(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084478
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ストロークセンサとこれを備えたストロークセンサ組立体
(51)【国際特許分類】
G01D 5/14 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01D5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198766
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA27
2F077CC02
2F077DD03
2F077JJ01
2F077JJ03
2F077JJ07
2F077JJ08
2F077JJ09
2F077JJ23
2F077QQ13
2F077QQ15
2F077TT21
2F077TT55
2F077VV02
2F077VV28
2F077VV31
(57)【要約】
【課題】移動範囲の大きい移動体の位置検出性能がさらに高められたストロークセンサを提供する。
【解決手段】ストロークセンサ3は、直線運動する移動体2の位置を検出する。ストロークセンサ3は、磁界発生部11と、磁界発生部11を支持する支持部7と、磁界発生部11が発生する磁界を検出する磁界検出素子14と、を有している。支持部7は、移動体2の磁界検出素子14に対する直線移動を、磁界発生部11の磁界検出素子14に対する回転運動に変換する。磁界発生部11は両端を有する回転運動範囲P2の範囲内で回転運動を行う。回転運動範囲P2の少なくとも両端E1,E2を除く領域で、磁界発生部11の回転角度と移動体2の位置は一対一で対応している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサであって、
磁界発生部と、
前記磁界発生部を支持する支持部と、
前記磁界発生部が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有し、
前記支持部は、前記移動体の前記磁界検出素子に対する直線移動を、前記磁界発生部の前記磁界検出素子に対する回転運動に変換し、
前記磁界発生部は両端を有する回転運動範囲の範囲内で前記回転運動を行い、前記回転運動範囲の少なくとも前記両端を除く領域で、前記磁界発生部の回転角度と前記移動体の位置は一対一で対応している、ストロークセンサ。
【請求項2】
前記回転運動は、前記磁界検出素子を通り前記磁界検出素子の磁界検知方向と直交する回転軸の周りの円運動である、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項3】
前記移動体は前記支持部を案内する案内経路を有し、前記支持部は前記案内経路に沿って、前記移動体に対して相対移動する、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項4】
前記案内経路はスリットまたは溝であり、
前記支持部は前記スリットまたは前記溝に嵌合する第1のガイド部を有する、請求項3に記載のストロークセンサ。
【請求項5】
前記磁界検出素子を備える素子搭載部を有し、
前記素子搭載部は、前記支持部が前記回転運動を行う溝または突起を有し、
前記支持部は前記溝または前記突起に嵌合する第2のガイド部を有する、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項6】
前記案内経路は、前記磁界発生部の前記回転運動範囲に対応する対応区間を有し、前記対応区間は直線状である、請求項3に記載のストロークセンサ。
【請求項7】
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記移動体は直線経路に従って前記直線移動を行い、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として前記直線経路と平行な方向に延びる、請求項6に記載のストロークセンサ。
【請求項8】
前記付加区間の幅は前記対応区間の幅と概ね同じである、請求項7に記載のストロークセンサ。
【請求項9】
前記磁界発生部は前記回転運動の回転軸と同軸の円筒形の磁石であり、前記回転軸の周りに一つのN極と一つのS極のみを有する、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項10】
前記磁界発生部は互いに接する一対の磁石を有し、前記一対の磁石は前記回転運動の回転軸に関して回転対称に配置され、前記一対の磁石の前記磁界検出素子と対向する面の極性が互いに異なる、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項11】
