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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084501
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】中性線、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20240618BHJP
【FI】
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198808
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山本 竹真
(72)【発明者】
【氏名】山田 純平
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB02
5H611BB04
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】ステータコイルの各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させる際に中性線が曲がる位置を安定させる。
【解決手段】中性線(30)は、断面が矩形状の平角導線により形成され、ステータコイル(20)の中性点を構成する。中性線は、ステータコイルの各相のコイル端(20Ua、20Va、20Wa)に接続される各接続部(30u、30v、30w)と、各接続部の間において、平板状に張り出す張出部(61)を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部(60)と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が矩形状の平角導線により形成され、ステータコイル(20)の中性点を構成する中性線(30)であって、
前記ステータコイルの各相のコイル端(20Ua、20Va、20Wa)に接続される各接続部(30u、30v、30w)と、
前記各接続部の間において、平板状に張り出す張出部(61、161)を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部(60、160)と、
を備える、中性線。
【請求項2】
U字状に折り曲げられたU字部(35)を備える、請求項1に記載の中性線。
【請求項3】
前記拡張部は、前記U字部に最も近い前記接続部(30u)と前記U字部との間に設けられている、請求項2に記載の中性線。
【請求項4】
前記U字部に最も近い前記接続部と前記拡張部との距離は、前記U字部と前記拡張部との距離よりも長い、請求項3に記載の中性線。
【請求項5】
前記各接続部の間において前記各接続部が並ぶ方向に延びている延長部(31、32、33)を備え、
前記延長部は、複数の直線部(31a、31b、31c、33a、33b、33c)と、前記各接続部が並ぶ方向に前記複数の直線部を沿わせるように曲がった複数の曲部(31d、31e、33d、33e)とを備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の中性線。
【請求項6】
前記張出部(61)が前記中性線の幅方向へ張り出しており、前記拡張部(60)の幅が他の部分の幅よりも広くなっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の中性線。
【請求項7】
前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の幅を滑らかに増加させるR部(62)が形成されている、請求項6に記載の中性線。
【請求項8】
前記張出部(161)が前記中性線の厚み方向へ張り出しており、前記拡張部(160)の厚みが他の部分の厚みよりも厚くなっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の中性線。
【請求項9】
前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の厚みを滑らかに増加させるR部(162)が形成されている、請求項8に記載の中性線。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中性線と、
前記ステータコイルと、を備える回転電機であって、
