連結部22bは不要である。三つ以上のパーツで構成する場合、それぞれのパーツとして異なる材質製のものを用いることも、同じ材質製のものを用いることもできる。
【0027】
図5(a)~(f)はこの実施形態の中底20の外観を示すものであって、癖付けを行う前の中底20の外観を示すものである。
図5(a)はこの実施形態の中底20の正面図、同図(b)は同図(a)の背面図、同図(c)は同図(a)の左側面図、同図(d)は同図(a)の右側面図、同図(e)は同図(a)の平面図、同図(f)は同図(a)の底面図である。
【0028】
図6(a)~(g)はこの実施形態の中底20の外観を示すものであって、癖付けを行った後の中底20の外観を示すものである。
図6(a)はこの実施形態の中底20の正面図、同図(b)は同図(a)の背面図、同図(c)は同図(a)の左側面図、同図(d)は同図(a)の右側面図、同図(e)は同図(a)の平面図、同図(f)は同図(a)の底面図、同図(g)は同図(e)のA-A断面図である。
【0029】
図2に示すように、表底10と中底20の間であって中底20の後方側パーツ22の下側には、高さ調整用の中入れ底23が配置されている。この実施形態の中入れ底23は、踵側の端部が弧状に形成された長方形状の部材である。
【0030】
中入れ底23の先端側には、後方から先方に向けて傾斜する傾斜面23aが設けられ、他の部分よりも肉薄になるようにしてある。傾斜面23aの後方側には、後方側パーツ22や後述する中物24が配置される配置部23bと、配置部23bの外側に張り出す中入れ底張り出し部23cが設けられている。
【0031】
中入れ底23には、たとえば、中底20の前方側パーツ21と同素材で構成されたもののほか、異素材で構成されたものを用いることもできる。中入れ底23は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0032】
中入れ底23の上側には中物24及びカウンタ25が設けられている。中物24は荷重を受けるクッション材としての役割を果たすほか、段差をなくす(平らにする)目的や隙間を埋める目的などで用いられるものである。この実施形態では、中物24として肉厚のメッシュ材を用いている。メッシュ材としては、たとえば、株式会社ユニチカテクノス製のキュービックアイ(登録商標)や東洋紡株式会社製のBREATHAIR(登録商標)、旭化成株式会社製のFUSION(登録商標)などを用いることができる。
【0033】
中物24は、メッシュ材のほか、コルクやフェルトといった緩衝作用のある各種弾性素材で構成することができる。中物24のサイズや形状は適宜設計することができる。中物24は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することもできる。
【0034】
前記カウンタ25は、靴の踵部に配置され、靴の踵部の形状を保持する部材である。カウンタ25には既存の又は新規のものを用いることができる。この実施形態のカウンタ25は、
図7(b)に示すように、カウンタ25の底面部に中物24が収まる間隔が確保してある。
【0035】
中物24の上側には、足のふまずアーチ部の荷重を支持して形状を保持するシャンク26が設けられている。シャンク26には、鉄製や木製、皮革製、プラスチック製のもの等、新規の又は既存のものを用いることができる。
【0036】
シャンク26は中底20の上側に設けることもできる。また、シャンク26は中底20の上面や底面に予め加締めておくこともできる。なお、シャンク26は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0037】
中底20の上側には、前後方向に長い瓢箪形の中敷27が設けられている。中敷27は、中底20の上面側に配置される部材であり、一般的にインソールと称される部材である。中敷27は接着剤などで予め貼り付けられたものでも、出し入れ可能な別体のものであってもよい。
【0038】
中敷27には、フラットなシート状のもののほか、踵側がカップ状に成形されたもの(いわゆるカップインソール)を用いることができる。中敷27は、中底20の全面を覆う全敷きタイプのものでも、中底20の踵側の半分程度を覆う半敷きタイプのものでも良い。中敷27には既存の又は新規のものを用いることができる。中敷27の踵側はカウンタ25の内側に配置されている。なお、不要な場合、中敷き27は省略することもできる。
【0039】
中底20の上側には、足の甲側を覆う甲部材30が設けられている。この実施形態の甲部材30は、表材31と表材31の内側に設けられた裏材32を備えている。裏材32は表材31の後方側の半分程度の領域に設けられている。表材31と裏材32は、一体になるように上縁側が縫い合わされている。
【0040】
表材31は、足の甲及び前方側を覆う領域(以下「第一被覆領域」という)30aと、足の側面を覆う領域(以下「第二被覆領域」という)30bと、足の踵側を覆う領域(以下「第三被覆領域」という)30cを備え、それら領域で囲まれた部分に着用者が足を出し入れするための履き口34が設けられている。
【0041】
別の言い方をすると、第一被覆領域30aは履き口34の前方側に、第二被覆領域30bは履き口34の幅方向両外側に、第三被覆領域30cは履き口34の後方側に設けられている。表材31は、一又は二以上のパーツで構成することができる。
【0042】
図7(a)(b)に示すように、表材31の周縁寄りの位置には、前方側パーツ21の張り出し部21b及び中入れ底23の中入れ底張り出し部23cに重なる表材外折り部31aが設けられている。
【0043】
ここでいう表材外折り部31aは、張り出し部21bと中入れ底張り出し部23cとの関係で特定される相対的な概念であり、完成した靴において張り出し部21b及び中入れ底張り出し部23cに重なる部分を意味する。
【0044】
