(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084448
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/40 20180101AFI20240618BHJP
【FI】
G16H20/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198730
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】舘崎 祐馬
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA00
(57)【要約】
【課題】ミニガイドワイヤの通過の可否を好適に判定することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する処理をコンピュータが実行する。好適には、前記モデルは、ミニガイドワイヤの通過の可否と、通過可否の確信度とを出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、
前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する
処理をコンピュータが実行するプログラム。
【請求項2】
前記モデルは、ミニガイドワイヤの通過の可否と、通過可否の確信度とを出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置を示す穿刺位置情報を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する血管に関する血管情報を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記血管を撮像したエコー画像を取得し、
前記エコー画像に基づいて前記血管を3D化したデータから、前記血管情報を特定し、
特定した前記血管情報を前記モデルに入力する
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記情報は、患者に関する患者情報を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記情報は、挿入するミニガイドワイヤに関するミニガイドワイヤ情報を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
ミニガイドワイヤの通過の可否を出力後、実際の通過可否の結果を取得し、
前記モデルに入力した前記情報と、前記通過可否の結果とに基づき、前記モデルを更新する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項9】
前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置を示す穿刺位置情報、又は挿入するミニガイドワイヤに関するミニガイドワイヤ情報を含み、
複数パターンの前記穿刺位置情報又は前記ミニガイドワイヤ情報を前記モデルに入力することで、各パターンに対応するミニガイドワイヤの通過の可否と、各パターンにおける通過可否の確信度とを出力し、
前記確信度が最も高いパターンの前記穿刺位置情報又は前記ミニガイドワイヤ情報を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、
前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する
処理をコンピュータに実行させる情報処理方法。
【請求項11】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部が、
遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、
前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する
情報処理装置。
【請求項12】
遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報に対し、ミニガイドワイヤの通過の可否が対応付けられた訓練データを取得し、
前記訓練データに基づき、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルを生成する
処理をコンピュータが実行するモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCI(Percutaneous Coronary Intervention;経皮的冠動脈形成術)をはじめとするカテーテル治療において、患者の身体的負担を軽減するため、手首の橈骨動脈からカテーテルを挿入し、血管内の病変部位を治療する手技が主流となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-085338号公報
【特許文献2】特開2019-130191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年、新たな手技として、更なる患者の身体的負担を軽減することを目的として、手の遠位橈骨動脈からカテーテルを挿入し、血管内の病変部位を治療する手技(DRA;Distal Radial Approach)が増加している。なお、手首の橈骨動脈からカテーテルを挿入して血管内の病変部位を治療する手技は、DRAに対し、CRA(Conventional Radial Approach)と呼ばれている。
【0005】
DRAは、CRAと比較して血管閉塞の発生率の低下や止血時間の短縮が期待される。一方で、DRAは、手の遠位橈骨動脈から手首の橈骨動脈までの血管走行において、血管径が細く、血管の湾曲箇所が多いため、シースイントロデューサーの留置に必要なミニガイドワイヤが血管を通過しないことがある。
【0006】
DRAでミニガイドワイヤが血管を通過しなかった場合、医療従事者は、CRAに切り替えることになる。このような場合、穿刺回数や手技時間が増加し、患者の負担が増加する。一方で、このような事態を避けるため、本来DRAを実施できた症例でCRAを選択した場合、潜在的に患者の侵襲性を高めてしまうことになる。
【0007】
そこで、医療従事者が効果的にDRAによる手技を選択できるようにするため、事前にミニガイドワイヤの通過の可否を判断することができるシステムが求められている。