前記磁界発生部は互いに離間した一対の磁石を有し、前記一対の磁石は前記回転運動の回転軸に関して回転対称に配置され、前記一対の磁石の前記磁界検出素子と対向する面の極性が互いに異なる、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のストロークセンサと、
前記移動体と、を有するストロークセンサ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストロークセンサとこれを備えたストロークセンサ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサが知られている。特許文献1には、ポテンショメータと、ポテンショメータに取り付けられた回転軸と、を有するストロークセンサが開示されている。回転軸には回転軸と直交する方向に延びる腕部が取り付けられ、腕部は移動体に設けられたガイド溝に係合している。ガイド溝は半波長を超える長さの正弦波形状を有している。移動体が移動することで腕部が回転軸を回転させる。ポテンショメータの抵抗は回転軸の回転角度に比例して変化する。この抵抗の変化によって回転軸の回転角度が検出され、それによって移動体の位置が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたストロークセンサは、移動範囲の大きい移動体の位置を検出することができる。しかし、ガイド溝が半波長を超える長さの正弦波形状を有しているため、移動体の位置が腕部の回転角度と一対一で対応しない場合がある。換言すれば、移動体の位置をポテンショメータの出力によって確定することができない場合が生じる。
【0005】
本発明は、移動範囲の大きい移動体の位置検出性能がさらに高められたストロークセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のストロークセンサは、直線運動する移動体の位置を検出する。ストロークセンサは、磁界発生部と、磁界発生部を支持する支持部と、磁界発生部が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有している。支持部は、移動体の磁界検出素子に対する直線移動を、磁界発生部の磁界検出素子に対する回転運動に変換する。磁界発生部は両端を有する回転運動範囲の範囲内で回転運動を行う。回転運動範囲の少なくとも両端を除く領域で、磁界発生部の回転角度と移動体の位置は一対一で対応している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動範囲の大きい移動体の位置検出性能がさらに高められたストロークセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るストロークセンサ組立体の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すストロークセンサ組立体と、移動体の収容体と、を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1に示すストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略図である。
【
図4】
図1に示すストロークセンサ組立体の磁界発生部の構成を示す概念図である。
【
図5】
図1に示すストロークセンサ組立体におけるストロークセンサと移動体の相対移動を示す概念図である。
【
図6】
図1に示すストロークセンサ組立体におけるストロークセンサと移動体の相対移動を示す概念図である。
【
図7】
図1に示すストロークセンサ組立体における移動体の直線経路と案内経路、及び支持部の回転運動範囲を示す概念図である。
【
図8】比較例のストロークセンサ組立体における移動体の直線経路と案内経路、及び支持部の回転運動範囲を示す概念図である。
【
図9】
図1に示すストロークセンサ組立体における移動体の位置とセンサ出力の関係を示すグラフの一例である。
【
図10】本発明の変形例に係るストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明のストロークセンサ組立体とストロークセンサの実施形態について説明する。本実施形態のストロークセンサ組立体1とストロークセンサ3は用途が限定されるものではなく、自動車、二輪車などの車両、産業機械などに適用することができ、特に、移動範囲の大きい移動体の位置検出に好適に適用可能である。以下の説明及び図面において、X方向は移動体2の移動方向、Y方向は案内経路P3が設置される面と直交する方向であり、X方向と直交している。Z方向はX方向及びY方向と直交する方向である。以下の説明において相対移動という用語を用いるが、2つの部材のどちらが移動するかは文脈で判断される。例えば、部材Aが部材Bに対して相対移動するという記載は、部材Aが固定されている場合は、部材Bが移動すると解釈され、部材Bが固定されている場合は、部材Aが移動すると解釈される。
