(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084580
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】タイヤ検査装置及びタイヤ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198920
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
(57)【要約】
【課題】発信器が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定できるタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法が提供される。
【解決手段】タイヤ検査装置(10)は、発信器(31)が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定するタイヤ検査装置であって、登録済みであるタイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを取得する取得部(131)と、タイヤのうち検査の対象である検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、タイヤ管理データ及び検査対象タイヤに内蔵された発信器から読み取られるタイヤID情報に基づいて読み取り検査を行い、読み取り検査で合格と判定する場合に検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定する判定部(132)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信器が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定するタイヤ検査装置であって、
登録済みである前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを取得する取得部と、
前記タイヤのうち検査の対象である検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、前記タイヤ管理データ及び前記検査対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られる前記タイヤID情報に基づいて読み取り検査を行い、前記読み取り検査で合格と判定する場合に前記検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定する判定部と、を備える、タイヤ検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記読み取り検査において、前記検査対象タイヤが登録済みか否かを判定し、前記検査対象タイヤが登録済みであることを合格の条件とする、請求項1に記載のタイヤ検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記検査対象タイヤが複数の前記発信器を内蔵する場合に、前記読み取り検査において、複数の前記発信器から読み取られる全ての前記タイヤID情報が一致することを合格の条件とする、請求項2に記載のタイヤ検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記読み取り検査において、前記電圧検査の前後の前記タイヤID情報が一致することを合格の条件とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ検査装置。
【請求項5】
前記判定部の判定結果を出力する出力部を備え、
前記出力部は、前記判定部が前記検査対象タイヤのリトレッドが可能でないと判定する場合に、代替手段の使用を提案するメッセージを出力する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ検査装置。
【請求項6】
前記メッセージは、前記発信器を使用不可能にするコードを書き込むことの提案を含む、請求項5に記載のタイヤ検査装置。
【請求項7】
前記メッセージは、前記検査対象タイヤを電磁場下に置くことを促す提案を含む、請求項6に記載のタイヤ検査装置。
【請求項8】
発信器が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定するタイヤ検査装置が実行するタイヤ検査方法であって、
登録済みである前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを取得することと、
前記タイヤのうち検査の対象である検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、前記タイヤ管理データ及び前記検査対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られる前記タイヤID情報に基づいて読み取り検査を行い、前記読み取り検査で合格と判定する場合に前記検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定することと、を含む、タイヤ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ検査装置及びタイヤ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの個体識別などのために、タイヤに発信器などの電子装置が取り付けられることがある。このようなタイヤを検査する場合に、損傷から電子装置を保護したい場合がある。例えば特許文献1は、絶縁保護構造体が、タイヤ内側表面に対して垂直に配置され、高電圧を放電し得るワイヤとの接触から電子装置を物理的に保護する絶縁保護構造体を用いる方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1の技術は、例えばタイヤが複数の電子装置を内蔵する場合などに、複数の絶縁保護構造体を用意する必要があり、また、それぞれ適切に配置する必要があるため、検査の効率が損なわれる。また、リトレッドなどタイヤを再利用する場合に、必ずしも発信器まで再利用する必要はない。そのため、タイヤに内蔵された発信器について、故障の有無をより正確に検査できる技術が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、発信器が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定できるタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ検査装置は、
発信器が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定するタイヤ検査装置であって、
登録済みである前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを取得する取得部と、
前記タイヤのうち検査の対象である検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、前記タイヤ管理データ及び前記検査対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られる前記タイヤID情報に基づいて読み取り検査を行い、前記読み取り検査で合格と判定する場合に前記検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定する判定部と、を備える。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定することができる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記判定部は、前記読み取り検査において、前記検査対象タイヤが登録済みか否かを判定し、前記検査対象タイヤが登録済みであることを合格の条件とする。
この構成により、電圧検査による発信器の故障の有無を正確に検査することができる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記判定部は、前記検査対象タイヤが複数の前記発信器を内蔵する場合に、前記読み取り検査において、複数の前記発信器から読み取られる全ての前記タイヤID情報が一致することを合格の条件とする。
