(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084443
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198719
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 修一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK37
(57)【要約】
【課題】インナーシャフトの進退により調整される電極アセンブリの形状の自由度を高めることのできる技術を提供する。
【解決手段】ルーメン20が形成されたアウターシャフト22と、ルーメン20内に進退可能に挿通されるインナーシャフト24と、アウターシャフト22の遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ28と、を備え、電極アセンブリ28は、アウターシャフト22に一端部が接続されるとともにインナーシャフト24に他端部が接続される複数のスプライン32を備え、インナーシャフト24は、ルーメン20の遠位端に設けられる遠位端開口30から突き出る突出位置P1と遠位端開口30から奥側に収まる収まり位置P2との間を進退可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンが形成されたアウターシャフトと、
前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、
前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、
前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、
前記インナーシャフトは、前記ルーメンの遠位端に設けられる遠位端開口から突き出る突出位置と前記遠位端開口から奥側に収まる収まり位置との間を進退可能である電極カテーテル。
【請求項2】
前記電極アセンブリの外径は、前記インナーシャフトの進退に追従して前記複数のスプラインが径方向に拡張又は収縮することで調整可能である請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項3】
前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトの少なくとも一方は、灌注液を灌注するためのイリゲーションポートを備える請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項4】
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずかに位置する場合に、前記スプラインの遠位端において前記インナーシャフトの進退方向に折り返す形状になる請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項5】
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトの進退に追従して前記インナーシャフトから前記スプラインの遠位側折り返し端部までの進退方向距離を変えるように柔軟に変形可能である請求項4に記載の電極カテーテル。
【請求項6】
ルーメンが形成されたアウターシャフトと、
前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、
前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、
前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、前記スプラインの遠位端において前記インナーシャフトの進退方向に折り返す形状になり、
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトの進退に追従して前記インナーシャフトから前記スプラインの遠位側折り返し端部までの進退方向距離を変えるように柔軟に変形可能である電極カテーテル。
【請求項7】
前記スプラインは、前記アウターシャフトを進退方向に延長した範囲上において屈曲部のない形状である請求項5または6に記載の電極カテーテル。
【請求項8】
前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトの少なくとも一方は、その遠位側端部から遠位側に灌注液を灌注するためのイリゲーションポートを備える請求項1または6に記載の電極カテーテル。
【請求項9】
前記複数のスプラインそれぞれの遠位側折り返し端部は、前記インナーシャフトの遠位側端部又は前記インナーシャフトの遠位側端部と一体の部材よりも遠位側にずれた位置に設けられる請求項4または6に記載の電極カテーテル。
【請求項10】
前記スプラインは、コアワイヤと、前記コアワイヤを被覆するアウターチューブと、を備え、
前記スプラインは、前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトの外部において露出する露出部を備え、
前記コアワイヤは、少なくとも前記露出部における前記インナーシャフト側の端部において露出している請求項1または6に記載の電極カテーテル。
【請求項11】
前記スプラインは、コアワイヤと、前記コアワイヤを被覆するアウターチューブと、を備え、
前記コアワイヤ及び前記アウターチューブのうちの前記コアワイヤのみが、前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトの少なくとも一方の内部に挿通されている請求項1または6に記載の電極カテーテル。
【請求項12】
前記インナーシャフトは、前記インナーシャフトの進退可能範囲における最遠位位置にあるときに前記アウターシャフトから突出する突出領域を備え、
前記スプラインは、少なくとも前記突出領域のある進退方向範囲の全域において前記インナーシャフトに挿通されている請求項1または6に記載の電極カテーテル。
【請求項13】
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、前記インナーシャフトの進退方向から見て、径方向外側に放射状に突き出る花弁状部分を備える形状になり、
一の前記スプラインは、少なくとも周方向片側に隣り合う他の前記スプラインに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる請求項1または6に記載の電極カテーテル。
【請求項14】
前記一のスプラインは、周方向両側に隣り合う個別の他の前記スプラインに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる請求項13に記載の電極カテーテル。
【請求項15】
前記スプラインは、前記スプラインの外周側折り返し端部よりも第1端側にある第1端側部分と、前記外周側折り返し端部よりも第2端側にある第2端側部分とを備え、
前記一のスプラインの第1端側部分は、前記他のスプラインの第2端側部分に周方向内側から絡むことのできる位置に設けられ、
