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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084479
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20240618BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60C9/20 J
B60C9/18 F
B60C9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198767
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】都築 侑果
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC36
3D131CA03
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA45
3D131KA03
(57)【要約】
【要約】
【課題】特定のタイヤサイズにおいて、ベルト層の損傷を抑制し得る空気タイヤを提供する。
【解決手段】リムRに装着されて使用される空気入りタイヤである。リムRのリム径RDは12~17インチである。タイヤの断面幅SWに対するタイヤの断面高さSHの比SH/SWは0.30~0.45である。タイヤの断面幅SWに対するリムのリム幅RWの比RW/SWは0.78~0.99である。空気入りタイヤは、トレッド部2を備えている。トレッド部2には、ベルト層7が配されている。ベルト層7は、第1ベルトプライ11と、第1ベルトプライ11のタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライ12とを含む。第1ベルトプライ11と第2ベルトプライ12との間の最大のゴムゲージは、1.0~3.0mmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムに装着されて使用される空気入りタイヤであって、
前記リムのリム径RDは12~17インチであり、
タイヤの断面幅SWに対するタイヤの断面高さSHの比SH/SWは0.30~0.45であり、
前記タイヤの断面幅SWに対する前記リムのリム幅RWの比RW/SWは0.78~0.99であり、
前記空気入りタイヤは、トレッド部を備えており、
前記トレッド部には、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1ベルトプライと前記第2ベルトプライとの間の最大のゴムゲージは、1.0~3.0mmである、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1ベルトプライには、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内外から覆う第1エッジカバーゴムが配されており、
前記第2ベルトプライには、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内側及び外側から覆う第2エッジカバーゴムが配されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ半径方向において、前記第1ベルトプライと前記第2ベルトプライとの間には、一対の第3ゴムが配されており、
前記一対の第3ゴムは、前記第2ベルトプライの前記外端部のタイヤ半径方向内側をタイヤ軸方向に延びている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第3ゴムの厚さは、0.5~2.0mmである、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記一対の第3ゴムのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記ベルト層のタイヤ軸方向の長さの10%~30%である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1エッジカバーゴムの厚さ、及び、前記第2エッジカバーゴムの厚さは、それぞれ、0.5~2.0mmである、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1エッジカバーゴムのタイヤ軸方向の長さ、及び、前記第2エッジカバーゴムのタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記ベルト層のタイヤ軸方向の長さの5%~10%である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部での人や物の輸送を目的とした小型バスが種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。このような車両は、車室空間を大きく確保することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-075088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両に装着されるタイヤは、車室空間を最大化した上で、優れた耐荷重性能が要求される。一方、このような車両に採用されるサイズのタイヤは、現状では、荷重負荷時にベルト層のタイヤ軸方向の外端部の歪が大きくなり易く、その結果、ベルトプライのセパレーションといったベルト層の損傷が生じ易い。