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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084484
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】エッチングされたシリコン基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240618BHJP
【ＦＩ】
H01L21/306 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022198778
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人Ｇ－ｃｈｅｍｉｃａｌ
(72)【発明者】
【氏名】望田 憲嗣
【テーマコード（参考）】
5F043
【Ｆターム（参考）】
5F043AA31
5F043BB22
5F043CC05
5F043CC16
5F043DD02
5F043DD12
5F043DD30
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、保護膜を利用してエッチングして、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を製造する方法であって、保護膜材料由来の汚染を抑制しつつ、エッチング選択性を向上する方法を提供する。
【解決手段】本開示の製造方法は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を下記工程に付すものである。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板にセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
【選択図】なし
【解決手段】本開示の製造方法は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を下記工程に付すものである。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板にセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る、エッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
（式中、３つのＲは同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基を示す。前記炭化水素基はヒドロキシル基若しくはカルボキシル基を有していてもよい。尚、３つのＲのうち、少なくとも１つは炭化水素基又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基である）
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
【化1】
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
【請求項2】
前記工程１が、前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を適用して、前記窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する工程である、請求項１に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
【請求項3】
下記工程を有する、請求項１又は２に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
【請求項4】
前記洗浄剤は、シリコン基板の表面を酸化する作用を有する酸化剤を含む、請求項３に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄剤は、過酸化物を含む、請求項３に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄剤は、アンモニア過水、硫酸過水、及び塩酸過水から選択される少なくとも１種を含む、請求項３に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化ケイ素膜に対して酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング選択性を付与する表面処理剤を用いて、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板の酸化ケイ素膜を選択的にエッチングして、エッチングされたシリコン基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造方法としては、シリコン基板表面に酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を成膜し、所望の形状にパターニングし、エッチングする方法が採用されている。そして、前記エッチング方法としては、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸などのエッチング液で酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜を腐食させて除去するウェットエッチング法が知られている。
【0003】
特許文献１には、酸化ケイ素膜に選択的に化学吸着する熱リン酸耐性材料を用いて酸化ケイ素膜の表面を保護膜で被覆してから、熱リン酸溶液を使用してエッチング処理を行うことで、窒化ケイ素膜を選択的にエッチングすることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開２０１３－０６２２７８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献１の方法では、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングすることはできなかった。そのため、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングする方法が求められていた。
【0006】
また、シリコン基板に保護膜を設けると、保護膜材料由来の汚染物質がシリコン基板に移行して、歩留まりを低下させる原因となることが問題であった。
【0007】
従って、本開示の目的は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、保護膜を利用してエッチングして、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を製造する方法であって、保護膜材料由来の汚染を抑制しつつ、エッチング選択性を向上する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩（以後、「セルロース誘導体（ｃ）又はその塩」と称する場合がある）は、窒化ケイ素膜に対する親和性が高く、窒化ケイ素膜に塗布すると、良好に付着して均一な塗膜を形成するが、一方、酸化ケイ素膜に対する親和性は低く、付着しにくい性質を有することを見出した。
また、窒化ケイ素膜の表面は自然酸化膜が生成しやすく、自然酸化膜が生成することで、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は付着し難く、一旦付着しても剥がれ易くなるため、表面処理剤中のセロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を濃くしないと、充分な密着性を有する保護膜が得られなくなることを見出した。
そして、窒化ケイ素膜の表面に生成した自然酸化膜を除去してから、そこに、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を塗布すれば、表面処理剤中のセルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を低下させても、密着性及び表面均一性に優れた保護膜を形成することができ、形成された保護膜は優れたエッチング選択性付与効果を発揮することを見出した。
