(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084561
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】インサート成形品
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20240618BHJP
B65D 1/40 20060101ALI20240618BHJP
B65D 43/08 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B32B29/00
B65D1/40 BRL
B65D43/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198888
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】深川 大
【テーマコード(参考)】
3E033
3E084
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA04
3E033AA20
3E033BA10
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA22
3E033BB07
3E033CA20
3E033DA03
3E033DD01
3E033FA02
3E033GA02
3E084AA02
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA14
3E084AA24
3E084AA34
3E084BA01
3E084CA01
3E084CA03
3E084CC07
3E084DB12
3E084DB13
3E084DB18
3E084DC03
3E084FB01
3E084FC04
3E084GA01
3E084GA08
3E084GB01
3E084GB12
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK51G
4F100AR00A
4F100AR00E
4F100BA05
4F100BA06
4F100DA03
4F100DG10C
4F100GB16
4F100JK06
4F100JL14A
4F100JL14E
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】紙インサート素材と樹脂成形体との分離が容易なインサート成形品を提供する。
【解決手段】紙インサート素材と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料からなり、紙インサート素材の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分を挟み込んで保持する樹脂成形体と、を備え、樹脂成形体は、紙インサート素材の外側面における所定範囲の部分を覆う環状の第1保持部と、紙インサート素材の内側面における所定範囲の部分を覆う環状の第2保持部と、を有し、紙インサート素材の両面の最表面には易剥離層が形成され、樹脂成形体は、紙インサート素材の所定範囲の部分と5N/15mm以上60N/15mm以下の剥離強度で溶着され、樹脂成形体に、第1保持部または第2保持部を分離可能とする弱化線と、弱化線の破断のきっかけとなる破断開始部が形成されており、破断開始部の破断開始に要する力が5~80Nであり、破断開始部が1~4個である、インサート成形品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層を含む紙インサート素材と、
熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料からなり、前記紙インサート素材の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分を挟み込んで保持する樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
前記紙インサート素材の外側面における前記所定範囲の部分を覆う環状の第1保持部と、
前記紙インサート素材の内側面における前記所定範囲の部分を覆う環状の第2保持部と、を有し、
前記紙インサート素材の両面の最表面には、少なくとも前記所定範囲の部分に易剥離層が形成され、
前記樹脂成形体は、前記紙インサート素材の前記所定範囲の部分と5N/15mm以上60N/15mm以下の剥離強度で溶着され、
前記樹脂成形体に、前記第1保持部または前記第2保持部を分離可能とする弱化線と、前記弱化線の破断のきっかけとなる破断開始部が形成されており、
前記破断開始部の破断開始に要する力が5~80Nであり、
前記破断開始部が1~4個である、インサート成形品。
【請求項2】