【0010】
図1はストロークセンサ組立体1の概略斜視図を、
図2はストロークセンサ組立体1とその収容体4の概略斜視図を示している。ストロークセンサ組立体1は、直線運動する移動体2と、移動体2の位置を検出するストロークセンサ3と、を有している。
図2に示すように、移動体2はハウジングなどの収容体4に収容され、収容体4の内部をX方向にスライドすることができる。すなわち、移動体2はX方向と平行な直線経路P1を有し、移動体2は直線経路P1に沿ってX方向に移動する。収容体4は車両や機械の本体(図示せず)に固定されている。直線経路P1は移動体2のX方向の中心線C1と概ね一致する。移動体2の一端2Aは収容体4の外部に設けられ、駆動手段(図示せず)と連結されている。ストロークセンサ3は大部分が収容体4の外部に設けられている。移動体2のストロークセンサ3と対向する面に溝6を備えた案内板5が固定され、後述するように、ストロークセンサ3は溝6によって移動体2と接続されている。
【0011】
図3(a)はストロークセンサ3の概略斜視図を、
図3(b)はストロークセンサ3の概略断面図を示す。ストロークセンサ3は、磁界発生部11を支持する支持部7と、磁界検出素子14を備える素子搭載部13と、を有する。磁界発生部11は磁石であり、磁界検出素子14と対向する面にN極とS極が形成されている。支持部7はY方向と平行な回転軸C3の周りを回転することができる。
【0012】
図4には磁界発生部11の様々な構成を示している。図中の太線の矢印は磁界発生部11が発生する磁束を模式的に示している。
図4(a)は
図3(b)に示す磁界発生部11の斜視図を示している。磁界発生部11は支持部7の回転運動の回転軸C3と同軸の円筒形の磁石であり、回転軸C3の周りに一つのN極と一つのS極のみを有している。磁石はZ方向に着磁されるため、磁石をY方向に薄くすることが容易である。
図4(b)は変形例の磁界発生部11の斜視図を示している。磁界発生部11は互いに接する半円筒形の一対の磁石11A,11Bを有し、一対の磁石11A,11Bは回転運動の回転軸C3に関して回転対称に配置されている。一対の磁石11A,11Bの磁界検出素子14と対向する面の極性は互いに異なる。この構成はX-Z面における磁石のサイズを縮小するのが容易である。
図4(c)は他の変形例の磁界発生部11の斜視図を示している。磁界発生部11は互いに離間した一対の磁石11A,11Bを有し、一対の磁石11A,11Bは回転運動の回転軸C3に関して回転対称に配置されている。一対の磁石11A,11Bの磁界検出素子14と対向する面の極性は互いに異なる。この構成は磁石の体積を小さくすることができる。また、図示は省略するが磁石11A,11Bは直方体でもよく、この場合は曲面で構成された磁石と比べてコストを下げるのが容易となる。
図4(b)、4(c)の変形例において2対以上の磁石が設けられてもよい。
【0013】
支持部7は樹脂や非磁性の金属からなり、支持部7と磁界発生部11は嵌合、接着、インサート成形などの適宜の方法で一体化されている。あるいは、支持部7と磁界発生部11を、プラスチックマグネットを用いて一体形成してもよい。支持部7は、溝6と嵌合し溝6に案内される第1のガイド部8と、素子搭載部13の溝16に嵌合する第2のガイド部9と、第1のガイド部8と第2のガイド部9との間にある円板部10と、を有している。円板部10は第1のガイド部8と第2のガイド部9とを接続している。円板部10の中心は支持部7の回転軸C3と一致している。第1のガイド部8は概ね円筒状の部材である。第1のガイド部8の中心軸C4は円板部10の中心ないし支持部7の回転軸C3に対して偏心している。第2のガイド部9は円板部10の周縁部に沿って延びる環状の突起であり、第2のガイド部9の中心軸は支持部7の回転軸C3と一致している。第2のガイド部9は溝16と同一の断面形状を有し、溝16に沿って回転運動する。
【0014】
素子搭載部13は樹脂や非磁性の金属からなり、収容体4に固定されている。素子搭載部13は車両や機械の本体(図示せず)に固定されていてもよい。素子搭載部13は、概ね円筒形の本体部17と、磁界検出素子14とストロークセンサ3の外部との間で信号線を接続するための接続部18と、素子搭載部13を固定するための固定部19と、を有している。本体部17と接続部18と固定部19は一体形成されている。本体部17は第2のガイド部9を案内する環状の溝16を有している。溝16は回転運動範囲P2(
図7参照)を画定する。支持部7は溝16を介して、回転軸C3のまわりを、素子搭載部13ないし磁界検出素子14に対して回転運動することが可能である。固定部19は取り付け用のボルト21が挿通されるブッシュ20を有している。支持部7及び素子搭載部13の、移動体2ないし案内板5に面する面は、リング状の保護部材12で覆われている。
【0015】