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、特定のタイヤサイズにおいて、ベルト層の損傷を抑制し得る空気タイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リムに装着されて使用される空気入りタイヤであって、前記リムのリム径RDは12~17インチであり、タイヤの断面幅SWに対するタイヤの断面高さSHの比SH/SWは0.30~0.45であり、前記タイヤの断面幅SWに対する前記リムのリム幅RWの比RW/SWは0.78~0.99であり、前記空気入りタイヤは、トレッド部を備えており、前記トレッド部には、ベルト層が配されており、前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、前記第1ベルトプライには、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内外から覆う第1エッジカバーゴムが配されており、前記第2ベルトプライには、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内側及び外側から覆う第2エッジカバーゴムが配されている、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ベルト層の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの横断面図である。
図2】本発明のタイヤが装着される車両の斜視図である。
図3図1のトレッド部の拡大斜視図である。
図4図3の第1ベルトプライ及び第2ベルトプライのタイヤ軸方向の一方側の外端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1には、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」という場合がある。)の横断面図が示されている。図2は、本発明のタイヤ1が装着される車両Mを概念的に示す斜視図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、リムRに装着されて使用されるものであり、例えば、小型バスや、小型シャトルバス等の車両M用の空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0010】
図2に示されるように、上述の車両Mは、4輪自動車である。なお、車両Mは、4輪に限定されず、6輪構成や8輪構成であってもよい。また、車両Mには、車輪構成に応じて、所定の数のタイヤ1が装着される。
【0011】
車両Mは、例えば、都市内での人や物などの輸送に使用される小型シャトルバスに属する。前記小型シャトルバスとは、全長が4m~7m、全幅2m程度であり、車両総重量が3t前後である車両を想定する。但し、本発明のタイヤ1は、上述の範囲の車両のみに採用されるものではなく、種々の車両に採用され得る。
【0012】
また、車両Mは、必ずしも人の輸送に限らず、物の輸送、移動店舗、移動オフィスなどとして用いられてもよい。車両Mは、例えば、自動運転機能を備えた電気自動車であるのが望ましい。また、車両Mは、都市内での人や物などの輸送に主眼が置かれているため、比較的低い走行速度レンジ(平均速度が50km/h程度)を想定している。このため、ウェット性能については重視されなくても良い。但し、車両Mは、このような態様に限定されるものではない。
【0013】
車両Mが電気自動車である場合、モータがリム内に配されるものが望ましい。また、この場合は、車両Mは、各車輪が独立して操舵が可能な独立操舵機能を備えることが好ましい。これにより、その場での転回等が容易になり、かつ、車両Mの車室空間を大きくすることができる。
【0014】
このような車両Mに作用される本実施形態のタイヤ1は、高いスペース効率が要求される。このため、タイヤ1は、リム径が小さいことや、タイヤの断面高さが小さいことが要求される。一方、車両Mは相応の重量を有しているため、タイヤ1には、高い耐荷重性能も要求される。
【0015】
図1は、正規状態におけるタイヤ1についての、回転軸を含む横断面図である。「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、前記正規状態で測定できない構成(例えば、タイヤ1の内部材である。)の寸法は、タイヤ1を出来るだけ前記正規状態に近似させた状態にして、測定された値である。
【0016】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0017】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0018】
タイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含む。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向外側に連なり、タイヤ半径方向に延びている。ビード部4は、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に連なっている。また、タイヤ1は、カーカス6を含む。カーカス6は、一対のビード部4の間を延びている。換言すれば、カーカス6は、一方のビード部4から、一方のサイドウォール部3、トレッド部2、他方のサイドウォール部3を通って、他方のビード部4まで延びている。
【0019】
カーカス6は、例えば、2枚のカーカスプライ6A、6Bで構成されている。これらのカーカスプライは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、一対のビード部4の間を延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。
【0020】
