(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084500
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H02M7/06 E
H02M7/06 G
H02M7/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198806
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】笠原 政史
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA07
5H006CA12
5H006CA13
5H006CB01
5H006CB04
5H006CC01
5H006CC08
5H006HA83
5H006HA84
(57)【要約】
【課題】高調波電流の抑制に用いられる回路の共振の影響による力率の特性の変化を抑制できるコンバータを提供する。
【解決手段】キャパシタ整流回路1は、第1交流ノードAC1と第1中間ノードN1との間の電流経路に設けられたキャパシタCと、第1中間ノードN1から正ノードDCpへ一方向に電流を流す第1正側ダイオードD1pと、負ノードDCnから第1中間ノードN1へ一方向に電流を流す第1負側ダイオードD1nとを含む。インダクタ整流回路2は、第1交流ノードAC1と第2中間ノードN2との間の電流経路に設けられた共通インダクタLmと、第2中間ノードN2から正ノードDCpへ一方向に電流を流す第2正側ダイオードD2pと、負ノードDCnから第2中間ノードN2へ一方向に電流を流す第2負側ダイオードD1nとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換するコンバータであって、
前記交流電圧が印加される一対の交流ノードと、
前記直流電圧の正の電位が生じる正ノードと、
前記直流電圧の負の電位が生じる負ノードと、
前記直流電圧の交流成分を平滑化する平滑回路と、
一方の前記交流ノードである第1交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第1交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する第1整流部とを有し、
前記第1整流部が、前記第1交流ノードをそれぞれ対象の前記交流ノードとするキャパシタ整流回路とインダクタ整流回路とを含み、
前記キャパシタ整流回路が、
前記対象の交流ノードに接続される第1中間ノードと、
前記第1中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第1正側ダイオードと、
前記負ノードから前記第1中間ノードへ一方向に電流を流す第1負側ダイオードと、
前記対象の交流ノードと前記第1中間ノードとの間の電流経路に設けられたキャパシタとを含み、
前記インダクタ整流回路が、
前記対象の交流ノードに接続される第2中間ノードと、
前記第2中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第2正側ダイオードと、
前記負ノードから前記第2中間ノードへ一方向に電流を流す第2負側ダイオードと、
前記対象の交流ノードと前記第2中間ノードとの間の第1電流経路、前記第2正側ダイオードが設けられた前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の第2電流経路、及び、前記第2負側ダイオードが設けられた前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の第3電流経路の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのインダクタとを含む、
コンバータ。
【請求項2】
他方の前記交流ノードである第2交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第2交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する第2整流部を有し、
前記第2整流部が、
前記第2交流ノードを前記対象の交流ノードとする前記キャパシタ整流回路と、
前記第2交流ノードを前記対象の交流ノードとする前記インダクタ整流回路と、
ダイオード整流回路と
の少なくとも1つを含み、
前記ダイオード整流回路が、
前記第2交流ノードに接続される第3中間ノードと、
前記第3中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第3正側ダイオードと、
前記負ノードから前記第3中間ノードへ一方向に電流を流す第3負側ダイオードと
を含む、
請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路、又は、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記交流ノードと前記第2中間ノードとの間の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタである共通インダクタを含む、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項4】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記共通インダクタと前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記共通インダクタとが、磁気結合されている、
請求項3に記載のコンバータ。
【請求項5】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路が、
前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、
前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタと
を含み、
前記第2整流部が、前記キャパシタ整流回路、及び、前記ダイオード整流回路のいずれか一方を含む、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項6】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタと前記負側インダクタとが、磁気結合されている、
請求項5に記載のコンバータ。
【請求項7】
前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、
前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、
前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタと
を含む、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項8】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の電流経路に設けられた前記正側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の電流経路に設けられた前記正側インダクタとが共通の前記インダクタであり、
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の電流経路に設けられた前記負側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の電流経路に設けられた前記負側インダクタとが共通の前記インダクタである、
請求項7に記載のコンバータ。
【請求項9】
前記第2整流部が、前記ダイオード整流回路を含む、
請求項8に記載のコンバータ。
【請求項10】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路と前記第2整流部の前記インダクタ整流回路とにおける共通の前記正側インダクタと、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路と前記第2整流部の前記インダクタ整流回路とにおける共通の前記負側インダクタとが、磁気結合されている、
請求項8に記載のコンバータ。
【請求項11】
前記第1整流部と前記第2整流部がそれぞれ前記キャパシタ整流回路を含み、
前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、
前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、
前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタと
のいずれか一方を含み、
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタとが共通の前記インダクタであるか、又は、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記負側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記負側インダクタとが共通の前記インダクタである、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項12】
前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、
直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと、単相3線式の電源ラインにおける中性線とが接続され、
一対の前記交流ノードと、単相3線式の前記電源ラインにおける2つの電圧線とが接続され、
前記第1整流部及び前記第2整流部の各々が、前記キャパシタ整流回路と前記インダクタ整流回路とを含み、
前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項13】
前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記キャパシタ整流回路に含まれる前記キャパシタが同一の静電容量を持ち、
前記第1整流部及び前記第2整流部の2つの前記インダクタ整流回路において、
一方の前記インダクタ整流回路の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタと他方の前記インダクタ整流回路の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタとが同一のインダクタンスを持ち、
一方の前記インダクタ整流回路の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと他方の前記インダクタ整流回路の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタとが同一のインダクタンスを持つ、
請求項12に記載のコンバータ。
【請求項14】
交流の電源ラインに接続された一次巻線と、和動接続された2つの二次巻線とを含むトランスを有し、
前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、
直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと、和動接続された2つの前記二次巻線における中間のノードである第5中間ノードとが接続され、
一対の前記交流ノードと、和動接続された2つの前記二次巻線における両端のノードとが接続され、
前記第1整流部及び前記第2整流部の各々が、前記キャパシタ整流回路と前記インダクタ整流回路とを含み、
前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項15】
前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、
他方の前記交流ノードである第2交流ノードが、直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードに接続され、
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む、
請求項1に記載のコンバータ。
【請求項16】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタとが、磁気結合されている、
請求項15に記載のコンバータ。
【請求項17】
前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、
直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと前記第2交流ノードとの間の電流経路に設けられた第1スイッチを有し、
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路、又は、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む、
請求項2~請求項10及び請求項12~請求項13のいずれか一項に記載のコンバータ。
【請求項18】
前記第1整流部の前記インダクタ整流回路は、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタである共通インダクタを含んでおり、
前記共通インダクタと前記第1交流ノードとの間の電流経路に設けられた入力側インダクタと、
前記第1スイッチがオフのとき、前記第1整流部の前記キャパシタ整流回路における前記キャパシタの一方の端子を前記共通インダクタと入力側インダクタとの間の電流経路に接続し、前記第1スイッチがオンのとき、当該キャパシタの当該一方の端子を前記第1交流ノードに接続する第2スイッチとを有する、
請求項17に記載のコンバータ。
【請求項19】
前記第1スイッチは、前記第2整流部と前記第2交流ノードとの間の電流経路における第6中間ノードに接続されており、
前記第6中間ノードと前記第2交流ノードとの間の電流経路に設けられた入力側インダクタを有する、
請求項17に記載のコンバータ。
【請求項20】
交流の電源ラインに接続された一次巻線と二次巻線とを含むトランスを有し、
一対の前記交流ノードが、前記二次巻線の両端のノードに接続される、
請求項1~請求項11及び請求項15~請求項16のいずれか一項記載のコンバータ。
【請求項21】
前記第1整流部を有するか、又は、前記第1整流部と第2整流部とを有し、
前記第2整流部は、他方の前記交流ノードである第2交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第2交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成し、
前記第1整流部と前記第1交流ノードとの間の電流経路、及び、前記第2整流部と前記第2交流ノードとの間の電流経路の少なくとも一方に設けられた入力側インダクタを有する、
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載のコンバータ。
【請求項22】
一対の前記交流ノードに直接又は間接的に接続され、前記交流電圧を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を平滑化する第2平滑回路とを有する、
