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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084472
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】薄切片作製装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/06 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01N1/06 B
G01N1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198758
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】509013703
【氏名又は名称】公立大学法人福島県立医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】522484733
【氏名又は名称】ラウンドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100224007
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 潮
(72)【発明者】
【氏名】和栗 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊原 勇
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052EC03
2G052EC05
2G052EC22
2G052GA32
2G052HA12
2G052HC12
2G052HC32
2G052JA03
2G052JA22
(57)【要約】
【課題】 10μm~100μm程度の厚みの薄切片を作製可能な比較的にシンプルな構成の薄切片作製装置を提供する。
【解決手段】 試料を保持するワークホルダと、前記ワークホルダの下面に接続され、前記ワークホルダの上面に直交するZ軸方向に昇降するZ軸ステージと、前記試料における前記ワークホルダの上面から突出する部分を所定の厚みで薄切り可能なカッターと、前記ワークホルダの上方で前記ワークホルダの上面に対して平行に前記カッターを水平移動させるYスライダと、上面視において前記ワークホルダの周囲に配設された堀状の切削片受け部と、を備え、前記試料が前記カッターによって薄切りされるときの前記ワークホルダの下面の高さは、前記切削片受け部の周縁の上面よりも高い薄切片作製装置に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に試料を保持するワークホルダと、
前記ワークホルダの下面に接続され、前記ワークホルダの上面に直交するZ軸方向に昇降するZ軸ステージと、
前記試料における前記ワークホルダの上面から突出する部分を所定の厚みで薄切り可能なカッターと、
前記ワークホルダの上方で前記ワークホルダの上面に対して平行に前記カッターを水平移動させるYスライダと、
上面視において前記ワークホルダの周囲に配設された堀状の切削片受け部と、
を備え、
前記試料が前記カッターによって薄切りされるときの前記ワークホルダの下面の高さは、前記切削片受け部の周縁の上面よりも高い
ことを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項2】
前記Zステージの上昇によって上方に移動する前記試料の上面を検出するための光学センサと、
前記光学センサからの出力に基づいて前記Zステージの昇降及び前記Yスライダの水平移動を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記光学センサは、前記カッターの刃先の高さ又は前記カッターの刃先の高さから所定量低い高さで、前記試料の上方又は上面を横切る光線を投光する投光器と、前記試料の上方又は上面を横切った前記光線を検出し、検出された当該光線の強度に基づく信号を前記制御部に対して出力する受光器と、を有し、
前記制御部は、前記受光器から出力される信号に基づいて前記Zステージの昇降を停止するか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の薄切片作製装置。
【請求項3】
前記ワークホルダ、前記Zステージ、前記カッター、前記Yスライダ、及び前記光学センサを収容する筐体と、
前記筐体の一部に設けられたカバーであって、当該カバーの閉状態において前記ワークホルダ及び前記カッターを外部から視認できる透明又は半透明の材質からなるカバーと、
前記カバーの開閉を検知し、開閉状態を示す信号を前記制御部に出力する開閉センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記カバーが開状態であること示す信号が前記開閉センサから出力された場合、前記Yスライダの水平移動をロックする