カーカスプライ6A、6Bは、複数のカーカスコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含む(図示省略)。カーカスコードは、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、例えば、タイヤ赤道Cに対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
本発明において、リムRのリム径RDは12~17インチである。また、タイヤ1の断面幅SWに対するタイヤの断面高さSHの比SH/SWは0.30~0.45である。タイヤ1の断面幅SWに対するリムRのリム幅RWの比RW/SWは0.78~0.99である。断面幅SWは、例えば、150~250mmとされる。
【0022】
リム径RDは、ビード部4のビードコア5によって嵌合されるリム本体部分の外径でありる。また、タイヤ1の断面幅SWは、タイヤ1の側壁に模様や文字を示す凸部(図示省略)がある場合は、これらを除いた幅に相当する。タイヤ1の断面高さSHは、タイヤの外径とリム径RDとの差の1/2に相当する。換言すれば、前記断面高さSHは、ビードベースラインBLからタイヤ1のタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離に相当する。ビードベースラインBLとは、リム径位置を通るタイヤ軸方向線を意味する。
【0023】
リムRのリム幅RWは、一方のリムフランジRfの内面から他方のリムフランジRfの内面までのタイヤ軸方向の距離に相当する。前記内面が傾斜している場合は、タイヤ1がリムRに装着されたときのビードコア5のタイヤ半径方向の中心位置で、前記距離が測定されるものとする。
【0024】
本発明のタイヤ1は、上述の通り、リム径RD及び断面高さSHが比較的小さく、かつ、タイヤの断面幅SWに対してリム幅RWが比較的大きい。このようなタイヤ1は、例えば、上述の車両M(図2に示す)に装着された際に車両空間内のスペース効率を上げ、かつ、モータがリム内に配される車両において、その収容スペースを十分に確保できる。また、このようなタイヤ1は、車両総重量を支持するために十分なエアボリュームを保持することができる。
【0025】
図3には、図1のタイヤ1のトレッド部2の拡大断面図が示されている。図3に示されるように、トレッド部2には、ベルト層7が配されている。ベルト層7は、カーカス6に隣接する第1ベルトプライ11と、第1ベルトプライ11のタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライ12とを含んでいる。第1ベルトプライ11及び第2ベルトプライ12のそれぞれは、タイヤ周方向に対して15~45°の角度で配列された複数のベルトコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含んでいる(図示省略)。第1ベルトプライ11のベルトコードと、第2ベルトプライ12のベルトコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜している。これにより、トレッド部2が効果的に補強される。
【0026】
図4には、第1ベルトプライ11及び第2ベルトプライ12のタイヤ軸方向の一方側の外端部の拡大図が示されている。図4に示されるように、本発明では、第1ベルトプライ11と第2ベルトプライ12との間の最大のゴムゲージTaは、1.0~3.0mmである。なお、前記最大のゴムゲージTaは、第1ベルトプライ11と第2ベルトプライ12とがタイヤ半径方向に重ねられた領域において、これら2つのプライ間の最大の距離を意味する。本実施形態では、第2ベルトプライ12のタイヤ軸方向の端において、前記最大のゴムゲージTaが構成されている。
【0027】
本発明のタイヤ1は、上述の車両M(図2に示す)に適用されるため、トレッド部2(図3に示す)のベルト層7には大きな負荷が作用する。本発明では、ベルト層7の第1ベルトプライ11と第2ベルトプライ12との間の最大のゴムゲージTaについて適正量を確保することで、ベルト層7の損傷を抑制することができる。なお、前記ゴムゲージTaが1.0mmよりも小さいと、歪が集中し易くなってベルト層7の耐久性が低下するおそれがある。また、前記ゴムゲージTaが3.0mmよりも大きいと、第1ベルトプライ11及び第2ベルトプライ12のプロファイルにおいて曲率が大きい箇所が生じ易くなり、結果的にベルト層7の耐久性が低下するおそれがある。
【0028】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0029】
図4に示されるように、第1ベルトプライ11には、第1ベルトプライ11のタイヤ軸方向の外端部11aをタイヤ半径方向の内外から覆う第1エッジカバーゴム16が配されているのが望ましい。同様に、第2ベルトプライ12には、第2ベルトプライ12のタイヤ軸方向の外端部12aをタイヤ半径方向の内外から覆う第2エッジカバーゴム17が配されているのが望ましい。このような第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17は、ベルトプライ間のゲージを大きく確保し、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端部7aに歪が集中するのを抑制し、ひいてはベルトプライ間のセパレーションを抑制することができる。
【0030】
