(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084486
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240618BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20240618BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240618BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240618BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 301
A01D41/12 B
G08G1/16 F
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198782
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西山 峻史
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】三木 淳平
【テーマコード(参考)】
2B043
2B074
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043AB19
2B043BA02
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5H181AA07
5H181AA21
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
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5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301LL01
5H301LL07
5H301LL16
(57)【要約】
【課題】作業車の作業効率や利便性の低下を抑制する。
【解決手段】コンバイン1は、車外の検知領域Aの状況を検知する車外センサ2と、運転部12に搭乗したオペレータMの視線を検知する視線センサ12aと、車外センサ2の出力と視線センサ12aの出力とに基づいて処理を実行する処理部と、を備える。処理部は、オペレータMが検知領域Aを見ていると判断した場合に第1処理を実行し、オペレータが検知領域Aを見ていないと判断した場合に第1処理と異なる第2処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の検知領域の状況を検知する車外センサと、
運転部に搭乗したオペレータの視線を検知する視線センサと、
前記車外センサの出力と前記視線センサの出力とに基づいて処理を実行する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記オペレータが前記検知領域を見ていると判断した場合に第1処理を実行し、前記オペレータが前記検知領域を見ていないと判断した場合に前記第1処理と異なる第2処理を実行する作業車。
【請求項2】
障害物を検知する車外センサと、
運転部に搭乗したオペレータの視線を検知する視線センサと、
前記車外センサの出力と前記視線センサの出力とに基づいて処理を実行する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記オペレータが前記障害物を見ていると判断した場合に第1処理を実行し、前記オペレータが前記障害物を見ていないと判断した場合に前記第1処理と異なる第2処理を実行する作業車。
【請求項3】
前記視線センサは、前記運転部に設けられ前記オペレータの顔を撮影するカメラである請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
複数の前記車外センサを備える請求項1または2に記載の作業車。
【請求項5】
前記車外センサが、カメラ、LiDAR、又はミリ波レーダーである請求項1または2に記載の作業車。
【請求項6】
前記第1処理が報知であり前記第2処理が減速である請求項1または2に記載の作業車。
【請求項7】
走行装置と、
前記視線センサの出力に基づいて前記走行装置を制御する走行制御部と、を備える請求項1または2に記載の作業車。
【請求項8】
人為操作を受け付けるスイッチを備え、
前記走行制御部は、前記スイッチがON状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記走行装置の制御を実行し、前記スイッチがOFF状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記走行装置の制御を実行しない請求項7に記載の作業車。
【請求項9】
作業装置と、