前記一のスプラインの第1端側部分及び前記他のスプラインの第2端側部分の一方は前記アウターシャフトに接続され、それらの他方は前記インナーシャフトに接続され、
前記インナーシャフトは、前記ルーメンの遠位端開口よりも奥側に向けて後退可能である請求項13に記載の電極カテーテル。
【請求項16】
ルーメンが形成されたアウターシャフトと、
前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、
前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、
前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、
前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、前記インナーシャフトの進退方向から見て、径方向外側に放射状に突き出る花弁状部分を備える形状になり、
一の前記スプラインは、少なくとも周方向片側に隣り合う他の前記スプラインに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる電極カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ルーメンが形成されたアウターシャフトと、ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に設けられる電極アセンブリとを備える電極カテーテルを開示している。電極アセンブリは、アウターシャフト及びインナーシャフトのそれぞれに接続される複数のスプラインを備える。電極アセンブリは、インナーシャフトの進退に追従して複数のスプラインが変形することで形状を調整可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、インナーシャフトの進退により調整される電極アセンブリの形状の自由度を高めるための新たなアイデアを見出した。
【0005】
本開示の目的の1つは、インナーシャフトの進退により調整される電極アセンブリの形状の自由度を高めることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1項目の電極カテーテルは、ルーメンが形成されたアウターシャフトと、前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、前記インナーシャフトは、前記ルーメンの遠位端に設けられる遠位端開口から突き出る突出位置と前記遠位端開口から奥側に収まる収まり位置との間を進退可能である。
【0007】
本開示の第2項目の電極カテーテルは、ルーメンが形成されたアウターシャフトと、前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、前記スプラインの遠位端において前記インナーシャフトの進退方向に折り返す遠位側折り返し端部を備える形状になり、前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトの進退に追従して前記インナーシャフトから前記遠位側折り返し端部までの進退方向距離を変えるように柔軟に変形可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インナーシャフトの進退により調整される電極アセンブリの形状の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の電極カテーテルの使用状態に関する説明図である。
【
図2】第1実施形態の電極カテーテルを模式的に示す側面図である。
【
図3】第1実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに示す模式図である。
【
図4】第1実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに進退方向から見た模式図である。
【
図6】第1実施形態の電極アセンブリの動作を模式的に示す第1説明図である。
【
図7】第1実施形態の電極アセンブリの動作を模式的に示す第2説明図である。
【
図8】第1実施形態の電極アセンブリの動作を模式的に示す第3説明図である。
【
図9A】参考形態の電極アセンブリを模式的に示す図である。
【
図9B】参考形態の電極アセンブリの動作に関する説明図である。
【
図10】参考形態の電極アセンブリの使用状態に関する説明図である。
【
図11】第1実施形態のイリゲーションポートに関する説明図である。
【
図12】第2実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに進退方向から見た模式図である。
【
図13】第2実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに斜めに見た模式図である。
【
図14】第2実施形態の電極アセンブリの動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1を参照する。電極カテーテル10の利用シーンから説明する。電極カテーテル10は、生体の処置のために体内に挿入される。ここでの「処置」とは、生体の治療又は検査に関する行為をいう。ここでの治療とは、例えば、アブレーション(PFA(Pulsed Field Ablation)、高周波アブレーション等)、除細動等をいう。ここでの検査とは、例えば、心電図検査等をいう。ここでは、生体の左心房12に開口する肺静脈14の末端部が処置対象部16となる例を説明する。言い換えると、生体の処置対象部16は、生体の第1器官(ここでは心臓)に開口する第2器官(ここでは肺静脈)の末端部となる。この処置対象部16には、第1器官から見て奥側に向かうにつれて先細りとなる先細り箇所16aが設けられる。この処置対象部16は一例に過ぎず、先細り箇所16aの有無を問わず、生体の各種部位が処置対象部16となってもよい。
【0012】
図2、
図3、
図4を参照する。電極カテーテル10は、ルーメン20が形成された筒状のアウターシャフト22と、そのルーメン20内に進退可能に挿通されるインナーシャフト24とを備える。この他に、電極カテーテル10は、アウターシャフト22の近位側部分に取り付けられアウターシャフト22を支持するハンドル26と、アウターシャフト22の遠位側端部よりも遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ28と、を備える。この「アウターシャフト22の遠位側端部よりも遠位側に・・・設けられる」という条件は、ここに記載のように、電極アセンブリ28の少なくとも一部が満たしていればよい。この条件は、例えば、本実施形態において、インナーシャフト24の進退可能範囲のなかで収まり始め位置Pb(後述する)から遠位側にインナーシャフト24があるとき、電極アセンブリ28の全体が満たす。これに対して、この条件は、インナーシャフト24の進退可能範囲のなかで収まり始め位置Pbよりも近位側にインナーシャフト24があるとき、電極アセンブリ28の一部が満たす。
【0013】
