(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084530
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】冷凍肉ブロック、及び冷凍肉ブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/06 20060101AFI20240618BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240618BHJP
A23B 4/08 20060101ALI20240618BHJP
A23B 4/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A23B4/06 501D
A23L13/00 Z
A23B4/08 A
A23B4/06 501C
A23B4/06 501G
A23B4/06 501Z
A23B4/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198850
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 雄治
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC06
4B042AC09
4B042AC10
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK02
4B042AK03
4B042AK20
4B042AP18
4B042AP19
4B042AP23
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】冷凍肉ブロックの体積の増加を抑制しつつ、冷凍ブロック肉の解凍工程において肉片同士を分離させ易くする。
【解決手段】複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍された冷凍肉ブロック(1)は、肉片(2)の表面に形成され、水(3a)が凍結した氷層(3)と、氷層(3)同士の間に形成され、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍された冷凍肉ブロック(1)であって、
前記肉片(2)の表面に形成され、水(3a)が凍結した氷層(3)と、
前記氷層(3)同士の間に形成され、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)とを備える
冷凍肉ブロック。
【請求項2】
前記ブライン液(4a)は、食塩水で構成される
請求項1に記載の冷凍肉ブロック。
【請求項3】
複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍された冷凍肉ブロック(1)を製造する方法であって、
前記肉片(2)の表面に付着した水(3a)を凍結させて氷層(3)を形成する第1工程と、
前記氷層(3)が形成された前記肉片(2)に、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)を塗布する第2工程と、
前記ブライン液(4a)が塗布された複数の前記肉片(2)を重ねて肉ブロック(6)を形成する第3工程と、
前記肉ブロック(6)を冷凍する第4工程とを含む
冷凍肉ブロックの製造方法。
【請求項4】
前記ブライン液(4a)は、食塩水で構成される
請求項3に記載の冷凍肉ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍肉ブロック、及び冷凍肉ブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、工場で製造されて各店舗へ配送された調理済みの食品が販売されている。このような調理済みの食品は、工場において、冷凍された食材を解凍し、解凍した食材を調理に適した大きさに切断した後、調味および調理がされる。
【0003】
工場において食肉を調理する場合、冷凍肉ブロックが使用されることがある。この冷凍肉ブロックは、袋に複数の肉片が互いに重なった状態で無作為に入れられて冷凍された肉の塊である。冷凍肉ブロックの解凍工程では、次工程において肉片を適切な大きさに切断しやすいように、全ての肉片同士を短時間のうちに分離させておく必要がある。
【0004】
