(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084531
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】足場の設置及び解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20240618BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
E04G5/00 301E
E04G21/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198851
(22)【出願日】2022-12-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】511059586
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】牧野 裕伸
(72)【発明者】
【氏名】押山 龍一
(72)【発明者】
【氏名】界 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】高木 和馬
(72)【発明者】
【氏名】井口 謙太
(57)【要約】
【課題】改良された足場の設置及び解体方法を提供する。
【解決手段】建造物の屋上からネットを吊るすシート部材張設工程S101と、昇降台を建造物の屋上から吊るす昇降台配設工程S102と、足場を配設する足場配設工程S103と、足場にネットを固定するシート部材固定工程S104と、を順に実行するものであり、さらに、ネットと足場との固定を解除するシート部材分離工程S105と、足場を除去する足場解体工程S106と、昇降台を除去する昇降台除去工程S107と、ネットを除去するシート部材除去工程S108と、を順に実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の側方に予め定められた足場配設空間に足場を設置し、該建造物における足場作業の後に当該足場を解体する足場の設置及び解体方法であって、
前記建造物の屋上から養生用のシート部材を吊るし、該シート部材と該建造物の側部との間に前記足場配設空間が位置するように該シート部材を前記建造物の側方に張設するシート部材張設工程と、
前記シート部材張設工程の後に、前記建造物の屋上から足場部材運搬用昇降台を吊るし、該足場部材運搬用昇降台が前記足場配設空間に臨む位置かつ前記シート部材よりも建造物寄りの位置で昇降するように配設する昇降台配設工程と、
前記昇降台配設工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を用いて前記足場配設空間に足場を配設する足場配設工程と、
前記足場配設工程の後に、張設された前記シート部材の少なくとも一部を、前記建造物の側部と対向した状態を維持したまま前記足場に固定するシート部材固定工程と、
を順に実行するものであり、さらに、
前記シート部材と前記足場とが固定されている固定状態を解除して、当該シート部材を、前記建造物の屋上から吊るして前記建造物の側部と対向した状態を維持したまま、当該足場から分離した状態とするシート部材分離工程と、
前記シート部材分離工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を用いて前記足場を解体する足場解体工程と、
前記足場解体工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を前記建造物から除去する昇降台除去工程と、
前記昇降台除去工程の後に、前記シート部材を前記建造物から除去するシート部材除去工程と、
を順に実行するものである
ことを特徴とする足場の設置及び解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の建造物の側方に足場を設置し、前記建造物を塗装等するいわゆる足場作業後に当該足場を解体する足場の設置及び解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、既設の建造物において保全塗装等のために作業用の足場を設置する際には、例えば特許文献1に開示されているように、まず足場を配設し、その後に足場を囲うようにして養生ネット(シート部材)を配設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場を配設する際にもゴミ等が飛散する場合があり、また足場の配設時に工具等が意図せず落下する危険もある。
【0005】
