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特開2024-84574モータコアの製造方法、モータコア及びモータコアを具備するモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084574
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】モータコアの製造方法、モータコア及びモータコアを具備するモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20240618BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240618BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
H02K1/18 B
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198904
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 剛
(72)【発明者】
【氏名】大久保 国彦
(72)【発明者】
【氏名】野中 照美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 尚陽
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA16
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE13
5H601GA02
5H601GA22
5H601GA34
5H601GB05
5H601GB33
5H601GB49
5H601GC12
5H601GE02
5H601GE11
5H601HH23
5H601KK08
5H601KK21
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP07
5H615SS05
5H615SS18
(57)【要約】
【課題】効果的に冷却可能なモータコア及びモータコアを具備するモータを提供する。
【解決手段】準備工程において、複数の電磁鋼板100のうち少なくとも一部である第一の電磁鋼板に貫通孔が形成されると共に、複数の電磁鋼板100の表面を覆う被覆層38が形成され、積層工程S4において、複数の電磁鋼板100が積層されることにより、第一の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通されて冷却媒体が流通可能な冷却流路34が形成され、接着工程S6において、互いに隣接する電磁鋼板100が被覆層38を用いて接着され、被覆層38により当該互いに隣接する電磁鋼板100間がシールされる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板を準備する準備工程と、
準備された前記複数の電磁鋼板を積層させる積層工程と、
積層された前記複数の電磁鋼板を接着させる接着工程と、
を具備するモータコアの製造方法であって、
前記準備工程において、
前記複数の電磁鋼板のうち少なくとも一部である第一の電磁鋼板に貫通孔が形成されると共に、前記複数の電磁鋼板の表面を覆う被覆層が形成され、
前記積層工程において、
前記複数の電磁鋼板が積層されることにより、前記第一の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通されて冷却媒体が流通可能な冷却流路が形成され、
前記接着工程において、
互いに隣接する前記電磁鋼板が前記被覆層を用いて接着され、当該被覆層により当該互いに隣接する前記電磁鋼板間がシールされる、
モータコアの製造方法。
【請求項2】
前記積層工程において、
前記複数の電磁鋼板のうち前記第一の電磁鋼板とは異なる第二の電磁鋼板は、前記モータコアの軸方向両側から前記第一の電磁鋼板を挟み込むように積層される、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項3】
積層された前記複数の電磁鋼板は、
前記モータコアの軸方向視において円環状に形成される本体部と、
前記本体部から内径方向又は外径方向に櫛歯状に突出した複数の突片と、
を有し、
前記冷却流路は、
前記複数の突片に形成され、前記突片の内部を循環する循環流路と、
前記本体部に形成され、互いに隣り合う前記循環流路を接続する接続流路と、
を含む、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項4】
前記準備工程において、
前記被覆層は、前記複数の電磁鋼板の表面に塗布される、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項5】
前記準備工程において、
前記被覆層の厚みは、25ミクロン以下に形成される、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項6】
前記接着工程において、
前記互いに隣接する電磁鋼板は前記被覆層により加硫接着される、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項7】
積層された複数の電磁鋼板を具備するモータコアであって、
前記複数の電磁鋼板のうち少なくとも一部の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通して形成された冷却媒体が流通可能な冷却流路と、
互いに隣接する前記電磁鋼板を接着することにより当該互いに隣接する前記電磁鋼板間をシールする被覆層と、
を具備する、
モータコア。