前記中性線は、前記ステータコイルの軸方向の一端(20a)に対して径方向の外側に配置されている、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコイルの中性点を構成する中性線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の中性線において、U字状に折り曲げたU字部により温度センサを挟み込んで固定するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-61389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中性線は、ステータコイルの各相のコイル端に接続される各接続部を有している。各相のコイル端に中性線の各接続部を接続するためには、各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させるように中性線を曲げる必要がある。このとき、中性線が曲がる位置が安定しないため、各相のコイル端の位置に中性線の各接続部の位置を正確に調整することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ステータコイルの各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させる際に中性線が曲がる位置を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
断面が矩形状の平角導線により形成され、ステータコイル(20)の中性点を構成する中性線(30)であって、
前記ステータコイルの各相のコイル端(20Ua、20Va、20Wa)に接続される各接続部(30u、30v、30w)と、
前記各接続部の間において、平板状に張り出す張出部(61、161)を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部(60、160)と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、中性線は、断面が矩形状の平角導線により形成されており、ステータコイルの中性点を構成する。中性線は、前記ステータコイルの各相のコイル端に接続される各接続部を備えている。ここで、各相のコイル端に中性線の各接続部を接続するためには、各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させるように中性線を曲げる必要がある。なお、矩形状とは、矩形と、矩形の角が若干丸められている形状とを含む。すなわち、平角導線により形成された中性線の角が面取りされていてもよい。
【0008】
この点、中性線は、前記各接続部の間において、平板状に張り出す張出部を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部を備えている。平板状に張り出した張出部を含む拡張部は冶具等で掴みやすく、拡張部を掴んで中性線を曲げることができ、各相のコイル端の位置に中性線の各接続部の位置を調整しやすくなる。さらに、拡張部は他の部分よりも強度が高くなるため、ステータコイルの各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させる際に、拡張部との境付近において中性線を安定して曲げることができる。その結果、各相のコイル端と中性線の各接続部との接触を改善することができ、溶接等での接続面積・接続力を維持しやすくなるとともに、接続部付近の残留応力を低減することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0009】
第2の手段では、中性線は、U字状に折り曲げられたU字部(35)を備えている。このため、U字部に温度センサを挟み込んで保持することができる。しかし、各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させるように中性線を曲げる際に、U字部が変形すると温度センサを挟み込む力が低下するおそれがある。この点、拡張部との境付近において中性線を優先的に曲げることができるため、U字部が変形することを抑制することができる。
【0010】
中性線が曲げられた部分及びその近傍は加工硬化する。U字部の近傍は特に加工硬化しやすく、U字部の近傍で中性線を曲げる場合は大きな力が必要となる。このため、U字部に最も近い接続部をコイル端に接触させるように中性線を曲げる際には大きな力が必要となり、U字部が変形しやすい。
【0011】
この点、第3の手段では、前記拡張部は、前記U字部に最も近い前記接続部(30u)と前記U字部との間に設けられている。こうした構成によれば、U字部に最も近い接続部をコイル端に接触させるように中性線を曲げる際に、U字部よりも手前の拡張部との境付近において中性線を優先的に曲げることができる。したがって、U字部の近傍で中性線を曲げる場合であっても、U字部が変形することを抑制することができる。
【0012】