以下、アウターシャフト22及びインナーシャフト24が曲げ変形しておらず直線的に延びる状態を基準として各構成要素の位置関係を説明する。アウターシャフト22の中心線(不図示)を円中心とする円周方向及び半径方向を単に「周方向」「径方向」という。「遠位側」とは、アウターシャフト22の軸方向においてハンドル26を把持する術者の手元から遠い側をいい、「近位側」とは、その遠位側とは軸方向反対側をいう。インナーシャフト24の進退可能範囲内において最も遠位側にある位置を最遠位位置Paという。
図3は、インナーシャフト24が最遠位位置Paにある状態を示す。
【0014】
ハンドル26は、術者により把持される。ハンドル26には、インナーシャフト24を進退させるときに操作されるスライドノブ等の進退操作部26aが設けられる。
【0015】
図3、
図4、
図5を参照する。アウターシャフト22は、少なくとも遠位側において体内に挿入される。アウターシャフト22のルーメン20の遠位端には、アウターシャフト22の遠位側端部に開口する遠位端開口30が設けられる。
【0016】
インナーシャフト24は、少なくとも一つのシャフト部材24A~24Dにより構成される。本実施形態のインナーシャフト24は、四つのシャフト部材24A~24Dにより構成される例を示すが、その数は特に限定されない。四つのシャフト部材24A~24Dは、遠位側から近位側にかけて順に、最遠位シャフト部材24A、遠位側シャフト部材24B、中間シャフト部材24C、近位側シャフト部材24Dを含んでいる。複数のシャフト部材24A~24Dは、溶着、接着等により一体化される。最遠位シャフト部材24Aは、遠位側シャフト部材24Bよりも硬度の高い部材により構成される。これにより、インナーシャフト24の遠位側端部における強度を確保できる。この他にも、最遠位シャフト部材24A及び遠位側シャフト部材24Bの箇所を一つのシャフト部材により構成してもよい。
【0017】
アウターシャフト22及びインナーシャフト24は、曲げ変形可能な可撓性を持つ。アウターシャフト22及びインナーシャフト24(シャフト部材24A~24D)は、カテーテルシャフトを構成する公知素材を含む各種素材により構成される。この素材は、例えば、ポリエーテルブロックエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂である。
【0018】
電極アセンブリ28は、複数のスプライン32と、複数のスプライン32のそれぞれに設けられる複数の電極34と、を備える。ここでは計4つのスプライン32がある例を示すが、その個数は特に限定されない。
図3では、2つのスプライン32のみを図示し、それ以外のスプライン32を省略する。
【0019】
複数のスプライン32のそれぞれには、個々のスプライン32に対応する複数の電極34がスプライン32の長手方向に間隔を空けて設けられる。電極34はリング状をなす。電極34は、例えば、白金、金、銀等の電気導電性の良好な金属(合金を含む)により構成される。
【0020】
複数のスプライン32のそれぞれは曲げ変形可能な可撓性を持つ線状体として構成される。複数のスプライン32は、アウターシャフト22の中心線周りに周方向に間隔を空けて設けられる。複数のスプライン32のそれぞれは、アウターシャフト22に長手方向の一端部(以下、アウター側端部32aという)が接続されるとともにインナーシャフト24に長手方向の他端部(以下、インナー側端部32bという)が接続される。これを実現するうえで、本実施形態のスプライン32は、そのコアワイヤ42(後述する)において各シャフト22、24に接続されている。スプライン32は、各シャフト22、24に接着、溶着等により接続される。これを実現するうえで、スプライン32は、各シャフト22、24に直接に接続されてもよいし、各シャフト22、24に固定された他部材を介して接続されてもよい。本実施形態のスプライン32は、アウターシャフト22に設けられた第1挿通孔36に挿通されたうえで、そのアウター側端部32aがアウターシャフト22に接続される。本実施形態のスプライン32は、インナーシャフト24に設けられた第2挿通孔38に挿通されたうえで、そのインナー側端部32bが中間シャフト部材24Cに接続される。
【0021】
スプライン32は、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の外部において露出する露出部40を備える。ここでの「露出する」という条件は、インナーシャフト24が進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に満たしていればよい。例えば、インナーシャフト24が収まり位置P2(後述する)にある場合に、アウターシャフト22のルーメン20内に位置する特定部位がスプライン32にあるとする。このとき、インナーシャフト24が突出位置Pa1(後述する)にある場合に、そのスプライン32の特定部位がアウターシャフト22のルーメン20外に露出しているのであれば、その特定部位は露出部40の一部として取り扱う。スプライン32の露出部40となる部位は、インナーシャフト24の進退可能範囲内での位置により変動しないことになる。以下、スプライン32の露出部40におけるアウターシャフト22側の端部をアウター側露出端部32cといい、インナーシャフト24側の端部をインナー側露出端部32dという。
【0022】
スプライン32は、スプライン32の芯部を構成するコアワイヤ42と、コアワイヤ42を被覆するアウターチューブ44と、を備える。コアワイヤ42は、例えば、金属、樹脂等を素材とする。アウターチューブ44は、例えば、樹脂等を素材とする。アウターチューブ44には、スプライン32に対応する複数の電極34のそれぞれに導通される複数の導線(不図示)が挿通される。複数の導線は、スプライン32のアウター側端部32aを経由してアウターシャフト22内に引き出され、外部電気装置に電気的に接続される。外部電気装置は、複数の電極34と協働して、生体の処置対象部16への処置に供する電気の供給、その処置対象部16からの生体信号(心電位等)の処理等に用いられる。
【0023】
図6~
図8を参照する。
図6は、インナーシャフト24が最遠位位置Paにあり、
図8は、インナーシャフト24が後述する収まり始め位置Pbにあり、
図7は、インナーシャフト24が最遠位位置Paと収まり始め位置Pbとの間にある状態を示す。
【0024】
インナーシャフト24は、アウターシャフト22の遠位端開口30からインナーシャフト24が突き出る突出位置P1と、その遠位端開口30から奥側に収まる収まり位置P2との間を進退可能である。ここでの「収まり位置P2」とは、インナーシャフト24の遠位端24aとアウターシャフト22の遠位端開口30が重なる位置から奥側をいう。インナーシャフト24を後退させたときに、インナーシャフト24が遠位端開口30から奥側に収まり始める位置を収まり始め位置Pbという。収まり始め位置Pbは収まり位置P2の一部となる。
図8では、インナーシャフト24が収まり始め位置Pbにある例を示すが、本実施形態のインナーシャフト24は収まり始め位置Pbよりも奥側にまで後退可能である。
【0025】