前記弱化線が、前記樹脂成形体の内側に形成され、前記第2保持部を分離可能とするハーフカット線であり、
前記破断開始部には、前記第2保持部に接続されるプルタブと、前記プルタブと前記第2保持部との接続部に隣接して設けられた切り欠きとが形成されている、請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項3】
前記樹脂成形体は、少なくとも前記第2保持部に接続され、前記紙インサート素材と直交する方向に延びる周壁部を有し、
前記弱化線が、前記樹脂成形体の外側に形成され、前記第2保持部及び前記周壁部を一体的に分離可能なハーフカット線であり、
前記破断開始部には、前記周壁部の下端と前記ハーフカット線とを接続する薄肉部が形成されている、請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項4】
前記易剥離層が、イージーピール材から構成される、請求項1~3のいずれかに記載のインサート成形品。
【請求項5】
前記易剥離層が、剥離性を有するニスを前記所定範囲の部分にパターンコートすることで構成される、請求項1~3のいずれかに記載のインサート成形品。
【請求項6】
前記紙インサート素材は、前記紙層の両面のそれぞれに設けられた樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に設けられた前記易剥離層とを有し、
前記易剥離層が、ヒートシールニスで構成され、
前記易剥離層と前記樹脂成形体との剥離強度が、前記紙層における層間剥離強度、及び、前記紙層と前記樹脂フィルムの剥離強度よりも弱い、請求項1~3のいずれかに記載のインサート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙インサート素材をインサート成形したインサート成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では環境負荷の軽減や資源保護の観点から、包装容器等に使用する樹脂量の低減が要望されている。例えば、特許文献1には、樹脂製の蓋を備えた包装容器が記載されており、この蓋のような樹脂成形体の一部を、紙を主体とした紙インサート素材を用いて構成する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形体の一部を紙インサート素材に置き換えた場合、廃棄時に紙インサート素材と樹脂成形体とを分離できることが好ましい。しかし、廃棄時に紙インサート素材と樹脂成形体とを分離する際、樹脂成形体に紙インサート素材の一部が残留する場合がある。樹脂成形体に紙が混入することはリサイクルの観点から好ましくないため、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、紙インサート素材と樹脂成形体との分離が容易なインサート成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、紙層を含む紙インサート素材と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料からなり、紙インサート素材の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分を挟み込んで保持する樹脂成形体と、を備え、樹脂成形体は、紙インサート素材の外側面における所定範囲の部分を覆う環状の第1保持部と、紙インサート素材の内側面における所定範囲の部分を覆う環状の第2保持部と、を有し、紙インサート素材の両面の最表面には、少なくとも所定範囲の部分に易剥離層が形成され、樹脂成形体は、紙インサート素材の所定範囲の部分と5N/15mm以上60N/15mm以下の剥離強度で溶着され、樹脂成形体に、第1保持部または第2保持部を分離可能とする弱化線と、弱化線の破断のきっかけとなる破断開始部が形成されており、破断開始部の破断開始に要する力が5~80Nであり、破断開始部が1~4個である、インサート成形品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙インサート素材と樹脂成形体との分離が容易なインサート成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るインサート成形品の概略構成を示す上面図
【
図4】紙インサート素材と樹脂成形体とを分離する方法を説明するインサート成形品の端面図
【
図6】インサート成形品をキャップとして用いたジャー容器の断面図
【
図7】第2実施形態に係るインサート成形品の正面図
【
図8】紙インサート素材と樹脂成形体とを分離する方法を説明するインサート成形品の断面図
【
図9】第2実施形態に係るインサート成形品の正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るインサート成形品の概略構成を示す図であり、より具体的には、