磁界検出素子14は磁界発生部11が発生する磁界を検出する。磁界検出素子14の構成は特に限定されず、磁気抵抗効果素子(例えばAMR素子、TMR素子、GMR素子)やホール素子を用いることができる。磁界検出素子14は基板15に搭載され、基板15を通じて外部との信号の授受を行う。磁界検出素子14は、磁界発生部11によって形成されるX方向の磁界とZ方向の磁界を検出し、これらの合成磁界のなす角度から磁界発生部11に対する相対角度位置を検出する。
【0016】
図5は移動体2(案内板5)がストロークセンサ3に対して相対移動する様子を示している。
図5では、磁界発生部11と磁界検出素子14と溝16とでストロークセンサ3の位置を示している。ストロークセンサ3の位置はX方向に固定されている。
図5(A)では、ストロークセンサ3が溝6の対応区間S2(
図7参照)の右端に位置し、
図5(B)ではストロークセンサ3が溝6の対応区間S2の中央付近に位置し、
図5(C)ではストロークセンサ3が溝6の対応区間S2の左端に位置している。
図6は
図5と同様の図であるが、便宜上移動体2が固定され、ストロークセンサ3が移動するように描いている。
図7は
図6を模式化した図であり、直線経路P1と回転運動範囲P2と案内経路P3を、これらの中心線によって示している。
【0017】
上述のように、移動体2は溝6を有している。溝6は支持部7を案内する案内経路P3を構成し、支持部7は溝6に沿って、移動体2に対して相対移動する。通常時、移動体2は特定の範囲(以下、通常移動範囲S1という)をX方向に移動する。従って、支持部7の第1のガイド部8は、通常移動範囲S1及び回転運動範囲P2(後述)に対応する区間(以下、対応区間S2という)で溝6と係合する。後述するように、溝6は対応区間S2の外側に付加区間S4を備えているが、通常時に第1のガイド部8が付加区間S4に侵入することはない。対応区間S2において、案内経路P3はX-Z面をX軸から若干傾斜した方向に直線状に延びている。案内経路P3は直線に限定されず例えば正弦波状であってもよいが、溝6の加工コストの観点から直線状が好ましい。移動体2の通常移動範囲S1はストロークセンサ組立体1の適用例によって異なるが、小さな場合数十mm、大きな場合は数百mmである。溝6の幅はその全長で一定であり、第1のガイド部8の直径よりやや大きい値に設定される。
【0018】
ストロークセンサ3は以下のように作動する。まず、移動体2がX方向に移動するとする。ストロークセンサ3の素子搭載部13は固定されているので、移動体2のX方向への移動は素子搭載部13ないし磁界検出素子14に対するX方向の相対移動と等価である。この相対移動は直線移動であり、移動体2の直線移動は、X軸と平行な直線経路P1に沿って行われる。
【0019】
ストロークセンサ3の支持部7ないし磁界発生部11は移動体2に対し、溝6に沿って相対移動する。つまり、ストロークセンサ3の支持部7は移動体2に対してX方向とZ方向の2方向に相対移動する。しかし、第2のガイド部9が素子搭載部13の溝16によって拘束されているため、支持部7ないし磁界発生部11は素子搭載部13ないし磁界検出素子14に対して回転運動する。回転運動は溝16によって規定される回転運動範囲P2に沿って行われる。回転運動範囲P2は第1のガイド部8の移動可能範囲である。回転運動範囲P2は概ね半円状であり、溝16の一部である。このように、支持部7は、移動体2の磁界検出素子14に対する直線移動を、磁界発生部11の磁界検出素子14に対する回転運動に変換する。この回転運動は、磁界検出素子14を通り磁界検出素子14の磁界検知方向(X方向、Z方向)と直交する回転軸C3の周りの円運動である。
【0020】
仮に直線経路P1に沿って磁界検出素子14と磁界発生部11を設けた場合、直線経路P1に沿った通常移動範囲S1の全域で必要な磁界強度を得るために、磁界発生部11の磁界強度を上げることが必要となる。しかし、このことは磁界発生部11の大型化やストロークセンサ3のコスト増加につながる。本実施形態では、移動体2の直線経路P1に沿った直線移動が、第1のガイド部8の回転運動範囲P2に沿った回転運動に変換される。磁界発生部11はX方向に移動することなく、回転運動をするだけである。従って、磁界発生部11の大型化やストロークセンサ3のコスト増加を抑制することができる。
【0021】
案内経路P3は、移動体2の対応区間S2の外側で対応区間S2に接続された少なくとも一つの付加区間S4を有している。本実施形態では、対応区間S2の両側に付加区間S4が設けられている。2つの付加区間S4の長さは同一であるが、異なっていてもよい。直線経路P1にも、通常移動範囲S1の両側に付加区間S4に対応する区間S3が設けられている。通常移動範囲S1と2つの区間S3を合わせた区間は、移動体2が物理的に移動可能な範囲に相当する。
【0022】