前記視線センサの出力に基づいて前記作業装置を制御する作業制御部と、を備える請求項1または2に記載の作業車。
【請求項10】
人為操作を受け付けるスイッチを備え、
前記作業制御部は、前記スイッチがON状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記作業装置の制御を実行し、前記スイッチがOFF状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記作業装置の制御を実行しない請求項9に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたトラクタは、障害物衝突回避機能を有する。障害物センサが障害物を検知すると、車速の低下や停止等の処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物センサの検知領域は、比較的広めに設定されがちである。そうすると、オペレータが障害物を視認して衝突の可能性は無いと判断している場合にも、障害物センサが障害物を検知して作業車が減速や停車を行う事態が起こり得る。この場合、作業車の作業効率や利便性が低下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、作業車の作業効率や利便性の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車外の検知領域の状況を検知する車外センサと、運転部に搭乗したオペレータの視線を検知する視線センサと、前記車外センサの出力と前記視線センサの出力とに基づいて処理を実行する処理部と、を備え、前記処理部は、前記オペレータが前記検知領域を見ていると判断した場合に第1処理を実行し、前記オペレータが前記検知領域を見ていないと判断した場合に前記第1処理と異なる第2処理を実行することを特徴とする。
【0007】
上記の特徴によれば、オペレータが検知領域を見ているか否かに応じて異なる処理が実行される。例えば、車外センサが障害物を検知したときに、オペレータが検知領域を見ている場合は障害物の報知処理(第1処理の例)が行われ、オペレータが検知領域を見ていない場合は減速の処理(第2処理の例)が行われる。このように上記の特徴によれば、作業車の作業効率や利便性の低下を抑制することができる。
【0008】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、障害物を検知する車外センサと、運転部に搭乗したオペレータの視線を検知する視線センサと、前記車外センサの出力と前記視線センサの出力とに基づいて処理を実行する処理部と、を備え、前記処理部は、前記オペレータが前記障害物を見ていると判断した場合に第1処理を実行し、前記オペレータが前記障害物を見ていないと判断した場合に前記第1処理と異なる第2処理を実行することを特徴とする。
【0009】
上記の特徴によれば、オペレータが障害物を見ているか否かに応じて異なる処理が実行される。例えば、車外センサが障害物を検知したときに、オペレータが障害物を見ている場合は障害物の報知処理(第1処理の例)が行われ、オペレータが障害物を見ていない場合は減速の処理(第2処理の例)が行われる。このように上記の特徴によれば、作業車の作業効率や利便性の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記視線センサは、前記運転部に設けられ前記オペレータの顔を撮影するカメラであると好ましい。
【0011】
上記の特徴によれば、オペレータの視線の適切な検知が行い易い。
【0012】
本発明において、複数の前記車外センサを備えると好ましい。
【0013】
上記の特徴によれば、衝突の可能性を低減できる。
【0014】
本発明において、前記車外センサが、カメラ、LiDAR、又はミリ波レーダーであると好ましい。
【0015】
上記の特徴によれば、車外の状況を適切に検知できる。
【0016】
本発明において、前記第1処理が報知であり前記第2処理が減速であると好ましい。
【0017】
上記の特徴によれば、オペレータが検知領域(または障害物)を見ている場合に減速が行われず報知が行われるので、作業車の作業効率や利便性の低下を抑制することができる。また、オペレータが検知領域(または障害物)を見ていない場合に減速が行われるので、衝突の可能性を低減することができる。
【0018】
本発明において、走行装置と、前記視線センサの出力に基づいて前記走行装置を制御する走行制御部と、を備えると好ましい。
【0019】
上記の特徴によれば、オペレータによる走行装置の制御が容易になる。
【0020】
本発明において、人為操作を受け付けるスイッチを備え、前記走行制御部は、前記スイッチがON状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記走行装置の制御を実行し、前記スイッチがOFF状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記走行装置の制御を実行しないと好ましい。
