(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084541
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ジョー組立体及びこれを用いた外科用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198865
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】早川 悠暉
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG06
4C160GG24
4C160MM32
4C160NN01
4C160NN09
(57)【要約】
【課題】ジョーの閉じ力を向上することが可能なジョー組立体を提供する。
【解決手段】相互間が開閉される一対のジョー15と、一対のジョー15を回転自在に支持して開閉を可能とする支持部13と、一対のジョー15に相対回転自在に結合されると共に支持部13に対して相対的に往復移動可能な可動部材17とを備え、支持部13は、可動部材17の往復移動方向に対する交差方向の両側でそれぞれ開口する凹部25を備え、一対のジョー15は、それぞれ凹部25に交差方向の外側から軸周り回転自在に係合する回転軸部31を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互間が開閉される一対のジョーと、
前記一対のジョーの少なくとも一方を回転自在に支持して前記開閉を可能とする支持部と、
前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方に相対回転自在に結合されると共に前記支持部に対して相対的に往復移動可能な可動部材と、を備え、
前記支持部は、前記可動部材の往復移動方向に対する交差方向の縁部で開口する凹部を備え、
前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方は、前記凹部に前記交差方向の外側から軸周り回転自在に係合する回転軸部を備える、
ジョー組立体。
【請求項2】
請求項1のジョー組立体であって、
前記支持部と前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方との間に設けられ前記可動部材の往復移動に応じて前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方を回転させて前記開閉を行わせるカム部を備え、
前記カム部は、前記凹部に対する前記回転軸部の係合状態を保持する、
ジョー組立体。
【請求項3】
請求項1又は2のジョー組立体であって、
前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方は、回転中心と前記可動部材への結合部分とが、少なくとも前記一対のジョーの閉じ状態において前記可動部材の往復移動方向に対する交差方向で離れて位置する、
ジョー組立体。
【請求項4】
請求項3のジョー組立体であって、
前記回転中心と前記結合部分とが、少なくとも前記一対のジョーの閉じ状態において前記一対のジョーの開閉中心を挟んで前記交差方向の反対側に位置する、
ジョー組立体。
【請求項5】
請求項1又は2のジョー組立体であって、
前記可動部材は、開口部及び突起の一方を備え、
前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方は、前記開口部及び突起の一方に係合する前記開口部及び突起の他方を備えた、
ジョー組立体。
【請求項6】
請求項5のジョー組立体であって、
前記開口部は、前記交差方向に前記突起の相対移動を可能にする長孔であり、
前記回転軸部の前記凹部への係合の保持前において、前記回転軸部の前記凹部に対する係脱を許容する、
ジョー組立体。
【請求項7】
請求項1のジョー組立体を用いた外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやマニピュレーター等に供されるジョー組立体及びこれを用いた外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のジョー組立体としては、例えば特許文献1のように、相互間が開閉される一対のジョーをピンによってスリーブに回転自在に支持したものがある。
【0003】
このジョー組立体では、一対のジョーにそれぞれ往復移動可能な作動ワイヤーを結合し、作動ワイヤーを往復移動によって一対のジョーをピン周りに回転させて開閉を可能とする。
【0004】
また、力点となるジョーと作動ワイヤーとの結合部分と支点となる回転中心であるピンとを離して位置させることができ、作動ワイヤーの操作に応じてジョー間に作用する力を大きくすることが可能となる。
【0005】
