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  • 特開-ケーブル及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084463
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ケーブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/04 20060101AFI20240618BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B13/00 501M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198745
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】小林 正則
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311AA04
5G311AB06
5G311AC05
5G311AD02
(57)【要約】
【課題】小さい曲げ半径で曲げやすく、曲げた状態で維持することが可能な多心のケーブル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ケーブル1は、複数本の電線2を複数層の層構造で撚り合わせて構成されたケーブルコア3と、ケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻き付けられたテープ部材4と、テープ部材4の周囲を覆うシース6と、を備え、ケーブルコア3の最外層を構成する電線2は、少なくともケーブル周方向に凸となるように局所的に凸状に曲げられた曲げ部2aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の絶縁電線を複数層の層構造で撚り合わせて構成されたケーブルコアと、
前記ケーブルコアの周囲に螺旋状に巻き付けられたテープ部材と、
前記テープ部材の周囲を覆うシースと、を備え、
前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線は、少なくともケーブル周方向に凸となるように局所的に凸状に曲げられた曲げ部を有する、
ケーブル。
【請求項2】
前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線のそれぞれは、ケーブル長手方向に対して、当該ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線の撚りピッチの範囲に、少なくとも1つの前記曲げ部を有する、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記曲げ部は、当該曲げ部が無い部分の前記絶縁電線の表面から前記曲げ部の頂部までの高さが、前記絶縁電線の外径の0.2倍以上0.5倍以下である、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項4】
ケーブル長手方向に垂直な任意の断面において、前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線のうちの30%以上50%以下の本数の前記絶縁電線が前記曲げ部を有する、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
前記ケーブルコアの最外層の層心径PDと、前記絶縁電線の撚りピッチPとの比であるP/PDが、17以上22以下である、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項6】
前記ケーブルコアの撚り方向と、前記テープ部材の巻き付け方向とが逆方向である、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項7】
前記ケーブルコアが、3層以上の層構造からなる、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項8】
複数本の絶縁電線を複数層の層構造で撚り合わせてケーブルコアを形成する工程と、
前記ケーブルコアの周囲にテープ部材を螺旋状に巻き付ける工程と、
前記テープ部材の周囲を覆うシースを設ける工程と、
前記シースの形成後のケーブル基体を、ケーブルコアの撚りピッチ以下の外径を有するプーリを介して強制的に曲げることで、前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線に、少なくともケーブル周方向に凸となるように局所的に凸状に曲げられた曲げ部を形成する工程と、を備えた、
ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等における生産性向上対策として、人協型ロボットや小型多関節ロボット等の産業用ロボットの普及が拡大している。産業用ロボットに使用されるケーブルとして、産業用ロボットの可動部に配線される可動部用ケーブルと、産業用ロボットと制御機器等とを接続する固定部用ケーブルと、がある。このうち固定部用ケーブルとして用いられるケーブルとして、例えばケーブル中心の周囲に複数本(例えば40本以上)の絶縁電線が複数層(例えば2層以上)の層構造となるように撚り合わせされたケーブルコアを有する多心のケーブルがある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-048495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業用ロボットと制御機器間における固定部用ケーブルの長さは、例えば20m以上と非常に長い。そのため、配線前の固定部用ケーブルを束取りして収納ケース等にコンパクトに収納できることが望まれる。さらには、固定部用ケーブルを配線する際に、その余長部分を束取りした状態のまま配線する場合があり、配線箇所の省スペース化の観点から、束取りされた固定部用ケーブルの内径を小さくすること(例えば、内径を200mm程度とすること)が望まれる。
【0006】
しかしながら、固定部用ケーブルは、複数層の層構造となるように複数本の絶縁電線が撚り合わせされたケーブルコアを有する多心のケーブルの場合、小さい曲げ半径で曲げることが困難となる場合があった。また、多心のケーブルからなる固定部用ケーブルを強引に小さい曲げ半径で曲げて束ねたとしても、反発して自然と束の内径が大きくなってしまい、束の内径を小さく保つためには保持部材などが必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、小さい曲げ半径で曲げやすく、曲げた状態で維持することが可能な多心のケーブル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数本の絶縁電線を複数層の層構造で撚り合わせて構成されたケーブルコアと、前記ケーブルコアの周囲に螺旋状に巻き付けられたテープ部材と、前記テープ部材の周囲を覆うシースと、を備え、前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線は、局所的に凸状に曲げられた曲げ部を有する、ケーブルを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数本の絶縁電線を複数層の層構造で撚り合わせてケーブルコアを形成する工程と、前記ケーブルコアの周囲にテープ部材を螺旋状に巻き付ける工程と、前記テープ部材の周囲を覆うシースを設ける工程と、前記シースの形成後のケーブル基体を、ケーブルコアの撚りピッチ以下の外径を有するプーリを介して強制的に曲げることで、前記ケーブルコアの最外層を構成する前記絶縁電線に、局所的に凸状に曲げられた曲げ部を形成する工程と、を備えた、ケーブルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小さい曲げ半径で曲げやすく、曲げた状態で維持することが可能な多心のケーブル及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルを示す図であり、(a)はケーブル長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はテープ部材、シールド層、及びシースを除いた際のケーブルコアの外観を示す図である。
図2】曲げ部の形成を説明する図である。
図3】(a)は束取りしたケーブルの側面図、(b)はその上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るケーブル1を示す図であり、(a)はケーブル長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はテープ部材4、シールド層5、及びシース6を除いた際のケーブルコア3の外観を示す図である。ケーブル1は、例えば、工場等において産業用ロボットと制御機器等とを接続する固定部用ケーブルとして用いられるものである。
【0014】
図1(a),(b)に示すように、ケーブル1は、複数本の絶縁電線(以下、単に電線という)2を複数層(2層以上)の層構造で撚り合わせたケーブルコア3と、ケーブルコア3の周囲に巻き付けられたテープ部材4と、テープ部材4の周囲を覆うシールド層5と、シールド層5の周囲を覆うシース6と、を備えている。
【0015】
(ケーブルコア3)
電線2は、導体21と、導体21の周囲を覆う絶縁体22と、を有している。導体21は、外径が0.08mm以上0.30mm以下である複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる。本実施の形態では、外径が0.18mmのすずめっき軟銅線で構成される金属素線を30本集合撚りして導体21を構成した。導体21の撚りピッチPは、例えば5mm以上40mm以下である。また、導体21の外径は0.5mm以上2.0mm以下である。なお、撚りピッチPとは、任意の電線2においてケーブル周方向における位置が同じになる箇所のケーブル長手方向に沿った間隔である。
【0016】