図1(a)は実施形態に係るインサート成形品の概略上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A’ラインに沿った端面を示す。
図2は、インサート成形品の部分断面図であり、
図3は、インサート成形品の概略構成を示す下面図である。
【0010】
インサート成形品は、樹脂成形体2と、樹脂成形体2にインサートされた紙インサート素材1とを備える。樹脂成形体2は、紙インサート素材1の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分X(
図1(a)の斜線部)を挟み込んで保持している。インサート成形品は、例えば、化粧品などの内容物を収容する容器のキャップまたはキャップの一部である。
【0011】
(樹脂成形体)
樹脂成形体2は、第1保持部3a、第2保持部3b、及び本体部4を備えており、
図1(b)及び
図3に示すように、第2保持部3bを分離可能とする弱化線20と、弱化線20の破断のきっかけとなる破断開始部21が形成されている。第1保持部3a、第2保持部3b、及び本体部4は射出成形により一体で成形される。樹脂成形体2は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリスチレン(PS)などの熱可塑性樹脂、及びこれらの材料に顔料、無機フィラー、紙粉、有機物繊維などを混合した混合物で構成される。樹脂成形体2として用いられる樹脂は、メルトマスフローレート(MFR)が1以上であることが好ましい。MFRが1未満の場合、樹脂成形体2を射出成形で形成する際に樹脂が流れにくく、特に第1保持部3a及び第2保持部3bにショートショットが発生する恐れがある。
【0012】
第1保持部3aは、紙インサート素材1の一方面(外側面)のうち、紙インサート素材1の外周縁から所定範囲の部分Xを覆う環状の部分である。また、第2保持部3bは、紙インサート素材1の他方面(内側面)のうち、紙インサート素材1の外周縁から所定範囲の部分Xを覆う環状の部分である。本体部4は、第1保持部3a及び第2保持部3bに接続され、紙インサート素材1の外周縁の端面に接する部材である。このように、紙インサート素材1の端面が樹脂成形体2により覆われる構成のため、紙層13の端面が保護され、気密性が向上する。なお、樹脂成形体2には、第2保持部に接続され、紙インサート素材1と直交する方向に延びる周壁部5が形成されていてもよい。
【0013】
樹脂成形体2は、紙インサート素材1の所定範囲の部分Xと5N/15mm以上60N/15mm以下、より好ましくは、25N/15mm以上40N/15mm以下の剥離強度(溶着強度)で溶着される。当該箇所の剥離強度が5N/15mm未満であると、使用中に意図せず紙インサート素材1と樹脂成形体2とが分離してしまう可能性がある。当該箇所の剥離強度が60N/15mmを超えると、分別の際に紙インサート素材1と樹脂成形体2とを剥離させるのが困難となり、樹脂成形体2への紙残りの原因となる可能性がある。
【0014】
図4を更に参照して、紙インサート素材1と樹脂成形体2とを分離する方法を説明する。
図4は、紙インサート素材と樹脂成形体とを分離する方法を説明するインサート成形品の端面図である。なお、
図4は
図3のB-B’ラインに対応する端面を示す。
【0015】
図3および
図4(a)に示すように、樹脂成形体2には、第2保持部3bを分離可能とする弱化線20と、弱化線20の破断のきっかけとなる破断開始部21が形成される。具体的に、弱化線20は、平面視において第2保持部3bと本体部4との境界(第2保持部3bの外周縁)と重なる位置に設けられている。破断開始部21には、例えば、第2保持部3bに接続されるプルタブ21aと、プルタブ21aと第2保持部3bとの接続部に隣接して設けられた切り欠き21bとが形成される。このとき、切り欠き21bは弱化線20の破断の進行方向(
図3の矢印方向)に対して垂直な辺を有しているため、
図3及び
図4(a)の状態からプルタブ21aを指で把持して引き上げることで、破断の進行方向に破断を誘導することができる。全周に渡って弱化線20を破断すると、樹脂成形体2から第2保持部3bを分離することができる(
図4(b))。この状態から、紙インサート素材1を第1保持部3a側から
図4(b)の矢印方向に押すと、紙インサート素材1を樹脂成形体2から剥離させ、分離することができる(
図4(c))。
【0016】
破断開始部21の破断を開始させるために必要な力(以下、「初期強度」という)は、5N以上80N以下であることが好ましく、20N以上40以下であることがより好ましい。きっかけ初期強度が5N未満の場合は、輸送中などの意図しないタイミングで破断が進み、インサート成形品が破損してしまう恐れがある。80Nを超える場合は、破断開始部21から破断することができず、紙インサート素材1と樹脂成形体2との分離が困難となる。また、破断開始部21の個数は1以上4以下であることが好ましい。破断開始部21の個数が4を超えると、樹脂成形体2が紙インサート素材1を保持する力が弱くなり、気密性が低下する。