第4の手段では、前記U字部に最も近い前記接続部と前記拡張部との距離は、前記U字部と前記拡張部との距離よりも長い。こうした構成によれば、前記U字部に最も近い前記接続部から前記拡張部を遠ざけることができ、拡張部の近くで中性線が変形した影響が接続部に及ぶことを抑制することができる。したがって、接続部付近の残留応力を低減することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0013】
第5の手段では、前記各接続部の間において前記各接続部が並ぶ方向に延びている延長部(31、32、33)を備え、前記延長部は、複数の直線部(31a、31b、31c、33a、33b、33c)と、前記各接続部が並ぶ方向に前記複数の直線部を沿わせるように曲がった複数の曲部(31d、31e、33d、33e)とを備えている。
【0014】
上記構成によれば、中性線は、前記各接続部の間において前記各接続部が並ぶ方向に延びている延長部を備えている。このため、各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させる際には、延長部が曲げられることとなる。ここで、前記延長部は、複数の直線部と、前記各接続部が並ぶ方向に前記複数の直線部を沿わせるように曲がった複数の曲部とを備えている。このため、各相のコイル端に中性線の各接続部を接触させる際に、複数の直線部をそれぞれ曲げて各接続部の位置を調整することができる。したがって、各接続部の位置を調整しやすくなり、接続部付近の残留応力を低減することができる。
【0015】
第6の手段では、前記張出部(61)が前記中性線の幅方向へ張り出しており、前記拡張部(60)の幅が他の部分の幅よりも広くなっている。こうした構成によれば、拡張部の幅が他の部分の幅よりも広いため、拡張部を冶具等で容易に掴むことができる。
【0016】
第7の手段では、前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の幅を滑らかに増加させるR部(62)が形成されている。こうした構成によれば、中性線の使用時に応力が集中する位置を、拡張部との境からR部側へずらすことができる。このため、拡張部との境付近において中性線が曲がる位置と、中性線の使用時に応力が集中する位置とをずらすことかでき、中性線の耐久性を向上させることができる。
【0017】
第8の手段では、前記張出部(161)が前記中性線の厚み方向へ張り出しており、前記拡張部(160)の厚みが他の部分の厚みよりも厚くなっている。こうした構成によれば、拡張部の厚みが他の部分の厚みよりも厚いため、拡張部を冶具等で優先的に掴みやすくなる。さらに、拡張部との境付近において中性線が曲がる部分の断面積を増加させることができるため、残留応力を低下させることができる。
【0018】
第9の手段では、前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の厚みを滑らかに増加させるR部(162)が形成されている。こうした構成によれば、中性線の使用時に応力が集中する位置を、R部まで広げることができる。このため、拡張部との境付近において中性線が曲がる位置と、中性線の使用時に応力が集中する位置とをずらすことかでき、中性線の耐久性を向上させることができる。
【0019】
第10の手段では、第1~第9の手段のいずれか1つに記載の中性線と、前記ステータコイルと、を備える回転電機であって、前記中性線は、前記ステータコイルの軸方向の一端(20a)に対して径方向の外側に配置されている。こうした構成によれば、中性線がステータコイルの軸方向の一端に対して軸方向に配置される場合と比較して、回転電機の軸方向の長さを短縮することができ、回転電機の搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ステータの部分平面図。
図2】ステータコイル、中性線、及び温度センサの側面図。
図3】中性線の斜視図。
図4】U字部、温度センサ、及び拡張部の拡大側面図。
図5】中性線の変更例の斜視図。
図6】中性線の他の変更例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ハイブリッド車両や電動車両に搭載されるモータジェネレータに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1,2に示すように、モータジェネレータ(回転電機)のステータ10は、ステータコア11と、ステータコア11に巻装されたステータコイル20とを備えている。ステータコア11は、円環状のヨーク12と、このヨーク12の内周面に周方向に等間隔で設けられた複数のティース13と、を備えている。隣り合うティース13の間の部分は、スロットになっており、スロットに導線21が挿入されている。導線21は、例えば断面が矩形(矩形状)の平角導線であり、所定の形状に曲げられてスロットに挿入されている。導線21は、互いに溶接されて、ティース13に巻回されたコイルを形成している。なお、矩形状とは、矩形と、矩形の角が若干丸められている形状とを含む。すなわち、導線21の角が面取りされていてもよい。