ことを特徴とする請求項1に記載の薄切片作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄切片作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病理研究等の為、生体から切除した検体を顕微鏡観察する場合、検体をパラフィンで包埋処理してから薄切し、更にスライドガラスに貼着し、染色等必要な処理を行なってからカバーガラスを被せ、顕微鏡標本とする作業が行なわれる。この内、検体をパラフィンにより包埋処理する作業は、通常、次のように行なわれる(例えば、特許文献1の「従来の技術」の記載を参照)。
【0003】
まず、予めパラフィンを浸透させた検体をピンセット等により、予め溶融したパラフィンを入れた包埋皿の凹部内に挿入する。次いで、篭状に多数の通孔を有する構造に造られたカセットを包埋皿に被せ、このカセットの上から溶融したパラフィンを注ぎ、カセットの内部に存在するパラフィンと包埋皿内に存在するパラフィンとを一体化する。カセット内にまで溶融したパラフィンを注入したならば、このカセット内と包埋皿内とに存在するパラフィンを別途設けた冷却器で冷却固化し、カセットと包埋皿とを分離する。予め包埋皿の凹部内に注入されていたパラフィンと、後からカセット内に注入されたパラフィンとは、カセットに形成された多数の通孔を通じて一体化している為、包埋皿の凹部内で固化し、内部に検体を包埋したブロック(包埋ブロック)は、カセットの底部に付着した状態で、包埋皿から取り出される。このように、カセットに付着した状態で包埋皿から取り出された包埋ブロックを次いで薄切片作製装置によって薄切し、顕微鏡観察用の標本とする。
【0004】
薄切片作製装置によって包埋ブロックを切削する場合には、薄切片が作製されるとともに、切削屑が発生する。また、包埋ブロックを切削する工程は、一般に、本削りの前工程として所望の検体が露出するまで数十μmの厚さで繰り返し切削を行う粗削りと、所望の検体が露出した切断面を形成した後に3~5μmの厚さで再度切削して薄切片を採取する本削りとがある。そして、特に粗削りにおいては、繰り返し切削が行われることで大量の切削屑が発生することとなる。
【0005】
特許文献2には、検体が包埋された包埋ブロックから厚さ3~5μm程度の極薄の薄切片を自動的に作製する薄切片作製装置において、切削に伴って発生する切削屑を除去する切削屑除去手段を設けることが開示されている。この薄切片作製装置の切削屑除去手段は、試料台に固定された包埋ブロックを切削するカッターの刃先近傍に開口部が配置された吸引ノズルと、当該吸引ノズルから包埋ブロックを切削した際に生じる切削屑を吸引可能な吸引機とを有する。前記吸引ノズルは、切削屑を効果的に吸引することが可能である一方、カッターの刃先近傍で他の動作を行う際に支障となる。そこで、この薄切片作製装置は、カッターの刃先に近接する吸引位置と、離間する退避位置とで吸引ノズルを進退させる進退手段を備える。そして、粗削りの工程を繰り返し行い、包埋ブロックの切断面に検体が最適な状態で露出したら、次に本削りを行う。本削りを行う前に、切削屑除去手段は吸引が停止され、吸引ノズルが退避位置に退避される。
【0006】
また、特許文献2に記載の薄切片作製装置は、粗削りにおいて生ずる大量の切削屑の問題を解消し、粗削りと本削りを連続的に行うことができる。しかしながら、この薄切片作製装置は、切削屑除去手段に加え、吸引ノズルの進退手段を備えることが必要である。この薄切片作製装置は、粗削りの工程での切削屑が吸引除去されるので、包埋ブロックの切断面に検体が最適な状態で露出したかを自動的に評価するために、切断面画像の取得手段及び判定手段(例えば、特許文献3を参照)を設けることも必要と解される。したがって、特許文献2に記載の薄切片作製装置は、大型で高価なものとなる。
【0007】
特許文献2に記載の薄切片作製装置は、厚さが3~5μm程度の極薄の薄切片を自動的に作製するものであるが、特許文献4に例示されるように、包埋ブロックから厚さが数十μmの切片を作製し、観察等に供する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2507446号公報
【特許文献2】特開2008-164522号公報
【特許文献3】特開2007-212276号公報
【特許文献4】国際公開第2019/082293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
厚さが数十μmの薄切片の作製や、本削り前に数十μmの厚さで切削する粗削りを目的とすれば、薄切片作製装置は、極薄の薄切片を作製可能な精度で試料ホルダ及びカッターの移動を制御する必要はない。したがって、前記目的のための薄切片作製装置は、小型で、低価格で、かつ比較的シンプルな構成の装置となり得ると期待される。しかしながら、従来の比較的シンプルな構成の薄切片作製装置は、切削屑又は必要な薄切片の回収の容易さや安全性などの面で十分満足のいくものでなかった。
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、10μm~100μm程度の厚みの薄切片を包埋ブロックから作製可能な比較的シンプルな構成の薄切片作製装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る薄切片作製装置は、上面(2a)に試料(B)を保持するワークホルダ(2)と、前記ワークホルダ(2)の下面(2b)に接続され、前記ワークホルダ(2)の上面(2a)に直交するZ軸方向に昇降するZステージ(5)と、前記試料(B)における前記ワークホルダ(2)の上面(2a)から突出する部分を所定の厚みで薄切り可能なカッター(3)と、前記ワークホルダ(2)の上方で前記ワークホルダ(2)の上面(2a)に対して平行に前記カッター(3)を水平移動させるYスライダ(6)と、上面視において前記ワークホルダ(2)の周囲に配設された堀状の切削片受け部(11)と、を備え、前記試料(B)が前記カッター(3)によって薄切りされるときの前記ワークホルダ(2)の下面(2b)の高さは、前記切削片受け部(11)の周縁(11a,11b)の上面よりも高いことを特徴とする。