【0017】
(紙インサート素材)
図5は、紙インサート素材の断面図である。紙インサート素材1は、両面の最表面に易剥離層15が形成されており、例えば、最外層から順に、易剥離層15、保護層16、印刷層12、紙層13、印刷層12、バリア層14、保護層16、及び易剥離層15を備える積層体である。このように、インサート成形品は、樹脂材料の一部を紙層13を含む紙インサート素材1で代用する構成のため、樹脂使用量を低減することができる。上述したように、紙インサート素材1の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分Xは、樹脂成形体2によって挟み込まれて保持される(
図1、2)。
【0018】
(紙層)
紙層13は、紙インサート素材1に剛性を付与する構造層である。紙層13には、例えば、板紙を用いることができる。紙層13の厚みは、250μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚みが250μm以上の場合は、紙インサート素材1の剛度を十分に確保できるため、樹脂成形体2の成形の際に樹脂の収縮によって紙インサート素材1にシワや変形が生じるのを抑制することができる。また、紙層13の厚みが250μmよりも薄い場合は紙厚にバラつきが発生し、バリや紙インサート素材1のシワ変形が生じる恐れがある。一方、紙層13の厚みが1000μmを超えると、紙についている癖・変形により紙インサート素材1を金型内に挿入するためのフィーダーへの吸着不良を起こす場合がある。紙層13に用いる紙の種類は特に限定されないが、印刷適性を考慮すると両艶であることが好ましい。
【0019】
(印刷層)
印刷層12は、紙層13の両面に設けられる。印刷層12は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、印刷には一般的なインキを用いることができる。印刷層12上には必要に応じてOPニス層(オーバープリンントニス層)を設けてもよい。なお、印刷層12は省略してもよい。
【0020】
(バリア層)
バリア層14は、内層側の印刷層12上に設けられる。バリア層14は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層であり、例えば、アルミニウム箔、無機蒸着膜、板状無機素材、有機系バリア樹脂などで構成することができる。無機蒸着膜としては、アルミ、アルミナ、シリカなどを用いることができる。板状無機素材としては、モンモリロナイトなどを用いることができる。有機系バリア樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、バリア性ナイロン(MXD-NY)などを用いることができる。なお、バリア層14は省略してもよい。
【0021】
(易剥離層)
易剥離層15は、紙インサート素材1の最表面の少なくとも樹脂成形体2によって挟み込まれる所定範囲の部分Xに形成される。そのため、樹脂成形体2から紙インサート素材1を剥離してインサート成形品を分別廃棄する際に樹脂成形体2に紙が残留するのを抑制することができる。紙インサート素材1と樹脂成形体2との剥離強度は、5N/15mm以上60N/15mm以下、より好ましくは、25N/15mm以上40N/15mm以下とする。5N/15mm未満であると、使用中に意図せず紙インサート素材1と樹脂成形体2とが分離してしまう可能性がある。60N/15mmを超えると、分別の際に紙インサート素材1と樹脂成形体2とを剥離させるのが困難となり、樹脂成形体2への紙残りの原因となる可能性がある。易剥離層15としては、例えば、イージーピール材(EP材)、剥離性を有するニス(剥離性ニス)、またはヒートシールニス(HSニス)を用いることができる。なお、
図5においては易剥離層15を紙インサート素材1の全面に形成しているが、
図2のように用いる易剥離層15の材料特性や用途に応じて所定範囲の部分Xにのみ形成されてもよい。
【0022】
易剥離層15がEP材で構成される場合、易剥離層15は、紙インサート素材1の全面に形成される。EP材としては、凝集剥離、層間剥離、及び界面剥離のいずれのタイプを用いてもよい。なお、EP材を用いる場合、
図5における保護層16は省略してもよい。
【0023】
易剥離層15が剥離性ニスで構成される場合、易剥離層15は、紙インサート素材1の所定範囲の部分Xに剥離性ニスをパターンコートすることで形成される。紙インサート素材1と樹脂成形体2との溶着部(所定範囲の部分X)の全面に剥離性ニスが塗布された場合、剥離強度が5N/15mmより小さくなり、使用中に意図せず紙インサート素材1と樹脂成形体2とが分離してしまう可能性がある。なお、剥離性ニスを用いる場合、
図5における保護層16は省略してもよい。
【0024】