【0023】
ステータコイル20は、導線21を例えば集中巻することで構成されている。導線21の表面には、隣接する導線21間の絶縁を確保するためにエナメル加工が施されている。ステータコイル20は、W相の相コイル20W、U相の相コイル20U、V相の相コイル20Vを有しており、各相コイル20W,20U,20Vは、複数の単コイルから構成されている。単コイルは、導線21を1つのティース13に巻回することで構成されている。各単コイルは、周方向に繰り返し並ぶように各ティース13に配置されている。なお、ステータコイル20は、導線21を分布巻することで構成することもできる。
【0024】
複数の同相の単コイルを結線して構成される各相コイル20W,20U,20Vの図示しない各第1端(一端)には、各入力端子(図示略)がそれぞれ接続されている。各入力端子には、3相交流電力を出力する図示しないインバータが接続される。各相コイル20W,20U,20Vの各第2端20Wa,20Ua,20Va(コイル端、他端)は、中性線30に接続されている。各相コイル20W,20U,20Vは、各入力端子と中性線30との間で並列接続されて例えば2Y結線(並列スター結線)されている。中性線30は、ステータコイル20の中性点を構成している。中性線30は、ステータコイル20の軸方向の一端20aに対して、ステータコイル20(ステータコア11、ステータ10)の径方向の外側に配置されており、ステータコイル20の軸方向には配置されていない。すなわち、中性線30は、ステータコイル20の軸方向の一端20aよりも先端側(軸方向)へ突出していない。
【0025】
各相コイル20W,20U,20Vの各第2端20Wa,20Ua,20Vaは、図3に示す中性線30に溶接によって接続されている。中性線30は、1本の平角導線(分岐部を含む)を折り曲げて、各端子30w,30u,30vが形成されている。各相コイル20W,20U,20Vは、各端子30w,30u,30v(接続部)に溶接されている。中性線30における隣り合う端子30wと端子30uとの中央(中間)には、U字状に折り曲げられたU字部35が形成されている。なお、U字部35は、中性線30において折り返すように曲がった折り返し部に相当する。平角導線により形成された中性線30の角が面取りされていてもよい。
【0026】
中性線30において、U字部35よりも端子30w側の部分が第1部31であり、U字部35と端子30uとの間の部分が第2部32であり、端子30uと端子30vとの間の部分が第3部33である。第1部31、第2部32、及び第3部33は、同一(共通)の平面に沿って延びている(配置されている)。換言すれば、第1部31、第2部32、及び第3部33の中心線は、同一(共通)の平面に含まれている。第1部31,第3部33は、各端子30w,30u,30vの間において各端子30w,30u,30vが並ぶ方向、すなわちステータコア11及びステータコイル20の周方向に延びている。第1部31(延長部)は、複数の直線部31a,31b,31cと、各端子30w,30u,30vが並ぶ方向に複数の直線部31a,31b,31cを沿わせるように曲がった複数の曲部31d,31eとを備えている。第3部33(延長部)は、複数の直線部33a,33b,33cと、各端子30w,30u,30vが並ぶ方向に複数の直線部33a,33b,33cを沿わせるように曲がった複数の曲部33d,33eとを備えている。すなわち、第1部31及び第3部33は、全体が曲線状に形成されているのではなく、複数の直線部と、2つの直線部の間を繋ぐ曲部とにより形成(構成)されている。
【0027】
図3と併せて、U字部35周辺の拡大図である図4を参照して説明する。第1部31におけるU字部35の近傍の部分と、第2部32におけるU字部35の近傍の部分とは、平行(略平行)になっている。U字部35の足部35a,35b(直線部)は、同方向へ延びている。詳しくは、足部35a,35bは、第1部31及び第2部32の中心線を含む平面に垂直な方向(図3の下方向)へ延びている。足部35a,35bは、U字部35の底部35c(曲線部)により接続されている。
【0028】
足部35a,35bから、それぞれ突出部37a,37bが突出している。突出部37aは、第1部31におけるU字部35の近傍の部分及び第2部32におけるU字部35の近傍の部分に平行(略平行)に、足部35aから突出している。突出部37bは、第1部31におけるU字部35の近傍の部分及び第2部32におけるU字部35の近傍の部分に平行(略平行)に、足部35b(U字部35)から突出している。突出部37a,37bは、平板(平板状)に形成されており、互いに対向し、互いに平行(略平行)である。そして、図4に示すように、突出部37a(図4では見えず)と突出部37bとの間に温度センサ40が挟み込まれている。