しかし、かかるジョー組立体では、ピンを配置可能な位置に限界があり、ジョー間に作用する力の向上にも限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、ジョー間に作用する力の向上に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、相互間が開閉される一対のジョーと、前記一対のジョーの少なくとも一方を回転自在に支持して前記開閉を可能とする支持部と、前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方に相対回転自在に結合されると共に前記支持部に対して相対的に往復移動可能な可動部材と、を備え、前記支持部は、前記可動部材の往復移動方向に対する交差方向の縁部で開口する凹部を備え、前記支持部に回転自在に支持された前記一対のジョーの少なくとも一方は、前記凹部に前記交差方向の外側から軸周り回転自在に係合する回転軸部を備える、ジョー組立体を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記ジョー組立体を用いた外科用器具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジョー間に作用する力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係るジョー組立体を用いた外科用器具としての鉗子を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の鉗子のジョー組立体の閉じ状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のジョー組立体の開状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2のジョー組立体のジョーの回転中心と突起との関係を示す正面図である。
【
図6】
図6(A)~(C)は、
図2のジョー組立体の開閉を示す斜視図である。
【
図7】
図7(A)~(C)は、
図2のジョー組立体の開閉を示す正面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例2に係るジョー組立体の一部を示す斜視図である。
【
図9】
図9(A)及び(B)は、それぞれ
図8のジョー組立体のジョーを表面側及び裏面側から示す斜視図である。
【
図10】
図10(A)~(C)は、本発明の実施例3に係るジョー組立体の閉じ状態を示し、
図10(A)は斜視図、
図10(B)は正面図、及び
図10(C)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ジョー間に作用する力を向上するという目的を、以下の構成により実現した。
【0013】
図のように、ジョー組立体7は、一対のジョー15と、支持部13と、可動部材17とを備える。
【0014】
一対のジョー15は、相互間が開閉されるものである。支持部13は、一対のジョー15の少なくとも一方を回転自在に支持して、一対のジョー15の開閉を可能とする。可動部材17は、支持部13に回転自在に支持された一対のジョー15の少なくとも一方に相対回転自在に結合されると共に支持部13に対して相対的に往復移動可能な部材である。
【0015】
一対のジョー15は、片開きの場合、一方のみを支持部13に回転自在に結合し、両開きの場合、双方を支持部13に回転自在に結合すればよい。
【0016】
支持部13は、可動部材17の往復移動方向に対する交差方向の縁部で開口する凹部25を備え、支持部13に回転自在に支持された一対のジョー15の少なくとも一方は、それぞれ凹部25にこの凹部25の交差方向の外側から軸周り回転自在に係合する回転軸部31を備える。
【0017】
ジョー組立体7は、カム式やリンク式等として構成することができる。カム式の場合は、カム部19を備える。カム部19は、支持部13と支持部13に回転自在に支持された一対のジョー15の少なくとも一方との間に設けられ、可動部材17の往復移動に応じて支持部13に回転自在に支持された一対のジョー15の少なくとも一方を回転させて一対のジョー15の開閉を行わせる。このカム部19により、回転軸部31の凹部25への係合を保持してもよい。
【0018】
支持部13に回転自在に支持されたジョー15の少なくとも一方は、回転中心RCと可動部材17への結合部分33とが、少なくとも一対のジョー15の閉じ状態において可動部材17の往復移動方向に対する交差方向で離れて位置してもよい。この場合において、各ジョー15の回転中心RCと結合部分33とは、一対のジョー15の開閉中心OCを挟んで交差方向の反対側に位置してもよい。
【0019】
可動部材17は、一対の開口部17a及び結合部分である突起33の一方を備え、一対のジョー15は、それぞれ一対の開口部17a及び突起33の一方に係合する開口部17a及び突起33の他方を備えてもよい。
