(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084556
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電気式気動車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/32 20060101AFI20240618BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240618BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240618BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240618BHJP
B60L 50/10 20190101ALI20240618BHJP
B61C 3/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60L15/32
B60L1/00 A
B60L7/14
B60L9/18 L
B60L50/10
B61C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198883
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】野嵜 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠貴
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125AC08
5H125BA04
5H125BB05
5H125BB07
5H125BB09
5H125BC25
5H125CA02
5H125CB02
5H125CC02
5H125EE31
5H125EE42
5H125EE44
(57)【要約】
【課題】一両単位でも運用可能な電気式気動車を連結して運転する場合に、コストの増大を抑制しつつ、燃費効率の向上を図る。
【解決手段】電気式気動車10は、エンジンユニット103と、発電機104と、コンバータ装置105と、補助電源107と、インバータ装置108と、推進用モータ109と、統合制御部102と、を備え、統合制御部102は、編成全体で必要な加減速トルクを、編成を構成する複数の電気式気動車の内の一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止しても出力可能である場合、一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気式気動車が連結した編成を構成する電気式気動車であって、
エンジンユニットと、
前記エンジンユニットを動力源として発電する発電機と、
前記発電機から出力された三相交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータ装置と、
前記コンバータ装置から出力された直流電力を前記電気式気動車内の設備で必要な電力に変換して前記設備に供給する補助電源と、
前記コンバータ装置から出力された直流電力を三相交流電力に変換して出力するインバータ装置と、
前記インバータ装置から出力された三相交流電力により稼働され、前記電気式気動車を推進する推進用モータと、
前記電気式気動車の動作を制御する統合制御部と、を備える電気式気動車であって、
前記統合制御部は、前記編成全体で必要な加減速トルクを、前記編成を構成する複数の電気式気動車の内の一部の電気式気動車のエンジンユニットを停止しても出力可能である場合、前記一部の電気式気動車のエンジンユニットを停止させる、電気式気動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電気式気動車において、
前記編成を構成する複数の電気式気動車の補助電源同士が高圧引き通し線により連結され、
前記統合制御部は、自車が、前記エンジンユニットが稼働している稼働気動車である場合、前記高圧引き通し線を介して、前記エンジンユニットを停止した停止気動車の補助電源に直流電力を供給し、または、前記停止気動車内の設備に電力を供給する、電気式気動車。
【請求項3】
請求項1に記載の電気式気動車において、
前記電気式気動車の補助電源には、前記エンジンユニットからのエネルギー、および、前記電気式気動車の減速時に前記インバータ装置から出力される回生エネルギーにより充電可能な蓄電装置が設けられ、
前記統合制御部は、自車のエンジンユニットが停止している場合、自車の補助電源に設けられた蓄電装置から前記補助電源に電力を供給する、電気式気動車。
【請求項4】
請求項1に記載の電気式気動車において、
前記統合制御部は、
自車が、前記エンジンユニットが稼働している稼働気動車である場合、自車の稼働に必要な推進力とともに、前記エンジンユニットを停止した停止気動車の補助電源で必要な電力を供給可能な推進力が得られるように前記エンジンユニットを稼働し、
自車が、前記停止気動車である場合、前記稼働気動車の推進力により自車の前記インバータ装置から得られた回生電力を、自車の前記補助電源に供給する、電気式気動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式気動車に関する。
【背景技術】
【0002】
液体式変換器を用いた液体式気動車に対して、電気エネルギーを介して動力伝達を行う電気式気動車は、可変電圧可変周波数制御の採用により、高効率な運転が可能である。電気式気動車は、始動トルクの高さおよびメンテナンスの容易さといった運用面でもメリットがある。
【0003】
電気式気動車は、車両の速度の影響を受けることなく、ディーゼルエンジンの回転数を決めることができる。そのため、特許文献1に記載されている技術のように、車両の推進に必要な出力を得られる最適な動作点でディーゼルエンジンを動作させることができるので、電気式気動車は従来の液体式気動車と比べて、ディーゼルエンジンを高効率に運転することができる。
【0004】
また、複数の電気式気動車を連結した運用も想定されており、特許文献2には、駅構内においてエンジン騒音の低減を目的として、一部のエンジンを停止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5476327号
【特許文献2】特許第5785897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、エンジンを最適な動作点で動作させることで、燃費効率の向上を図ることができる一方で、エンジン制御部自体の改修が必要となるため、従来の液体式気動車からの転換およびエンジン制御部の流用が困難であり、コストの増大を招いてしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、複数の電気式気動車が連結して構成される編成に対して1つの統括制御装置を設けられる。統括制御装置は、編成を構成する電気式気動車が駅構内入っているか否かを判定し、駅構内に入ったと判定された電気式気動車のエンジンを停止する。そのため、特許文献2に記載の技術は、複数の電気式気動車が連結して構成される編成に対して1つの統括制御装置が設けられた固定編成にのみ適用可能である。そのため、非電化低輸送密度路線で普通列車として主に使用される、一両単位でも運用可能な電気式気動車には、運用面、コスト面および設備面から、非特許文献2に記載の技術を適用することは困難である。
【0008】
したがって、一両単位でも運用可能な電気式気動車を連結して運転する場合に、コストの増大を抑制しつつ、燃費効率の向上を図ることができる技術が求められている。
【0009】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、一両単位でも運用可能な電気式気動車を連結して運転する場合に、コストの増大を抑制しつつ、燃費効率の向上を図ることができる電気式気動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示に係る電気式気動車は、複数の電気式気動車が連結した編成を構成する電気式気動車であって、エンジンユニットと、前記エンジンユニットを動力源として発電する発電機と、前記発電機から出力された三相交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータ装置と、前記コンバータ装置から出力された直流電力を前記電気式気動車内の設備で必要な電力に変換して前記設備に供給する補助電源と、前記コンバータ装置から出力された直流電力を三相交流電力に変換して出力するインバータ装置と、前記インバータ装置から出力された三相交流電力により稼働され、前記電気式気動車を推進する推進用モータと、前記電気式気動車の動作を制御する統合制御部と、を備える電気式気動車であって、前記統合制御部は、前記編成全体で必要な加減速トルクを、前記編成を構成する複数の電気式気動車の内の一部の電気式気動車のエンジンユニットを停止しても出力可能である場合、前記一部の電気式気動車のエンジンユニットを停止させる。
【0011】
(2) (1)に記載の電気式気動車において、前記編成を構成する複数の電気式気動車の補助電源同士が高圧引き通し線により連結され、前記統合制御部は、自車が、前記エンジンユニットが稼働している稼働気動車である場合、前記高圧引き通し線を介して、前記エンジンユニットを停止した停止気動車の補助電源に直流電力を供給し、または、前記停止気動車内の設備に電力を供給する。
【0012】
(3) (1)に記載の電気式気動車において、前記電気式気動車の補助電源には、前記エンジンユニットからのエネルギー、および、前記電気式気動車の減速時に前記インバータ装置から出力される回生エネルギーにより充電可能な蓄電装置が設けられ、前記統合制御部は、自車のエンジンユニットが停止している場合、自車の補助電源に設けられた蓄電装置から前記補助電源に電力を供給する。
【0013】
(4) (1)に記載の電気式気動車において、統合制御部は、自車が、前記エンジンユニットが稼働している稼働気動車である場合、自車の稼働に必要な推進力とともに、前記エンジンユニットを停止した停止気動車の補助電源で必要な電力を供給可能な推進力が得られるように前記エンジンユニットを稼働し、自車が、前記停止気動車である場合、前記稼働気動車の推進力により自車の前記インバータ装置から得られた回生電力を、自車の前記補助電源に供給する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電気式気動車によれば、一両単位でも運用可能な電気式気動車を連結して運転する場合に、コストの増大を抑制しつつ、燃費効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気式気動車の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電気式気動車の構成の別の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電気式気動車の構成のさらに別の一例を示す図である。
