(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084432
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/72 20060101AFI20240618BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A47C7/72
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198704
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】管 智士
(72)【発明者】
【氏名】中山 絵梨
(72)【発明者】
【氏名】西上 真凪
(72)【発明者】
【氏名】古賀 貴秀
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JC12
3B084JD06
(57)【要約】
【課題】矯正支持部を備えた椅子において、人が使用したいと動機付けさせる形態を実現する。
【解決手段】背もたれ3は、少なくとも上部を細幅に形成した矯正支持部9と、その下端に連続した腰支持部8と、左右側部に連続したサイド部10とを有している。背もたれ3は全体として四角形になっているため、外観において違和感はなくて使用することに心理的な抵抗はない(オフィスであっても人目を気にせず使用できる。)。マッサージ具11等の補助部材を設けると、椅子を使用したいという誘引は更に高まって、姿勢矯正機会(適正姿勢保持機会)を増進できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれとを有し、
前記背もたれは、少なくとも上部を着座者の背骨を中心にした部位が当たるよう前記座よりも左右幅が小さい細幅部に形成された矯正支持部と、前記矯正支持部から後ろに後退したサイド部とを備えている、
椅子。
【請求項2】
前記背もたれは、前記矯正支持部の上部よりも左右幅が大きい腰支持部も備えており、前記腰支持部と矯正支持部とは連続している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記サイド部は、前記矯正支持部に対して屈曲した姿勢になっている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
座と背もたれとを有し、
前記背もたれは、少なくとも上部を着座者の背骨を中心にした部位が当たるよう前記座よりも左右幅が小さい細幅部に形成された矯正支持部を有し、
前記矯正支持部又はその左右両側に配置されたサイド部に、着座者に対して作用する補助部材を直接に又は他の部材を介して設けている、
椅子。
【請求項5】
前記補助部材は、マッサージ具、着座者に振動を伝える加振具、着座者の身体が当たる突起物、着座者の頭の側方に配置される音声出力部材、電熱式又は発熱式若しくは蓄熱材式の加温部材、電気式又は保冷材式の冷却部材のうちの何れかを含んでいる、
請求項4に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、姿勢矯正機能を備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子はデスクワークの必需品として使用されており、上半身を起こした姿勢で腰部を支持するランバーサポートを設けるなど、使用者が疲れにくく適切な姿勢を維持できるように様々な工夫が成されている。
【0003】
しかし、椅子を使用するに当たってどのような姿勢を採るかは使用者の自由であることから、例えばパソコンを使用した作業・執務において、人によっては上半身を前屈みさせて顔をモニタに近づけることがあり、いわゆる猫背や巻肩の現象が生じやすい。そして、猫背・巻肩の姿勢を長時間採り続けると、血行が悪くなったり肩や首の凝りを誘発したりして健康障害を起こしやすい。
【0004】
そこで、健康障害防止機能を備えた椅子が提案されており、その一例として特許文献1には、椅子を前傾姿勢に保持できるようにして、身体を机に近づけつつ上半身を背もたれで支えることができるようにした椅子が開示されている。他方、特許文献2には、背もたれを干字状等に形成して、運動具として使用できる椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-31550号のCD-ROM
【特許文献2】特開2002-90225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