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載のコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単相交流電源を整流して直流電源を形成する直流電源装置において、全波整流ダイオードブリッジD1~D4と平滑コンデンサ5の間に、リアクトル1とダイオード2の直列回路、及び、リアクトル3とコンデンサ4の直列回路が並列に接続された回路が示されている。この回路では、リアクトル1とダイオード2の直列回路に流れる位相遅れ電流と、リアクトル3とコンデンサ4の直列共振回路に流れる振動電流とを合成した波形の電源電流が単相交流電源から全波整流ダイオードブリッジD1~D4へ流れるため、電源電流に含まれる高調波電流が低減して力率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の回路では、リアクトル3とコンデンサ4の直列共振回路に流れる振動電流が負の値となり、リアクトル1とダイオード2の直列回路に流れる位相遅れ電流がこの振動電流によって相殺されてしまう期間が存在する。そのため、力率の特性がリアクトル3とコンデンサ4の直列共振の影響を受けて変化し易いという問題がある。すなわち、リアクトル3のインダクタンスの僅かな違いによって直列共振周波数が変化するため、リアクトル3にはインダクタンス値の公差が大きいと、力率の特性のばらつきが大きくなる。また、電源周波数に応じて直列共振の減衰量が敏感に変化するため、電源周波数の違いに応じて力率の特性が大きく変化する。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高調波電流の抑制に用いられる回路の共振の影響による力率の特性の変化を抑制できるコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様に係るコンバータは、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータであって、前記交流電圧が印加される一対の交流ノードと、前記直流電圧の正の電位が生じる正ノードと、前記直流電圧の負の電位が生じる負ノードと、前記直流電圧の交流成分を平滑化する平滑回路と、一方の前記交流ノードである第1交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第1交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する第1整流部とを有し、前記第1整流部が、前記第1交流ノードをそれぞれ対象の前記交流ノードとするキャパシタ整流回路とインダクタ整流回路とを含み、前記キャパシタ整流回路が、前記対象の交流ノードに接続される第1中間ノードと、前記第1中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第1正側ダイオードと、前記負ノードから前記第1中間ノードへ一方向に電流を流す第1負側ダイオードと、前記対象の交流ノードと前記第1中間ノードとの間の電流経路に設けられたキャパシタとを含み、前記インダクタ整流回路が、前記対象の交流ノードに接続される第2中間ノードと、前記第2中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第2正側ダイオードと、前記負ノードから前記第2中間ノードへ一方向に電流を流す第2負側ダイオードと、前記対象の交流ノードと前記第2中間ノードとの間の第1電流経路、前記第2正側ダイオードが設けられた前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の第2電流経路、及び、前記第2負側ダイオードが設けられた前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の第3電流経路の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのインダクタとを含む、コンバータである。
【0007】
好適に、他方の前記交流ノードである第2交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第2交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する第2整流部を有し、前記第2整流部が、前記第2交流ノードを前記対象の交流ノードとする前記キャパシタ整流回路と、前記第2交流ノードを前記対象の交流ノードとする前記インダクタ整流回路と、ダイオード整流回路との少なくとも1つを含み、前記ダイオード整流回路が、前記第2交流ノードに接続される第3中間ノードと、前記第3中間ノードから前記正ノードへ一方向に電流を流す第3正側ダイオードと、前記負ノードから前記第3中間ノードへ一方向に電流を流す第3負側ダイオードとを含む。
【0008】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路、又は、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記交流ノードと前記第2中間ノードとの間の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタである共通インダクタを含む。
【0009】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記共通インダクタと前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記共通インダクタとが、磁気結合されている。
【0010】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路が、前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタとを含み、前記第2整流部が、前記キャパシタ整流回路、及び、前記ダイオード整流回路のいずれか一方を含む。
【0011】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタと前記負側インダクタとが、磁気結合されている。
【0012】
好適に、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第2中間ノードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、前記第2中間ノードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタとを含む。
【0013】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の電流経路に設けられた前記正側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の電流経路に設けられた前記正側インダクタとが共通の前記インダクタであり、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の電流経路に設けられた前記負側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路における前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の電流経路に設けられた前記負側インダクタとが共通の前記インダクタである。
【0014】
好適に、前記第2整流部が、前記ダイオード整流回路を含む。
【0015】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路と前記第2整流部の前記インダクタ整流回路とにおける共通の前記正側インダクタと、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路と前記第2整流部の前記インダクタ整流回路とにおける共通の前記負側インダクタとが、磁気結合されている。
【0016】
好適に、前記第1整流部と前記第2整流部がそれぞれ前記キャパシタ整流回路を含み、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第2正側ダイオードと前記正ノードとの間の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタである正側インダクタと、前記第2負側ダイオードと前記負ノードとの間の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタである負側インダクタとのいずれか一方を含み、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記正側インダクタとが共通の前記インダクタであるか、又は、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記負側インダクタと、前記第2整流部の前記インダクタ整流回路の前記負側インダクタとが共通の前記インダクタである。
【0017】
好適に、前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと、単相3線式の電源ラインにおける中性線とが接続され、一対の前記交流ノードと、単相3線式の前記電源ラインにおける2つの電圧線とが接続され、前記第1整流部及び前記第2整流部の各々が、前記キャパシタ整流回路と前記インダクタ整流回路とを含み、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む。
【0018】
好適に、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記キャパシタ整流回路に含まれる前記キャパシタが同一の静電容量を持ち、前記第1整流部及び前記第2整流部の2つの前記インダクタ整流回路において、一方の前記インダクタ整流回路の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタと他方の前記インダクタ整流回路の前記第1電流経路に設けられた前記インダクタとが同一のインダクタンスを持ち、一方の前記インダクタ整流回路の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと他方の前記インダクタ整流回路の前記第3電流経路に設けられた前記インダクタとが同一のインダクタンスを持つ。
【0019】
好適に、交流の電源ラインに接続された一次巻線と、和動接続された2つの二次巻線とを含むトランスを有し、前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと、和動接続された2つの前記二次巻線における中間のノードである第5中間ノードとが接続され、一対の前記交流ノードと、和動接続された2つの前記二次巻線における両端のノードとが接続され、前記第1整流部及び前記第2整流部の各々が、前記キャパシタ整流回路と前記インダクタ整流回路とを含み、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む。
【0020】
好適に、前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、他方の前記交流ノードである第2交流ノードが、直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードに接続され、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む。
【0021】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路の前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタとが、磁気結合されている。
【0022】
好適に、前記平滑回路が、前記正ノードと前記負ノードとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタを含み、直列接続された2つの前記平滑用キャパシタにおける中間のノードである第4中間ノードと前記第2交流ノードとの間の電流経路に設けられた第1スイッチを有し、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路、又は、前記第1整流部及び前記第2整流部の各前記インダクタ整流回路が、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタを含む、かつ/又は、前記第2電流経路に設けられた前記インダクタと前記第3電流経路に設けられた前記インダクタを含む。
【0023】
好適に、前記第1整流部の前記インダクタ整流回路は、前記第1電流経路に設けられた前記インダクタである共通インダクタを含んでおり、前記共通インダクタと前記第1交流ノードとの間の電流経路に設けられた入力側インダクタと、前記第1スイッチがオフのとき、前記第1整流部の前記キャパシタ整流回路における前記キャパシタの一方の端子を前記共通インダクタと入力側インダクタとの間の電流経路に接続し、前記第1スイッチがオンのとき、当該キャパシタの当該一方の端子を前記第1交流ノードに接続する第2スイッチとを有する。
【0024】
好適に、前記第1スイッチは、前記第2整流部と前記第2交流ノードとの間の電流経路における第6中間ノードに接続されており、前記第6中間ノードと前記第2交流ノードとの間の電流経路に設けられた入力側インダクタを有する。
【0025】
好適に、交流の電源ラインに接続された一次巻線と二次巻線とを含むトランスを有し、一対の前記交流ノードが、前記二次巻線の両端のノードに接続される。
【0026】
好適に、前記第1整流部を有するか、又は、前記第1整流部と第2整流部とを有し、前記第2整流部は、他方の前記交流ノードである第2交流ノードから前記正ノードへ一方向に電流が流れる電流経路と、前記負ノードから前記第2交流ノードへ一方向に電流が流れる電流経路とを形成し、前記第1整流部と前記第1交流ノードとの間の電流経路、及び、前記第2整流部と前記第2交流ノードとの間の電流経路の少なくとも一方に設けられた入力側インダクタを有する。
【0027】
好適に、一対の前記交流ノードに直接又は間接的に接続され、前記交流電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路の出力を平滑化する第2平滑回路とを有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高調波電流の抑制に用いられる回路の共振の影響による力率の特性の変化を抑制できるコンバータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2Aは、キャパシタ整流回路の構成の一例を示す図である。
図2B~
図2Jは、インダクタ整流回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3Aは、磁気結合されたインダクタを説明するための図である。
図3B~
図3Iは、正側インダクタと負側インダクタとが磁気結合されたインダクタ整流回路の例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1整流部のインダクタ整流回路と第2整流部のインダクタ整流回路とにおいて、正側インダクタ及び負側インダクタが共有される場合を説明するための図である。
【
図17】
図17は、第1整流部のインダクタ整流回路と第2整流部のインダクタ整流回路とにおいて、磁気結合された正側インダクタ及び負側インダクタが共有される場合を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図20】
図20は、第4実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第4実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図23】
図23は、第4実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図24】
図24は、第4実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図25】
図25は、第5実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図26】
図26は、第5実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図28】
図28は、第5実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図29】
図29は、第5実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図31】
図31は、第5実施形態に係るコンバータの第4実施例を示す図である。
【
図33】
図33は、第1整流部のインダクタ整流回路と第2整流部のインダクタ整流回路とにおいて、正側インダクタ及び負側インダクタの一方が共有される場合を説明するための図である。
【
図34】
図34は、第5実施形態に係るコンバータの第5実施例を示す図である。
【
図36】
図36は、第6実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図37】
図37は、第6実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図39】
図39は、第6実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図41】
図41は、第6実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図43】
図43は、第7実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図44】
図44は、第7実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図47】
図47は、第7実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図50】
図50は、第7実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図53】
図53は、第7実施形態に係るコンバータの第4実施例を示す図である。
【
図56】
図56は、第7実施形態に係るコンバータの第5実施例を示す図である。