ところが、冷凍肉ブロックの各肉片は、大きさ、形状、脂肪の多さ等がそれぞれ異なるため、場所によって解凍の度合いが異なる。特に、脂肪の多い部分は熱伝導率が低く、脂肪の少ない部分に比べて溶けにくい。脂肪の多い部分同士が重なって冷凍されている場合には、脂肪の多い部分同士を分離できる程度まで解凍すると、脂肪の少ない部分は過剰に解凍されることになる。過剰に解凍された部分が肉片に生じると、過解凍の部分から水分が流出するため、調理後の肉片の触感がパサパサになり、品質の低下に繋がる。このように、冷凍肉ブロックの全ての肉片同士を、その品質を維持しながら短時間に分離することが難しかった。
【0005】
これに対し、特許文献1では、くぼみを有するトレイに魚肉片を載せたものを重ねた積層体を冷凍することで、解凍した際に魚肉片を分離させ易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものでは、肉片同士の間にトレイを挟むので、冷凍肉ブロックに余分な隙間が生じてしまい、冷凍肉ブロックの体積が大きくなってしまう。
【0008】
本開示の目的は、冷凍肉ブロックの体積の増加を抑制しつつ、冷凍肉ブロックの解凍工程において肉片同士を分離させ易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍された冷凍肉ブロック(1)を対象とする。冷凍肉ブロック(1)は、前記肉片(2)の表面に形成され、水(3a)が凍結した氷層(3)と、前記氷層(3)同士の間に形成され、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)とを備える。
【0010】
第1の態様では、ブライン層(4)は、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)が凍結して形成されている。そのため、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、ブライン層(4)は氷層(3)よりも早く溶け始める。これにより、肉片(2)同士を分離させ易くできる。加えて、肉片(2)同士の間には、氷層及びブライン層が形成される。そのため、肉片(2)同士の間に余分な隙間が形成されないので、冷凍肉ブロック(1)の体積の増加が抑制される。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記ブライン液(4a)は、食塩水で構成される。
【0012】
第2の態様では、食塩水は簡単に入手できるとともに、人の口に入っても安全である。そのため、ブライン液(4a)を食塩水で構成することで、簡単にブライン層を形成でき且つ安全性を確保できる。
【0013】
第3の態様は、複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍された冷凍肉ブロック(1)を製造する方法を対象とする。冷凍肉ブロック(1)の製造方法は、前記肉片(2)の表面に付着した水(3a)を凍結させて氷層(3)を形成する第1工程と、前記氷層(3)が形成された前記肉片(2)に、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)を塗布する第2工程と、前記ブライン液(4a)が塗布された複数の前記肉片(2)を重ねて肉ブロック(6)を形成する第3工程と、前記肉ブロック(6)を冷凍する第4工程とを含む。
【0014】
第3の態様では、ブライン液(4a)の凍結点は水(3a)の凍結点よりも低い。そのため、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、ブライン層(4)は氷層(3)よりも早く溶け始める。これにより、肉片(2)同士を分離させ易くできる。加えて、肉片(2)同士の間には、氷層(3)及びブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)が形成される。そのため、肉片(2)同士の間に余分な隙間が形成されないので、冷凍肉ブロック(1)の体積の増加が抑制される。
【0015】
第4の態様は、第3の態様では、前記ブライン液(4a)は、食塩水で構成される。
【0016】
