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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084559
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】圧力調整弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20240618BHJP
   G05D 16/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F16K17/30 A
G05D16/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198886
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
(72)【発明者】
【氏名】當山 雄一郎
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB03
3H060CC03
3H060CC29
3H060DC06
3H060DC12
3H060DD02
3H060DD12
3H060EE06
5H316BB01
5H316DD01
5H316EE02
5H316EE10
5H316EE12
5H316GG01
5H316JJ01
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】ニードルシール部の外径を調整することにより、ニードルが加工公差を有する場合でも、二次側圧力による弁開圧力の変化を確実に抑制し得る圧力調整弁を提供することである。
【解決手段】弁ポート12を有するバルブ本体5と、ニードル30と、感圧部材41を有する感圧ユニット40と、調整ばねユニット50と、二次側圧力P2が導入される弁室13と、感圧部材41を収容する背圧室17と、背圧室17に一次側圧力P1を導入するために、弁ポート12と背圧室17とを連通する圧力導入路3a,10aと、ニードル30のニードルシール部34に設けられるとともに、背圧室17と弁室13とを区画するシール部材7と、を備え、ニードルシール部34の外径D4と弁ポート径D2とが略同一に形成される。これにより、二次側圧力P2による弁開圧力Popの変化を確実に抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ポートを有するバルブ本体と、
前記弁ポートに対し、離接可能な弁部を有するニードルと、
軸線方向に沿ってたわみ、前記弁部を付勢する感圧部材を有する感圧ユニットと、
前記感圧ユニットを介して、前記弁部を弁閉方向に付勢する調整ばねを有する調整ばねユニットと、
前記弁部が配置され、二次側圧力が導入される弁室と、
前記ニードルの前記調整ばねユニット側に位置し、前記感圧部材を収容する背圧室と、
前記背圧室に一次側圧力を導入するために、前記弁ポートと前記背圧室とを連通する圧力導入路と、
前記ニードルのニードルシール部に設けられるとともに、前記背圧室と前記弁室とを区画するシール部材と、
を備え、
前記ニードルシール部の外径と弁ポート径とが略同一に形成されることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記圧力導入路は、前記バルブ本体に設けられることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記一次側圧力を前記弁ポートに導入する一次側継手と、前記バルブ本体との間に継手コネクタを備え、
前記バルブ本体及び前記継手コネクタの少なくとも一方には、前記圧力導入路に連通する連通凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記一次側圧力を前記弁ポートに導入する一次側継手は、基部と、前記基部の内径より大きい内径を有し、前記圧力導入路に連通する接合部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の圧力調整弁。
【請求項5】
前記ニードルシール部の外径は、前記弁ポート径よりも僅かに大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整ばね及び感圧部材を備える圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力調整弁において、調整ばね及び感圧部材を備えることにより、圧力変動に応じて、弁開度を制御することが行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、図11(a)に示すように、圧力調整弁1100(以下、「従来の圧力調整弁」という)であって、弁座1118を有するバルブ本体1105と、弁座1118に対して離接可能な弁部1132を有するニードル1130と、軸線方向に弁部1132を付勢する、感圧用ベローズ1141を有する感圧ユニット1140と、弁部1132を弁閉方向に付勢する調整ばね1153を有する調整ばねユニット1150と、を備えるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-134450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の圧力調整弁では、図11(b)に示すように、感圧用ベローズ1141の有効受圧面積S1’を、弁座1118に囲まれる弁部1132の受圧面積S2’に一致させることにより、感圧用ベローズ1141及び弁部1132のそれぞれに作用する二次側圧力P2の影響をキャンセルしていた。これにより、調節ばね1153の付勢力を調整することで、弁開圧力を設定して、一次側圧力の変動に応じた弁開度を制御している。
【0006】
しかしながら、感圧用ベローズ1141は、加工公差のばらつきが比較的大きい成形方法(ロール成形法、プレス成型法、液圧成形法など)により製造される。よって、感圧用ベローズ1141の有効受圧面積S1’のばらつきが大きく、有効受圧面積S1’を、弁座1118に囲まれる弁部1132の受圧面積S2’に一致させること、つまり、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’を、弁ハウジング1110の弁ポート径D2’に一致させることは、極めて困難であった。
【0007】
また、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’を、弁ハウジング1110の弁ポート径D2’に一致させる際、既存の成形型を有する感圧用ベローズ(感圧用ベローズの平均内径が既知)の中から、所望の平均内径を有するものを選定しているが、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’は、その成形方法より、最小径に限界があった。
【0008】
したがって、例えば、従来の圧力調整弁において、小流量で用いられることが要求される場合であっても、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’に弁ポート径D2’を一致させるために、弁ポート径D2’を大径化する必要があり、適用可能な流量制御範囲の下限値および設計の自由度に制約が生じていた。
【0009】