【
図4】従来の電気式気動車の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示す従来の電気式気動車の運転状態を示すイメージ波形の図である。
【
図6A】
図4に示す電気式気動車の力行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図6B】
図4に示す電気式気動車の惰行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図6C】
図4に示す電気式気動車の減速モード(回生>補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図6D】
図4に示す電気式気動車の減速モード(回生<補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図6E】
図4に示す電気式気動車の停車モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図7】
図1に示す電気式気動車の運転状態を示すイメージ波形の図である。
【
図8A】
図1に示す電気式気動車の加速モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図8B】
図1に示す電気式気動車の低出力モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図8C】
図1に示す電気式気動車の惰行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図8D】
図1に示す電気式気動車の減速モード(回生>補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図8E】
図1に示す電気式気動車の減速モード(回生<補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図8F】
図1に示す電気式気動車の停車モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図9】
図2に示す電気式気動車の運転状態を示すイメージ波形の図である。
【
図10A】
図2に示す電気式気動車の加速モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10B】
図2に示す電気式気動車の第1の低出力モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10C】
図2に示す電気式気動車の第2の低出力モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10D】
図2に示す電気式気動車の第1の惰行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10E】
図2に示す電気式気動車の第2の惰行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10F】
図2に示す電気式気動車の減速モード(回生>補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図10G】
図2に示す電気式気動車の第1の減速モード(回生<補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図10H】
図2に示す電気式気動車の第2の減速モード(回生<補助電源)モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10I】
図2に示す電気式気動車の第3の減速モード(回生<補助電源)モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10J】
図2に示す電気式気動車の第1の停車モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図10K】
図2に示す電気式気動車の第2の停車モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図11】
図3に示す電気式気動車の運転状態を示すイメージ波形の図である。
【
図12A】
図3に示す電気式気動車の加速モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図12B】
図3に示す電気式気動車の低出力モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図12C】
図3に示す電気式気動車の惰行モードにおける電力の流れを示す図である。
【
図12D】
図3に示す電気式気動車の減速モード(回生>補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図12E】
図3に示す電気式気動車の減速モード(回生<補助電源)における電力の流れを示す図である。
【
図12F】
図3に示す電気式気動車の停車モードにおける電力の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気式気動車10の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る電気式気動車10は、単独での運転が可能であるとともに、複数の電気式気動車10が連結した編成を構成することが可能である。以下では、
図1に示すように、2両の電気式気動車10(電気式気動車10-1,10-2)により編成が構成される例を用いて説明する。なお、本実施形態では、2両の電気式気動車10により編成が構成される例を用いて説明するが、これに限られるものではなく、3両以上の電気式気動車10により編成が構成されてもよい。以下では、電気式気動車10-1,10-2を区別しない場合には、電気式気動車10と称し、これらを区別する場合には、符号の末尾に、「-1」または「-2」を付するものとする。また、電気式気動車10-1,10-2が備える各構成を区別する場合、各構成に対応する符号の末尾に「-1」または「-2」を付するものとする。
【0018】
電気式気動車10-1と電気式気動車10-2とは、連結器3および電気連結器4を介して連結される。連結器3は、電気式気動車10-1と電気式気動車10-2とを物理的に連結する。電気連結器4は、電気式気動車10-1と電気式気動車10-2とを電気的に連結する。具体的には、電気連結器4は、電気式気動車10-1が備える統合制御部102-1と電気式気動車10-2が備える統合制御部102-2とを通信線5により接続する。統合制御部102-1と統合制御部102-2とは通信線5を介して通信可能である。また、電気連結器4は、電気式気動車10-1が備えるコンデンサ106-1と電気式気動車10-2が備えるコンデンサ106-2とを高圧引き通し線6により接続する。
【0019】
図1に示すように、電気式気動車10は、運転台101と、統合制御部102と、エンジンユニット103と、発電機104と、コンバータ装置105と、コンデンサ106と、補助電源107と、インバータ装置108と、推進用モータ109と、車輪110と、空気制動装置111と、機械ブレーキ112とを備える。
【0020】
運転台101は、編成に対する加減速指令(加速ノッチ指令または制動指令)が入力される。加減速指令は、編成を構成する複数の電気式気動車10のうち、一の電気式気動車10の運転台101から入力される。
【0021】
統合制御部102は、電気式気動車10が備える各部の動作を制御する。具体的には、統合制御部102は、エンジンユニット103、発電機104、コンバータ装置105、補助電源107、インバータ装置108および空気制動装置111の動作を制御する。なお、図の簡略化のため、統合制御部102と各部とを結ぶ入出力線は記載を省略している。
【0022】
エンジンユニット103は、統合制御部102から出力されるエンジンノッチ指令に従い動作する。エンジンノッチ指令は、必要なエンジンユニット103の出力を得られる回転数を指示する指令である。
【0023】
発電機104は、エンジンユニット103を動力源として発電する。具体的には、発電機104は、エンジンユニット103の回転出力を三相交流電力に変換して出力する。
【0024】
コンバータ装置105は、発電機104から出力された三相交流電力を直流電力に変換して出力する。
【0025】
コンデンサ106は、コンバータ装置105から出力された直流電力を平滑化する。
【0026】
補助電源107は、コンバータ装置105から出力され、コンデンサ106により平滑化された直流電力を、電気式気動車10内の設備で必要な電力に変換して、電気式気動車10内の設備に出力する。電気式気動車10-1,10-2の補助電源107同士が高圧引き通し線6を介して接続される。
【0027】
インバータ装置108は、コンバータ装置105から出力され、コンデンサ106により平滑化された直流電力を三相交流電力に変換して出力する。
【0028】
推進用モータ109は、インバータ装置108から出力された三相交流電力により稼働され、電気式気動車10を推進する。具体的には、推進用モータ109の回転力が歯車装置および推進軸を介して推進力に変換され、車輪110を回転させる。
【0029】
空気制動装置111は、車輪110に機械的な制動力を与える機械ブレーキ112を制御する。
【0030】
本実施形態に係る電気式気動車10は、
図1に示す構成に限られるものではない。
図2は、本実施形態に係る電気式気動車10の構成の別の一例を示す図である。
図2において、
図1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
図2に示す電気式気動車10は、
図1に示す電気式気動車10と比較して、高圧引き通し線6を有さない点と、補助電源107に蓄電装置113が設けられている点とが異なる。
【0032】
蓄電装置113は、エンジンユニット103からのエネルギー、および、電気式気動車10の減速時にインバータ装置108から出力される回生エネルギーにより充電可能である。蓄電装置113は、蓄えた電力を補助電源107に供給することができる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る電気式気動車10の構成のさらに別の一例を示す図である。
図3において、
図1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0034】
図3に示す電気式気動車10は、
図1に示す電気式気動車10と比較して、高圧引き通し線6を有さない点とが異なる。
【0035】