【0012】
本発明のこの態様によれば、カッターによって薄切りされた試料の薄切片がワークホルダから落下して切削片受け部に回収されるので、薄切片を吸引する吸引機等を設けた装置に比べ、装置を簡素化、低コスト化できる。
【0013】
また、本発明に係る薄切片作製装置は、前記Zステージ(5)の上昇によって上方に移動する前記試料(B)の上面を検出するための光学センサ(4)と、前記光学センサ(4)からの出力に基づいて前記Zステージ(5)の昇降及び前記Yスライダ(6)の水平移動を制御する制御部(7)と、をさらに備え、前記光学センサ(4)は、前記カッター(3)の刃先(3a)の高さ又は前記カッター(3)の刃先(3a)の高さから所定量低い高さで、前記試料(B)の上方又は上面を横切る光線(LB)を投光する投光器(41)と、前記試料(B)の上方又は上面を横切った前記光線(LB)を検出し、検出された当該光線の強度に基づく信号を前記制御部に対して出力する受光器(42)と、を有し、前記制御部(7)は、前記受光器(42)から出力される信号に基づいて前記Zステージ(5)の昇降を停止するか否かを判断することが好ましい。
【0014】
本発明のこの態様によれば、投光器及び受光器からなる比較的に簡易な構成の光学センサによってZステージを制御するので、制御のための構成及び処理が簡易なものとなり、装置の低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係る薄切片作製装置は、前記ワークホルダ(2)、前記Zステージ(5)、前記カッター(3)、前記Yスライダ(6)、及び前記光学センサ(4)を収容する筐体(8)と、前記筐体(8)の一部に設けられたカバー(81)であって、当該カバー(81)の閉状態において前記ワークホルダ(2)及びカッター(3)を外部から視認できる透明又は半透明の材質からなるカバー(81)と、前記カバー(81)の開閉を検知し、開閉状態を示す信号を前記制御部(7)に出力する開閉センサ(82)と、をさらに備え、前記制御部(7)は、前記カバー(81)が開状態であること示す信号が前記開閉センサ(82)から出力された場合、前記Yスライダ(6)の水平移動をロックすることが好ましい。
【0016】
本発明のこの態様によれば、カバーの開閉を検知するという比較的にシンプルな構成及び制御で作業者の安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、10μm~100μm程度の厚みの薄切片を包埋ブロックから作製可能な比較的シンプルな構成の薄切片作製装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置のA-A断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置のワークホルダの斜視図である。
図5】カセットに固定された検体の包埋ブロックの斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
図1図3を参照して、本発明の一実施形態に係る薄切片作製装置を説明する。図1は、薄切片作製装置の斜視図、図2は、薄切片作製装置の上面図、図3は、薄切片作製装置のA-A断面図である。
【0021】
図1に示す薄切片作製装置1は、検体Sが包埋された包埋ブロック(試料)Bから厚さ10~100μm程度の薄切片を作製する装置である。検体Sは、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織から切除されたものである。包埋ブロックBは、例えば、本明細書の背景技術の欄(段落0003)で述べた手順により調製することができ、カセットCに付着した状態のもの(図5を参照)として得られる。
【0022】
図1図3に示すように、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを固定するワークホルダ2と、ワークホルダ2に固定された包埋ブロックBを切削するカッター3と、ワークホルダ2に固定された包埋ブロックBを昇降させる(Z軸方向に移動させる)Zステージ5と、Z軸方向に直交する平面に沿って、カッター3を前後方向(Y軸方向)に移動させるYスライダ6と、制御部7と、筐体8と、を備える。
【0023】
ワークホルダ2、カッター3、Zステージ5、Yスライダ6、及び制御部7は、筐体8内に収容されている。筐体8は、筐体本体80と、透明又は半透明の材質からなるカバー81を有する。カバー81は、蝶番84により開閉可能に筐体本体80に接続されている。作業室WSの空間は、カバー81で覆われており、外部からカバー81越しに目視できる。ワークホルダ2及びカッター3は、作業室WS内に配置されている。
【0024】
作業室WS内のワークホルダ2の周囲には、堀状の切削片受け部11が配設されている。切削片受け部11は、ワークホルダ2に隣接する内縁11aと、ワークホルダ2から遠い側の外縁11bとを有する。包埋ブロックBがカッター3によって薄切りされるときのワークホルダ2の下面2bの高さは、切削片受け部11の周縁である内縁11a及び外縁11bの上面よりも高い。したがって、切削片受け部11は、カッター3によって切削された薄切片又は切り屑を受け取ることができる。