【0021】
上記の特徴によれば、視線センサの出力に基づく走行装置の制御を行うか否かが、人為操作に基づいて決定されるので、オペレータの意図しない走行装置の動作が抑制される。
【0022】
本発明において、作業装置と、前記視線センサの出力に基づいて前記作業装置を制御する作業制御部と、を備えると好ましい。
【0023】
上記の特徴によれば、オペレータによる作業装置の制御が容易になる。
【0024】
本発明において、人為操作を受け付けるスイッチを備え、前記作業制御部は、前記スイッチがON状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記作業装置の制御を実行し、前記スイッチがOFF状態の場合に前記視線センサの出力に基づく前記作業装置の制御を実行しないと好ましい。
【0025】
上記の特徴によれば、視線センサの出力に基づく作業装置の制御を行うか否かが、人為操作に基づいて決定されるので、オペレータの意図しない作業装置の動作が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】コンバイン及び車外センサの検知領域を示す平面図である。
【
図3】処理部の動作を示すフローチャート図である。
【
図4】走行制御部の動作を示すフローチャート図である。
【
図5】作業制御部の動作をフローチャート図である。
【
図6】処理部の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る作業車の一例である普通型のコンバインについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0028】
図1に示すように、普通型のコンバイン1は、収穫部H、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール90を備えている。
【0029】
なお以下の説明では、コンバイン1の前進する方向を基準として前後左右を定義する。コンバイン1において収穫部Hが位置する方が前である。
図1には、「前」が矢印Fにより示されている。同様に、「後」、「右」、及び「左」が、矢印B、矢印R、及び矢印Lにより示されている。
【0030】
クローラ式の走行装置11(
図2参照)が、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0031】
運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1を操縦するオペレータMが搭乗可能である。運転部12には、視線センサ12a及び人為操作を受け付けるスイッチ12bが設けられている。視線センサ12a及びスイッチ12bの詳細は後述する。
【0032】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール90は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0033】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後方に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含む。収穫部Hは、図示しないアクチュエータにより昇降可能である。
【0034】
刈取装置15は、圃場の作物を刈り取る。特に限定されないが、作物は、例えば小麦、大麦、稲、大豆等である。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯まわりに回転駆動しながら収穫対象の作物を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた作物は、搬送部16へ送られる。
【0035】
この構成により、収穫部Hは、圃場の作物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の作物を刈り取りながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。
【0036】
収穫部Hにより収穫された作物は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、作物は脱穀装置13へ搬送される。
【0037】
脱穀装置13において、作物は脱穀処理される。脱穀処理により得られた収穫物(穀粒)は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された収穫物は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0038】