【請求項8】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載のモータコアの製造方法により製造されたモータコア、又は、請求項7に記載のモータコアを具備するモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアの製造方法及びモータコアを具備するモータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータコアの製造方法及びモータコアを具備するモータの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、モータのコイルに向かってオイルを噴射することで当該コイルを冷却できるモータが記載されている。具体的には、特許文献1に記載のモータのハウジングの内側側面には、モータの周方向に沿って延びる円環状の周方向油路が形成されている。また、周方向油路を覆う部材(油路蓋)には、当該周方向油路を流通するオイルをコイルに向かって噴射する複数の噴射孔が形成されている。このような構成により、周方向油路を流通するオイルが複数の噴射孔からコイルへと吐出されることで、当該コイルが冷却される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、コイルを外側から間接的に冷却する構成のため、当該コイルに巻回されるモータコアの冷却には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5347380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、効果的に冷却可能なモータコア及びモータコアを具備するモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、複数の電磁鋼板を準備する準備工程と、準備された前記複数の電磁鋼板を積層させる積層工程と、積層された前記複数の電磁鋼板を接着させる接着工程と、を具備するモータコアの製造方法であって、前記準備工程において、前記複数の電磁鋼板のうち少なくとも一部である第一の電磁鋼板に貫通孔が形成されると共に、前記複数の電磁鋼板の表面を覆う被覆層が形成され、前記積層工程において、前記複数の電磁鋼板が積層されることにより、前記第一の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通されて冷却媒体が流通可能な冷却流路が形成され、前記接着工程において、互いに隣接する前記電磁鋼板が前記被覆層を用いて接着され、当該被覆層により当該互いに隣接する前記電磁鋼板間がシールされるものである。
【0009】
請求項2においては、前記積層工程において、前記複数の電磁鋼板のうち前記第一の電磁鋼板とは異なる第二の電磁鋼板は、前記モータコアの軸方向両側から前記第一の電磁鋼板を挟み込むように積層されるものである。
【0010】
請求項3においては、積層された前記複数の電磁鋼板は、前記モータコアの軸方向視において円環状に形成される本体部と、前記本体部から内径方向又は外径方向に櫛歯状に突出した複数の突片と、を有し、前記冷却流路は、前記複数の突片に形成され、前記突片の内部を循環する循環流路と、前記本体部に形成され、互いに隣り合う前記循環流路を接続する接続流路と、を含むものである。
【0011】
請求項4においては、前記準備工程において、前記被覆層は、前記複数の電磁鋼板の表面に塗布されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記準備工程において、前記被覆層の厚みは、25ミクロン以下に形成されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記接着工程において、前記互いに隣接する電磁鋼板は前記被覆層により加硫接着されるものである。
【0014】
請求項7においては、積層された複数の電磁鋼板を具備するモータコアであって、前記複数の電磁鋼板のうち少なくとも一部の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通して形成された冷却媒体が流通可能な冷却流路と、互いに隣接する前記電磁鋼板を接着することにより当該互いに隣接する前記電磁鋼板間をシールする被覆層と、を具備するものである。
【0015】
請求項8においては、請求項1から請求項6までの何れか一項に記載のモータコアの製造方法により製造されたモータコア、又は、請求項7に記載のモータコアを具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、モータコアを効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るモータコアを具備するモータの側面断面模式図。
図2】モータコアの斜視図。
図3】モータコアの分解断面斜視図。
図4】モータコアの製造方法を示すフローチャート。
図5】(a)第1電磁鋼板を示す正面図。(b)第1電磁鋼板が積層された第1ブロック及び第7ブロックを示す斜視図。
図6】(a)第2電磁鋼板を示す正面図。(b)第2電磁鋼板が積層された第2ブロックを示す斜視図。
図7】(a)第3電磁鋼板を示す正面図。(b)第3電磁鋼板が積層された第3ブロックを示す斜視図。
図8】(a)第4電磁鋼板を示す正面図。(b)第4電磁鋼板が積層された第4ブロックを示す斜視図。
図9】(a)第5電磁鋼板を示す正面図。(b)第5電磁鋼板が積層された第5ブロックを示す斜視図。
図10】(a)第6電磁鋼板を示す正面図。(b)第6電磁鋼板が積層された第6ブロックを示す斜視図。
図11】(a)電磁鋼板に被覆層が形成された状態を示す断面図。(b)電磁鋼板が積層された状態を示す断面図。
図12】冷却流路の全体構成を示した斜視図。
図13】冷却流路及びその一部を拡大した正面図。
図14】(a)図13の拡大した一部において冷却水が流れる様子を示す斜視図。(b)図13(a)における冷却流路を構成する切欠部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明する。なお各図面においては、便宜上、各部材の大きさや形状等を誇張又は矮小化している。
【0020】