【0025】
図1図2に図示する構成では、切削片受け部11は、上面視でワークホルダ2の四方(前後左右)を囲む略ロの字型の堀のように設けられている。ワークホルダ2を昇降させるZステージ5は、ロの字型の切削片受け部11の内縁11aの内側(内径側)に隣接して設けられた昇降口51を通過して昇降する。なお、切削片受け部11は、上記のような略ロの字型の堀状に形成する以外にも、図示は省略するが、ワークホルダ2の周囲のうち、少なくともワークホルダ2の前方に隣接する位置に設けられていれば、その他の部分を省略したものであってもよい。またその場合は、切削片受け部11は、ワークホルダ2の後方にも隣接して設けられることが好ましく、ワークホルダ2の左右方向にも隣接して設けられることがより好ましい。
【0026】
また、作業室WS内には、Zステージ5の上昇によって上方に移動する包埋ブロックBの上面を検出するための光学センサ4が設けられている。光学センサ4は、光線LBを投光する投光器41と、光線LBを検出し、検出された当該光線LBの強度に基づく検知信号を制御部7に対して出力する受光器42とからなる。
【0027】
また、作業室WS内には、カバー81の開閉状態を検知するための開閉センサ82が設けられている。開閉センサ82は、カバー81の開閉状態に応じた検知信号を制御部7に出力する。図1図2に示した具体例では、カバー81に設けた作動片83によって開閉センサ82の被押圧部が押圧されているか否かによって、カバー81の開閉が検知される構成を示している。しかしながら、開閉センサ81は、当該具体例に限らず、光学式、電気式、磁気式、又は機械式の公知のセンサを用いて構成することもできる。
【0028】
薄切片作製装置1は、主電源スイッチ71、入力手段72、及び表示手段73を備える。入力手段72及び表示手段73は、図1に示すように、薄切片作製装置1の前面に配置されることが好ましい。オペレータは、入力手段72の操作により、「試料切削開始」等の命令を入力でき、Zステージ5及びYスライダ6の動作パラメータを入力設定できる。
【0029】
次に、図4図5によりワークホルダ2について詳細に説明する。図4は、薄切片作製装置のワークホルダの斜視図、図5は、カセットに固定された検体の包埋ブロックの斜視図である。ワークホルダ2は、基台21と、基台21上に設けられて包埋ブロックBを固定するためのクランプ23と、を備える。基台21の底面に接続されたZステージ5が昇降することによってワークホルダ2が昇降する。
【0030】
ここで、カセットCは、包埋ブロックBの調製時(包埋ブロックBをカセットCに付着させる際)の上面を下面(底面)Ctとし、その時の底面(包埋ブロックBを付着させる面)を上面Cbとするように、包埋ブロックBの調製時とはその上下面の向きを反転させた状態でワークホルダ2の載置面24aに載置される。そして、台部24の平坦な上面24aは、カセットCの下面Ctを当接させて載置するための載置面24aとして機能する。載置面24aに載置されたカセットCは、クランプ23によって位置決めされて固定される。カセットCが固定されることによって、カセットCの上面Cbに付着した包埋ブロックBは、ワークホルダ2の上面2aから突出するようにワークホルダ2に固定される。
【0031】
クランプ23は、台部24と、台部24に固定された固定腕26と、台部24に設けられた回転軸29の周りで回動可能な可動腕27と、固定具25と、を備える。固定腕26及び可動腕27は、図4に示すように、矩形のカセットCにおける対向する二辺を位置決めできるように設けられる。傾斜壁Csを前面に有するカセットCでは、前面及び後面が固定腕26及び可動腕27により位置決めされることが好ましい。
【0032】
図4に示す構成では、上面視でコ字型の凹状に形成された当接部を有する固定腕26がカセットCの後面と左右面を位置決めし、略直線状に形成された当接部を有する可動腕27がカセットCの前面を位置決めするようになっている。矩形のカセットCは、前後方向が長く左右方向が短いものが多い。そして、カセットCに付着した包埋ブロックBの形状又は位置、あるいは包埋ブロックBに包埋された検体Sの形状又は位置によっては、載置面24aに載置される矩形のカセットCの向きを90度変える方が好ましい場合がある。したがって、固定腕26及び可動腕27は、載置面24aに載置される矩形のカセットCの向きを90度変えても位置決めできるように構成されることが好ましい。しかしながら、クランプ23は、上面視で二段構造の凹状に形成された固定腕26がカセットCの左右面の一方と前後面を位置決めし、可動腕27がカセットCの左右面の他方を位置決めすることができるように構成されている。なお、ここでは固定腕26が上面視で凹状に形成されている場合を説明したが、固定腕26に代えて可動腕27を上面視で凹状に形成してもよいし、固定腕26と可動腕27の両方を上面視で凹状に形成してもよい。すなわち、固定腕26及び可動腕27の少なくともいずれかは上面視で凹状に形成されており、矩形のカセットCの一辺と、これに隣接する二辺とを位置決めできることが好ましい。
【0033】