コンバイン1は、衛星測位モジュール90を備える。衛星測位モジュール90は、GNSS(グローバルナビゲーションサテライトシステム、例えばGPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)で用いられる人工衛星GSからの測位信号を受信する。そして衛星測位モジュール90は、受信した測位信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。
【0039】
〔コンバインの自動走行〕
ここで、コンバイン1は、作物が植立している圃場において自動走行、手動走行、及び自動操舵走行を行うことができるように構成されている。自動走行には、作業しながらの走行と作業を伴わない走行とが含まれる。
【0040】
本実施形態では、自動走行、手動走行、及び自動操舵走行を次の通り定義する。自動走行は、車速と操舵の両方が制御装置80により自動的に制御される走行である。自動走行の間、人為操作は不要である。手動走行は、人為操作に基づいて車速と操舵の制御が行われる走行である。自動操舵走行は、人為操作に基づいて車速の制御が行われ、操舵が制御装置80により自動的に制御される走行である。
【0041】
コンバイン1は、最初に、圃場の外周領域で作物を収穫しながら周回走行を行った後、圃場の作業対象領域で作業走行を行うことにより、圃場の作物を収穫する。
【0042】
なお、外周領域とは、圃場内の外周側の領域である。また、作業対象領域とは、外周領域に囲まれた領域である。
【0043】
本実施形態においては、外周領域での周回走行は手動走行により行われる。なお、本発明はこれに限定されず、周回走行のうちの一部または全てが自動走行または自動操舵走行により行われてもよい。作業対象領域での作業走行は、自動走行により行われる。即ち、コンバイン1は、自動作業走行が可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、外周領域での周回走行の周回数は1周である。しかし、本発明はこれに限定されず、周回走行の周回数は、1周以外の数(例えば2周、または3周)であってもよい。
【0045】
〔車外センサ〕
コンバイン1は、車外の検知領域Aの状況を検知する車外センサ2を備える。具体的には、車外センサ2は、電磁波または音波である検査波を放射して反射波を測定することにより、機体の周囲の障害物を検知する。本実施形態では、車外センサ2はミリ波レーダーであり、検査波及び反射波は電波である。車外センサ2は、ToF(Time of Flight)測定方式の測定装置である。車外センサ2がレーザースキャナ(LiDAR)であってもよい。車外センサ2がソナーであってもよい。この場合、検査波及び反射波は音波である。
【0046】
車外センサ2は、コンバイン1の機体の周囲の障害物を検知すると、障害物を検知したことを示す検知信号を制御装置80へ出力する。
【0047】
車外センサ2がカメラであってもよい。この場合、車外センサ2は、カメラの撮影画像を画像解析して障害物を検知する。画像解析による障害物の検知には、機械学習等により生成される人工知能(AI)が用いられると好適である。
【0048】
本実施形態では、車外センサ2として、機体前方の障害物を検知する前センサ2Fと、機体後方の障害物を検知する後センサ2Bと、機体左方の障害物を検知する左センサ2Lと、機体右方の障害物を検知する右センサ2Rと、が備えられている。4つの車外センサ2によって、コンバイン1の機体の周囲の障害物が検知される。
図1には、前センサ2Fの検知領域Aである前検知領域AF、後センサ2Bの検知領域Aである後検知領域AB、右センサ2Rの検知領域Aである右検知領域AR、及び左センサ2Lの検知領域Aである左検知領域ALが示されている。
【0049】
〔視線センサ〕
コンバイン1は、運転部12に搭乗したオペレータMの視線を検知する視線センサ12aを備える。具体的には、視線センサ12aは、運転部12に設けられオペレータMの顔を撮影するカメラである。
【0050】
視線センサ12aは、撮影画像を画像解析して、オペレータMの視線を検知する。例えば、視線センサ12aは、撮影画像におけるオペレータMの顔の特定点(例えば、目尻や鼻、口など)の位置と瞳の位置とを特定し、撮影画像からオペレータMの顔の向きを特定し、特定されたデータからオペレータMの視線の向きを特定する。視線の向きは、機体の向きを基準とする角度(水平面内の角度又は立体角)として特定されてもよいし、地理的な方位(東西南北や北を基準とする角度など)として特定されてもよいし、水平面内の2次元ベクトルまたは三次元ベクトルとして特定されてもよい。視線センサ12aは、オペレータMの視線(視線の向き)を示す検知信号を制御装置80へ出力する。
【0051】
視線センサ12aが、オペレータMが着用するもの(例えば、メガネ、ゴーグル、帽子など)に設けられてもよい。視線センサ12aが、オペレータMの顔の向きを特定するための装置(例えば、IMUや方位センサなど)を備えるとよい。
【0052】