まず、図1及び2を用いて、本発明の第一実施形態に係るモータコア3を具備するモータ1の構成の概略について説明する。
【0021】
本実施形態に係るモータ1は、自動車(ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)等)の駆動装置に用いられる。モータ1は、主としてハウジング2、モータコア3、コイル4、ロータ5及び回転軸6を具備する。
【0022】
ハウジング2は、モータ1を構成する他の部材(モータコア3等)を収容するものである。ハウジング2の内側には、モータコア3が固定される。モータコア3は、図2に示すように、略円筒形状に形成される。モータコア3は、軸線を前後方向に向けて配置される。モータコア3には、導線が巻回されることでコイル4が形成される。コイル4は、モータコア3と同心の円筒形状に形成される。コイル4の前後両端部は、モータコア3の前後両端部からそれぞれ突出するように配置される。
【0023】
ロータ5は、略円筒形状に形成される。ロータ5は、モータコア3の内側に配置される。ロータ5は、軸線を前後方向に向けて配置される。回転軸6は、軸線を前後方向に向けて、ロータ5の中心を貫通するように設けられる。回転軸6は、軸受を介してハウジング2に回転可能に設けられる。ロータ5及び回転軸6は、モータコア3及びコイル4と同一軸線上(同心上)に配置される。
【0024】
このように構成されたモータ1において、コイル4が通電されると、モータコア3に磁界が発生する。モータコア3に磁界が発生すると、当該磁界によってロータ5に回転力が発生し、ロータ5及び回転軸6が回転する。
【0025】
また、コイル4が通電されると、内部抵抗によってコイル4が発熱し、当該コイル4に巻回されるモータコア3も高温となる。本実施形態においては、モータコア3が冷却構造を有することにより、当該モータコア3(ひいては、コイル4)を冷却し、不具合(例えば効率の低下等)の発生を抑制している。
【0026】
以下では、図2及び図3を用いて、モータコア3の構成について詳細に説明する。
【0027】
モータコア3は、略円環状の複数の電磁鋼板100(図5等参照)が軸方向に積層されて構成される。なおモータコア3の複数の電磁鋼板100は、後述するように軸方向において複数のブロックに便宜上分けることができるため、図2においては、各ブロック間の境界線が示されている。また図3においては、ブロックごとの分解斜視図を示している。モータコア3は、バックヨーク部31、ティース部32、スロット部33及び冷却流路34を具備する。
【0028】
バックヨーク部31は、略筒状に形成される。バックヨーク部31の外周面には、径方向外側に突出する固定部37が形成される。モータコア3は、固定部37を介してハウジング2に固定される。固定部37には、軸方向に貫通する孔が形成され、モータコア3を締め付けるためのボルト(不図示)が挿通される。
【0029】
ティース部32は、バックヨーク部31の内周面から径方向内側に突出している。ティース部32は、複数設けられ、周方向において互いに等間隔に形成される。
【0030】
スロット部33は、周方向において互いに隣り合うティース部32の間に形成される。スロット部33には、前記導線が挿通される。こうして、スロット部33に挿通された導線によりティース部32が巻回されることで、コイル4が形成される。
【0031】
冷却流路34は、モータコア3を冷却するための冷却媒体(本実施形態においては、水)の流路である。冷却流路34は、図3に示すように、各ブロックにおいて軸方向に貫通した貫通孔により、モータコア3の内部に形成される。冷却流路34への水入口35及び当該冷却流路34からの水出口36は、モータコア3の外周面(本実施形態においては、軸方向前側の上方を向いた外周面)に形成される。なお冷却流路34の構成についての詳細な説明は後述する。
【0032】
以下では、図2から図11を用いて、モータコア3の製造方法について説明する。
【0033】
本実施形態において、モータコア3の製造方法は、鋼板打ち抜き工程S1、コーティング工程S2、乾燥工程S3、積層工程S4、加圧工程S5、接着工程S6、縦溶接工程S7を具備する。
【0034】
図4に示すように、モータ1の製造方法においては、まず鋼板打ち抜き工程S1が実行される。鋼板打ち抜き工程S1は、軟磁性材料の一種である電磁鋼板を打ち抜く工程である。鋼板打ち抜き工程S1においては、例えばコイル材が準備され、当該コイル材から巻きほぐされた電磁鋼板から、ブランク加工やプレス加工により、所定の形状を有するパーツ(以下では「電磁鋼板100」と称する)が複数形成される。電磁鋼板100は、略円環状に形成される(図5等参照)。
【0035】
本実施形態においては、互いに形状の異なる複数(本実施形態においては、6種類)の電磁鋼板100が形成される。6種類の電磁鋼板100は、互いに同一の外形を有し、後述するように厚み方向に貫通した貫通孔(切欠部)の構成(形状や配置)が互いに異なるように形成される。なお以下では、前記6種類の電磁鋼板100を、それぞれ「第1電磁鋼板110」、「第2電磁鋼板120」、「第3電磁鋼板130」、「第4電磁鋼板140」、「第5電磁鋼板150」、「第6電磁鋼板160」と称する場合がある。
【0036】
図5(a)に示す第1電磁鋼板110は、複数(本実施形態では、8枚)形成される。第1電磁鋼板110は、第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第1本体部118及び第1突片部119を具備する。
【0037】
第1ボルト固定部111は、外周部において、径方向外側に膨出するように形成される。第1ボルト固定部111は、3つ設けられ、周方向において互いに等間隔となるように形成される。第1ボルト固定部111には、厚み方向に貫通した貫通孔(ボルト固定孔)が形成される。
【0038】
第1内周側切欠部112は、内周部において、厚み方向に貫通すると共に、径方向外側に延びるように形成される。第1内周側切欠部112は、複数設けられ、周方向において互いに等間隔となるように形成される。
【0039】