易剥離層15がHSニスで構成される場合、紙層13の両面のそれぞれ保護層16である樹脂フィルムを設け、その上に易剥離層15を形成する必要がある。紙層13上に直接HSニスを塗布した場合、紙インサート素材1と樹脂成形体2との剥離時に紙剥けが発生し、樹脂成形体2に紙が残留する可能性がある。さらに、紙剥け抑制の観点から、易剥離層15と樹脂成形体2との剥離強度が、紙層13における層間剥離強度、及び、紙層13と保護層16(樹脂フィルム)の剥離強度よりも弱いことが好ましい。剥離強度がこの条件を満たすために、易剥離層15を紙インサート素材1の所定範囲の部分Xに形成する際に、HSニスをパターンコートすることで剥離強度を調整すればよい。また、紙インサート素材1と樹脂成形体2との溶着部(所定範囲の部分X)の全面にHSニスが塗布された場合、剥離強度が5N/15mmより小さくなり、使用中に意図せず紙インサート素材1と樹脂成形体2とが分離してしまう可能性がある。
【0025】
(保護層)
保護層16は、印刷層12を保護するための層であり、熱可塑性樹脂やOPニス(オーバープリンントニス)で構成することができる。熱可塑性樹脂を用いる場合、樹脂成形体2と同種の樹脂が好ましいが、紙インサート素材1と樹脂成形体2との溶着強度(剥離強度)が、前述の5N/15mm以上60N/15mm以下となるのであれば異種であってもよい。また、保護層16は、易剥離層15をHSニスで構成する場合には、紙インサート素材1と樹脂成形体2との剥離時に紙剥けが発生するのを抑制する。この場合、保護層16としてポリプロピレンやポリエステルなどの樹脂フィルムを用いる。保護層16の形成方法は、フィルム貼り、押出加工、コーティングなどを用いることができる。なお、保護層16は易剥離層15をHSニスで構成する場合を除いて省略してもよい。
【0026】
なお、本実施形態におけるインサート成形品はジャー容器100などの回転キャップに適用することができる(
図6)。この場合、樹脂成形体2の周壁部5の内周面にジャー容器本体10のねじ溝6bと螺合するねじ溝6aを適宜設けてもよい。また、
図7のようなスクリューキャップだけでなく、ジャー容器本体10の口部に取り付けられる取付部と、取付部にヒンジを介して取り付けられ、取付部の開口部を開閉可能な蓋を備えたヒンジキャップにも適用できる。
【0027】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るインサート成形品は、樹脂形成体2の弱化線で分離する部分が第1実施形態と異なる。
図7は、第2実施形態に係るインサート成形品の正面図であり、
図8は、紙インサート素材と樹脂成形体とを分離する方法を説明するインサート成形品の断面図である。
【0028】
図7および
図8(a)に示すように、樹脂形成体2は、第1保持部3aまたは第2保持部3bを分離可能とする弱化線30と、弱化線30の破断のきっかけとなる破断開始部31が形成される。具体的に、弱化線30は、樹脂成形体2の外側に形成される、第2保持部3b及び周壁部5を一体的に分離可能なハーフカット線である。破断開始部31には、周壁部5の下端と弱化線30とを接続する薄肉部31a(
図7のハッチング部、
図8(a)の周壁部5の右側)が形成されている。薄肉部31aを周壁部5の下端側から引き裂くことで破断が弱化線30に到達し、周壁部5に沿って破断を進行させることができる。全周に渡って弱化線30を破断すると、樹脂成形体2から第2保持部3b及び周壁部5を分離することができる(
図8(b))。この状態から、紙インサート素材1を第1保持部3a側から
図8(b)の矢印方向に押すと、紙インサート素材1を樹脂成形体2から剥離させ、分離することができる(
図8(c))。
【0029】
また、薄肉部31aの代わりに周壁部5の下端にVノッチ31a’を形成してもよい(
図9)。Vノッチ31a’は、気密性が阻害されないように、周壁部5の内周面に形成されたねじ山やアンダーカットと重複しないように形成される。また、Vノッチ31a’から弱化線30に接続される弱化線30’が周壁部5の外側に形成される。廃棄時には、Vノッチ31a’を切っ掛けとして弱化線30’を弱化線30に到達するまで破断させ、その後、破断した弱化線30’の近傍を掴んで弱化線30を破断させることにより、第2保持部3b及び周壁部5を第1保持部3aから分離できる。
【0030】
第2実施形態においても、破断開始部21の破断を開始させるために必要な力(初期強度)を第1実施形態と同じ範囲似設定することが好ましい。
【実施例0031】
(実施例1)
構成が、EP30/印刷層/紙400/印刷層/EP30であるシートを作製した。具体的には、坪量400g/m