【0020】
開口部17aは、交差方向に突起33の相対移動を可能にする長孔であり、回転軸部31の凹部25への係合の保持前において、回転軸部31の凹部25に対する係脱を許容してもよい。
【0021】
ジョー組立体7は、各種のロボットやマニピュレーターに適用可能であるが、例えば外科用器具1に用いることが可能である。
【実施例0022】
[鉗子]
図1は、本発明の実施例1に係るジョー組立体を用いた外科用器具としての鉗子を示す正面図である。
【0023】
本実施例の鉗子1は、手術支援ロボットや手術支援マニピュレーター等に用いられる外科用器具であり、シャフト3と、屈曲部5と、ジョー組立体7とを備える。
【0024】
なお、本実施例では、外科用器具の一例として鉗子1を示すが、後述するジョー15の開閉を行うものであれば、例えば把持、剥離、切断等の各種の機能を持つ外科用器具とすることが可能である。また、ジョー組立体7は、外科用器具以外にも、把持、剥離、切断等の各種の機能を持つロボットやマニピュレーター等の機器に適用することが可能である。
【0025】
シャフト3は、円筒状に形成されており、例えば軸周り回転可能に手術支援ロボットや手術支援マニピュレーター等に結合される。シャフト3の先端には、屈曲部5が設けられている。なお、シャフト3の形状は特に限定されるものではない。
【0026】
屈曲部5は、関節機能を有し、鉗子1の屈曲伸展を可能とする部分である。本実施例の屈曲部5は、複数のウェーブワッシャー5aを軸方向に積層すると共に積層状態を溶接等によって保持したものである。なお、屈曲部5は、屈曲や伸展が可能であれば特に限定されるものではなく、コイルばねやベローズ等とすることも可能である。軸方向は、鉗子1の軸心に沿った方向をいう。
【0027】
かかる屈曲部5は、ワイヤー9が周方向所定間隔で軸方向に挿通しており、ワイヤー9の操作によって屈曲伸展がなされる。周方向は、鉗子1の外周に沿った方向をいう。屈曲部5内には、軸方向の圧縮を抑制する芯材(図示せず)や後述するジョー15を開閉させる操作部材11(
図4参照)が設けられている。
【0028】
操作部材11は、プッシュプルケーブルであり、後述する可動部材17を軸方向に往復移動させる。なお、操作部材11は、可動部材17を往復移動させるものであれば、エアーチューブ等とすることも可能である。
【0029】
屈曲部5の先端には、ジョー組立体7が支持されている。
【0030】
図2は、
図1の鉗子のジョー組立体の閉じ状態を示す斜視図であり、
図3は、同開状態を示す斜視図である。
図4は、
図2のジョー組立体の分解斜視図である。
図5は、
図2のジョー組立体のジョーの回転中心と突起との関係を示す正面図である。
図6(A)~(C)は、
図2のジョー組立体の開閉を示す斜視図、
図7(A)~(C)は、同正面図である。なお、
図6(A)~
図7(C)では、支持部13を省略している。
【0031】
ジョー組立体7は、支持部13と、一対のジョー15と、可動部材17と、カム部19とを備える。
【0032】
支持部13は、屈曲部5に結合されており、
図2~
図4のように、一対のジョー15を回転自在に支持して開閉可能とする。本実施例の一対のジョー15は、両開きとして双方が支持部13に支持されたものとなっている。支持部13は、全体として円柱状に形成されているが、特に限定されるものではない。この支持部13には、軸方向の先端側にスリット21が設けられ、スリット21を挟んだ径方向(以下、第1径方向)の一側及び他側にジョー15を支持する支持壁部23が区画されている。
【0033】
この支持部13は、スリット21に沿った径方向(以下、第2径方向)の両側でそれぞれ開口する凹部25を有する。なお、第2径方向は、平面視において第1径方向に直交する。径方向は、鉗子1の径に沿った方向をいい、可動部材17の往復移動方向に対する交差方向となる。
【0034】
凹部25は、支持壁部23にそれぞれ設けられ、第1径方向から見た正面視において、逆向きの扇形状、特に半円状に形成されている。これら凹部25は、扇形状の弦(半円状の直径)が支持壁部23の第2径方向の側縁に位置して外側に向けて開口する。
【0035】
凹部25の内面は、支持部13の外周形状に応じて、支持壁部23の側縁から第2径方向の内側へ向けて漸次第1径方向に大きくなっている。なお、凹部25の形状は任意であり、後述する回転軸部31を軸周り回転自在に支持できればよい。
【0036】
一対のジョー15は、
図2~
図7(C)のように、相互間が開閉されるものであり、本実施例において、閉じ動作によって把持を行うグリッパとして構成されている。これらジョー15は、同一形状に形成され、第1径方向での表裏が逆になって配置されている。ただし、ジョー15は、同一形状である必要はなく、異なる形状を有することもある。各ジョー15は、本体部27と、アーム29と、回転軸部31とを備えている。