次に、本実施形態に係る電気式気動車10の動作について説明する。上述したように、本実施形態に係る電気式気動車10は複数連結されて編成を構成する。編成を構成する複数の電気式気動車10のうち、一の電気式気動車10が備える統合制御部102が主となり、残りの電気式気動車10が備える統合制御部102は従となる。主となる統合制御部102は、自車の各部を制御するとともに、従となる統合制御部102を制御する。従となる統合制御部102は、主となる統合制御部102の指示に従い、自車の各部を制御する。主となる統合制御部102は、運転台101から加減速指令が入力される電気式気動車10の統合制御部102である。以下では、電気式気動車10-1の統合制御部102-1が主となり、電気式気動車10-2の統合制御部102-2が従となるものとして説明する。すなわち、運転台101-1から加減速指令が入力されるものとして説明する。
【0036】
まず、比較のために、
図4に示す従来の電気式気動車20の動作について説明する。
図4に示す従来の電気式気動車20は、
図3に示す本実施形態に係る電気式気動車10と比較して、統合制御部102を統合制御部202に変更した点が異なる。従来の電気式気動車20は、力行モード、惰行モード、減速モード(回生>補助電源)、減速モード(回生<補助電源)および停車モードという5つの動作モードを有する。以下では、
図5および
図6A~
図6Eを参照して、各動作モードについて説明する。
【0037】
図5は、
図4に示す従来の電気式気動車20の運転状態を示すイメージ波形の図である。また、
図6A~
図6Eは各動作モードにおける電力の流れを示す図である。
【0038】
<力行モード>
運転台101-1に加速ノッチ指令が入力されると、電気式気動車20-1,20-2は力行モードとなる。力行モードでは、統合制御部202-1は、加速ノッチ指令から電気式気動車20-1で必要な推進トルクを演算し、演算した推進トルクが出力されるように、電気式気動車20-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部202-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、力行モードでは、
図6Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。
【0039】
統合制御部202-2は、統合制御部202-1と同様に、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、力行モードでは、
図6Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-2から出力された直流電力は、コンデンサ106-2により平滑化された後、補助電源107-2およびインバータ装置108-2に供給される。
【0040】
上述した処理により、
図5に示すように、力行モードでは、一点鎖線で示すコンバータ装置105-1の出力電力、二点鎖線で示すコンバータ装置105-2の出力電力、破線で示すインバータ装置108-1の出力電力および一点鎖線で示すインバータ装置108-2の出力電力が徐々に増加する。また、実線で示す補助電源107-1の電力および二点鎖線で示す補助電源107-2の電力としては一定の電力が供給される。なお、2つの車両で同様の制御が行われる場合などには、コンバータ装置105-1,105-2の出力電力の出力電圧の波形、インバータ装置108-1,108-2の出力電力の波形および補助電源107-1,107-2の電力の波形はそれぞれ重複して示される。
【0041】
各電気式気動車20から必要な推進トルクが出力され、編成の速度が一定となると、統合制御部202-1は、
図5に示すように、エンジンユニット103-1の出力を低下させる。こうすることで、コンバータ装置105-1の出力電力およびインバータ装置108-1の出力電力は低下する。また、補助電源107-1には引き続き、一定の電力が供給される。統合制御部202-2も、統合制御部202-1と同様の制御を行う。
【0042】
<惰行モード>
走行中に運転台101-1から力行トルク指令も制動指令も入力されない状態になると、電気式気動車20-1,20-2は惰行モードになる。惰行モードでは、統合制御部201-2は、インバータ装置108-1を停止し、補助電源107-1への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、惰行モードでは、
図6Bに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。
【0043】
統合制御部202-2は、統合制御部202-1と同様に、インバータ装置108-2を停止し、補助電源107-2への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、惰行モードでは、
図6Bに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。
【0044】
上述した処理により、
図5に示すように、惰行モードでは、コンバータ装置105-1,105-2の出力電力は、加速モードよりも低下する。また、インバータ装置108-1,108-2は停止するため、インバータ装置108-1,108-2の出力電力は0となる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。
【0045】
<減速モード(回生>補助電源)>
運転台101-1から制動指令が入力されると、統合制御部202は、インバータ装置108、あるいは、空気制動装置111を制御し、車輪110に機械的な制動力を与える。すなわち、インバータ装置108の制御によっても、車輪110に制動力を与えることができる。車輪110に与える機械的な制動力を推進用モータ109およびインバータ装置108によって電気エネルギーへ変換し、インバータ装置108から回生電力がコンバータ装置105の方向に出力される。回生電力が補助電源107の電力よりも大きい場合、電気式気動車20-1,20-2は減速モード(回生>補助電源)となる。
【0046】
減速モード(回生>補助電源)では、統合制御部202-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図6Cに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-1で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-1および発電機104-1を介してエンジンユニット103-1に入力され、エンジンユニット103-1のエンジンブレーキにより消費される。
【0047】
統合制御部202-2は、統合制御部202-1と同様に、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図6Cに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-2で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-2および発電機104-2を介してエンジンユニット103-2に入力され、エンジンユニット103-2のエンジンブレーキにより消費される。
【0048】
上述した処理により、
図5に示すように、減速モード(回生>補助電源)では、インバータ装置108-1,108-2からは負方向に回生電力が出力される。「負方向」とは、インバータ装置108からエンジンユニット103に向かう方向を指すものとする。編成の速度の低下とともに、回生電力は小さくなる(0に近づく)。このような回生電力の変化に伴って、コンバータ装置105-1,105-2から負方向に電力が出力され、その出力は徐々に小さくなる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。
【0049】
<減速モード(回生<補助電源)>
回生電力が小さくなり、回生電力が補助電源107の電力よりも小さくなると、電気式気動車20-1,20-2は減速モード(回生<補助電源)となる。減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部201-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生<補助電源)では、
図6Dに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。また、減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107-1で必要な電力を下回っている。そのため、
図6Dに示すように、エンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換され、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。
【0050】
統合制御部202-2は、統合制御部202-1と同様に、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生<補助電源)では、
図6Dに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107-2で必要な電力を下回っている。そのため、
図6Dに示すように、エンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換され、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。
【0051】
上述した処理により、
図5に示すように、減速モード(回生<補助電源)では、インバータ装置108-1,108-2からは負方向に回生電力が出力される。また、コンバータ装置105-1,105-2からは補助電源107-1,107-2に必要な電力を供給するため、正方向に電力が出力される。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。
【0052】
<停車モード>
編成が停車すると、電気式気動車20-1,20-2は停車モードとなる。停車モードでは、統合制御部201-1は、インバータ装置108-1を停止し、補助電源107-1への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、停車モードでは、
図6Eに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。
【0053】
統合制御部202-2は、統合制御部202-1と同様に、インバータ装置108-2を停止し、補助電源107-2への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、停車モードでは、
図6Eに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。