【0029】
温度センサ40は、本体41、張出部42、及びサーミスタ素子45を備えている。本体41及び張出部42は、樹脂等により形成されている。本体41は、直方体(直方体状)に形成されている。本体41の長手方向の一端から両側へ、張出部42が張り出している。サーミスタ素子45(感温素子)は、本体41において張出部42と反対側の端部41a(長手方向の一端部)に埋め込まれている。サーミスタ素子45は、温度に応じて抵抗値が変化する。サーミスタ素子45は、リード線48に接続されている。
【0030】
サーミスタ素子45はU字部35の足部35aと足部35bとの間に配置されている。すなわち、サーミスタ素子45は、U字部35の足部35aと足部35bと(U字部35)により挟み込まれている。詳しくは、温度センサ40は、突出部37aと足部35aとの接続部36aと、突出部37bと足部35bとの接続部36bとにより挟み込まれている。温度センサ40は、隣り合う端子30wと端子30uとの中央(略中央)に配置されている。
【0031】
そして、突出部37a及び接続部36aと、突出部37b及び接続部36bとにより温度センサ40を挟み込んだ状態で、図1に示すようにサーミスタ素子45(温度センサ40)は樹脂50により封止されている。
【0032】
ここで、各相コイル20W,20U,20Vの各第2端20Wa,20Ua,20Vaに中性線30の各端子30w,30u,30vをそれぞれ接続するためには、各第2端20Wa,20Ua,20Vaに中性線30の各端子30w,30u,30vを接触させるように中性線30を曲げる必要がある。このとき、中性線30が曲がる位置が安定しないと、各第2端20Wa,20Ua,20Vaの位置に中性線30の各端子30w,30u,30vの位置を正確に調整することができないおそれがある。
【0033】
そこで、中性線30は、端子30wと端子30uとの間において、平板状に張り出す張出部61を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部60を備えている。拡張部60は、中性線30の第2部32、すなわち中性線30においてU字部35に最も近い端子30uとU字部35との間に形成されている(設けられている)。詳しくは、端子30uと拡張部60との距離は、U字部35と拡張部60との距離よりも長い。拡張部60は、第2部32においてU字部35の近傍(隣)に形成されている。
【0034】
張出部61は、中性線30の幅方向(長手方向及び厚さ方向以外の方向)へ張り出している。これにより、拡張部60の幅は、他の部分の幅よりも広くなっている。張出部61は、矩形板状に形成されている。張出部61の厚みは、中性線30の他の部分の厚みと同じである。
【0035】
中性線30における張出部61(拡張部60)に隣接する部分には、拡張部60に向かって中性線30の幅を滑らかに増加させるR部62が形成されている。すなわち、直線部33a(第3部33)と張出部61との接続部(境界部)にR部62が形成されている。R部62は、曲面状に形成されている。直線部33aと張出部61とは、R部62により滑らかに接続されている。
【0036】
以上のように構成された中性線30を、各相コイル20W,20U,20Vの各第2端20Wa,20Ua,20Vaに接続する工程は、以下のように実施される。以下の工程は、作業者により手作業で実施されてもよいし、機械により自動的に実施されてもよい。
【0037】
まず、各第2端20Wa,20Ua,20Vaに、中性線30の各端子30w,30u,30vの位置を合わせる。ここで、中性線30の各端子30w,30u,30vにおいて、各第2端20Wa,20Ua,20Vaに接触させることができない端子がある場合は、中性線30を曲げて中性線30の各端子30w,30u,30vを各第2端20Wa,20Ua,20Vaにそれぞれ接触させる。このとき、冶具(図示略)により中性線30の拡張部60を掴む。冶具は、ワークを挟持する機能を有している。拡張部60の幅は他の部分の幅よりも広いため、拡張部60の付近を冶具により大まかに掴めば拡張部60を容易に掴むことができる。そして、各第2端20Wa,20Ua,20Vaに、中性線30の各端子30w,30u,30vを工具等で掴んで近付けるように、中性線30の各部を曲げる。具体的には、中性線30において、曲部31d,31e,33d,33eよりも強度が低い各直線部31a,31b,31c,33a,33b,33cがそれぞれ曲げられる。例えば、第2端20Uaに中性線30の端子30uを近付ける場合、直線部33a,33bが曲げられる。
【0038】