【0037】
本体部27は、棒状に形成され、開閉動作を行う部分である。本体部27は、第2径方向において、相互間が閉じ状態で噛み合う波形状の噛み合い部27aを有する。本体部27の軸方向の基端には、アーム29を介して回転軸部31が設けられている。
【0038】
アーム29は、板状に形成されており、本体部27よりも第1径方向での厚みが小さい。このアーム29は、本体部27の基端から軸方向に突出すると共に交差方向である第2径方向において噛み合い部27aから突出する。このアーム29は、支持部13のスリット21内に入れ込まれている。
【0039】
アーム29の第2径方向の一側には、回転軸部31が設けられ、同他側には、突起33が設けられている。また、回転軸部31と突起33との間には、後述するカム部19のカム溝37が設けられている。
【0040】
回転軸部31は、第1径方向から見た正面視において、扇形状、特に半円状に形成されている。この半円状の回転軸部31は、半円状の支持部13の凹部25に第2径方向において外側から係合する。これにより、回転軸部31は、凹部25に滑りによって軸周り回転自在に支持される。なお、回転軸部31の構成は、凹部25に滑りによって軸周り回転自在に支持されていれば、棒状等の他の形状であってもよい。かかる支持部13の凹部25に対するジョー15の回転軸部31の係合状態は、後述するようにカム部19によって保持されている。
【0041】
この回転軸部31は、凹部25と同様に、支持壁部23の両側縁から第2径方向の内側へ向けて漸次第1径方向の寸法が大きくなっている。本実施例において、回転軸部31と凹部25の半円状は、曲率半径及び第2径方向の深さが一致している。このため、支持部13の第2径方向の側縁に回転中心RCが位置する。
【0042】
なお、凹部25を回転軸部31との関係で第2径方向において浅くすることで、第2径方向で支持部13の外側に回転中心RCを位置させることができる。本実施例では、凹部25の中心角を回転軸部31の中心角よりも小さくすることで、凹部25を浅くできる。
【0043】
逆に、凹部25を回転軸部31との関係で第2径方向において深くすることで、第2径方向で支持部13の外側に回転中心RCを位置させることができる。本実施例では、凹部25の中心角を回転軸部31の中心角よりも大きくすることで、凹部25を深くできる。
【0044】
従って、凹部25及び回転軸部31の設定により、回転中心RCの位置を容易に設定することができる。
【0045】
突起33は、後述する可動部材17に対する結合部分となるものである。本実施例の突起33は、第1径方向においてアーム29の回転軸部31に対する反対側の面から突出して設けられている。突起33の形状は、円柱状であるが、特に限定されるものではない。
【0046】
この突起33は、一対のジョー15の閉じ状態において、回転中心RCに対して第2径方向で離れて位置する。本実施例では、ジョー15の本体部27の開閉中心OC(
図7(B))を挟んで回転中心RCの反対側に位置する。開閉中心OCは、ジョー15の本体部27の開閉角度を設定する際の中心となる位置であり、本実施例において支持部13の第2径方向の中央に位置する。
【0047】
この突起33を介して可動部材17によってジョー15が開閉操作される。
【0048】
可動部材17は、一対のジョー15の双方に相対回転自在に結合されると共に支持部13に対して相対的に往復移動可能な部材である。可動部材17は、板状に形成されており、第1径方向においてジョー15のアーム29間に配置されている。
【0049】
可動部材17には、第1径方向に貫通した一対の開口部17aが設けられている。この開口部17aは、第2径方向に並んで配置され、それぞれジョー15の突起33が第1径方向で挿入されている。なお、突起33を可動部材17に設け、開口部17aをジョー15に設けてもよい。従って、突起33及び開口部17aの一方を可動部材17に設け、同他方をジョー15に設ければよい。
【0050】
本実施例の開口部17aは、第2径方向に長い長孔となっている。これにより、開口部17aは、第2径方向に突起33の相対移動を可能にし、回転軸部31の凹部25への係合の保持前において、回転軸部31の凹部25に対する係脱を許容する。従って、回転軸部31を凹部25に係合させる際には、予め開口部17a内で突起33を挿入しておき、開口部17a内で突起33を第2径方向に移動させることで、作業を容易に行わせることが可能となる。
【0051】
かかる可動部材17には、操作部材11に接続される筒状の接続部17bが一体に設けられている。この接続部17bにより、可動部材17は、操作部材11に接続されて、操作部材11によって往復移動が可能となる。
【0052】