視線センサ12aが、運転部12におけるオペレータMの周囲に固定されてもよい。例えば、1つの視線センサ12aがオペレータMの前方に配置されてもよい。複数の視線センサ12aがオペレータMの周囲に配置されてもよい。2つの視線センサ12aが、オペレータMを挟んで対向する位置(例えば、前後や左右)に配置されてもよい。
【0053】
〔制御に関する構成〕
図2に示すように、コンバイン1は、制御装置80を含むシステムを備えている。制御装置80、及び、制御装置80に含まれる各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であってもよいし、ソフトウェアにおける機能部であってもよい。
【0054】
制御装置80に、入力インターフェース(不図示)を介して、車外センサ2(前センサ2F、後センサ2B、左センサ2L、及び右センサ2R)と、衛星測位モジュール90と、視線センサ12aと、が接続されている。車外センサ2は、コンバイン1の機体の周囲の障害物を検知すると、障害物を検知したことを示す検知信号を制御装置80へ出力する。視線センサ12aは、オペレータMの視線(視線の向き)を示す検知信号を制御装置80へ出力する。衛星測位モジュール90は、測位信号を制御装置80へ出力する。
【0055】
制御装置80は、出力インターフェース(不図示)を介して、走行装置11と、収穫部Hと、脱穀装置13と、穀粒排出装置18と、報知装置24と、を制御可能に構成されている。報知装置24は、例えば、ホーンやスピーカ等の音出力装置であってもよいし、メッセージ表示等を可能なディスプレイ表示装置等であってもよい。本発明の『作業装置』に収穫部Hが含まれる。
【0056】
制御装置80に記憶部89が設けられている。記憶部89は、機能部を実現するためのソフトウェアや、機能部が生成する一時データ、工場データを記憶する。記憶部89は、例えば、HDDや不揮発性RAMなどである。
【0057】
制御装置80は、衛星測位モジュール90により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。そして制御装置80は、当該位置座標に基づいて圃場マップを生成する。この圃場マップに、圃場の外形を示すマップと、作業の対象となる作業対象領域を示すマップと、が含まれる。圃場の外形を示すマップは、外周領域での周回走行の際に取得される当該位置情報に基づいて生成可能である。
【0058】
なお、当該位置座標は、コンバイン1のうち、衛星測位モジュール90の位置座標であってもよいし、前センサ2Fの位置座標であってもよいし、収穫部Hの左右方向中心位置の座標であってもよい。
【0059】
本実施形態では、制御装置80は複数の制御モードを有する。複数の制御モードに、手動モードと、自動操舵モードと、自動モードと、が含まれる。
【0060】
制御装置80は、手動モードのとき、人為操作に基づいて、コンバイン1の走行を制御する。
【0061】
制御装置80は、自動操舵モードのとき、人為操作に基づいて、コンバイン1の操舵を自動制御する。
【0062】
制御装置80は、自動モードのとき、圃場マップの作業対象領域に、自動走行のための目標走行経路を生成する。そして、自動モードのときに制御装置80は、測位信号に基づく自車位置と、目標走行経路と、に基づいて、コンバイン1が目標走行経路に沿って自動走行するように走行装置11を制御する。同時に、自動モードのときに制御装置80は、作業対象領域において作業走行を行うように収穫部H及び脱穀装置13を制御する。
【0063】
〔処理部〕
制御装置80は、車外センサ2の出力と視線センサ12aの出力とに基づいて処理を実行する処理部81を備える。処理部81は、オペレータMが検知領域Aを見ていると判断した場合に第1処理を実行し、オペレータMが検知領域Aを見ていないと判断した場合に第1処理と異なる第2処理を実行する。
【0064】
以下詳しく説明する。処理部81は、車外センサ2から検知信号が出力されると、視線センサ12aの出力に基づいて、オペレータMが検知領域Aを見ているか否かを判断する。具体的には、処理部81は、オペレータMの視線が、障害物を検知した車外センサ2の検知領域Aの方に向いている場合に、オペレータMが検知領域Aを見ていると判断する。処理部81は、オペレータMの視線が、障害物を検知した車外センサ2の検知領域Aの方に向いていない場合に、オペレータMが検知領域Aを見ていないと判断する。例えば、処理部81は、記憶部89に予め記憶されている検知領域Aの方向を示すデータと、視線センサ12aの出力が示す視線の方向と、を照合して判断を行う。
【0065】
図1の例では、コンバイン1の前方に障害物としての作業者Wが立っている。車外センサ2のうちの前センサ2Fが、作業者Wを検知して検知信号を制御装置80へ出力する。オペレータMは作業者Wを見ているので、オペレータMの視線Eは右斜め前方を向いている。視線センサ12aは、視線Eの方向を示す出力を制御装置80へ送信する。処理部81は、視線Eの方向(右斜め前方)が、前センサ2Fの前検知領域AFの方向(前方向を中心に左右85°)の範囲内であることから、オペレータMが前検知領域AFを見ていると判断する。
