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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084480
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】風煙道漏洩検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20240618BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20240618BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01M3/02 J
G01M3/02 L
F22B37/38 D
F22B37/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198772
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】河田 英憲
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB13
2G067BB22
2G067DD08
2G067DD17
2G067EE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】風煙道における漏洩を把握して、人体に対する安全性を確保した上で、漏洩に迅速に対処可能な、風煙道漏洩検知システムを提供する。
【解決手段】風煙道漏洩検知システム1は、ボイラーの上流の風道51が区画された複数の風道エリアに設置される第1のセンサーSEと、ボイラーの下流の煙道52が区画された複数の煙道エリアにそれぞれ設置される第2のセンサーSE及び第3のセンサーSEと、第1のセンサーSE乃至第3のセンサーSEが検知した第1乃至第3の検知データの異常の有無をそれぞれ判定する制御装置2と、制御装置2の判定結果に基づき警報を報知する警報部3を備え、第1のセンサーSEはボイラーで燃焼される燃焼気体の温度を検知し、第2のセンサーSEはボイラーから排出される排出気体の温度を検知し、第3のセンサーSEは排出気体が含有する有害物質の濃度を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所におけるボイラーの上流に配置される風道を通過する燃焼気体の第1の漏洩
と、前記ボイラーの下流に配置される煙道を通過する排出気体の第2の漏洩を検知する風
煙道漏洩検知システムであって、
前記風道が区画されてなる複数の風道エリアの少なくともいずれかに設置される第1の
センサーと、
前記煙道が区画されてなる複数の煙道エリアの少なくともいずれかにそれぞれ設置され
る第2及び第3のセンサーと、
前記第1乃至第3のセンサーが検知した第1乃至第3の検知データが入力され、入力さ
れた前記第1乃至第3の検知データの異常の有無をそれぞれ判定して判定結果を出力する
制御装置と、
前記判定結果が入力され、この判定結果に基づいて、警報を報知する警報部を備え、
前記第1のセンサーは、前記第1の検知データとして前記燃焼気体の温度を検知し、
前記第2のセンサーは、前記第2の検知データとして前記排出気体の温度を検知し、
前記第3のセンサーは、前記第3の検知データとして前記排出気体が含有する有害物質
の濃度を検知することを特徴とする風煙道漏洩検知システム。
【請求項2】
前記制御装置は、第1のデータセットを記憶する記憶部と、前記判定結果を演算する演
算部を備え、
前記第1のデータセットは、前記第1乃至第3の検知データと、前記第1乃至第3の検
知データの前記異常の有無を判定するための第1乃至第3の閾値が含まれ、
前記演算部は、前記記憶部を参照し、
前記第1乃至第3の検知データと、前記第1乃至第3の閾値をそれぞれ比較し、下記
の(1)乃至(3)に該当するか否かを判定し、前記判定結果として出力することを特徴
とする請求項1に記載の風煙道漏洩検知システム。
(1)前記第1の検知データが、前記第1の閾値以上となる
(2)前記第2の検知データが、前記第2の閾値以上となる
(3)前記第3の検知データが、前記第3の閾値以上となる
【請求項3】
前記記憶部は、前記第1のデータセットに加えて、第2のデータセットを記憶し、
前記第2のデータセットは、複数の前記風道エリアのうち、前記第1のセンサーの設
置箇所と関連付けられる前記風道エリア(以下、風道エリアAという。)の床面積S
と、複数の前記煙道エリアのうち、前記第2のセンサーの設置箇所と関連付けられる前
記煙道エリア(以下、煙道エリアBという。)の床面積SB2と、複数の前記煙道エリ
アのうち、前記第3のセンサーの設置箇所と関連付けられる前記煙道エリア(以下、煙道
エリアBという。)の床面積SB3と、第4乃至第6の閾値が含まれ、
前記第4の閾値は、前記風道エリアAに関する所定の床面積であり、
前記第5の閾値は、前記煙道エリアBに関する所定の床面積であり、
前記第6の閾値は、前記煙道エリアBに関する所定の床面積であり、
前記演算部は、前記記憶部を参照し、
前記床面積SA1のうち、前記(1)と判定された前記第1のセンサーに対応する床
面積SA1(1)と、前記第4の閾値を比較し、
前記床面積SB2のうち、前記(2)と判定された前記第2のセンサーに対応する床
面積SB2(2)と、前記第5の閾値を比較し、
前記床面積SB3のうち、前記(3)と判定された前記第3のセンサーに対応する床
面積SB3(3)と、前記第6の閾値を比較し、
前記(1)乃至(3)に加えて、下記の(4)乃至(6)に該当するか否かを判定し、
前記判定結果として出力することを特徴とする請求項2に記載の風煙道漏洩検知システム

(4)前記床面積SA1(1)が、前記第4の閾値以上となる
(5)前記床面積SB2(2)が、前記第5の閾値以上となる
(6)前記床面積SB3(3)が、前記第6の閾値以上となる
【請求項4】
前記記憶部は、前記第1及び第2のデータセットに加えて、第3のデータセットを記憶
し、
前記第3のデータセットは、前記風道の全体の風道総床面積SATと、前記煙道の全
体の煙道総床面積SBTと、第7乃至第9の閾値が含まれ、
前記第7の閾値は、前記風道エリアAに関する所定の床面積が、前記風道総床面積
ATに占める風道比率であり、
前記第8の閾値は、前記煙道エリアBに関する所定の床面積が、前記煙道総床面積
BTに占める煙道比率であり、
前記第9の閾値は、前記煙道エリアBに関する所定の床面積が、前記煙道総床面積
BTに占める煙道比率であり、
前記演算部は、前記記憶部を参照し、
前記(4)に該当するすべての前記床面積SA1(1)を合算した合算異常風道床面
積S4Tが、前記風道総床面積SATに占める異常風道比率KA1と、前記(5)に該当
するすべての前記床面積SB2(2)を合算した合算異常煙道床面積S5Tが、前記煙道