【
図60】
図60は、第8実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
【
図62】
図62は、第8実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
【
図64】
図64は、第8実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
【
図66】
図66は、第8実施形態に係るコンバータの第4実施例を示す図である。
【
図68】
図68は、第9実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図69】
図69は、第10実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図70】
図70は、第10実施形態に係るコンバータの一実施例を示す図である。
【
図72】
図72は、第11実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図73】
図73は、第11実施形態に係るコンバータの一実施例を示す図である。
【
図75】
図75は、第12実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図76】
図76は、第12実施形態に係るコンバータの一実施例を示す図である。
【
図80】
図80は、
図19Aに示す第3実施形態に係るコンバータのシミュレーション結果を示す図である。
【
図81】
図81は、特許文献1に記載された回路のシミュレーション結果と
図19Aに示すコンバータのシミュレーション結果とを比較して示した図である。
【
図82】
図82A~
図82Cは、コンデンサインプット型のブリッジ整流回路とそのシミュレーション結果を示す図である。
【
図83】
図83A~
図83Cは、コンデンサインプット型の倍電圧整流回路とそのシミュレーション結果を示す図である。
【
図84】
図84A及び
図84Bは、ブリッジ整流動作と倍電圧整流動作とをスイッチによって切り替えるコンデンサインプット型の整流回路を示す図である。
【
図85】
図85A~
図85Cは、キャパシタによる位相進み要素が入力に挿入されたコンデンサインプット型の整流回路とそのシミュレーション結果を示す図である。
【
図86】
図86A~
図86Cは、インダクタによる位相遅れ要素が入力に挿入されたコンデンサインプット型の整流回路とそのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本実施形態に係るコンバータについて図面を参照しながら説明する。
【0031】
(シミュレーションの共通条件について)
本実施形態の説明では、シミュレーションによって性能を比較して効果を示している。各回路では、なるべく共通の条件でシミュレーションを行った。これらの共通条件を以下に記す。
【0032】
交流電源は原則として単相200Vと単相100Vを例示し、各々、50Hzと60Hzの電源周波数でシミュレーションを行った。シミュレーションの回路図は50Hzと60Hzで共通とし、回路図中の括弧内の値は60Hz時の値を示している。
【0033】
シミュレーションの回路図において交流電源に直列に接続されている抵抗とインダクタは、電源インピーダンスの規格値に合わせるためのリファレンスインピーダンスネットワークを示しており、単相200Vにおいて抵抗値が0.38Ω、インダクタンスが0.46mHであり、単相100Vにおいて抵抗値が0.4Ω、インダクタンスが0.37mHである。
【0034】
単相200Vではブリッジ整流回路を使用して、平滑用キャパシタの静電容量は2000μFとした。単相100Vでは倍電圧整流回路を使用して、4000μFの平滑用キャパシタを2個直列に使用した。これらによって、ともに直流200V強を出力するようにした。
【0035】
ダイオードは、650V/60Aの市販されているダイオードのモデルを使用した。
負荷RLは、リファレンスインピーダンスネットワークを含まない単相200V/単相100Vの電源の消費電力が略1kWになるように値を調整した。
【0036】
各回路図には、一例としてシミュレーションに使用した各素子の定数を記載している。
各実施形態におけるキャパシタやインダクタの定数は、力率が比較的高くなるよう適当に選択された値であり、最高の力率になるように最適化されたものではない。
【0037】
シミュレーションの回路はリファレンスインピーダンスを備えているが、波形図の下に表示している力率は、リファレンスインピーダンスを考慮せず、正弦波の交流電源の電圧と電流から下記の式(1)で求めた値(PF)を表示している。式(1)において、「φ」は、電源電圧の基本波と電源電流の基本波との位相差を示す。また「THD」は、電源電流の基本波の振幅を1とした場合における各高調波の振幅の2乗を足し合わせた総和の平方根である。
【0038】
【0039】
【0040】
なお、チョークとして用いられるインダクタのインダクタンスと直列抵抗は、インダクタンスがn倍になると直列抵抗が略√n倍になるという関係にある。本シミュレーションでは、インダクタンスが5mHの場合に直列抵抗が20mΩという、市販品において一般的なインダクタを基準として、上記の関係に基づいて各インダクタの直列抵抗を設定している。例えば、20mHのインダクタは、5mHのインダクタに対してインダクタンスが4倍なので、直列抵抗は20mΩ×√4=40mΩとしている。
【0041】
複数のインダクタを磁気結合させる場合、本シミュレーションでは結合係数K=0.9999とした。
【0042】
(コンデンサインプット型整流回路)
本実施形態に係るコンバータは、整流回路の力率を改善し、電源高調波を低減させる機能を持つ。そこでまず、比較参照用として、代表的なコンデンサインプット型整流回路の性能等を説明する。
【0043】
図82Aは、単相200Vでブリッジ整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路を示す。
図83Aは、単相100Vで倍電圧整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路を示す。
【0044】
図84A及び
図84Bは、
図82Aに示すブリッジ整流回路と
図83Aに示す倍電圧整流回路とを切替可能なコンデンサインプット型整流回路を示す。この回路は、スイッチSWがオフの場合、
図82Aに示すブリッジ整流回路と同等な回路になり、スイッチSWがオンの場合、
図83Aに示す倍電圧整流回路と同等な回路になる。
図84A及び
図84Bに示す回路は、単相200Vの場合にブリッジ整流回路として使用され、単相100Vの場合に倍電圧整流回路として使用され、いずれの場合も200V強の直流電圧を出力することが想定されている。なお、単相200Vの場合に倍電圧整流回路として400V強の直流電圧を出力することや、単相100Vの場合にブリッジ整流回路として100V強の直流電圧を出力することも可能であるが、以降の説明では省略する。
【0045】
本実施形態の説明では、ブリッジ整流回路における整流回路の方式を「ブリッジ型」と称し、倍電圧整流回路における整流回路の方式を「倍電圧型」と称し、ブリッジ整流回路と倍電圧整流回路とを切替可能な回路の方式を「切替型」と称する場合がある。また、シミュレーション用の回路図において白丸の左側が電源を表しており、白丸の右側は整流回路を含む部分を表している(以下同様。)。
【0046】
図82Bは、
図82Aの回路(単相200Vでブリッジ整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路)における電源電圧と電源電流のシミュレーション結果を示す。
図83Bは、
図83Aの回路(単相100Vで倍電圧整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路)における電源電圧と電源電流のシミュレーション結果を示す。この電源電圧と電源電流のシミュレーション結果において、上側の図は50Hzの場合を示し、下側の図は60Hzの場合を示す。各々、実線が電源電流を示し、点線が電源電圧を示す(全ての電源電圧と電源電流のシミュレーション結果において同様。)。
図82B及び
図83Bを見ると、ブリッジ型と倍電圧型のいずれの場合も、電源電流はパルス状であり、力率が低い(0.6強~0.7強)ことがわかる。
【0047】
図82Cは、
図82Aの回路(単相200Vでブリッジ整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路)における電源高調波スペクトルのシミュレーション結果を示す。
図83Cには、
図83Aの回路(単相100Vで倍電圧整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路)における電源高調波スペクトルのシミュレーション結果を示す。この電源高調波スペクトルのシミュレーション結果において、上側の図は50Hzの場合を示し、下側の図は60Hzの場合を示す。各プロットの横線は、「JIS C 61000-3-2」において定められた電源電力1kW時の電源高調波の規格値を示している(全ての電源高調波スペクトルのシミュレーション結果において同様。)。
図82C及び
図83Cを見ると、いずれの場合も規格値を満たしておらず、特にブリッジ整流回路では、より大きく規格値を超えてしまっていることがわかる。
なお、切り替え型の整流回路において、
図84Aに示すようにスイッチSWがオフの場合のシミュレーション結果は
図82B及び
図82Cと同等であり、
図84Bに示すようにスイッチSWがオンの場合のシミュレーション結果は
図83B及び
図83Cと同等なので、図示を省略する。
【0048】
(キャパシタによる位相進みと、インダクタによる位相遅れ)
本実施形態に係るコンバータでは、キャパシタによる位相進み電流波形と、インダクタによる位相遅れ電流波形とがダイオードを介して合成されることにより、導通角が拡張されて力率が改善する。そこで、コンデンサインプット型整流回路の入力電流の位相をキャパシタによって進ませる場合と、インダクタによって遅らせる場合のそれぞれについて、シミュレーション結果を基に説明する。
【0049】
図85Aは、コンデンサインプット型整流回路の入力に位相進み要素としてキャパシタが設けられた回路を示す。
図86Aは、コンデンサインプット型整流回路の入力に位相遅れ要素としてインダクタが挿入された回路を示す。ここでは、単相200V/50Hzでブリッジ整流回路を使用したコンデンサインプット型整流回路を例として示しているが、倍電圧整流回路や60Hzにおいても動作原理は同様である。
【0050】
図85Bは、キャパシタによる位相進み要素が入力に挿入された
図85Aのコンデンサインプット型整流回路の入力電流波形を示し、
図86Bは、インダクタによる位相遅れ要素が入力に挿入された
図86Aのコンデンサインプット型整流回路の入力電流波形を示す。負荷RLを同じ値にしてシミュレーションを行ったところ、キャパシタによる位相進み要素が挿入された
図85Aの回路における電源電力は約389Wとなり、インダクタによる位相遅れ要素が挿入された
図86Aの回路における電源電力は約675Wになった。
【0051】
キャパシタにより位相が進んだ電源電流波形は、
図85Bに示すように、電源電圧波形の半波の前半に表れており、
図82Bに示す波形よりも位相が進んでいる。また、100μFのキャパシタと電源のインダクタ成分との共振によって電源電流波形には振動が表れており、力率が特に低いことがわかる。
【0052】
一方、インダクタによる位相が遅れた電源電流波形は、
図86Bに示すように、電源電圧波形の半波の主に後半に表れており、
図82Bの波形よりも位相が遅れている。電源電流は、比較的幅の広いパルス状であり、力率は低い(0.8弱)ものの、
図82Aに示すコンデンサインプット型整流回路よりは高力率であることがわかる。
【0053】
図85Cは、キャパシタによる位相進み要素が入力に挿入された
図85Aのコンデンサインプット型整流回路の電源高調波スペクトルを示し、
図86Cは、インダクタによる位相遅れ要素が入力に挿入された
図86Aのコンデンサインプット型整流回路の電源高調波スペクトルを示す。キャパシタによる位相進み要素が入力に挿入された場合、振動波形に起因して、数百Hz付近に大きいスペクトルが発生しており、大幅に規制値を超えていることがわかる。一方、インダクタによる位相遅れ要素が入力に挿入された場合は、かろうじて規制値を満たしていることが分かる。
【0054】
(実施形態について)
キャパシタによる位相進み電流波形と、インダクタによる位相遅れ電流波形とがダイオードを介して合成されることにより導通角が拡張されて力率が改善するという、本実施形態の具体的な回路構成は、数多く存在し得る。以降の実施形態では、代表的な回路構成を例示する。
第1実施形態~第5実施形態は、ブリッジ型の整流回路に適用された本実施形態の例を示す。
第6実施形態は、倍電圧型の整流回路に適用された本実施形態の例を示す。
第7実施形態は、切替型の整流回路に適用された本実施形態の例を示す。
第8実施形態は、入力側に高調波抑制用のインダクタが設けられた本実施形態の例を示す。
第9実施形態及び第11実施形態は、入力側にトランスが設けられた本実施形態の例を示す。
第10実施形態は、単相3線式の電源ラインに接続される本実施形態の例を示す。
第12実施形態は、入力側に副電源が接続される本実施形態の例を示す。
【0055】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図1に示すコンバータ100Aは、電源ラインから供給される交流電圧Vacを直流電圧Vdcに変換する回路であり、交流電圧Vacが印加される一対の交流ノードACと、直流電圧Vdcの正の電位が生じる正ノードDCpと、直流電圧Vdcの負の電位が生じる負ノードDCnと、直流電圧Vdcの交流成分を平滑化する平滑回路30と、第1整流部10と、第2整流部20Aとを有する。
第1整流部10は、一方の交流ノードACである第1交流ノードAC1から正ノードDCpへ一方向に電流が流れる電流経路と、負ノードDCnから第1交流ノードAC1へ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する。
第2整流部20Aは、他方の交流ノードACである第2交流ノードAC2から正ノードDCpへ一方向に電流が流れる電流経路と、負ノードDCnから第2交流ノードAC2へ一方向に電流が流れる電流経路とを形成する。
【0056】
第1整流部10は、
図1に示すように、第1交流ノードAC1を対象の交流ノードACとするキャパシタ整流回路1とインダクタ整流回路2を含む。
【0057】
図2Aは、キャパシタ整流回路1の構成の一例を示す図である。
キャパシタ整流回路1は、対象の交流ノードAC(第1整流部10のキャパシタ整流回路1の場合は第1交流ノードAC1)から正ノードDCpへ一方向に電流が流れる電流経路、及び、負ノードDCnから対象の交流ノードACへ一方向に電流が流れる電流経路をそれぞれ形成するとともに、これら2つの電流経路に流れる電流の位相をキャパシタによってそれぞれ進ませる回路である。
第1整流部10のキャパシタ整流回路1は、
図2Aに示すように、第1交流ノードAC1(対象の交流ノードAC)に接続される第1中間ノードN1と、第1中間ノードN1から正ノードDCpへ一方向に電流を流す第1正側ダイオードD1pと、負ノードDCnから第1中間ノードN1へ一方向に電流を流す第1負側ダイオードD1nと、第1交流ノードAC1(対象の交流ノードAC)と第1中間ノードN1との間の電流経路に設けられたキャパシタCとを含む。
【0058】
図2B~
図2Jは、インダクタ整流回路2の構成の一例を示す図である。
インダクタ整流回路2は、対象の交流ノードAC(第1整流部10のインダクタ整流回路2の場合は第1交流ノードAC1)から正ノードDCpへ一方向に電流が流れる電流経路、及び、負ノードDCnから対象の交流ノードACへ一方向に電流が流れる電流経路をそれぞれ形成するとともに、これら2つの電流経路に流れる電流の位相をインダクタによってそれぞれ遅らせる回路である。
第1整流部10のインダクタ整流回路2は、第1交流ノードAC1(対象の交流ノードAC)に接続される第2中間ノードN2と、第2中間ノードN2から正ノードDCpへ一方向に電流を流す第2正側ダイオードD2pと、負ノードDCnから第2中間ノードN2へ一方向に電流を流す第2負側ダイオードD2nと、少なくとも1つのインダクタLとを有する。
【0059】
インダクタ整流回路2は、3つの電流経路(第1電流経路、第2電流経路、第3電流経路)を持つ。すなわち、インダクタ整流回路2は、交流ノードACと第2中間ノードN2との間の第1電流経路、第2正側ダイオードD2pが設けられた第2中間ノードN2と正ノードDCpとの間の第2電流経路、及び、第2負側ダイオードD2nが設けられた第2中間ノードN2と負ノードDCnとの間の第3電流経路を持つ。インダクタ整流回路2は、この第1電流経路、第2電流経路、第3電流経路の少なくとも1つに設けられた少なくとも1つのインダクタLを有する。ここでは、第1電流経路に設けられたインダクタLを共通インダクタLmと呼び、第2電流経路に設けられたインダクタLを正側インダクタLpと呼び、第3電流経路に設けられたインダクタLを負側インダクタLnと呼ぶ。インダクタ整流回路2は、共通インダクタLm、正側インダクタLp及び負側インダクタLnの少なくとも1つを有する。