第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17によってベルト層7の外端部7aのゴムボリュームが過度に大きくなると、燃費性能が悪化する場合がある。このため、第1エッジカバーゴム16の厚さt1、及び、第2エッジカバーゴム17の厚さt2は、それぞれ、0.5~2.0mmであるのが望ましい。これにより、燃費性能を維持しつつ、ベルト層7の損傷を抑制することができる。なお、前記厚さt1は、第1エッジカバーゴム16の平均の厚さを意味し、第1エッジカバーゴム16の断面積を、ベルトプライの外面に沿った長さで除した値に相当する。前記厚さt2も同様である。
【0031】
同様の観点から、第1エッジカバーゴム16のタイヤ軸方向の長さL1、及び、第2エッジカバーゴム17のタイヤ軸方向の長さL2は、それぞれ、ベルト層7のタイヤ軸方向の長さL5(図1に示す)の5%~10%であるのが望ましい。
【0032】
第1エッジカバーゴム16は、第1ベルトプライ11のタイヤ半径方向の内面を覆う内側部16iと、第1ベルトプライ11のタイヤ半径方向の外面を覆う外側部16oとを含む。本実施形態では、内側部16iと外側部16oとが同じゴムボリュームで構成されている。これにより、各種の変形に対するベルト層7の外端部7aの耐久性が向上する。
【0033】
別の実施形態では、第1エッジカバーゴム16において、外側部16oのゴムボリュームが、内側部16iのゴムボリュームよりも大きいものでも良い。このような実施形態では、ベルトプライ間のゲージを大きく確保しつつ、他の部分において第1エッジカバーゴム16のゴムボリュームを減らすことができる。したがって、燃費性能を維持しつつ、ベルト層7の損傷を抑制することができる。
【0034】
同様に、第2エッジカバーゴム17は、第2ベルトプライ12のタイヤ半径方向の内面を覆う内側部17iと、第2ベルトプライ12のタイヤ半径方向の外面を覆う外側部17oとを含む。本実施形態では、内側部17iと外側部17oとが同じゴムボリュームで構成されている。これにより、各種の変形に対するベルト層7の外端部7aの耐久性が向上する。
【0035】
別の実施形態では、第2エッジカバーゴム17において、内側部17iのゴムボリュームが、外側部17oのゴムボリュームよりも大きいものでも良い。このような実施形態では、ベルトプライ間のゲージを大きく確保しつつ、他の部分において第2エッジカバーゴム17のゴムボリュームを減らすことができる。したがって、燃費性能を維持しつつ、ベルト層7の損傷を抑制することができる。
【0036】
第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17には、ゴム成分として、例えば、天然ゴム又はイソプレンゴムが用いられる。これにより、ゴムとベルトコードとの接着性が向上し得る。また、これらのゴムは、フィラー(カーボンブラック)を比較的高い比率で含むのが望ましい。また、ゴムとベルトコードとの接着性をさらに向上させる観点から、これらのゴムは、例えば、コバルトを0.5~5.0phr含有するのが好ましい。
【0037】
第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17は、例えば、70℃における複素弾性率E*が5~15MPaであるのが望ましい。これにより、燃費性能とベルト層7の耐久性とがバランス良く向上する。なお、前記複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で、株式会社岩本製作所製の「粘弾性スペクトロメータ」を用いて測定した値である。
初期歪み:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:伸張
測定温度:70℃
【0038】
タイヤ半径方向において、第1ベルトプライ11と第2ベルトプライ12との間には、一対の第3ゴム18が配されているのが望ましい。なお、見易さを考慮し、図4では、第3ゴム18に、ハッチングが施されているが、図3では、第3ゴム18にハッチングが施されておらず、第3ゴム18が空白で示されている。図4に示されるように、第3ゴム18は、第2ベルトプライ12の外端部12aのタイヤ半径方向内側をタイヤ軸方向に延びている。より望ましい態様では、第3ゴム18は、第1ベルトプライ11のタイヤ軸方向の端まで延びている。このような第3ゴム18は、燃費性能を維持しつつ、ベルト層7の外端部7aの損傷をより一層抑制することができる。
【0039】
第3ゴム18の厚さt3は、例えば、0.5~2.0mmである。なお、前記厚さt3は、第3ゴム18の平均の厚さを意味し、第3ゴム18の断面積を、第3ゴム18の長さで除した値に相当する。
【0040】
図3に示されるように、一対の第3ゴム18のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL3は、ベルト層7のタイヤ軸方向の長さL5(図1に示す)の10%~30%であるのが望ましい。これにより、燃費性能とベルト層7の耐久性とがバランス良く向上する。
【0041】
第3ゴム18は、第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17(図4に示す)と同じゴムで構成されるのが望ましい。したがって、第3ゴム18には、上述の第1エッジカバーゴム16及び第2エッジカバーゴム17の特徴を適用することができ、ここでの説明は省略される。
【0042】
本実施形態では、ベルト層7のタイヤ半径方向外側にバンド層8が設けられている。バンド層8は、例えば、バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配されたバンドプライを含む。バンドプライは、例えば、バンドコードが螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライでも良い。このようなバンド層8は、トレッド部2を効果的に補強することができる。
【0043】