【0008】
一つの側面では、ミニガイドワイヤの通過の可否を好適に判定することができるプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの側面では、(1)プログラムは、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する処理をコンピュータが実行する。
ここで、一つの側面では、
(2)上記(1)のプログラムは、前記モデルは、ミニガイドワイヤの通過の可否と、通過可否の確信度とを出力することが好ましい。
(3)上記(1)又は(2)のプログラムは、前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置を示す穿刺位置情報を含むことが好ましい。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のプログラムは、前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する血管に関する血管情報を含むことが好ましい。
(5)上記(4)のプログラムは、前記血管を撮像したエコー画像を取得し、前記エコー画像に基づいて前記血管を3D化したデータから、前記血管情報を特定し、特定した前記血管情報を前記モデルに入力することが好ましい。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のプログラムは、前記情報は、患者に関する患者情報を含むことが好ましい。
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載のプログラムは、前記情報は、挿入するミニガイドワイヤに関するミニガイドワイヤ情報を含むことが好ましい。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載のプログラムは、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力後、実際の通過可否の結果を取得し、前記モデルに入力した前記情報と、前記通過可否の結果とに基づき、前記モデルを更新することが好ましい。
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載のプログラムは、前記情報は、ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置を示す穿刺位置情報、又は挿入するミニガイドワイヤに関するミニガイドワイヤ情報を含み、複数パターンの前記穿刺位置情報又は前記ミニガイドワイヤ情報を前記モデルに入力することで、各パターンに対応するミニガイドワイヤの通過の可否と、各パターンにおける通過可否の確信度とを出力し、前記確信度が最も高いパターンの前記穿刺位置情報又は前記ミニガイドワイヤ情報を出力することが好ましい。
【0010】
一つの側面では、(10)情報処理方法は、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0011】
一つの側面では、(11)情報処理装置は、制御部を備える情報処理装置であって、前記制御部が、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を取得し、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルに、取得した前記情報を入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力する。
【0012】
一つの側面では、(12)モデル生成方法は、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報に対し、ミニガイドワイヤの通過の可否が対応付けられた訓練データを取得し、前記訓練データに基づき、前記情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルを生成する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0013】
一つの側面では、ミニガイドワイヤの通過の可否を好適に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ミニガイドワイヤ通過可否判定システムの構成例を示す説明図である。
【
図5】学習モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】ミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2に係るミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係るミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、ミニガイドワイヤ通過可否判定システムの構成例を示す説明図である。本実施の形態では、機械学習により構築される学習モデル50(
図4参照)を用いて、DRAにおけるミニガイドワイヤの通過可否を判定するミニガイドワイヤ通過可否判定システムについて説明する。ミニガイドワイヤ通過可否判定システムは、サーバ1、端末2、撮像装置3を含む。サーバ1及び端末2は、ネットワークNを介して通信接続されている。
【0016】
サーバ1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なサーバコンピュータである。なお、サーバ1に相当するコンピュータはパーソナルコンピュータ等であってもよい。サーバ1は、所定の訓練データを学習する機械学習を行うことで、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を入力した場合に、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みの学習モデル50を生成する。
【0017】
端末2は、本システムのユーザ(医療従事者)が使用する端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末、専用のコンソール端末等である。端末2にはサーバ1が生成した学習モデル50のデータがインストールされており、端末2は、当該学習モデル50を用いてミニガイドワイヤの通過の可否を判定する。
【0018】