【0060】
図2Bに示すインダクタ整流回路2は、共通インダクタLmを有する。
図2C~
図2Fに示すインダクタ整流回路2は、正側インダクタLpと負側インダクタLnを有する。
図2G~
図2Jに示すインダクタ整流回路2は、共通インダクタLmと、正側インダクタLpと、負側インダクタLnを有する。
【0061】
正側インダクタLpは、
図2C、
図2E、
図2G、
図2Iに示すように、第2正側ダイオードD2pのカソードと正ノードDCpとの間の電流経路に設けられていてもよいし、
図2D、
図2F、
図2H、
図2Jに示すように、第2正側ダイオードD2pのアノードと第2中間ノードN2との間の電流経路に設けられていてもよい。
【0062】
負側インダクタLnは、
図2C、
図2D、
図2G、
図2Hに示すように、第2負側ダイオードD2nのアノードと負ノードDCnとの間の電流経路に設けられていてもよいし、
図2E、
図2F、
図2I、
図2Jに示すように、第2負側ダイオードD2nのカソードと第2中間ノードN2との間の電流経路に設けられていてもよい。
【0063】
インダクタ整流回路2が正側インダクタLpと負側インダクタLnを有する場合、正側インダクタLpと負側インダクタLnは、
図3Aに示すように、磁気結合されていてもよい。インダクタの磁気結合には、磁性部材(コア材など)を用いてもよいし、近接した空芯コイル同士の磁気結合のように磁性部材を用いなくてもよい。
図3B~
図3Iは、正側インダクタLpと負側インダクタLnが磁気結合されたインダクタ整流回路2の例を示す。
図3B~
図3Iの例において各インダクタに付された黒い点は、磁気結合された2つのインダクタに生じる磁束の方向と電流の向きとの関係を示す。2つのインダクタの黒い点が付された端子へそれぞれ電流が流入する場合、又は、これらの端子において電流がそれぞれ流出する場合(すなわち、黒い点が付された端子における電流の流入又は流出が一致する場合)、2つのインダクタに生じる磁束の方向が一致して互いの磁束が強め合い、インダクタンスが大きくなる。他方、2つのインダクタの黒い点が付された端子における電流の流入又は流出が逆の場合、2つのインダクタに生じる磁束が逆になって互いの磁束が打ち消しあい、インダクタンスが小さくなる。
【0064】
インダクタ整流回路2では、通常の動作において、第2正側ダイオードD2pと第2負側ダイオードD2nは同時に導通状態とならず、一方が導通しているときに他方は非導通状態となる。すなわち、正側インダクタLpと負側インダクタLnの両方で同時に電流が流れない。そのため、黒い点が表す正側インダクタLpの極性と負側インダクタLnの極性との関係は、
図3B~
図3Iに示すように任意に設定することができる。
【0065】
正側インダクタLpと負側インダクタLnを磁気結合させることにより、それぞれのコア材を共通化できるため、同一のインダクタンスで比較した場合にサイズを小型化できる。
【0066】
第2整流部20Aは、
図1に示すように、ダイオード整流回路3を有する。ダイオード整流回路3は、第2交流ノードAC2に接続される第3中間ノードN3と、第3中間ノードN3から正ノードDCpへ一方向に電流を流す第3正側ダイオードD3pと、負ノードDCnから第3中間ノードN3へ一方向に電流を流す第3負側ダイオードD3nとを有する。
【0067】
平滑回路30は、
図1の例において、正ノードDCpと負ノードDCnとの間に接続された平滑用キャパシタCsを有する。
【0068】
上述した構成を有する
図1に示すコンバータ100Aでは、第2交流ノードAC2に対する第1交流ノードAC1の電圧が正負に振動すると、これに応じてキャパシタ整流回路1(
図2A)のキャパシタCが充放電されて、キャパシタCから負荷RL側に電流が流れる。第2交流ノードAC2に対して第1交流ノードAC1が正の電圧となる期間において、キャパシタCは、第1交流ノードAC1側の端子が第1中間ノードN1側の端子に対して正の電圧となるように充電される。他方、第2交流ノードAC2に対して第1交流ノードAC1が負の電圧となる期間において、キャパシタCは、第1交流ノードAC1側の端子が第1中間ノードN1側の端子に対して負の電圧となるように充電される。第1交流ノードAC1と第2交流ノードAC2との電圧差が平滑用キャパシタCsの電圧より小さいとき、キャパシタ整流回路1において第1正側ダイオードD1pと第2正側ダイオードD2pがそれぞれオフの状態になっており、キャパシタCの電圧が保持される。
【0069】
第2交流ノードAC2に対して第1交流ノードAC1が正の電圧となって上昇すると、キャパシタ整流回路1の第1正側ダイオードD1pのアノードは、インダクタ整流回路2の第2正側ダイオードD2pのアノードに比べて、キャパシタCに保持される電圧の分だけ高電位になる。そのため、キャパシタ整流回路1の第1正側ダイオードD1pがインダクタ整流回路2の第2正側ダイオードD2pよりも早くオン状態となり、キャパシタ整流回路1からの電流がインダクタ整流回路2からの電流よりも早く負荷RL側に流れる。このときインダクタ整流回路2では、第1交流ノードAC1の電圧上昇に伴って第2正側ダイオードD2pがオン状態になっても、インダクタLに流れる電流がキャパシタCに流れる電流に比べて遅れて増大する。そのため、キャパシタ整流回路1のキャパシタCを介して流れる電流のピークがインダクタ整流回路2のインダクタLを介して流れる電流のピークよりも先に発生する。第2交流ノードAC2に対して第1交流ノードAC1が負の電圧となって上昇する場合も同様であり、キャパシタ整流回路1のキャパシタCを介して流れる電流のピークがインダクタ整流回路2のインダクタLを介して流れる電流のピークよりも先に発生する。従って、
図82Aに示すようなコンデンサインプット型整流回路に比べて導通角を拡張させ、力率を改善することができる。
【0070】
また、本実施形態に係るコンバータ100Aでは、第1交流ノードAC1から正ノードDCpへ電流が流れる場合において、キャパシタCの電流の向きとインダクタLの電流の向きが、それぞれダイオード(第1正側ダイオードD1p、第2正側ダイオードD2p)によって一方向に制限されている。また、負ノードDCnから第1交流ノードAC1へ電流が流れる場合において、キャパシタCの電流の向きとインダクタLの電流の向きが、それぞれダイオード(第1負側ダイオードD1n、第2負側ダイオードD2n)によって一方向に制限されている。そのため、上述した特許文献1の回路のように、キャパシタCの電流が共振により逆方向に流れてインダクタLの電流を相殺することがない。すなわち、キャパシタCやインダクタLにより形成される共振回路の共振の影響によってこれらの電流が相殺し合い、力率の特性が変化する現象を生じ難くすることができる。従って、高調波電流の抑制に用いられる回路の共振の影響による力率の特性の変化を効果的に抑制できる。
【0071】
図4は、第1実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
図4に示すコンバータ100Aは、第1整流部10のインダクタ整流回路2として
図2Bに示す回路を有する。
【0072】
図5A~
図5Cは、この
図4に示すコンバータ100Aのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図5Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図5Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図5Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0073】
図5Bのシミュレーション波形では、キャパシタCに流れる電流と共通インダクタLmに流れる電流を細い実線で示している。この細い実線の波形からも分かる通り、電源電流の半波において、前半の振動波形はキャパシタCからの位相進み電流であり、前述の
図85Bの位相進み電流と似た波形になっている。後半のなだらかなピークは共通インダクタLmからの位相遅れ電流であり、前述の
図86Bの位相遅れ電流と似た波形になっている。共通インダクタLmからの位相遅れ電流は、周波数の高い60Hzの場合に比べて周波数の低い50Hzの場合に大きくなっており、キャパシタCからの位相進み電流は、周波数の低い50Hzの場合に比べて周波数の高い60Hzの場合に大きくなっている。
【0074】
上述したように、コンバータ100AではキャパシタCの位相進み電流波形と共通インダクタLmの位相遅れ電流波形との合成によって導通角が広くなっているため、コンデンサインプット型整流回路(
図82A~
図82C)よりも力率が高くなっている。
図1Cの電源高調波スペクトルを見ると、キャパシタCからの位相進み電流が振動波形のため、数百Hz付近の高調波が規格値を超えている。しかし、規格値の超え方は、
図85Cに示す位相進み電流波形に比べて改善されている。
【0075】
図6は、第1実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
図6に示すコンバータ100Aは、第1整流部10のインダクタ整流回路2として
図2Cに示す回路を有する。
【0076】
図7A~
図7Cは、
図6に示すコンバータ100Aのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図7Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図7Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図7Cは電源高調波スペクトルを示す。
第2実施例(
図7A)の
図7Bに示す電流波形は、第1実施例(
図5A)の
図5Bに示す電流波形と概ね同じであり、
図7Cに示す電源高調波スペクトルも、
図5Cに示す電源高調波スペクトルと概ね同じである。
【0077】
図8は、第1実施形態に係るコンバータ100Aの第3実施例を示す図である。
図8に示すコンバータ100Aは、第1整流部10のインダクタ整流回路2として
図3Fに示す回路を有しており、正側インダクタLpと負側インダクタLnが磁気結合されている。
【0078】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図9に示すコンバータ100Bは、
図1に示すコンバータ100Aにおける第2整流部20Aを第2整流部20Bに置き換えたものであり、他の構成は
図1に示すコンバータ100Aと同じである。第2整流部20Bは、
図9に示すように、キャパシタ整流回路1(
図2A)を有する。第2整流部20Bのキャパシタ整流回路1では、第1中間ノードN1と第2交流ノードAC2との間の電流経路にキャパシタCが設けられる。
【0079】
コンバータ100Bでは、第1整流部10においてキャパシタ整流回路1とインダクタ整流回路2により合成された電流が第2整流部20Bのキャパシタ整流回路1のキャパシタCを常に流れるため、合成電流の波形が全体的に位相進み波形となる。
【0080】
図10は、第2実施形態に係るコンバータ100Bの第1実施例を示す図である。
図10に示すコンバータ100Bは、第1整流部10のインダクタ整流回路2として
図2Cに示す回路を有する。
【0081】
図11A~
図11Cは、
図10に示すコンバータ100Bのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図11Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図11Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図11Cは電源高調波スペクトルを示す。
図7Bと
図11Bの波形を比較して分かるように、電源電流の波形は全体的に位相進み波形となっている。
【0082】
図12は、第2実施形態に係るコンバータ100Bの第2実施例を示す図である。
図12に示すコンバータ100Bは、第1整流部10のインダクタ整流回路2として
図2Bに示す回路を有する。
【0083】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図13に示すコンバータ100Cは、
図1に示すコンバータ100Aにおける第2整流部20Aを第2整流部20Cに置き換えたものであり、他の構成は
図1に示すコンバータ100Aと同じである。第2整流部20Cは、
図13に示すように、インダクタ整流回路2を含む。インダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3Iに示すような構成を有する。第2整流部20Cのインダクタ整流回路2において、第2中間ノードN2は第2交流ノードAC2に直接、若しくは共通インダクタLmを介して間接的に接続される。
【0084】
コンバータ100Cでは、第1整流部10においてキャパシタ整流回路1とインダクタ整流回路2により合成された電流が第2整流部20Cのインダクタ整流回路2のインダクタLを常に流れるため、合成電流の波形が全体的に位相遅れ波形となる。また、第2整流部20Cのインダクタ整流回路2のインダクタLによって高調波成分が抑制されるため、力率や電源高調波が改善され易くなる。
【0085】
図14は、第3実施形態に係るコンバータ100Cの第1実施例を示す図である。
図14に示すコンバータ100Cは、第1整流部10と第2整流部20Cのインダクタ整流回路2としてそれぞれ
図2Bに示す回路を有する。
【0086】
図15は、第3実施形態に係るコンバータ100Cの第2実施例を示す図である。
図15に示すコンバータ100Cでは、第1整流部10のインダクタ整流回路2(
図2B)の共通インダクタLmと第2整流部20Cのインダクタ整流回路2(
図2B)の共通インダクタLmとが磁気結合されている。これにより、2つの共通インダクタLmを共通の部品に集約できるため、サイズを小型化できる。
【0087】
図16は、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Cのインダクタ整流回路2とにおいて、正側インダクタLp及び負側インダクタLnが共有される場合を説明するための図である。
第1整流部10と第2整流部20Cがそれぞれ
図2C若しくは
図2Gに示すインダクタ整流回路2を含む場合、
図16に示すように、共通インダクタLmを除くインダクタLが4つになる。しかしながら、第1整流部10の正側インダクタLpと第2整流部20Cの正側インダクタLpはそれぞれ正ノードDCpに接続されており、また、第1整流部10の第2正側ダイオードD2pと第2整流部20Cの第2正側ダイオードD2pは同時にオン状態とならないため、これらの正側インダクタLpを共通のインダクタに集約しても、整流動作に影響を与えることはない。
同様に、第1整流部10の負側インダクタLnと第2整流部20Cの負側インダクタLnはそれぞれ負ノードDCnに接続されており、また、第1整流部10の第2負側ダイオードD2nと第2整流部20Cの第2負側ダイオードD2nは同時にオン状態とならないため、これらの負側インダクタLnを共通のインダクタに集約しても、整流動作に影響を与えることはない。
【0088】
従って、
図16の下側の図に示すように、第1整流部10のインダクタ整流回路2における第2正側ダイオードD2pと正ノードDCpとの間の電流経路に設けられた正側インダクタLpと、第2整流部20Cのインダクタ整流回路2における第2正側ダイオードD2pと正ノードDCpとの間の電流経路に設けられた正側インダクタLpとが、共通のインダクタL(正側インダクタLp)であってもよい。
また、
図16の下側の図に示すように、第1整流部10のインダクタ整流回路2における第2負側ダイオードD2nと負ノードDCnとの間の電流経路に設けられた負側インダクタLnと、第2整流部20Cのインダクタ整流回路2における第2負側ダイオードD2nと負ノードDCnとの間の電流経路に設けられた負側インダクタLnとが、共通のインダクタLであってもよい。
これにより、インダクタLの数を2つ減らすことができる。
【0089】
図17は、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Cのインダクタ整流回路2とにおいて、磁気結合された正側インダクタLp及び負側インダクタLnが共有される場合を説明するための図である。
第1整流部10と第2整流部20Cのインダクタ整流回路2がそれぞれ
図3B、
図3Fに示すように磁気結合された正側インダクタLp及び負側インダクタLnを含む場合も、
図16において説明した場合と同様に、第1整流部10及び第2整流部20Cの正側インダクタLpを共通化するとともに、第1整流部10及び第2整流部20Cの負側インダクタLnを共通化することが可能である。
【0090】
図18は、第3実施形態に係るコンバータ100Cの第3実施例を示す図である。