以上より、従来の圧力調整弁では、感圧用ベローズ1141及び弁部1132のそれぞれに作用する二次側圧力P2の影響をキャンセルすることができず、二次側圧力P2の変動にともない、弁開圧力が著しく変化してしまうという問題(以下、「従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)」という)が生じていた。
【0010】
本発明の目的は、感圧用ベローズの平均内径に代えて、ニードルシール部の外径を調整することにより、ニードルが加工公差を有する場合でも、二次側圧力による弁開圧力の変化を確実に抑制し得る圧力調整弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、圧力調整弁は、弁ポートを有するバルブ本体と、前記弁ポートに対し、離接可能な弁部を有するニードルと、軸線方向に沿ってたわみ、前記弁部を付勢する感圧部材を有する感圧ユニットと、前記感圧ユニットを介して、前記弁部を弁閉方向に付勢する調整ばねを有する調整ばねユニットと、前記弁部が配置され、二次側圧力が導入される弁室と、前記ニードルの前記調整ばねユニット側に位置し、前記感圧部材を収容する背圧室と、前記背圧室に一次側圧力を導入するために、前記弁ポートと前記背圧室とを連通する圧力導入路と、前記ニードルのニードルシール部に設けられるとともに、前記背圧室と前記弁室とを区画するシール部材と、を備え、前記ニードルシール部の外径と弁ポート径とが略同一に形成される。
【0012】
また、上記圧力調整弁であって、前記圧力導入路は、前記バルブ本体に設けられるものとしてもよい。
【0013】
また、上記圧力調整弁であって、前記一次側圧力を前記弁ポートに導入する一次側継手と、前記バルブ本体との間に継手コネクタを備え、前記バルブ本体及び前記継手コネクタの少なくとも一方には、前記圧力導入路に連通する連通凹部が形成されているものとしてもよい。
【0014】
また、上記圧力調整弁であって、前記一次側圧力を前記弁ポートに導入する一次側継手は、基部と、前記基部の内径より大きい内径を有し、前記圧力導入路に連通する接合部と、を備えるものとしてもよい。
【0015】
また、上記圧力調整弁であって、前記ニードルシール部の外径は、前記弁ポート径よりも僅かに大きいものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、感圧用ベローズの平均内径に代えて、ニードルシール部の外径を調整することにより、ニードルが加工公差を有する場合でも、二次側圧力による弁開圧力の変化を確実に抑制し得る圧力調整弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力調整弁の弁閉状態を示す断面図である。
図2図1の領域IIにおける部分拡大図である。
図3図2のニードルに作用する外力の説明図(ニードルシール部の外径≒弁ポート径の場合)であり、(a)は、ニードル全体図、(b)は、(a)に示されるニードルシール部及び弁部に作用する圧力の模式図を、それぞれ表す。
図4】圧力調整弁における加工公差の影響を有する二次側圧力-弁開圧力特性図であり、(a)は、従来の圧力調整弁、(b)は、第1の実施形態の圧力調整弁を、それぞれ表す。
図5】第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁におけるニードルに作用する外力の説明図(ニードルシール部の外径>弁ポート径の場合)であり、(a)は、ニードル全体図、(b)は、(a)に示されるニードルシール部及び弁部に作用する圧力の模式図を、それぞれ表す。
図6図5に示す圧力調整弁における二次側圧力-弁開圧力特性図である。
図7】第2の実施形態に係る圧力調整弁の弁閉状態を示す断面図である。
図8図7の領域VIIIにおける部分拡大図である。
図9】第3の実施形態に係る圧力調整弁の弁閉状態を示す断面図である。
図10図9の領域Xにおける部分拡大図である。
図11】従来の圧力調整弁における弁閉状態を示す断面図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)の領域XIbにおける部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図1から図10を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0019】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「上」及び「下」とは、「調整ばねユニット側」及び「ニードル側」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端」及び「他端」とは、「ニードル側」及び「調整ばねユニット側」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「感圧用ベローズの有効受圧面積」とは、蛇腹形状の最小内径(感圧用ベローズの中心軸側に突出する蛇腹形状における「谷」部の内径)及び最大内径(感圧用ベローズの中心軸側の中心軸から離れる方向に突出する蛇腹形状の「山」部の内径)の平均内径に基づいて算出した近似値としての受圧面積を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「案内可能」とは、「摺動可能」を含むものを示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「凹凸係合」とは、軸線方向へと窪む形状及び突出する形状がそれぞれ係合するものを示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「ニードルシール部の外径と弁ポート径とが略同一」及び「ニードルシール部の外径は、弁ポート径よりも僅かに大きく」とは、弁ポート径に対するニードルシール部の外径の比をXとすると、「0.8<X<1.2の範囲に含まれるもの」及び「1<X<1.2の範囲に含まれるもの」を示す。
【0020】
(第1の実施形態)
<圧力調整弁の構成について>
図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係る圧力調整弁100Aについて説明する。圧力調整弁100Aは、バルブ本体5、ニードル(弁体)30、感圧ユニット40、調整ばねユニット50から主に構成される。以下、圧力調整弁100Aのそれぞれの構成に、下部接続手段60及び上部接続手段70を加えて順に説明する。なお、圧力調整弁100Aにおいて、ニードル30、感圧ユニット40、調整ばねユニット50の順に、一端側から他端側へと間接的に係合した状態で、バルブ本体5へと組付けられる。
【0021】
ここで、詳細は後述するが、本実施形態の圧力調整弁100Aは、図3(b)に示すように、ニードルシール部34の受圧面積S4を、流量基準となる弁座部材18に囲まれる弁部32の受圧面積S2と略同一(つまり、ニードルシール部34の外径D4を、弁ポート径D2と略同一)になるように調整するものである。これにより、本実施形態の圧力調整弁100Aは、二次側圧力P2の影響を比較的簡単に抑制し、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消することができる。
【0022】