第4の態様では、食塩水は簡単に入手できるとともに、人の口に入っても安全である。そのため、ブライン液(4a)を食塩水で構成することで、簡単にブライン液(4a)が凍結したブライン層を形成でき且つ安全性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態の冷凍肉ブロックを示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の冷凍肉ブロックの製造方法を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、ブライン液(4a)の解凍実験の結果を示すフラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0019】
《実施形態》
実施形態について説明する。
【0020】
(1)冷凍肉ブロック
冷凍肉ブロック(1)は、複数の肉片(2)が互いに重なった状態で冷凍されたものである。
図1に示すように、冷凍肉ブロック(1)は、複数の肉片(2)と、氷層(3)と、ブライン層(4)とを有する。冷凍肉ブロック(1)は、矩形状のビニール袋(10)に収容されている。
【0021】
本実施形態の肉片(2)は、食用の鶏肉である。具体的には、肉片(2)は、皮付きの鶏もも肉である。なお、肉片(2)は、鶏のむね肉、手羽元、手羽先等であってもよい。また肉片(2)は、牛、豚、羊、馬、魚等の鶏肉以外の肉であってもよく、食用以外の肉であってもよい。
【0022】
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)は、6枚~8枚の鶏もも肉が矩形状の袋(10)の中に収容されて冷凍されている。なお、冷凍肉ブロック(1)は、種類の異なる肉片(2)が互いに重なって冷凍されていてもよい。
【0023】
氷層(3)は、水(3a)が凍結して形成されたものである。氷層を構成する水(3a)は、水道水である。水(3a)の凍結点は、0℃である。氷層(3)は、各肉片(2)の表面の全体に形成される。言い換えると、氷層(3)は、各肉片(2)の全体を覆うように形成される。氷層(3)の厚さは、肉片(2)の厚さに比べて十分に薄い。
【0024】
ブライン層(4)は、ブライン液(4a)が凍結して形成されたものである。ブライン液(4a)は、凍結点が水(3a)よりも低い液体のことである。ブライン液(4a)は、水(3a)よりも低い温度で凍り始めるとともに、水(3a)よりも低い温度で溶け始める性質を有する。
【0025】
本実施形態のブライン液(4a)は、濃度10%の食塩水である。食塩水の凍結点は、約-6℃である。本実施形態のブライン液(4a)である食塩水は簡単に入手できるため、ブライン層(4)を簡単に形成するこができる。加えて、食塩水は人の口に入っても安全なため、肉片(2)にブライン層(4)が形成されても安全性を確保できる。
【0026】
ブライン液(4a)としての食塩水の濃度は、どのような濃度でもよいが、10%以上且つ15%以下が望ましい。食塩水の濃度として10%以上が望ましいのは、水と比較して十分に融解開始温度が低いからである。これにより、氷層(3)の融解開始前に確実にブライン層(4)の融解が開始される。また、食塩水の濃度として15%以下が望ましいのは、溶けたブライン液(4a)は最終的に冷凍肉ブロック(1)の解凍後に各肉片(2)を水洗などで除去されるため、食塩水を必要以上に高い濃度にする必要がないからである。
【0027】
なお、ブライン液(4a)は、食塩水以外に、エタノール、食品添加物(例えば、プロピレングリコール)等であってもよい。
【0028】
ブライン層(4)は、各肉片(2)に形成された氷層(3)の表面に形成される。ブライン層(4)は、隣り合う肉片(2)の氷層(3)同士の間に形成される。言い換えると、ブライン層(4)は、氷層(3)を介して、肉片(2)の表面に形成される。
【0029】
ブライン層(4)は、各肉片(2)の氷層(3)同士の間に形成されればよく、氷層(3)の表面全体に形成されなくてもよい。ブライン層(4)の厚さは、肉片(2)の厚さに比べて十分に薄い。ブライン層(4)の厚さと氷層(3)の厚さとは、どちらが厚くてもよい。
【0030】
ここで、食用の冷凍肉ブロック(1)の最も良い解凍状態は、肉片(2)の全てを分離できる状態であり、且つ各肉片(2)が完全に解凍されておらず、手で軽く曲げられる程度の固さに凍っている状態(いわゆる、半解凍状態)である。これは、解凍工程の次工程である切断工程において、肉片(2)の水分を流出させることなく、肉片(2)を適切な大きさに切断するためである。
【0031】
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)はブライン層(4)を有するので、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、ブライン層(4)が氷層(3)よりも早く溶け始める。これにより、半解凍状態を維持しつつ、冷凍肉ブロック(1)の全ての肉片(2)を分離することができる。