なお、本実施の形態ではサーバ1が学習モデル50を生成(学習)し、端末2が学習モデル50に基づく判定を行うものとするが、両者の処理は単一のコンピュータで実行されてもよい。
【0019】
撮像装置3はいわゆる超音波プローブであり、患者の血管のエコー画像を撮像する。後述するように、端末2は、エコー画像に基づいて患者の血管を3D化し、3D化したデータから血管径、血管の曲率半径などの情報を抽出し、学習モデル50に入力する。
【0020】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、及び補助記憶部14を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムP1を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。補助記憶部14は、大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP1(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。
【0021】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0022】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムP1を読み取って実行するようにしても良い。
【0023】
図3は、端末2の構成例を示すブロック図である。制御部21、主記憶部22、通信部23、表示部24、入力部25、及び補助記憶部26を備える。
制御部21は、一又は複数のCPU等のプロセッサを有し、補助記憶部26に記憶されたプログラムP2を読み出して実行することにより、種々の情報処理を行う。主記憶部22は、RAM等の一時記憶領域であり、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部23は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示画面であり、画像を表示する。入力部25は、キーボード、マウス等の操作インターフェイスであり、ユーザから操作入力を受け付ける。
【0024】
補助記憶部26は、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部21が処理を実行するために必要なプログラムP2(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部26は、学習モデル50を記憶している。学習モデル50は、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を入力した場合に、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルである。
【0025】
なお、端末2は、CD-ROM等の可搬型記憶媒体2aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体2aからプログラムP2を読み取って実行するようにしても良い。
【0026】
図4は、実施の形態1の概要を示す説明図である。
図4では、ミニガイドワイヤ(
図4では「ミニGW」とも図示)の通過可否の判断に用いる種々の情報(「穿刺位置情報」、「血管情報」等)を学習モデル50に入力した場合に、ミニガイドワイヤの通過の可否に係る判定結果が出力される様子を図示している。
図4に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0027】
学習モデル50は、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を入力した場合にミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みのモデルであり、例えばニューラルネットワークである。なお、学習モデル50はニューラルネットワークに限定されず、例えば決定木、SVM(Support Vector Machine)など、他の機械学習モデルであってもよい。
【0028】
本実施の形態において学習モデル50の入力値(説明変数)とする「遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報」には、
図4に示すように、穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報が含まれる。
【0029】
穿刺位置情報は、「スナッフボックス(Snuff box)」、「スナッフボックス(Snuff box)より遠位」(
図4上側の訓練データの表参照)などのように、ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置を示すデータである。ミニガイドワイヤを挿入する穿刺位置は、医療従事者が血管内にミニガイドワイヤを挿入するために、患者の体表面に穿刺針等で形成した穿刺部位の位置である。
【0030】
血管情報は、ミニガイドワイヤを挿入する血管に関するデータである。具体的には、血管情報は、ミニガイドワイヤが挿入される穿刺部位(遠位橈骨動脈)から橈骨動脈付近までの血管に関するデータである。
【0031】
血管情報は、対象の血管の最小血管径(最も血管内径が狭い箇所の血管内径)、対象の血管の最小曲率半径(対象の血管に位置する湾曲箇所のうち、最も曲率半径が小さい湾曲箇所の曲率半径)、などを含む。具体的には、ミニガイドワイヤが挿入される穿刺部位(遠位橈骨動脈)から橈骨動脈付近までの血管において最も血管内径が狭い箇所の血管内径、ミニガイドワイヤが挿入される穿刺部位(遠位橈骨動脈)から橈骨動脈付近までの血管に位置する湾曲箇所のうち、最も曲率半径が小さい湾曲箇所の曲率半径、などを含む。
【0032】
血管情報はユーザがエコー画像を見て手動で入力してもよいが、本実施の形態では、血管のエコー画像から自動的に血管径等の情報を特定(抽出)する。具体的には、端末2は、一又は複数のエコー画像に基づいて患者の血管を3D化し、3D化されたデータから血管径、曲率半径などを特定する。これにより、半自動的に血管の各種データを取得し、エコー画像の範囲に位置する血管の最小血管径、最小曲率半径などを取得することができる。
【0033】
患者情報は、カテーテル治療に関連する患者のデータである。具体的には、患者情報は、患者の年齢、血管状態に影響を与える高血圧(Hypertention:HT)、高脂血症(Hyperlipemia:HL)、糖尿病(Diabetes Mellitus:DM)などのリスクファクターの有無を含む。