なお、中性線30の成形時に、中性線30が曲げられた部分及びその近傍は加工硬化している。U字部35の近傍は特に加工硬化しやすく、中性線30の取り付け時にU字部35の近傍で中性線30を曲げる場合は大きな力が必要となる。このため、U字部35に最も近い端子30uを第2端20Uaに接触させるように中性線30を曲げる際には大きな力が必要となり、U字部35が変形しやすい。U字部35が変形すると温度センサ40を挟み込む力が低下するおそれがある。
【0039】
この点、冶具により中性線30の拡張部60を掴んで中性線30を曲げており、拡張部60は他の部分よりも強度が高いため、拡張部60との境付近において中性線30が優先的に曲げられる。これにより、U字部35が変形することが抑制される。中性線30の使用時に応力が集中する位置C1A,C1Bは、拡張部60との境C2A,C2BからR部62側へずれている。すなわち、拡張部60との境C2A,C2B付近において中性線30が曲がる位置と、中性線30の使用時に応力が集中する位置C1A,C1Bとがずれている。なお、中性線30の使用時に応力が集中する位置C1A,C1Bは、モータジェネレータを搭載した車両の走行時の振動等で中性線30に力が作用した際に応力が集中する位置である。中性線30への力は、中性線30の自重、温度センサ40及びU字部35の重量等に起因して、中性線30が振動した時に発生する。
【0040】
そして、各第2端20Wa,20Ua,20Vaに、中性線30の各端子30w,30u,30vを接触させた後に、各第2端20Wa,20Ua,20Vaと中性線30の各端子30w,30u,30vとが溶接される。
【0041】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0042】
・中性線30は、端子30wと端子30uとの間において、平板状に張り出す張出部61を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部60を備えている。平板状に張り出した張出部61を含む拡張部60は冶具等で掴みやすく、拡張部60を掴んで中性線30を曲げることができ、各相の第2端20Wa,20Ua,20Vaの位置に中性線30の各端子30w,30u,30vの位置を調整しやすくなる。さらに、拡張部60は他の部分よりも強度が高くなるため、ステータコイル20の各相の第2端20Wa,20Ua,20Vaに中性線30の各端子30w,30u,30vを接触させる際に、拡張部60との境付近において中性線30を安定して曲げることができる。その結果、各相の第2端20Wa,20Ua,20Vaと中性線30の各端子30w,30u,30vとの接触を改善することができ、溶接での接続面積・接続力を維持しやすくなるとともに、接続部付近の残留応力を低減することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0043】
・中性線30は、U字状に折り曲げられたU字部35を備えている。このため、U字部35に温度センサ40を挟み込んで保持することができる。そして、拡張部60との境付近において中性線30を優先的に曲げることができるため、U字部35が変形することを抑制することができる。
【0044】
・拡張部60は、U字部35に最も近い端子30uとU字部35との間に設けられている。こうした構成によれば、U字部35に最も近い端子30uを第2端20Uaに接触させるように中性線30を曲げる際に、U字部35よりも手前の拡張部60との境付近において中性線30を優先的に曲げることができる。したがって、U字部35の近傍で中性線30を曲げる場合であっても、U字部35が変形することを抑制することができる。
【0045】
・U字部35に最も近い端子30uと拡張部60との距離は、U字部35と拡張部60との距離よりも長い。こうした構成によれば、U字部35に最も近い端子30uから拡張部60を遠ざけることができ、拡張部60の近くで中性線30が変形した影響が端子30uに及ぶことを抑制することができる。したがって、端子30u付近の残留応力を低減することができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0046】
・中性線30は、各端子30w,30u,30vの間において各端子30w,30u,30vが並ぶ方向に延びている第1部31,第2部32,第3部33を備えている。このため、各相の第2端20Wa,20Ua,20Vaに中性線30の各端子30w,30u,30vを接触させる際には、第1部31,第2部32,第3部33が曲げられることとなる。ここで、第1部31,第2部32,第3部33は、複数の直線部31a,31b,31c,33a,33b,33cと、各端子30w,30u,30vが並ぶ方向に複数の直線部31a,31b,31c,33a,33b,33cを沿わせるように曲がった複数の曲部31d,31e,33d,33eとを備えている。このため、各相の第2端20Wa,20Ua,20Vaに中性線30の各端子30w,30u,30vを接触させる際に、複数の直線部31a,31b,31c,33a,33b,33cをそれぞれ曲げて各端子30w,30u,30vの位置を調整することができる。したがって、各端子30w,30u,30vの位置を調整しやすくなり、各相コイル20W,20U,20Vと中性線30との接続部付近の残留応力を低減することができる。