2の両面コート紙の両面に印刷層を形成した後、EP材(DIC株式会社製、商品名:E7500T)を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせた。その後、作製したシートを打ち抜いて紙インサート素材を作製した。紙インサート素材を射出成形金型内へセットし、射出成形樹脂でインサート成形を行い、実施例1に係るインサート成形品を作製した。このとき、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度は30N/15mmであり、破断開始部の初期強度は20Nであり、破断開始部の個数は1個であった。また、弱化線及び破断開始部の構成は
図3に記載のインサート成形品と同様にした。
【0032】
(実施例2)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が60N/15mmであり、破断開始部の初期強度が15Nであり、破断開始部の個数は4個であったことを除き、実施例1と同様に実施例2に係るインサート成形品を作製した。
【0033】
(実施例3)
構成が、剥離性ニス/OPP40/印刷層/紙400/印刷層/OPP40/剥離性ニスであるシートを作製した。具体的には、坪量400g/m
2の両面コート紙の両面に印刷層を形成した後、40μmのOPP(フタムラ化学株式会社製、商品名:FOS)を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせた。その後、シリコン系の剥離性ニスを所定範囲の部分Xにパターンコートした。その後、作製したシートを打ち抜いて紙インサート素材を作製した。紙インサート素材を射出成形金型内へセットし、射出成形樹脂でインサート成形を行い、実施例3に係るインサート成形品を作製した。このとき、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度は25N/15mmであり、破断開始部の初期強度は30Nであり、破断開始部の個数は2個であった。また、弱化線及び破断開始部の構成は
図7に記載のインサート成形品と同様にした。
【0034】
(実施例4)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が40N/15mmであり、破断開始部の初期強度が50Nであり、破断開始部の個数は2個であったことを除き、実施例3と同様に実施例4に係るインサート成形品を作製した。
【0035】
(実施例5)
構成が、HSニス/OPP40/印刷層/紙400/印刷層/OPP40/HSニスであるシートを作製した。具体的には、坪量400g/m
2の両面コート紙の両面に印刷層を形成した後、40μmのOPP(フタムラ化学株式会社製、商品名:FOS)を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせた。その後、HSニスを所定範囲の部分Xにパターンコートした。その後、作製したシートを打ち抜いて紙インサート素材を作製した。紙インサート素材を射出成形金型内へセットし、射出成形樹脂でインサート成形を行い、実施例5に係るインサート成形品を作製した。このとき、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度は5N/15mmであり、破断開始部の初期強度は40Nであり、破断開始部の個数は1個であった。また、弱化線及び破断開始部の構成は
図9に記載のインサート成形品と同様にした。
【0036】
(実施例6)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が10N/15mmであり、破断開始部の初期強度が80Nであり、破断開始部の個数は2個であったことを除き、実施例5と同様に実施例6に係るインサート成形品を作製した。
【0037】
(比較例1)
構成が、OPP40/印刷層/紙400/印刷層/OPP40であるシートを作製した。具体的には、坪量400g/m2の両面コート紙の両面に印刷層を形成した後、40μmのOPP(フタムラ化学株式会社製、商品名:FOS)を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネートにより貼り合わせた。その後、作製したシートを打ち抜いて紙インサート素材を作製した。紙インサート素材を射出成形金型内へセットし、射出成形樹脂でインサート成形を行い、比較例1に係るインサート成形品を作製した。このとき、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度は65N/15mmであり、破断開始部の個数は0個であった。
【0038】
(比較例2)
坪量400g/m
2の両面コート紙を打ち抜いて紙インサート素材を作製した。紙インサート素材を射出成形金型内へセットし、射出成形樹脂でインサート成形を行い、比較例2に係るインサート成形品を作製した。このとき、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度は10N/15mmであり、破断開始部の初期強度は70Nであり、破断開始部の個数は2個であった。また、弱化線及び破断開始部の構成は
図3に記載のインサート成形品と同様にした。