スプライン32の露出部40は、インナーシャフト24の進退に追従して径方向に拡張又は収縮可能である。露出部40は、径方向内側に萎むように収縮し、径方向外側に膨らむように拡張する。本実施形態の複数のスプライン32は、インナーシャフト24が突出位置P1にあるとき、インナーシャフト24の進退に追従して拡張又は収縮可能なバスケット構造になる。バスケット構造は、複数のスプライン32により内側空間を囲むことで構成される。複数のスプライン32は、インナーシャフト24が進退可能範囲内のいずれかに位置する場合にバスケット構造になるともいえる。
【0026】
本実施形態の電極アセンブリ28は、インナーシャフト24の進退に追従して複数のスプライン32が拡張又は収縮することで外径を調整可能である。ここでの電極アセンブリ28の外径とは、インナーシャフト24の進退方向Daから見て、アウターシャフト22の中心線(不図示)を円中心として電極アセンブリ28に外接する円の半径をいう。
【0027】
バスケット構造の電極アセンブリ28の外径が最大となるときにインナーシャフト24のある位置を最大外径位置Pcという。また、最遠位位置Paから収まり始め位置Pbまでのインナーシャフト24の可動範囲Ra内で収まり始め位置Pb寄りの端部にある端部範囲Rbを想定する。ここでの端部範囲Rbとは、収まり始め位置Pbから、可動範囲Raの進退方向長さを4等分した長さ分の範囲をいう。
図6では、各位置Pa、Pb、Pcについて、インナーシャフト24の遠位端24aの位置を用いて、24a(at Pa)等と示す。例えば、24a(at Pc)とは、インナーシャフト24が最大外径位置Pcにあるときの遠位端24aの位置であることを示す。
図6中の端部範囲Rb内にインナーシャフト24の遠位端24aがあるとき、インナーシャフト24が端部範囲Rbにあることを意味する。
【0028】
本願発明者は、インナーシャフト24の進退に追従して複数のスプライン32が拡張又は収縮する構造にあるとき、スプライン32の柔軟性等の影響により変動し得るものの、最大外径位置Pcが端部範囲Rb内の何れかにあることを見出した。特に、多くの場合、インナーシャフト24の最大外径位置Pcは、インナーシャフト24の端部範囲Rb内における収まり始め位置Pbに非常に近い位置にあることを見出した。電極アセンブリ28は、前述の構造にあるとき、インナーシャフト24が最遠位位置Paから最大外径位置Pcに後退するに連れて、複数のスプライン32が拡張することでその外径が大きくなる。また、電極アセンブリ28は、インナーシャフト24が最大外径位置Pcから後退するに連れて、複数のスプライン32それぞれが収縮することで、その外径が小さくなる。なお、インナーシャフト24の最大外径位置Pcは収まり始め位置Pbになる場合もある。
【0029】
複数のスプライン32のそれぞれは、インナーシャフト24が進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、スプライン32の遠位端においてインナーシャフト24の進退方向Daに折り返す形状になる。本実施形態では、インナーシャフト24の進退可能範囲内の全ての位置にある場合に、この条件を満たす。ここでの「スプライン32の遠位端32h」とは、スプライン32の長手方向の端をいうのではなく、スプライン32の進退方向Daにおける最も遠位側に位置する箇所をいう。スプライン32には、このようにインナーシャフト24の進退方向Daに折り返すことで、スプライン32の遠位端32hにおいて遠位側折り返し端部32eが設けられる。この「遠位側折り返し端部32e」とは、スプライン32の両端側から遠位端32hに向けてスプライン32の長手方向に延びる二つの部分36A、36Bの境界部分をいう。この二つの部分36A、36Bのうち両者の境界部分よりもスプライン32の長手方向かつ近位側に向けて延びる部分は遠位側折り返し端部32eには含まれない。
【0030】
複数のスプライン32のそれぞれは、インナーシャフト24の進退に追従して、インナーシャフト24からスプライン32の遠位側煽り返し部32eまでの進退方向距離Laを変えるように柔軟に変形可能である。この進退方向距離Laは、インナーシャフト24が最遠位位置Paから最大外径位置Pcに後退するに連れて大きくなり、その最大外径位置Pcから後退するに連れて小さくなる。この進退方向距離Laとは、インナーシャフト24の遠位端からスプライン32の遠位端32hまでの距離をいう。インナーシャフト24の進退方向範囲において最も進退方向距離Laが小さくなる進退方向位置(ここでは最遠位位置Pa)にあるときの進退方向距離を基準距離という。このとき、ここでの「進退方向距離Laを変える」とは、基準距離に対して僅かな範囲(例えば、基準距離×1.1倍以下の範囲)で進退方向距離Laが変わることを意味するのではなく、その基準距離に対してある程度の範囲(例えば、基準距離×1.5倍以上の範囲)で進退方向距離Laが変わることを意味する。
【0031】
複数のスプライン32それぞれは、インナーシャフト24が最遠位位置Paから最大外径位置Pcに後退するに連れて、インナーシャフト24に対する遠位側折り返し端部32eの位置が径方向外側にずれるように変形する。このとき、スプライン32の遠位側折り返し端部32eは、アウターシャフト22を進退方向Daに延長した延長範囲Saから、その延長範囲Saよりも径方向外側にまでずれることができる。ここでの延長範囲Saとは、アウターシャフト22の外周面より径方向内側にある部分全体を進退方向Daに延長した範囲をいう。また、複数のスプライン32のそれぞれは、インナーシャフト24が最遠位位置Paから最大外径位置Pcに後退するに連れて、インナーシャフト24に対する最外周端32fの位置が径方向外側にずれるように変形する。この結果、電極アセンブリ28の外径が大きくなる。ここでの最外周端32fとは、スプライン32の露出部40において最も径方向外側に位置する箇所をいう。
【0032】
前述のスプライン32の柔軟な変形を実現するうえで、スプライン32は、前述の延長範囲Sa上において屈曲部のない形状である。ここでの屈曲部とは、後述する参考形態のような、インナーシャフト24の進退に追従してスプライン32が変形したときでも屈曲した状態(折り曲げた状態)を維持する部位をいう。このような露出部材の長手方向範囲の途中に屈曲部がある場合、その屈曲部においてスプライン32の柔軟な変形が大きく制限されてしまう。
【0033】
本実施形態のスプライン32は、スプライン32の遠位側折り返し端部32eからインナー側端部32bまでの長手方向範囲において屈曲部のない形状でもある。また、本実施形態のスプライン32は、スプライン32の遠位側折り返し端部32eから最外周端32fまでの長手方向範囲においても屈曲部のない形状でもある。このような形状になることで、スプライン32は、インナーシャフト24が突出位置P1にあるとき、インナーシャフト24の進退に追従して、遠位側折り返し端部32eを含む長手方向範囲で遠位側に凸となる滑らかな曲線形状を維持したまま変形可能となる。本実施形態では、スプライン32のインナー側端部32bから最外周端32fまでの長手方向範囲で遠位側に凸となる滑らかな曲線形状を維持したまま変形する。ここでの「滑らかな曲線形状」とは、その長手方向範囲において屈曲部のない形状であることを意味する。
【0034】
以上の電極カテーテル10の効果を説明する。
【0035】