図18に示すコンバータ100Cでは、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Cのインダクタ整流回路2とにおいて正側インダクタLpと負側インダクタLnとがそれぞれ
図16に示すように共通化されている。
【0091】
図19A~
図19Cは、
図18に示すコンバータ100Cのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図19Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図19Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図19Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0092】
図19Bに示す電源電流の波形は、これまでの実施形態のシミュレーション波形(
図5B、
図7B、
図11Bなど)と比較して、半波前半の電流波形が振動波形でない点、及び、キャパシタCによる電流波形の位相が遅れ気味である点に特徴を有している。この特徴は、後述するように直列のインダクタを入力側に設けた場合の特徴と同様である。
【0093】
第3実施例のコンバータ100Cでは、第1交流ノードAC1が第2交流ノードAC2に対して正の電圧となる場合、正側インダクタLpの位相遅れ電流とキャパシタCの位相進み電流とを合成した合成電流が負側インダクタLnに流れる。この場合、合成電流の流れる負側インダクタLnが、高調波を抑制するチョークとして機能する。第1交流ノードAC1が第2交流ノードAC2に対して負の電圧となる場合は、負側インダクタLnの位相遅れ電流とキャパシタCの位相進み電流とを合成した合成電流が正側インダクタLpに流れるため、正側インダクタLpが高調波成分を抑制するチョークとして機能する。このように、合成電流の位相遅れ成分を生成する正側インダクタLp及び負側インダクタLnが、高調波を抑制するチョークとしても機能することにより、
図5Bのシミュレーション波形に表れるような半波の前半における振動成分が抑制される。波形に表れる振動成分が抑制されたため、
図19Cに示す電源高調波スペクトルは規格値よりも低くなっている。
【0094】
(第4実施形態)
図20は、第4実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図20に示すコンバータ100Dは、
図1に示すコンバータ100Aにおける第2整流部20Aを第2整流部20Dに置き換えたものであり、他の構成は
図1に示すコンバータ100Aと同じである。
【0095】
第2整流部20Dは、
図20に示すように、ダイオード整流回路3とインダクタ整流回路2を含む。第2整流部20Dのダイオード整流回路3は、
図1に示す第2整流部20Aのダイオード整流回路3と同じである。第2整流部20Dのインダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3Iに示すような構成を有する。第1整流部10と第2整流部20Dのそれぞれに正側インダクタLpと負側インダクタLnが含まれる場合、
図16、
図17において示すように、正側インダクタLpと負側インダクタLnは共通化されていてもよい。
【0096】
図21は、第4実施形態に係るコンバータ100Dの第1実施例を示す図である。
図21に示すコンバータ100Dにおいて、第1整流部10と第2整流部20Dは、
図16に示すように正側インダクタLp及び負側インダクタLnが共通化されたインダクタ整流回路2を含む。
【0097】
図22A~
図22Cは、
図21に示すコンバータ100Dのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図22Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図22Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図22Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0098】
図22Bに示す電源電流の波形は、
図21の第2整流部20Dからインダクタ整流回路2を削除した
図6に示す回路のシミュレーション波形(
図7B)と概ね同様である。また、
図22Cに示す電源高調波スペクトルも、
図6に示す回路の電源高調波スペクトル(
図7C)と概ね同様となっている。
【0099】
図23は、第4実施形態に係るコンバータ100Dの第2実施例を示す図である。
図23に示すコンバータ100Dは、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Dのインダクタ整流回路2は、それぞれ
図2Bに示す回路である。この回路における力率改善の特性・性能は、
図21に示す第1実施例と概ね同じである。
【0100】
図24は、第4実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
図24に示すコンバータ100Dは、
図23に示すコンバータ100Dにおける第1整流部10のインダクタ整流回路2の共通インダクタLmと第2整流部20Dのインダクタ整流回路2の共通インダクタLmとを磁気結合させたものである。
【0101】
(第5実施形態)
図25は、第5実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図25に示すコンバータ100Eは、
図1に示すコンバータ100Aにおける第2整流部20Aを第2整流部20Eに置き換えたものであり、他の構成は
図1に示すコンバータ100Aと同じである。
【0102】
第2整流部20Eは、
図20に示すように、キャパシタ整流回路1(
図2A)とインダクタ整流回路2を含む。第2整流部20Eのインダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3Iに示すような構成を有する。第1整流部10と第2整流部20Eのそれぞれに正側インダクタLpと負側インダクタLnが含まれる場合、
図16、
図17において示すように、正側インダクタLpと負側インダクタLnは共通化されていてもよい。
【0103】
図26は、第5実施形態に係るコンバータ100Eの第1実施例を示す図である。
図26に示すコンバータ100Eは、第1整流部10及び第2整流部20Eのインダクタ整流回路2としてそれぞれ
図2Bに示す回路を有する。
【0104】
図26に示すコンバータ100Eでは、第1整流部10と第2整流部20Eの各々において、キャパシタCの位相進み電流とインダクタL(共通インダクタLm)の位相遅れ電流とが合成される。
【0105】
図27A~
図27Cは、
図26に示すコンバータ100Eのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図27Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図27Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図27Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0106】
このシミュレーションでは、
図27Aに示すように、第1整流部10のキャパシタCの静電容量と第2整流部20EのキャパシタCの静電容量とが異なる。2つのキャパシタCの静電容量が異なることで、第1整流部10のキャパシタ整流回路1においてキャパシタCから電流が流れる期間と、第2整流部20Eのキャパシタ整流回路1においてキャパシタCから電流が流れる期間とが異なる。これにより、各キャパシタCの電流が異なる期間に分散して流れるようになるため、導通角が広がり易くなり、力率が高まり易くなる。
【0107】
図28は、第5実施形態に係るコンバータ100Eの第2実施例を示す図である。
図28に示す第2実施例のコンバータ100Eは、第1実施例のコンバータ100Eにおける第1整流部10のインダクタ整流回路2の共通インダクタLmと第2整流部20Eのインダクタ整流回路2の共通インダクタLmとを磁気結合させたものである。2つの共通インダクタLmを磁気結合させることにより、サイズを小型化することができる。
【0108】
図29は、第5実施形態に係るコンバータ100Eの第3実施例を示す図である。
図29に示すコンバータ100Eでは、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおいて正側インダクタLpと負側インダクタLnとがそれぞれ
図16に示すように共通化されている。
【0109】
図30A~
図30Cは、
図29に示すコンバータ100Eのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図30Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図30Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図30Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0110】
このシミュレーションにおいても、
図30Aに示すように、第1整流部10のキャパシタCの静電容量と第2整流部20EのキャパシタCの静電容量とが異なる。これにより、
図27Aの回路と同様に、各キャパシタCの電流が異なる期間に分散して流れるようになるため、導通角が広がり易くなり、力率が高まり易くなる。電源電流の波形と電源高調波スペクトルのシミュレーション結果は、
図27Aの回路と比較的近いものになっている。
【0111】
図31は、第5実施形態に係るコンバータ100Eの第4実施例を示す図である。
図31に示すコンバータ100Eは、
図29に示すコンバータ100Eにおいて正側インダクタLpと負側インダクタLnとを磁気結合させたものである。すなわち、
図31に示すコンバータ100Eでは、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおける共通の正側インダクタLpと、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおける共通の負側インダクタLnとが磁気結合されている。
【0112】
図32A~
図32Cは、
図31に示すコンバータ100Eのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図32Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図32Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図32Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0113】
図32Aの回路では、
図30Aの回路に比べてインダクタLのインダクタンス値が小さくなっているとともに、一方のキャパシタCの静電容量が大きくなっている。
図32Aの回路における電源電流の波形と電源高調波スペクトルは、概ね
図30Aの回路と近いものになっている。
【0114】
図33は、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおいて、正側インダクタLp及び負側インダクタLnの一方が共有される場合を説明するための図である。第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とがそれぞれ正側インダクタLpを有するとともに負側インダクタLnを有さない場合は、
図33に示すように正側インダクタLpを共通化することができる。また、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とがそれぞれ負側インダクタLnを有するとともに正側インダクタLpを有さない場合は、負側インダクタLnを共通化させることができる。
【0115】
図34は、第5実施形態に係るコンバータ100Eの第5実施例を示す図である。
図34に示すコンバータ100Eでは、
図33に示すように、第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおける正側インダクタLpが共通化されている。
【0116】
この
図34に示すコンバータ100Eでは、第1交流ノードAC1の電圧が第2交流ノードAC2より高い期間において、第1整流部10のキャパシタCに流れる位相進み電流と正側インダクタLpに流れる位相遅れ電流とが合成され、その合成電流が第2整流部20EのキャパシタCと第2負側ダイオードD2nに流れる。他方、第1交流ノードAC1の電圧が第2交流ノードAC2より低い期間においては、第2整流部20EのキャパシタCに流れる位相進み電流と正側インダクタLpに流れる位相遅れ電流とが合成され、その合成電流が第1整流部10のキャパシタCと第2負側ダイオードD2nに流れる。そのため、合成電流に含まれる位相進み電流が半周ごとにアンバランスになることを防ぐため、第1整流部10のキャパシタCと第2整流部20EのキャパシタCは同じ静電容量に設定される。
ここで、素子の値、電圧や電流などおいて「同じ」や「同一」と記載している場合であっても、実際は誤差を有しているので、完全に同じであることを意味しているわけではない。現実的な一例として、公称値が同じであればよい。このことは、全体にわたって同様である。
【0117】
図35A~
図35Cは、
図34に示すコンバータ100Eのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図35Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図35Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図35Cは電源高調波スペクトルを示す。
図35Aの回路において、第1整流部10のキャパシタCと第2整流部20EのキャパシタCは等しい値に設定されている。電源電流の波形には、半波の前半においてキャパシタCの位相進み電流による振動が表れている。
【0118】
(第6実施形態)
図36は、第6実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図36に示すコンバータ100Fは、
図1に示すコンバータ100Aにおける第2整流部20Aを省略し、平滑回路30を平滑回路30Fに置き換えたものであり、倍電圧型の整流を行う。
第1整流部10は、キャパシタ整流回路1と、インダクタ整流回路2を含む。キャパシタ整流回路1は、例えば
図2Aに示す回路である。インダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3Iに示すような構成を有する。
【0119】
平滑回路30Fは、正ノードDCpと負ノードDCnとの間に直列に接続された2つの平滑用キャパシタCs1及びCs2を有する。直列接続された2つの平滑用キャパシタCs1及びCs2の中間のノードである第4中間ノードN4が、第2交流ノードAC2に接続されている。
【0120】
図37は、第6実施形態に係るコンバータ100Fの第1実施例を示す図である。
図37に示すコンバータ100Fにおいて、第1整流部10は、
図2Bに示すインダクタ整流回路2とキャパシタ整流回路1を有する。
図37に示すコンバータ100Fは、
図4に示すブリッジ型のコンバータ100Aを倍電圧型に変更したしたような回路である。
【0121】
図38A~
図38Cは、
図37に示すコンバータ100Fのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図38Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図38Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図38Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0122】
図38Bに示す電流波形では、ブリッジ型に係る
図5Bに示す電流波形よりも、若干力率が高くなっている。また、
図38Bに示す電流波形では、
図5Bに示す電流波形よりも半波の前半における位相進み電流の振動周波数が低いため、
図38Cの電源高調波スペクトルでは
図5Cに比べて高次高調波が少なくなっており、もう少しで規格値を満たすことができそうである。
【0123】
図39は、第6実施形態に係るコンバータ100Fの第2実施例を示す図である。
図39に示すコンバータ100Fは、
図37に示すコンバータ100Fにおける第1整流部10のインダクタ整流回路2を
図2Cに示す回路に変更したものである。
図39に示すコンバータ100Fは、
図6に示すブリッジ型のコンバータ100Aを倍電圧型に変更したしたような回路である。
【0124】
図40A~
図40Cは、