椅子の姿勢矯正機能が適切に使用されたら猫背や巻肩を防止できるが、問題は、椅子が姿勢矯正機能を備えていても、使用者がその機能を使いたくなる動機付けが存在しないと、折角の機能が無駄になってしまうことである。この点、特許文献1には、姿勢矯正機能を使用したいと動機付けさせる工夫に乏しいと解される。
【0007】
他方、特許文献2は椅子を運動具として使用するものであるが、背もたれは通常の椅子の形態からかけ離れた形態であるため、まず購入すること自体に心理的なハードルが高く、更に、デスクワークにも使いにくいと云える。
【0008】
本願発明はこのような現状を背景になされたものであり、姿勢矯正機能に優れた椅子を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、上位概念を成すもので、
「座と背もたれとを有し、
前記背もたれは、少なくとも上部を着座者の背骨を中心にした部位が当たるよう前記座よりも左右幅が小さい細幅部に形成された矯正支持部と、前記矯正支持部から後ろに後退したサイド部とを備えている」
という構成になっている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、
「前記背もたれは、前記矯正支持部の上部よりも左右幅が大きい腰支持部も備えており、前記腰支持部と矯正支持部とは連続している」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は請求項1又は2を具体化したものであり、
「前記サイド部は、前記矯正支持部に対して屈曲した姿勢になっている」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は請求項1と同様に上位概念を成すものであり、
「座と背もたれとを有し、
前記背もたれは、少なくとも上部を着座者の背骨を中心にした部位が当たるよう前記座よりも左右幅が小さい細幅部に形成された矯正支持部を有し、
前記矯正支持部又はその左右両側に配置されたサイド部に、着座者に対して作用する補助部材を直接に又は他の部材を介して設けている」
という構成になっている。
【0013】
請求項5の発明は請求項4を具体化したもので、
「前記補助部材は、マッサージ具、着座者に振動を伝える加振具、着座者の身体が当たる突起物、着座者の頭の側方に配置される音声出力部材、電熱式又は発熱式若しくは蓄熱材式の加温部材、電気式又は保冷材式の冷却部材のうちの何れかを含んでいる」
という構成になっている。
【0014】
発熱式の加温部材としては、使い捨てカイロを挙げることができる。蓄熱材式の加温部材としては湯たんぽやお湯袋を挙げることができる。保冷材式の冷却部材としては、袋入りのゲル状保冷剤や水袋を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、姿勢保持部材は少なくとも上部が座よりも細幅に形成されているため、
着座者が普通に背もたれに背中を当てると、胸を張った状態になって、上半身に負担が掛からない適正な姿勢に保持される。すなわち、人は背もたれに凭れる(或いは背中を当てる)だけで、適正な姿勢に促される。
【0016】
そして、本願請求項1の発明では、矯正支持部の左右両側にサイド部が形成されていて全体として通常の背もたれと同様の外観を呈しているため、オフィスに配置しても違和感はなくて、人は心理的な抵抗無しに使用できる。従って、姿勢を矯正させた状態でデスクワークを行うことを促進して、デスクワークに起因した人の健康障害防止に貢献できる。
【0017】
そして、本願請求項1の発明のように背もたれにサイド部を設けると、まず、背もたれの強度を向上できる。また、背もたれは通常見られる角形とほぼ同じ正面視形状になるため、違和感を無くして抵抗なく使用できる利点もある。また、人か胸を張ると左右の肩甲骨か後ろに反り気味になるが、本願請求項1のようにサイド部を設けると、後ろに反った肩甲骨をサイド部で支持し得るため、人か胸を張った状態を安定的に保持できる。従って、矯正支持部の姿勢矯正機能(或いは適正姿勢誘導機能)を助長できる。
【0018】
また、背中を矯正支持部に当てた状態で腕を後ろに回す場合があるが、本願請求項1の発明では、腕をサイド部で支持できるため、腕を安定させることができ、延いては、上半身の安定性にも貢献できる。更に、着座した人が上半身を捩じったり左右方向に傾けたりして背もたれに凭れた場合、背中の側部がサイド部で支持されるため、上半身が後ろに倒れ込むことを防止して、身体の安定性を確保できる。このような機能が椅子を使用する誘引になって、姿勢矯正機能の実効性を向上できる。
【0019】