(A)インナーシャフト24は、前述の突出位置P1の他にも、収まり位置P2まで進退可能である。よって、インナーシャフト24が突出位置P1のみを進退可能な場合と比べ、インナーシャフト24の進退可能範囲を収まり位置P2まで広げることができる。ひいては、インナーシャフト24が突出位置P1のみを進退可能な場合と比べ、複数のスプライン32の変形量を大きくでき、インナーシャフト24の進退により調整できる電極アセンブリ28の形状の自由度を高めることができる。
【0036】
(B)電極カテーテル10の外径は、インナーシャフト24の進退に追従して複数のスプライン32が拡張又は収縮することで調整可能である。この構造のもとでは、前述の通り、通常、インナーシャフト24の可動範囲Raの端部範囲Rb内のいずれかに電極アセンブリ28の外径が最大となる最大外径位置Pcが存在している。本実施形態のインナーシャフト24は、前述の通り、インナーシャフト24の進退可能範囲を突出位置P1から収まり位置P2(収まり始め位置Pb)まで広げることができる。よって、インナーシャフト24が突出位置P1のみを進退可能な場合と比べ、インナーシャフト24を最大外径位置Pcに確実に位置させることができるようになる。ひいては、電極アセンブリ28の外径が確実に最大外径となるように電極アセンブリ28の形状を調整できるようになる。
【0037】
(C)スプライン32は、インナーシャフト24の進退に追従してインナーシャフト24に対する遠位側折り返し端部32eの進退方向距離Laを変えるように柔軟に変形可能である。よって、次の参考形態のような、インナーシャフト24に対してスプライン32の遠位側折り返し端部32eの進退方向距離Laが一定の場合と比べて、インナーシャフト24の進退により調整される電極アセンブリ28の形状の自由度を高めることができる。
【0038】
図9A、
図9Bを参照する。参考形態の電極カテーテル100を説明する。この電極カテーテル100は、第1実施形態の電極カテーテル10と比べて、電極アセンブリ28のスプライン32において相違する。参考形態の複数のスプライン32は、前述の延長範囲Sa上において屈曲部102があり、その屈曲部102が遠位側折り返し端部32eとなる。
【0039】
この場合、インナーシャフト24を進退させても、スプライン32の遠位側折り返し端部32eのある屈曲部102によりスプライン32の柔軟な変形が阻害されてしまう。これに起因して、スプライン32の遠位側折り返し端部32eからインナー側露出端部32dまでの部分は柔軟に変形できず、その遠位側折り返し端部32eとアウター側露出端部32cとの間の部分が柔軟に変形する。言い換えると、参考形態の構造のもとでは、複数のスプライン32は、インナーシャフト24の進退に追従して、インナーシャフト24からスプライン32の遠位側折り返し端部32eまでの進退方向距離Laを変えるように柔軟に変形できなくなる。このため、インナーシャフト24を後退させるに連れて、スプライン32の遠位側折り返し端部32eからアウター側露出端部32cまでの進退方向距離Lbが一様に短くなる。これに伴い、複数のスプライン32全体が進退方向Daに扁平な形状となる。これに起因して、
図10に示すように、電極アセンブリ28の外径を大きくしたとき、生体の処置対象部16にある先細り箇所16aに対して、電極アセンブリ28の最外周端32f寄りの局所的な部位でしか電極アセンブリ28を接触させることができなくなってしまう。
【0040】
この点、本実施形態の複数のスプライン32のそれぞれは、インナーシャフト24の進退に追従して、インナーシャフト24からスプライン32の遠位側折り返し端部32eの進退方向距離Laを変えるように柔軟に変形可能である。このため、インナーシャフト24を後退させたとき、インナーシャフト24からスプライン32の遠位側折り返し端部32eまでの進退方向距離Laを大きくするようにスプライン32が柔軟に変形できるようになる。よって、インナーシャフト24を後退させるに連れて、スプライン32の遠位側折り返し端部32eからアウター側露出端部32cまでの進退方向距離Lbが一様に短くなる事態を回避でき、その進退方向距離Lbに関して、ある程度の大きさを維持することができる。これに伴い、複数のスプライン32全体が進退方向Daに扁平な形状になり難くなる。ひいては、
図1に示すように、電極アセンブリ28の外径を大きくしたとき、生体の処置対象部16にある先細り箇所16aに対して電極アセンブリ28の最外周端32f以外の部位でも電極アセンブリ28を接触させることができるようになる。このため、電極アセンブリ28の外径を大きくしたときでも、生体の処置対象部16に対する電極アセンブリ28の接触面積を確保し易くなる。
【0041】
電極カテーテル10の他の特徴を説明する。
図3、
図11を参照する。アウターシャフト22及びインナーシャフト24の少なくとも一方は、灌注液を灌注するためのイリゲーションポート50A、50Bを備える。本実施形態ではアウターシャフト22が第1イリゲーションポート50Aを備え、インナーシャフト24が第2イリゲーションポート50Bを備える。第1イリゲーションポート50Aは、アウターシャフト22の遠位側端面に開口しており、アウターシャフト22の遠位端開口30が兼ねている。第2イリゲーションポート50Bは、インナーシャフト24の遠位側端面に開口している。各イリゲーションポート50A、50Bからは遠位側に灌注液が灌注される。各イリゲーションポート50A、50Bには、ハンドル26、各シャフト22、24等に設けられた灌注液供給路(不図示)を通して、外部の給液装置から灌注液が供給される。
【0042】
灌注液は、例えば、生理食塩水である。灌注液は、例えば、生体の処置対象部16及び電極アセンブリ28の冷却や、電極アセンブリ28周りでの血液の流動を目的として灌注される。電極アセンブリ28を用いてアブレーションをする場合、電極アセンブリ28から出力される電気により処置対象部16及び電極アセンブリ28が加熱される。この加熱された処置対象部16等を灌注液により冷却することで、過度の温度上昇を回避できる。心臓、血管等の血液のある箇所に電極アセンブリ28を配置した場合、複雑形状の電極アセンブリ28周りでの血液の滞留により血栓の発生リスクが高くなる。このような滞留しようとする血液を灌注液により流動させることで、血栓の発生リスクを低減することができる。
【0043】
仮に、インナーシャフト24が突出位置P1のみを進退可能な場合を考える。この場合、例えば、インナーシャフト24が最遠位位置Pa(
図6参照)にあるとき、スプライン32のインナー側露出端部32dがアウターシャフト22の第1イリゲーションポート50Aから遠ざかってしまう。このため、第1イリゲーションポート50Aから灌注される灌注液が、スプライン32のインナー側露出端部32d周りに届き難くなるという問題点がある。また、この場合、スプライン32のアウター側露出端部32cがインナーシャフト24の第2イリゲーションポート50B(図示せず)から遠ざかってしまう。このため、第2イリゲーションポート50Bから灌注される灌注液が、スプライン32のアウター側露出端部32c周りに届き難くなるという問題点がある。
【0044】
(D)この点、本実施形態のインナーシャフト24は、前述の通り、突出位置P1の他にも収まり位置P2まで進退可能である。よって、