裏材32には、後方側パーツ22の後方足乗せ領域22aの下側に織り込んでつり込むつり込み部(以下「内折りつり込み部」という)32aが設けられている。ここでいう内折りつり込み部32aは、後方足乗せ領域22aとの関係で特定される相対的な概念であり、後方足乗せ領域22aの下側に織り込まれる部分程度の意味である。
【0045】
図示する甲部材30は外羽根式のものであるが、甲部材30は内羽根式のものであってもよい。また、甲部材30は、紐靴に限らず、ベルト(モンク)式のものやスリップオンタイプのものであってもよい。
【0046】
表材31の爪先側の位置には爪先部の形状を保持する先芯33が設けられている。先芯33には既存の又は新規のものを用いることができる。先芯33のうち、表材外折り部31aと重なる位置には、張り出し部21bに重なる重ね部(以下「先芯外折り部」という)33a(
図7(a))が設けられている。先芯33は表材31の内面に接着剤で貼り付けられ、表材31と共に中底20及び表底10に縫い付けられる(出し縫いされる)。
【0047】
図7(a)は、本実施形態の靴の爪先側の横断方向の断面図である。
図7(a)に示すように、表底10の上面には前方側パーツ21が重ねられ、その前方側パーツ21の張り出し部21bの上面には、先芯33の先芯外折り部33a及び表材31の表材外折り部31aが外向きに広げられた状態で重ねられる。
【0048】
重ねられた表底10、前方側パーツ21、先芯33及び表材31は、縫い糸35によって出し縫いされる。このとき、表材31(表材外折り部31a)の上側に細帯材36(たとえば、細革)を配置し、細帯材36と共に出し縫いするようにしてもよい。細帯材36は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0049】
図7(b)は、本実施形態の靴の踵側の横断方向の断面図である。
図7(b)に示すように、表底10の上面には中入れ底23が重ねられ、中入れ底23の上側には中物24及びカウンタ25が配置される。
【0050】
カウンタ25の上側(内側)には裏材32が重ねられ、その更に上側に後方側パーツ22が重ねられる。後方側パーツ22の下側に位置する裏材32の内折りつり込み部32aは後方側パーツ22の底面側につり込まれる。
【0051】
一方、表材31は、表材外折り部31aが外向きに広げられた状態で中入れ底23の中入れ底張り出し部23cに重ねられ、重ねられた表底10、中入れ底23及び表材31が縫い糸35によって出し縫いされる。このとき、必要に応じて、表材31(表材外折り部31a)の上側に細帯材36を配置し、細帯材36と共に出し縫いすることもできる。
【0052】
本実施形態の靴のように、表材31を外向きに広げて出し縫いすると共に、裏材32を内向きに折り返して中底20につり込むことで、従来のステッチダウン靴の屈曲性を維持しつつ、従来のステッチダウン靴に比べて高いホールド力(フィッティング性)が得られる。
【0053】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、裏材32が表材31の後方側の半分程度の領域に設けられた甲部材30を用いる場合を一例としているが、甲部材30にはこれ以外のものを用いることができる。
図8(a)(b)に示す甲部材30は、表材31の内側の爪先側に先裏材37が設けられたものである。
【0054】
先裏材37の表材外折り部31aと重なる位置には、張り出し部21bに重なる重ね部(以下「先裏材外折り部」という)37aが設けられている。表材31と先裏材37の間には先芯33が配置されている。表材31、先芯33及び先裏材37は、糊や両面テープなどの各種接着手段で予め一体化される。
【0055】
図9は、
図8(a)に示す靴の爪先側の横断方向の断面図である。この図に示すように、表底10の上面には前方側パーツ21の張り出し部21bが重ねられ、その張り出し部21bの上面には、先裏材外折り部37a、先芯外折り部33a及び表材外折り部31aが外向きに広げられた状態で重ねられる。
【0056】
重ねられた表底10、前方側パーツ21、先裏材37、先芯33及び表材31は、縫い糸35によって出し縫いされる。このとき、表材31(表材外折り部31a)の上側に細帯材36を配置し、細帯材36と共に出し縫いするようにしてもよい。細帯材36は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0057】
前記各実施形態で説明した中底及び靴の構成は一例であり、本発明の中底20及び靴の構成はこれら実施形態の構成に限定されるものではない。本発明の中底20及び靴は、その要旨を変更しない範囲で、構成の追加、省略、入れ替え等の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の中底20は、紳士靴をはじめ、婦人靴や子供靴の中底20として利用することができる。また、本発明の中底20は、フォーマルシューズのほか、カジュアルシューズの中底20としても利用することができる。靴の種類別に言えば、本発明の中底20は、たとえば、ワークブーツやサイドゴアブーツ、マウンテンブーツ、チャッカブーツ、デザートブーツ、カントリーブーツ、エンジニアブーツ、ラインマンブーツ、トレッキングシューズ等、各種用途の靴の中底20として利用することができる。本発明の靴は、前述した各種用途の靴として利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 表底
11 ヒール
20 中底
21 前方側パーツ
21a 前方足乗せ部
21b 張り出し部
21c 前方連結部
22 後方側パーツ
22a 後方足乗せ領域
22b 後方連結部
23 中入れ底
23a 傾斜面
23b 配置部
23c 中入れ底張り出し部
24 中物
25 カウンタ
26 シャンク
27 中敷
30 甲部材
30a 第一被覆領域
30b 第二被覆領域
30c 第三被覆領域
31 表材
31a 重ね部(表材外折り部)
32 裏材
32a 内折りつり込み部
33 先芯
33a 重ね部(先芯外折り部)
34 履き口
35 縫い糸
36 細帯材
37 先裏材
37a 重ね部(先裏材外折り部)