固定腕26及び可動腕27は、それぞれ、爪部26a及び爪部27aを先端に有する。載置面24aに載置されたカセットCを固定するときは、爪部26aと爪部27aの距離が縮まるように可動腕27を回動させた上で、固定具25を締め付ける。これによって、カセットCの上面Cbに爪部26a及び爪部27aが係合し、カセットCが固定腕26と可動腕27により挟持され、固定される。一方、ワークホルダ2にカセットCを着脱するときは、固定具25は開放するように操作され、爪部26aと爪部27aの距離が広がるように可動腕27は回転軸29の周りに回動される。なお、図示する構成では、固定腕26の爪部26aは、比較的に幅が狭く長さの長いカセットCを係合させるための組と、比較的に幅が広く長さが短いカセットCを係合させるための組との二組が設けられている。
【0034】
人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織から切除された検体Sが既述の手順で調製されると、パラフィンに検体Sが包埋された包埋ブロックBが得られる。図5に示すように、包埋ブロックBは、カセットCの上面Cbに付着している。カセットCの下面Ctと上面Cbは平行に形成されている。したがって、前記調製においてカセットCの下面Ctに付着したパラフィンがワークホルダ2に固定される前に除去されることによって、カセットCは、下面Ct及び上面Cbが載置面24aに平行になるように、ワークホルダ2に固定され得る。
【0035】
包埋ブロックBがカッター3で薄切りされるときに、ワークホルダ2(基台21)の下面2bの高さが切削片受け部11の内縁11a及び外縁11bの上面よりも高くなるように構成されている。したがって、カッター3によって薄切りされた試料の切削片は、カッター3によってワークホルダ2から押し出されて落下し、切削片受け部11に回収される。
【0036】
図3に示すように、基台21は、Zステージ5の最下点において、基台21に隣接する切削片受け部11の内縁11aよりも上方へ突出し、かつZステージ5の昇降口51をほぼ覆うことができるように構成されている。包埋ブロックBを交換するときなどにカバー3を開けると、切削片受け部11から切削片が舞い上がる虞がある。これに対して、Zステージ5が最下点にあるときにカバー3を開閉するようにすれば、基台21が昇降口51をほぼ覆っているので、舞い上がった切削片がZステージ5の昇降口51から入り込むことを抑えることができる。
【0037】
次に、図1図3を参照してカッター3について詳細に説明する。カッター3は、カッターホルダ30に固定されている。カッターホルダ30は、カッターホルダ本体31と、刃押さえ32と、を有している。カッターホルダ本体31は、一定の角度に設定された挟持面31aを有する。カッター3は、刃先3aを突出させた状態で、カッターホルダ本体31の挟持面31aと刃押さえ32とで挟持される。これにより、カッター3は、挟持面31aに対応する一定の角度でカッターホルダ30に固定される。
【0038】
カッターホルダ30は、カッターホルダ本体31の接続部33がYスライダ6の腕部61にボルト62で固定されている。ボルト62を緩めることにより、Yスライダ6の腕部61に対するカッターホルダ30の取付け角度を調節することができる。
【0039】
Yスライダ6が進退することによって、カッター3は、挟持面31aに対応する一定の角度でZ軸方向に直交する平面に沿って、薄切片作製装置1の前後方向(Y軸方向)に移動する。カッター3が移動する平面は、ワークホルダ2の台部24の載置面24aと平行である。したがって、包埋ブロックBが付着したカセットCが、その下面Ct及び上面Cbが載置面24aと平行になるようにワークホルダ2に固定されると、カセットCの下面Ct及び上面Cbと平行に包埋ブロックBが切削された薄切片が得られる。
【0040】
図3において、始動位置Pにあるカッター3及びカッターホルダ30を実線で示し、戻り位置Qにあるカッター3及びカッターホルダ30の一部を破線で示している。カッター3は、始動位置Pから前方(+Y方向)に移動して戻り位置Qに到達し、戻り位置Qから後方(-Y方向)に移動して始動位置Pまで戻る。連続して切削を行う場合、カッター3は、始動位置Pと戻り位置Qの間でY方向に往復動する。始動位置Pは、カッター3の刃先3a全体がワークホルダ2よりも後方に位置するように設定される。戻り位置Qは、刃先3a全体がワークホルダ2よりも前方に位置するように設定される。カッター3が始動位置Pよりもさらに後退する退避位置を設定するようにしてもよい。
【0041】
カッター3が戻り位置Qに到達したとき、又はカッター3が戻り位置Qから始動位置Pに戻るときに、刃先3aからカールした切削片が落下することがある。したがって、戻り位置Qは、カッター3の少なくとも一部が上面視でワークホルダ2の前方の切削片受け部11と重なる位置に設定することが好ましい。このようにすることで、切削片受け部11は、刃先3aから落下した切削片を回収することができる。
【0042】
また、カールした切削片が戻り位置Q付近で刃先3aから落下せずに、カッター3が後方に移動することがある。このような場合、カッター3が始動位置Pに到達したとき、又はカッター3が始動位置Pから再び前方に移動するときに、カールした切削片が刃先3aから落下することがある。したがって、ワークホルダ2の後方に切削片受け部11を設ける場合、始動位置Pは、カッター3の少なくとも一部が上面視でワークホルダ2の後方の切削片受け部11と重なる位置に設定することが好ましい。このようにすることで、切削片受け部11は、刃先3aから落下した切削片を回収することができる。