【0054】
上述した処理により、
図5に示すように、停車モードでは、コンバータ装置105-1,105-2からは、補助電源107-1,107-2に給電可能な一定の電力が出力される。また、インバータ装置108-1,108-2は停止するため、インバータ装置108-1,108-2の出力電力は0となる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。
【0055】
従来の電気式気動車20では、車両ごとに個別に電力の制御が行われるため、例えば、定常的な損失が支配的となって効率が低下する軽負荷状態で発電機104を動作させたり、熱効率の低下および排気管へのカーボン堆積が発生する軽負荷状態でエンジンユニット103を動作させたりすることが多くなる。そのため、燃費効率の低下を招いてしまうという問題がある。
【0056】
次に、本実施形態に係る電気式気動車10の動作について説明する。まず、
図1に示す電気式気動車10の動作について説明する。
図1に示す電気式気動車10は、力行モード、低出力モード、惰行モード、減速モード(回生>補助電源)、減速モード(回生<補助電源)および停車モードという6つの動作モードを有する。以下では、
図7および
図8A~
図8Fを参照して、各動作モードについて説明する。
図7は、
図1に示す本実施形態に係る電気式気動車10の運転状態を示すイメージ波形の図である。また、
図8A~
図8Fは各動作モードにおける電力の流れを示す図である。
【0057】
<加速モード>
運転台101-1に加速ノッチ指令が入力されると、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であるか否かを判定する。統合制御部102-1が演算した推進トルクを1両の電気式気動車10で出力可能でないと判定した場合、電気式気動車10-1,10-2は加速モードとなる。
【0058】
加速モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から電気式気動車10-1で必要な推進トルクを演算し、演算した推進トルクが出力されるように、電気式気動車10-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、加速モードでは、
図8Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。
【0059】
また、統合制御部102-1は同様の制御を行うように統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、加速モードでは、
図8Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-2から出力された直流電力は、コンデンサ106-2により平滑化された後、補助電源107-2およびインバータ装置108-2に供給される。
【0060】
上述した処理により、
図7に示すように、加速モードでは、一点鎖線で示すコンバータ装置105-1の出力電力、二点鎖線で示すコンバータ装置105-2の出力電力、破線で示すインバータ装置108-1の出力電力および一点鎖線で示すインバータ装置108-2の出力電力が徐々に増加する。また、実線で示す補助電源107-1の電力および二点鎖線で示す補助電源107-2の電力としては一定の電力が供給される。また、三点鎖線で示す電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に供給される電力である移動電力は0である。
【0061】
<低出力モード>
統合制御部102-1が加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であると判定すると、電気式気動車10-1,10-2は低出力モードとなる。
【0062】
低出力モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から演算した、編成全体で必要となる推進トルクが電気式気動車10-1から出力されるように、電気式気動車10-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、
図8Bに示すように、演算した推進トルク(編成全体で必要となる推進トルク)に応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。また、コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、高圧引き通し線6を介して、補助電源107-2に供給される。
【0063】
また、統合制御部102-1は、電気式気動車10-1により編成全体で必要な推進トルクを出力することができるため、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2の停止を統合制御部10-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1からの指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。
【0064】
上述した処理により、
図7に示すように、低出力モードでは、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1の出力電力は、編成全体の推進トルクを出力可能なレベルで一定値となる。また、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2は停止しているため、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-1の出力電力は0となる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、
図8Bを参照して説明したように、低出力モードでは、補助電源107-2には電気式気動車10-1から電力が供給される。したがって、補助電源107-2への供給電力に相当する電力が移動電力として電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に供給される。
【0065】
このように本実施形態においては、統合制御部102-1は、編成全体で必要な加減速トルク(推進トルク)を、編成を構成する複数の電気式気動車10の内の一部の電気式気動車10(電気式気動車10-2)のエンジンユニット103を停止しても出力可能である場合、一部の電気式気動車10(電気式気動車10-2)のエンジンユニット103を停止する。なお、本実施形態においては、編成全体で必要な推進トルクを、編成を構成する複数の電気式気動車10の内の一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止しても出力可能である場合、一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止する例を用いて説明するが、これに限られるものではない。編成全体で必要な制動トルクを、編成を構成する複数の電気式気動車10の内の一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止しても出力可能である場合(エンジンユニット103を停止する車両で生じる回生エネルギーを、その車両のエンジンブレーキを使わなくても消費することができる場合)、一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止してもよい。
【0066】
<惰行モード>
惰行モードでは、統合制御部102-1は、インバータ装置108-1を停止し、補助電源107-1,107-2への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、惰行モードでは、
図8Cに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1、107-2に供給される。統合制御部102-1は、補助電源107-1,107-2への電力供給のみが可能となるレベルまでエンジンユニット103-1の出力を低下させる。また、統合制御部102-1は引き続き、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2の停止を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。
【0067】
上述した処理により、
図7に示すように、惰行モードでは、コンバータ装置105-1の出力電力は低出力モードよりも低下した一定値となり、コンバータ装置105-2の出力電力は0となる。また、インバータ装置108-1,108-2は停止するため、インバータ装置108-1,108-2の出力電力は0となる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、
図8Cを参照して説明したように、惰行モードでは、補助電源107-2には電気式気動車10-1から電力が供給される。したがって、補助電源107-2への供給電力に相当する電力が移動電力として電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に供給される。
【0068】
<減速モード(回生>補助電源)>
運転台101-1から制動指令が入力されると、統合制御部102は、インバータ装置108、あるいは、空気制動装置111を制御し、車輪110に機械的な制動力を与える。車輪110に与える機械的な制動力を推進用モータ109およびインバータ装置108によって電気エネルギーへ変換し、インバータ装置108から回生電力がコンバータ装置105の方向に出力される。回生電力が補助電源107の電力よりも大きい場合、電気式気動車10-1,10-2は減速モード(回生>補助電源)となる。
【0069】
減速モード(回生>補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図8Dに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-1で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-1および発電機104-1を介してエンジンユニット103-1に入力され、エンジンユニット103-1のエンジンブレーキにより消費される。
【0070】
また、統合制御部102-1は同様の制御を行うように統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図8Dに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-2で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-2および発電機104-2を介してエンジンユニット103-2に入力され、エンジンユニット103-2のエンジンブレーキにより消費される。