【0032】
加えて、ブライン層(4)は、液体のブライン液(4a)を凍結させることによって形成されるので、各肉片(2)の形状に沿って自由な形状で形成される。言い換えると、形状や大きさが異なる肉片(2)同士を重ねて冷凍しても、肉片(2)同士の間に余分な隙間が形成されない。
【0033】
このように、冷凍肉ブロック(1)がブライン層(4)を有することにより、冷凍肉ブロック(1)の体積の増加を抑制しつつ、冷凍肉ブロック(1)の解凍工程において肉片(2)同士を分離させ易くできる。
【0034】
また、ブライン層(4)は、氷層(3)を介して肉片(2)の表面に形成されるので、肉片(2)にブライン液(4a)が直接接触しない。そのため、ブライン液(4a)の成分が肉片(2)の品質や味に影響を与えにくくなる。
【0035】
(2)冷凍肉ブロックの製造方法
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)の製造方法について説明する。
【0036】
図2に示すように、本実施形態の製造方法では、氷層形成工程と、液塗布工程と、ブロック形成工程と、冷凍工程とが順に行われる。
【0037】
(2-1)氷層形成工程
氷層形成工程は、本開示の第1工程に対応する。氷層形成工程では、生の肉片(2)の表面に氷層(3)が形成される。具体的には、氷層形成工程では、生の肉片(2)の表面全体に付着した水(3a)を、フリーザ等を用いて比較的短い時間凍結させる。本実施形態では、水(3a)が付着した生の肉片を-35℃で約5分間凍結させる。これにより肉片(2)の表面全体に薄い氷層(3)が形成される。
【0038】
氷層(3)が形成された肉片(2)は、その中心部が生状態であり、完全に冷凍されておらず、手で軽く曲げられる程度の固さである。
【0039】
肉片(2)に薄い氷層が形成されることで、次工程の液塗布工程で塗布されるブライン液(4a)が直接に肉片(2)に触れない。そのため、ブライン液(4a)の成分が肉片(2)の品質や味に影響を与えにくくなる。
【0040】
本実施形態の肉片(2)の表面に付着した水(3a)は、氷層形成工程よりも前に行われる鶏を肉片(2)に解体する工程において、洗浄時に付着した水道水を落とさずにそのまま利用したものである。鶏の解体工程と氷層形成工程との間に、肉片(2)全体に水(3a)を塗布する水塗布工程を別途設けてもよい。
【0041】
(2-2)液塗布工程
液塗布工程は、本開示の第2工程に対応する。液塗布工程では、氷層形成工程において氷層(3)が形成された肉片(2)の表面にブライン液(4a)が塗布される。液塗布工程では、シャワー装置から噴出するブライン液(4a)を肉片(2)に浴びせることにより、肉片(2)全体に薄くブライン液(4a)を塗布する。塗布するブライン液(4a)は、食塩水である。ブライン液(4a)は、凍結点が水(3a)よりも低い。
【0042】
(2-3)ブロック形成工程
ブロック形成工程は、本開示の第3工程に対応する。ブロック形成工程では、液塗布工程においてブライン液(4a)が塗布された複数の肉片(2)を重ねることで肉ブロック(6)が形成される。本実施形態では、ブライン液(4a)が塗布された複数の肉片(2)の一部が互いに重なるようにしてビニール袋(10)の中に入れ、ビニール袋(10)が一杯になったところで、ビニール袋(10)の開口を閉じる。これにより、ビニール袋(10)でまとめられた肉ブロック(6)が形成される。
【0043】
ブロック形成工程における肉片(2)は、手で軽く曲げられる程度の固さであるため、複数の肉片(2)を余分な隙間なくビニール袋(10)に収容することができる。
【0044】
(2-4)冷凍工程
冷凍工程は、本開示の第4工程に対応する。冷凍工程では、ブロック形成工程において形成された肉ブロック(6)が冷凍される。本実施形態の冷凍工程では、肉ブロック(6)は、ビニール袋(10)に収容された状態で-35℃のフリーザで約30分冷凍される。
【0045】
冷凍工程によって、ブライン液(4a)が凍結してブライン層(4)が形成されるとともに、肉ブロック(6)の各肉片(2)の全体が完全に冷凍されて、冷凍肉ブロック(1)が形成される。
【0046】
(3)冷凍肉ブロックの解凍度合いの評価
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)の解凍度合いの評価について説明する。
【0047】