請求項2のように背もたれに腰支持部を設けると、身体の安定性を向上できて好適である。この場合、実施形態のように腰支持部にランバーサポート機能を設けると、上半身を直立した姿勢に保持できるため、特に好適である。更に、腰支持部を設けつつ、矯正支持部を左右幅が上に向けて小さくなる台形状に形成すると、身体の安定性を更に高くできて好適である。
【0020】
請求項3のようにサイド部を矯正支持部に対して屈曲させると、矯正支持部の前面とサイド部の前面とが滑らかに連続するため、胸を張った状態での肩甲骨の支持を確実化できると共に、人が腕を後ろに回したときに腕をサイド部に違和感なく当てることができる。また、使用者が上半身を左右方向にずらして後傾させたときにも、上半身をサイド部にスムースに移行させることができる。更に、矯正支持部とサイド部とが滑らかに連続するため、矯正支持部とサイド部とが一体化した外観を呈して、外観上の違和感防止を更に向上できる。
【0021】
請求項4のようにサイド部や矯正支持部に補助部材を設けると、補助部材による補助機能によって使用者に貢献できる。また、補助機能を誘引として椅子の使用機会を高めることができるため、姿勢矯正機能による健康障害防止効果も助長できる。
【0022】
補助部材の一部を請求項5で例示しているが、マッサージ具を設けると、肩凝り防止などによって使用者の健康増進に貢献できる。突起物も指圧効果によって使用者の健康増進に貢献できる。加温部材は冬場に有益であり、冷却部材は夏場に有益である。加振具はマッサージ具として使用することが可能であるが、例えばゲームソフトと協働させて、身体の刺激付与手段として使用することも可能である。補助部材は1種類だけ設けることも可能であるし、複数種類を設けることも可能である。
【0023】
音声出力部材(例えばスピーカ)は、様々な用途に使用できる。すなわち、ウエブ会議の音声聴取手段のように執務の一環として使用したり、休憩時に音楽等を聴くことに使用したりと、様々な用途に使用できる。音楽等を聴きながら矯正支持部にもたれて、リラックス状態で姿勢矯正機能(適正姿勢誘導機能)を発揮させることも可能である。音声出力部材と加振具とを併用することも可能である。
【0024】
本願発明において、音声出力部材は使用者の耳から離れているため、ヘッドホンやイヤホンに比べて耳の負担を軽減できる。また、使用者の耳には周囲の音も入るため、周囲の環境から遮断され過ぎることもない。スピーカ等の音声出力部材は、サイド部又は矯正支持部に設けたアーム類に設けることも可能であるし、ヘッドレストに設けることも可能である。スピーカをヘッドレストに設けると、頭の安定性を保持しつつスピーカを使用できるため、長時間の使用も楽な状態で行える。
【0025】
請求項5では特定していないが、補助部材として、使用者の顔の前方に配置されて画像を写し出すディスプレイ(モニター)を使用することも可能である。この場合は、ディスプレイは回動式(跳ね上げ式又は水平回動式)に構成する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図2】第1実施形態を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図3】第2実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図4】(A)は第3実施形態の斜視図、(B)は第4実施形態の斜視図である。
【
図6】第6実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定するために前後・左右の文言を使用するが、この方向は、椅子に普通に着座した人から見た方向として定義している。正面図は着座者と対向した方向から見た図である。
【0028】
(1).第1実施形態の構成
まず、
図1,2に示す第1実施形態を説明する。本実施形態は、オフィス用のリクライニング式回転椅子に適用している。椅子は、基本要素として脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、5本の脚羽根を備えた基部4と、これに立設した脚支柱5とで構成されており、脚羽根の先端にキャスタを設けている。
【0029】
脚支柱5の上端にはベース6が固定されており、ベース6に左右の背フレーム7が連結されて、左右の背フレーム7の起立部7aに、背もたれ3が取り付けられている。なお、背フレーム7は固定式で傾動しないが、傾動式(リクライニング式)に構成することも可能である。
【0030】
背もたれ3は、背面を構成する樹脂製のアウターシェルとその前面に張ったクッション材とを有しており、クッション材は布等の表皮材(張地)で覆われている。なお、表皮材はアウターシェルの背面まで覆うことも可能である。アウターシェルの左右側部が背フレーム7の起立部7aに固定されている。背もたれ3の下端は座面よりも少し上に位置しているが、背もたれ3の下端を座面と略同じ高さに設定することも可能である。