第1本体部118は、第1電磁鋼板110のうち、第1内周側切欠部112よりも径方向外側の部分である。第1本体部118は、厚み方向において円環状に形成される。
【0040】
第1突片部119は、第1電磁鋼板110のうち、第1本体部118から径方向内側に突出する部分である。第1突片部119は、複数設けられることにより、全体として櫛歯状に形成される。第1突片部119は、周方向において互いに隣り合う第1内周側切欠部112の間に形成される。
【0041】
図6(a)に示す第2電磁鋼板120は、複数(本実施形態では、10枚)形成される。第2電磁鋼板120は、第2ボルト固定部121、第2内周側切欠部122、第2アーチ状切欠部123、第2本体部128及び第2突片部129を具備する。
【0042】
第2ボルト固定部121、第2内周側切欠部122、第2本体部128及び第2突片部129は、第1電磁鋼板110の第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第1本体部118及び第1突片部119とそれぞれ同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0043】
第2アーチ状切欠部123は、厚み方向に貫通すると共に、正面視において径方向内側へ向けて開放されたアーチ状に形成される。第2アーチ状切欠部123は、第2電磁鋼板120の外周部及び内周部と連通していない。第2アーチ状切欠部123の径方向内側端部は、第2電磁鋼板120の内周部の近傍に形成される。
【0044】
また第2アーチ状切欠部123は、周方向において互いに隣り合う第2突片部129に形成される第2脚部123aと、前記2つの第2脚部123aの径方向外側端部を接続するように第2本体部128に形成される第2接続部123bと、を有する。こうして、第2アーチ状切欠部123は、厚み方向において1つの第2内周側切欠部122を内側に跨ぐように形成される。第2アーチ状切欠部123は、複数設けられ、第2電磁鋼板120の最上部を除いて、周方向において互いに等間隔となるように形成される。第2アーチ状切欠部123は、周方向に配設された複数の第2内周側切欠部122のうち、1つおきの第2内周側切欠部122を跨ぐように形成される。
【0045】
図7(a)に示す第3電磁鋼板130は、複数(本実施形態では、10枚)形成される。第3電磁鋼板130は、第3ボルト固定部131、第3内周側切欠部132、第3アーチ状切欠部133、第3外周側切欠部134、第3本体部138及び第3突片部139を具備する。
【0046】
第3ボルト固定部131、第3内周側切欠部132、第3アーチ状切欠部133(第3脚部133a及び第3接続部133b)、第3本体部138及び第3突片部139は、第1電磁鋼板110の第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第2電磁鋼板120の第2アーチ状切欠部123(第2脚部123a及び第2接続部123b)、第1本体部118及び第1突片部119とそれぞれ同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0047】
第3外周側切欠部134は、第3電磁鋼板130の上端部において、厚み方向に貫通すると共に、外周部から径方向内側に延びるように形成される。第3外周側切欠部134は、2つ設けられ、1つの第3内周側切欠部132を挟んで、周方向に互いに間隔をあけて形成される。第3外周側切欠部134の径方向内側端部は、第3電磁鋼板130の内周部の近傍に形成される。
【0048】
図8(a)に示す第4電磁鋼板140は、複数(本実施形態では、12枚)形成される。第4電磁鋼板140は、第4ボルト固定部141、第4内周側切欠部142、第4アーチ状切欠部143、第4矩形切欠部145、第4本体部148及び第4突片部149を具備する。
【0049】
第4ボルト固定部141、第4内周側切欠部142、第4アーチ状切欠部143(第4脚部143a及び第4接続部143b)、第4本体部148及び第4突片部149は、第1電磁鋼板110の第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第2電磁鋼板120の第2アーチ状切欠部123(第2脚部123a及び第2接続部123b)、第1本体部118及び第1突片部119とそれぞれ同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0050】
第4矩形切欠部145は、第4突片部149に形成される。第4矩形切欠部145は、厚み方向に貫通すると共に、径方向に延びる略矩形状に形成される。第4矩形切欠部145は、第4電磁鋼板140の内周部及び外周部と連通していない。第4矩形切欠部145は、2つ設けられ、第4電磁鋼板140の上部において、周方向に互いに隣り合う2つの第4突片部149にそれぞれ形成される。第4矩形切欠部145の径方向内側端部は、第4電磁鋼板140の内周部の近傍に形成される。
【0051】
図9(a)に示す第5電磁鋼板150は、複数(本実施形態では、168枚)形成される。第5電磁鋼板150は、第5ボルト固定部151、第5内周側切欠部152、第5矩形切欠部155、第5本体部158及び第5突片部159を具備する。
【0052】
第5ボルト固定部151、第5内周側切欠部152、第5本体部158及び第5突片部159は、第1電磁鋼板110の第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第1本体部118及び第1突片部119とそれぞれ同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0053】
第5矩形切欠部155は、第4電磁鋼板140の第4矩形切欠部145と概ね同様に構成される。なお第5矩形切欠部155は、第4矩形切欠部145とは異なり、全ての第5突片部159に形成される。
【0054】