【0034】
ミニガイドワイヤ情報は、患者に挿入予定のミニガイドワイヤに関するデータである。具体的には、ミニガイドワイヤ情報は、ミニガイドワイヤの径(外径)、先端の形状、材質、長さなどを含む。
【0035】
学習モデル50は、上述の穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報の入力を受け付けた場合、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力する。具体的には、学習モデル50は、上述の穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報の入力を受け付けた場合、穿刺部位から所定範囲(例えば、ミニガイドワイヤの長さの範囲)の血管における、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力する。学習モデル50は、通過の可否を表す2値(「〇」又は「×」)を出力すると共に、通過可否の判定結果の確信度(0~1の確率値)を出力する。
【0036】
図4に示すように、サーバ1は、訓練用の穿刺位置情報等に対し、ミニガイドワイヤの通過の可否の正解値(2値)が対応付けられた訓練データを用いて、学習モデル50を生成する。すなわち、サーバ1は、訓練用の穿刺位置情報等を学習モデル50に入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力し、出力値が正解値と近似するように、ニューロン間の重み等のパラメータを更新する。サーバ1は、訓練用の穿刺位置情報等を順次学習してパラメータを最適化し、最終的に学習モデル50を生成する。
【0037】
実際に学習モデル50を用いてミニガイドワイヤの通過の可否を判定する場合、端末2は、穿刺位置情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報の入力をユーザから受け付ける。また、端末2は、患者の血管を撮像したエコー画像を撮像装置3から取得し、当該エコー画像に基づいて血管を3D化したデータから血管情報を特定する。そして端末2は、これらの情報を学習モデル50に入力することで、ミニガイドワイヤの通過の可否、及び通過可否の確信度を出力する。端末2は、出力されたミニガイドワイヤの通過の可否及び確信度を表示部24に表示し、ユーザに提示する。
【0038】
以上より、本実施の形態によれば、DRAにおいてミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる種々の情報を学習モデル50に入力することで、ミニガイドワイヤの通過の可否を判定(出力)する。これにより、事前にミニガイドワイヤの通過の可否を判断することができ、ユーザ(医療従事者)を好適に支援することができる。
【0039】
図5は、学習モデル50の生成処理の手順を示すフローチャートである。
図5に基づき、機械学習により学習モデル50を生成する際の処理内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、学習モデル50を生成するための訓練データを取得する(ステップS11)。訓練データは、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報に対し、ミニガイドワイヤの通過の可否の正解値を対応付けたデータである。「遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報」には、上述の如く、穿刺位置情報、血管情報、患者情報、ミニガイドワイヤ情報が含まれる。
【0040】
制御部11は訓練データに基づき、遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介して血管に挿入されるミニガイドワイヤの通過可否の判断に用いる情報を入力した場合に、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力するよう学習済みの学習モデル50を生成する(ステップS12)。例えば制御部11は、学習モデル50としてニューラルネットワークを生成する。制御部11は、訓練用の穿刺位置情報等を学習モデル50に入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力し、出力値が正解値と近似するように、ニューロン間の重み等のパラメータを最適化する。これにより、制御部11は学習モデル50を生成する。制御部11は一連の処理を終了する。
【0041】
図6は、ミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。
図6に基づき、学習モデル50を用いてミニガイドワイヤの通過の可否を判定する際の処理内容について説明する。
端末2の制御部21は、穿刺位置情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報を取得する(ステップS31)。また、制御部21は、患者の血管を撮像したエコー画像を撮像装置3から取得する(ステップS32)。制御部21は、取得したエコー画像に基づいて患者の血管を3D化し、3D化されたデータから血管情報を特定する(ステップS33)。
【0042】
制御部21は、穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報を学習モデル50に入力することで、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力する(ステップS34)。具体的には、制御部21は、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力すると共に、通過可否の確信度(0~1の確率値)を出力する。制御部21は、出力されたミニガイドワイヤの通過の可否を表示し(ステップS35)、一連の処理を終了する。
【0043】
以上より、本実施の形態1によれば、ミニガイドワイヤの通過の可否を好適に判定することができる。
【0044】
なお、患者の血管情報を事前に取得している場合、端末2の制御部21は、ステップS31において、穿刺位置情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報とともに、血管情報を取得してもよい。このような場合、ステップS32、ステップS33を省略することができる。