【0039】
(比較例3)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が30N/15mmであり、破断開始部の初期強度が3Nであり、破断開始部の個数は1個であったことを除き、実施例1と同様に比較例3に係るインサート成形品を作製した。
【0040】
(比較例4)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が30N/15mmであり、破断開始部の初期強度が85Nであり、破断開始部の個数は1個であったことを除き、実施例1と同様に比較例4に係るインサート成形品を作製した。
【0041】
(比較例5)
剥離性ニスを所定範囲の部分Xの全面に塗布したこと、及び、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が4N/15mmであり、破断開始部の初期強度が25Nであり、破断開始部の個数は2個であったことを除き、実施例3と同様に比較例5に係るインサート成形品を作製した。
【0042】
(比較例6)
紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が25N/15mmであり、破断開始部の初期強度が35Nであり、破断開始部の個数は5個であったことを除き、実施例3と同様に比較例6に係るインサート成形品を作製した。
【0043】
(比較例7)
HSニスを所定範囲の部分Xの全面に塗布したこと、及び、紙インサート素材と樹脂成形体の剥離強度が3N/15mmであり、破断開始部の初期強度が45Nであり、破断開始部の個数は2個であったことを除き、実施例5と同様に比較例7に係るインサート成形品を作製した。
【0044】
(蓋開閉評価)
作製した実施例1~6及び比較例1~7のインサート成形品を蓋として用いたジャー容器に対して、蓋の開閉を300回繰り返し行い、紙インサート素材の離脱や、樹脂成形体の保持力の変化による機能面への影響の有無を確認した。紙インサート素材の離脱や機能の低下があったものを「×」、紙インサート素材の離脱や機能の低下がなかったものを「〇」、〇評価の中でも特に紙インサート素材の離脱に不安定性がなかったものを「◎」と評価した。
【0045】
(紙残り評価)
樹脂成形体から紙インサート素材を分離させたとき、樹脂成形体に紙インサート素材の紙繊維や、コート剤及びフィルムなどの樹脂の残留を確認した。
【0046】
(分離性評価)
樹脂成形体から紙インサート素材を分離させる際に、容易に分離可能かを確認した。分離に大きな力が必要であったものを「×」、大きな力が必要なく容易に分離できたものを「〇」、〇評価の中でも特に容易に分離ができたものを「◎」と評価した。
【0047】
蓋開閉評価、紙残り評価、及び分離性評価に基づいて総合評価を行った。蓋開閉評価及び分離性評価のいずれの評価結果も「◎」であり、かつ紙残り評価で「なし」であった場合を「◎」、蓋開閉評価及び分離性評価のいずれかの評価結果で「×」、または紙残り評価で「あり」であった場合を「×」、それ以外の場合を「〇」と評価した。
【0048】
インサート成形品の構成及び評価結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
実施例1~9のインサート成形品はいずれも、弱化線及び破断開始部が形成されており、樹脂成形体は、紙インサート素材の所定範囲の部分Xと5N/15mm以上60N/15mm以下の剥離強度で溶着されていた。また、破断開始部の初期強度は、5N以上80N以下であり、破断開始部21の個数は1以上4以下であった。そのため、いずれの評価においても良好な結果が得られた。
【0051】
比較例1及び比較例2はいずれも易剥離層が形成されていなかった。そのため、樹脂成形体から紙インサート素材を分離させたとき、樹脂成形体に紙インサート素材の紙繊維の残留が発生した。
【0052】
比較例3は、破断開始部の初期強度が5N未満であった。そのため、意図せぬタイミングで紙インサート素材の離脱が発生する場合があった。
【0053】
比較例4は、破断開始部の初期強度が80Nを超えていた。そのため、破断開始部21から破断することができず、紙インサート素材1と樹脂成形体2との分離ができなかった。
【0054】
比較例5は、紙インサート素材の所定範囲の部分Xの全面に剥離性ニスが塗布されていたため、剥離強度が5N/15mm未満であった。そのため、意図せぬタイミングで紙インサート素材の離脱が発生する場合があった。
【0055】
比較例6は、破断開始部の個数が4を超えており、樹脂成形体2が紙インサート素材1を保持する力が弱かった。そのため、蓋の開閉を繰り返す間に気密性が低下した。
【0056】
比較例7は、紙インサート素材の所定範囲の部分Xの全面にHSニスが塗布されていたため、剥離強度が5N/15mm未満であった。そのため、意図せぬタイミングで紙インサート素材の離脱が発生する場合があった。