絶縁体22としては、ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるものを用いた。絶縁体22の厚さは、例えば0.2mm以上0.5mm以下である。電線2に後述する曲げ部2aを形成してケーブル1を小さい曲げ半径で曲げやすくするために、絶縁体22の伸びは150%以上であるとよい。
【0017】
ケーブルコア3は、複数層の層構造となるように、複数本の電線2を撚り合わせて構成されている。本実施の形態では、ケーブル中心に配置された中心介在7の周囲に、複数本の電線2を螺旋状に撚り合わせてケーブルコア3を構成した。より詳細には、例えば図1(a)に示すように、中心介在7の周囲に8本の電線2を撚り合わせて第1層とし、その第1層の周囲にさらに14本の電線2を撚り合わせて第2層とし、その第2層の周囲にさらに20本の電線2を撚り合わせて第3層として、電線2を3層に撚り合わせて構成されたケーブルコア3を用いることができる。このとき、ケーブルコア3を構成する電線2の本数は、合計で42本である。
【0018】
各層の電線2は、同じ方向に撚り合わされている。ケーブルコア3の外径は、8mm以上13mm以下である。なお、ここではケーブルコア3を構成する電線2の本数を42本としたが、ケーブルコア3を構成する電線2の本数はこれに限定さない。ただし、後述する本実施の形態による効果(ケーブル1を小さい曲げ半径で曲げやすくなる、曲げた状態で維持できるといった効果)は、電線2の本数が多くケーブルコア3が太いほど顕著であり、特に、ケーブルコア3が3層以上の層構造からなる場合、小さい曲げ半径でケーブル1を曲げたときに、ケーブル1が元の形状(曲げる前の形状)に戻ろうとする力が大きくなる。そのため、ケーブルコア3が3層以上の層構造からなる場合に、より顕著な効果が得られる。ケーブルコア3が3層以上の層構造からなる場合、第3層を構成する電線2の本数は、18本以上が好ましい。第3層を構成する電線2の本数が18本以上であることで、ケーブルコア3の最外層を構成する電線2に曲げ部2aが形成されやすくなる。
【0019】
また、ケーブルコア3の最外層(ここでは第3層)の層心径PDと、電線2の撚りピッチPとの比であるP/PDは、17以上22以下であるとよい。P/PDが17以上であることで、後述する曲げ部2aを形成しやすくなる(曲げ部2aの詳細については後述する)。また、P/PDが22以下であることで、ケーブル1を曲げた際にケーブル1が座屈してしまうことを抑制できる。
【0020】
なお、本実施の形態では、ケーブルコア3を構成する複数本の電線2の全てが同じものである場合を示しているが、これに限らず、ケーブルコア3には、外径や構造が異なる電線2を含んでいてもよく、例えば同軸線や対撚線等が含まれていてもよい。
【0021】
中心介在7は、例えば、複数本の繊維状体(糸状体)を束ねて構成されている。本実施の形態では、10番のスフ糸を10本束ねて中心介在7とした。なお、中心介在7を構成する糸状体の材質や本数は、これに限定されるものではない。中心介在7は、ケーブル中心のみに配置されており、各層の電線2同士の間や、電線2とテープ部材4との間には配置されていない。また、中心介在7は、ケーブルコア3の第1層を構成する電線2同士の間(第1層においてケーブル周方向に隣り合う電線2の間)に入り込むように配置されている。なお、中心介在7は、繊維状体(糸状体)でなくてもよく、例えば、樹脂チューブ等であってもよい。
【0022】
(テープ部材)
ケーブルコア3の周囲には、テープ部材4が螺旋状に巻き付けられている。テープ部材4は、ケーブルコア3の撚りが解けないように保持する役割を果たすものであり、その幅方向における一部が重なるように、ケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻き付けられている。テープ部材4としては、紙や不織布からなるテープ、あるいはポリエチレン等の樹脂からなる樹脂テープを用いることができる。
【0023】
テープ部材4の巻き付け方向は、ケーブルコア3の撚り方向と逆方向とされる。これにより、テープ部材4に対して、ケーブルコア3の最外層を構成する電線2が動きやすくなり、後述する曲げ部2aが形成されやすくなる。なお、テープ部材4の巻き付け方向とは、ケーブル1の他端から一端にかけて、テープ部材4が回転している方向である。また、ケーブルコア3の撚り方向とは、ケーブル1の他端から一端にかけて、電線2が回転している方向である。
【0024】
(シールド層5)
シールド層5は、テープ部材4の周囲を覆うように設けられている。シールド層5は、銅または銅合金からなる金属素線を編み組みした編組シールドから構成される。シールド層5としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複数本の第1金属素線と、銅または銅合金からなる複数本の第2金属素線とを用い、第1金属素線と第2金属素線とが交差するように編み組みされた編組シールドを用いてもよい。これにより、銅または銅合金からなる金属素線のみで構成された編組シールドと比較して、シールド層5を軽量にすることができる。
【0025】
(シース6)