まず、バルブ本体5は、継手コネクタ3と、弁座部材18と、継手コネクタ3及び弁座部材18が固定される下バルブ本体10と、この下バルブ本体10の他端部にろう付けや溶接等により結合された上バルブ本体15と、この上バルブ本体15の他端部にかしめ等により結合されたばねケース20と、から構成される。このバルブ本体5は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料等、適宜な材質で構成される。
【0023】
継手コネクタ3は、一端側に、流入管1(一次側継手)と接続する入口ポート11aを有するとともに、他端側に、円形形状に窪む連通凹部3aを有する。
【0024】
本実施形態において、継手コネクタ3と下バルブ本体10とを別部材とし、この継手コネクタ3に対して、簡単な機械加工で連通凹部3aを形成することにより、従前施されていた、下バルブ本体10への後述の圧力導入路としてのすり割り加工などを不要とし、加工時間を短縮できるとともに、形成された連通凹部3aを容易に視認することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、継手コネクタ3の連通凹部3aを、円形形状の窪みとするものであるが、これに限らず、例えば、直線形状の窪みなど、入口ポート11aと均圧路10aとを連通する形状であればよい。また、本実施形態では、継手コネクタ3に、入口ポート11aと均圧路10aとを連通する連通凹部3aを設けるものであるが、これに限らず、例えば、継手コネクタ3の連通凹部3aに代えて、下バルブ本体10の一端側に円形形状に窪む連通凹部10d(図8参照)を形成してもよいし、継手コネクタ3及び下バルブ本体10のそれぞれに、連通凹部3a及び連通凹部10dを形成してもよい。
【0026】
弁座部材18は、内部を貫通する弁ポート12を有し、弁室13と弁ポート12との接続部には、環状の弁座18aが設けられる。
【0027】
下バルブ本体10は、中心軸線Cに沿う貫通孔を有し、この貫通孔には、中心軸線Cに沿って、他端側から一端側へと階段状に順次拡径する複数の環状段部が形成される。この複数の環状段部には、他端側から一端側に向かって順に、ニードル案内孔14及び弁室13が画定されるとともに、連続する一端側の環状段部には、さらに、弁座部材18及び継手コネクタ3がそれぞれ挿入及びろう付けなどにより固定される。また、下バルブ本体10には、ニードル案内孔14の他端側に、ニードル案内孔14より内径が大きく設定されるシール収容溝10cが形成される。また、下バルブ本体10は、他端側の貫通孔の外周側に、弁ばね6の一端側を支持し、弁ばね6を収容する円筒形状のばね収容溝10bと、ばね収容溝10bに連通し、中心軸線Cと平行な方向に沿って延在する均圧路10a(圧力導入路)と、を備える。加えて、下バルブ本体10は、弁室13から半径方向へと貫通する貫通孔を有し、この貫通孔には、流出管2と接続する出口ポート11bが設けられる。
【0028】
なお、本実施形態では、弁座部材18と下バルブ本体10とを別体とすることにより、比較的深い弁室13への中グリ加工を不要にするととともに、下バルブ本体10の出口ポート11bへのアクセスが容易となるため、バリ除去の作業効率を向上させることができる。
【0029】
上バルブ本体15は、中空円筒状の部材からなり、中心軸線Cに沿って、感圧ユニット40を収容する背圧室17を備える。
【0030】
この下バルブ本体10及び上バルブ本体15は、弁閉状態において、一次側圧力P1及び二次側圧力P2のそれぞれを導入する2つの圧力導入路を有する。
【0031】
まず、第1の圧力導入路は、弁閉状態において、一次側圧力P1を入口ポート11aから背圧室17まで導入するものであり、連通凹部3a、均圧路10a、及び、ばね収容溝10bを介して連通する。なお、一次側圧力P1が導入される背圧室17は、シール収容溝10cと連通する。また、第1の圧力導入路中には、弁ばね6が介在するが、流路を完全に塞がないように配置されるため、背圧室17に一次側圧力P1を確実に導入することができる。
【0032】
また、第2の圧力導入路は、弁閉状態において、二次側圧力P2を出口ポート11bからシール収容溝10cまで導入するものであり、弁室13、及び、ニードル案内孔14とニードルガイド部31との間に形成される間隙を介して連通する。
【0033】
この2つの圧力導入路の他端側は、シール収容溝10cに配置されるシール部材7により、常時、非連通状態となるように区画される。これにより、弁閉状態において、背圧室17には、入口ポート11aを介して、一次側圧力P1を導入できるとともに、シール部材7の一端側に位置するシール収容溝10cには、出口ポート11bを介して、二次側圧力P2を導入できる。
【0034】
このように、本実施形態では、圧力導入路となる均圧路10aが下バルブ本体10に形成されており、図11(a)に示される、従来の圧力調整弁1100のように、ニードル30に圧力導入路を設ける必要がないため、ニードル30及び弁ポート12の細径化を図ることができ、結果、圧力調整弁100Aを小型化及び小流量に対応させることができるとともに、ニードル30の形状の簡素化も図れる。
【0035】
ばねケース20は、中心軸線Cに沿って貫通する貫通孔を有する中空円筒状の部材で、ばね収容室21が設けられる。また、ばねケース20の他端部の内周側には、雌ねじ部22が設けられ、調整ねじ部材52の外周側に設けられる雄ねじ部52aと、軸方向に移動可能に螺合される。この螺合部を介し、ばね収容室21には常時大気が導入される。
【0036】
次に、ニードル30について説明する。ニードル30は、ステンレス等の金属で構成され、一端側に設けられる略円錐台形状の弁部32と、他端側に設けられ、ステンレス鋼の薄板からなるばね支持部33と、弁部32とばね支持部33との間に設けられる円柱形状のニードルガイド部31と、シール収容溝10cと対向する位置に設けられるニードルシール部34と、を備える。このニードルシール部34は、ニードル30の一部を縮径させるものであり、ニードルシール部34の外径D4(図3(a)参照)は、ニードルガイド部31の外径D3(図3(a)参照)より小さく設定される。ここで、ニードルシール部34とシール収容溝10cとの隙間には、この隙間より、僅かに大きな半径方向厚みを有する環形状のシール部材7(例えば、Oリングなど)が配置される。これにより、シール部材7の内周面及び外周面は、常時、ニードルシール部34及びシール収容溝10cに、それぞれ接触するため、弁室13と背圧室17とを非連通状態で区画することができる。なお、シール部材7は、低摩擦性を有する材料(例えば、フッ素ゴムなど)からなるため、シール部材7に対するニードル30の摩擦抵抗を、極めて小さくすることができる。
【0037】
本実施形態におけるシール部材7の保持手段は、下バルブ本体10に、シール部材7を収容するシール収容溝10cを設けるものであるが、これに限らず、例えば、ニードル30に、シール部材7を収容するシール収容溝を設けるものや、下バルブ本体10及びニードル30の両方に、シール部材7を収容するシール収容溝を設けるものであってもよい。
【0038】
ニードルガイド部31が、下バルブ本体10のニードル案内孔14内を軸方向に案内可能に配置される。ここで、ニードルガイド部31の外径D3とニードル案内孔14の内径との間に形成される間隙は、比較的小さくなるように設定されており、厳密な加工公差の管理が行われている。また、ニードル30は、ニードル30のばね支持部33と下バルブ本体10のばね収容溝10bの底面との間に挟持された弁ばね6により、常時、弁開方向へと付勢される。このように、ニードル30は、軸方向に安定した状態でガイドされており、中心軸線C方向からみた、ニードル30と弁座18aとの中心位置は常に一致するため、流量の安定化及び弁漏れ性を向上させることができる。