付加区間S4は対応区間S2の外側に設けられるため、通常は支持部7の第1のガイド部8が付加区間S4に侵入することはない。しかし、第1のガイド部8が何らかの理由で対応区間S2の外側に移動した場合、付加区間S4がないと第1のガイド部8や溝6が破損する可能性がある。また、ストロークセンサ3の製造時にも、検査や調整などの目的で第1のガイド部8を対応区間S2の外側まで移動させる可能性がある。これらの場合に、付加区間S4は第1のガイド部8を収容することができる。ストロークセンサ3の作動時や製造時に、第1のガイド部8が対応区間S2の一方の外側部だけに移動する可能性が高い場合などは、付加区間S4は対応区間S2の一方の外側部だけに設けてもよい。
【0023】
図7に示すように、付加区間S4は、対応区間S2の端部を始点として直線経路P1と平行な方向に延びている。
図8(a)は比較例1の付加区間S4を示している。直線経路P1と平行で案内経路P3の重心ないし中心を通る直線を基準直線C2(
図6参照。
図7,8においてはP1と一致する)とすると、付加区間S4は対応区間S2の端部から基準直線C2に近づく方向に延びている。移動体2は通常移動範囲S1の任意の位置に停止する可能性があるが、通常はその後移動体2が移動すれば磁界検出素子14に印加される磁界の向きが変化するため、移動体2の移動方向を知ることができる。
【0024】
これに対し、移動体2が通常移動範囲S1の端部に停止した後にいずれかの方向に移動した場合、支持部7はどちらの方向にも回転し得る。なぜならば、この場合第1のガイド部8は基準直線C2に近づく方向に移動する必要があるところ、この条件は支持部7がどちらの方向に回転しても満たされるからである。この結果、磁界発生部11もどちらの方向にも回転し得るので、磁界検出素子14は移動体2の移動方向を検出することができない。なお、移動体2が通常移動範囲S1の端部以外に停止した後にいずれかの方向に移動した場合は、第1のガイド部8は移動体2の移動方向に応じて、基準直線C2に近づく方向と基準直線C2から遠ざかる方向のいずれかにしか移動しないため、このような問題は生じない。
【0025】
本実施形態では、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の内部に移動した場合は、第1のガイド部8の回転位置が回転運動範囲P2の端部から、回転運動範囲P2の内側に移動する。従って、磁界発生部11が磁界検出素子14に対して相対回転し、磁界検出素子14が検出する磁界が変化する。これに対し、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の外部に移動した場合は、支持部7は案内経路P3に沿ってX方向に平行移動するため回転しない。移動体2が通常移動範囲S1の外部に移動しても、第1のガイド部8の回転位置は回転運動範囲P2の端部に固定されたままである。磁界発生部11が磁界検出素子14に対して相対回転しないため、磁界検出素子14が検出する磁界は一定である。
【0026】
以上より、付加区間S4及び区間S3を設ける場合、回転運動範囲P2の両端E1,E2を除く領域で、磁界発生部11の回転角度と移動体2のX方向位置は一対一の対応関係が成立する。逆に、付加区間S4及び区間S3を設けない場合、回転運動範囲P2の両端E1,E2を含む領域で、磁界発生部11の回転角度と移動体2のX方向位置は一対一の対応関係が成立する。従って、磁界発生部11の回転運動範囲P2の少なくとも両端E1,E2を除く領域では、磁界発生部11の回転角度と移動体2の位置は一対一で対応している。また、付加区間S4及び区間S3を設ける場合であっても、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の外部に移動したか内部に移動したかは、磁界検出素子14が検出する磁界に基づき検出することができる。従って、本実施形態では付加区間S4及び区間S3の有無に拘わらず、通常移動範囲S1の全域で移動体2の移動方向を検出することができる。
【0027】
図5~7からわかるように、磁界発生部11は両端E1,E2を有する回転運動範囲P2の範囲内で回転運動を行う。磁界発生部11の回転運動範囲P2が180度を超えると上述した一対一の対応関係が実現できないことになる。一方、回転運動範囲P2の大きさはストロークセンサ3の分解能と相関しており、回転運動範囲P2が小さすぎると、ストロークセンサ3の分解能が低下する。従って、回転運動範囲P2は概ね180度(但し、180度以下)であることが好ましい。
【0028】
図8(b)は比較例2の付加区間S4を示している。付加区間S4は基準直線C2から離れる方向に延びている。第1のガイド部8の移動経路は溝16で規制されるため、第1のガイド部8は溝16の直径Hを超えてZ方向に移動することができない。従って、比較例2の場合、第1のガイド部8が付加区間S4に侵入した場合に、第1のガイド部8または溝16の破損が生じ、あるいは第1のガイド部8が溝16に固着する可能性がある。よって、付加区間S4を設ける場合、付加区間S4は対応区間S2の端部を始点として直線経路P1と平行な方向に延びていることが好ましい。
【0029】