【0031】
背もたれ3は、着座者(図示せず)の腰を支持する腰支持部8と、その上に位置して着座者の背中を支持する矯正支持部9と、矯正支持部9の左右両側に位置したサイド部10とから成っている。腰支持部8は、
図1(B)に示すように、平面視では前向きに凹むように湾曲して、
図2(B)に示すように、縦断側面視では前向きに膨れるように湾曲している。従って、腰支持部8は、着座者の腰を抱持しつつランバーサポート機能を有している。
【0032】
矯正支持部9の下端は腰支持部8の下端と同じ左右幅になっており、左右幅が上に向けて小さくなる正面視台形状に形成されている。従って、矯正支持部9は、その下端を除いて座2の左右幅よりも小さい左右幅になっており、上端の左右幅は、例えば10cm前後に設定されている。矯正支持部9の側縁は正面視で少し湾曲しているが、正面視で直線になっていてもよい。矯正支持部9の下端は、腰支持部8と同様に平面視で前向きに凹むように湾曲しており、上端部の前面はフラット状になっている。
【0033】
矯正支持部9は上窄まりであるため、着座者が矯正支持部9に背中を当てた状態では、実施形態を真っ直ぐに伸ばした状態でないと身体が安定しない。このため、着座者は背筋を伸ばした姿勢を採るように誘導されて、姿勢矯正機能を発揮する。
【0034】
サイド部10は、矯正支持部9から後ろに向けて倒れた状態になっている。従って、矯正支持部9とサイド部10とは屈曲した状態になっている。そして、本実施形態では、背もたれ3は、正面視で全体としては概ね四角形に近い形態を成しており、従って、通常の椅子の背もたれと同様の正面視形状になっている。
【0035】
本実施形態では、請求項に記載した補助部材として、左右のサイド部10に上下3個の振動式マッサージ具11を設けている。マッサージ具11は前後方向等に振動する振動子を有しており、背もたれ3に持たれた人の背中に当たるようになっている。従って、
図2に示すように、マッサージ具11の先端は、矯正支持部9の前面よりも少し前方に突出している。
【0036】
マッサージ具11は正面視で円形に形成されているが、任意の形状を選択できる。また、個数や配置態様も任意に設定できる。多数のマッサージ具11をサイド部10に満遍なく配置することも可能である。また、マッサージ具11は、サイド部10に埋め込んでいてもよいし、面ファスナ等の接続具によって後付けすることも可能である。後付け方式の場合は、個数や配置位置を認定に設定できる利点がある。
【0037】
また、サイド部10に着脱式の基板を取り付けて、基板にマッサージ具11を取り付けることも可能である。基板は、例えば背もたれ3を上方及び側方から挟持するクランプ方式に構成できる。
【0038】
(3).まとめ
既述のとおり、矯正支持部9が上窄まりになっていることにより、着座者が背もたれ3に凭れると(背中が矯正支持部9に当たると)、着座者は自然に胸を張って背筋を伸ばした姿勢になる。従って、身体に負担が掛からない適正な姿勢を採るように誘導され、巻肩や猫背の場合はこれが矯正される。
【0039】
また、背もたれ3は全体として四角形の外観を成していて通常の椅子の背もたれと相違ないため、デザイン的な違和感はなくて、人が使用することに心理的抵抗を受けることはない。また、サイド部10が存在するため、着座者が背もたれ3にもたれた状態で上半身をずらしたり捩じったりしても、上半身はサイド部10によって安定的に支持される(特に、胸を張った状態で後ろに反り気味になる肩甲骨を支持できる。)。このため、使用者は、通常の椅子を使用している感覚で姿勢矯正効果を享受できる。
【0040】
そして、本実施形態では、使用者は背中を矯正支持部9に当てた状態で背中にマッサージ作用を受けることができるため、背中を矯正支持部9に当てた状態を長時間にわたってとり続けることができる。すなわち、マッサージ効果を誘引として、姿勢矯正作用(適正姿勢保持作用)を長時間にわたって受けることができる。
【0041】
従って、本実施形態では、正しい姿勢を採れることによる健康障害防止効果と、マッサージ作用による健康増進効果との相乗作用により、椅子の使用者の健康増進に貢献できる。このような効果により、人に椅子を使用したいというインセンティブを与えることができるが、外観において違和感がなくて人目を気にせず使用できるため、姿勢矯正機能を発揮させることができる。
【0042】
マッサージ具11は、必要に応じて作動させたらよい。マッサージ具11が作動していない状態では、マッサージ具11をつぼ押し突起として使用できる。電動式のマッサージ具11に代えて、固定式のつぼ押し具(突起)を設けることも可能である。マッサージ具11やつぼ押し具は矯正支持部9でなくサイド部10に設けているため、マッサージ具11が使用者の背中に強く当たり過ぎることを防止できる。