【0043】
次に、図1図3を参照して光学センサ4について詳細に説明する。光学センサ4は、Zステージ5の上昇によって上方に移動する包埋ブロックBの上面を検出するために設けられている。光学センサ4は、具体的には、光線LBを投光する投光器41と、光線LBを検出する受光器42と、からなる光電センサである。
【0044】
投光器41は、LED又は半導体レーザを光源として内蔵してもよいし、別体の光源からの光を光ファイバー等で導光するように構成してもよい。投光器41は、光源からの光を、径が0.2~1mm程度になるように絞った平行な光線LBにして出射するスリットを有することが好ましい。投光器41は、出光状態等の動作状態を示すインジケータとして、発光波長が前記光源と異なるLEDを有してもよい。
【0045】
受光器42は、フォトダイオード等の受光素子を内蔵している。受光器42は、入射する光線LBを、径が0.2~1mm程度になるように絞るためのスリットを有することが好ましい。受光器41は、入光状態等の動作状態を示すインジケータとして、発光波長が前記光源と異なるLEDを設けてもよい。
【0046】
投光器41は、ワークホルダ2の上方の基準位置SP(図3を参照)に、Z軸方向に直交する平面に沿って光線LBを投光するように設けられている。一方、受光器42は、基準位置SPを通過した光線LBを検出できるように設けられている。基準位置SPは、Zステージ5によって上方移動する包埋ブロックBの上面の少なくとも一部が基準位置SPに到達したときに、受光器42に入光する光線LBの強度が所定の閾値以下になる位置に設けられる。受光器42は、光線LBの強度が所定の閾値以下になると、検知信号を出力する。
【0047】
基準位置SPの高さは、カッター3の刃先3aがワークホルダ2上を通過する高さ、又は当該高さ近傍の高さに設定される。したがって、制御部7は、検知信号の受信をもって、包埋ブロックBの上面の少なくとも一部がカッター3によって切削可能な高さ、又は切削可能な高さの近傍に到達したと判断できる。
【0048】
また、包埋ブロックBは、カセットCの上面Cbの中央領域に付着するように調製されることが多い。したがって、基準位置SPは、ワークホルダ2に固定されるカセットCの中心のほぼ直上であることが好ましい。
【0049】
投光器41は、薄切片作製装置1の左右方向(Y軸方向に直交するX軸方向)に光線LBを投光することが好ましい。このように光線LBを投光することによって、光線LBがワークホルダ2の固定腕26及び可動腕27の上方を避けることができる。万一、固定腕26及び可動腕27上に切り屑が残留していても、切り屑による光学センサ4の誤検知を避けることができる。
【0050】
次に、図3図6を参照して、薄切片作製装置1の操作の具体例を詳細に説明する。図6に示すように、制御部7は、Zステージ5及びYスライダ6のコントローラ、光学センサ4、並びに開閉センサ82との間で制御信号/検知信号をやり取りできる。
【0051】
オペレータが入力手段72から「試料着脱」の命令を入力すると、制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5を最下点まで降下させるよう命令する。Zステージ5のコントローラは、Zステージ5が最下点に到達すると、「最下点」を示す信号を制御部7に送信する。「最下点」を示す信号を受信した制御部7は、表示手段73に「試料着脱可能」を示す情報を表示する。オペレータは、表示手段73に「試料着脱可能」を示す情報が表示されたら、カバー81を開く。
【0052】
次いで、オペレータは、クランプ23の固定具25を開放するように操作するとともに、爪部26aと爪部27aの距離が広がるように可動碗27を回動させる。オペレータは、固定碗26と可動碗27の間の載置面24a上に、包埋ブロックBが付着されたカセットCを載置する。このとき、カセットCが図5に示すように傾斜壁Csを前面に有する場合、通常、カセットCの前後面がクランプ23の固定腕26及び可動腕27により位置決めされて、固定されるようにする。なお、図4に示したワークホルダ2のクランプ23は、矩形のカセットCの左右面を固定腕26及び可動腕27により位置決めし、固定することもできる。したがって、オペレータは、包埋ブロックB内の検体Sの包埋状態等によって、カセットCの左右面がクランプ23の固定腕26及び可動腕27により位置決めされるようにすることもできる。
【0053】
次いで、オペレータは、爪部26aと爪部27aの距離が縮まるように可動碗27を回動させ、その後、固定具25を締め付ける。オペレータが固定具25を締め付けると、カセットCの上面Cbに爪部26a及び爪部27aが係合し、カセットCが固定腕26と可動腕27により挟持され、固定される。これによって、包埋ブロックBは、ワークホルダ2の上面2aから突出するように固定される。なお、カセットCの下面Ctに付着したパラフィンが事前に除去されていれば、カセットCは、下面Ct及び上面Cbが載置面24aに平行になるように、ワークホルダ2に固定される。
【0054】
ワークホルダ2への包埋ブロックBの固定後、オペレータがカバー81を完全に閉じると、カバー81の閉状態を示す信号が開閉センサ82から制御部7に出力される。カバー81の閉状態を示す信号を受信した制御部7は、「試料切削開始」の命令の入力を許可する。これによってYスライダ6の水平移動のロックが解除される。カバー81の開閉状態に応じて動作するロック機構をYスライダ6に設けることが好ましい。当該ロック機構がYスライダ6に設けられている場合、カバー81の閉状態を示す信号を受信した制御部7はロック機構の解除も行う。