【0039】
ニードル30の軸方向への移動については、詳細は後述するが、一次側圧力P1と二次側圧力P2との圧力差や、弁部32の他端部に作用する感圧用ベローズ41及び調整ばね53の付勢力や、ばね支持部33に作用する弁ばね6の付勢力などにより生じる。これらの外力により、弁部32が弁座18aに対して離接可能に移動し、弁開度が決まる。ここで、連結棒45の段差部45cがベローズ上蓋43と当接することにより、ニードル30の弁閉状態から最大弁リフト状態となる弁全開状態までの最大弁リフト量が規定される。なお、本実施形態の圧力調整弁100Aにおいては、最大弁リフト状態となる弁全開状態とは別に、連結棒45の段差部45cがベローズ上蓋43と当接する手前に、規定の流量が流れる弁開量の状態となる弁全開状態がある。
【0040】
続いて、感圧ユニット40について説明する。感圧ユニット40は、感圧用ベローズ(感圧部材)41と、ベローズ上蓋43と、中心軸線Cに沿って延在する一端部及び他端部を有する連結棒45と、から構成される。この感圧用ベローズ41は、中心軸線Cに沿って延在する一端部及び他端部を、連結棒45の一端部及びベローズ上蓋43にそれぞれ接続させるとともに、弁部32を弁閉方向に付勢する。感圧ユニット40は、ステンレス等の金属で構成されており、上バルブ本体15の背圧室17内に収容される。なお、本実施形態では、感圧用ベローズ41が自由長に対して縮めた状態で、背圧室17内に組み込むことにより、感圧用ベローズ41が弁部32を弁閉方向に付勢するものである。しかしながら、これに限らず、感圧用ベローズ41を自由長に対して伸ばした状態で、背圧室17内に組み込むことにより、感圧用ベローズ41が弁部32を弁開方向に付勢するものであってもよい。
【0041】
感圧用ベローズ41は、連結棒45の一端部及びベローズ上蓋43のそれぞれと接続されることにより、感圧用ベローズ41の外部空間には、入口ポート11a、連通凹部3a、均圧路10a、ばね収容溝10b、及び、背圧室17を介して、常時、一次側圧力P1が導入される。一方、感圧用ベローズ41の内部空間には、連結棒45の小径部45bとベローズ上蓋43の挿通孔43aとの間に形成された間隙、及び、上ボール73とベローズ上蓋43の摺動部43cとの間に形成された間隙を介して、常時大気が導入される。また、この感圧用ベローズ41において、蛇腹形状の山部の外径及び谷部の内径は、上バルブ本体15及び連結棒45のそれぞれと、常時、非接触状態となるように各部の寸法関係が設定される。
【0042】
連結棒45は、軸方向の一端側へ延在する略円柱形状の大径部45aと、大径部45aから軸方向の他端側へ延在する略円柱形状の小径部45bと、を備える。大径部45aの一端部には、径方向へと突出するとともに、感圧用ベローズ41の一端部が接続されるフランジ部45dが形成される。また、大径部45aと小径部45bとの間には、環状の段差部45cが形成される。
【0043】
ベローズ上蓋43は、中心軸線Cに沿って同心上に延在し、連結棒45の小径部45bが挿通する挿通孔43aと、感圧用ベローズ41の他端部が接続されるベローズ上蓋接合部43bと、中心軸線Cに沿って同心上に延在し、挿通孔43aより内径が大きく設定されるとともに、連結棒45の小径部45bが挿通し、上ボール73が摺動する円筒形状の摺動部43cと、を備える。ここで、感圧ユニット40は、バルブ本体5に対して、溶接部wを介して、相対変位不能に固定される。この溶接部wは、ベローズ上蓋43及び上バルブ本体15の他端部同士を、互いに溶接した領域を示す。この溶接部wの軸方向の位置を調整することにより、感圧ユニット40の長さの個体差や、バルブ本体5への組付け誤差などを吸収することができる。
【0044】
本実施形態において、感圧ユニット40の一端側は、感圧用ベローズ41と連結棒45のフランジ部45dとを接続した構成となっているが、これに限らない。例えば、有蓋形状の下端部を有する感圧用ベローズ41、または、連結棒45の一端部からフランジ部45dを分離した様態のベローズ下蓋を採用し、連結棒45からフランジ部45dを省略するとともに、この有蓋形状の下端部またはベローズ下蓋に、連結棒45の一端部を接続した構成としてもよい。なお、連結棒45の一端部を、有蓋形状の下端部またはベローズ下蓋に対して、半径方向に移動可能な接続形態とすることにより、連結棒45の中心軸線Cに対する傾きや、感圧用ベローズ41の非対称性などを吸収することができる。
【0045】
本実施形態において、感圧ユニット40の他端側は、感圧用ベローズ41とベローズ上蓋43とを接続した構成となっているが、これに限らない。例えば、フランジ形状の上端部を有する感圧用ベローズ41を採用し、ベローズ上蓋43を省略するとともに、感圧用ベローズ41の上端部における外縁を、バルブ本体5である上バルブ本体15の内壁に相対変位不能に固定し、上バルブ本体15をベローズ上蓋43として用いた構成でもよい。このように、感圧用ベローズ41の上端部を、上バルブ本体15の内壁に固定した場合は、ベローズ上蓋43の挿通孔43a及び摺動部43cは、上バルブ本体15の内壁に形成される。
【0046】
さらに、下部接続手段60について説明する。この下部接続手段60は、ニードル30及び感圧ユニット40における軸方向対向面に形成される一対の窪み部61,62と、この一対の窪み部61,62の間に、凹凸係合を形成するように挟持される下ボール63と、から構成される。この一対の窪み部61,62は、ニードル30の上端面及び大径部45aの下端面における軸心部に形成されており、円錐形状の下側窪み部61及び上側窪み部62から構成される。この円錐形状は、中心軸線Cと同心円に形成された底面と、中心軸線C上に位置する頂点とを有している。また、下ボール63は、ステンレス等の金属で構成される。
【0047】
これにより、ニードル30は、下バルブ本体10のニードル案内孔14内に、中心軸線Cに沿って案内可能に配置されるため、下側窪み部61の中心位置は、常時、中心軸線C上に位置している。また、上側窪み部62の中心位置は、下側窪み部61及び下ボール63を介して、上側窪み部62に求心作用が働くため、中心軸線C上に自立的に配置される。これにより、感圧用ベローズ41の非対称性などに起因した、中心軸線Cに沿わない付勢力が、ニードル30に伝達されることを抑制し、ニードル30の摺動抵抗を減少させることができる。なお、本実施形態において、下側窪み部61、上側窪み部62は、それぞれ円錐形状を有するものであるが、これに限らず、例えば、球面形状を有するものであってもよい。
【0048】
加えて、調整ばねユニット50について説明する。調整ばねユニット50は、ばね受け部材51と、調整ねじ部材52と、ばね受け部材51及び調整ねじ部材52の間に挟持され、弁部32を弁閉方向に付勢する調整ばね53と、から構成される。ばね受け部材51及び調整ねじ部材52は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料等、適宜な材質で構成されており、ばねケース20のばね収容室21内に収容される。この調整ねじ部材52の外周側に設けられる雄ねじ部52aと、ばねケース20の他端部の内周側に設けられる雌ねじ部22とを螺合させ、調整ねじ部材52を軸方向に移動させることにより、調整ばね53の付勢力を調整し、ニードル30が弁開する圧力(設定値)を調整することができる。
【0049】