【0066】
処理部81は、オペレータMが検知領域Aを見ているか否かの判断に基づいて、第1処理または第2処理を実行する。本実施形態では、第1処理がオペレータMへの報知である。処理部81は、報知装置24を動作させてオペレータMへ障害物の存在を報知する。第2処理が減速である。処理部81は、走行装置11を制御して減速させる。
【0067】
抽象的にいえば、第1処理は走行への影響の少ない処理であり、第2処理は走行への影響がより大きい処理である。なお第1処理と第2処理の組合せははこれに限られない。
【0068】
例えば、第1処理は報知であり、第2処理は停車である。第1処理は減速であり、第2処理は停車である。第1処理は減速であり、第2処理は第1処理よりも大きな減速である。第1処理は無音の報知であり、第2処理は音による報知である。第1処理は音による報知であり、第2処置は第1処理よりも音量の大きな報知である。
【0069】
図3のフローチャートを参照しながら処理部81の動作について説明する。
【0070】
まず、車外センサ2が車外の検知領域Aの状況を検知する(ステップS101)。視線センサ12aがオペレータMの視線を検知する(ステップS102)。
【0071】
検知領域Aで障害物が検知されない場合(ステップS103:No)、ステップS101、S102の処理が繰り返される。
【0072】
検知領域Aで障害物が検知された場合(ステップS103:Yes)、処理部81が、オペレータMが検知領域A(障害物が検知された検知領域A)を見ているか否かを判断する(ステップS104)。
【0073】
オペレータMが検知領域Aを見ている場合(ステップS104:Yes)、処理部81が報知(第1処理)を実行する(ステップS105)。
【0074】
オペレータMが検知領域Aを見ていない場合(ステップS104:No)、処理部81が減速(第2処理)を実行する(ステップS106)。
【0075】
ステップS105またはステップS106が終了すると、処理ルーチンを終了する。この処理ルーチンはコンバイン1の動作中に繰り返し実行される。
【0076】
〔走行制御部〕
制御装置80は、視線センサ12aの出力に基づいて走行装置11を制御する走行制御部82を備える。詳しくは、走行制御部82は、視線センサ12aの出力が示す視線の方向に対応する方向にコンバイン1が走行するように、走行装置11を制御する。例えば、視線の方向が右方向である場合に、走行制御部82はコンバイン1を右旋回させる。視線の方向が左方向である場合に、走行制御部82はコンバイン1を左旋回させる。視線の方向が上方向である場合に、走行制御部82はコンバイン1を増速させる。視線の方向が下方向である場合に、走行制御部82はコンバイン1を減速または停車させる。
【0077】
本実施形態では、走行制御部82は、スイッチ12bがON状態の場合に視線センサ12aの出力に基づく走行装置11の制御を実行し、スイッチ12bがOFF状態の場合に視線センサ12aの出力に基づく走行装置11の制御を実行しない。スイッチ12bは、人為操作を受け付けている間にONとなり人為操作を受け付けていない間にOFFとなる。スイッチ12bの形態はこれに限られない。例えば、スイッチ12bが、人為操作を受け付ける都度、ON状態とOFF状態との間で状態変化するものであってもよい。スイッチ12bは、押しボタンでもよいし、レバーでもよいし、タッチパネル式表示装置に表示されたオブジェクトであってもよい。
【0078】
図4のフローチャートを参照しながら走行制御部82の動作について説明する。
【0079】
視線センサ12aがオペレータMの視線を検知する(ステップS201)。
【0080】
スイッチ12bがOFF状態である場合(ステップS202:No)、処理ルーチンを終了する。
【0081】
スイッチ12bがON状態である場合(ステップS202:Yes)、走行制御部82が、視線センサ12aの出力に基づく走行装置11の制御を実行する(ステップS203)。そして処理ルーチンを終了する。この処理ルーチンはコンバイン1の動作中に繰り返し実行される。
【0082】
〔作業制御部〕
制御装置80は、視線センサ12aの出力に基づいて収穫部H(作業装置の一例)を制御する作業制御部83を備える。詳しくは、作業制御部83は、視線センサ12aの出力が示す視線の方向に対応するように、収穫部Hを制御する。例えば、視線の方向が上方向である場合に、作業制御部83は収穫部Hを上昇させる。視線の方向が下方向である場合に、作業制御部83は収穫部Hを下降させる。
【0083】
本実施形態では、作業制御部83は、スイッチ12bがON状態の場合に視線センサ12aの出力に基づく収穫部Hの制御を実行し、スイッチ12bがOFF状態の場合に視線センサ12aの出力に基づく収穫部Hの制御を実行しない。
【0084】