図10(a)に示す第6電磁鋼板160は、複数(本実施形態では、32枚)形成される。第6電磁鋼板160は、第6ボルト固定部161、第6内周側切欠部162、第6アーチ状切欠部163、第6本体部168及び第6突片部169を具備する。
【0055】
第6ボルト固定部161、第6内周側切欠部162、第6本体部168及び第6突片部169は、第1電磁鋼板110の第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第1本体部118及び第1突片部119とそれぞれ同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0056】
第6アーチ状切欠部163(第6脚部163a及び第6接続部163b)は、第2電磁鋼板120の第2アーチ状切欠部123(第2脚部123a及び第2接続部123b)と概ね同様に構成される。なお第6アーチ状切欠部163は、第2アーチ状切欠部123とは異なり、第6電磁鋼板160の最上部にも設けられる。また第6アーチ状切欠部163は、第2アーチ状切欠部123に対して、周方向に位相がずれるように形成される。具体的には、第6アーチ状切欠部163の第6脚部163aは、周方向において第2アーチ状切欠部123の第2脚部123aと重複した位置に形成される一方で、第6アーチ状切欠部163の第6接続部163bは、周方向において第2アーチ状切欠部123の第2接続部123bと重複しない位置に形成される。
【0057】
図4に示すように、鋼板打ち抜き工程S1が終了すると、コーティング工程S2が実行される。コーティング工程S2は、ゴム材料を電磁鋼板100に塗布(コーティング)し、図11(a)に示すような被覆層38を形成する工程である。コーティング工程S2においては、電磁鋼板100の厚み方向の両側面に対してコーティングが行われる。こうして、被覆層38は、電磁鋼板100の表面を覆うように形成される。
【0058】
なおコーティングの手法としては、プレコートや、パーシャルコート、フローコート等の種々の手法を採用できる。本実施形態においては、パーシャルコートが採用される。これにより、膜厚をできるだけ薄く、かつ、厚みが均等になるように、被覆層38を形成することができる。また本実施形態においては、被覆層38の膜厚は、25ミクロン以下に形成される。また望ましくは、被覆層38の膜厚は、15ミクロン以下に形成される。またより望ましくは、被覆層38の膜厚は、5ミクロン以下に形成される。またゴム材料としては、絶縁性を有し、弾性変形可能なものが用いられる。これにより、ゴム材料が弾性変形することにより、モータ1の振動による騒音の発生等を抑制できる。このように、ゴム材料としては、例えばフッ素、二トリル系統等、種々のゴム材料を採用できる。
【0059】
なおコーティング工程S2においては、コーティングの前処理として、電磁鋼板100の洗浄が行われる。また電磁鋼板100の洗浄後には、電磁鋼板100と被覆層38との密着力を高めるため、例えば電磁鋼板100の厚み方向の両側面に化成処理を行ったり、化成処理の後にプライマーを塗布することもできる。また、コーティング工程S2においては、電磁鋼板100の両側面ではなく、一方の面だけにコーティングを行ってもよい。
【0060】
コーティング工程S2が終了すると、乾燥工程S3が実行される。乾燥工程S3は、コーティング工程S2において形成された被覆層38を乾燥させる工程である。乾燥工程S3においては、電磁鋼板100を静置した状態で被覆層38が乾燥される。
【0061】
図4に示すように、乾燥工程S3が終了すると、積層工程S4が実行される。積層工程は、電磁鋼板100を積層させる工程である。積層工程において、電磁鋼板100が所定枚数だけ積層されることにより、モータコア3が組み立てられる。ここで、本実施形態に係るモータコア3においては、6種類の電磁鋼板100が、それぞれ所定の順番に、所定の枚数だけ積層されることにより、図2及び図3に示すように、便宜上、積層方向に大きく7つのブロックに分けられる。以下では、積層方向において前側から後側へと順番に設けられる複数のブロックを、それぞれ「第1ブロック100B」、「第2ブロック120B」、「第3ブロック130B」、「第4ブロック140B」、「第5ブロック150B」、「第6ブロック160B」、「第7ブロック170B」と称する場合がある。
【0062】
図5(b)に示すように、第1ブロック100B及び第7ブロック170Bは、第1電磁鋼板110の積層により形成される。本実施形態において、第1ブロック100B及び第7ブロック170Bは、それぞれ第1電磁鋼板110が4枚ずつ積層される。こうして、第1ブロック100B及び第7ブロック170Bの厚みは、それぞれ例えば1mmに形成される。第1ブロック100Bにおいては、第1ボルト固定部111、第1内周側切欠部112、第1本体部118及び第1突片部119が積層方向に重複される。
【0063】
図6(b)に示すように、第2ブロック120Bは、第2電磁鋼板120の積層により形成される。本実施形態において、第2ブロック120Bは、第2電磁鋼板120が10枚積層される。こうして、第2ブロック120Bの厚みは、例えば2.5mmに形成される。第2ブロック120Bにおいては、第2ボルト固定部121、第2内周側切欠部122、第2アーチ状切欠部123、第2本体部128及び第2突片部129が積層方向に重複される。
【0064】
図7(b)に示すように、第3ブロック130Bは、第3電磁鋼板130の積層により形成される。本実施形態において、第3ブロック130Bは、第3電磁鋼板130が10枚積層される。こうして、第3ブロック130Bの厚みは、例えば2.5mmに形成される。第3ブロック130Bにおいては、第3ボルト固定部131、第3内周側切欠部132、第3アーチ状切欠部133、第3外周側切欠部134、第3本体部138及び第3突片部139が積層方向に重複される。
【0065】
図8(b)に示すように、第4ブロック140Bは、第4電磁鋼板140の積層により形成される。本実施形態において、第4ブロック140Bは、第4電磁鋼板140が12枚積層される。こうして、第4ブロック140Bの厚みは、例えば3mmに形成される。第4ブロック140Bにおいては、第4ボルト固定部141、第4内周側切欠部142、第4アーチ状切欠部143、第4矩形切欠部145、第4本体部148及び第4突片部149が積層方向に重複される。