【0071】
上述した処理により、
図7に示すように、減速モード(回生>補助電源)では、インバータ装置108-1,108-2からは負方向に回生電力が出力される。編成の速度の低下とともに、回生電力は小さくなる(0に近づく)。このような回生電力の変化に伴って、コンバータ装置105-1,105-2から負方向に電力が出力され、その出力は徐々に小さくなる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、
図8Dを参照して説明したように、減速モード(回生>補助電源)では、電気式気動車10-1から電気式気動車10-2への電力供給はないため、移動電力は0となる。
【0072】
<減速モード(回生<補助電源)>
回生電力が小さくなり、回生電力が補助電源107の電力よりも小さくなると、電気式気動車10-1,10-2は減速モード(回生<補助電源)となる。減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部201-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生<補助電源)では、
図8Eに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。
【0073】
また、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2の停止、および、インバータ装置108-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を停止し、インバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生<補助電源)では、
図8Eに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。
【0074】
ここで、減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107で必要な電力を下回っている。そのため、
図8Eに示すように、エンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換され、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1,107-2に供給される。
【0075】
上述した処理により、
図7に示すように、減速モード(回生<補助電源)では、インバータ装置108-1,108-2からは負方向に回生電力が出力される。また、コンバータ装置105-1からは補助電源107-1,107-2に必要な電力を供給するため、正方向に電力が出力される。また、コンバータ装置105-2は停止しているため、コンバータ装置105-2の出力電力は0となる。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、
図8Eを参照して説明したように、減速モード(回生<補助電源)では、補助電源107-2には電気式気動車10-1から電力が供給される。したがって、補助電源107-2への供給電力に相当する電力が移動電力として電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に供給される。
【0076】
<停車モード>
編成が停車すると、電気式気動車10-1,10-2は停車モードとなる。停車モードでは、統合制御部102-1は、インバータ装置108-1を停止させ、補助電源107-1、107-2への電力供給のみが可能となるレベルでエンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。また、統合制御部102-2は、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2の停止を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。こうすることで、停車モードでは、
図8Fに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1、107-2に供給される。
【0077】
上述した処理により、
図7に示すように、停車モードでは、インバータ装置108-1,108-2およびコンバータ装置105-2の出力電力は0となる。また、コンバータ装置105-1からは補助電源107-1,107-2に必要な電力を供給するため、正方向に電力が出力される。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、
図8Fを参照して説明したように、停車モードでは、補助電源107-2には電気式気動車10-1から電力が供給される。したがって、補助電源107-2への供給電力に相当する電力が移動電力として電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に供給される。
【0078】
このように本実施形態においては、統合制御部102(統合制御部102-1)は、自車(電気式気動車10-1)が、エンジンユニット103が稼働している稼働気動車である場合(低出力モード、惰行モード、減速モード(回生>補助電源)、減速モード(回生<補助電源)および停車モードである場合)、高圧引き通し線6を介して、エンジンユニット103を停止した停止気動車(電気式気動車10-2)の補助電源107に直流電力を供給する。
【0079】
なお、本実施形態においては、稼働気動車から停止気動車の補助電源107に電力を供給する例を用いて説明したが、これに限られるものではない。停止気動車の補助電源107の代わりに稼働気動車から、停止気動車内の設備に電力を供給してもよい。
【0080】
次に、
図2に示す電気式気動車10の動作について説明する。
図2に示す電気式気動車10は、加速モード、第1の低出力モード、第2の低出力モード、第1の惰行モード、第2の惰行モード、減速モード(回生>補助電源)、第1の減速モード(回生<補助電源)、第2の減速モード(回生<補助電源)、第3の減速モード(回生<補助電源)、第1の停車モードおよび第2の停車モードという11の動作モードを有する。以下では、
図9および
図10A~
図10Kを参照して、各動作モードについて説明する。
図9は、
図2に示す本実施形態に係る電気式気動車10の運転状態を示すイメージ波形の図である。また、
図10A~
図10Kは各動作モードにおける電力の流れを示す図である。
【0081】
<加速モード>
運転台101-1に加速ノッチ指令が入力されると、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であるか否かを判定する。統合制御部102-1が演算した推進トルクを1両の電気式気動車10で出力可能でないと判定した場合、電気式気動車10-1,10-2は加速モードとなる。
【0082】
加速モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から電気式気動車20-1で必要な推進トルクを演算し、演算した推進トルクが出力されるように、電気式気動車20-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、加速モードでは、
図10Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。
【0083】
また、統合制御部102-1は同様の制御を行うように統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、加速モードでは、
図8Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-2から出力された直流電力は、コンデンサ106-2により平滑化された後、補助電源107-2およびインバータ装置108-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により蓄電装置113-2が充電される。
【0084】
上述した処理により、
図9に示すように、加速モードでは、コンバータ装置105-1,105-2の出力電力およびインバータ装置108-1,108-2が徐々に増加する。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。また、三点鎖線で示す蓄電装置113-1の電力および細実線で示す蓄電装置113-2の電力は、コンバータ装置105-1およびコンバータ装置105-2の最大出力電力に応じて減少する。
【0085】
<第1の低出力モード>
統合制御部102-1が加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)であると判定し、蓄電装置113-2が電力を出力することができる場合、電気式気動車10-1,10-2は第1の低出力モードとなる。
【0086】
第1の低出力モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から演算した、編成全体で必要となる推進トルクが電気式気動車10-1から出力されるように、電気式気動車10-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、
図10Bに示すように、演算した推進トルク(編成全体で必要となる推進トルク)に応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。
【0087】
また、統合制御部102-1は、電気式気動車10-1により編成全体で必要な推進トルクを出力することができるため、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2の停止を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。この場合、統合制御部102-2は、
図10Bに示すように、蓄電装置113-2から補助電源107-2に電力を供給する。
【0088】
<第2の低出力モード>
統合制御部102-1が加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であると判定し、蓄電装置113-2が電力を出力することができない場合、電気式気動車10-1,10-2は第2の低出力モードとなる。
【0089】
第2の低出力モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から演算した、編成全体で必要となる推進トルクが電気式気動車10-1から出力されるように、電気式気動車10-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、