シース6は、シールド層5やケーブルコア3を保護するためのものであり、シールド層5の周囲を覆うように設けられている。本実施の形態では、ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるシース6を用いた。シース6の厚さは、1.0mm程度とした。シース6の厚さは、これに限定されず、例えば、0.8mm以上2.0mm以下とすることができる。シース6の引張強さは12MPa以上であるとよく、伸びは200%以上であるとよい。
【0026】
(曲げ部2a)
図1(b)に示されるように、本実施の形態に係るケーブル1では、ケーブルコア3の最外層(ここでは第3層)を構成する電線2は、局所的に凸状に曲げられた曲げ部2aを有している。曲げ部2aを有することで、ケーブル1を曲げた際に最も引張力が作用するケーブルコア3の最外層の電線2に余長ができるため、ケーブル1を曲げやすくなり、またケーブル1を曲げた状態で維持しやすくなる。つまり、曲げ部2aを有することで、多心のケーブル1であっても、ケーブル1を小さい曲げ半径で曲げやすくなり、ケーブル1を小さい曲げ半径で束取りした際に当該束取りした状態で維持することが可能になる。
【0027】
曲げ部2aは、ケーブル長手方向及びケーブル周方向に無作為に形成されており、テープ部材4の内周面に沿うように、少なくともケーブル周方向に凸となるように形成されている。曲げ部2aは、さらにケーブル径方向における外方に凸となるように形成されていてもよい。特に、後述する本実施の形態による効果(ケーブル1を小さい曲げ半径で曲げやすくなる、曲げた状態で維持できるといった効果)を顕著に得るために、ケーブルコア3の最外層を構成する複数本の電線2が所定の撚りピッチPで撚り合わせられている場合に、ケーブルコア3の最外層を構成する複数本の電線2のそれぞれは、ケーブル長手方向に対して、所定の撚りピッチP(例えば、200mm)の範囲に少なくとも1つの曲げ部2aを有することがよい。曲げ部2aの大きさについては、電線2の太さやケーブルコア3の大きさ(層心径PD)にもよるが、目視で明らかに電線2に凸状の部分(すなわち曲げ部2a)があると認められる程度の大きさであるとよい。より具体的には、曲げ部2aにおける凸状の部分は、曲げ部2aが無い部分の電線2の表面から凸状の部分の頂部までの高さhが、電線2の外径の0.2倍以上0.5倍以下の大きさとなる。高さhが電線2の外径の0.2倍以上0.5倍以下の大きさであると、ケーブル1を小さい曲げ半径で曲げやすく、曲げたときに電線2の断線やうねりが生じることを抑制できる。また、上述した効果を得るために、ケーブル長手方向に垂直な任意の断面において、ケーブルコア3の最外層を構成する複数本の電線2(図1では20本)のうちの30%以上50%以下の本数の電線2が曲げ部2aを有することがよい。ケーブルコア3の最外層に曲げ部2aを有することにより、図1(b)に示すように、隣り合う電線2同士の間に隙間31が形成されることになり、この隙間31によってケーブル1を小さい曲げ半径で曲げたときに、電線2がケーブル1の周方向へ移動可能となる。これにより、ケーブル1を小さな曲げ半径で曲げて束取りしたときに、ケーブル1が元に戻ろうとする力が軽減され、当該束取りした状態で維持することが可能になる。
【0028】
(ケーブル1の製造方法)
ケーブル1を製造する際には、まず、中心介在7の周囲に電線2を撚り合わせてケーブルコア3を形成し、ケーブルコア3の周囲にテープ部材4を螺旋状に巻き付けた後、テープ部材4の周囲にシールド層5を形成し、シールド層5の周囲にシース6を形成する。これにより、ケーブルコア3に曲げ部2aが形成されていない状態のケーブル1(ケーブル基体1aという)が得られる。このとき、ケーブル基体1aを構成するケーブルコア3では、複数本の電線2がケーブルコア3の周方向および径方向に対して隙間がない状態(電線2同士が接触している状態)で配置されていることがよい。その後、曲げ部2aを形成する工程を行う。
【0029】
曲げ部2aを形成する工程では、図2に示すように、外径の小さいプーリ8を介して、ケーブル基体1aを小さい曲げ半径で強制的に曲げる。プーリ8としては、外径Dがケーブルコア3の撚りピッチPの1/2以下のものを用いるとよい。特に、プーリ8としては、外径Dがケーブル基体1aの外径の25倍以上35倍以下のものを用いるとよい。これにより、ケーブルコア3の最外層を構成する複数本の電線2に曲げ部2aが形成される。また、ここでは1つのプーリ8のみを示しているが、複数のプーリ8を用いてもよい。プーリ8を複数用いることにより、1つのプーリ8を用いた場合と比較して、曲げ部2aが形成されやすくなる。ケーブル基体1aを小さい曲げ半径で強制的に曲げることにより、ケーブルコア3の最外層を構成する電線2がケーブル径方向の外方へ広がろうとする。しかし、ケーブルコア3はテープ部材4やシールド層5、シース6に覆われておりケーブル径方向外方に電線2の逃げ場がない。そのため、電線2はテープ部材4の内周面に沿うようにケーブル周方向に逃げるしかなく、結果的に、電線2にケーブル周方向に沿って(テープ部材4の内周面に沿って)凸となる曲げ部2aが形成されることになる。