【0066】
図9(b)に示すように、第5ブロック150Bは、第5電磁鋼板150の積層により形成される。本実施形態において、第5ブロック150Bは、第5電磁鋼板150が168枚積層される。こうして、第5ブロック150Bの厚みは、例えば42mmに形成される。第5ブロック150Bにおいては、第5ボルト固定部151、第5内周側切欠部152、第5矩形切欠部155、第5本体部158及び第5突片部159が積層方向に重複される。
【0067】
図10(b)に示すように、第6ブロック160Bは、第6電磁鋼板160の積層により形成される。本実施形態において、第6ブロック160Bは、第6電磁鋼板160が32枚積層される。こうして、第6ブロック160Bの厚みは、例えば8mmに形成される。第6ブロック160Bにおいては、第6ボルト固定部161、第6内周側切欠部162、第6アーチ状切欠部163、第6本体部168及び第6突片部169が積層方向に重複される。
【0068】
こうしてモータコア3が組み立てられると、各ブロックにおいて積層方向に重複された部分により、モータコア3のバックヨーク部31、ティース部32、スロット部33及び冷却流路34が組み立てられる。具体的には、各ブロックの本体部118・128・138・148・158・168が重複した部分により、バックヨーク部31が組み立てられる。またボルト固定部111・121・131・141・151・161が重複した部分により、固定部37が組み立てられる。
【0069】
また各ブロックの突片部119・129・139・149・159・169が重複した部分により、ティース部32が組み立てられる。また各ブロックの内側切欠部112・122・132・142・152・162が重複した部分により、スロット部33が組み立てられる。
【0070】
また各ブロックのアーチ状切欠部123・133・143・163と、外周側切欠部134と、矩形切欠部145・155と、が重複した部分が、互いに連通されることによって、冷却流路34が形成される。なお冷却流路34の構成についての詳細な説明は後述する。
【0071】
図4に示すように、積層工程S4が終了すると、加圧工程S5が実行される。加圧工程S5は、積層された電磁鋼板100の全体(第1ブロック100Bから第7ブロック170Bまで)を積層方向に加圧する工程である。加圧工程S5においては、例えば所定のクランプが用いられ、積層された電磁鋼板100の全体が、積層方向内側へ向けて押圧される。なお本実施形態においては、上述の如く被覆層38の膜厚が25ミクロン以下に(すなわち比較的薄く)形成される。このため、積層された電磁鋼板100が加圧された場合であっても、被覆層38が電磁鋼板100の間からはみ出し難く構成される。
【0072】
図4に示すように、加圧工程S5が行われると、接着工程S6が実行される。接着工程S6とは、積層方向において互いに隣り合う電磁鋼板100を接着する工程である。接着工程S6は、積層された電磁鋼板100の全体が加圧された状態で行われる。本実施形態では、接着工程S6においては、被覆層38を用いた加硫接着により、互いに隣り合う電磁鋼板100が接着される。これにより、図11(b)に示すように、圧着された互いに隣り合う電磁鋼板100が、密着した状態で結合され、積層された電磁鋼板100の全体(第1ブロック100Bから第7ブロック170Bまで)が、一体的に形成される。接着工程S6においては、被覆層38が接着剤として用いられるため、互いに隣り合う電磁鋼板100間の全面においてシールを行うことができる。
【0073】
図4に示すように、接着工程S6が終了すると、縦溶接工程S7が実行される。縦溶接工程S7においては、接着工程S6において一体化された電磁鋼板100の外周部に、積層方向に延びる溶接部(不図示)が形成される。前記溶接部は、周方向において互いに間隔をあけて複数個所設けられる。これにより、モータコア3の強度を向上させると共に、電磁鋼板100の全体の圧着された状態を維持できる。こうして、接着工程S6が終了すると、モータコア3が完成する。
【0074】
以下では、図3図12から図14を用いて、冷却流路34の構成について詳細に説明する。
【0075】
図3に示すように、冷却流路34は、モータコア3において、第1ブロック110Bと第7ブロック170Bとの間のブロックの内部に形成される。すなわち、冷却流路34は、第1ブロック110Bと第7ブロック170Bとの間のブロックの内部を軸方向に貫通する貫通孔(切欠部)に対して、第1ブロック110B及び第7ブロック170Bが前方及び後方から挟み込むようにして形成される、冷却流路34は、軸方向を前後方向へ向けた略円筒状に形成される。冷却流路34は、前側アーチ状流路310、後側アーチ状流路320、メイン流路330、導入流路340及び導出流路350を具備する。
【0076】
前側アーチ状流路310は、冷却流路34のうち前側端部に位置する流路である。前側アーチ状流路310は、正面視において径方向内側へ開放されたアーチ状に形成される。前側アーチ状流路310の前側は、第1ブロック110Bにより閉塞される(図3参照)。図14に示すように、前側アーチ状流路310は、第2、第3及び第4ブロック120B・130B・140Bのアーチ状切欠部123・133・143が重複した部分により形成される。
【0077】
またアーチ状切欠部123・133・143のうち、脚部123a・133a・143aは、ティース部32に形成された流路(以下では「前側アーチ状第1流路311」と称する)となる。またアーチ状切欠部123・133・143のうち、接続部123b・133b・143bは、バックヨーク部31に形成された流路(以下では「前側アーチ状第2流路312」と称する)となる。
【0078】