なお、1つのスイッチ12bの状態に応じて走行制御部82及び作業制御部83の動作が制御されてもよい。走行制御部82に対応するスイッチ12bと作業制御部83に対応する別のスイッチ12bとが運転部12に設けられてもよい。走行制御部82と作業制御部83のいずれがスイッチ12bの状態に応じて動作するかを指定する別のスイッチが運転部12に設けられてもよい。
【0085】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではない。以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0086】
(1)処理部81が、オペレータMが障害物を見ていると判断した場合に第1処理を実行し、オペレータMが障害物を見ていないと判断した場合に第1処理と異なる第2処理を実行するよう構成されてもよい。本実施形態では、車外センサ2は、検知した障害物の位置を制御装置80へ出力する。
【0087】
以下詳しく説明する。処理部81は、車外センサ2から検知信号が出力されると、視線センサ12aの出力に基づいて、オペレータMが障害物を見ているか否かを判断する。具体的には、処理部81は、オペレータMの視線が、車外センサ2が検知した障害物の方に向いている場合に、オペレータMが障害物を見ていると判断する。処理部81は、オペレータMの視線が、車外センサ2が検知した障害物の方に向いていない場合に、オペレータMが障害物を見ていないと判断する。例えば、処理部81は、車外センサ2が検知した障害物の位置座標と、視線センサ12aの出力が示す視線の方向と、を照合して判断を行う。
【0088】
図1の例では、コンバイン1の前方に障害物としての作業者Wが立っている。車外センサ2のうちの前センサ2Fが、作業者Wを検知して位置座標を含む検知信号を制御装置80へ出力する。オペレータMは作業者Wを見ているので、オペレータMの視線Eは右斜め前方を向いている。視線センサ12aは、視線Eの方向を示す出力を制御装置80へ送信する。処理部81は、視線Eの方向(右斜め前方)の延長線上に作業者Wが位置することから、オペレータMが障害物(作業者W)を見ていると判断する。
【0089】
図6のフローチャートを参照しながら処理部81の動作について説明する。なおステップS403以外の処理は、
図3のフローチャートと同様である。
【0090】
まず、車外センサ2が車外の検知領域Aの状況を検知する(ステップS401)。視線センサ12aがオペレータMの視線を検知する(ステップS402)。
【0091】
検知領域Aで障害物が検知されない場合(ステップS403:No)、ステップS401、S402の処理が繰り返される。
【0092】
検知領域Aで障害物が検知された場合(ステップS403:Yes)、処理部81が、オペレータMが障害物を見ているか否かを判断する(ステップS404)。
【0093】
オペレータMが障害物を見ている場合(ステップS404:Yes)、処理部81が報知(第1処理)を実行する(ステップS405)。
【0094】
オペレータMが障害物を見ていない場合(ステップS404:No)、処理部81が減速(第2処理)を実行する(ステップS406)。
【0095】
ステップS405またはステップS406が終了すると、処理ルーチンを終了する。この処理ルーチンはコンバイン1の動作中に繰り返し実行される。
【0096】
(2)上述の実施形態では、コンバイン1が4つの車外センサ2を備える。車外センサ2の数は、1-3でもよいし、5つ以上でもよい。
【0097】
(3)上述の実施形態では、制御装置80は、走行の制御モードとして、手動モードと、自動操舵モードと、自動モードと、を有する。制御モードに応じて第1処理及び第2処理が変更されてもよい。例えば、手動モードにおける第1処理/第2処理が報知/減速であり、自動操舵モードにおける第1処理/第2処理が報知/停車であり、自動モードにおける第1処理/第2処理が減速/停車であってもよい。
【0098】
(4)上述の実施形態では、作業車として収穫機(普通型コンバイン)が例示され、作業装置の例として収穫部Hが例示された。作業車が田植機である場合、作業装置は植付装置である。作業車がトラクタである場合、作業装置は各種のインプルメントである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、作業車に適用可能である。すなわち本発明は、本実施形態に例示された汎用型のコンバイン1に限定されず、自脱型のコンバイン、種々の収穫機(例えばトウモロコシ収穫機、サトウキビ収穫機、ポテト収穫機、ビート収穫機、ニンジン収穫機等)、トラクタ、田植機、施肥管理機、自走式散布機、自走式草刈機等に適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
2 :車外センサ
2B :後センサ
2F :前センサ
2L :左センサ
2R :右センサ
11 :走行装置
12 :運転部
12a :視線センサ
12b :スイッチ
81 :処理部
82 :走行制御部
83 :作業制御部
A :検知領域
E :視線
H :収穫部(作業装置)
M :オペレータ
W :作業者(障害物)