更に、表面処理剤中のセルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を低下させることで、、表面処理剤由来の汚染によるシリコン基板の歩留まり低下を最小限にとどめることができること、を見出した。
本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
また、窒化ケイ素膜の表面は自然酸化膜が生成しやすく、自然酸化膜が生成することで、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は付着し難く、一旦付着しても剥がれ易くなるため、表面処理剤中のセロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を濃くしないと、充分な密着性を有する保護膜が得られなくなることを見出した。
そして、窒化ケイ素膜の表面に生成した自然酸化膜を除去してから、そこに、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を塗布すれば、表面処理剤中のセルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を低下させても、密着性及び表面均一性に優れた保護膜を形成することができ、形成された保護膜は優れたエッチング選択性付与効果を発揮することを見出した。
更に、表面処理剤中のセルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度を低下させることで、、表面処理剤由来の汚染によるシリコン基板の歩留まり低下を最小限にとどめることができること、を見出した。
本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本開示は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る、エッチングされたシリコン基板の製造方法を提供する。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
（式中、３つのＲは同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基を示す。前記炭化水素基はヒドロキシル基若しくはカルボキシル基を有していてもよい。尚、３つのＲのうち、少なくとも１つは炭化水素基又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基である）
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
【化1】
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
【0010】
前記工程１は、前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を適用して、前記窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する工程であっても良い。
【0011】
また、前記製造方法は、下記工程を有していても良い。
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
【0012】
前記洗浄剤は、シリコン基板の表面を酸化する作用を有する酸化剤を含むことが好ましい。
【0013】
前記洗浄剤は、過酸化物を含むことが好ましい。
【0014】
前記洗浄剤は、アンモニア過水、硫酸過水、及び塩酸過水から選択される少なくとも１種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示のシリコン基板の製造方法によれば、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板の、窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去してから、窒化ケイ素膜に選択的に付着する性質を有する表面処理剤を適用するため、窒化ケイ素膜の表面に密着性及び表面均一性に優れた保護膜を形成することができる。そして、前記保護膜を設けた後に、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を適用するため、極めて選択的に酸化ケイ素膜をエッチングすることができる。
そして、前記表面処理剤は、濃度を低下させても、窒化ケイ素膜の表面に密着性及び表面均一性に優れた保護膜を形成することができるので、前記表面処理剤の濃度を低下させることで、優れたエッチング選択性付与効果を維持しつつ、表面処理剤由来の汚染物質を低減することができ、シリコン基板が汚染されるリスクを低減することができる。
以上より、本開示のシリコン基板の製造方法によれば、精度良好にエッチングされたシリコン基板を歩留まり良く製造することができる。
そして、前記表面処理剤は、濃度を低下させても、窒化ケイ素膜の表面に密着性及び表面均一性に優れた保護膜を形成することができるので、前記表面処理剤の濃度を低下させることで、優れたエッチング選択性付与効果を維持しつつ、表面処理剤由来の汚染物質を低減することができ、シリコン基板が汚染されるリスクを低減することができる。
以上より、本開示のシリコン基板の製造方法によれば、精度良好にエッチングされたシリコン基板を歩留まり良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例で使用したＳｉ3Ｎ4／シリコン基板のＸＰＳ分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
［エッチングされたシリコン基板の製造方法］
本開示のエッチングされたシリコン基板の製造方法は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る方法である。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
本開示のエッチングされたシリコン基板の製造方法は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る方法である。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
【0018】
本開示の製造方法は、前記工程以外にも他の工程を有していても良く、例えば工程１，２，３に続き下記工程４を有していても良い。
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
【0019】
（工程１）
工程１は、酸化ケイ素（ＳｉＯ2）膜と窒化ケイ素（Ｓｉ3Ｎ4）膜を含む表面層を有するシリコン基板について、前記窒化ケイ素膜の表面に生成した自然酸化膜を除去する工程である。
工程１は、酸化ケイ素（ＳｉＯ2）膜と窒化ケイ素（Ｓｉ3Ｎ4）膜を含む表面層を有するシリコン基板について、前記窒化ケイ素膜の表面に生成した自然酸化膜を除去する工程である。
【0020】
酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板は、シリコン基板の表面に、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜が露出して存在する。そして、酸化ケイ素膜が存在する領域と窒化ケイ素膜が存在する領域は、隣接していても良く、隔離されていても良い。
【0021】
前記酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層は、シリコン基板に直接積層されていてもよいし、絶縁膜や配線を形成するための導電膜等を介して積層されていてもよい。
【0022】
前記酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板は、シリコン基板を、熱酸化、ＣＶＤ（化学気相成長）、ＰＶＤ（物理気相成長）等の成膜処理に付すことで製造することができる。
【0023】
前記酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板は、経時で表面が自然に酸化されて酸化ケイ素膜を生成する。このように自然に生成した酸化ケイ素膜を自然酸化膜と称する。
【0024】