総床面積SBTに占める異常煙道比率KB2と、前記(6)に該当するすべての前記床面
積SB3(3)を合算した合算異常煙道床面積S6Tが、前記煙道総床面積SBTに占め
る異常煙道比率KB3を演算し、
前記異常風道比率KA1と、前記第7の閾値を比較するとともに、前記異常煙道比率
B2,KB3と、前記第8及び第9の閾値をそれぞれ比較し、
前記(1)乃至(6)に加えて、下記の(7)乃至(9)に該当するか否かを判定し
、前記判定結果として出力することを特徴とする請求項3に記載の風煙道漏洩検知システ
ム。
(7)前記異常風道比率KA1が、前記第7の閾値以上となる
(8)前記異常煙道比率KB2が、前記第8の閾値以上となる
(9)前記異常煙道比率KB3が、前記第9の閾値以上となる
【請求項5】
前記警報部は、表示部を備え、
前記記憶部は、前記第1乃至第3のデータセットに加えて、第4のデータセットを記憶
し、
前記第4のデータセットは、複数の前記風道エリアAと、複数の前記煙道エリアB
と、複数の前記煙道エリアBについての配置が含まれ、
前記演算部は、前記記憶部を参照し、
前記風道エリアAのうち、前記(1)、又は前記(4)、又は前記(7)に該当す
ると判定した場合の前記第1のセンサーにそれぞれ対応する風道エリアA1(1),A
(4),A1(7)を抽出し、
前記煙道エリアBのうち、前記(2)、又は前記(5)、又は前記(8)に該当す
ると判定した場合の前記第2のセンサーにそれぞれ対応する煙道エリアB2(2),B
(5),B2(8)を抽出し、
前記煙道エリアBのうち、前記(3)、又は前記(6)、又は前記(9)に該当す
ると判定した場合の前記第3のセンサーにそれぞれ対応する煙道エリアB3(3),B
(6),B3(9)を抽出し、
前記表示部に、前記警報として、抽出した前記風道エリアA1(1),A1(4),A
1(7)と、前記煙道エリアB2(2),B2(5),B2(8),B3(3),B3(
6),B3(9)のいずれかを、それぞれ図示させることを特徴とする請求項4に記載の
風煙道漏洩検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所におけるボイラーに接続される風煙道を通過する気体の漏洩を検
知する風煙道漏洩検知システムに係り、特に、風煙道に設置されるセンサーの検知データ
に基づいて、風煙道の周囲に立ち入り可能か否かを把握可能な風煙道漏洩検知システムに
関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラーに接続される風煙道を構成するケーシングの損傷に伴う燃焼気体、排出
気体の漏洩状況については、ユニットパトロール時において、ケーシングの外装板の剥離
の有無や燃焼気体等の漏洩の有無を、主に目視にて確認している。
そのため、万一にも漏洩箇所の発見が遅れると、ケーシングの腐食が進行し損傷が広範
囲に及ぶおそれがある。
また、燃焼気体は高温高圧の圧縮空気であり、排出気体は人体に有害な物質であるNO
x、SOx等を含有していることから、漏洩が発生すると、安全・健康上、漏洩箇所付近
への立ち入りが禁止される。そのため、発見した漏洩箇所における漏洩の進行状況を監視
することや、その他の漏洩箇所を発見することが一層困難となる。
さらに、漏洩が発生すると、安全・健康上の課題ばかりでなく、燃焼効率の低下や煙道
に設置されている脱硫装置の処理ガス量の増加、漏洩箇所付近の電気機器の熱損傷の発生
といった運転上、設備上の課題も出てくる。
このような課題を解決するため、近年、風道や煙道の漏洩発生を容易に検出するための
技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「高圧空気漏洩検出方法」という名称で、高圧空気の漏洩と漏洩箇所を
容易に検出する高圧空気漏洩検出方法に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は
、空気圧縮機から末端の空圧機器までの空気配管ラインにおける高圧空気の漏洩を検出す
るものにおいて、高圧空気配管ラインを1個もしくは複数の空圧機器を含む配管ブロック
部として各配管ブロック部間に仕切り弁を設けるとともに各配管ブロック部には放氣弁を
設け、各配管ブロック部の放氣弁を開いて大気に開放してから閉止し、空気圧縮機で各配
管ブロック部を昇圧し、配管ブロック部毎に圧力データを測定し、その変化から高圧空気
の漏洩を検出することを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、設備敷設当初や漏洩を修理し復旧した直後に
測定した圧力データを基準値として、点検時に測定した圧力データと比較することにより
、各配管ブロック部の高圧空気の漏洩を容易に検出することができる。
これにより、空気漏洩を無くし、空気圧縮機の運転エネルギ損失を低減することができ
る。
【0004】
次に、特許文献2には「煙道損傷状況監視方法」という名称で、煙道の損傷状況を監視
することができる煙道損傷状況監視方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、燃焼設備から生じる排ガスが通る煙道と、この煙道の
流路に設けられる脱硫設備と、この脱硫設備に排ガスを送給する送風設備と、煙道内のガ
ス流量を計測する流量計と、煙道の入口側及び出口側に設けられるO濃度検出手段を備
える煙道の損傷状況を監視するための方法であって、流量計の実測値(E)と、理論排
ガス量(B)と、O濃度検出手段から得られるO濃度計測値を用いて求められる理
論増加ガス量(C)と、に基づいて流量計の異常の有無を判定するステップS1と、脱
硫設備の処理可能流量(A)と、理論排ガス量(B)と、理論増加ガス量(C)と、
に基づいて煙道の損傷が修理を要する状態であるか否かを判定するステップS2を備えて
いることを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、ステップS1と、ステップS2によって、点
検のために発電設備の運転を停止する際に、併せて煙道の修理を実施することができるた
め、燃焼設備と煙道を備えた施設を安全に運転することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-251798号公報
【特許文献2】特開2022-70554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明においては、配管ブロック部毎に高圧空気の漏洩を検出す
ることができる。ただし、漏洩を検出した後で修理に取り掛かるには、漏洩箇所付近の環
境が、人が立ち入り可能な程度の安全性を有しているか否かを確認する必要がある。
この点、特許文献1に開示された発明においては、配管ブロック部毎の圧力データを測
定しているが、この圧力データに基づいて、上記の安全性の有無を判断することまではし
ていない。