【0047】
・張出部61が中性線30の幅方向へ張り出しており、拡張部60の幅が他の部分の幅よりも広くなっている。こうした構成によれば、拡張部60の幅が他の部分の幅よりも広いため、拡張部60を冶具等で容易に掴むことができる。
【0048】
・中性線30における拡張部60に隣接する部分には、拡張部60に向かって中性線30の幅を滑らかに増加させるR部62が形成されている。こうした構成によれば、中性線30の使用時に応力が集中する位置C1A,C1Bを、拡張部60との境C2A,C2BからR部62側へずらすことができる。このため、拡張部60との境C2A,C2B付近において中性線30が曲がる位置と、中性線30の使用時に応力が集中する位置C1A,C1Bとをずらすことかでき、中性線30の耐久性を向上させることができる。
【0049】
・中性線30は、ステータコイル20の軸方向の一端20aに対して径方向の外側に配置されている。こうした構成によれば、中性線30がステータコイル20の軸方向の一端20aに対して軸方向に配置される場合と比較して、モータジェネレータの軸方向の長さを短縮することができ、モータジェネレータの搭載性を向上させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0051】
・中性線30がステータコイル20の軸方向の一端20aに対して軸方向に配置された構成を採用することもできる。この場合は、各相コイル20W,20U,20Vの各第2端20Wa,20Ua,20Vaを、一端20aの他の部分よりも軸方向に突出させて中性線30の各端子30w,30u,30vを接続すればよい。
【0052】
・拡張部60に向かって中性線30の幅を滑らかに増加させるR部62に代えて、拡張部60に向かって中性線30の幅を徐々に増加させる傾斜部を形成することもできる。傾斜部は、例えば平面状に形成された傾斜平面である。
【0053】
・突出部37a,37bを省略し、温度センサ40をU字部35の足部35aと足部35bとにより挟み込んで、温度センサ40を隣り合う2つの端子30w,30uの中間に配置した構成を採用することもできる。
【0054】
・U字部35に最も近い端子30uと拡張部60との距離が、U字部35と拡張部60との距離よりも短くてもよい。この場合であっても、U字部35に最も近い端子30uを第2端20Uaに接触させるように中性線30を曲げる際に、U字部35よりも手前の拡張部60との境付近において中性線30を優先的に曲げることができる。したがって、U字部35の近傍で中性線30を曲げる場合であっても、U字部35が変形することを抑制することができる。
【0055】
・端子30wとU字部35との間にさらに拡張部60を形成して(設けて)もよい。こうした構成によれば、端子30wを第2端20Waに接触させるように中性線30を曲げる際に、U字部35よりも手前の拡張部60との境付近において中性線30を優先的に曲げることができる。したがって、U字部35の近傍で中性線30を曲げる場合であっても、U字部35が変形することを抑制することができる。また、端子30uと端子30vとの間にさらに拡張部60を形成してもよい。なお、中性線30において拡張部60を、上記3箇所のうち任意の2箇所又は任意の1箇所に形成してもよい。
【0056】
図5に示すように、張出部161が中性線30の厚み方向へ張り出しており、拡張部160の厚みが他の部分の厚みよりも厚くなっている構成を採用することもできる。中性線30において、拡張部160が形成された位置は、拡張部60が形成された位置と同様である。張出部161は、中性線30の厚さ方向(長手方向及び幅方向以外の方向)へ張り出している。これにより、拡張部160の厚みは、他の部分の厚みよりも厚くなっている。張出部161は、矩形板状に形成されている。拡張部160の幅は、中性線30の他の部分の幅と同じである。こうした構成によれば、拡張部160の厚みが他の部分の厚みよりも厚いため、拡張部160を冶具等で優先的に掴みやすくなる。さらに、拡張部160との境付近において中性線30が曲がる部分の断面積を増加させることができるため、残留応力を低下させることができる。なお、第2部32を曲げたり、変形させたりすることにより、張出部161を形成することもできる。
【0057】