工程１に供するシリコン基板は、より詳細には、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板であって、前記表面層に含まれる窒化ケイ素膜の少なくとも一部に自然酸化膜が付着したものである。前記酸化ケイ素膜にも自然酸化膜が形成されていても良い。そして、本工程は、窒化ケイ素膜に付着した自然酸化膜を除去する工程であるが、窒化ケイ素膜に付着した自然酸化膜を除去すると同時に、酸化ケイ素膜に付着した自然酸化膜を除去する工程、つまり、シリコン基板の表面に付着した自然酸化膜を除去する工程であっても良い。
【0025】
自然酸化膜を除去する方法としては特に制限がなく、例えば、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を窒化ケイ素膜（或いは、シリコン基板の表面全体）に適用して、窒化ケイ素膜（或いは、シリコン基板の表面全体）に付着した自然酸化膜を腐食させて除去する方法が挙げられる。
【0026】
前記エッチング液としては、フッ酸（ＨＦ）、フッ化アンモニウム（ＮＨ4Ｆ）、フッ化水素アンモニウム、ＢＨＦ（ＨＦとＮＨ4Ｆの混合物；バッファードフッ酸）、ＤＨＦ（ＨＦとＨ2Ｏの混合物）等から選択される少なくとも１種の酸性物質を含有する組成物が好ましい。
【0027】
前記エッチング液は、溶媒として水を含有することが好ましい。また、水と共に水溶性有機溶媒（例えば、ラクトン、多価アルコール等）を含有しても良い。
【0028】
前記エッチング液中の酸性物質の濃度は、例えば０．０５～９９重量％、好ましくは０．０５～３０重量％である。
【0029】
前記エッチング液を適用する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
［１］前記シリコン基板を、前記エッチング液に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［２］前記シリコン基板の表面に、前記エッチング液を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
［１］前記シリコン基板を、前記エッチング液に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［２］前記シリコン基板の表面に、前記エッチング液を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
【0030】
前記ディップ法［１］において、浸漬時間は例えば０．５～３０秒、好ましくは１～１０秒である。浸漬温度（例えば、浸漬時の前記エッチング液温度）は、例えば２０～３０℃である。
【0031】
前記ディップ法［１］によれば、前記エッチング液の使用量を抑制することができ、経済的である。また、スピーディーにエッチング処理を施すことができるので生産性が高い。
【0032】
前記コーティング法［２］において、前記シリコン基板の表面層上に、前記エッチング液を塗布する方法としては、例えば、回転塗布法（スピンコート）、スタンピング、ディスペンス、スキージ法、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。
【0033】
前記コーティング法［２］によれば、前記エッチング液により不要な腐食が生じるのを抑制することができる。
【0034】
（工程２）
工程２は、工程１を経て得られた自然酸化膜除去後のシリコン基板（＝酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板であって、自然酸化膜が除去されたもの）に表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る工程である。
工程２は、工程１を経て得られた自然酸化膜除去後のシリコン基板（＝酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板であって、自然酸化膜が除去されたもの）に表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る工程である。
【0035】
前記表面処理剤は、下記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体（＝セルロース誘導体（ｃ））又はその塩を含む。
（式中、３つのＲは同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基を示す。前記炭化水素基はヒドロキシル基若しくはカルボキシル基を有していてもよい。尚、３つのＲのうち、少なくとも１つは炭化水素基又は２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基である）
【化2】
【0036】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、水溶性高分子化合物であり、窒化ケイ素膜には付着しやすく、一方、酸化ケイ素膜には付着しにくい性質を有する。
【0037】
前記炭化水素基は、好ましくは脂肪族炭化水素基、特に好ましくは飽和脂肪族炭化水素基、最も好ましくはアルキル基である。前記炭化水素基の炭素数は、例えば１～５、好ましくは１～３、特に好ましくは１～２である。
【0038】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ｓ－ブチル基、ｔ－ブチル基、ペンチル基等の炭素数１～５のアルキル基が挙げられる。前記アルキル基としては、なかでも炭素数１～３のアルキル基が好ましく、特に炭素数１～２のアルキル基が好ましい。
【0039】
前記連結基は、好ましくはエーテル結合（－Ｏ－）である。
【0040】
前記２個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した基としては、下記式（ｒ）で表される基が好ましい。式（ｒ）中の左端から延びる結合手が酸素原子に結合する。
－Ｒ1－（Ｏ－Ｒ2）n－Ｘ （ｒ）
－Ｒ1－（Ｏ－Ｒ2）n－Ｘ （ｒ）
【0041】
前記式中のＲ1、Ｒ2は同一又は異なって炭化水素基を示す。前記炭化水素基は、好ましくは脂肪族炭化水素基、特に好ましくは飽和脂肪族炭化水素基（＝アルキレン基）である。前記炭化水素基の炭素数は、例えば１～５、好ましくは１～３、特に好ましくは１～２である。
【0042】
前記アルキレン基としては、メチレン基、ジメチレン基、メチルメチレン基、１－メチルエチレン基、１，１－ジメチルメチレン基、トリメチレン基などの炭素数１～３のアルキレン基が好ましく、特に炭素数１～２のアルキレン基が好ましい。
【0043】
前記式中のＸはヒドロキシル基又はカルボキシル基を示す。
【0044】
前記式中のｎは（Ｏ－Ｒ2）基の平均付加モル数を示し、例えば０超である。ｎの上限値は、例えば１０、好ましくは５、特に好ましくは３である。ｎの下限値は、好ましくは１、特に好ましくは１．５である。
【0045】
前記セルロース誘導体（ｃ）は、塩を形成していてもよい。すなわち、前記セルロース誘導体（ｃ）に備わるヒドロキシル基又はカルボキシル基は塩を形成していてもよい。
【0046】
前記塩としては、例えば、アルカリ金属塩（リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩など）などの一価金属塩；アルカリ土類金属塩（カルシウム塩、マグネシウム塩など）などの二価金属塩；第四級アンモニウム塩、アミン塩、置換アミン塩又はこれらの複塩などが挙げられる。前記塩としては、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0047】
例えば、前記セルロース誘導体（ｃ）に備わるヒドロキシル基又はカルボキシル基がナトリウム塩を形成している場合、ヒドロキシル基（－ＯＨ）は－ＯＮａとなり、カルボキシル基（－ＣＯＯＨ）は－ＣＯＯＮａとなる。
【0048】
前記セルロース誘導体（ｃ）のエーテル化度は、例えば０．１～３．０の範囲から選択することができる。前記セルロース誘導体（ｃ）の［窒化ケイ素膜／酸化ケイ素膜］選択付着性を向上させることができ、これにより、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］がより一層高められる観点から、前記エーテル化度は０．５以上が好ましく、より好ましくは０．８以上、特に好ましくは１．０以上である。エーテル化度の上限値は、好ましくは２．５、より好ましくは２．０、特に好ましくは１．６である。なお、前記セルロース誘導体（ｃ）のエーテル化度とは、式（ｃ）で表される構成単位の２位、３位、及び６位のヒドロキシル基のエーテル化度（置換度）の平均値である。