調整ばね53は、多重巻型ウェーブスプリング(以下、「ウェーブスプリング」という)であり、ステンレス等の金属で構成される。このウェーブスプリングは、断面形状が矩形状の線材を、正弦波形状に所定のピッチで褶曲させ、ばね中心軸方向に対向する山部及び谷部を互いに接触及び離間させる接触部及び離間部が巻回方向に交互に形成され、全体として円筒形状に形成される。よって、ウェーブスプリングが圧縮される際に、複数の接触部が常時支点となるため、サイドフォースを抑制し、中心軸線Cに沿って付勢力を確実に伝達することができる。
【0050】
最後に、上部接続手段70について説明する。上部接続手段70は、連結棒45及びばね受け部材51における軸方向対向面に形成される一対の係合部71,72と、この一対の係合部71,72の間に、凹凸係合を形成するように挟持され、球形状を有する上ボール73と、から構成される。この一対の係合部71,72は、小径部45bの上端面及びばね受け部材51の下端面における軸心部に形成されており、円錐形状の下側係合部71及び上側係合部72から構成される。この円錐形状は、中心軸線Cと同心円に形成された底面と、中心軸線C上に位置する頂点とを有している。また、上ボール73は、ステンレス等の金属で構成される。
【0051】
ここで、中心軸線C方向からみて、上ボール73における円形状の側部の半径は、摺動部43cの半径より僅かに小さく設定されているため、上ボール73の側部と、摺動部43cとの間には、極めて狭い間隙が形成されている。よって、上ボール73の側部は、摺動部43cと、常に点接触状態になり、半径方向への移動を規制されるため、上ボール73の中心位置は、常時、中心軸線C上近傍に配置される。また、下側係合部71及び上側係合部72の中心位置は、半径方向への移動が規制されている上ボール73を介して、下側係合部71及び上側係合部72にそれぞれ求心作用が働くため、中心軸線C上近傍に自立的に配置される。さらに、連結棒45の小径部45bは、挿通孔43aに対して、非接触状態で、中心軸線Cに沿って挿通されるように設定されている。このように、上部接続手段70は、連結棒45が中心軸線Cに対して傾くことを抑制するとともに、摺動部43cとの摺動抵抗を減少させ、ヒステリシスを低減させることができる。
【0052】
<圧力調整弁の動作について>
圧力調整弁100Aの動作について説明する。ここで、圧力調整弁100Aが用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。圧力調整弁100Aにおいて、入口ポート11aは、高圧(一次側圧力P1)側の流入管1と接続され、出口ポート11bは、低圧(二次側圧力P2)側の流出管2と接続される。
【0053】
(一次側圧力P1が設定値(弁開圧力)よりも低い場合)
一次側圧力P1が設定値よりも低い場合(例えば、圧縮機の吐出圧力が低下した状態など)には、図2に示すように、弁部32が弁座18aに着座しており、弁閉状態となっている。その際、一次側圧力P1は、入口ポート11a、連通凹部3a、均圧路10a、及び、ばね収容溝10bを介して、背圧室17である感圧用ベローズ41の外部空間に導入される。
【0054】
まず、感圧用ベローズ41には、弁部32が弁開する方向に作用する力として、一次側圧力P1×有効受圧面積S1(図2参照)が生じている。ここで、感圧用ベローズ41の有効受圧面積S1とは、蛇腹形状の最小内径及び最大内径の平均内径に基づいて算出した受圧面積である。
【0055】
次に、ニードル30には、圧力により、弁部32が弁開する方向に作用する力として、一次側圧力P1×受圧面積S2(図3(b)参照)、及び、二次側圧力P2×受圧面積(S3-S2)(図3(b)参照)が生じている。一方、圧力により、弁部32が弁閉する方向に作用する力として、一次側圧力P1×受圧面積S4(図3(b)参照)、及び、二次側圧力P2×受圧面積(S3-S4)(図3(b)参照)が生じている。さらに、ニードル30には、弁部32が弁閉する方向に作用する力として、感圧用ベローズ41による付勢力F1及び調整ばね53の付勢力F2が負荷される。その他に、ニードル30には、弁部32が弁開する方向に作用する力として、弁ばね6の付勢力が負荷される。この弁ばね6による付勢力は、ニードル30の自重を打ち消す程度のものであるため、下記の(式1)には導入しない。また、シール部材7は、低摩擦性を有する材料からなり、ニードル30に対する摩擦抵抗は極めて小さいため、下記の(式1)には導入しない。
【0056】
したがって、圧力調整弁100Aのニードル30に作用する外力の釣り合いは以下のように表すことができる。なお、左辺が弁開する方向の力であり、右辺が弁閉する方向の力である。
P1×S1+P1×S2+P2×(S3-S2)=P1×S4+P2×(S3-S4)+F1+F2 (式1)
ここで、P1:一次側圧力[N/mm2
P2:二次側圧力[N/mm2
S1:感圧用ベローズ41の有効受圧面積[mm2
S2:弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積[mm2
S3:ニードルガイド部31の受圧面積[mm2
S4:ニードルシール部34の受圧面積[mm2

F1:感圧用ベローズ41による付勢力[N]
F2:調整ばね53の付勢力[N]
【0057】
(式1)は、以下のように整理することができる。
P1×S1=(S4-S2)×(P1-P2)+F1+F2 (式2)
P1×(S1+S2-S4)=P2×(S2-S4)+F1+F2 (式3)
P1=P2×(S2-S4)/(S1+S2-S4)+(F1+F2)/(S1+S2-S4) (式4)
【0058】
ここで、理想的には、ニードルシール部34の有効受圧面積S4は、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2と一致するように設定される(S2=S4)。
【0059】
したがって、(式4)はさらに、以下のように整理することができる。
P1=(F1+F2)/S1 (式5)
【0060】
(式5)が示すように、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2及びニードルシール部34の有効受圧面積S4を一致させることにより、二次側圧力P2の影響を打ち消すことができる。
【0061】
(一次側圧力P1が設定値(弁開圧力)よりも高い場合)
一次側圧力P1が設定値((F1+F2)/S1)よりも高い場合(例えば、圧縮機の吐出圧力が増加した状態など)には、不図示であるが、弁部32が弁座18aから離間しており、弁開状態となっている。この際、一次側圧力P1の増加にともない弁開度が大きくなる。ここで、本実施形態の圧力調整弁100Aは、感圧部材として、感圧用ベローズ41を用いることにより、大きな弁リフト量を得ることができる。
【0062】
なお、感圧用ベローズ41の有効受圧面積S1は、図2に示すように、π/4×D12であり、D1は、感圧用ベローズ41の平均内径を示す。また、ニードル30の受圧面積S2、受圧面積S3、及び、受圧面積S4は、図3(a),(b)に示すように、それぞれ、π/4×D22、π/4×D32、及び、π/4×D42であり、D2は、弁ポート径、D3は、ニードルガイド部31の外径、D4は、ニードルシール部34の外径をそれぞれ示す。
【0063】
<加工公差の影響を有する二次側圧力-弁開圧力特性について>