そのため、特許文献1に開示された発明は、漏洩発生時における安全性の有無を直ちに
把握することが困難であるから、人体に対する安全性を確保した上で、漏洩に迅速に対処
するという現場の要請に必ずしも対応できるとはいえない。その結果、漏洩修理の着手に
手間取り、運転エネルギ損失の低減を十分に実現できないおそれがある。
【0007】
次に、特許文献2に開示された発明においては、点検のために発電設備の運転を停止す
る際に、併せて煙道の修理を実施することができるものの、発電設備の運転を停止後に、
修理のための立ち入りが可能か否かについての安全性の判断まではしていない。
したがって、特許文献2に開示された発明においても、特許文献1に開示された発明と
同様に、上記の現場の要請に必ずしも対応できるとはいえないおそれがある。
その結果、人が立ち入るための適時把握をすることが困難となり、例えば、煙道での損
傷の発見から修理に至るまでに、必要以上の期間を設けることになってしまい、安全では
あるが迅速に修理を開始することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、風煙道における漏洩
を直ちに把握することで、人体に対する安全性を確保した上で、漏洩に迅速に対処すると
いう現場の要請に対応可能な、風煙道漏洩検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、火力発電所におけるボイラーの上流に配置さ
れる風道を通過する燃焼気体の第1の漏洩と、ボイラーの下流に配置される煙道を通過す
る排出気体の第2の漏洩を検知する風煙道漏洩検知システムであって、風道が区画されて
なる複数の風道エリアの少なくともいずれかに設置される第1のセンサーと、煙道が区画
されてなる複数の煙道エリアの少なくともいずれかにそれぞれ設置される第2及び第3の
センサーと、第1乃至第3のセンサーが検知した第1乃至第3の検知データが入力され、
入力された第1乃至第3の検知データの異常の有無をそれぞれ判定して判定結果を出力す
る制御装置と、判定結果が入力され、この判定結果に基づいて、警報を報知する警報部を
備え、第1のセンサーは、第1の検知データとして燃焼気体の温度を検知し、第2のセン
サーは、第2の検知データとして排出気体の温度を検知し、第3のセンサーは、第3の検
知データとして排出気体が含有する有害物質の濃度を検知することを特徴とする。
【0010】
このような構成の発明において、ボイラーの燃料は、例えば、石炭、木質ペレット、重
油、天然ガスといったものであり、特に限定されない。
また、第1及び第2のセンサーとして、気体の温度を検知可能な温度計が用いられ、第
3のセンサーとして、例えば、有害物質の濃度を検知可能なガス濃度計が用いられる。
さらに、第1乃至第3のセンサーの各台数は、同一であっても、異なっていてもよい。
そして、第2のセンサーと、第3のセンサーは、いずれも同一の煙道エリアに設置される
ほか、異なる煙道エリアに設置されてもよい。
なお、第1の検知データの異常の有無とは、第1の漏洩の有無やその軽重であって、こ
れらは、制御装置が、例えば第1の検知データと予め設定した閾値とを比較して判定する
。第2及び第3の検知データの異常の有無についても、これと同様である。
【0011】
上記構成の発明においては、第1のセンサーが、複数の風道エリアの少なくともいずれ
かに設置されるとともに、第2及び第3のセンサーが、それぞれ複数の煙道エリアの少な
くともいずれかに設置されるため、制御装置が判定結果を出力すると、第1のセンサーが
設置される風道エリア毎と、第2及び第3のセンサーが設置される煙道エリア毎に異常箇
所が発見されることになる。
【0012】
さらに、制御装置は、第1乃至第3の検知データに異常がないと判定した場合、異常が
あると判定した場合、の双方において判定結果を出力するほか、異常があると判定した場
合のみ、判定結果を出力するものであってもよい。また、警報部は、入力された判定結果
において、第1乃至第3の検知データに異常がある場合に、警報を報知する。
なお、制御装置が、第1乃至第3のセンサーに対して、一定時間毎に継続して、または
所望のタイミングで、第1乃至第3の検知データを検知させる設定としてもよい。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、制御装置は、第1のデータセットを記憶する記憶
部と、判定結果を演算する演算部を備え、第1のデータセットは、第1乃至第3の検知デ
ータと、第1乃至第3の検知データの異常の有無を判定するための第1乃至第3の閾値が
含まれ、演算部は、記憶部を参照し、第1乃至第3の検知データと、第1乃至第3の閾値
をそれぞれ比較し、下記の(1)乃至(3)に該当するか否かを判定し、判定結果として
出力することを特徴とする。
(1)第1の検知データが、第1の閾値以上となる
(2)第2の検知データが、第2の閾値以上となる
(3)第3の検知データが、第3の閾値以上となる
【0014】
このような構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、制御装置が備える演算
部が、(1)乃至(3)に該当するか否かを判定するため、燃焼気体の第1の漏洩がある
ことと、排出気体の第2の漏洩があること、の少なくともいずれかがそれぞれの発生場所
とともに把握される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、記憶部は、第1のデータセットに加えて、第2の
データセットを記憶し、第2のデータセットは、複数の風道エリアのうち、第1のセンサ
ーの設置箇所と関連付けられる風道エリア(以下、風道エリアAという。)の床面積S
A1と、複数の煙道エリアのうち、第2のセンサーの設置箇所と関連付けられる煙道エリ
ア(以下、煙道エリアBという。)の床面積SB2と、複数の煙道エリアのうち、第3
のセンサーの設置箇所と関連付けられる煙道エリア(以下、煙道エリアBという。)の
床面積SB3と、第4乃至第6の閾値が含まれ、第4の閾値は、風道エリアAに関する
所定の床面積であり、第5の閾値は、煙道エリアBに関する所定の床面積であり、第6
の閾値は、煙道エリアBに関する所定の床面積であり、演算部は、記憶部を参照し、床
面積SA1のうち、(1)と判定された第1のセンサーに対応する床面積SA1(1)
、第4の閾値を比較し、床面積SB2のうち、(2)と判定された第2のセンサーに対応
する床面積SB2(2)と、第5の閾値を比較し、床面積SB3のうち、(3)と判定さ
れた第3のセンサーに対応する床面積SB3(3)と、第6の閾値を比較し、(1)乃至
(3)に加えて、下記の(4)乃至(6)に該当するか否かを判定し、判定結果として出
力することを特徴とする。
(4)床面積SA1(1)が、第4の閾値以上となる
(5)床面積SB2(2)が、第5の閾値以上となる
(6)床面積SB3(3)が、第6の閾値以上となる
【0016】