【0049】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩としては、具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、及びこれらの塩が挙げられる。これらは、１種を単独で又は２種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩としては、［窒化ケイ素膜／酸化ケイ素膜］選択付着性に特に優れる点において、前記式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩であって、前記式中の３つのＲのうち、少なくとも１つがヒドロキシル基を有する炭化水素基（例えばヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシＣ1-5アルキル基）であるセルロース誘導体が好ましい。
【0051】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、又はこれらの塩が好ましく、ヒドロキシエチルセルロース又はその塩が特に好ましい。
【0052】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の、上記式（ｃ）で表される構成単位の重合度は、例えば５～５００である。エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上させる観点から、前記重合度の下限値は、好ましくは１０、特に好ましくは１５である。前記重合度の上限値は、好ましくは２００、より好ましくは１５０、より好ましくは１００、更に好ましくは５０、特に好ましくは４０である。
【0053】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の重量平均分子量（Ｍｗ）は、例えば０．１×１０4～２００×１０4である。エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上させる観点から、Ｍｗの上限値は、１００×１０4が好ましく、８０×１０4が更に好ましく、５０×１０4が更に好ましく、３０×１０4が更に好ましく、２０×１０4が更に好ましく、１５×１０4が特に好ましく、１０×１０4が最も好ましく、８×１０4がとりわけ好ましい。また、Ｍｗの下限値は、０．１×１０4が好ましく、０．２×１０4がより好ましく、０．３×１０4が更に好ましく、０．５×１０4が更に好ましく、１×１０4が特に好ましい。
【0054】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の、２０℃における水への溶解度は、５重量％以上が好ましい。
【0055】
前記表面処理剤中の前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度は、例えば０．００１～３重量％である。前記濃度の下限値は、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上させる観点から、前記濃度の下限値は、好ましくは０．０１重量％、更に好ましくは０．０５重量％、特に好ましくは０．１重量％、最も好ましくは０．２５重量％、とりわけ好ましくは０．３重量％である。表面処理剤由来の物質による汚染で、シリコン基板の歩留まりが低下するのを抑制する観点から、前記濃度の上限値は、好ましくは２重量％、特に好ましくは１．５重量％、最も好ましくは１．０重量％、とりわけ好ましくは０．８重量％である。
【0056】
前記表面処理剤は、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩以外にも他の水溶性高分子化合物（例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなど）を１種又は２種以上含有していても良いが、前記表面処理剤に含まれる水溶性高分子化合物全量（１００重量％）において前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の占める割合は、例えば５０重量％以上であり、好ましくは６０重量％以上、更に好ましくは７０重量％以上、更に好ましくは８０重量％以上、特に好ましくは９５重量％以上、最も好ましくは９９重量％以上である。
【0057】
前記表面処理剤の不揮発分全量（１００重量％）において、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の占める割合は、例えば５０重量％以上であり、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上させる観点から、好ましくは６０重量％以上、更に好ましくは７０重量％以上、更に好ましくは８０重量％以上、特に好ましくは９５重量％以上、最も好ましくは９９重量％以上である。
【0058】
また、前記表面処理剤は、不揮発分として、セルロース誘導体（ｃ）又はその塩以外にも他の成分を１種又は２種以上含有していても良い。他の成分としては、例えば、前記他の水溶性高分子化合物、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。他の成分の含有量（２種以上含有する場合はその総量）は、例えば５０重量％以下であり、好ましくは４０重量％以下、更に好ましくは３０重量％以下、更に好ましくは２０重量％以下、特に好ましくは５重量％以下、最も好ましくは１重量％以下である。
【0059】
尚、前記表面処理剤の不揮発分とは、水や有機溶媒等の分散媒以外の成分であり、例えば、前記表面処理剤を常圧下において１００℃で１時間加熱した後に残る成分である。
【0060】
前記表面処理剤中の前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩の濃度は、水や有機溶媒等の分散媒を添加して調整することができる。
【0061】
前記表面処理剤は、例えば、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩と分散媒（例えば、水）と必要に応じて他の成分を混合することにより調製することができる。
【0062】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、酸化ケイ素膜に対して窒化ケイ素膜を選択的に被覆する性質を有する。そのため、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を用いて窒化ケイ素膜を処理すれば、処理しなかった場合に比べて、窒化ケイ素膜のエッチングレートを低下させる効果が得られる。前記表面処理剤による窒化ケイ素膜のエッチングレート低下率は、エッチング処理条件にもよるが、例えば実施例に記載の方法で行った場合、例えば５０％以上、好ましくは６０％以上、特に好ましくは７０％以上、最も好ましくは８０％以上である。エッチングレート低下率の上限値は、例えば９０％である。
【0063】
一方、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、酸化ケイ素膜に対しては付着し難く、一旦付着しても容易に剥がれるので、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む表面処理剤を用いて酸化ケイ素膜を処理した場合と処理しなかった場合では、酸化ケイ素膜のエッチングレートにはほとんど変化が見られず、前記表面処理剤による酸化ケイ素膜のエッチングレート低下率は、エッチング処理条件にもよるが、例えば実施例に記載の方法で行った場合、例えば２％以下である。エッチングレート低下率の下限値は０％である。
【0064】
前記シリコン基板の表面層に前記表面処理剤を塗布して保護膜を形成する方法には、以下の方法が含まれる。
［３］自然酸化膜が除去されたシリコン基板を前記表面処理剤に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［４］自然酸化膜が除去されたシリコン基板の前記表面層上に前記表面処理剤を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
［３］自然酸化膜が除去されたシリコン基板を前記表面処理剤に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［４］自然酸化膜が除去されたシリコン基板の前記表面層上に前記表面処理剤を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