図39に示すコンバータ100Fのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図40Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図40Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図40Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0125】
図40Bに示す電流波形では、ブリッジ型に係る
図7Bに示す電流波形よりも、若干力率が高くなっている。また、
図40Bに示す電流波形では、
図7Bに示す電流波形よりも半波の前半における位相進み電流の振動周波数が低いため、
図40Cの電源高調波スペクトルでは
図7Cに比べて高次高調波が少なくなっており、もう少しで規格値を満たすことができそうである。
【0126】
図41は、第6実施形態に係るコンバータ100Fの第3実施例を示す図である。
図41に示すコンバータ100Fは、
図39に示すコンバータ100Fにおける第1整流部10のインダクタ整流回路2の正側インダクタLpと負側インダクタLnとが磁気結合されたものである。2つのインダクタLを磁気結合させることにより、コア材が共有されるため、部品のサイズを小さくすることができる。
【0127】
図42A~
図42Cは、
図41に示すコンバータ100Fのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図42Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図42Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図42Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0128】
図42Bに示す電源電流の波形のシミュレーションは、
図40Bに示す磁気結合のない場合と大差ない結果となっている。また、
図42Cに示す電源高調波スペクトルのシミュレーションも、
図40Cに示す磁気結合の場合と大差ない結果となっている。
【0129】
(第7実施形態)
図43は、第7実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図43に示すコンバータ100Gは、
図36に示す倍電圧型のコンバータ100Fに第2整流部20Gを追加し、第4中間ノードN4と第2交流ノードAC2との間の電流経路に第1スイッチSW1を設けたものである。
【0130】
第2整流部20Gは、キャパシタ整流回路1と、インダクタ整流回路2と、ダイオード整流回路3の少なくとも1つを含む。キャパシタ整流回路1は、例えば
図2Aに示す回路である。インダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3I、
図16、
図17などに示す回路である。ダイオード整流回路3は、例えば
図1に示す回路である。
【0131】
図43に示すコンバータ100Gにおいて、第1整流部10のインダクタ整流回路2は、共通インダクタLmを含むか、正側インダクタLp及び負側インダクタLnを含むか、又は、共通インダクタLm、正側インダクタLp及び負側インダクタLnをそれぞれ含む。また、コンバータ100Gにおいて第2整流部20Gがインダクタ整流回路2を含む場合、第2整流部20Gのインダクタ整流回路2は、共通インダクタLmを含むか、正側インダクタLp及び負側インダクタLnを含むか、又は、共通インダクタLm、正側インダクタLp及び負側インダクタLnをそれぞれ含む。すなわち、本実施形態におけるコンバータ100Gでは、正側インダクタLpのみ含むインダクタ整流回路2や負側インダクタLnのみ含むインダクタ整流回路2が除外される。
もし、第1整流部10と第2整流部20Gの両方においてインダクタ整流回路2が正側インダクタLpのみを含むか若しくは負側インダクタLnのみを含んでいたとすると、第1スイッチSW1がオン状態となって第4中間ノードN4が第2交流ノードAC2に接続された場合に、平滑用キャパシタCs1又はCs2が半周期ごとにダイオード(D2p、D2n)を介して電源電圧に直接接続される状態となり、コンデンサインプット型と同様なパルス状の電流が流れてしまう。
また、もし、第1整流部10と第2整流部20Gのいずれか一方においてインダクタ整流回路2が正側インダクタLpのみを含むか若しくは負側インダクタLnのみを含んでいたとすると、第1スイッチSW1がオフ状態の場合に、負荷RL側へ流れる電流の電流経路に設けられるインダクタのインダクタンスが半周期ごとに異なる値になるため、電源電流の波形には奇数次歪みや直流電流が生じてしまう。
従って、上述した各実施形態における第2整流部20A~20Eのうち、
図33と
図34に示す第2整流部20E(インダクタ整流回路2が正側インダクタLpのみ含むもの)を除いた他の第2整流部20A~20Eは、コンバータ100Gの第2整流部20Gに適用可能である。
【0132】
図44は、第7実施形態に係るコンバータ100Gの第1実施例を示す図である。
図44に示すコンバータ100Gは、
図4に示すコンバータ100Aにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換え、第1スイッチSW1を介して第4中間ノードN4を第2交流ノードAC2に接続したものである。
図44に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図4に示すコンバータ100Aと同等なブリッジ型の回路として動作し、第1スイッチSW1がオンのとき、
図37のコンバータ100Fと同等な倍電圧型の回路として動作する。
【0133】
【0134】
ブリッジ型と倍電圧型では、高力率となるインダクタやキャパシタの定数が異なるので、切替型のコンバータ100Gでは、どちらの場合もそれなりに高効率となる定数が設定される(これらの点は、ブリッジ型として第2実施例~第5実施例を使用する場合についても同様。)。
【0135】
ブリッジ型の状態における
図45Bの電源電流の力率は、同等なブリッジ型の回路(
図5A)における
図5Bの力率よりも若干低くなっている。また、倍電圧型の状態における
図46Bの電源電流の力率は、同等な倍電圧型の回路(
図38A)における
図38Bの力率よりも若干低くなっており、半波の前半におけるキャパシタCの位相進み電流が小さくなっている。半波の前半におけるキャパシタCの位相進み電流が小さくなっている分、
図45C、
図46Cに示す電源高調波スペクトルは、
図5C、
図38Cに比べて高次高調波成分が少ない傾向にある。
【0136】
図47は、第7実施形態に係るコンバータ100Gの第2実施例を示す図である。
図47に示すコンバータ100Gは、
図26に示すコンバータ100Eにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換え、第1スイッチSW1を介して第4中間ノードN4を第2交流ノードAC2に接続したものである。
図47に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図26に示すコンバータ100Eと同等なブリッジ型の回路として動作し、第1スイッチSW1がオンのとき、
図37のコンバータ100Fと同等な倍電圧型の回路として動作する。
【0137】
【0138】
ブリッジ型の状態における
図48Bの電源電流の力率は、同等なブリッジ型の回路(
図27A)における
図27Bの力率と大差ない結果となっている。また、倍電圧型の状態における
図49Bの電源電流の力率は、同等な倍電圧型の回路(
図38A)における
図38Bの力率と大差ない結果となっている。
【0139】
ブリッジ型の状態における
図48Cの電源高調波スペクトルは、同等なブリッジ型の回路(
図27A)における
図27Cの電源高調波スペクトルと大差ない結果となっている。また、倍電圧型の状態における
図49Cの電源電流の力率は、同等な倍電圧型の回路(
図38A)における
図39Cの電源高調波スペクトルと大差ない結果となっている。
【0140】
図50は、第7実施形態に係るコンバータ100Gの第3実施例を示す図である。
図50に示すコンバータ100Gは、
図14に示すコンバータ100Cにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換え、第1スイッチSW1を介して第4中間ノードN4を第2交流ノードAC2に接続したものである。
図50に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図14に示すコンバータ100Cと同等なブリッジ型の回路として動作し、第1スイッチSW1がオンのとき、
図37のコンバータ100Fと同等な倍電圧型の回路として動作する。
【0141】
【0142】
ブリッジ型の状態における
図51Bの電源電流では、キャパシタCによる位相進み電流や共通インダクタLmによる位相遅れ電流があまり目立たない。これは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図18に示すコンバータ100Cと同様に、キャパシタCの位相進み電流と共通インダクタLmの位相遅れ電流とを合成した合成電流が、2つの共通インダクタLmの一方を流れることにより、高調波成分が抑制されるからである。
【0143】
これに対して、スイッチがオンした倍電圧型の状態における
図52Bの電源電流では、キャパシタCの位相進み電流と共通インダクタLmの位相遅れ電流とを合成した合成電流が、第1スイッチSW1を介して直接電源に戻る。このため、
図52Bの電源電流では、合成電流における位相進み電流の振動波形が目立っている。なお、ブリッジ型の状態と倍電圧型の状態とでは、電源電流の力率に大差がない結果となっている。
【0144】
キャパシタCの位相進み電流による振動が目立たないブリッジ型の状態における
図51Cの電源高調波スペクトルを見ると、50Hzでは第3次高調波がわずかに規格値を超えているが、他の高調波はいずれも規格値よりも低い値となっており、60Hzでは全ての高調波が規格値よりも低い値となっている。
これに対して、倍電圧型の状態における
図52Cの電源高調波スペクトルを見ると、第9次から第13次の奇数次高調波が規格値を超えるという結果となっている。
【0145】
図53は、第7実施形態に係るコンバータ100Gの第4実施例を示す図である。
図53に示すコンバータ100Gは、
図44に示す切替型のコンバータ100Gにおける第1整流部10の共通インダクタLmと第1交流ノードAC1との間の電流経路に入力側インダクタLi1を設けるとともに、第1整流部10のキャパシタCと第1交流ノードAC1との接続を切り替える第2スイッチSW2を追加したものである。
【0146】
第2スイッチSW2は、第1スイッチSW1がオフのとき、第1整流部10のキャパシタ整流回路1におけるキャパシタCの一方の端子を共通インダクタLmと入力側インダクタLi1との間の電流経路に接続し、第1スイッチSW1がオンのとき、当該キャパシタCの当該一方の端子を第1交流ノードAC1に接続する。
【0147】
図53に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図4に示すコンバータ100Aの第1整流部10と第1交流ノードAC1との間に入力側インダクタLi1が挿入されたものに相当するブリッジ型の回路として動作する。また、
図53に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオンのとき、
図37のコンバータ100Fにおいて共通インダクタLmのインダクタンスが入力側インダクタLi1のインダクタンス分だけ増えたものに相当する倍電圧型の回路として動作する。
【0148】
【0149】
ブリッジ型の状態における
図54Bの電源電流では、キャパシタCによる位相進み電流のピークや振動があまり目立たない。ブリッジ型の状態において第1整流部10と第1交流ノードAC1との間に入力側インダクタLi1が挿入されるので、電源電流に含まれる位相進み電流の高調波成分が入力側インダクタLi1によって抑制されるためである。この入力側インダクタLi1は、後述する入力側インダクタとして動作している。
【0150】
これに対して、倍電圧型の状態では、入力側インダクタLi1が等価的に第1整流部10の共通インダクタLmの一部となり、電源電流に含まれる位相進み電流(キャパシタCの電流)が流れなくなる。そのため、倍電圧型の状態における
図55Bの電源電流では、位相進み電流の振動成分が目立っている。なお、ブリッジ型の状態と倍電圧型の状態とでは、電源電流の力率に大差がない結果となっている。
【0151】
キャパシタCの位相進み電流による振動が目立たないブリッジ型の状態における
図54Cの電源高調波スペクトルを見ると、第3次高調波がわずかに規格値を超えているが、他の高調波はいずれも規格値よりも低い値となっている。
これに対して倍電圧型の状態における
図55Cの電源高調波スペクトルを見ると、第11次近辺の複数の高調波が規格値を超えるという結果となっている。
【0152】
図56は、第7実施形態に係るコンバータ100Gの第5実施例を示す図である。
図56に示すコンバータ100Gは、
図18に示すコンバータ100Cにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換え、第2整流部20C(20G)と第2交流ノードAC2との間の電流経路における第6中間ノードN6と平滑回路30Fの第4中間ノードN4との間の電流経路に第1スイッチSW1を設け、第6中間ノードN6と第2交流ノードAC2との間の電流経路に入力側インダクタLi3を設け、更に、第6中間ノードN6と第2整流部20C(20G)との間の電流経路に入力側インダクタLi2を設けたものである。
【0153】
図56に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオフのとき、
図18に示すコンバータ100Cの第2整流部20Cと第2交流ノードAC2との間に入力側インダクタLi2及びLi3が直列に挿入されたものに相当するブリッジ型の回路として動作する。また、
図56に示すコンバータ100Gは、第1スイッチSW1がオンのとき、
図37のコンバータ100Fにおいて第4中間ノードN4と第2交流ノードAC2との間の電流経路に入力側インダクタLi3が設けられたものに相当する倍電圧型の回路として動作する。
【0154】
【0155】
ブリッジ型の状態では、キャパシタC1を流れる位相進み電流が3つのインダクタL(Li2、Li3、Lp又はLn)を流れるため、インダクタの影響が大きくなり、
図57Bの電源電流の波形では、半波中程から後半の位相遅れ電流が支配的になっている。インダクタLi2とLi3は、後述の入力側インダクタとして動作している。
【0156】
これに対して倍電圧型の状態では、キャパシタCを流れる位相進み電流が、1つの入力側インダクタLi3を流れるため、ブリッジ型の状態よりもインダクタの影響が小さくなり、
図58Bの電源電流の波形には、キャパシタCによる位相進み電流の振動成分が表れている。この場合は、入力側インダクタLi3が後述の入力側インダクタとして動作している。
【0157】
キャパシタCを流れる位相進み電流は、ブリッジ型の状態及び倍電圧型の状態のいずれにおいてもインダクタ(Li3など)を経由して電源に戻るため、インダクタによって電源電流の高調波成分が抑制される結果、ブリッジ型及び倍電圧型の両方の状態において電源高調波が規格値よりも低くなっている。
【0158】
(第8実施形態)
図59A~
図59Dは、第8実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
第8実施形態に係るコンバータは、他の実施形態に係るコンバータと交流の電源との間の電流経路にインダクタを追加する変形例を示している。本実施形態の説明において、このようなインダクタを「入力側インダクタ」と称する場合がある。
【0159】
図59A~
図59Dは、他の実施形態に係るコンバータ100(100A~100G、後述する100H、100J)と交流の電源との間の電流経路に入力側インダクタを追加する例を示している。他の実施形態において示したシミュレーション用の回路図と同様、白丸の左が電源であり、白丸の右が本実施形態に係るコンバータである。電源側に示された「Zs」は、電源のインダクタンス成分や抵抗成分であり、本実施形態のシミュレーション例では、規格のリファレンスインピーダンスネットワークの値を例示している。
【0160】
図59AはL側(ライブ側)に入力側インダクタを追加した例を示しており、
図59BはN側(ニュートラル側)に入力側インダクタを追加した例を示しており、
図59CはL側とN側の両方に入力側インダクタを追加した例を示している。
図59DはL側とN側の両方に入力側インダクタを追加して、さらにそれらを磁気結合させた例を示している。
【0161】
L側とN側の両方に入力側インダクタを個別に追加する場合、インダクタンスの合計値をL側とN側のいずれか一方に入力側インダクタを追加する場合と同じインダクタンスにすれば、同等の入力側インダクタとして動作する。
【0162】