この往復移動によって、可動部材17は、結合部分である突起33を介してジョー15に回転中心RC周りの力を作用させる。このとき、回転中心RCは、ジョー15の回転軸部31が支持部13の凹部25に第2径方向で外側から係合する形状であるため、突起33と回転中心RCとの距離Lを長くしてジョー15の回転力を向上することができる。結果として、操作に応じて一対のジョー15間に作用する力を向上することが可能となる。
【0053】
本実施例では、支持部13の第2径方向の側縁に回転中心RCを位置させ、第2径方向の鉗子1やジョー組立体7の大型化を抑制しつつ、回転中心RCをできるだけ外側に位置させることが可能となる。
【0054】
カム部19は、支持部13と一対のジョー15との間にそれぞれ設けられ、可動部材17の往復移動に応じて一対のジョー15を回転させて開閉させる。
【0055】
カム部19は、種々の形態を採用可能であるが、本実施例において支持部13に取り付けられるカムピン35と、各ジョー15に設けられたカム溝37からなっている。
【0056】
カムピン35は、支持部13の貫通孔39に取り付けられ、先端が支持部13のスリット21内に第1径方向で突出する。スリット21内では、カムピン35の先端がカム溝37内に係合する。カムピン35は、円柱形状であるが、特に限定されるものではない。
【0057】
カム溝37は、各ジョー15のアーム29に設けられている。カム溝37は、回転中心RC周りの弧状に形成されている。なお、カム溝37は、凹部からなるが、貫通孔でもよい。このカム溝37に沿ってカムピン35が相対的に移動することにより、ジョー15に開閉動作を行わせる。
【0058】
また、カム部19のカム溝37及びカムピン35がジョー15の動きを規制するため、回転軸部31の凹部25への係合を保持することが可能となる。従って、回転軸部31の凹部25への係合を別途保持することが不要となり、構造の簡素化を図ることができる。
【0059】
なお、本実施例のように、突起33と回転中心RCとが第2径方向で離れている場合、カム部19を省略することも可能である。この場合、ジョー15の回転軸部31と支持部13の凹部25との係合状態は、可動部材17によって行ってもよい。
【0060】
[動作]
本実施例の鉗子1は、
図6(A)~
図7(C)のように、操作部材11を介して可動部材17を軸方向に往復移動させることで、ジョー15を開閉させることができる。
【0061】
具体的には、
図6(A)及び
図7(A)のように、一対のジョー15の閉じ状態において、可動部材17は、軸方向で屈曲部5側に位置した退避位置にある。この退避位置の可動部材17を軸方向で屈曲部5に対する反対側に進出させると、
図6(B)及び
図6(C)並びに
図7(B)及び
図7(C)のように、結合部分である突起33が可動部材17と共に軸方向に進出する。
【0062】
このとき、一対のジョー15は、回転中心RCと突起33とが第2径方向で離れて位置するため、開く方向の回転中心RC周りの力を受ける。さらに、一対のジョー15は、カム部19の働きによって、より確実に開く方向の回転中心RC周りの力を受ける。結果として、一対のジョー15が回転中心RCに対して回転して本体部27間が開く。
【0063】
本実施例では、ジョー15の回転軸部31が支持部13の凹部25に第2径方向で外側から係合する形状であるため、突起33と回転中心RCとの距離を長くしてジョー15の回転力を向上することができる。結果として、可動部材17の操作力に対する一対のジョー15間に作用する開き力を向上することが可能となる。
【0064】
同様に、
図6(B)及び
図6(C)並びに
図7(B)及び
図7(C)のように、ジョー15の開き状態において、軸方向で屈曲部5に対する反対側に偏倚した進出位置にある可動部材17を屈曲部5側に退避させると、
図6(A)及び
図6(B)並びに
図7(A)及び
図7(B)のように、一対のジョー15が回転中心RCに対して回転して本体部27間が閉じる。このとき、ジョー15の回転力を向上することができるため、可動部材17の操作力に対する一対のジョー15間に作用する閉じ力を向上することが可能となる。
【0065】
従って、鉗子1では、少ない操作力で確実にジョー15による把持を行うことが可能となる。
すなわち、ジョー15のアーム29には、第2径方向の一側に回転軸部31が設けられ、同他側には、回転軸部31が設けられた面とは第1径方向で反対側の面に突起33が設けられている。また、アーム29は、突起33と同一の面において、第2径方向の一側にカム部19のカム溝37が設けられている。
カム溝37は、相手方のジョー15の回転中心RC周りに弧状に形成されている。このカム溝37に、相手方のジョー15の突起33の先端が係合する。突起33は、アーム29から第1径方向に突出し、中間部で可動部材17の開口部17aに係合する。開口部17aは、第2径方向の外側が解放された凹状となっている。この突起33の先端が、可動部材17から突出して、相手方のジョー15のカム溝37に係合する。その他は、実施例1と同様である。