溝6の幅はその全長に渡って一定であることが好ましい。すなわち、付加区間S4の幅は対応区間S2の幅と概ね同じであることが好ましい。付加区間S4の幅が対応区間S2の幅より大きいと、付加区間S4の内部で第1のガイド部8のZ方向の位置が安定せず、上述したのと同様の課題が発生する可能性がある。
【0030】
図9は本実施形態におけるストロークセンサ3の位置検出特性、即ち移動体2の位置とセンサ出力の関係を計算した結果の一例を示している。移動体2の位置とセンサ出力の関係はほぼリニアであり、良好な特性が得られた。なお、線形性はセンサ出力を補正することで改善することができるため、センサ出力の線形性が多少悪くても大きな問題とはならない。
【0031】
本発明の実施形態について説明したが、本発明のこの実施形態に限定されない。例えば、案内経路P3は溝6に限定されない。
図10は本実施形態の変形例を示している。案内経路P3は案内板5を厚さ方向に貫通するスリット22である。図示は省略するが、溝16の代わりに環状の突起を設けることもできる。この場合、第2のガイド部9は突起に係合する溝である。図示は省略するが、案内経路P3はレールのような長い突起でもよい。あるいは、複数の案内経路P3を設けることもできる。
【0032】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサであって、
磁界発生部と、
前記磁界発生部を支持する支持部と、
前記磁界発生部が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有し、
前記支持部は、前記移動体の前記磁界検出素子に対する直線移動を、前記磁界発生部の前記磁界検出素子に対する回転運動に変換し、
前記磁界発生部は両端を有する回転運動範囲の範囲内で前記回転運動を行い、前記回転運動範囲の少なくとも前記両端を除く領域で、前記磁界発生部の回転角度と前記移動体の位置は一対一で対応している、ストロークセンサ。
[構成2]
前記回転運動は、前記磁界検出素子を通り前記磁界検出素子の磁界検知方向と直交する回転軸の周りの円運動である、構成1に記載のストロークセンサ。
[構成3]
前記移動体は前記支持部を案内する案内経路を有し、前記支持部は前記案内経路に沿って、前記移動体に対して相対移動する、構成1または2に記載のストロークセンサ。
[構成4]
前記案内経路はスリットまたは溝であり、
前記支持部は前記スリットまたは前記溝に嵌合する第1のガイド部を有する、構成3に記載のストロークセンサ。
[構成5]
前記磁界検出素子を備える素子搭載部を有し、
前記素子搭載部は、前記支持部が前記回転運動を行う溝または突起を有し、
前記支持部は前記溝または前記突起に嵌合する第2のガイド部を有する、構成3または4に記載のストロークセンサ。
[構成6]
前記案内経路は、前記磁界発生部の前記回転運動範囲に対応する対応区間を有し、前記対応区間は直線状である、構成3から5のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成7]
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記移動体は直線経路に従って前記直線移動を行い、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として前記直線経路と平行な方向に延びる、構成6に記載のストロークセンサ。
[構成8]
前記付加区間の幅は前記対応区間の幅と概ね同じである、構成7に記載のストロークセンサ。
[構成9]
前記磁界発生部は前記回転運動の回転軸と同軸の円筒形の磁石であり、前記回転軸の周りに一つのN極と一つのS極のみを有する、構成1から8のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成10]
前記磁界発生部は互いに接する一対の磁石を有し、前記一対の磁石は前記回転運動の回転軸に関して回転対称に配置され、前記一対の磁石の前記磁界検出素子と対向する面の極性が互いに異なる、構成1から8のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成11]
前記磁界発生部は互いに離間した一対の磁石を有し、前記一対の磁石は前記回転運動の回転軸に関して回転対称に配置され、前記一対の磁石の前記磁界検出素子と対向する面の極性が互いに異なる、構成1から8のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成12]
構成1から11のいずれか1項に記載のストロークセンサと、
前記移動体と、を有するストロークセンサ組立体。
【符号の説明】
【0033】
1 ストロークセンサ組立体
2 移動体
3 ストロークセンサ
6 溝
7 支持部
8 第1のガイド部
9 第2のガイド部
11 磁界発生部
13 素子搭載部
14 磁界検出素子
16 溝
P1 直線経路
P2 回転運動範囲
P3 案内経路
S1 通常移動範囲
S2 対応区間
S4 付加区間