【0065】
前記コーティング法［４］において、シリコン基板の表面層上に、前記表面処理剤を塗布する方法としては、例えば、回転塗布法（スピンコート）、スタンピング、ディスペンス、スキージ法、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。中でも、均一な保護膜が得られやすい点から、回転塗布法により塗布することが好ましい。
【0066】
前記ディップ法［３］又はコーティング法［４］により得られた塗膜は、そのまま保護膜として使用しても良いし、水洗処理を施しても良い。窒化ケイ素膜に付着した前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は水洗では除去されないが、酸化ケイ素膜に付着した前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は水洗により容易に除去されるため、水洗処理を施すことにより、［窒化ケイ素膜／酸化ケイ素膜］選択付着性を一層向上させることができる。
【0067】
更に、前記ディップ法［３］又はコーティング法［４］により得られた塗膜（＝水分を含む塗膜）は、乾燥処理に付しても良い。乾燥処理により保護膜から水分を除去すると、窒化ケイ素膜と保護膜の密着性が向上して、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を更に向上することができる。
【0068】
前記乾燥処理方法としては、例えば、加熱乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法、乾燥気体（例えば、窒素ガス等）を吹き付ける方法などが挙げられる。前記乾燥処理は、保護膜に含まれる水分が、保護膜全量の３０重量％以下になるまで行うことが好ましく、１５重量％以下となるまで行うことがより好ましく、５重量％以下になるまで行うのが特に好ましい。
【0069】
すなわち、前記工程２は、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板の前記表面層に、前記表面処理剤の塗膜を形成し、得られた塗膜に水洗処理を施し、更に乾燥処理を施して、前記窒化ケイ素膜に前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む保護膜であって乾燥させたものを積層する工程であっても良い。
【0070】
前記保護膜の厚みは、例えば１～２００ｎｍである。前記保護膜の厚みの上限値は、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を高く維持しつつ、保護膜由来の汚染物質による歩留まりの低下を抑制する観点から、１００ｎｍが好ましく、特に３０ｎｍが好ましい。
【0071】
前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、［窒化ケイ素膜／酸化ケイ素膜］選択付着性に優れるため、本工程を経て、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板であって、自然酸化膜が除去されたシリコン基板の、前記窒化ケイ素膜が選択的に保護膜で被覆されてなる、保護膜付きのシリコン基板が得られる。
【0072】
（工程３）
工程３は、工程２を経て得られた保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いたエッチング処理（＝ウェットエッチング処理）に付す工程である。
工程３は、工程２を経て得られた保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いたエッチング処理（＝ウェットエッチング処理）に付す工程である。
【0073】
前記エッチング液としては、工程１において使用されるエッチング液と同様の例が挙げられる。
【0074】
保護膜付きのシリコン基板のエッチング処理方法としては、特に制限がなく、例えば以下の方法が挙げられる。
［５］前記保護膜付きのシリコン基板を、前記エッチング液に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［６］前記保護膜付きのシリコン基板の表面層上に、前記エッチング液を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
［５］前記保護膜付きのシリコン基板を、前記エッチング液に浸漬する方法（すなわち、ディップ法）
［６］前記保護膜付きのシリコン基板の表面層上に、前記エッチング液を塗布する方法（すなわち、コーティング法）
【0075】
前記ディップ法［５］において、浸漬時間は例えば０．１～５分、好ましくは０．５～３分である。浸漬温度（例えば、浸漬時の前記エッチング液温度）は、例えば２０～３０℃である。
【0076】
前記コーティング法［６］において、前記保護膜付きのシリコン基板の表面層上に、前記エッチング液を塗布する方法としては、例えば、回転塗布法（スピンコート）、スタンピング、ディスペンス、スキージ法、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。
【0077】
本開示の方法によれば、保護膜で被覆することで窒化ケイ素膜のエッチングレートを顕著に低下させることができる。前記窒化ケイ素膜のエッチングレートは、保護膜を設けない以外は同じ条件でのエッチングレートの例えば２５％以下、好ましくは２０％以下、特に好ましくは１５％以下である。すなわち、保護膜による窒化ケイ素膜のエッチングレートの低下率は、例えば７５％以上、好ましくは８０％以上、特に好ましくは８５％以上である。
【0078】
また、本開示の方法によれば、保護膜を形成する工程を設けても、酸化ケイ素膜には保護膜が付着しないので、酸化ケイ素膜のエッチングレートは低下が抑制される。前記酸化ケイ素膜のエッチングレートは、保護膜を設けない以外は同じ条件でのエッチングレートの例えば８０％以上、好ましくは８５％以上、特に好ましくは９０％以上である。すなわち、保護膜による酸化ケイ素膜のエッチングレートの低下率は、例えば２０％以下、好ましくは１５％以下、特に好ましくは１０％以下である。
【0079】
本開示の方法によれば、保護膜を設けない以外は同様の方法でエッチング処理した場合に比べて、酸化ケイ素膜を、前記窒化ケイ素膜に対して選択的にエッチングすることができ、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］が顕著に上昇する。前記エッチング選択比の上昇割合は、例えば２倍以上、好ましくは３倍以上、更に好ましくは４倍以上、特に好ましくは５倍以上である。
【0080】
エッチングレートは、使用するエッチング液の酸性物質の種類や濃度に依存するが、例えばエッチング液としてバッファードフッ酸（商品名「ＢＨＦ１１０」、ダイキン工業（株）製）を使用する場合、本開示の方法による酸化ケイ素膜のエッチングレート、及び窒化ケイ素膜のエッチングレートは例えば下記の通りである。
前記酸化ケイ素膜エッチングレートは、例えば５０ｎｍ／ｍｉｎ以上であり、好ましくは６０ｎｍ／ｍｉｎ以上、特に好ましくは７０ｎｍ／ｍｉｎ以上である。前記エッチングレートの上限値は、例えば１００ｎｍ／ｍｉｎである。
前記窒化ケイ素膜のエッチングレートは、例えば５ｎｍ／ｍｉｎ以下、好ましくは３ｎｍ／ｍｉｎ以下、特に好ましくは１ｎｍ／ｍｉｎ以下、最も好ましくは０．１ｎｍ／ｍｉｎ以下である。
前記酸化ケイ素膜エッチングレートは、例えば５０ｎｍ／ｍｉｎ以上であり、好ましくは６０ｎｍ／ｍｉｎ以上、特に好ましくは７０ｎｍ／ｍｉｎ以上である。前記エッチングレートの上限値は、例えば１００ｎｍ／ｍｉｎである。
前記窒化ケイ素膜のエッチングレートは、例えば５ｎｍ／ｍｉｎ以下、好ましくは３ｎｍ／ｍｉｎ以下、特に好ましくは１ｎｍ／ｍｉｎ以下、最も好ましくは０．１ｎｍ／ｍｉｎ以下である。
【0081】
本開示の方法におけるエッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］は、例えば１５以上、好ましくは２００以上、特に好ましくは２５０以上、最も好ましくは３００以上、とりわけ好ましくは４００以上である。尚、前記エッチング選択比は、酸化ケイ素膜のエッチングレートと窒化ケイ素膜のエッチングレートの比［酸化ケイ素膜のエッチングレート／窒化ケイ素膜のエッチングレート］から算出される。