本発明は、改良された足場の設置及び解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建造物の側方に予め定められた足場配設空間に足場を設置し、該建造物における足場作業の後に当該足場を解体する足場の設置及び解体方法であって、前記建造物の屋上からシート部材を吊るし、該シート部材と該建造物の側部との間に前記足場配設空間が位置するように該シート部材と該建造物の側部とを互いに対向させて該シート部材を張設するシート部材張設工程と、前記シート部材張設工程の後に、前記建造物の屋上から足場部材運搬用昇降台を吊るし、該足場部材運搬用昇降台が前記足場配設空間に臨む位置かつ前記シート部材よりも建造物寄りの位置で昇降するように配設する昇降台配設工程と、前記昇降台配設工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を用いて前記足場配設空間に足場を配設する足場配設工程と、前記足場配設工程の後に、張設された前記シート部材の少なくとも一部を、前記建造物の側部と対向した状態を維持したまま前記足場に固定するシート部材固定工程と、を順に実行するものであり、さらに、前記シート部材と前記足場とが固定されている固定状態を解除して、当該シート部材を、前記建造物の屋上から吊るして前記建造物の側部と対向した状態を維持したまま、当該足場から分離した状態とするシート部材分離工程と、前記シート部材分離工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を用いて前記足場を解体する足場解体工程と、前記足場解体工程の後に、前記足場部材運搬用昇降台を前記建造物から除去する昇降台除去工程と、前記昇降台除去工程の後に、前記シート部材を前記建造物から除去するシート部材除去工程と、を順に実行するものであることを特徴とする足場の設置及び解体方法である。
【0007】
かかる構成にあっては、まず前記シート部材(養生ネットや養生シート)を張設した後に前記足場を配設することとしたため、足場の配設の際にシート部材の外部に作業道具等の物品が飛散することを好適に防止することができる。また、シート部材を配設した後は、前記足場部材運搬用昇降台によって足場部材の運搬を行うことで、従来から知られた足場部材運搬用ボックスを下から順次組み上げていくような作業に比して作業効率の向上を図ることができる。また、当然ながら、解体時においても前記シート部材(養生ネットや養生シート)を張設した状態で解体作業を行うことができるため安全性が高い。また、足場部材運搬用ボックスを用いて解体作業を行うことができるため、作業効率が飛躍的に向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の足場の設置及び解体方法は、より安全に作業を行うことができ、しかも作業効率が良いという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】足場の設置及び解体の手順を示したフローである。
【
図2】シート部材配設工程におけるビルの側部を示す説明図であり、(a)は平面を示し、(b)は正面を示している。
【
図3】昇降台配設工程におけるビルの側部を示す説明図であり、(a)は平面を示し、(b)は正面を示している。
【
図4】足場配設工程におけるビルの側部を示す説明図であり、(a)は平面を示し、(b)は正面を示している。
【
図5】足場配設工程が終了したビルの側部を示す説明図であり、(a)は平面を示し、(b)は正面を示している。
【
図6】シート部材固定工程が終了したビルを平面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。なお本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜、設計変更が可能である。例えば、実施例では説明を簡略化するために単一のネット10を用いた構成としたが、複数枚の養生用のネット10を左右方向等に連結させて本発明にかかる実施例を実現するようにしても勿論よい。
【0011】
既設の建造物であるビル5に足場1を配設し、所定の足場作業後に当該足場1を解体する方法を
図1のフローに従って説明する。まずビル5の屋上からシート部材であるネット10を吊るす(シート部材張設工程)。ここで、ビル5の側方には予め定められた足場配設空間Sが形成されており、具体的に足場配設空間Sはネット10とビル5の側部との間に位置し、またネット10とビル5の側部とは互いに対向している。
【0012】
次に、足場配設空間Sに隣接する位置で上下動自在な足場部材運搬用昇降台である昇降台20をビル5の屋上から吊るす(昇降台配設工程S102)。なお、昇降台20は、地上面と足場が配設される位置との間で昇降可能とされる。
【0013】
そして、昇降台20を用いながら足場配設空間Sに足場1を配設していく(足場配設工程S103)。
【0014】