このような構成の発明において、第4の閾値とは、風道エリアAの床面積SA1(1
を、風道エリアAの周囲の空間において、第1の漏洩の影響が及んでいる範囲、すな
わち立ち入りが禁止される範囲を把握するための基準として用いるものである。同様に、
第5及び第6の閾値は、煙道エリアBの床面積SB2(2)と、煙道エリアBの床面
積SB3(3)を、それぞれ煙道エリアB,Bの周囲の空間において、第2の漏洩の
影響が及んでいる範囲、すなわち立ち入りが禁止される範囲を把握するための基準として
用いるものである。
上記構成の発明においては、第2の発明の作用に加えて、演算部が、(4)乃至(6)
に該当するか否かを判定する。このうち、演算部が、(4)に該当すると判定する場合で
は、風道エリアAのうち、燃焼気体の第1の漏洩が発生したことにより、高温となって
いる範囲が一定以上になっているものが抽出される。
同様に、演算部が、(5)に該当すると判定する場合では、煙道エリアBのうち、排
出気体の第2の漏洩が発生したことにより、高温となっている範囲が一定以上になってい
るものが抽出される。
また、演算部が、(6)に該当すると判定する場合では、煙道エリアBのうち、第2
の漏洩が発生したことにより、有害物質が高濃度となっている範囲が一定以上になってい
るものが抽出される。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、記憶部は、第1及び第2のデータセットに加えて
、第3のデータセットを記憶し、第3のデータセットは、風道の全体の風道総床面積S
と、煙道の全体の煙道総床面積SBTと、第7乃至第9の閾値が含まれ、第7の閾値は
、風道エリアAに関する所定の床面積が、風道総床面積SATに占める風道比率であり
、第8の閾値は、煙道エリアBに関する所定の床面積が、煙道総床面積SBTに占める
煙道比率であり、第9の閾値は、煙道エリアBに関する所定の床面積が、煙道総床面積
BTに占める煙道比率であり、演算部は、記憶部を参照し、(4)に該当するすべての
床面積SA1(1)を合算した合算異常風道床面積S4Tが、風道総床面積SATに占め
る異常風道比率KA1と、(5)に該当するすべての床面積SB2(2)を合算した合算
異常煙道床面積S5Tが、煙道総床面積SBTに占める異常煙道比率KB2と、(6)に
該当するすべての床面積SB3(3)を合算した合算異常煙道床面積S6Tが、煙道総床
面積SBTに占める異常煙道比率KB3を演算し、異常風道比率KA1と、第7の閾値を
比較するとともに、異常煙道比率KB2,KB3と、第8及び第9の閾値をそれぞれ比較
し、(1)乃至(6)に加えて、下記の(7)乃至(9)に該当するか否かを判定し、判
定結果として出力することを特徴とする。
(7)異常風道比率KA1が、第7の閾値以上となる
(8)異常煙道比率KB2が、第8の閾値以上となる
(9)異常煙道比率KB3が、第9の閾値以上となる
【0018】
このような構成の発明において、第7の閾値とは、異常風道比率KA1を、風道全体の
周囲の空間において、第1の漏洩の影響が及んでいる範囲を把握するための基準として用
いるものである。同様に、第8及び第9の閾値とは、煙道全体の周囲の空間において、そ
れぞれ第2の漏洩の影響が及んでいる範囲を把握するための基準として用いるものである

上記構成の発明においては、第3の発明の作用に加えて、演算部が、(7)乃至(9)
に該当するか否かを判定する。このうち、演算部が、(7)に該当すると判定する場合で
は、燃焼気体の第1の漏洩が発生したことにより、風道全体の周囲で高温となっている範
囲が、一定以上になっていることが検知される。
同様に、演算部が、(8)に該当すると判定する場合では、排出気体の第2の漏洩が発
生したことにより、煙道全体の周囲で高温となっている範囲が、一定以上になっているこ
とが検知される。
また、演算部が、(9)に該当すると判定する場合では、第2の漏洩により、煙道全体
の周囲で有害物質が高濃度となっている範囲が、一定以上になっていることが検知される
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、警報部は、表示部を備え、記憶部は、第1乃至第
3のデータセットに加えて、第4のデータセットを記憶し、第4のデータセットは、複数
の風道エリアAと、複数の煙道エリアBと、複数の煙道エリアBについての配置が
含まれ、演算部は、記憶部を参照し、風道エリアAのうち、(1)、又は(4)、又は
(7)に該当すると判定した場合の第1のセンサーにそれぞれ対応する風道エリアA1(
1),A1(4),A1(7)を抽出し、煙道エリアBのうち、(2)、又は(5)、
又は(8)に該当すると判定した場合の第2のセンサーにそれぞれ対応する煙道エリアB
2(2),B2(5),B2(8)を抽出し、煙道エリアBのうち、(3)、又は(6
)、又は(9)に該当すると判定した場合の第3のセンサーにそれぞれ対応する煙道エリ
アB3(3),B3(6),B3(9)を抽出し、表示部に、警報として、抽出した風道
エリアA1(1),A1(4),A1(7)と、煙道エリアB2(2),B2(5),B
2(8),B3(3),B3(6),B3(9)のいずれかを、それぞれ図示させること
を特徴とする。
【0020】
このような構成の発明においては、第4の発明の作用に加えて、演算部が、警報部の表
示部に、抽出した風道エリアA1(1)乃至A1(7)と、煙道エリアB2(2)乃至B
3(9)のいずれかを、それぞれ図示させることから、(1)乃至(9)のそれぞれに該
当する場合の風道エリアAと、煙道エリアB,Bの各配置が把握される。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、第1のセンサーが設置される風道エリア毎と、第2及び第3のセ
ンサーが設置される煙道エリア毎に異常箇所が発見されるため、第1の漏洩が発生してい
る風道エリアと、第2の漏洩が発生している煙道エリアを発見することができる。
これにより、異常箇所が発見された風道エリアの周囲と煙道エリアの周囲への立ち入り
が可能であるか否かを推測できる。そのため、風煙道の安全性の有無を直ちに把握するこ
とができる。
【0022】
さらに、第1乃至第3のセンサーは、それぞれ燃焼気体の温度、排出気体の温度、排出
気体が含有する有害物質の濃度という、人体に対する安全性の指標となる値を検知するた
め、異常箇所が発見された風道エリアの周囲と煙道エリアの周囲への立ち入りが可能であ
るか否かを把握できる。
したがって、第1の発明によれば、人体に対する安全性を確保した上で、第1及び第2
の漏洩に迅速に対処するという現場の要請に対応可能である。
【0023】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、演算部によって、燃焼気体の第1の
漏洩があることと、排出気体の第2の漏洩があること、の少なくともいずれかがそれぞれ