【0082】
（工程４）
工程４は、工程３を経て得られたエッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する工程である。
工程４は、工程３を経て得られたエッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する工程である。
【0083】
窒化ケイ素膜を被覆する保護膜は、エッチング処理後も残存している場合が多く、このような場合には、残存している保護膜を、洗浄剤を用いて洗浄して除去することが好ましい。
【0084】
前記洗浄剤としては、少なくとも水（例えば、脱イオン水等）を含有することが好ましい。
【0085】
前記洗浄剤は、水以外にも他の成分を含有していても良く、例えば、塩基や酸を含有しても良い。塩基や酸は、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を溶解する作用を有するためである。
【0086】
前記塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基；テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリンなどの有機塩基；アンモニアなどが挙げられる。これらは１種を単独で、又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
前記酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、炭酸、酢酸、リン酸、王水、希フッ酸、硫酸過水、塩酸過水等が挙げられる。これらは１種を単独で、又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
前記洗浄剤は、また、水以外に、シリコン基板の表面を酸化する作用を有する酸化剤を含有していても良い。前記洗浄剤が酸化剤を含有すれば、残存する保護膜が付着している窒化ケイ素膜は前記酸化剤によって酸化されて、その表面部分の少なくとも一部は酸化ケイ素膜化する。そして、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、酸化ケイ素膜には付着し難く、一旦付着しても容易に剥がれる性質を有するので、容易に除去できるようになる。
【0089】
前記酸化剤としては、例えば、過酸化物が挙げられる。前記過酸化物には、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、ｍ－クロロ過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸等の有機過酸；過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム等の無機過酸化物が含まれる。これらは１種を単独で、又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
前記洗浄剤としては、水と、塩基又は酸と、前記酸化剤と、を含有するものであっても良く、例えば、アンモニア過水、硫酸過水、又は塩酸過水を含む水溶液であっても良い。
【0091】
前記洗浄剤における前記酸化剤の濃度は、例えば０．５～１５重量％、好ましくは２～１０重量％、特に好ましくは２～５重量％である。
【0092】
前記洗浄剤における前記塩基又は酸の濃度は、例えば０．５～１５重量％、好ましくは２～１０重量％、特に好ましくは２～５重量％である。
【0093】
前記洗浄剤が酸化剤と共に塩基又は酸を含有する場合、その含有割合［酸化剤／（塩基又は酸）］（重量比）は、例えば９０／１０～１０／９０、好ましくは８０／２０～２０／８０、特に好ましくは３０／７０～７０／３０、最も好ましくは４０／６０～６０／４０である。
【0094】
前記洗浄剤のｐＨは、例えば４以下（例えば０～４）若しくは８以上（例えば８～１４）であり、好ましくは３以下（例えば０～３）若しくは９以上（例えば９～１４）、特に好ましくは２以下（例えば０～２）若しくは１０以上（例えば１０～１４）、最も好ましくは１．５以下（例えば０～１．５）若しくは１０以上（例えば１０～１４、好ましくは１０～１３）である。
【0095】
前記洗浄剤を洗浄に用いる際の温度は特に制限がなく、例えば１～８５℃である。前記洗浄剤は、加温により洗浄効果が向上する傾向がある。そのため、例えば２０℃以上（好ましくは３０℃以上、特に好ましくは４０℃以上、最も好ましくは５０℃以上）に加温して使用することが好ましい。尚、前記温度の上限値は、例えば８５℃、好ましくは７５℃である。
【0096】
前記洗浄剤を使用すれば、残存する保護膜を容易に除去することができ、保護膜を除去する際にエッチング処理された表面層が破損するのを防止できる。
【0097】
［半導体デバイスの製造方法］
本開示の半導体デバイスの製造方法は、上記エッチングされたシリコン基板の製造方法により、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層の前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る工程を含む。
本開示の半導体デバイスの製造方法は、上記エッチングされたシリコン基板の製造方法により、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層の前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る工程を含む。
【0098】
前記工程で得られた、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層の前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を、電極形成工程、ダイシング工程等に付すことで、半導体素子が得られ、得られた半導体素子を、更に、ワイヤボンディング工程、モールディング工程等の従来公知の半導体デバイスの製造工程に付すことで、半導体デバイスを製造することができる。
【0099】
本開示の方法で得られる半導体デバイスは、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層の前記酸化ケイ素膜が、前記窒化ケイ素膜に対して極めて選択的にエッチング処理されることによって形成された高精度の配線パターンを有する半導体素子（例えば、半導体チップ）を備えるため、信頼性に優れる。
【0100】
半導体デバイスには、例えば、ＩＣ、ＬＳＩ等の集積回路；レーザー、ＬＥＤ等の発光デバイス；太陽電池、光センサー、ＣＭＯＳイメージセンサー等の受光デバイス；ＭＥＭＳ等の半導体センサー；メモリ、アナログＩＣ、トランジスタ等が含まれる。
【0101】
以上、本開示の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0102】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0103】
実施例及び比較例で使用したエッチング液、水溶性高分子化合物、シリコン基板、及び洗浄剤は以下の通りである。
（エッチング液）
・ＢＨＦ１１０：バッファードフッ酸、商品名「ＢＨＦ１１０」、ダイキン工業（株）製
（水溶性高分子化合物）
・ＨＥＣ：ヒドロキシエチルセルロース（エーテル化度１．２～１．４、重量平均分子量４×１０4）
・ＰＧＬ：ポリグリセリン（商品名「ＰＧＬ ＸＰＷ」、重量平均分子量３０００、（株）ダイセル製）
・ＰＥＧ１０００：ポリエチレングリコール（商品名「ＰＥＧ＃１０００」、重量平均分子量１０００、日油（株）製）
・ＰＥＧ４０００：ポリエチレングリコール（商品名「ＰＥＧ＃４０００」、重量平均分子量４０００、日油（株）製）
・ＰＶＡ：ポリビニルアルコール（商品名「ゴーセノール ＫＬ－０５」、日本合成化学工業（株）製）
・ＰＶＰ：ポリビニルピロリドン（商品名「ポリビニルピロリドン Ｋ－３０」、重量平均分子量４００００、（株）日本触媒製）
（シリコン基板）
・ＳｉＯ2／シリコン基板：熱酸化により成膜された、厚さ１．５μｍのＳｉＯ2膜付きシリコン基板、商品名「Ｔｈ－ＳｉＯ2」、アドバンテック社製
・Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板：ＰＥ－ＣＶＤにより成膜された、厚さ２００ｎｍのＳｉ3Ｎ4膜付きシリコン基板、商品名「ＰＥ－ＳｉＮ」、アドバンテック社製
（洗浄剤）