上述のように、食用の冷凍肉ブロック(1)の最も良い解凍状態は、肉片(2)の全てを分離できる状態であり、且つ各肉片(2)が完全に解凍されておらず、手で軽く曲げられる程度の固さに凍っている状態(いわゆる、半解凍状態)である。本実施形態の冷凍鶏肉ブロックの最良の解凍状態は、重なった鶏肉片同士を手で分離できる程度に解凍されている状態である。
【0048】
本実施形態の解凍度合いの評価では、まずビニール袋(10)入りの冷凍肉ブロック(1)を-2℃の解凍庫で所定の時間解凍する。冷凍肉ブロック(1)が少し解凍されると、冷凍肉ブロック(1)から溶け出た解凍液がビニール袋(10)内に溜まる。
【0049】
ここで、解凍液は、ブライン液(4a)、又は肉片(2)の一部が完全に解凍されたときに流出する肉汁(いわゆる、ドリップ)のいずれかである。しかし、本実施形態では、ドリップが流出するよりも先にブライン層(4)が溶けてブライン液(4a)が流出するようにブライン液の濃度が調節されているので、ビニール袋(10)内に少量の解凍液が生じた時点で該解凍液はブライン液(4a)である。そして、このときの肉片(2)は半解凍状態になっている。
【0050】
したがって、作業者は、ビニール袋(10)内に少量の解凍液が生じていることを確認するだけで、肉片(2)の解凍度合いを判断できる。これにより、作業者は複雑な作業を要することなく、目視だけで簡単に肉片(2)の解凍度合いを評価できる。
【0051】
作業者は、解凍液の流出を確認した後、ビニール袋(10)を開封し、冷凍肉ブロック(1)の全ての肉片(2)を分離する。
【0052】
また、作業者は、ビニール袋(10)に溜まった解凍液をビニール袋(10)から取り出し、解凍液に塩分が含まれているか否かを調べてもよい。この場合、調べた解凍液に塩分が含まれていなければ、ブライン層(4)が溶けていないため、更に解凍を行う。一方、調べた解凍液に塩分が含まれていればブライン層(4)が溶けたと判断できる。
【0053】
なお、解凍液を調べる際に、塩分濃度を計測することで、過剰解凍になっていないか等の解凍度合いを詳細に評価してもよい。
【0054】
通常、冷凍鶏肉ブロックはビニール袋に収容されているため、ブライン層を有さない従来の冷凍鶏肉ブロックでは、ビニール袋を開封して鶏肉ブロックを取り出さないと鶏肉片の解凍度合いが判断できなかった。
【0055】
これに対し、本実施形態の冷凍肉ブロック(1)はブライン層(4)を有するので、ビニール袋(10)内に流出した解凍液を確認するだけで冷凍肉ブロック(1)が最良の解凍度合いに達しているかを判断できる。加えて、最良の解凍度合いを判断できるため、冷凍肉ブロックを過剰に解凍することを抑制できる。
【0056】
(4)ブライン液(4a)の解凍実験
本実施形態のブライン液(4a)として用いた食塩水の解凍実験について説明する。
【0057】
解凍実験では、水、10%濃度食塩水、16%濃度食塩水、及び20%濃度食塩水の4種類の液体をそれぞれ凍結させ、固体状態からの温度変化を測定した。
図3は、本実験の測定結果を示す。
【0058】
図3に示すように、水の場合には、0℃に達すると氷が溶け始め徐々に水に変化した。その際、氷の表面が溶けて、水の中に氷の塊が浮かぶような状態になった。全ての氷が水になると、更に温度が上昇した。
【0059】
これに対し、10%濃度食塩水、16%濃度食塩水、及び20%濃度食塩水では、約-6℃に達すると固体から液体に徐々に変化した。また、これらの凍結した食塩水が解凍される場合には、温度が一定になることはなく、緩やかに温度が上昇すると同時に、固体からシャーベット状態を経て液体に変化した。
【0060】
この解凍実験から、氷と凍結した食塩水とでは溶ける過程での状態が異なることが分かった。凍結した食塩水が溶ける場合には、固体と液体とが混ざり合ったシャーベット状になることから、本実施形態のブライン液(4a)として食塩水を用いた場合には、完全に溶けきる前でも手で力を加えれば肉片(2)同士を分離させることができる。
【0061】
(5)特徴
(5-1)特徴1
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)は、肉片(2)の氷層(3)同士の間に形成され、凍結点が水(3a)よりも低いブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)を備える。
【0062】
ブライン液(4a)は凍結点が水(3a)よりも低いので、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、ブライン層(4)は氷層(3)よりも早く溶け始める。そのため、肉片(2)同士を分離させ易くできる。