【0045】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実際のミニガイドワイヤの通過可否の結果に基づき、学習モデル50を更新(再学習)する形態について述べる。なお、実施の形態1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施の形態において端末2は、実施の形態1と同様に、穿刺位置情報等を学習モデル50に入力することでミニガイドワイヤの通過の可否を出力し、ユーザに提示する。ユーザは端末2からの提示を参考にしつつ、DRAによる手技の実施の是非を判断することができる。ユーザがDRAによる手技を選択した場合、患者の遠位橈骨動脈に位置する穿刺部位を介してミニガイドワイヤを挿入し、手技を行う。
【0047】
ここで端末2は、例えば手技終了後に、ミニガイドワイヤの通過可否の結果についてユーザから「成功」又は「失敗」の2値で入力を受け付ける。端末2は当該入力に基づき、学習モデル50の再学習を行う。
【0048】
すなわち、端末2は、判定時に学習モデル50に入力した穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報と、手技終了後に入力された通過可否の結果とのペアを再学習用の訓練データとして用い、学習モデル50を更新する。端末2は、学習モデル50から出力されるミニガイドワイヤの通過の可否が、実際の通過可否の結果と近似するように学習モデル50のパラメータを更新する。
【0049】
図7は、実施の形態2に係るミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。ミニガイドワイヤの通過の可否を表示した後(ステップS35)、端末2は以下の処理を実行する。
端末2の制御部21は、実際のミニガイドワイヤの通過可否の結果について、ユーザから入力を受け付ける(ステップS201)。制御部21は、ステップS34で学習モデル50に入力した穿刺位置情報等と、ステップS201で入力された通過可否の結果とを再学習用の訓練データとして用い、学習モデル50を更新する(ステップS202)。制御部21は一連の処理を終了する。
【0050】
以上より、本実施の形態2によれば、本システムの運用を通じて学習モデル50の判定精度を高めることができる。
【0051】
(実施の形態3)
実施の形態1では、ユーザによって決められた特定の穿刺位置及びミニガイドワイヤについて通過の可否を判定する形態について述べた。一方で、種々のパターンの穿刺位置及び/又はミニガイドワイヤについて判定を行い、ミニガイドワイヤが通過するとの確信度が高い穿刺位置及び/又はミニガイドワイヤのパターンをユーザに提示するようにしてもよい。本実施の形態では、複数パターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を学習モデル50に入力し、各パターンにおけるミニガイドワイヤの通過の可否を判定する形態について説明する。
【0052】
本実施の形態において端末2は、実施の形態1と同様に、穿刺位置情報、血管情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報を学習モデル50に入力することで、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力する。ここで、端末2は、複数パターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を学習モデル50に入力することで、各パターンに対応するミニガイドワイヤの通過の可否と、通過可否の確信度とを出力する。
【0053】
すなわち、端末2は、様々なパターンの穿刺位置、及び/又はミニガイドワイヤについて学習モデル50に判定を行わせ、患者の血管に対して、各パターンにおけるミニガイドワイヤの通過可否及び確信度を判定する。これにより、患者の血管に対して、どの穿刺位置にどんなミニガイドワイヤを挿入すると、患者の血管走行に渡ってミニガイドワイヤの通過の可能性が高いか、判定することができる。
【0054】
そして端末2は、ミニガイドワイヤが通過するとの確信度が最も高いパターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を表示部24に表示する。これにより、端末2は、最も通過の可能性が高い穿刺部位及び/又はミニガイドワイヤの組み合わせをユーザに提示する。
【0055】
図8は、実施の形態3に係るミニガイドワイヤ通過可否の判定処理の手順を示すフローチャートである。
端末2の制御部21は、穿刺位置情報、患者情報、及びミニガイドワイヤ情報を取得する(ステップS301)。ここで、制御部21は、複数パターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を取得する。制御部21は処理をステップS32に移行する。
【0056】
エコー画像を3D化したデータから血管情報を特定した後(ステップS33)、制御部21は、穿刺位置情報等を学習モデル50に入力することで、ミニガイドワイヤの通過の可否を出力する(ステップS302)。ここで、制御部21は、複数パターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を学習モデル50に入力することで、各パターンに対応するミニガイドワイヤの通過の可否と、各パターンにおける通過可否の確信度とを出力する。制御部21は、ミニガイドワイヤが通過するとの確信度が最も高いパターンの穿刺位置情報及び/又はミニガイドワイヤ情報を表示し(ステップS303)、一連の処理を終了する。
【0057】
以上より、本実施の形態3によれば、学習モデル50を利用して、ミニガイドワイヤが通過する確率が高い穿刺位置及び/又はミニガイドワイヤをユーザに提示することができる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0059】
各実施の形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 サーバ
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
P1 プログラム
2 端末
21 制御部
22 主記憶部
23 通信部
24 表示部
25 入力部
26 補助記憶部
P2 プログラム
50 学習モデル