L側とN側の両方に磁気結合された同一インダクタンスの入力側インダクタを追加する場合、L側とN側のいずれか片方に追加する入力側インダクタの1/4程度のインダクタンスにすれば、当該片方に追加する入力側インダクタと同等の入力側インダクタとして動作させることができる。ただし、L側とN側の両方の入力側インダクタを結合させた場合、コモンモード成分に対するインダクタンスは低くなる。
【0163】
入力側インダクタは、第1整流部10や第2整流部20のキャパシタCによる位相進み電流に対してローパスフィルタとして動作し、第1整流部10や第2整流部20のインダクタLに対しては原則として、そのインダクタンスを増加させるように動作する。
【0164】
なお、
図56に示すコンバータ100Gにおいて、少なくとも入力側インダクタLi3は入力側インダクタとして動作している。また、
図53、
図56のコンバータ100Gでは、スイッチの状態によって入力側インダクタが追加されているように動作する場合がある。
【0165】
以下、既に説明した実施形態に係るコンバータの幾つかに入力側インダクタを追加した例を示す。
【0166】
図60は、第8実施形態に係るコンバータの第1実施例を示す図である。
図60に示すコンバータは、
図29に示すコンバータ100Eの第1整流部10と第1交流ノードAC1との間の電流経路に入力側インダクタLi1を設けたものである。入力側インダクタLi1は、
図59B~
図59Dのように追加することも可能である。
【0167】
図61A~
図61Cは、この
図60に示すコンバータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図61Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図61Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図61Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0168】
図61Bの電流波形には、
図30Bの電流波形における半波の前半に表れた位相進み電流による振動の成分が抑制されたような電流波形となっており、力率も
図30Bの電流波形に比べて大幅に改善されている。
【0169】
図61Bの電流波形では、半波の前半に表れる位相進み電流の振動成分が抑制されているため、
図61の電源高調波スペクトルでは、
図30の電源高調波スペクトルよりも大幅に高次高調波が小さくなっている。これは、適切な入力側インダクタによって電源電流の高調波が抑制されたためである。
図61Cの電源高調波スペクトルでは、全ての電源高調波が規格値よりも小さくなっている。
【0170】
図62は、第8実施形態に係るコンバータの第2実施例を示す図である。
図62に示すコンバータは、
図31に示すコンバータ100Eの第1整流部10と第1交流ノードAC1との間の電流経路に入力側インダクタLi1を設けたものである。入力側インダクタLi1は、
図59B~
図59Dのように追加することも可能である。
図62に示すコンバータはまた、
図60に示すコンバータにおける正側インダクタLp及び負側インダクタLn(第1整流部10のインダクタ整流回路2と第2整流部20Eのインダクタ整流回路2とにおいてそれぞれ共通化された正側インダクタLp及び負側インダクタLn)が磁気結合されたものである。
【0171】
図63A~
図63Cは、
図62に示すコンバータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図63Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図63Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図63Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0172】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合の
図63Aの回路において、各インダクタのインダクタンスは、磁気結合がされていない場合の
図61Aの回路に比べて小さい値に設定されている。
【0173】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合の
図63Bに示す電源電流は、磁気結合されていない場合の
図61Bに示す電源電流と大差のない波形となっている。従って、同等の力率の電流波形を得ながら、インダクタのサイズを小型化することができる。
【0174】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合であって、かつ、入力側インダクタが設けられていない場合における
図32Bの電源電流と、上述した
図63Bに示す電源電流とを比較すると、後者の電流波形では、半波の前半における位相進み電流の振動成分が有効に抑制されており、力率も向上していることが分かる。
【0175】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合における
図63Cの電源高調波スペクトルは、磁気結合がされていない場合の
図61Cに示す電源高調波スペクトルと概ね同等であり、いずれも全ての高調波が規格値より小さくなっている。
【0176】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合であって、かつ、入力側インダクタが設けられていない場合における
図32Cの電源高調波スペクトルと、上述した
図63Cの電源高調波スペクトルとを比較すると、後者は前者に比べて大幅に高調波が改善していることが分かる。
従って、
図62の第2実施例では、入力側インダクタの高調波低減効果と、結合インダクタの小型軽量化や低コスト化という効果の両方を同時に実現できる。
【0177】
図64は、第8実施形態に係るコンバータの第3実施例を示す図である。
図64に示すコンバータは、
図39に示す倍電圧型のコンバータ100Fの第1整流部10と第1交流ノードAC1との間の電流経路に入力側インダクタLi1を設けたものである。入力側インダクタLi1は、
図59B~
図59Dのように追加することも可能である。
【0178】
図65A~
図65Cは、この
図64に示すコンバータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図65Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図65Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図65Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0179】
入力側インダクタが設けられた場合の
図65Bの電流波形は、入力側インダクタが設けられていない場合の
図40Bの電流波形において、半波の前半に表れている位相進み電流の振動成分が抑制されたような電流波形となっており、力率も大幅に改善されている。
【0180】
入力側インダクタが設けられた場合、半波の前半に表れる位相進み電流の振動成分が抑制された電流波形となっているため、
図65Cの電源高調波スペクトルでは、入力側インダクタが設けられていない場合の
図40Cの電源高調波スペクトルに比べて、高調波が大幅に小さくなっている。これは、適切な入力側インダクタによって電源電流の高調波成分が抑制されたからである。
図65Cの電源高調波スペクトルでは、全ての電源高調波が規格値よりも小さくなっている。
【0181】
図66は、第8実施形態に係るコンバータの第4実施例を示す図である。
図66に示すコンバータは、
図41に示すコンバータ100Fの第1整流部10と第1交流ノードAC1との間の電流経路に入力側インダクタLi1を設けたものである。入力側インダクタLi1は、
図59B~
図59Dのように追加することも可能である。
図66に示すコンバータはまた、
図64に示すコンバータにおける正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合されたものである。
【0182】
図67A~
図67Cは、
図66に示すコンバータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図67Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図67Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図67Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0183】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合の
図67Bに示す電源電流は、磁気結合されていない場合の
図65Bに示す電源電流と大差のない波形となっている。
【0184】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合であって、かつ、入力側インダクタが設けられていない場合における
図42Bの電源電流と、上述した
図67Bに示す電源電流とを比較すると、後者の電流波形では、半波の前半における位相進み電流の振動成分が有効に抑制されており、力率も向上していることが分かる。
【0185】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合における
図67Cの電源高調波スペクトルと、磁気結合がされていない場合の
図65Cに示す電源高調波スペクトルとを比較すると、高調波スペクトルの分布に差はあるものの、いずれも規格値より低い値となっている。
【0186】
正側インダクタLp及び負側インダクタLnが磁気結合された場合であって、かつ、入力側インダクタが設けられていない場合における
図42Cの電源高調波スペクトルと、上述した
図67Cの電源高調波スペクトルとを比較すると、後者は前者に比べて大幅に高調波が改善していることが分かる。
【0187】
(第9実施形態)
図68は、第9実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。第9実施形態に係るコンバータは、他の実施形態に係るコンバータ100(100A~100G)の入力側にトランスTR1を設けたものである。トランスTR1は、一次巻線w1と二次巻線w2を有しており、一次巻線w1が交流の電源ラインに接続され、二次巻線w2の両端が一対の交流ノードAC(第1交流ノードAC1、第2交流ノードAC2)に接続される。
【0188】
既に説明した他の実施形態では、例えば200Vや100Vの系統電源が直接、電源として使用されているが、本発明はこれらの例に限定されない。すなわち、本実施形態では、トランスの二次巻線w2に上述した各実施形態のコンバータが接続されることによって、トランスの一次側に流れる電源電流の力率を改善し、電源高調波を低減することが可能である。
【0189】
図68では、100Vなどの系統電源が例示されており、系統電源からの交流電圧VacがトランスTR1の一次巻線w1に入力される。トランスTR1の二次巻線w2は、巻
図68に示すように1つでもよいし、複数でもよい。また、1つの二次巻線w2から1以上の中間タップが引き出されていてもよい。トランスTR1の構成は任意でよく、一次巻線w1と二次巻線w2は絶縁されていてもよいし、導通していてもよい。例えば、トランスTR1は、入出力が絶縁されていないトランス(例えば単巻変圧器=オートトランス)でもよいし、複数の巻線出力を備えたり、巻線出力の一部又は全部が中間タップを備えたりしたものでもよい。またトランスTR1は、スイッチング電源に使用されるスイッチングトランスなどでもよい。トランスTR1の一次巻線w1に入力される電源は100Vの系統電源に限定されるものではなく、200V等の他の電圧の系統電源でもよいし、柱上トランスや受電変電設備のような、より高圧の電源でもよい。
【0190】
(第10実施形態)
図69は、第10実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。第10実施形態は、単相3線式の電源ラインから交流の電源が供給される場合に適用される実施形態である。
図69に示すコンバータ100Hは、
図36に示すコンバータ100Fと同様な第1整流部10及び平滑回路30Fを有するとともに、第2整流部20Hを有する。
【0191】
平滑回路30Fにおいて直列接続された平滑用キャパシタCs1及びCs2の第4中間ノードN4は、単相3線式の電源ラインにおける中性線NLに接続される。
一対の交流ノードAC(第1交流ノードAC1、第2交流ノードAC2)は、単相3線式の電源ラインにおける2つの電圧線(VL1、VL2)に接続される。中性線NLと電圧線VL1の間、及び、中性線NLと電圧線VL2の間には、それぞれ同じ振幅の交流電圧Vac1が発生する。
【0192】
第2整流部20Hは、
図69に示すように、キャパシタ整流回路1とインダクタ整流回路2を有する。キャパシタ整流回路1は、例えば
図2Aに示す回路であり、インダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3I、
図16、
図17などに示す回路である。
【0193】
図69に示すコンバータ100Hにおいて、第1整流部10及び第2整流部20Hの各インダクタ整流回路2は、共通インダクタLmを含むか、正側インダクタLp及び負側インダクタLnを含むか、又は、共通インダクタLm、正側インダクタLp及び負側インダクタLnをそれぞれ含む。すなわち、本実施形態におけるコンバータ100Hでは、正側インダクタLpのみ含むインダクタ整流回路2や負側インダクタLnのみ含むインダクタ整流回路2が除外される。
これは、インダクタ整流回路2が正側インダクタLpのみ含む場合や負側インダクタLnのみ含む場合、平滑用キャパシタCs1又はCs2が半周期ごとにダイオード(D2p、D2n)を介して電源電圧(Vac1)に直接接続される状態となり、コンデンサインプット型と同様なパルス状の電流が流れるからである。
従って、上述した各実施形態における第2整流部20A~20Eのうち、
図33や
図34に示す第2整流部20E(インダクタ整流回路2が正側インダクタLpのみ含むもの)を除いた他の第2整流部20A~20Eは、コンバータ100Hの第2整流部20Hに適用可能である。
【0194】
また、単相3線式の電源ラインにおいて、電圧線VL1と中性線NLの間に流れる電源電流と、電圧線VL2と中性線NLの間に流れる電源電流とが等しくなるように、第1整流部10及び第2整流部20Hは、電圧線VL2を電圧線VL1と読み替えるとともに電圧線VL1を電圧線VL2と読み替えた場合でも同一の回路になる対称な回路構成を有することが望ましい。
この場合、具体的には、第1整流部10及び第2整流部20Hの各キャパシタ整流回路1に含まれるキャパシタCは、同一の静電容量を持つ。
また、第1整流部10及び第2整流部20Hの2つのインダクタ整流回路2において、一方のインダクタ整流回路2の共通インダクタLmは、他方のインダクタ整流回路2の共通インダクタLmと同一のインダクタンスを持つ。
更に、第1整流部10及び第2整流部20Hの2つのインダクタ整流回路2において、一方のインダクタ整流回路2の正側インダクタLpは、他方のインダクタ整流回路2の負側インダクタLnと同一のインダクタンスを持つ。
【0195】
なお、コンバータ100Hの出力の負荷は、正ノードDCpと中性線NLとの間及び負ノードDCnと中性線NLとの間にそれぞれ接続してもよいし(負荷RL1及びRL2)、正ノードDCpと負ノードDCnとの間に直接接続してもよいし(負荷RL)、これら全てを有してもよい。
【0196】
図70は、第10実施形態に係るコンバータ100Hの一実施例を示す図である。
図70に示すコンバータ100Hは、
図29に示すコンバータ100Eにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換えて、平滑回路30Fの第4中間ノードN4を中性線NLに接続するとともに、第1交流ノードAC1及び第2交流ノードAC2をそれぞれ電圧線VL1及びVL2に接続したものである。コンバータ100Hにおいて、第1整流部10のキャパシタ整流回路1のキャパシタCと第2整流部20Hのキャパシタ整流回路1のキャパシタCは同一のキャパシタンスを持つ。
【0197】
図71A~
図71Cは、
図70に示すコンバータ100Hのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図71Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図71Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図71Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0198】
図71Bの電源電流において、半波の前半には位相進み電流の振動のピークが比較的大きく表れている。これは、第1整流部10のキャパシタCと第2整流部20HのキャパシタCの静電容量を等しくしたためと考えられる。位相進み電流のピークが大きく表れていることにより、電源電流の力率が低めになっており、