【0043】
マッサージ具11やつぼ押し具などは突出態様が決まっている固定式でもよいし、突出状態を調節できる前後動式の構成であってもよい。後者では、後退状態と前進状態との2段階調節方式でもよいし、突出量を段階的又は無段階的に調節可能な構成も採用できる。前後動させる手段としては、例えば、背もたれに設けた筒体にマッサージ具11等を前後動可能に嵌め込んで、ねじや電磁ソレノイドなどで前進位置を変更できるようにすることができる。
【0044】
(3).第2実施形態
次に、
図3以下の他の実施形態を説明する。
図3では第2実施形態を示している。この実施形態において、背もたれ3の形態は第1実施形態と同様であり、腰支持部8と矯正支持部9とサイド部10とを有している。この実施形態では、背もたれ3はその左右端部が背フレーム7の左右起立部7aに固定されている。また、この実施形態の椅子は肘掛け装置12を備えており、肘掛け装置12は、ベース6に後傾動自在に連結された背フレーム7の左右起立部7aに高さ調節可能に装着された肘当て13を有している。
【0045】
この実施形態では、請求項に記載した補助部材の例として、左右のサイド部10に、加温部材14を内蔵している。加温部材14の配置エリアを点線のハッチングで表示している。
【0046】
加温部材14は電熱式でシート状に形成されている。加温部材14は、クッション材と表皮材との間に配置してもよいし、クッション材とアウターシェルとの間に配置してもよい。実施形態ではサイド部10の全体に加温部材14を配置しているが、加温部材14はサイド部10の一部に配置することも可能である。
【0047】
加温部材14は、サイド部10に設けることに代えて、矯正支持部9や腰支持部8に設けることも可能である。すなわち、サイド加温部材14とセンター加温部材とを設けることも可能である。この場合は、センター加温部材のみに通電して上半身のうち腰支持部8及び矯正支持部9に重なった部位のみを加温したり、サイド加温部材14のみに通電して背中を間接的に加温したり、或いは、センター加温部材とサイド加温部材14との全体に通電して背もたれ3の前面全体で加温したりするように切り替えできる。
【0048】
本実施形態では、身体に対する直接的な加温であるため、冬場において室温が多少低くても、快適にデスクワークを行える。そして、椅子が加温機能を有することにより、椅子を使用したいという動機を人に与えて、人に姿勢矯正効果を享受させることができる。シート状の加温部材は、布帛の内部に電熱線を内蔵した構造が一般的であり、身体に直接当たると電熱線の箇所が高温になって不快に感じることがあるが、実施形態のようにサイド部10に加温部材14を設けると、加温部材14は身体と近接しつつ接触しないため、身体を均等に加温できて好適である。なお、座2にも加温部材を設けることは可能である。
【0049】
加温部材14の形状や配置態様は任意に設定できる。また、加温部材14に代えて冷却部材を設けることも可能である。加温機能と冷却機能とを切りえできる部材を使用することも可能である。
【0050】
加温部材や冷却部材は非電気式のものも使用できる。すなわち、加温部材としては、使い捨てカイロや湯たんぽ(或いはお湯袋)などを使用可能であり、冷却部材としてゲル状等の保冷具(保冷袋)や水袋を使用できる。これらの部材は、サイド部10等に設けたポケット部に収納できる。ポケット部は、例えば、上向きに開口した袋状の構成や、前向きに開口した空洞の構成とすることができる。この場合、矯正支持部9にもポケット部を設けることは可能である。
【0051】
第1実施形態の電動式マッサージ具11や第2実施形態の加温部材14のような電気式の部材を使用する場合、椅子は自在に移動させ得ることを考慮すると電源としてバッテリーが好適である。バッテリーは、例えば、背もたれ3の背面に設けたポケット部に着脱自在に配置することが可能である。この場合、バッテリーのみを取り外して充電できるようにすることも可能である。バッテリーと部材とが離反不能に接続される場合は、全体を背もたれ3に着脱式として、全体を取り外して充電したらよい。
【0052】
第1実施形態のマッサージ具11のように複数の部材が存在してかつバッテリー一体式の場合は、複数の部材を1つのシート材などにまとめてユニット化して、ユニットを背もたれ3に対して着脱式に構成すると扱いやすくて好適である。
【0053】
(4).第3,4実施形態