この際、ケーブルコア3の撚り方向と、テープ部材4の巻き付け方向とが逆方向であると、テープ部材4に対して電線2が移動しやすくなり、曲げ部2aが形成されやすくなる。また、ケーブルコア3は、最外層を構成する複数の電線2の撚りピッチが最外層の下層を構成する複数の電線2の撚りピッチよりも大きいことがよい。より具体的には、最外層を構成する複数の電線2の撚りピッチと、最外層の下層を構成する複数の電線2の撚りピッチとの差が35mm以上となる範囲で、最外層を構成する複数の電線2の撚りピッチが最外層の下層を構成する複数の電線2の撚りピッチよりも大きいことがよい。これにより、ケーブルコア3の最外層を構成する複数本の電線2に曲げ部2aが形成されやすくなる。一度形成された曲げ部2aは、ケーブル1に対する曲げが開放された後も残ることになる。
【0030】
(ケーブル1の束取り)
ケーブル1を配線する際の余長部分の収容、あるいはケーブル1の収納時には、図3(a),(b)に示すように、ケーブル1を螺旋状に巻きつつ積み上げる束取りを行う。本実施の形態によれば、ケーブル1を小さい曲げ半径で曲げ、かつ曲げた状態で維持することができるため、束取りした部分のケーブル1をコンパクトにすることが可能になる。その結果、ケーブル1の束取り部分を狭いスペースに収容可能になり狭い配線スペースへの対応が可能になると共に、ケーブル1をコンパクトに収納して輸送を容易にすることが可能になる。なお、本実施の形態では、シース6がその表面にべたつきを有していると、ケーブル1をより積み上げやすくなり、束取りの形状で維持しやすくなる。
【0031】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、ケーブルコア3の最外層を構成する電線2が、局所的に凸状に曲げられた曲げ部2aを有している。これにより、小さい曲げ半径で曲げやすく、かつ曲げた状態で維持することが可能な多心のケーブル1を実現できる。
【0032】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0033】
[1]複数本の絶縁電線(2)を複数層の層構造で撚り合わせて構成されたケーブルコア(3)と、前記ケーブルコア(3)の周囲に螺旋状に巻き付けられたテープ部材(4)と、前記テープ部材(4)の周囲を覆うシース(6)と、を備え、前記ケーブルコア(3)の最外層を構成する前記絶縁電線(2)は、少なくともケーブル周方向に凸となるように局所的に凸状に曲げられた曲げ部(2a)を有する、ケーブル(1)。
【0034】
[2]前記ケーブルコア(3)の最外層を構成する前記絶縁電線(2)のそれぞれは、ケーブル長手方向に対して、当該ケーブルコア(3)の最外層を構成する前記絶縁電線(2)の撚りピッチの範囲に、少なくとも1つの前記曲げ部(2a)を有する、[1]に記載のケーブル(1)。
【0035】
[3]前記曲げ部(2a)は、当該曲げ部(2a)が無い部分の前記絶縁電線(2)の表面から前記曲げ部(2a)の頂部までの高さが、前記絶縁電線(2)の外径の0.2倍以上0.5倍以下である、[1]または[2]に記載のケーブル(1)。
【0036】
[4]ケーブル長手方向に垂直な任意の断面において、前記ケーブルコア(3)の最外層を構成する前記絶縁電線(2)のうちの30%以上50%以下の本数の前記絶縁電線(2)が前記曲げ部(2a)を有する、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0037】
[5]前記ケーブルコア(3)の最外層の層心径PDと、前記絶縁電線(2)の撚りピッチPとの比であるP/PDが、17以上22以下である、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0038】
[6]前記ケーブルコア(3)の撚り方向と、前記テープ部材(4)の巻き付け方向とが逆方向である、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0039】
[7]前記ケーブルコア(3)が、3層以上の層構造からなる、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0040】
[8]複数本の絶縁電線(2)を複数層の層構造で撚り合わせてケーブルコア(3)を形成する工程と、前記ケーブルコア(3)の周囲にテープ部材(4)を螺旋状に巻き付ける工程と、前記テープ部材(4)の周囲を覆うシース(6)を設ける工程と、前記シース(6)の形成後のケーブル基体(1a)を、ケーブルコア(3)の撚りピッチ以下の外径を有するプーリ(8)を介して強制的に曲げることで、前記ケーブルコア(3)の最外層を構成する前記絶縁電線(2)に、少なくともケーブル周方向に凸となるように局所的に凸状に曲げられた曲げ部(2a)を形成する工程と、を備えた、ケーブルの製造方法。
【0041】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…ケーブル
1a…ケーブル基体
2…電線(絶縁電線)
2a…曲げ部
3…ケーブルコア
4…テープ部材
5…シールド層
6…シース
7…中心介在
8…プーリ
図1
図2
図3