図10Cに示すように、演算した推進トルク(編成全体で必要となる推進トルク)に応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。
【0090】
また、統合制御部102-1は、蓄電装置113-2が電力を出力することができないため、インバータ装置108-2の停止、および、補助電源107-2への電力供給が可能となるように、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、インバータ装置108-2を停止し、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図10Cに示すように、エンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-2から出力された直流電力は、コンデンサ106-2により平滑化された後、補助電源107-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により蓄電装置113-2が充電される。
【0091】
上述した処理により、
図9に示すように、蓄電装置113-1の電力は負の方向に増大し、蓄電装置113-2の電力は補助電源107-2の電力まで増加する。
図9においては、第1および第2の低出力モードの場合を示している。なお、以下では、
図9において、
図1に示す電気式気動車10と
図2に示す電気式気動車10との主な相違点である蓄電装置113-1,113-2の電力について説明し、その他の電力の推移については適宜説明を省略する。
【0092】
<第1の惰行モード>
加速トルク指令も制動指令も運転台101-1から入力されず、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2が電力を出力することができる場合、電気式気動車10-1,10-2は第1の惰行モードとなる。
【0093】
第1の惰行モードでは、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を停止する。また、統合制御部102-1は、蓄電装置113-1に補助電源107-1へ電力を供給させる。また、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2の停止を統合制御部102-2に指示する。また、統合制御部102-1は、蓄電装置113-2から補助電源107-2への電力の供給を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。また、統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、蓄電装置113-2に充電された電力を補助電源107-2に供給させる。
【0094】
こうすることで、第1の惰行モードでは、
図10Dに示すように、蓄電装置113-1から補助電源107-1に電力が供給され、蓄電装置113-2から補助電源107-2に電力が供給される。
【0095】
<第2の惰行モード>
加速トルク指令も制動指令も運転台101-1から入力されず、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2が電力を出力することができない場合、電気式気動車10-1,10-2は第2の惰行モードとなる。
【0096】
第2の惰行モードでは、統合制御部102-1は、インバータ装置108-1を停止するとともに、エンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図10Eに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。
【0097】
また、統合制御部102-1は、インバータ装置108-2の停止、および、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、インバータ装置108-2を停止するとともに、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図10Eに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により蓄電装置113-2が充電される。
【0098】
上述した処理により、
図9に示すように、第2の惰行モードでは、蓄電装置113-1,113-2の電力およびコンバータ装置105-1,105-2の出力電力は、充電側(負側)への出力となる。
【0099】
なお、本実施形態においては、蓄電装置113-1,113-2の両方が電力を出力することができる場合、あるいは、蓄電装置113-1,113-2の両方が電力を出力することができない場合を例として説明したが、これに限られるものではない。蓄電装置113-1,113-2の電力出力の可否に応じて、電気式気動車10-1,10-2がそれぞれ、第1の惰行モードあるいは第2の惰行モードとなってよい。
【0100】
<減速モード(回生>補助電源)>
運転台101-1から制動指令が入力されると、統合制御部102は、インバータ装置108、あるいは、空気制動装置111を制御し、車輪110に機械的な制動力を与える。車輪110に与える機械的な制動力を推進用モータ109およびインバータ装置108によって電気エネルギーへ変換し、インバータ装置108から回生電力がコンバータ装置105の方向に出力される。回生電力が補助電源107の電力よりも大きい場合、電気式気動車10-1,10-2は減速モード(回生>補助電源)となる。
【0101】
減速モード(回生>補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図10Fに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-1で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-1および発電機104-1を介してエンジンユニット103-1に入力され、エンジンユニット103-1のエンジンブレーキにより消費される。
【0102】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図10Fに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により蓄電装置113-2が充電される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-2で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-2および発電機104-2を介してエンジンユニット103-2に入力され、エンジンユニット103-1のエンジンブレーキにより消費される。
【0103】
上述した処理により、
図9に示すように、減速モード(回生>補助電源)では、蓄電装置113-113-2には電力が蓄電される。
【0104】
<第1の減速モード(回生<補助電源)>
回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2が電力を出力することができる場合、電気式気動車10-1,10-2は第1の減速モード(回生<補助電源)となる。
【0105】
第1の減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を停止し、インバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、第1の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Gに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。ここで、第1の減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さい。そのため、統合制御部102-1は、
図10Gに示すように、蓄電装置113-1に補助電源107-1へ電力を供給させる。こうすることで、補助電源107-1で必要な電力を供給することができる。
【0106】
また、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2の停止、および、インバータ装置108-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102―2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を停止し、インバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、第1の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Gに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、統合制御部102-2は、
図10Gに示すように、蓄電装置113-2に補助電源107-2へ電力を供給させる。こうすることで、補助電源107-2で必要な電力を供給することができる。
【0107】
<第2の減速モード(回生<補助電源)>
回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2が電力を出力することができない場合、電気式気動車10-1,10-2は第2の減速モード(回生<補助電源)となる。
【0108】
第2の減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。これにより、第2の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Hに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。ここで、第2の減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-1が電力を出力することもできない。そのため、統合制御部102-1は、補助電源107-1への電力供給のために、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図10Hに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。
【0109】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。これにより、第2の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Hに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。ここで、第2の減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-2が電力を出力することもできない。そのため、統合制御部102-2は、補助電源107-2への電力供給のために、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図10Hに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。