図11に示すように、インナーシャフト24を収まり位置P2(特に収まり始め位置Pb)に配置することで、スプライン32の各露出端部32c、32dをアウターシャフト22及びインナーシャフト24のイリゲーションポート50A、50Bに近づけることができる。ひいては、イリゲーションポート50A、50Bから灌注される灌注液を、スプライン32の各露出端部32c、32d周りに十分に届かせ易くすることができる。この(D)の効果との関係で、アウターシャフト22及びインナーシャフト24の一方のみがイリゲーションポート50A、50Bを備えていればよい。
【0045】
(E)スプライン32は、前述の通り、インナーシャフト24の進退に追従してインナーシャフト24に対する遠位側折り返し端部32eの相対位置を変えるように柔軟に変形可能である。これにより、スプライン32のインナー側露出端部32dから最外周端32fまでの部分を滑らかな曲線形状にすることができる。このようなスプライン32の曲線形状の部分に対して、アウターシャフト22及びインナーシャフト24のイリゲーションポート50A、50Bから遠位側に灌注液を灌注すると、その曲線形状の部分により灌注液をスムーズに方向Dbに誘導できる。特に、スプライン32に屈曲部がある場合と比べて、灌注液をスムーズに誘導できる。よって、イリゲーションポート50A、50Bから灌注した灌注液を広い範囲に届かせることができる。この(E)の効果との関係で、アウターシャフト22及びインナーシャフト24の一方のみがイリゲーションポート50A、50Bを備えていればよい。また、ここでは、インナーシャフト24が収まり位置P2にある場合を図示のうえ説明したが、インナーシャフト24が突出位置P1にあるときも、この(E)の効果を得ることができる。
【0046】
電極カテーテル10の他の特徴を説明する。
図6を参照する。複数のスプライン32それぞれの遠位側折り返し端部32eは、インナーシャフト24の遠位側端部24b又はインナーシャフト24の遠位側端部24bと一体の部材よりも遠位側にずれた位置に設けられる。ここでの「一体の部材」とは、例えば、インナーシャフト24に一体に取り付けられ、複数のスプライン32のそれぞれインナー側端部32bが接続される部材をいう。本実施形態のように、インナーシャフト24の遠位側端部24bと一体の部材がない場合、その遠位側端部24bより遠位側にずれた位置に複数のスプライン32それぞれの遠位側折り返し端部32eが設けられていればよい。また、インナーシャフト24の遠位側端部24bと一体の部材がある場合、その一体の部材よりも遠位側にずれた位置に複数のスプライン32それぞれの遠位側折り返し端部32eが設けられていればよい。
【0047】
(F)これにより、複数のスプライン32それぞれの遠位側折り返し端部32eよりも遠位側に電極カテーテル10の他の構成部材が突き出ない構造となる。よって、電極カテーテル10の構成部材が複数のスプライン32よりも遠位側に突き出る場合と比べ、その構成部材との干渉を招くことなく電極アセンブリ28を遠位側にある生体の処置対象部16に接触させることができる。ひいては、生体の処置対象部16に対する電極アセンブリ28の接触面積を広げ易くなる。
【0048】
(G)コアワイヤ42は、少なくともスプライン32のインナー側露出端部32dにおいてアウターチューブ44により被覆されずに露出している。コアワイヤ42の露出箇所は、アウターチューブ44によるコアワイヤ42の被覆箇所と比べて柔軟に変形し易くなる。このため、スプライン32のインナー側露出端部32dにおいてコアワイヤ42を露出させることで、そのインナー側露出端部32dでの柔軟性を高めることができる。よって、インナーシャフト24を最遠位位置Paに近づけたとき、スプライン32のインナー側露出端部32dを大きく曲げ変形させ易くなる。これに伴い、スプライン32の露出部40における遠位側折り返し端部32eよりもアウターシャフト22側の部分をインナーシャフト24側に近づけ易くなり、電極アセンブリ28の外径を小さくし易くなる。これにより、シース内に電極アセンブリ28を収納するうえで、電極アセンブリ28の外径を小さくすることで、シースの外径も小さくできるようになる。なお、このシースは、生体の処置対象部16の近傍まで電極アセンブリ28を挿入する場合に、予め電極アセンブリ28を収納するために用いられる。
【0049】
スプライン32には、アウターチューブ44のインナーシャフト24側の端面により段部32gが形成される。このスプライン32の段部32g周りでは血液が滞留し易くなる。よって、イリゲーションポート50A、50Bから灌注される灌注液の届き易いスプライン32の露出部40におけるインナーシャフト24側の末端に近傍できるだけ近い位置にスプライン32の段部32gが設けられると好ましい。このような観点から、コアワイヤ42の露出箇所は、好ましくは、スプライン32の遠位側折り返し端部32eよりもインナーシャフト24側のみに設けられるとよい。この条件は、インナーシャフト24が最遠位位置Paにあるときに満たされていればよい。これにより、イリゲーションポート50A、50Bから灌注される灌注液をコアワイヤ42の段部32gに届かせ易くなり、その段部32g周りでの血栓を抑制できる。
【0050】
(H)
図3を参照する。コアワイヤ42及びアウターチューブ44のうちコアワイヤ42のみが、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の少なくとも一方の内部に挿通されている。アウターチューブ44は、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の少なくとも一方の内部に挿通されていないということである。本実施形態では、コアワイヤ42のみが、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の双方の内部に挿通されている。この条件を満たすうえで、コアワイヤ42は、アウターシャフト22の第1挿通孔36から奥側に挿通され、インナーシャフト24の第2挿通孔38から奥側に挿通される。この他にも、これらのうちのコアワイヤ42のみが、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の一方のみに挿通されていてもよい。これにより、コアワイヤ42の他にアウターチューブ44も挿通する場合と比べて、アウターチューブ44を挿通しないシャフトの大外径化を回避できる。本実施形態ではインナーシャフト24及びアウターシャフト22の双方の大外径化を回避できる。
【0051】
(I)インナーシャフト24は、インナーシャフト24が最遠位位置Paにあるときに、アウターシャフト22から突出する突出領域24cを備える。スプライン32は、少なくとも突出領域24cのある進退方向範囲の全域においてインナーシャフト24内に挿通されている。この条件を満たすううえで、スプライン32の構成部材の一つがインナーシャフト24の突出領域24cに挿通されていればよい。本実施形態ではスプライン32のコアワイヤ42が突出領域24cに挿通されている。この他にも、スプライン32のコアワイヤ42及びアウターチューブ44の双方が突出領域24cに挿通されていてもよいし、アウターチューブ44が突出領域24cに挿通されていてもよい。このような突出領域24cを含む進退方向範囲にスプライン32を挿通することで、その突出領域24cをスプライン32により補強できるようになる。