の発生場所とともに把握されるため、第1及び第2の漏洩が少なくともどの程度であるも
のかということと、その発生場所を同時に認識することができる。
【0024】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、風道エリアAと、煙道エリアB
,Bのうち、それぞれ周囲が高温となっている範囲や有害物質の濃度が高くなっている
範囲が一定以上になっているものが抽出されるため、周囲への立ち入りが危険である風道
エリアAと、煙道エリアB,Bを具体的に特定することができる。
【0025】
第4の発明によれば、第3の発明の効果に加えて、風道全体及び煙道全体において、高
温となっている範囲や有害物質の濃度が高くなっている範囲が一定以上になっていること
が検知されるため、風道全体及び煙道全体で、周囲への立ち入りが危険である範囲が一定
以上に拡大しているか否かを判断することができる。
【0026】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加えて、(1)乃至(9)のそれぞれに該当
する場合の風道エリアAと、煙道エリアB,Bの各配置が表示されるため、これら
の風道エリアAと、煙道エリアB,Bを、視覚的に認識することができる。よって
、これらの風道エリアA等の配置と、その周囲の安全性がどのような理由で確保されて
いないのかを、同時に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例に係る風煙道漏洩検知システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る風煙道漏洩検知システムを構成する第1乃至第3のセンサーの配置を示す平面図である。
図3】実施例に係る風煙道漏洩検知システムの処理工程を示す工程図である。
図4】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例に係る風煙道漏洩検知システムの風道についての処理結果である。
図5】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例に係る風煙道漏洩検知システムの煙道についての処理結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0028】
本発明の実施の形態に係る風煙道漏洩検知システムについて、図1乃至図5を用いて詳
細に説明する。図1は、実施例に係る風煙道漏洩検知システムの構成を示すブロック図で
ある。図2は、実施例に係る風煙道漏洩検知システムを構成する第1乃至第3のセンサー
の配置を示す平面図である。
図1及び図2に示すように、実施例に係る風煙道漏洩検知システム1は、火力発電所に
おけるボイラー50の上流に配置される風道51を通過する燃焼気体53の第1の漏洩と
、ボイラー50の下流に配置される煙道52を通過する排出気体55の第2の漏洩を検知
する風煙道漏洩検知システムであって、第1のセンサーSEと、第2のセンサーSE
と、第3のセンサーSEと、制御装置2と、警報部3を備える。
【0029】
このうち、第1のセンサーSEは、風道51を構成するケーシングの外装板の外表面
に設置される温度計であり、第1の検知データとして燃焼気体53の温度を検知する。こ
れは、外装板の外表面の温度が、ケーシングの損傷箇所から漏洩した燃焼気体53の温度
と等価であると考えられるためである。
また、第2のセンサーSEは、煙道52を構成するケーシングの外装板のおもて面に
それぞれ設置される温度計であり、第2の検知データとして排出気体55の温度を検知す
る。これは、外装板の外表面の温度が、ケーシングの損傷箇所から漏洩した排出気体55
の温度と等価であると考えられるためである。
次に、第3のセンサーSEは、煙道52を構成するケーシングの外装板のおもて面に
設置されるガス濃度計であって、第3の検知データとして排出気体55が含有する有害物
質の濃度を検知する。これは、外装板のおもて面で検知する有害物質の濃度が、ケーシン
グの損傷箇所から漏洩した濃度に最も近いと考えられるためである。
そして、これらの第1のセンサーSEと、第2のセンサーSEと、第3のセンサー
SEは、それぞれ通信経路4a,4a,4aを介して、制御装置2の通信部2e
と通信可能に構成される。
なお、第1のセンサーSE乃至第3のセンサーSEは、いずれも防爆性と耐熱性を
有していることが望ましい。
【0030】
次に、制御装置2は、第1のセンサーSEと、第2のセンサーSEと、第3のセン
サーSEが検知した第1乃至第3の検知データが入力され、入力された第1乃至第3の
検知データの異常の有無をそれぞれ判定して判定結果を出力する。
具体的には、制御装置2は、パーソナルコンピューターであって、演算部2aと、記憶
部2bと、表示部2cと、スピーカー2dと、通信部2eを備える。
このうち、演算部2aは、記憶部2b等のすべての構成要素の動作を制御するCPUで
ある。
【0031】
また、記憶部2bは、第1乃至第4のデータセットや、演算部2aが演算した判定結果
等のすべてのデータを時系列で記憶するメモリーである。
ここで、第1乃至第4のデータセットについて説明すると、まず、第1のデータセット
は、第1乃至第3の検知データと、第1乃至第3の検知データの異常の有無を判定するた
めの第1乃至第3の閾値が含まれる。
【0032】
次に、第2のデータセットは、複数の風道エリアAのうち、第1のセンサーSEの設
置箇所と関連付けられる風道エリア(以下、風道エリアAという。)の床面積SA1
、複数の煙道エリアBのうち、第2のセンサーSEの設置箇所と関連付けられる煙道エ
リア(以下、煙道エリアBという。)の床面積SB2と、複数の煙道エリアBのうち、
第3のセンサーSEの設置箇所と関連付けられる煙道エリア(以下、煙道エリアB
いう。)の床面積SB3と、第1乃至第3の検知データの異常の有無を判定するための第
4乃至第6の閾値が含まれる。
【0033】
さらに、第3のデータセットは、風道51の全体の風道総床面積SATと、煙道52の
全体の煙道総床面積SBTと、第1乃至第3の検知データの異常の有無を判定するための
第7乃至第9の閾値が含まれる。
そして、第4のデータセットは、複数の風道エリアAと、複数の煙道エリアBと、
複数の煙道エリアBについての、共通する座標上での配置及び立入禁止に関する立入禁
止情報が含まれる。なお、第1乃至第9の閾値と、立入禁止情報については、後に説明す
る。
【0034】
続いて、表示部2cは、判定結果や警報等を文字情報や画像情報として表示するモニタ
ーであり、スピーカー2dは警報等を音情報として発報する。そして、通信部2eは、前
述のとおり、通信経路4a等を介して、第1のセンサーSE等と通信することに加え
て、通信経路4bを介して、警報部3の通信部3eと通信可能に構成される。
【0035】
また、警報部3は、制御装置2が出力した判定結果が入力され、この判定結果に基づい