【0110】
<第3の減速モード(回生<補助電源)>
第3の減速モード(回生<補助電源)において、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2の電力が低下し、蓄電装置113-1および蓄電装置113-2が電力を出力することができなくなると、電気式気動車10-1,10-2は第3の減速モード(回生<補助電源)となる。
【0111】
第3の減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。これにより、第3の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Iに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。ここで、第3の減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-1が電力を出力することもできない。そのため、統合制御部102-1は、補助電源107-1への電力供給のために、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図10Iに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により、蓄電装置113-1が充電される。
【0112】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。これにより、第3の減速モード(回生<補助電源)では、
図10Iに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。ここで、第3の減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さく、蓄電装置113-2が電力を出力することもできない。そのため、統合制御部102-2は、補助電源107-2への電力供給のために、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図10Iに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により、蓄電装置113-2が充電される。
【0113】
上述した処理により、
図9に示すように、蓄電装置113-1,11302は、徐々に充電方向の電力が減少し、放電に転じて放電方向の電力が増加する。
【0114】
なお、本実施形態においては、電気式気動車10-1,10-2が同時に第2の減速モード(回生<補助電源)または第3の減速モード(回生<補助電源)となる例を用いて説明したが、これに限られるものではない。蓄電装置113-1,113-2の電力出力の可否に応じて、電気式気動車10-1,10-2がそれぞれ、第2の減速モード(回生<補助電源)、第2の減速モード(回生<補助電源)または第3の減速モード(回生<補助電源)となってよい。
【0115】
<第1の停車モード>
編成が動作を停止し、蓄電装置113-1,113-2が電力を出力することができる場合、電気式気動車10-1,10-2は第1の停車モードとなる。
【0116】
第1の停車モードでは、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を停止する。また、統合制御部102-1は、
図10Jに示すように、蓄電装置113-1に補助電源107-1へ電力を供給させる。こうすることで、補助電源107-1で必要な電力を供給することができる。
【0117】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を停止する。また、統合制御部102-2は、
図10Jに示すように、蓄電装置113-2に補助電源107-1へ電力を供給させる。こうすることで、補助電源107-2で必要な電力を供給することができる。
【0118】
<第2の停車モード>
編成が動作を停止し、蓄電装置113-1,113-2が電力を出力することができない場合、電気式気動車10-1,10-2は第2の停車モードとなる。
【0119】
第2の停車モードでは、統合制御部102-1は、インバータ装置108-1を停止し、エンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図10Kに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。また、補助電源107-1に供給された電力により蓄電装置113-1が充電される。
【0120】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、インバータ装置108-2を停止し、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図10Kに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。また、補助電源107-2に供給された電力により蓄電装置113-2が充電される。
【0121】
なお、本実施形態においては、電気式気動車10-1,10-2が同時に第1の停車モードまたは第2の停車モードとなる例を用いて説明したが、これに限られるものではない。蓄電装置113-1,113-2の電力出力の可否に応じて、電気式気動車10-1,10-2がそれぞれ、第1の停車モードまたは第2の停車モードとなってよい。
【0122】
このように、
図2に示す電気式気動車10においては、統合制御部102は、自車のエンジンユニットが停止している場合(第1の低出力モード、第1の惰行モード、第1の減速モード(回生<補助電源)、第2の減速モード(回生<補助電源)および第1の停車モードである場合)、自車の補助電源107に設けられた蓄電装置113から補助電源107に電力を供給する。
【0123】
次に、
図3に示す電気式気動車10の動作について説明する。
図3に示す電気式気動車10は、加速モード、低出力モード、惰行モード、減速モード(回生>補助電源)、減速モード(回生<補助電源)および停車モードという6つ動作モードを有する。以下では、
図11および
図12A~
図12Fを参照して、各動作モードについて説明する。
図11は、
図3に示す本実施形態に係る電気式気動車10の運転状態を示すイメージ波形の図である。また、
図12A~
図12Fは各動作モードにおける電力の流れを示す図である。
【0124】
<加速モード>
電気式気動車10-1の運転台101-1に加速ノッチ指令が入力されると、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であるか否かを判定する。統合制御部102-1が演算した推進トルクを1両の電気式気動車10で出力可能でないと判定した場合、電気式気動車10-1,10-2は加速モードとなる。
【0125】
加速モードでは、統合制御部102-1は、加速ノッチ指令から電気式気動車20-1で必要な推進トルクを演算し、演算した推進トルクが出力されるように、電気式気動車20-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働させる。こうすることで、加速モードでは、
図12Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。
【0126】
また、統合制御部102-1は同様の制御を行うように統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示に従い、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-1を稼働させる。こうすることで、加速モードでは、
図12Aに示すように、演算した推進トルクに応じたエンジンユニット103-2の出力により発電機104-2から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-2から出力された直流電力は、コンデンサ106-2により平滑化された後、補助電源107-2およびインバータ装置108-2に供給される。
【0127】
上述した処理により、
図11に示すように、加速モードでは、コンバータ装置105-1,105-2の出力電力およびインバータ装置108-1,108-2の出力電力が徐々に増加する。また、補助電源107-1,107-2には一定の電力が供給される。
<低出力モード>
統合制御部102-1が編成全体で必要とされる推進トルクを一部の電気式気動車10(電気式気動車10-1)で出力可能であると判定すると、電気式気動車10-1,10-2は低出力モードとなる。
【0128】
低出力モードでは、統合制御部102-1は、編成全体で必要となる推進トルクが電気式気動車10-1から出力されるように、電気式気動車10-1の各部を制御する。具体的には、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、
図12Bに示すように、編成全体で必要となる推進トルクに応じたエンジンユニット103-1の出力により発電機104-1から三相交流電力が出力され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換して出力される。コンバータ装置105-1から出力された直流電力は、コンデンサ106-1により平滑化された後、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。
【0129】
また、統合制御部102-1は、電気式気動車10-1により編成全体で必要な推進トルクを出力することができるため、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2の停止を指示する。また、統合制御部102―1は、回生電力による補助電源107-2への電力の供給のため、インバータ装置108-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1からの指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2を停止する。また、統合制御部102-2は、
図12Bに示すように、制動トルクによりインバータ装置108から回生電力を出力させ、その回生電力を、コンデンサ106-2を介して補助電源107-2に供給する。
【0130】
このように、