ここから、従来の圧力調整弁1100、及び、本実施形態の圧力調整弁100Aの順に、図11及び図3図4を用いて、加工公差の影響を有する二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性について説明する。なお、図4(a),(b)において、aは、弁ポート径D2,D2’の加工公差による影響、bは、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’の加工公差による影響、cは、ニードルシール部34の外径D4の加工公差による影響を、それぞれ表す。また、図4(a),(b)における二次側圧力-弁開圧力特性は、説明のために、加工公差の影響を誇張して示すものである。
【0064】
まず、前述したように、従来の圧力調整弁1100では、感圧用ベローズ1141及び弁部1132のそれぞれに作用する二次側圧力P2の影響をキャンセルするために、図11(b)に示すように、感圧用ベローズ1141の有効受圧面積S1’を、弁座1118に囲まれる弁部1132の受圧面積S2’に一致させること、つまり、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’を、弁ハウジング1110の弁ポート径D2’に一致させることを行っていた。しかしながら、従来の圧力調整弁1100では、特に、感圧用ベローズ1141における加工公差のばらつきが比較的大きいため、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を有していた。
【0065】
このため、図4(a)に示すように、従来の圧力調整弁1100における二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性(以下、「従来の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性」という)は、弁ポート径D2’の加工公差による影響a、及び、感圧用ベローズ1141の平均内径D1’の加工公差による影響bが重層される。ここで、弁ポート径D2’における切削加工に対し、感圧用ベローズ1141は、加工公差のばらつきが比較的大きい成形方法により成形されるので、感圧用ベローズ1141の加工公差は、弁ポート径D2’の加工公差と比べ、数十倍大きくなっている。
【0066】
よって、従来の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性は、感圧用ベローズ1141の加工公差による影響bが支配的となり、二次側圧力P2=0における設定された弁開圧力Psopを起点として、二次側圧力P2の増加にともない、比較的大きく増加(図中の破線)又は減少(実線)していた。このため、従来の圧力調整弁1100では、二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性が、理想(所望)の弁開圧力特性(圧力Popが一定)と比べ、大きいばらつきを有するため、個体差が比較的大きいものとなっていた。
【0067】
これに対し、本実施形態の圧力調整弁100Aでは、加工公差を考慮しているため、ニードルシール部34及び弁部32のそれぞれに作用する二次側圧力P2の影響を完全にキャンセルすることはできないものの、二次側圧力P2の影響を確実に抑制しようとするものである。本実施形態の圧力調整弁100Aでは、図3(b)に示すように、ニードルシール部34の受圧面積S4と、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2とを略同一にすること、つまり、ニードルシール部34の外径D4と、弁ポート径D2とを略同一にするものである。なお、本実施形態において、「ニードルシール部34の外径D4と弁ポート径D2とを略同一」とは、具体的には、弁ポート径D2に対するニードルシール部34の外径D4の比をXとすると、「0.8<X<1.2の範囲に含まれるもの」である。また、本実施形態の圧力調整弁100Aにおける、ニードル30に作用する外力の釣り合いの式は、(式4)となっている。
【0068】
よって、図4(b)に示すように、本実施形態の圧力調整弁100Aにおける二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性(以下、「本実施形態の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性」という)は、弁ポート径D2の加工公差による影響a、及び、ニードルシール部34の外径D4の加工公差による影響cが重層される。ここで、ニードルシール部34の外径D4の加工公差は、弁ポート径D2の加工公差と同じ、機械加工(例えば、切削加工など)であるから、従来の感圧用ベローズ1141の平均内径D1’の加工公差のばらつきが比較的大きい成形方法における加工公差と比べて、極めて小さくすることができる。
【0069】
このため、本実施形態の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性は、二次側圧力P2=0における設定された弁開圧力Psopを起点として、二次側圧力P2の増加にともない、弁開圧力Popが僅かに増加(図中の破線)又は減少(実線)するものとなる。これにより、本実施形態の圧力調整弁100Aでは、従来の圧力調整弁1100と比べ、二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性のばらつき、つまり、個体差を極めて小さくすることができる。
【0070】
以上より、本実施形態における圧力調整弁100Aは、ニードルシール部34の外径D4と弁ポート径D2とを略同一に形成することと、(式1)における左辺の弁開する方向の力の主体となる感圧用ベローズ41に作用する圧力が、従来の圧力調整弁1100の二次側圧力P2から、本実施形態における圧力調整弁100Aは一次側圧力P1としたことにより、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消することができる。また、本実施形態では、圧力導入路となる均圧路10aが下バルブ本体10に形成されており、ニードル30に圧力導入路を設ける必要がないため、ニードル30及び弁ポート12の細径化を図ることができ、結果、圧力調整弁100Aを小型化及び小流量に対応させることができる。
【0071】
(第1の実施形態の変形例)
図5及び図6を用いて、第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁100A’について説明する。なお、第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁100A’は、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定しニードルガイド部31の外径D3と同一径としている点で、第1の実施形態の圧力調整弁100Aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
<新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)について>
第1の実施形態における圧力調整弁100Aは、図4(b)で示したように、加工公差を考慮した上で、ニードルシール部34の外径D4と弁ポート径D2とを略同一に形成することにより、二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性のばらつきを極めて小さくし、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消するものである。