後側アーチ状流路320は、冷却流路34のうち後側端部に位置する流路である。後側アーチ状流路320は、正面視において径方向内側へ開放されたアーチ状に形成される。後側アーチ状流路320の後側は、第7ブロック170Bにより閉塞される(図3参照)。後側アーチ状流路320は、第6ブロック160Bの第6アーチ状切欠部163が重複した部分により形成される。
【0079】
また第6アーチ状切欠部163のうち、第6脚部163aは、ティース部32に形成された流路(以下では「後側アーチ状第1流路321」と称する)となる。また第6アーチ状切欠部163のうち、第6接続部163bは、バックヨーク部31に形成された流路(以下では「後側アーチ状第2流路322」と称する)となる。
【0080】
メイン流路330は、冷却流路34のうち前側アーチ状流路310と後側アーチ状流路320と間に位置する流路である。メイン流路330は、前側アーチ状流路310と後側アーチ状流路320とを互いに接続するように形成される。メイン流路330は、軸方向に直線状に延びるように形成される。メイン流路330は、第4及び第5ブロック140B・150Bの矩形切欠部145・155が重複した部分により形成される(不図示)。
【0081】
このように、メイン流路330は、全てのティース部32の内部において、モータコア3の内周面の近傍に形成される。またメイン流路330は、ティース部32の前側端部と後端部との間を、軸方向に概ね亘るように形成される。具体的には、メイン流路330は、ティース部32のうち、第1及び第7ブロック110B・170B以外のブロックにおいて形成されたティース部32を、軸方向に亘るように形成される。
【0082】
またメイン流路330の前端部は、前側アーチ状第1流路311に接続される。またメイン流路330の後端部は、後側アーチ状第1流路321に接続される。なお複数のメイン流路330のうち最上部に位置する2つのメイン流路330の前端部は、それぞれ導入流路340及び導出流路350に接続される(不図示)。
【0083】
導入流路340は、冷却流路34に冷却水を導入するための流路である。導入流路340は、モータコア3の外周面に形成された水入口35と、最上位に位置する2つのうち一方(図示左側)のメイン流路330と、を接続するように形成される。導入流路340は、第3ブロック130Bに設けられた2つのうち一方(図示左側)の外周側切欠部134が重複した部分により形成される。
【0084】
導出流路350は、冷却流路34から冷却水を導出するための流路である。導出流路350は、モータコア3の外周面に形成された水出口36と、最上位に位置する2つのうち他方(図示右側)のメイン流路330と、を接続するように形成される。導入流路340は、第3ブロック130Bに設けられた2つのうち他方(図示右側)の外周側切欠部134が重複した部分により形成される。
【0085】
こうして、冷却流路34は、主として前側アーチ状流路310、後側アーチ状流路320及びメイン流路330により、周方向に行くに従って前後方向に往復(行ったり来たり)するような形状に形成され、全てのティース部32を網羅するように設けられる。
【0086】
以下では、図14(a)を用いて、上述の如く構成された冷却流路34において、冷却水が流れる様子について説明する。
【0087】
導入流路340から導入された冷却水は、まずメイン流路330を後方へ向けて案内される。そして、冷却水は、メイン流路330の後端部において、後側アーチ状流路320の一方の後側アーチ状第1流路321に案内され、次に後側アーチ状第2流路322、後側アーチ状流路320の他方の後側アーチ状第1流路321へと順番に案内された後、周方向一側(反時計回り側)に1つずれたメイン流路330に案内される。そして、冷却水は、当該メイン流路330を前方へ向けて案内される。
【0088】
そして、冷却水は、メイン流路330の前端部において、前側アーチ状流路310の一方の前側アーチ状第1流路311に案内され、次に前側アーチ状第2流路312、前側アーチ状流路310の他方の前側アーチ状第1流路311へと順番に案内された後、周方向一側(反時計回り側)に1つずれたメイン流路330に案内される。そして、冷却水は、当該メイン流路330を後方へ向けて案内される。
【0089】
こうして、導入流路340から導入された冷却水は、全てのティース部32の内部を前方又は後方へ案内され、モータコア3を軸方向視において概ね一周するように案内された後、導出流路350へと到達する。これによれば、モータコア3のうち、特に高温となり易いティース部32を効果的に冷却できる。
【0090】
以上の如く、本実施形態に係るモータコア3の製造方法においては、
複数の電磁鋼板100を準備する準備工程(鋼板打ち抜き工程S1、コーティング工程S2、乾燥工程S3)と、
準備された前記複数の電磁鋼板100を積層させる積層工程S4と、
積層された前記複数の電磁鋼板100を接着させる接着工程S6と、
を具備するモータコア3の製造方法であって、
前記準備工程において、
前記複数の電磁鋼板100のうち少なくとも一部である第一の電磁鋼板(第2電磁鋼板120・第3電磁鋼板130・第4電磁鋼板140・第5電磁鋼板150・第6電磁鋼板160)に貫通孔(アーチ状切欠部123・133・143・163、外周側切欠部134、矩形切欠部145・155)が形成されると共に、前記複数の電磁鋼板100の表面を覆う被覆層38が形成され、
前記積層工程S4において、
前記複数の電磁鋼板100が積層されることにより、前記第一の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通されて冷却媒体が流通可能な冷却流路34が形成され、
前記接着工程S6において、
互いに隣接する前記電磁鋼板100が前記被覆層38を用いて接着され、当該被覆層38により当該互いに隣接する前記電磁鋼板100間がシールされるものである。
【0091】
このような構成により製造されたモータコア3は、複数の電磁鋼板100が積層されることにより形成された冷却流路34を用いて、当該モータコア3を内部から効果的に冷却できる。