本実施形態のバンド層8は、ベルト層7の全体を覆う第1バンドプライ21と、第1バンドプライ21のタイヤ半径方向外側に配された第2バンドプライ22とを含む。第2バンドプライ22は、第1バンドプライ21のタイヤ軸方向の外端部を覆うエッジバンドプライである。したがって、本実施形態では、第1バンドプライ21のタイヤ半径方向外側に、一対の第2バンドプライ22が設けられている。
【0044】
第2バンドプライ22のタイヤ軸方向の長さL6は、第3ゴム18のタイヤ軸方向の長さL3の70%~90%である。このような第2バンドプライ22は、燃費性能を維持しつつ、ベルト層7の耐久性を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0046】
図1で示された基本構造を有するサイズ205/40R15の空気入りタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、比較例として、第1エッジカバーゴム及び第2エッジカバーゴムを備えておらず、第1ベルトプライと第2ベルトプライとの間の最大のゴムゲージTaが0.5mmである空気入りタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤのベルト層の耐久性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×7.0J
タイヤ内圧:520kPa
ベルト層のタイヤ軸方向の長さ:150mm
【0047】
<ベルト層の耐久性>
ドラム試験機上にテストタイヤを配置し、一定の縦荷重を負荷して一定速度で走行させ続け、ベルト層の外端部の損傷に起因する、トレッド部の損傷が発生したときの走行距離が計測された。結果は、比較例の前記走行距離を100とする指数であり、数値が大きい程、ベルト層の耐久性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示されるように、実施例1~8のタイヤは、ベルト層の耐久性が向上していることが理解できる。すなわち、本発明は、特定のタイヤサイズにおいて、ベルト層の損傷を抑制していることが確認できた。
【0050】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0051】
[本発明1]
リムに装着されて使用される空気入りタイヤであって、
前記リムのリム径RDは12~17インチであり、
タイヤの断面幅SWに対するタイヤの断面高さSHの比SH/SWは0.30~0.45であり、
前記タイヤの断面幅SWに対する前記リムのリム幅RWの比RW/SWは0.78~0.99であり、
前記空気入りタイヤは、トレッド部を備えており、
前記トレッド部には、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1ベルトプライと前記第2ベルトプライとの間の最大のゴムゲージは、1.0~3.0mmである、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記第1ベルトプライには、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内外から覆う第1エッジカバーゴムが配されており、
前記第2ベルトプライには、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端部をタイヤ半径方向の内側及び外側から覆う第2エッジカバーゴムが配されている、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
タイヤ半径方向において、前記第1ベルトプライと前記第2ベルトプライとの間には、一対の第3ゴムが配されており、
前記一対の第3ゴムは、前記第2ベルトプライの前記外端部のタイヤ半径方向内側をタイヤ軸方向に延びている、本発明2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記第3ゴムの厚さは、0.5~2.0mmである、本発明3に記載の空気入りタイヤ。[本発明5]
前記一対の第3ゴムのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記ベルト層のタイヤ軸方向の長さの10%~30%である、本発明3に記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記第1エッジカバーゴムの厚さ、及び、前記第2エッジカバーゴムの厚さは、それぞれ、0.5~2.0mmである、本発明2ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記第1エッジカバーゴムのタイヤ軸方向の長さ、及び、前記第2エッジカバーゴムのタイヤ軸方向の長さは、それぞれ、前記ベルト層のタイヤ軸方向の長さの5%~10%である、本発明2ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0052】
2 トレッド部
7 ベルト層
11 第1ベルトプライ
12 第2ベルトプライ
16 第1エッジカバーゴム
17 第2エッジカバーゴム
R リム
RD リム径
SW タイヤの断面幅
SH タイヤの断面高さ
RW リム幅
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、特定のタイヤサイズにおいて、ベルト層の損傷を抑制し得る空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
リムRのリム幅RWは、一方のリムフランジRFの内面から他方のリムフランジRFの内面までのタイヤ軸方向の距離に相当する。前記内面が傾斜している場合は、タイヤ1がリムRに装着されたときのビードコア5のタイヤ半径方向の中心位置で、前記距離が測定されるものとする。