図4(A)に示す第3実施形態では、背もたれ3の上方に、左右の側板16aを有する平面視コ文字形のヘッドレスト16を配置して、ヘッドレスト16における左右側板16aの内面に、補助部材の一例としてのスピーカ17を配置している。スピーカ17は音声出力部材の一例である。ヘッドレスト16は、矯正支持部9に取り付けてもよいし、サイド部10に取り付けてもよい。ヘッドレスト16は、樹脂製のアウター部材の内面にクッション材を配置してこれを表皮材(張地)で覆った構造になっている。
【0054】
スピーカ17は表皮材で覆われていてもよいし、表皮材から露出していてもよい。また、スピーカ17は、クッション材に埋設してもよいし、クッション材又は表皮材の外面に重ね配置してもよい。ヘッドレスト16を左右の側板16aが存在しない形態に作って、ヘッドレストの左右側部から前向きに突出させたブラケットやアーム材にスピーカ17を取り付けることも可能である。
【0055】
図4(B)に示す第4実施形態では、サイド部10に逆L形のブラケット18を突設して、ブラケット18にスピーカ17を取り付けている。左右のブラケット18は独立しているが、平面視で湾曲した平面視U形のアーム材の左右両端にスピーカ17を設けて、アーム材を柱状の部材で背もたれ3に固定することも可能である。
【0056】
ヘッドレスト16に頭を凭れかけた状態で着座者の耳に近い位置にスピーカ17を配することにより、スピーカの音量を小さくすることができ、周囲への音漏れの影響を限定的にすることができるとともに、正しい姿勢に誘導することが可能となる。さらに、聞こえる範囲が限定された指向性スピーカを採用して、人が矯正支持部9に背中を当てると共に頭をヘッドレスト16に当てた状態でないと音声が耳に届かないように設定しておくことも可能であり、この場合は、人は背中を矯正支持部9に当てた姿勢を採らないと音声を聞き取りできないため、姿勢誘導効果を更に助長できる。また、周囲への音漏れ防止効果を向上できる。
【0057】
また、ヘッドレスト16に、スマートフォン等の携帯端末を上方から挿入できるポケット部と、ポケット部に連通した状態で側板16aの内側面に開口した通音口を形成し、ポケット部に挿入した携帯端末のスピーカから発する音声を通音穴から人の耳に届けるようにしてもよい。ポケット部は側板16aに設けてもよいし、着座者の頭部を支える背面板に設けてもよく、後者の場合は、ポケット部と通音穴とは、音の通路となるトンネル状の連通部でつなげばよい。背面のポケット部から連通部を二手に枝分かれさせて左右の側板16aに通音穴を設けることで、左右の側板16aから音が聞こえるようにすることも可能である。このように、着座者自身の携帯端末を代用できるため、スピーカを備えた椅子に比べ、顧客に対し安価に椅子を提供することができる。
【0058】
ヘッドレスト16の背面や背もたれ3の背面、肘掛け装置の外側面などに携帯端末収容ポケットを設ける一方、スピーカ17に音声ケーブルを接続して、音声ケーブルを携帯端末に接続することも可能である。或いは、携帯端末収容ポケットは設けずに、使用者が手許に持った携帯端末とスピーカとを音声ケーブルで接続してもよい。更に、携帯端末や机上のパソコンからスピーカに音声情報を無線送信することも可能である。
【0059】
(5).第5実施形態
図5に示す第5実施形態では、背もたれ3の上方にヘッドレスト16を配置すると共に、着座者の顔の前方にディスプレイ(モニタ)19を配置している。ディスプレイ19は液晶パネルや有機ELパネルのような自発光式パネルを使用しているが、投影式のスクリーンも使用できる。
【0060】
ディスプレイ19は、平面視コ文字形のフレーム材20に固定されており、フレーム材20は、背もたれ3に取り付けた門型の支持枠21に跳ね上げ回動自在に連結されている。すなわち、支持枠21の上端に左右長手のパイプ21aを配置して、パイプ21aにフレーム材20の後端がピン(図示せず)によって回動自在に連結されている。フレーム材20は、図示しないストッパ手段により、前向きに倒れた姿勢と上向きに跳ね上げた姿勢とに選択的に保持できるようになっている。
【0061】
一点鎖線で模式的に示すように、フレーム材20の左右側部に、ブラケット22を介して又は直接的にスピーカ17を取り付けることも可能である。フレーム材20又はディスプレイ19に、マイクを設けることも可能である。
【0062】
この実施形態では、ディスプレイ19に様々な画像を表示できる。例えば、ディスプレイ19に仮想空間やリアルな別空間を動画で表示して、遠隔的な会議を行うことができる。すなわち、メタバース機能を形成できる。或いは、ディスプレイ19をゲームの表示に使用して、ゲーム用椅子として使用することもできる。ゲーム用椅子として使用する場合、肘当て13にスイッチやボタンのような操作具(コントローラ)を設けることが可能である。また、背もたれ3に加振部材を設けて、ゲームの内容に応じて身体を加振できる。
【0063】