・ＳＣ－１：アンモニア過水の水溶液［ＮＨ4ＯＨ／Ｈ2Ｏ2／脱イオン水＝１／１／５（重量比）、ｐＨ１０．６
（エッチング液）
・ＢＨＦ１１０：バッファードフッ酸、商品名「ＢＨＦ１１０」、ダイキン工業（株）製
（水溶性高分子化合物）
・ＨＥＣ：ヒドロキシエチルセルロース（エーテル化度１．２～１．４、重量平均分子量４×１０4）
・ＰＧＬ：ポリグリセリン（商品名「ＰＧＬ ＸＰＷ」、重量平均分子量３０００、（株）ダイセル製）
・ＰＥＧ１０００：ポリエチレングリコール（商品名「ＰＥＧ＃１０００」、重量平均分子量１０００、日油（株）製）
・ＰＥＧ４０００：ポリエチレングリコール（商品名「ＰＥＧ＃４０００」、重量平均分子量４０００、日油（株）製）
・ＰＶＡ：ポリビニルアルコール（商品名「ゴーセノール ＫＬ－０５」、日本合成化学工業（株）製）
・ＰＶＰ：ポリビニルピロリドン（商品名「ポリビニルピロリドン Ｋ－３０」、重量平均分子量４００００、（株）日本触媒製）
（シリコン基板）
・ＳｉＯ2／シリコン基板：熱酸化により成膜された、厚さ１．５μｍのＳｉＯ2膜付きシリコン基板、商品名「Ｔｈ－ＳｉＯ2」、アドバンテック社製
・Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板：ＰＥ－ＣＶＤにより成膜された、厚さ２００ｎｍのＳｉ3Ｎ4膜付きシリコン基板、商品名「ＰＥ－ＳｉＮ」、アドバンテック社製
（洗浄剤）
・ＳＣ－１：アンモニア過水の水溶液［ＮＨ4ＯＨ／Ｈ2Ｏ2／脱イオン水＝１／１／５（重量比）、ｐＨ１０．６
【0104】
窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜の膜厚は、分光エリプソメータ（Ｊ．Ａ ｗｏｏｌｏｍ製、Ｍ－２０００）を使用して測定した。
【0105】
調製例１
超純水１００ｇに対し、０．３ｇのＨＥＣを配合し、ボールミルで終夜攪拌することによって、表面処理剤１を調製した。
超純水１００ｇに対し、０．３ｇのＨＥＣを配合し、ボールミルで終夜攪拌することによって、表面処理剤１を調製した。
【0106】
調製例２～５
ＨＥＣの配合量を０．３ｇから０．１ｇ、０．０５ｇ、０．０３ｇ、又は０．０１ｇに変更した以外は調製例１と同様にして、表面処理剤２～５を調製した。
ＨＥＣの配合量を０．３ｇから０．１ｇ、０．０５ｇ、０．０３ｇ、又は０．０１ｇに変更した以外は調製例１と同様にして、表面処理剤２～５を調製した。
【0107】
比較調製例１～５
ＨＥＣに代えて、ＰＧＬ、ＰＥＧ１０００、ＰＥＧ４０００、ＰＶＡ、又はＰＶＰを使用した以外は調製例１と同様にして表面処理剤１１～１５を得た。
ＨＥＣに代えて、ＰＧＬ、ＰＥＧ１０００、ＰＥＧ４０００、ＰＶＡ、又はＰＶＰを使用した以外は調製例１と同様にして表面処理剤１１～１５を得た。
【0108】
【0109】
（自然酸化膜除去）
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板をＢＨＦ１１０（５０ｍＬ）に２秒間浸漬した。
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板をＢＨＦ１１０（５０ｍＬ）に２秒間浸漬した。
【0110】
（保護膜調製）
自然酸化膜除去処理後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、速やかに、表面処理剤１に１０秒間浸漬した。そして、保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板の窒化ケイ素膜厚み（ｎｍ）を測定した。
自然酸化膜除去処理後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、速やかに、表面処理剤１に１０秒間浸漬した。そして、保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板の窒化ケイ素膜厚み（ｎｍ）を測定した。
【0111】
（エッチング処理）
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、ＢＨＦ１１０（５０ｍＬ）に５分間浸漬した。そして、エッチング処理前後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板の窒化ケイ素膜厚み（ｎｍ）を測定した。そして、エッチング処理前後の窒化ケイ素膜の厚みの差から、窒化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。また、エッチング処理後の窒化ケイ素膜表面を目視で観察し、色むらの有無を確認した。結果を下記表１、２に示す。
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、ＢＨＦ１１０（５０ｍＬ）に５分間浸漬した。そして、エッチング処理前後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板の窒化ケイ素膜厚み（ｎｍ）を測定した。そして、エッチング処理前後の窒化ケイ素膜の厚みの差から、窒化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。また、エッチング処理後の窒化ケイ素膜表面を目視で観察し、色むらの有無を確認した。結果を下記表１、２に示す。
【0112】
実施例２～５
表面処理剤１に代えて表面処理剤２～５を使用した以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表１に示す。
表面処理剤１に代えて表面処理剤２～５を使用した以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表１に示す。
【0113】
実施例６
保護膜調製後、エッチング処理前に下記洗浄処理工程１を設けた以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表２に示す。
（洗浄処理工程１）
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、２５℃の脱イオン水（ｐＨ７．０）に１分間浸漬した。
保護膜調製後、エッチング処理前に下記洗浄処理工程１を設けた以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表２に示す。
（洗浄処理工程１）
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、２５℃の脱イオン水（ｐＨ７．０）に１分間浸漬した。
【0114】
実施例７
保護膜調製後、エッチング処理前に下記洗浄処理工程２を設けた以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表２に示す。
（洗浄処理工程２）
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、２５℃の２．３８重量％テトラヒドロアンモニウムヒドロキシド水溶液（ｐＨ１３．３）に１分間浸漬した。
保護膜調製後、エッチング処理前に下記洗浄処理工程２を設けた以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表２に示す。
（洗浄処理工程２）
保護膜調製後のＳｉ3Ｎ4／シリコン基板を、２５℃の２．３８重量％テトラヒドロアンモニウムヒドロキシド水溶液（ｐＨ１３．３）に１分間浸漬した。
【0115】
比較例１～５
自然酸化膜除去を行わなかった以外は実施例１、４、５、６、７と同様に行った。結果を下記表１又は表２に示す。
自然酸化膜除去を行わなかった以外は実施例１、４、５、６、７と同様に行った。結果を下記表１又は表２に示す。
【0116】
参考例１
自然酸化膜除去及び保護膜調製を行わなかった以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表１、２に示す。
自然酸化膜除去及び保護膜調製を行わなかった以外は実施例１と同様に行った。結果を下記表１、２に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
表１の実施例及び参考例から、自然酸化膜を除去してから、窒化ケイ素膜の表面に表面処理剤を塗布することで得られた保護膜は、窒化ケイ素膜のエッチング抑制効果に優れ、表面処理剤の濃度を低下させて得られた保護膜であっても、保護膜を設けない場合に比べて窒化ケイ素膜のエッチングレートを顕著に低下させることができることが分かる。また、前記方法で得られた保護膜は、色むらがないことから、表面均一性に優れることが分かる。