て、警報を報知する。
具体的には、警報部3も、パーソナルコンピューターであって、制御部3aと、記憶部
3bと、表示部3cと、スピーカー3dと、通信部3eを備える。
このうち、制御部3aは、記憶部3b等のすべての構成要素の動作を制御するCPUで
ある。また、記憶部3bは、制御装置2から送信された第1乃至第3の検知データ、判定
結果、警報等のすべてのデータを時系列で記憶するメモリーである。
さらに、表示部3cは、制御装置2の表示部2cと同様の機能を有し、スピーカー3d
は、制御装置2のスピーカー2dと同様の機能を有している。そして、通信部3eは、前
述のとおり、通信経路4bを介して、制御装置2の通信部2eと通信可能に構成される。
【0036】
図2に示すように、風煙道漏洩検知システム1のうち、第1のセンサーSEは、風道
51が図中破線で区画されてなる8箇所の風道エリア(以下、風道エリアA11~A18
という。)のすべてに、それぞれ1台ずつ設置される。よって、風道エリアA11~A
は、いずれも第1のセンサーSEの設置箇所と関連付けられる風道エリアAである

第2のセンサーSEは、煙道52が図中破線で区画されてなる8箇所の煙道エリア(
以下、煙道エリアB21~B28という。)のすべてに、それぞれ1台ずつ設置される。
よって、煙道エリアB21~B28は、いずれも第2のセンサーSEの設置箇所と関連
付けられる煙道エリアBである。
第3のセンサーSEは、煙道エリアB31~B38のすべてに、それぞれ1台ずつ設
置される。よって、煙道エリアB31~B38は、いずれも第3のセンサーSEの設置
箇所と関連付けられる煙道エリアBである。なお、本実施例では、煙道エリアB31
38は、煙道エリアB21~B28とそれぞれ一致しているため、その図示を省略する
【0037】
また、燃焼気体53は、押込通風機54から送出され、風道エリアA11~A18を通
過してボイラー50へ送気される。そして、排出気体55は、ボイラー50から排出され
、煙道エリアB21~B28,B31~B38と、乾式電気集塵装置56、脱硫装置57
を通過して煙突58へ送気される。
【0038】
次に、実施例に係る風煙道漏洩検知システムの処理工程について、図3を用いて説明す
る。図3は、実施例に係る風煙道漏洩検知システムの処理工程を示す工程図である。
図3に示すように、風煙道漏洩検知システム1は、風煙道漏洩検知方法100を実行す
る。風煙道漏洩検知方法100は、ステップS1のデータ検知工程乃至ステップS5の警
報報知工程を備える。以下、各工程について、説明する。
まず、ステップS1のデータ検知工程では、風道51に設置される第1のセンサーSE
が第1の検知データを検知し、煙道52に設置される第2のセンサーSEが第2の検
知データを検知し、煙道52に設置される第3のセンサーSEが第3の検知データを検
知する。これにより、第1のセンサーSEが設置される風道エリアA毎と、第2のセ
ンサーSE及び第3のセンサーSEが設置される煙道エリアA,A毎に異常箇所
が発見される。
検知された第1乃至第3の検知データは、それぞれ通信経路4a,4a、4a
介し、制御装置2の通信部2eへ送信される。なお、第1のセンサーSE乃至第3のセ
ンサーSEは、演算部2aにより、一定時間毎に継続して、または所望のタイミングで
、第1及び第3の検知データを検知するように設定されている。
【0039】
次に、ステップS2の検知データ判定工程では、制御装置2の演算部2aが、記憶部2
bを参照し、受信した第1乃至第3の検知データと、第1乃至第3の閾値をそれぞれ比較
し、下記の(1)乃至(3)に該当するか否かを判定し、判定結果として出力する。出力
された判定結果は、第1の出力結果として、記憶部2bに記憶される。
(1)第1の検知データが、第1の閾値以上となる
(2)第2の検知データが、第2の閾値以上となる
(3)第3の検知データが、第3の閾値以上となる
ここで、第1乃至第3の閾値は、それぞれ、第1乃至第3の検知データの異常の有無を
判定するための基準となる値であり、任意の値に設定することができる。具体例として、
第1の閾値は40℃に、第2の閾値も40℃に、第3の閾値は特定の有害物質の濃度につ
いて3ppmに設定されている。
【0040】
次に、ステップS3の床面積判定工程は、(1)に該当する第1のセンサーSEに対
応する風道エリアAの床面積SA1(1)と、(2)に該当する第2のセンサーSE
対応する煙道エリアBの床面積SB2(2)と、(3)に該当する第3のセンサーSE
が設置される煙道エリアBの床面積SB3(3)が、それぞれ一定以上になっている
場合を検知し、第1及び第2の漏洩が発生したことにより、高温となっている風道エリア
と、煙道エリアBと、ガス濃度が高くなっている煙道エリアBを特定するための
工程である。
ステップS3の床面積判定工程では、演算部2aが、記憶部2bを参照し、床面積S
のうち、(1)と判定された第1のセンサーSEに対応する床面積SA1(1)と、
第4の閾値を比較するとともに、床面積SB2のうち、(2)と判定された第2のセンサ
ーSEに対応する床面積SB2(2)と、第5の閾値を比較する。
さらに、演算部2aは、床面積SB3のうち、(3)と判定された第3のセンサーSE
に対応する床面積SB3(3)と、第6の閾値を比較する。
【0041】
そして、演算部2aは、(1)乃至(3)に加えて、下記の(4)乃至(6)に該当す
るか否かを判定し、判定結果として出力する。出力された判定結果は、第2の出力結果と
して、記憶部2bに記憶される。
(4)床面積SA1(1)が、第4の閾値以上となる
(5)床面積SB2(2)が、第5の閾値以上となる
(6)床面積SB3(3)が、第6の閾値以上となる
【0042】
ここで、第4乃至第6の閾値は、それぞれ、第1及び第2の漏洩が発生したことによる
影響がある風道エリアAと、煙道エリアB,Bを把握するための基準となる値であ
る。このうち、第4の閾値は、風道エリアAに関する所定の床面積であり、第5の閾値
は、煙道エリアBに関する所定の床面積であり、第6の閾値は、煙道エリアBに関す
る所定の床面積である。
第4乃至第6の閾値は、任意の値、例えば、1mにそれぞれ設定されている。
【0043】
さらに、ステップS3の床面積判定工程において、演算部2aは、(4)の床面積S
1(1)のうち、第4の閾値以上となる異常床面積Sを抽出し、この異常床面積S
対応する風道エリアAを抽出する。
加えて、演算部2aは、(5)の床面積SB2(2)のうち、第5の閾値以上となる異
常床面積Sを抽出し、この異常床面積Sに対応する煙道エリアBを抽出する。そし
て、演算部2aは、(6)の床面積SB3(3)のうち、第6の閾値以上となる異常床面
積Sを抽出し、この異常床面積Sに対応する煙道エリアBを抽出する。これらの抽
出された風道エリアA,煙道エリアB,Bは、いずれも立ち入りが禁止されるべき
ものであり、第2の出力結果に加えられて、記憶部2bに記憶される。
【0044】