いずれにしても、矯正支持部9を備えた椅子が画像表示機能を有することにより、人は、矯正支持部9にもたれた状態のまま長時間を維持できる。すなわち、ディスプレイ19を誘引として、椅子の姿勢矯正機能を長時間にわたって享受できる。従って、健康障害防止効果の実を上げることができる。
【0064】
(6).第6実施形態
図6に示す第6実施形態では、サイド部10に、補助部材の一例としての加振部材23を配置している。加振部材23は人の背中に振動を付与するものであり、マッサージ具として使用したり、第5実施形態で触れたようにゲームにおける刺激付与手段として使用したりすることもできる。
【0065】
本実施形態の加振部材23は面的な広がりを持っており、使用者の背中は、矯正支持部9と加振部材23との両方に当たるように設定している。加振部材23はサイド部10に対して着脱式であってもよいし、サイド部10に予め取り付けられていてもよい。
【0066】
左右の加振部材23は、人が背中を矯正支持部9に当てた状態で人に振動を付与できて、人の背中が矯正支持部9から浮いていると振動が伝わらないように設定している。
また、図示しない圧力センサにより、左右の加振部材23は人の体圧が掛かっていないと作動しないように設定している。
【0067】
従って、加振部材23をマッサージ具として使用するにしてもゲーム用刺激手段として使用するにしても、人は、背中を矯正支持部9に当てた状態でないと機能を享受できず、従って、姿勢矯正効果の実効性を確保できる。
【0068】
図7に示す第7実施形態では、サイド部10は、大きな開口24を介して矯正支持部9と繋がった枠状に形成されている。この実施形態では、開口24に各種の補助部材を嵌め込むことができる。すなわち、パネル状の基板にマッサージ具11等の各種の身体作用補助部材を取り付けてユニット化しておき、基板を背もたれ3の背面にビス等によって固定することにより、各種の身体作用部材を選択して取り付けることができる。従って、融通性に優れている。
【0069】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。適用対象の椅子は回転椅子には限らず、パイプ椅子などの各種の椅子に適用できる。矯正支持部に加温部材を設けてサイド部にマッサージ具を設けるというように、複数種類の補助部材を設けることも可能である。背もたれに、補助部材として冷却部材を備えたヘッドレストを設けることも可能である。
【0070】
補助部材としては、肩揉み式マッサージ具なども使用できる。サイド部は矯正支持部から後ろに段落ちした状態に配置されていてもよい。また、背もたれは、クッションタイプである必要はないのであり、合成樹脂製の背板が露出したタイプも採用できる。
【0071】
また、本願発明は、前後に開口した背フレームにメッシュ材を張った構造の背もたれにも適用できる。この場合は、背フレームのアッパメンバとロアメンバーとに上下長手の樹脂板製センタープレートを掛け渡して、センタープレートによってメッシュ材の上部の左右中間部を前向きに押し出して矯正支持部と成すことができる。或いは、背フレームの左右サイドフレームに掛け渡したステーに上下長手の矯正支持部用プレートを固定して、矯正支持部用プレートでメッシュ材を手前に押し出すことによっても、矯正支持部を形成できる。つまり、着座者の腰よりも上の部位の後ろに配置された矯正パッドによってメッシュ材を手前に押し出して矯正支持部と成すことも可能である。
【0072】
これらの場合、メッシュ材のうち矯正パッドの左右両側の部位が、矯正支持部から後ろに後退したサイド部になる。背フレームのアッパメンバを、平面視で左右中間部が突出した台形状に形成しつつ上下長手の矯正パッドを設けて、メッシュ材のうち矯正パッドの左右両側の部位をサイド部に設定することも可能であるし、アッパメンバは平面視で一直線に延びる形態としつつ、メッシュ材の左右中間部を矯正パッドで手前に押すことにより、矯正パッドの後ろに後退したサイド部を形成する(メッシュ材を平面視で台形状に変形させる)ことも可能である。
【0073】
背もたれの正面視形状は、六角形や円形、或いは上下長手の楕円形なども採用できる。更に、背もたれには、使用者が前屈みになることを防止するベルト等の拘束部材を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明は椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
7 背フレーム
8 腰支持部
9 矯正支持部
10 サイド部
11 補助具の一例としてのマッサージ具
14 補助具の一例としての加温部材
16 ヘッドレスト
17 補助具の一例としてのスピーカ
19 補助具の一例としてのディスプレイ
23 補助具の一例としての加振部材