図71Cに示す電源高調波スペクトルにおいて一部の高調波電流が規格値を超えている。
【0199】
(第11実施形態)
図72は、第11実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。第11実施形態は、単相3線式の電源ラインに相当する出力を備えたトランスTR2を用いる実施形態である。
図72に示すコンバータ100Jは、
図69に示すコンバータ100Hと同様な第1整流部10、第2整流部20J及び平滑回路30Fを有するとともに、トランスTR2を有する。
【0200】
トランスTR2は、交流の電源ライン(単相2線式の電源ラインなど)に接続された一次巻線w1と、和動接続された2つの二次巻線w2とを含む。2つの二次巻線w2にはそれぞれ同じ振幅の交流電圧が発生する。
【0201】
平滑回路30Fにおいて直列接続された平滑用キャパシタCs1及びCs2の第4中間ノードN4は、和動接続された2つの二次巻線w2における中間のノードである第5中間ノードN5に接続される。
一対の交流ノードAC(第1交流ノードAC1、第2交流ノードAC2)は、和動接続された2つの二次巻線w2における両端のノードに接続される。
【0202】
第2整流部20Jは、
図72に示すように、キャパシタ整流回路1とインダクタ整流回路2の少なくとも一方を有する。キャパシタ整流回路1は、例えば
図2Aに示す回路であり、インダクタ整流回路2は、例えば
図2B~
図2J、
図3B~
図3I、
図16、
図17などに示す回路である。
【0203】
図72に示すコンバータ100Jにおいて、第1整流部10及び第2整流部20Jの各インダクタ整流回路2は、共通インダクタLmを含むか、正側インダクタLp及び負側インダクタLnを含むか、又は、共通インダクタLm、正側インダクタLp及び負側インダクタLnをそれぞれ含む。これにより、平滑用キャパシタCs1又はCs2が半周期ごとにダイオード(D2p、D2n)を介して二次巻線w2に直接接続されることが回避される。
【0204】
トランスTR2を使用する
図72に示すコンバータ100Jでは、第1交流ノードAC1と第5中間ノードN5との間に流れる電流と、第2交流ノードAC2と第5中間ノードN5との間に流れる電流とが等しくない場合でも、これらを合成した電流が一次巻線w1に流れるため、電源ラインから一次巻線w1へ流れる電源電流の力率を改善することが可能である。
【0205】
図73は、第11実施形態に係るコンバータ100Jの一実施例を示す図である。
図73に示すコンバータ100Jは、
図18に示すコンバータ100Cにおける平滑回路30を平滑回路30Fに置き換えて、平滑回路30Fの第4中間ノードN4をトランスTR2の第5中間ノードN5に接続するとともに、第1交流ノードAC1及び第2交流ノードAC2をそれぞれ2つの二次巻線w2における両端のノードに接続したものである。
【0206】
図74A~
図74Cは、
図73に示すコンバータ100Jのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図74Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図74Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図74Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0207】
図74Aに示す回路構成において、トランスを用いずに直接単相3線式の電源ラインに接続した場合、第1交流ノードAC1-中性線NL間にはキャパシタCの位相進み電流とインダクタLの位相遅れ電流との合成電流が流れて電源電流の力率が改善されるが、第2交流ノードAC2-中性線NL間にはインダクタLの位相遅れ電流のみが流れるため力率の改善効果が得られない。トランスTR2を用いることによって、2つの二次巻線w2に流れる電流を合成した電流が一次巻線w1に流れるようになるため、
図74Bの電流波形に示すように、正負の波形にそれぞれキャパシタCの位相進み電流が流れるようになり、力率の改善効果が得られている。
【0208】
図74Cの電源高調波スペクトルを見ると、50Hz時は第9次高調波のみが規格値を超えており、60Hzでは第5次と第9次高調波のみが規格値を超えているが、もう少し定数の調整を行うことにより、規格値を満たすことができる可能性がある。
【0209】
(第12実施形態)
図75は、第12実施形態に係るコンバータの構成の一例を示す図である。
図75に示すコンバータは、これまで説明した各実施形態のコンバータ100(100A~100H、100J)の入力側に副電源200を接続したものである。
【0210】
副電源200は、第1交流ノードAC1及び第2交流ノードAC2に印加される交流電圧を全波整流する全波整流回路40と、全波整流回路40の出力を平滑化する第2平滑回路50とを有する。副電源200の直流電圧の出力には負荷RL3が接続されている。副電源200は、コンデンサインプット型整流回路であり、交流電圧Vacのピーク付近でパルス状の電源電流が流れる。電源ライン側から見た電源電流は、コンバータ100の電源電流に副電源200のパルス状の電源電流が重畳された波形となる。
【0211】
例えば、
図63Bの電源電流のように、電源電圧の正負ピーク近辺の電流波形が平らで台形のようになっている場合、
図75に示すような副電源200の電源電流を重畳させることによって、全体の電源電流をより正弦波に近づけることができる場合がある。副電源200は他の全ての実施形態のコンバータに対して追加できるが、電源電圧の正負ピーク近辺の電流波形が平らだったりくぼんでいたりするコンバータに対して有効である。
【0212】
なお、
図75の例において、副電源200の全波整流回路40は一対の交流ノードAC(第1交流ノードAC1及び第2交流ノードAC2)に直接接続されているが、本実施形態はこの例に限定されない。
図75の例において副電源200の全波整流回路40は一対の交流ノードAC直接接続されているが、本実施形態の他の例において、全波整流回路40は1以上のトランスを介して間接的に一対の交流ノードACに接続されていてもよい。例えば、
図68に示すようにコンバータ100がトランスTR1を介して交流の電源ライン(単相2線式電源など)に接続されている場合、全波整流回路40はトランスTR1の一次側の電源ラインに接続されていてもよいし、この電源ラインの交流電圧が印加された別のトランスの二次側に接続されていてもよい。
【0213】
図76は、第12実施形態に係るコンバータの一実施例を示す図である。
図76に示すコンバータは、
図62に示すコンバータ100Eの入力側に副電源200の入力を接続したものである。
【0214】
図77A~
図77Cは、
図76に示すコンバータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図77Aは、シミュレーションを行った回路の定数を示し、
図77Bは電源電圧と電源電流のシミュレーション波形を示し、
図77Cは電源高調波スペクトルを示す。
【0215】
副電源200が追加された場合の
図77Bの電流波形を、この副電源200のない場合の
図63Bの電流波形と比較すると、副電源200が追加された場合の方がより正弦波に近い電流波形となっており、力率も若干向上している。副電源200の電流波形の導通角がより広くなる定数であれば、副電源の負荷をより重くすることによって力率を更に向上できそうである。
なお、
図63Bの各図の下に表示される直流電圧とリップル電圧は正ノードDCpと負ノードDCnの出力における値であり、副電源の出力におけるリップル電圧は主電源よりも高い。これは、副電源200の負荷が軽くなっているからである。
【0216】
副電源200が追加された場合の
図77Cの電源高調波スペクトルを見ると、この副電源200のない場合の
図63Cの電源高調波スペクトルと同様、規格値を満たしていることがわかる。
【0217】
この実施形態の考え方に基づく本発明の別の応用として、近隣の電源系統に接続されているコンデンサインプットの他の機器と、副電源を備えないこれまで説明した各実施形態のコンバータ100を併用するという応用も考えられる。ここで近隣とは、一例として同じ柱上トランス、変電設備や同じ電力量計を使用している電源系統である。この場合、近隣のコンデンサインプットの他の機器は、コンバータ100の副電源として動作する。この応用によれば、コンデンサインプットの他の機器と各実施形態のコンバータ100のトータルで、力率改善や電源高調波低減できるという効果を有する。この応用は、副電源を間接的に接続する、具体的な他の一例である。
【0218】
(特許文献1との比較)
本実施形態と比較するため、特許文献1の
図1の回路についてシミュレーションを行った。
図78Aは、特許文献1の
図1のシミュレーション回路例を示す。この回路例におけるキャパシタC1とインダクタL2の直列共振周波数は約186.6Hzになっている。
【0219】
図78Bは、特許文献1の
図1のシミュレーション回路における電源電圧と電源電流のシミュレーション結果を示す。また、インダクタL2とキャパシタC1に流れる電流を細い実線で示しており、インダクタL1と直列に接続されたダイオードに流れる電流を、細い一点鎖線で示している。
図78Bを見ると、電源電流、インダクタL2とキャパシタC1に流れる電流、インダクタL1と直列に接続されたダイオードに流れる電流は、いずれも特許文献1の
図3や
図4と似た波形になっており、適切なシミュレーションであることを示している。
【0220】
図78Cは、特許文献1の
図1のシミュレーション回路における電源高調波スペクトルを示す。このシミュレーション回路では、50Hzにおける第5次高調波(250Hz)がわずかに規格値を超えているが、他は規格値以下となっている。一方60Hzでは、全ての高調波が規格値以下となっている。
【0221】
図79Bは、特許文献1の
図1のシミュレーション回路(
図79A)において、横軸を出力電力、縦軸を力率としたグラフを示す。点線のプロットはL1及びL2が12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはL1及びL2が15mHのときを表しており、実線のプロットはL1及びL2が18mHのときを表している。
【0222】
図79Bのグラフを見ると、インダクタL1、L2のインダクタンスによって力率の特性が大きく変わることが分かる。そのため、特許文献1の回路では、公差の小さいインダクタを用いる必要がある。
【0223】
また
図79Bのグラフを見ると、50Hzと60Hzにおける差もかなり大きくなっていることが分かる。そのため、特許文献1の回路では、特許文献1の本文にも記載されているように、電源の周波数に応じて素子の定数を切り替える必要が生じる。
【0224】
更に、
図79Bのグラフから、最高の力率になる電力の半分程度の電力近辺で力率が急落しており、高力率の動作が可能な出力電力の範囲が狭いという特徴も見受けられる。
【0225】
図79Cは、特許文献1の
図1のシミュレーション回路において、横軸を出力電力、縦軸を直流出力電圧としたグラフを示す。点線のプロットはL1及びL2が12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはL1及びL2が15mHのときを表しており、実線のプロットはL1及びL2が18mHのときを表している。
【0226】
この
図79のグラフからも、50Hzと60Hzにおける差も大きいという特徴や、最高の力率になる電力の半分程度の電力近辺で出力電圧の変動が大きいという特徴が見受けられる。すなわち、出力電力と直流出力電圧の関係において、電源周波数による差が大きい。また、出力電力と直流出力電圧の関係において、最高の力率になる電力の半分程度の電力近辺で、出力電圧の変動が大きくなる。
【0227】
図80Aは、本実施形態と特許文献1とを比較するためにシミュレーションを行った回路を示す図であり、
図19Aに示す本実施形態の回路と同じ回路構成である。
図80Bは、
図80Aに示す回路のシミュレーション結果を示す図であり、横軸を出力電力、縦軸を力率としたグラフを示す。点線のプロットはLp及びLnが12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはLp及びLnが15mHのときを表しており、実線のプロットはLp及びLnが18mHのときを表している。
【0228】
図80Bのグラフを見ると、Lp、Lnのインダクタンスによる差がとても小さいことがわかる。すなわち、Lp、Lnのインダクタンスによる力率の特性の変化がとても小さい。そのため、本実施形態の回路では、公差の大きいインダクタを使用できる。
【0229】
また
図80Bのグラフを見ると、50Hzと60Hzにおける差も小さいことが分かる。すなわち、本実施形態の回路では、出力電力と力率の関係において、電源周波数による特性の差がとても小さい。そのため、周波数によって素子の定数を切り替える必要がない。
【0230】
更に、
図80Bのグラフから、最高の力率になる電力をある程度以上超えた電力になると、プロットが急変するという特徴が見受けられる。これは、チョークインプットによる電流位相の遅れが大きくなり、ブリッジダイオードによる電流極性反転が発生するという理由によるものである。実際の回路では、最大消費電力時に急変せず、かつ通常の消費電力時に高力率になるように定数を選択することが望ましい。
【0231】
図80Cは、本実施形態と特許文献1との比較のために、
図80A(
図19A)に示す本実施形態の回路において、横軸を出力電力、縦軸を直流出力電圧としたグラフを示している。点線のプロットはLp及びLnが12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはLp及びLnが15mHのときを表しており、実線のプロットはLp及びLnが18mHのときを表している。
【0232】
図80Cのグラフから、50Hzと60Hzにおける特性の差が小さいことがわかる。すなわち、出力電力と直流出力電圧の関係において、電源周波数による差がとても小さい。またここでも、最高の力率になる電力をある程度以上超えた電力になると、プロットが急変するという特徴が見受けられる。
【0233】
図81Aは、特許文献1と本実施形態の特性の比較を容易にした図であり、横軸を出力電力、縦軸を力率としたグラフを示している。50Hz/60Hz各々について、
図79Bと
図80Bを重ね書きして示している。
点線のプロットはインダクタンス(L1、L2、Lp、Ln)が12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはインダクタンスが15mHのときを表しており、実線のプロットはインダクタンスが18mHのときを表している。太線のプロットは特許文献1の回路を表しており、細い線のプロットは本実施形態の回路(
図80A)を表している。この
図81Aのグラフでは、前述のような特性の差異がより明らかに示されている。特に、出力電力と力率の関係において、本実施形態の回路(
図80A)は特許文献1の回路に比べて高力率の範囲が広いことが分かる。
【0234】
図81Bも、特許文献1と本実施形態の特性の比較を容易にした図であり、横軸を出力電力、縦軸を直流出力電圧としたグラフを示している。50Hz/60Hz各々について、
図79Cと
図80Cを重ね書きして示している。
点線のプロットはインダクタンス(L1、L2、Lp、Ln)が12mHのときを表しており、一点鎖線のプロットはインダクタンスが15mHのときを表しており、実線のプロットはインダクタンスが18mHのときを表している。太線のプロットは特許文献1の回路を表しており、細い線のプロットは本実施形態の回路(
図80A)を表している。
ここでも、前述のような特性の差異が、より明らかに示されている。特に、出力電力と直流出力電圧の関係において、最高の力率になる電力を超えるまで、出力電圧変動が小さいことが分かる。また、特許文献1の回路よりも本実施形態の回路(
図80A)の方が直流出力電圧の高い領域の範囲が広くなっており、さらに出力電力と直流出力電圧の関係が、より直線的であることがわかる。
【符号の説明】
【0235】
100、100A~100H、100J…コンバータ、200…副電源、10…第1整流部、20A~20E、20G、20H、20J…第2整流部、30、30F…平滑回路、40…全波整流回路、50…第2平滑回路、1…キャパシタ整流回路、2…インダクタ整流回路、3…ダイオード整流回路、D1p…第1正側ダイオード、D1n…第1負側ダイオード、D2p…第2正側ダイオード、D2n…第2負側ダイオード、D3p…第3正側ダイオード、D3n…第3負側ダイオード、Lp…正側インダクタ、Ln…負側インダクタ、Lm…共通インダクタ、Li1~Li3…入力側インダクタ、Cs、Cs1、Cs2…平滑用キャパシタ、RL…負荷、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、AC1…第1交流ノード、AC2…第2交流ノード、DCp…正ノード、DCn…負ノード、N1…第1中間ノード、N2…第2中間ノード、N3…第3中間ノード、N4…第4中間ノード、N5…第5中間ノード、N6…第6中間ノード