【0055】
オペレータは、入力手段72から入力したZステージ5及びYスライダ6の動作パラメータを入力する。入力された動作パラメータは、制御部7のメモリに記憶される。動作パラメータを入力せずに、予めメモリに記憶されている動作パラメータを用いることもできる。次いで、オペレータが入力手段72から「試料切削開始」の命令を入力すると、制御部7は、記憶された動作パラメータをZステージ5及びYスライダ6のコントローラに逐次送信する。
【0056】
動作パラメータを受信したZステージ5のコントローラは、Zステージ5が最下点に位置する場合、「最下点」を示す信号を制御部7に送信する。「最下点」を示す信号を受信した制御部7は、Zステージ5のコントローラに、Zステージを所定の速度で上昇させるよう命令する。Zステージ5のコントローラは、ステッピングモータ等の駆動手段を動作させることによって、Zステージを所定の速度で上昇させる。Zステージ5が最下点に位置していない場合については、後述する。
【0057】
次に、制御部7は、光学センサ4の受光器42から検知信号を受信すると、包埋ブロックBの上面の少なくとも一部が基準位置SPに到達したと判断する。そして、制御部7は、Zステージ5のコントローラに、Zステージ5の上昇を停止させるよう命令する。
【0058】
この後のカッター3による切削では、カッター3が所定回数空を切る動作(「空振り動作」)をした後に包埋ブロックBを切削することが好ましい。このようにすることにより、オペレータは、ワークホルダ2上の包埋ブロックBに対するカッター3の動作をカバー81越しに確認できる。そして、万一カッター3の動作に問題がある場合は、オペレータが緊急停止操作を行うことにより、試料を無駄にしたり損傷させたりすることが避けられる。
【0059】
基準位置SPの高さは、刃先3aが通過する高さから下方にオフセットされることが好ましい。しかしながら、空振り動作の回数が多すぎると時間を浪費することになるため、その場合のオフセット量は、光学センサ4の検出能及び光線LBの径、空振り動作の回数も考慮して、1mm程度以下に設定するとよい。
【0060】
Zステージ5のコントローラは、Zステージ5の上昇を停止させた後、「切削可能」を示す信号を制御部7に送信する。制御部7は、「切削可能」を示す信号を受信すると、Zステージ5のコントローラ及びYスライダ6のコントローラに、予め設定された動作パラメータ、及び「動作開始」の命令を送信する。Zステージ5のコントローラに送信される動作パラメータは、1切削毎のZステージ5の上昇量と、切削回数を含む。Yスライダ6のコントローラに送信される動作パラメータは、少なくとも切削回数を含む。当該上昇量は、始動位置Pからのカッター3の前方への移動直前にZステージ5が上昇する量である。
【0061】
カッター3が戻り位置Qから後方へ移動するときは、包埋ブロックBの上面がカッター3の下面よりも下方にあることが好ましい。すなわち、カッター3が後方へ移動する直前に、Zステージ5が所定量降下することが好ましい。このように、Zステージの移動を制御することによって、後方へ移動するカッター3の下面による包埋ブロックBの上面の損傷を防止できる。カッター3が後方へ移動する直前のZステージの降下量は、上昇量よりも小さい値に設定される。例えば、降下量は、上昇量の1/2に設定される。降下量が設定されている場合、切削片の厚みに対応する包埋ブロックBの上面の正味の上昇量は、Zステージ5の上昇量と降下量の差分となる。降下量は、上昇量に応じて自動設定されるようにしてもよいし、上昇量とは別に設定できるようにしてもよい。
【0062】
カッター3は、始動位置Pと戻り位置Qとの間で切削回数の往復動が終了すると、始動位置Pで停止する。そして、Yスライダ6のコントローラは、「切削終了」を示す信号を制御部7に送信する。「切削終了」を示す信号を受信した制御部7は、表示手段73に「切削終了」を示す情報を表示する。
【0063】
オペレータが入力手段72から「試料切削開始」の命令を入力した時点で、Zステージ5が最下点に位置していない場合について説明する。このような場合には、包埋ブロックBの上面が基準高さより高い場合と、基準高さより低い場合がある。
【0064】
包埋ブロックBの上面が基準高さより高い場合、包埋ブロックBが光学センサ4の光線LBを遮蔽しているので、受光器42から検知信号が出力される。制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5の降下させるよう命令する。検知信号が受光器42から出力されなくなったら、制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5の降下を停止させ、上昇させるよう命令する。受光器42から再び検知信号が出力されたら、制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5の上昇を停止させるよう命令する。これによって、包埋ブロックBの上面の少なくとも一部が基準位置SPに到達する。この後のカッター3による切削は、上述のとおり行われる。
【0065】