【0052】
(第2実施形態)
図12、
図13を参照する。本実施形態の電極カテーテル10は、第1実施形態と比べて、複数のスプライン32の構成において主に相違する。電極アセンブリ28以外の構成に関しては、第1実施形態と同じ内容が適用される。ここでは図示しないが、インナーシャフト24は、第1実施形態と同様、突出位置P1と収まり位置P2との間を進退可能である。
【0053】
本実施形態の電極アセンブリ28は計4つのスプライン32を備える。以下、4つのスプライン32を区別する場合、スプライン32の冒頭に「第1、第2、第3、第4」と付し、符号の末尾に「-A、-B、-C、-D」を付す。
【0054】
複数のスプライン32-A~32-Dは、インナーシャフト24が進退可能範囲内のいずれかに位置する場合に、フラワー構造になることができる。本実施形態では、インナーシャフト24が進退可能範囲内の全ての位置にある場合に、この条件を満たす。複数のスプライン32-A~32-Dは、フラワー構造になるとき、複数のスプライン32-A~32-Dのそれぞれが径方向外側に放射状に突き出る花弁状部分60を備える形状になる。花弁状部分60を備えるスプライン32-A~32-Dには、径方向に折り返すことでスプライン32の最外周端32fにおいて外周側折り返し端部62が設けられる。ここでの「外周側折り返し端部62」とは、スプライン32の両端側から最外周端32fに向けてスプライン32の長手方向に延びる二つの部分64A、64Bの境界部分をいう。スプライン32-A~32-Dは、このような二つの部分64A、64Bとして、外周側折り返し端部62から第1端側に向けて延びる第1端側部分64Aと、外周側折り返し端部62から第2端側に向けて延びる第2端側部分64Bとを備える。花弁状部分60は、進退方向Daから見て(
図12の視点から見て)、径方向内側の箇所を切り欠いたフープ状をなす。花弁状部分60の根本部において第1端側部分64Aは第2端側部分64Bよりも周方向一側(ここでは時計回り)に位置する。
【0055】
一のスプライン32-A~32-Dは、少なくとも周方向片側に隣り合う他のスプライン32-A~32-Dに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる。一のスプライン32-A~32-Dは、進退方向Daから見て(
図12の視点から見て)、少なくとも周方向片側に隣り合う他のスプライン32-A~32-Dと交わるように設けられるともいえる。本実施形態のスプライン32-A~32-Dは、周方向両側に隣り合う個別の他のスプライン32-A~32-Dのそれぞれに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる。例えば、第1スプライン32-Aの第1端側部分64Aは、周方向一側に隣り合う他の第2スプライン32-Bの第2端側部分64Bに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる。また、第1スプライン32-Aの第2端側部分64Bは、周方向他側に隣り合う更に他の第4スプライン32-Dの第1端側部分64Aに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる。ここでの「周方向内側」とは、第1端側部分64Aでいえば、同じスプライン32-A~32-Dの第2端側部分64Bのある側(ここでは反時計回り)をいい、第2端側部分64Bでいえば、同じスプライン32-A~32-Dの第1端側部分64Aのある側(ここでは時計回り)をいう。ここで説明した条件は、電極アセンブリ28を構成する複数のスプライン32-A~32-Dの全てが満たしている。また、隣り合うスプライン32-A~32-Dの第1端側部分64Aと第2端側部分64Bは前述した露出部40において絡むことのできる位置に設けられる。
【0056】
進退方向Daから見て、スプライン32の第1端側部分64Aの露出部40における末端から、隣り合う別のスプライン32の第2端側部分64Bの露出部40における末端までの角度範囲θを想定する。この角度範囲θは、アウターシャフト22の中心線を中心とする範囲であって、言及している二つの露出部40の末端に周方向外側から接する二つの半径線によって定まる範囲をいう。この角度範囲θは、全てのスプライン32のいずれにおいても同等の大きさとなる。ここでの同等の大きさとは同一又は略同一であることを意味する。
【0057】
以上の電極カテーテル10による効果を説明する。第2スプライン32-Bと絡むことのできる位置にある第1スプライン32-Aに、第2スプライン32-Bから周方向に遠ざかるような外力F1が作用する場合を考える。この場合、第2スプライン32-Bに第1スプライン32-Aが周方向に絡むことで、第2スプライン32-Bから周方向に遠ざかる第1スプライン32-Aの動きが規制される。これにより、第2スプライン32-Bから第1スプライン32-Aが周方向に遠ざかり難くなり、隣り合う第1スプライン32-A、第2スプライン32-Bの周方向間隔を保持し易くなる。ここでは第1スプライン32-Aと周方向一側に隣り合う第2スプライン32-Bとの関係で成立する効果を説明したが、これ以外の一のスプライン32と周方向一側に隣り合う他のスプライン32との関係でも同様の効果が得られる。
【0058】
また、第2スプライン32-Dに周方向に近づくような外力F2が第1スプライン32-Aに作用する場合を考える。この場合、第4スプライン32-Dに第1スプライン32-Aが周方向に絡むことで、第4スプライン32-Dから周方向に遠ざかる第1スプライン32-Aの動きが規制される。これにより、第2スプライン32-Bに第1スプライン32-Aが周方向に近づき難くなり、第2スプライン32-Bと第1スプライン32-Aの周方向間隔を保持し易くなる。また、同じ事は第1スプライン32-Aと第4スプライン32-Dの周方向間隔に関してもあてはまる。ここでは、第1スプライン32-Aと周方向他側に隣り合う第4スプライン32-Dとの関係で成立する効果を説明したが、それ以外の一のスプライン32と周方向他側に隣り合う更に他のスプライン32との関係でも同様の効果が得られる。
【0059】
本実施形態の電極カテーテル10の他の特徴を説明する。周方向に隣り合う一のスプライン32-A~32-Dの第1端側部分64A及び他のスプライン32-A~32-Dの第2端側部分64Bを想定する。例えば、第1スプライン32-Aの第1端側部分64A及び第2スプライン32-Bの第2端側部分64Bである。このとき、これらのうちの一方(この例では第1スプライン32-Aの第1端側部分64A)はアウターシャフト22に接続される。これらのうちの他方(この例では第2スプライン32-Bの第2端側部分64B)はインナーシャフト24に接続される。アウターシャフト22には、言及しているスプライン32の端側部分64Aの一部となる前述したアウター側端部(不図示)が接続される。インナーシャフト24には、言及しているスプライン32の端側部分64Bの一部となる前述したインナー側端部(不図示)が接続される。
【0060】