さらに、ステップS4の比率判定工程は、風道51全体において高温となっている範囲
と、煙道52全体において高温となっている範囲やガス濃度が高くなっている範囲を特定
するための工程である。
風道51全体において高温となっている範囲は、演算部2aが異常風道比率KA1を演
算することで把握される。この異常風道比率KA1は、(4)に該当するすべての床面積
A1(1)を合算した合算異常風道床面積S4Tが、風道51の全体の風道総床面積S
ATに占める比率である。
煙道52全体において高温となっている範囲は、演算部2aが異常煙道比率KB2を演
算することで把握される。この異常煙道比率KB2は、(5)に該当するすべての床面積
B2(2)を合算した合算異常煙道床面積S5Tが、煙道52の全体の煙道総床面積S
BTに占める比率である。
煙道52全体においてガス濃度が高くなっている範囲は、演算部2aが異常煙道比率K
B3を演算することで把握される。この異常煙道比率KB3は、(6)に該当するすべて
の床面積SB3(3)を合算した合算異常煙道床面積S6Tが、煙道総床面積SBTに占
める比率である。
【0045】
ステップS4の比率判定工程では、演算部2aが、異常風道比率KA1と、第7の閾値
を比較するとともに、異常煙道比率KB2,KB3と、第8及び第9の閾値をそれぞれ比
較する。
そして、演算部2aは、(1)乃至(6)に加えて、下記の(7)乃至(9)に該当す
るか否かを判定し、判定結果として出力する。これらの(7)乃至(9)に対応する風道
エリアA,煙道エリアB,Bは、いずれも立ち入りが禁止されるべきものであり、
出力された判定結果と、異常風道比率KA1と、異常煙道比率KB2,KB3は、第3の
出力結果として、記憶部2bに記憶される。
(7)異常風道比率KA1が、第7の閾値以上となる
(8)異常煙道比率KB2が、第8の閾値以上となる
(9)異常煙道比率KB3が、第9の閾値以上となる
【0046】
ここで、第7乃至第9の閾値は、それぞれ、第1及び第2の漏洩が発生したことによる
影響がある風道エリアAの合算異常風道床面積S4Tと、煙道エリアBの合算異常煙
道床面積S5Tと、煙道エリアBの合算異常煙道床面積S6Tを把握するための基準と
なる値である。
このうち、第7の閾値は、風道エリアAに関する所定の床面積が、風道総床面積S
に占める風道比率であり、第8の閾値は、煙道エリアBに関する所定の床面積が、煙
道総床面積SBTに占める煙道比率であり、第9の閾値は、煙道エリアBに関する所定
の床面積が、煙道総床面積SBTに占める煙道比率である。
第7乃至第9の閾値は、任意の値、例えば、50%にそれぞれ設定され、記憶部2bに
記憶されている。
【0047】
ステップS5の警報報知工程は、ステップS5-1の検知データ表示工程と、ステップ
S5-2のエリア表示工程からなる。
ステップS5-1の検知データ表示工程は、演算部2aが、記憶部2bを参照し、表示
部3cに対して、風道エリアA11~A18における第1の検知データと、煙道エリアB
21~B28における第2の検知データと、煙道エリアB31~B38における第3の検
知データと、第1の出力結果において、(1)乃至(3)に該当する場合の警報と、該当
しない場合の状況を、文字情報によって表示させる。
警報部3は、制御装置2から送信されたすべてのデータを記憶部3bに記憶しているた
め、制御部3aは、記憶部3bからこれらのデータを読み出して表示部3cに表示する。
【0048】
ここで、表示部3cの表示内容について、図4及び図5を用いて説明する。図4(a)
乃至図4(c)は、それぞれ実施例に係る風煙道漏洩検知システムの風道についての処理
結果である。図5(a)乃至図5(c)は、それぞれ実施例に係る風煙道漏洩検知システ
ムの煙道についての処理結果である。
図4(b)に示すように、表示部3cは、風道エリアA11~A15における第1の検
知データと、(1)に該当しない場合の状況を表示する。
具体的には「風道エリア1~5」が、それぞれ風道エリアA11~A15を意味してお
り、「風道エリア1~5」の「温度:35℃」等が第1の検知データであり、「異常なし
」が(1)に該当しない場合の状況である。
なお、図4(c)及び図5(c)は、過去に発生した風道51及び煙道52における警
報の履歴であって、この履歴は、警報部3の制御部3aが、記憶部3bから読み出したも
のである。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、表示部3cは、煙道エリアB21~B25における第
2の検知データと、(2)に該当する場合の警報と、該当しない場合の状況と、煙道エリ
アB31~B35における第3の検知データと、(3)に該当する場合の警報と、該当し
ない場合の状況を表示する。
具体的には「煙道エリア1~5」が、それぞれ煙道エリアB21~B25と、これに重
複する煙道エリアB31~B35を意味しており、「煙道エリア2~5」の「温度:33
℃」等が第2の検知データであり、「ガス濃度:1ppm」等が第3の検知データである
。また、「異常なし」が(2)、(3)に該当しない場合の状況である。
これに対し、「煙道エリア1」の「温度高」、「ガス濃度高」が、それぞれ(2)、(
3)に該当する場合の警報である。
【0050】
図3に戻ると、ステップS5-2のエリア表示工程では、演算部2aは、記憶部2bを
参照し、風道エリアAのうち、(1)、又は(4)、又は(7)に該当すると判定した
場合の第1のセンサーSEにそれぞれ対応する風道エリアA1(1),A1(4),A
1(7)及びこの風道エリアA1(1),A1(4),A1(7)についての立入禁止情
報をそれぞれ抽出する。この立入禁止情報は、風道エリアA11~A18それぞれについ
ての具体的な位置の説明である。
【0051】
同様に、演算部2aは、煙道エリアBのうち、(2)、又は(5)、又は(8)に該
当すると判定した場合の第2のセンサーSEにそれぞれ対応する煙道エリアB2(2)
,B2(5),B2(8)及びこの煙道エリアB2(2),B2(5),B2(8)につ
いての立入禁止情報をそれぞれ抽出する。この立入禁止情報は、煙道エリアB21~B
と、煙道エリアB31~B38それぞれについての具体的な立入禁止箇所の説明であっ
て、図5(b)に示される「煙道エリア1」の「立入禁止エリア:ボイラー3階後ろ」と
いったものである。
【0052】
さらに、演算部2aは、煙道エリアBのうち、(3)、又は(6)、又は(9)に該
当すると判定した場合の第3のセンサーSEにそれぞれ対応する煙道エリアB3(3)
,B3(6),B3(9)及びこの煙道エリアB3(3),B3(6),B3(9)につ
いての立入禁止情報をそれぞれ抽出する。
そして、演算部2aは、表示部3cに、警報として、抽出した風道エリアA1(1)
1(4),A1(7)と、煙道エリアB2(2),B2(5),B2(8)と、煙道エ
リアB3(3),B3(6),B3(9)のいずれかを、風道エリアA及び煙道エリア
,Bの配置とともにそれぞれ図示する。