【0073】
ここで、第1の実施形態における圧力調整弁100Aは、例えば、冷媒回路などに配置されるため、弁開圧力Popが、二次側圧力P2によらず、設定された弁開圧力Psop(所望の一次側圧力P1)で弁が開き始めることが要求される。この冷媒回路の強度設計において、冷媒回路に接続される流体機器及び配管は、冷媒回路の最大許容圧力Paに所定マージンαを加えた圧力(以下、「最大許容圧力(マージン含む)という」)(Pa+α)を基準として選定される。ここで、圧力調整弁100Aにおける設定された弁開圧力Psopは、当然に、最大許容圧力Paより低くなるように設定される(設定された弁開圧力Psop<最大許容圧力Pa<最大許容圧力(マージン含む)(Pa+α))。
【0074】
まず、図4(b)の実線で示す二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性のように、二次側圧力P2が増加するにつれて、弁開圧力Popが減少する場合には、弁開圧力Popが、最大許容圧力Paを越えることがないため、問題にはならない。
【0075】
一方、図4(b)の破線で示す二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性のように、二次側圧力P2が増加するにつれて、弁開圧力Popが増加する場合には、弁開圧力Popが、最大許容圧力(マージン含む)(Pa+α)を越え、特に、圧力調整弁100Aの一次側に流体接続される流体機器及び配管(以下、「一次側流体機器」という)が破損するおそれがあった(以下、「新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)」という)。また、これに対し、一次側流体機器の選定する際に、所定マージンαを大きくすることも考えられるが、一次側流体機器のコスト高を引き起こすおそれがあるため、所定マージンαは、可能な限り小さな値に収めることが望まれる。
【0076】
これに対し、第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁100A’では、図5に示すように、前述の新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)を解消するために、ニードルシール部34’の受圧面積S4’を、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2よりも僅かに大きく設定する、つまり、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定するものである。
【0077】
<具体的な寸法設定(D4’>D2)手段について>
ここで、ニードルシール部34’の外径D4’及び弁ポート径D2は、それぞれ、機械加工による加工公差を有した値である。よって、具体的な寸法設定(D4’>D2)手段として、予め、ニードルシール部34’の外径D4’と弁ポート径D2との目標値の差を、加工公差より大きく設定するものである。例えば、ニードルシール部34’の外径D4’と弁ポート径D2との目標値を、それぞれ、3.5mmと3mmとに設定し、切削等の機械加工を施すことにより、ニードルシール部34’の外径D4’及び弁ポート径D2が、それぞれ、例えば、±0.01mm程度の加工公差を有したとしても、確実に、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定することができる。なお、本実施形態において、「ニードルシール部34’の外径D4’は、弁ポート径D2よりも僅かに大きい」とは、具体的には、弁ポート径D2に対するニードルシール部34’の外径D4’の比をXとすると、「1<X<1.2の範囲に含まれるもの」である。
【0078】
<二次側圧力-弁開圧力特性について>
図6に示される、第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁100A’における二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性(以下、「変形例の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性」という)は、(式4)における、S4をS4’としたもの、つまり、以下の(式6)に基づくものである。
P1=P2×(S2-S4’)/(S1+S2-S4’)+(F1+F2)/(S1+S2-S4’)(式6)
【0079】
この(式6)において、右辺の二次側圧力P2は、(S2-S4’)/(S1+S2-S4’)の傾きを有する。この傾きの分母(S1+S2-S4’)は、常に正に設定されることから、傾きの分子(S2-S4’)の符号により、変形例の二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性が、正又は負の傾きを有するものかが定まる。
【0080】
ここで、図6に示すように、変形例に係る圧力調整弁100A’とは異なるが、仮に、ニードルシール部34’の受圧面積S4’’を、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2よりも小さく設定する場合(ニードルシール部34’の外径D4’’<弁ポート径D2)には、二次側圧力P2の傾きは、常に、正となり、図6の破線で示す二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性となる。
【0081】
一方、変形例に係る圧力調整弁100A’のように、ニードルシール部34’の受圧面積S4’を、弁座18aに囲まれる弁部32の受圧面積S2よりも僅かに大きく設定する場合(ニードルシール部34’の外径D4’>弁ポート径D2)には、二次側圧力P2の傾きは、常に、負となり、図6の実線で示す二次側圧力P2-弁開圧力Pop特性となる。
【0082】
以上より、第1の実施形態の変形例に係る圧力調整弁100A’では、第1の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消することができる。加えて、第1の実施形態の変形例では、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定することにより、新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)を解消し、設定された弁開圧力Psop(所望の一次側圧力P1)以下で、確実に弁が開き始めるため、圧力調整弁100A’を、安全弁や、液封防止弁として用いることができる。
【0083】
(第2の実施形態)
ここで、図7及び図8を用いて、第2の実施形態における圧力調整弁100Bについて説明する。この第2の実施形態における圧力調整弁100Bは、主に、下バルブ本体10に形成される均圧路10aに代え、別部材である細管4を採用している点で、第1の実施形態における圧力調整弁100Aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0084】
<背圧室への圧力導入路について>
第2の実施形態における入口ポート11aから背圧室17までの圧力導入路は、連通凹部10d、第1の連通孔10e、細管4、第2の連通孔10f、及び、ばね収容溝10bを介して連通する。