図14を参照する。インナーシャフト24は、アウターシャフト22の遠位端開口30よりも奥側に向けて後退可能である。インナーシャフト24は、収まり位置P2において進退可能であるともいえる。このようにインナーシャフト24を後退させることで、インナーシャフト24に接続されているスプライン32の第2端側部分64Bをアウターシャフト22のルーメン20内に引き込むことができる。これにより、スプライン32のなす花弁状部分60の外径が小さくなり、電極アセンブリ28全体の外径を小さくすることができる。つまり、電極アセンブリ28の外径を調整することができる。
【0061】
また、アウターシャフト22に接続されているスプライン32の第1端側部分64Aにより、そのスプライン32の周方向内側に向かう方向Dc(ここでは反時計回り)に、インナーシャフト24に接続されているスプライン32の第2端側部分64Bをガイドできる。これにより、インナーシャフト24を引き込む前の元の位置(例えば、
図13の収まり始め位置Pb)に戻すことで、隣り合うスプライン32の外周側折り返し端部62寄りの箇所の間隔が過度に広がっていたとしても、その間隔を近づけた状態となるように修正し易くなる。
【0062】
なお、本実施形態でも、(A)で説明した事項と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態でも、第1実施形態の(B)~(I)で説明した構成を適用してもよい。
【0063】
以上のフラワー構造を採用する場合、インナーシャフト24はアウターシャフト22に対して回転可能に設けられてもよい。この場合、インナーシャフト24を回転させるときに操作される回転操作部をハンドル26に設けてもよい。これにより、インナーシャフト24を回転させることで、スプライン32の花弁状部分60の幅及び外径を調整可能となる。
【0064】
この他にも、インナーシャフト24は、アウターシャフト22に対して回転不能に設けられてもよい。これを実現するうえで、アウターシャフト22のルーメン20及びインナーシャフト24の外周部をアウターシャフト22に対するインナーシャフト24の回転を制限する形状(例えば、オーバル形状等)にしてもよい。
【0065】
なお、第1実施形態のような、複数のスプライン32がバスケット構造になる場合も、インナーシャフト24を回転可能に設けてもよい。この場合、インナーシャフト24を回転させることでバスケット構造にしつつフラワー構造にすることもできる。
【0066】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0067】
電極カテーテル10は、イリゲーションポート50A、50Bを備えずともよい。複数のスプライン32は、インナーシャフト24の延長範囲Sa上において屈曲部のある形状であってもよい。複数のスプライン32それぞれの遠位側折り返し端部32eは、インナーシャフト24の遠位側端部24b又はインナーシャフト24の遠位側端部と一体の部材よりも遠位側にずれた位置に設けられていなくともよい。スプライン32は、突出領域24cのある進退方向範囲の一部においてのみインナーシャフト24内に挿通されていてもよいし、インナーシャフト24内に挿通されていなくともよい。
【0068】
スプライン32は、コアワイヤ42を備えずにアウターチューブ44のみを備えていてもよい。コアワイヤ42及びアウターチューブ44の双方が、インナーシャフト24及びアウターシャフト22の双方の内部に挿通されていてもよい。コアワイヤ42は、スプライン32のインナー側露出端部32dにおいてもアウターチューブ44により被覆されていてもよい。これにより、スプライン32のインナー側露出端部32dをアウターチューブ44により補強できる。この場合も、スプライン32のコアワイヤ42のみをアウターチューブ44内に挿通させてもよい。
【0069】
第2実施形態において、スプライン32は、周方向片側に隣り合う他のスプライン32にのみ周方向内側から絡むことのできる位置に設けられていてもよい。複数のスプライン32のうちの少なくとも一部のスプライン32が、周方向片側に隣り合う別のスプライン32と絡むことのできる位置に設けられていればよく、全てのスプライン32がこの条件を満たす必要はない。第2実施形態において、インナーシャフト24は、ルーメン20の遠位端開口30より奥側に向けて後退不能であってもよい。
【0070】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造、数値には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【0071】
以上の実施形態、変形形態により具体化される技術的思想を一般化すると、前述した第1項目、第2項目の他に、次の第3項目に記載の技術的思想が含まれているともいえる。
【0072】
第3項目は、ルーメンが形成されたアウターシャフトと、前記ルーメン内に進退可能に挿通されるインナーシャフトと、前記アウターシャフトの遠位側端部に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリと、を備え、前記電極アセンブリは、前記アウターシャフトに一端部が接続されるとともに前記インナーシャフトに他端部が接続される複数のスプラインを備え、前記複数のスプラインのそれぞれは、前記インナーシャフトが進退可能範囲内のいずれかの位置にある場合に、前記進退方向から見て、径方向外側に放射状に突き出る花弁状部分を備える形状になり、一の前記スプラインは、少なくとも周方向片側に隣り合う他のスプラインに周方向内側から絡むことのできる位置に設けられる。
【0073】
第3項目の電極カテーテルの目的の1つは、隣り合うスプラインの周方向間隔を保持し易くする技術を提供することにある。
【0074】
第1項目の電極カテーテルを実現するうえで、第2項目のように、複数のスプラインのそれぞれが遠位側折り返し端部を備える形状でなくともよい。第2項目の電極カテーテルを実現するうえで、第1項目のように、インナーシャフトが突出位置と収まり位置の間を進退可能でなくともよい。例えば、インナーシャフトは、突出位置においてのみ進退可能であってもよい。第3項目の電極カテーテルを実現するうえで、第1項目のように、インナーシャフトが突出位置と収まり位置との間を進退可能でなくともよい。例えば、これを実現するうえで、インナーシャフトが収まり位置でのみ進退可能であってもよい。第3項目の電極カテーテルを実現するうえで、第2項目のように、複数のスプラインのそれぞれが遠位側折り返し端部を備える形状でなくともよい。例えば、複数のスプラインのそれぞれが前述した花弁状部分を備える形状のみになってもよい。
【0075】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。第1項目~第3項目の電極スプラインを実現するうえでも同様である。
【符号の説明】
【0076】
10…電極カテーテル、20…ルーメン、22…アウターシャフト、22…シャフト、24…インナーシャフト、24a…遠位端、24b…遠位側端部、24c…突出領域、28…電極アセンブリ、30…遠位端開口、32…スプライン、32e…遠位側折り返し端部、34…電極、40…露出部、42…コアワイヤ、44…アウターチューブ、50A、50B…イリゲーションポート、60…花弁状部分、64A…第1端側部分、64B…第2端側部分。