【0053】
具体的には、図5(a)に示すように、演算部2aが(2)と、(3)に該当すると判
定した場合の、煙道エリアB2(2),B3(3)が、グレーの領域として表示される。
なお、図4(a)においては、演算部2aが(1)、又は(4)、又は(7)に該当する
と判定した風道エリアA1(1),A1(4),A1(7)が存在しないため、グレーの
領域として表示されない。
【0054】
また、図5(b)に示すように、演算部2aが(5)と、(6)に該当すると判定した
場合の床面積SB2(2)が、「煙道エリア1損傷部位大(損傷範囲:2m)」のよう
に、警報とともにテキスト情報として表示される。
なお、演算部2aが(8)と、(9)に該当すると判定した煙道エリアB2(2),B
3(9)が存在しないため、異常煙道比率KB2は「煙道エリア全体損傷割合:20%」
として表示されるが、その警報は表示されない。さらに、演算部2aが、(1)乃至(9
)に該当すると判定した場合に出される警報は、制御装置2のスピーカー2dや、警報部
3のスピーカー3dによって、音情報として発報される。
そして、演算部2aが、一旦(1)乃至(9)に該当すると判定した後に、これらに該
当しなくなった場合では、警報が解除されて報知されなくなる。
【0055】
以上説明したように、風煙道漏洩検知システム1によれば、ステップS1のデータ検知
工程と、ステップS2の検知データ判定工程において、第1のセンサーSEが設置され
る風道エリアA毎と、第2のセンサーSE及び第3のセンサーSEが設置される煙
道エリアA,A毎に異常箇所が発見されるため、第1及び第2の漏洩の有無自体と、
第1の漏洩が発生している風道エリアAと、第2の漏洩が発生している煙道エリアA
,Aを発見することができる。
これにより、異常箇所が発見された風道エリアAの周囲と煙道エリアB,Bの周
囲への立ち入りが可能であるか否かを推測できる。そのため、風道51と煙道52の安全
性の有無を直ちに把握することができる。
【0056】
さらに、第1のセンサーSE乃至第3のセンサーSEが、一定時間毎に継続して、
または所望のタイミングで、第1乃至第3の検知データを検知することにより、その時間
的変化を追跡できる。したがって、風煙道漏洩検知システム1によれば、人体に対する安
全性を確保した上で、第1及び第3の漏洩に迅速に対処するという現場の要請に対応可能
である。
【0057】
加えて、風煙道漏洩検知システム1によれば、演算部2aによって、燃焼気体の第1の
漏洩があることと、排出気体の第2の漏洩があること、の少なくともいずれかがそれぞれ
の発生場所とともに把握されるため、第1及び第2の漏洩が少なくともどの程度であるも
のかということと、その発生場所を同時に認識することができる。
【0058】
そして、風煙道漏洩検知システム1によれば、ステップS3の床面積判定工程において
、風道エリアAと、煙道エリアB,Bのうち、それぞれ周囲が高温となっている範
囲や有害物質の濃度が高くなっている範囲が一定以上になっているものが抽出されるため
、周囲への立ち入りが危険である風道エリアAと、煙道エリアB,Bを具体的に特
定することができる。
【0059】
次に、風煙道漏洩検知システム1によれば、ステップS4の比率判定工程において、風
道51全体及び煙道52全体において、高温となっている範囲や有害物質の濃度が高くな
っている範囲が一定以上になっていることが検知されるため、風道51全体及び煙道52
全体で、周囲への立ち入りが危険である範囲が一定以上に拡大しているか否かを判断する
ことができる。
【0060】
加えて、風煙道漏洩検知システム1によれば、ステップS5-1の検知データ表示工程
において、演算部2aが、第1の検知データ乃至第3の検知データと、第1の出力結果に
おいて、(1)乃至(3)に該当する場合の警報と、該当しない場合の状況を、文字情報
や音情報によって報知させるため、人が警報の内容や、現在の状況を確実に知ることがで
きる。
さらに、ステップS5-2のエリア表示工程において、(1)乃至(9)のそれぞれに
該当する場合の風道エリアAと、煙道エリアB,Bの各配置が表示部3cに表示さ
れるため、これらの風道エリアAと、煙道エリアB,Bを、視覚的に認識すること
ができる。よって、これら風道エリアA等の配置と、その周囲の安全性がどのような理
由で確保されていないのかを、同時に理解することができる。
【0061】
なお、本発明に係る風煙道漏洩検知システム1は、実施例に示すものに限定されない。
例えば、第1のセンサーSE乃至第3のセンサーSEは、風道エリアA11~A18
と、煙道エリアB21~B28、煙道エリアB31~B38のすべてに設置される代わり
に、これらのうちのいずれかに設置されてもよい。
また、風煙道漏洩検知方法100において、ステップS3の床面積判定工程と、ステッ
プS4の比率判定工程は、それぞれ省略されてもよい。さらに、ステップS5-2のエリ
ア表示工程において、(1)乃至(9)該当すると判定された風道エリアAと、煙道エ
リアB,Bは、これらに共通する座標上での風道51及び煙道52の配置が第4のデ
ータに含まれる場合に、風道51及び煙道52の配置とともにそれぞれ図示されてもよい
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、風煙道に設置されるセンサーの検知データに基づいて、風煙道の周囲に立ち
入り可能か否かを把握可能な風煙道システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…風煙道漏洩検知システム 2…制御装置 2a…演算部 2b…記憶部 2c…表
示部 2d…スピーカー 2e…通信部 3…警報部 3a…制御部 3b…記憶部 3
c…表示部 3d…スピーカー 3e…通信部 4a~4a,4b…通信経路 50
…ボイラー 51…風道 52…煙道 53…燃焼気体 54…押込通風機 55…排出
気体 56…乾式電気集塵装置 57…脱硫装置 58…煙突 100…風煙道漏洩検知
方法 A…風道エリア A,A11~A18…第1のセンサーの設置箇所と関連付けら
れる風道エリア B…煙道エリア B,B21~B28…第2のセンサーの設置箇所と
関連付けられる煙道エリア B,B31~B38…第3のセンサーの設置箇所と関連付
けられる煙道エリア SE…第1のセンサー SE…第2のセンサー SE…第3
のセンサー SA1…風道エリアAの床面積 SB2…煙道エリアBの床面積 S
…煙道エリアBの床面積 SA1(1)…(1)と判定された第1のセンサーに対応
する床面積 SB2(2)…(2)と判定された第2のセンサーに対応する床面積 S
3(3)…(3)と判定された第3のセンサーに対応する床面積 S4T…合算異常風道
床面積 S5T…合算異常煙道床面積 S6T…合算異常煙道床面積 SAT…風道総床
面積 SBT…煙道総床面積 KA1…異常風道比率 KB2,KB3…異常煙道比率
図1
図2
図3
図4
図5