一方、比較例及び参考例から、自然酸化膜を除去せずに、窒化ケイ素膜の表面に表面処理剤を塗布することで得られた保護膜は、表面均一性が低く、窒化ケイ素膜のエッチング抑制効果が低いことが分かる。
そして、実施例と比較例の対比から、自然酸化膜を除去してから、窒化ケイ素膜の表面に低濃度の表面処理剤を塗布する方法を採用すれば、優れたエッチング選択性付与効果と汚染リスクの低減効果を併せて得ることができることが分かる。
一方、比較例及び参考例から、自然酸化膜を除去せずに、窒化ケイ素膜の表面に表面処理剤を塗布することで得られた保護膜は、表面均一性が低く、窒化ケイ素膜のエッチング抑制効果が低いことが分かる。
そして、実施例と比較例の対比から、自然酸化膜を除去してから、窒化ケイ素膜の表面に低濃度の表面処理剤を塗布する方法を採用すれば、優れたエッチング選択性付与効果と汚染リスクの低減効果を併せて得ることができることが分かる。
【0119】
【表2】
【0120】
表２から、実施例では、水やアルカリ水溶液で洗浄後も窒化ケイ素膜のエッチング抑制効果が発揮できているのに対し、比較例では洗浄によって窒化ケイ素膜のエッチング抑制効果が急激に低下し、アルカリ水溶液で洗浄した場合には参考例（保護膜調製を行わなかった場合）と同程度にまで低下している。このことから、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩は、窒化ケイ素膜に対して高い親和性を示し、付着しやすく剥がれにくい性質を有するが、酸化ケイ素膜に対しては親和性が低く、付着しても容易に剥がれ落ちることが分かる。
【0121】
実施例１１Ａ
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板に、実施例１と同様に、自然酸化膜除去、表面処理剤１を用いて保護膜調製、及びエッチング処理を行い、窒化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板に、実施例１と同様に、自然酸化膜除去、表面処理剤１を用いて保護膜調製、及びエッチング処理を行い、窒化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。
【0122】
比較例１１Ａ～１５Ａ
表面処理剤１に代えて表面処理剤１１～１５に変更した以外は実施例１１Ａと同様に行った。
表面処理剤１に代えて表面処理剤１１～１５に変更した以外は実施例１１Ａと同様に行った。
【0123】
比較例１６Ａ
保護膜調製を行わなかった以外は実施例１１Ａと同様に行った。
保護膜調製を行わなかった以外は実施例１１Ａと同様に行った。
【0124】
実施例１１Ｂ、比較例１１Ｂ～１６Ｂ
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板に代えて、ＳｉＯ2／シリコン基板を使用した以外は、実施例１１Ａ、比較例１１Ａ～１６Ａと同様に行って、酸化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。
Ｓｉ3Ｎ4／シリコン基板に代えて、ＳｉＯ2／シリコン基板を使用した以外は、実施例１１Ａ、比較例１１Ａ～１６Ａと同様に行って、酸化ケイ素膜のエッチングレート（ｎｍ／ｍｉｎ）を算出した。
【0125】
実施例１１Ａ、１１Ｂ、比較例１１Ａ、１１Ｂ～１６Ａ、１６Ｂの結果から、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を算出した。結果を下記表３にまとめて示す。
【0126】
【表3】
【0127】
表３の実施例から、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板に、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩を含む保護膜を設けてから、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理すれば、酸化ケイ素膜のエッチング量を抑制することなく、窒化ケイ素膜のエッチング量を大幅に低下させることができ、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］が顕著に向上することが分かる。
一方、比較例から、水溶性高分子化合物であっても、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩以外の化合物では、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上する効果は得られないことが分かる。
一方、比較例から、水溶性高分子化合物であっても、前記セルロース誘導体（ｃ）又はその塩以外の化合物では、エッチング選択比［酸化ケイ素膜／窒化ケイ素膜］を向上する効果は得られないことが分かる。
【0128】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
［１］ 酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る、エッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
［２］ 前記工程１が、前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を適用して、前記窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する工程である、［１］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［３］ 下記工程を有する、［１］又は［２］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
［４］ 前記洗浄剤はシリコン基板の表面を酸化する作用を有する酸化剤を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［５］ 前記洗浄剤は過酸化物を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［６］ 前記洗浄剤は、アンモニア過水、硫酸過水、及び塩酸過水から選択される少なくとも１種を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［１］ 酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜を含む表面層を有するシリコン基板を、下記工程に付して、前記酸化ケイ素膜が選択的にエッチングされたシリコン基板を得る、エッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程１：前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する
工程２：自然酸化膜除去後の前記シリコン基板に、式（ｃ）で表される構成単位を有するセルロース誘導体又はその塩を含む表面処理剤を塗布して、保護膜付きシリコン基板を得る
工程３：保護膜付きシリコン基板を、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチング処理する
［２］ 前記工程１が、前記シリコン基板の窒化ケイ素膜表面に、酸化ケイ素膜を選択的にエッチングするエッチング液を適用して、前記窒化ケイ素膜表面に生成した自然酸化膜を除去する工程である、［１］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［３］ 下記工程を有する、［１］又は［２］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
工程４：エッチング処理後のシリコン基板を、洗浄剤を用いて洗浄し、保護膜を除去する
［４］ 前記洗浄剤はシリコン基板の表面を酸化する作用を有する酸化剤を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［５］ 前記洗浄剤は過酸化物を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
［６］ 前記洗浄剤は、アンモニア過水、硫酸過水、及び塩酸過水から選択される少なくとも１種を含む、［３］に記載のエッチングされたシリコン基板の製造方法。
【図1】