図3に示す電気式気動車10においては、低出力モードでは、エンジンユニット103を停止する停止気動車では、統合制御部102は、制動トルクを発生させ、その制動トルクによる回生電力を補助電源107へ供給する。また、エンジンユニット103が稼働する稼働電気車では、統合制御部102は、加速トルクから必要となる推進トルクに加えて、停止気動車で発生する制動トルクを打ち消す推進トルクが出力されるように、エンジンユニット103、発電機104およびコンバータ装置105を制御する。
【0131】
上述した処理により、
図11に示すように、低出力モードでは、インバータ装置108-2からは一定の回生電力が出力される。また、電気式気動車10-2で発生した制動トルクを電気式気動車10-1で打ち消しているため、見かけ上、電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に移動電力が供給されたこととなる。
<惰行モード>
惰行モードでは、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、惰行モードでは、
図12Cに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1およびインバータ装置108-1に供給される。
【0132】
また、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2の停止を指示する。また、統合制御部102―1は、回生電力による補助電源107-2への電力の供給のため、インバータ装置108-2の稼働を統合制御部102-2に指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1からの指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2を停止する。また、統合制御部102-2は、
図12Cに示すように、制動トルクによりインバータ装置108から回生電力を出力させ、その回生電力を、コンデンサ106-2を介して補助電源107-2に供給する。
【0133】
統合制御部102-1は、電気式気動車10-2で発生する制動トルクを打ち消す推進トルクが出力されるように、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を制御する。
【0134】
このように、
図3に示す電気式気動車10においては、惰行モードでは、エンジンユニット103を停止する停止気動車では、統合制御部102は、制動トルクを発生させ、その制動トルクにより回生電力により補助電源107を受電する。また、エンジンユニット103が稼働する稼働電気車では、統合制御部102は、停止気動車で発生する制動トルクを打ち消す推進トルクが出力されるように、エンジンユニット103、発電機104およびコンバータ装置105を制御する。
【0135】
上述した処理により、
図11に示すように、惰行モードでは、インバータ装置108-2からは一定の回生電力が出力される。また、電気式気動車10-2で発生した制動トルクを電気式気動車10-1で打ち消しているため、見かけ上、電気式気動車10-1から電気式気動車10-2に移動電力が供給されたこととなる。
【0136】
このように、
図3に示す電気式気動車10においては、統合制御部102は、自車が、エンジンユニット103が稼働している稼働気動車である場合、自車の稼働に必要な推進力とともに、エンジンユニット103を停止した停止気動車の補助電源107で必要な電力を供給可能な推進力が得られるようにエンジンユニット103を稼働する。また、統合制御部102は、自車が停止気動車である場合、稼働気動車の推進力により自車のインバータ装置108から得られた回生電力を、自車の補助電源107に供給する。
【0137】
<減速モード(回生>補助電源)>
運転台101-1から制動指令が入力されると、統合制御部102は、インバータ装置108、あるいは、空気制動装置111を制御し、車輪110に機械的な制動力を与える。車輪110に与える機械的な制動力を推進用モータ109およびインバータ装置108によって電気エネルギーへ変換し、インバータ装置108から回生電力がコンバータ装置105の方向に出力される。回生電力が補助電源107の電力よりも大きい場合、電気式気動車10-1,10-2は減速モード(回生>補助電源)となる。
【0138】
減速モード(回生>補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図12Dに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-1で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-1および発電機104-1を介してエンジンユニット103-1に入力され、エンジンユニット103-1のエンジンブレーキにより消費される。
【0139】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。こうすることで、減速モード(回生>補助電源)では、
図12Dに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。また、減速モード(回生>補助電源)では、回生電力が補助電源107-2で必要な電力を上回っているため、超過分のエネルギーがコンバータ装置105-2および発電機104-2を介してエンジンユニット103-2に入力され、エンジンユニット103-2のエンジンブレーキにより消費される。
【0140】
<減速モード(回生<補助電源)>
回生電力が補助電源107の電力よりも小さくなると電気式気動車10-1,10-2は減速モード(回生<補助電源)となる。
【0141】
減速モード(回生<補助電源)では、統合制御部102-1は、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1およびインバータ装置108-1を稼働する。これにより、減速モード(回生<補助電源)では、
図12Eに示すように、インバータ装置108-1から出力された回生電力が、コンデンサ106-1を介して、補助電源107-1に供給される。ここで、減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さい。そのため、統合制御部102-1は、補助電源107-1への電力供給のために、エンジンユニット103-1、発電機104-1、コンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図12Eに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。
【0142】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2およびインバータ装置108-2を稼働する。これにより、減速モード(回生<補助電源)では、
図12Eに示すように、インバータ装置108-2から出力された回生電力が、コンデンサ106-2を介して、補助電源107-2に供給される。ここで、減速モード(回生<補助電源)では、回生電力が補助電源107の電力よりも小さい。そのため、統合制御部102-2は、補助電源107-2への電力供給のために、エンジンユニット103-2、発電機104-2、コンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図12Eに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。
【0143】
<停車モード>
編成が動作を停止すると、電気式気動車10-1,10-2は停車モードとなる。
【0144】
停車モードでは、統合制御部102-1は、インバータ装置108-1を停止し、エンジンユニット103-1、発電機104-1およびコンバータ装置105-1を稼働する。こうすることで、
図12Fに示すように、エンジンユニット103-1からの出力が発電機104-1により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-1により直流電力に変換されて、補助電源107-1に供給される。
【0145】
また、統合制御部102-1は、統合制御部102-2にも同様の制御を行うよう指示する。統合制御部102-2は、統合制御部102-1の指示を受けて、インバータ装置108-2を停止し、エンジンユニット103-2、発電機104-2およびコンバータ装置105-2を稼働する。こうすることで、
図12Fに示すように、エンジンユニット103-2からの出力が発電機104-2により三相交流電力に変換され、その三相交流電力がコンバータ装置105-2により直流電力に変換されて、補助電源107-2に供給される。
【0146】
上述した各図を参照して説明した本開示に係る実施形態においては、電気式気動車10-1,10-2いずれか一方のエンジンユニット103を停止させる場合、主となる統合制御部102を備える電気式気動車10のエンジンユニット103に加減速トルクの出力を負担させる例を用いて説明したが、これに限られるものではない。加減速トルクの出力を負担させる電気式気動車10は、燃料残量の多い車両、乗車率の多い車両、台車過重の大きい車両、勾配を走行するのに適した車両など、種々の基準により決定してよい。また、加減速トルクの出力を負担させる電気式気動車10は、ランダムに決定してもよい。
【0147】
このように本実施形態においては、電気式気動車10は、統合制御部102を備える。統合制御部102は、編成全体で必要な加減速トルクを、編成を構成する複数の電気式気動車10の内の一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止しても出力可能である場合、一部の電気式気動車10のエンジンユニット103を停止させる。
【0148】
こうすることで、定常的な損失が支配的となって効率が低下する軽負荷状態で発電機104を動作させたり、熱効率の低下および排気管へのカーボン堆積が発生する軽負荷状態でエンジンユニット103を動作させたりすることが少なくなるため、燃費効率の向上を図ることができる。また、エンジンユニット103内部の制御などを変更する必要がないため、例えば、従来の液体式気動車からの転換の際の、コストの増大を抑制することができる。
【0149】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0150】
10-1,10-2,20-1,20-2 電気式気動車
3 連結器
4 電気連結器
5 通信線
6 高圧引き通し線
101-1,101-2 運転台
102-1,102-2,202-1,202-2 統合制御部
103-1,103-2 エンジンユニット
104-1,104-2 発電機
105-1,105-2 コンバータ装置
106-1,106-2 コンデンサ
107-1,107-2 補助電源
108-1,108-2 インバータ装置
109-1,109-2 推進用モータ
110-1,110-2 車輪
111-1,111-2 空気制動装置
112-1,112-2 機械ブレーキ
113-1,113-2 蓄電装置