また本実施形態においては、互いに隣接する電磁鋼板100が被覆層38を用いて接着され、当該被覆層38により当該互いに隣接する電磁鋼板100間がシールされるため、冷却流路34を流通する冷却媒体がモータコア3の外部へと漏れるのを抑制できる。こうして、モータコア3からモータ1の内部へ冷却媒体が飛散しないため、例えば飛散した冷却媒体に基づくフリクションロスを回避できる。
【0092】
また、モータコア3の製造方法においては、
前記積層工程S4において、
前記複数の電磁鋼板100のうち前記第一の電磁鋼板とは異なる第二の電磁鋼板(第1電磁鋼板110)は、前記モータコア3の軸方向両側から前記第一の電磁鋼板を挟み込むように積層されるものである。
【0093】
このような構成により、冷却流路34の軸方向一側及び他側を、モータコア3を構成する第1電磁鋼板110を用いて区画することができる。
すなわち、冷却流路34を区画するため専用の部材等を設ける必要がないため、コスト削減や構成の簡素化が図れる。
【0094】
また、モータコア3の製造方法においては、
積層された前記複数の電磁鋼板100は、
前記モータコア3の軸方向視において円環状に形成される本体部(本体部118~168)と、
前記本体部から内径方向又は外径方向に櫛歯状に突出した複数の突片(突片部119~169)と、
を有し、
前記冷却流路34は、
前記複数の突片に形成され、前記突片の内部を循環する循環流路(メイン流路330・前側アーチ状第1流路311・後側アーチ状第1流路321)と、
前記本体部に形成され、互いに隣り合う前記循環流路を接続する接続流路(前側アーチ状第2流路312・後側アーチ状第2流路322)と、
を含むものである。
【0095】
このような構成により、モータコア3のうち、特に高温となり易いティース部32を効果的に冷却できる。
【0096】
また、モータコア3の製造方法においては、
前記準備工程(コーティング工程S2)において、
前記被覆層38は、前記複数の電磁鋼板100の表面に塗布される、
【0097】
このような構成により、被覆層38によるシール性の向上を図ることができる。
【0098】
また、モータコア3の製造方法においては、
前記準備工程(コーティング工程S2)において、
前記被覆層38の厚みは、25ミクロン以下に形成されるものである。
【0099】
このような構成により、被覆層38の膜厚が比較的薄く形成されため、積層された電磁鋼板100が加圧された場合であっても、被覆層38が電磁鋼板100の間からはみ出し難くできる。
【0100】
また、モータコア3の製造方法においては、
前記接着工程S6において、
前記互いに隣接する電磁鋼板100は前記被覆層38により加硫接着されるものである。
【0101】
このような構成により、互いに隣り合う電磁鋼板100間の全面において、効果的にシールを行うことができる。
【0102】
また、本実施形態に係るモータコア3においては、
積層された複数の電磁鋼板100を具備するモータコア3であって、
前記複数の電磁鋼板100のうち少なくとも一部の電磁鋼板の貫通孔が互いに連通して形成された冷却媒体が流通可能な冷却流路34と、
互いに隣接する前記電磁鋼板100を接着することにより当該互いに隣接する前記電磁鋼板100間をシールする被覆層38と、
を具備するものである。
【0103】
このような構成により、複数の電磁鋼板100が積層されることにより形成された冷却流路34を用いて、当該モータコア3を内部から効果的に冷却できる。
【0104】
また、本実施形態に係るモータ1においては、
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載のモータコア3の製造方法により製造されたモータコア3、又は、請求項7に記載のモータコア3を具備するものである。
【0105】
このような構成により、複数の電磁鋼板100が積層されることにより形成された冷却流路34を用いて、当該モータコア3を内部から効果的に冷却できる。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0107】
例えば本実施形態において、接着工程S6において、加硫接着が用いられたが、これに限定するものではない。接着工程S6においては、任意の手法により互いに隣り合う電磁鋼板100を接着できる。
【0108】
また本実施形態において、冷却流路34への水入口35及び当該冷却流路34からの水出口36をそれぞれ1つずつ設けるものとしたが、(1つの冷却流路34に対して)複数設けられてもよい。また水入口35及び水出口36をモータコア3の任意の場所に形成することができる。また本実施形態において、冷却流路34は、1つだけ設けられたが、複数設けられてもよい。また本実施形態では、複数の突片(第1突片部119等)は、径方向内側に突出するが、径方向外側に突出してもよい。
【0109】
また本実施形態において、冷却流路34のメイン流路330は、ティース部32の前側端部と後端部との間を、軸方向に概ね亘るように(すなわち、全層冷却可能なように)形成されたが、これに限定されるものではない。すなわち、メイン流路330は、ティース部32の前側端部と後端部との間において、軸方向に部分的に(すなわち、部分層冷却可能なように)形成されてもよい。具体的には、メイン流路330は、ティース部32の前側部分や後側部分だけに形成されてもよい。またメイン流路330は、ティース部32の前後中途部だけに形成されてもよい。
【0110】
すなわち、冷却流路34は、ティース部32の内部を切り欠いて形成されるため、磁界の発生を妨げる可能性があるため、モータ1の仕様に応じて、磁界の発生を過剰に妨げることなく、効果的に冷却可能な形状を採用できる。
【0111】
なお、本発明に係るモータコアは、本実施形態のものに限定されず、モータのロータ又はステータの何れかに用いられるコア(即ち、ロータコアやステータコア)であればよい。
【符号の説明】
【0112】
34 冷却流路
38 被覆層
100 電磁鋼板
S1 鋼板打ち抜き工程
S2 コーティング工程
S3 乾燥工程
S4 積層工程
S6 接着工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14