さらに、中性線30における拡張部160に隣接する部分には、拡張部160に向かって中性線30の厚みを滑らかに増加させるR部162が形成されている。すなわち、直線部33aと張出部161との接続部(境界部)にR部162が形成されている。R部162は、曲面状に形成されている。直線部33aと張出部161とは、R部162により滑らかに接続されている。こうした構成によれば、中性線30の使用時に応力が集中する位置を、R部162まで広げることができる、このため、拡張部60との境付近において中性線30が曲がる位置と、中性線30の使用時に応力が集中する位置とをずらすことかでき、中性線30の耐久性を向上させることができる。
【0058】
・張出部が中性線30の幅方向及び厚み方向へ張り出しており、拡張部の幅が他の部分の幅よりも広く且つ拡張部の厚みが他の部分の厚みよりも厚くなっている構成を採用することもできる。
【0059】
・第1部31,第2部32,第3部33を、それぞれ全体が曲線状に曲がった曲線部により構成することもできる。すなわち、第1部31,第2部32,第3部33が、直線部及び曲部を備えていなくてもよい。
【0060】
図6に示すように、中性線30がU字状に折り曲げられたU字部35を備えていない構成を採用することもできる。中性線30は、通電時の中性線30における電流経路(第1部31、所定部分39A、第2部32)から外れる方向へ中性線30から突出し、中性線30の所定部分39Aに対向する突出部37cを備え、中性線30の所定部分39Aと突出部37cとにより温度センサ40が挟み込まれていてもよい。中性線30の所定部分39Aと突出部37cとは平行である。この場合、拡張部60は、図3,4に示した構成であってもよいし、図5に示した構成であってもよい。
【0061】
・感温素子として、サーミスタ素子45に代えて、熱電対を採用することもできる。
【0062】
・ステータコイル20は、4相以上の相コイルを備えていてもよい。その場合、中性線30は相コイルと同数の端子を備え、各相コイルの第2端に中性線30の各端子が接続されていればよい。
【0063】
なお、上記の各変更例は、組み合わせ可能な範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【0064】
以下、上述した実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
断面が矩形状の平角導線により形成され、ステータコイル(20)の中性点を構成する中性線(30)であって、
前記ステータコイルの各相のコイル端(20Ua、20Va、20Wa)に接続される各接続部(30u、30v、30w)と、
前記各接続部の間において、平板状に張り出す張出部(61、161)を含むことで他の部分よりも断面積が大きくなっている拡張部(60、160)と、
を備える、中性線。
[構成2]
U字状に折り曲げられたU字部(35)を備える、構成1に記載の中性線。
[構成3]
前記拡張部は、前記U字部に最も近い前記接続部(30u)と前記U字部との間に設けられている、構成2に記載の中性線。
[構成4]
前記U字部に最も近い前記接続部と前記拡張部との距離は、前記U字部と前記拡張部との距離よりも長い、構成3に記載の中性線。
[構成5]
前記各接続部の間において前記各接続部が並ぶ方向に延びている延長部(31、32、33)を備え、
前記延長部は、複数の直線部(31a、31b、31c、33a、33b、33c)と、前記各接続部が並ぶ方向に前記複数の直線部を沿わせるように曲がった複数の曲部(31d、31e、33d、33e)とを備えている、構成1~4のいずれか1つに記載の中性線。
[構成6]
前記張出部(61)が前記中性線の幅方向へ張り出しており、前記拡張部(60)の幅が他の部分の幅よりも広くなっている、構成1~5のいずれか1つに記載の中性線。
[構成7]
前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の幅を滑らかに増加させるR部(62)が形成されている、構成6に記載の中性線。
[構成8]
前記張出部(161)が前記中性線の厚み方向へ張り出しており、前記拡張部(160)の厚みが他の部分の厚みよりも厚くなっている、構成1~7のいずれか1つに記載の中性線。
[構成9]
前記中性線における前記拡張部に隣接する部分には、前記拡張部に向かって前記中性線の厚みを滑らかに増加させるR部(162)が形成されている、構成8に記載の中性線。
[構成10]
構成1~9のいずれか1つに記載の中性線と、
前記ステータコイルと、を備える回転電機であって、
前記中性線は、前記ステータコイルの軸方向の一端(20a)に対して径方向の外側に配置されている、回転電機。
【符号の説明】
【0065】
20…ステータコイル、30…中性線、20Ua…第2端、20Va…第2端、20Wa…第2端、端子…30u、端子…30v、端子…30w、拡張部…60、張出部…61。
図1
図2
図3
図4
図5
図6