【0063】
ブライン層(4)を有さない従来の冷凍肉ブロックを解凍する場合、特に、脂肪の多い部分(例えば、鶏肉の皮部分)は熱伝導率が低いため、脂肪の多い部分同士が重なっていると両者を分離し難かった。また、肉片(2)の脂肪が多い部分同士を分離できるまで解凍した場合、該肉片(2)のうち脂肪の少ない部分は過剰に解凍された状態となり、水分が抜けて、品質の低下に繋がっていた。
【0064】
これに対し、本実施形態の冷凍肉ブロック(1)はブライン層(4)を有することにより、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、脂肪の多い部分又は脂肪の少ない部分にかかわらず、肉片(2)同士を分離させ易くできる。
【0065】
加えて、肉片(2)同士の間には液体を凍結されることで形成される氷層(3)とブライン層(4)とを有するので、肉片(2)同士の間に余分な隙間が形成されず、冷凍肉ブロック(1)の体積の増加が抑制される。このように冷凍肉ブロック(1)の体積の増加を抑制することにより、物流コストの増加も抑制できる。更に、肉片(2)同士の間にトレイを挟む従来の冷凍肉ブロックに比べて、トレイ上に肉片(2)を並べる必要がないので、本実施形態の冷凍肉ブロック(1)は冷凍作業の手間を低減できる。
【0066】
更に、本実施形態の冷凍肉ブロック(1)を解凍する場合、全ての肉片(2)を完全に解凍することなく、半解凍状態で解凍工程を終了できる。これにより、解凍時間を短縮できる。加えて、各肉片(2)を半解凍の状態で解凍工程を終了するので、解凍に要するエネルギーを低減できる。
【0067】
(5-2)特徴2
本実施形態のブライン液(4a)は、食塩水で構成される。食塩水は簡単に入手可能であり、人の口に入っても安全である。そのため、ブライン液(4a)を食塩水で構成することにより、簡単にブライン層(4)を形成できるとともに、安全性も確保できる。
【0068】
更に、ブライン液(4a)が食塩水で構成されるので、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に流出する解凍液の塩分の有無を調べることで、解凍度合いを判断できる。これにより、冷凍肉ブロック(1)を適切なタイミングで解凍を終了でき、肉片(2)の過剰な解凍を抑制できる。
【0069】
(5-3)特徴3
本実施形態の冷凍肉ブロック(1)の製造方法では、生の肉片(2)の表面に付着した水(3a)を凍結させて氷層(3)を形成する氷層形成工程と、氷層(3)が形成された肉片(2)にブライン液(4a)を塗布する液塗布工程と、ブライン液(4a)が塗布された複数の肉片(2)を互いに重ねて肉ブロック(6)を形成するブロック形成工程と、肉ブロック(6)を冷凍する冷凍工程とを含む。
【0070】
ブライン液(4a)の凍結点は水(3a)の凍結点よりも低い。そのため、冷凍肉ブロック(1)を解凍した場合に、ブライン層(4)は氷層(3)よりも早く溶け始める。これにより、肉片(2)同士を分離させ易くできる。
【0071】
加えて、肉片(2)同士の間には、氷層(3)及びブライン液(4a)が凍結したブライン層(4)が形成される。そのため、肉片(2)同士の間に余分な隙間が形成されないので、冷凍肉ブロック(1)の体積の増加が抑制される。このように冷凍肉ブロック(1)の体積の増加を抑制することにより、物流コストの増加も抑制できる。更に、肉片(2)同士の間にトレイを挟む従来の冷凍肉ブロックに比べて、トレイ上に肉片(2)を並べる必要がないので、本実施形態の冷凍肉ブロック(1)は冷凍作業の手間を低減できる。
【0072】
更に、本実施形態の製造方法で製造された冷凍肉ブロック(1)を解凍する場合、全ての肉片(2)を完全に解凍することなく、半解凍状態で解凍工程を終了できる。これにより、解凍時間を短縮できる。加えて、各肉片(2)を半解凍の状態で解凍工程を終了するので、解凍に要するエネルギーを低減できる。
【0073】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0074】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本開示は、冷凍肉ブロック、及び冷凍肉ブロックの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 冷凍肉ブロック
2 肉片
3 氷層
4 ブライン層
6 肉ブロック
3a 水
4a ブライン液