足場30の配設が終わったら、当該足場1にネット10を固定する(シート部材固定工程S104)。この際、ネット10はビル5の側部と対向した状態で維持される。
【0015】
ネット固定工程S104が終了した後に、ネット10と足場1とが固定されている固定状態のなかで、足場1を用いた作業を行う。
【0016】
足場1を用いた作業が終了した後は、前記ネット10と足場1との固定を解除して互いを分離する(シート部材分離工程S105)。前記固定状態を解除する際、ネット10はビル5から吊るされ、かつビル5の側部と対向した状態で維持される。
【0017】
次に、足場1を解体して当該足場1を足場配設空間Sから除去する(足場解体工程S106)。
【0018】
そして、昇降台20をビル5から除去する(昇降台除去工程S107)。
【0019】
最後に、ネット10をビル5から除去する(シート部材除去工程S108)。これにより全工程が終了する。
【0020】
足場1の設置及び解体方法を
図2~
図5に従って以下に詳しく説明する。
【0021】
図2に示すように、シート部材張設工程S101にあっては、ビル5の屋上からネット10を吊るしてビル5の側部にネット10を配設する。この際、ビル5の側方に予め定められた足場配設空間S側へ向かって、ビル5の屋上からシート部材吊り部材6を突き出し固定する。そして、シート部材吊り部材6からシート部材であるネット10を吊るす。ここで、足場配設空間Sはネット10とビル5の側部との間に位置し、またネット10とビル5の側部とは互いに対向している。ネット10をビル5から吊るす構造は、適宜選択されうる。また、ネット10を適切に張設すべく、ネット10の下端部が、所定の連結部材(ワイヤーなど)を介して地面に連結されることが望ましい。
【0022】
ネット10が配設された後は、昇降台配設工程S102に移行する。昇降台配設工程S102にあっては、
図3に示すように、足場配設空間Sに臨む位置で上下動自在な昇降台20をビル5の屋上から吊るす。詳述すると、ビル5の屋上から足場配設空間S側へ突き出すように、足場部材運搬用昇降台支持部材7を配設し、足場部材運搬用昇降台支持部材7に昇降台20を上下動させるいわゆるウインチ21を配置し、ウインチ21と昇降台20とを連繋する。
【0023】
なお、昇降台20は、足場配設空間Sに臨む位置において地上面からビル5の最上階まで上下動(昇降)可能とされる。また、昇降台20は、ビル5の屋上から地上まで展張された図示しないワイヤーロープによってガイドされており、過度に揺れないよう対策がなされている。さらに、昇降台20は、足場1を構成する足場部材を頻繁に出し入れするために、上部が広く開口していることが望ましい。
【0024】
昇降台が配設された後は、足場配設工程S103に移行する。
図4に示すように、足場配設工程S103にあっては、昇降台20を用いて足場部材を運搬し足場1を順に組み立てていく。
【0025】
図5に示すように、足場1の配設が終了した後は、シート部材固定工程S104に移行して足場1にネット10を固定する。この際、ネット10はビル5の側部と対向した状態を維持される。これにより、
図6に示すような、ネット10が張った状態で固定された足場1が完成する。
【0026】
足場1を用いた作業が終了した後は、足場1等の解体作業を行っていく。足場1の解体作業は、足場1の配設とは逆の手順で行う。
【0027】
詳述すると、まずネット10と足場1との固定を解除して、ネット10を足場1から分離するシート部材分離工程S105を実行する。この際、ネット10は、ビル5から吊るされてビル5の側部と対向した状態となる。そして、これ以降の作業は、ネット10の中で行われることとなる。
【0028】
次に、足場1を解体して足場1を除去する足場解体工程S106を実行する。足場解体工程S106においては昇降台20を用いて足場部材を運搬する。
【0029】
足場1の解体が完了したら、昇降台20、ウインチ21、及び足場部材運搬用昇降台支持部材7をビル5から除去する昇降台除去工程S107を実行する。
【0030】
昇降台除去工程S107が終了した後は、ネット10及びシート部材吊り部材6をビル5から除去して(シート部材除去工程S108)、全作業が終了する。
【0031】
上述のように、作業の最初から最後までネット10が作業空間を覆うように配設された養生状態であるため、非常に安全性の高い作業を行うことができる。また、従来のように、足場運搬ボックスを下から組み上げる、あるいは上から地上に向かって組み替えるような作業が不要となり、作業効率が飛躍的に向上する。
【符号の説明】
【0032】
1 足場
5 ビル(建造物)
6 シート部材吊り部材
7 足場部材運搬用昇降台支持部材
10 ネット(シート部材)
20 昇降台(足場部材運搬用昇降台)
21 ウインチ
S 足場配設空間