【0085】
連通凹部10dは、下バルブ本体10’に形成されており、弁座部材18及び継手コネクタ3’がそれぞれ挿入される環状段部の間に形成された円環形状の窪みからなる。
【0086】
本実施形態において、継手コネクタ3と下バルブ本体10’とを別部材とし、この下バルブ本体10’に対して、簡単な機械加工で連通凹部10dを形成することにより、従前施されていた、下バルブ本体への圧力導入路としてのすり割り加工などを不要とし、加工時間を短縮できるとともに、形成された連通凹部10d容易に視認することができる。
【0087】
第1の連通孔10e及び第2の連通孔10fは、下バルブ本体10’の側壁から連通凹部10d及びばね収容溝10bのそれぞれへと連通するものであり、それぞれの外部への開口部は、若干拡径となるように形成される。
【0088】
細管4は、管部材をC字形状に加工したものからなり、両端部が、第1の連通孔10e及び第2の連通孔10fの開口部にろう付けなどにより固定される。
【0089】
なお、本実施形態では、下バルブ本体10の連通凹部10dを、円環形状の窪みとするものであるが、これに限らず、例えば、直線形状の窪みなど、入口ポート11aと細管4とを互いに連通する形状であればよい。また、本実施形態では、下バルブ本体10に、入口ポート11aと細管4とを連通する連通凹部10dを設けるものであるが、これに限らず、例えば、下バルブ本体10の連通凹部10dに代えて、継手コネクタ3に連通凹部3a(図2参照)を形成してもよいし、継手コネクタ3及び下バルブ本体10のそれぞれに、連通凹部3a及び連通凹部10dを形成してもよい。さらに、本実施形態において、細管4は、中心軸線Cを中心として、流出管2が設けられる側面とは、反対側の側面に設けられるものであるが、これに限らず、細管4が、流出管2と干渉しない限り、いかなる位置に設けられてもよい。
【0090】
以上より、第2の実施形態における圧力調整弁100Bは、第1の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消することができる。加えて、第2の実施形態では、圧力導入路となる細管4が、下バルブ本体10とは別部材であるため、下バルブ本体10への加工コストを低減させることができ、また、下バルブ本体10及びニードル30に圧力導入路を設ける必要がないため、下バルブ本体10、ニードル30及び弁ポート12の細径化を図ることができ、結果、圧力調整弁100Bを小型化及び小流量に対応させることができる。
【0091】
なお、第2の実施形態の圧力調整弁100Bにおいても、第1の実施形態の変形例と同様に、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定することにより、新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)を解消することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
ここで、図9及び図10を用いて、第3の実施形態における圧力調整弁100Cについて説明する。この第3の実施形態における圧力調整弁100Cは、継手コネクタ3に代えて、一次側継手1’に拡径する接合部1a’を設けている点で、第1の実施形態における圧力調整弁100Aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0093】
<背圧室への圧力導入路について>
第3の実施形態における入口ポート11aから背圧室17までの圧力導入路は、流入管路1c’、均圧路10a、及び、ばね収容溝10bを介して連通する。
【0094】
流入管路1c’は、流入管1’に形成される。この流入管1’は、基部1b’と、基部1b’の内径より大きい内径を有する接合部1a’と、を備える。この接合部1a’は、下バルブ本体10の一端側に設けられ、接合部1a’の外径より若干大きい内径を有する環状段部内に、挿入及びろう付けなどにより固定される。なお、接合部1a’を中心軸線C方向から見た際に、接合部1a’の流入管路1c’と均圧路10aとが互いに重複するように、接合部1a’の内径が設定される。
【0095】
以上より、第3の実施形態における圧力調整弁100Cは、第1の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(二次側圧力による弁開圧力の変化)を解消することができる。加えて、第3の実施形態では、圧力導入路となる均圧路10aが下バルブ本体10に形成されており、ニードル30に圧力導入路を設ける必要がないため、ニードル30及び弁ポート12の細径化を図ることができ、結果、圧力調整弁100Cを小型化及び小流量に対応させることができる。さらに、第3の実施形態では、継手コネクタ3に代えて、一次側継手1’の接合部1a’を採用することにより、継手コネクタ3が有する問題(例えば、製造コスト高、在庫管理コスト高、圧力導入路中に生じるバリの影響など)を解消できるとともに、極めて簡単な機械加工により接合部1a’を形成できるため、製造及び組付け時間を極めて短縮することができる。
【0096】
なお、第3の実施形態の圧力調整弁100Cにおいても、第1の実施形態の変形例と同様に、ニードルシール部34’の外径D4’を、弁ポート径D2よりも僅かに大きく設定することにより、新たな課題(二次側圧力による弁開圧力の増加)を解消することができる。
【0097】
<その他>
本実施形態の圧力調整弁100A,100A’,100B,100Cは、例示する冷媒回路だけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0098】
100A,100A’,100B,100C 圧力調整弁
1,1’ 流入管(一次側継手)
1a’ 接合部
1b’ 基部
1c’ 流入管路(圧力導入路)
2 流出管
3,3’ 継手コネクタ(バルブ本体)
3a 連通凹部(圧力導入路)
4 細管(圧力導入路)
5 バルブ本体
6 弁ばね
7 シール部材
10 下バルブ本体(バルブ本体)
10a 均圧路(圧力導入路)
10b ばね収容溝(圧力導入路)
10c シール収容溝
10d 連通凹部(圧力導入路)
10e 第1の連通孔(圧力導入路)
10f 第2の連通孔(圧力導入路)
11a 入口ポート
11b 出口ポート
12 弁ポート
13 弁室
14 ニードル案内孔
15 上バルブ本体(バルブ本体)
17 背圧室
18 弁座部材(バルブ本体)
18a 弁座
20 ばねケース(バルブ本体)
21 ばね収容室
22 雌ねじ部
30,30’ ニードル(弁体)
31 ニードルガイド部
32 弁部
33 ばね支持部
34,34’ ニードルシール部
40 感圧ユニット
41 感圧用ベローズ(感圧部材)
43 ベローズ上蓋
43a 挿通孔
43c 摺動部
45 連結棒
50 調整ばねユニット
51 ばね受け部材
52 調整ねじ部材
52a 雄ねじ部
53 調整ばね
60 下部接続手段
63 下ボール
70 上部接続手段
71 下側係合部
72 上側係合部
73 上ボール

a 弁ポート径の加工公差による影響
b 感圧用ベローズの平均内径の加工公差による影響
c ニードルシール部の外径の加工公差による影響
C 中心軸線
P1 一次側圧力
P2 二次側圧力
Pop 弁開圧力
Psop 設定された弁開圧力
図1
図2
図3
図4
図5
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図11