包埋ブロックBの上面が基準高さより低い場合、受光器42から検知信号が出力されていない。制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5を上昇させるよう命令する。受光器42から検知信号が出力されたら、制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5の上昇を停止させるよう命令する。これによって、包埋ブロックBの上面の少なくとも一部が基準位置SPに到達する。この後のカッター3による切削は、上述のとおり行われる。
【0066】
ワークホルダ2から包埋ブロックBを回収するために、入力手段72から「試料着脱」の命令をオペレータが入力すると、制御部7は、Zステージ5のコントローラにZステージ5を最下点まで降下させるよう命令する。Zステージ5のコントローラは、Zステージ5が最下点に到達すると、「最下点」を示す信号を制御部7に送信する。「最下点」を示す信号を受信した制御部7は、表示手段73に「試料着脱可能」を示す情報を表示する。
【0067】
表示手段73に「試料着脱可能」を示す情報が表示されたら、オペレータは、カバー81を開いてワークホルダ2から包埋ブロックBを回収することができる。オペレータがカバー81を開くと、制御部7は「試料切削開始」の命令の入力を不許可/無効にする。これによってYスライダ6の水平移動がロックされる。次いで、オペレータは、クランプ23の固定具25を開放するように操作するとともに、爪部26aと爪部27aの距離が広がるように可動碗27を回動させる。これによりクランプ23から解放された包埋ブロックBを回収する。
【0068】
ワークホルダ2から包埋ブロックBを回収せず、同じ試料を再び切削する場合について説明する。カバー81が完全に閉じられていると、制御部7は、カバー81の閉状態を示す信号を受信し、「試料切削開始」の命令の入力を許可する。これによってYスライダ6の水平移動のロックが解除される。ロック機構がYスライダ6に設けられている場合、カバー81の閉状態を示す信号を受信した制御部7は、当該ロック機構の解除も行う。
【0069】
オペレータは、入力手段72からZステージ5及びYスライダ6の動作パラメータを入力する。入力した動作パラメータは、制御部7のメモリに記憶される。動作パラメータを入力せずに、予めメモリに記憶されている動作パラメータを用いることもできる。次いで、オペレータが入力手段72から「試料切削開始」の命令を入力すると、制御部7は、記憶された動作パラメータをZステージ5及びYスライダ6のコントローラに逐次送信する。
【0070】
この場合、オペレータが入力手段72から「試料切削開始」の命令を入力した時点で、Zステージ5が最下点に位置していない場合に該当する。したがって、上述したように操作することにより、包埋ブロックBの上面の少なくとも一部が基準位置SPに到達するようになる。この後のカッター3による切削は、上述のとおり行われる。
【0071】
Zステージ5は、数十μmの昇降を10%以下程度の誤差で行えることが好ましい。例えば、Zステージ5は、1mm以上の昇降のための粗動機構と、1mm以下の昇降のための微動機構とを備え、それぞれが10%以下の誤差で昇降を行えることが好ましい。Zステージ5が当該粗動機構及び微動機構を備える場合、例えば、基準位置SP±1mmまでの昇降は粗動機構を用い、基準位置SP±1mm以内の移動は微動機構を用いることができる。粗動機構及び微動機構は、精度及び移動範囲の異なるステッピングモータ又はサーボモータの組合せ、あるいはステッピングモータ又はサーボモータと圧電アクチュエータの組合せで構成することができる。
【0072】
Yスライダ6は、ステッピングモータ又はサーボモータ駆動されるものが採用される。Yスライダ6は、包埋ブロックBを押し切る押圧力をカッター3に付与でき、かつ数十cm程度の範囲を10%以下程度の誤差でスライド移動できることが好ましい。
【0073】
カッター3の移動範囲に応じてカッター3の移動速度を変更するように、Yスライダ6の動作パラメータを設定できる構成としてもよい。例えば、カッター3が包埋ブロックBを切り進めているときの移動速度よりも、切り進めた後の移動速度を速くするようにしてもよい。これにより切削時間を短縮でき、またカッター3からの切削片の離脱を促進できる。
【0074】
切削片受け部11は、着脱自在であることが好ましい。切削片受け部11は、帯電しないように金属等の導電性材料で形成されているか、表面が導電性材料で被覆されていることが好ましい。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 薄切片作製装置
2 ワークホルダ
2a 上面
2b 下面
3 カッター
3a 刃先
4 光学センサ
5 Zステージ
6 Yスライダ
7 制御部
8 筐体
11 切削片受け部
11a 内縁(周縁)
11b 外縁(周縁)
21 基台
23 クランプ
24 台部
24a 載置面
25 固定具
26 固定腕
26a,27a 爪部
27 可動腕
29 回転軸
30 カッターホルダ
31 カッターホルダ本体
31a 挟持面
32 刃押さえ
33 接続部
41 投光器
42 受光器
51 昇降口
61 腕部
62 ボルト
71 主電源スイッチ
72 入力手段
73 表示手段
80 筐体本体
81 カバー
82 開閉センサ
83 作動片
84 蝶番
B 包埋ブロック(試料)
C カセット
Cb 上面
Ct 下面(底面)
Cs 傾斜壁
LB 光線
S 検体
SP 基準位置
WS 作業室
図1
図2
図3
図4
図5
図6