この構成により、複数の発信器について、電圧検査による故障の有無を効率的に検査することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記判定部は、前記読み取り検査において、前記電圧検査の前後の前記タイヤID情報が一致することを合格の条件とする。
この構成により、電圧検査による発信器の故障の有無をさらに正確に検査することができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記判定部の判定結果を出力する出力部を備え、
前記出力部は、前記判定部が前記検査対象タイヤのリトレッドが可能でないと判定する場合に、代替手段の使用を提案するメッセージを出力する。
この構成により、修理場所の作業者が素早く適切な対応を取ることができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(5)において、
前記メッセージは、前記発信器を使用不可能にするコードを書き込むことの提案を含む。
この構成により、メッセージに従うことで、故障している発信器が悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(6)において、
前記メッセージは、前記検査対象タイヤを電磁場下に置くことを促す提案を含む。
この構成により、メッセージに従うことで、故障している発信器が悪影響を及ぼすことをさらに確実に回避できる。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係るタイヤ検査方法は、
発信器が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定するタイヤ検査装置が実行するタイヤ検査方法であって、
登録済みである前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを取得することと、
前記タイヤのうち検査の対象である検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、前記タイヤ管理データ及び前記検査対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られる前記タイヤID情報に基づいて読み取り検査を行い、前記読み取り検査で合格と判定する場合に前記検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定することと、を含む。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、発信器が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定できるタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ検査装置を備えるタイヤ検査システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、タイヤ管理データを説明するための図である。
【
図3】
図3は、タイヤ検査装置が実行するタイヤ検査方法の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ検査装置及びタイヤ検査方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るタイヤ検査装置10を備えるタイヤ検査システムの構成例を示す。タイヤ検査装置10はタイヤを検査する。タイヤ検査装置10が管理するタイヤは特定のものに限定されず、例えば大型のOR(Off the Road)タイヤを含んでよい。また、本実施形態において、タイヤは乗用自動車、トラック、バス、建設車両などの車両用であるが、航空機用などであってよい。
【0018】
タイヤ検査装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、判定部132と、出力部133と、を備える。タイヤ検査装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。タイヤ検査装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0019】
本実施形態において、タイヤ検査装置10はタイヤのリトレッド及び修理を行う場所(以下、修理場所)のコンピュータである。リトレッドは、タイヤのトレッドゴムの表面を削って、新しいゴムを貼り付けて再利用(リユース)することである。タイヤにおいて、リトレッドで交換されるトレッド部を除いた部分を「台タイヤ」と称することがある。リトレッドタイヤの使用は台タイヤを再利用するため省資源に貢献できる。詳細について後述するが、タイヤ検査装置10は、発信器31が内蔵されたタイヤのリトレッドの可否を判定する。修理場所におけるタイヤの修理は、例えば故障している発信器31の代替品をタイヤに取り付けること、故障している発信器31を使用不可能にすることなどを含む。ここで、修理場所でリトレッドの可否判定のために検査されるタイヤは、以下において「検査対象タイヤ」と称される。
【0020】
ここで、読取部70は、タイヤのそれぞれに取り付けられた発信器31からタイヤID情報を読み取る装置である。タイヤID情報は、個々のタイヤに固有の識別情報である。タイヤ検査装置10は、少なくとも読取部70とともにタイヤ検査システムを構成する。修理場所には、タイヤ検査装置10以外の装置(以下、「外部装置」)が設置されていてよい。タイヤ検査装置10は、さらにネットワークで接続される外部装置とともに、タイヤ検査システムを構成してよい。ネットワークは、例えばインターネットである。また、ネットワークは、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。本実施形態において、外部装置は高電圧装置を含む。高電圧装置は、タイヤに高電圧をかけて非破壊で貫通疵の有無を検査する電圧検査を実行する。電圧検査では、貫通疵がある場合にスパークが発生して電流が流れる。したがって、電圧検査で電流が流れなければ合格となる。タイヤ検査装置10は、ネットワークを介して、高電圧装置から電圧検査の合否を受け取ることができる。
【0021】
発信器31はタイヤに内蔵されている。タイヤへの内蔵は、例えばタイヤの内部に埋め込まれていること、及び、タイヤの内面の表面に貼付されていることを含む。発信器31は、タイヤから取り外しが困難であり、タイヤと路面との接触による影響を受けない位置であれば、タイヤの内面以外の表面に貼り付けられてよい。発信器31は、所定の信号を発信する。所定の信号は、少なくとも発信器31が取り付けられたタイヤのタイヤID情報を含む。所定の信号は、さらに、製造年月及び製造場所などのタイヤの製造情報を含んでよい。発信器31は、本実施形態のようにRFIDタグであってよいが、所定の信号を発信するものであれば特定種類の機器に限定されない。RFIDタグは、リーダ装置との間で、電磁界、電波などを用いて近距離(数cm~数m程度)の無線通信を行い、情報のやり取りを行う。本実施形態において、読取部70はRFIDタグのリーダ装置である。ここで、タイヤに内蔵されている発信器31は1つであってよいし、複数であってよい。また、発信器31からタイヤID情報が読み取られる態様は、発信器31から直接的にタイヤID情報が得られることに限定されない。例えば発信器31が個々の発信器31に固有の識別情報を発信し、その識別情報が特定のタイヤID情報と紐づけられており、読取部70又は制御部13においてタイヤID情報に置換される場合も、発信器31からタイヤID情報が読み取られることに含まれる。
【0022】
ここで、電圧検査はタイヤに高電圧を印加して行われるため、高電圧によって発信器31が故障することがある。故障した発信器31を放置しておくと、リトレッドタイヤとして出荷された後の検査などにおいてタイヤID情報を読み取ることができない、又は、誤ったタイヤID情報が読み取られるといったトラブルが生じ得る。したがって、タイヤ検査装置10は、電圧検査の後で発信器31の読み取り検査を実行し、発信器31の故障の無いものだけを合格と判定する。
【0023】
また、タイヤ検査システムにおいて、タイヤ検査装置10は外部装置と統合(一体化)された構成であってよい。例えばタイヤ検査装置10が、高電圧装置の機能を兼ねており、電圧検査も実行してよい。また、タイヤ検査装置10は、ネットワーク経由で小型のコンピュータ装置などと通信可能であって、例えば検査結果などを小型のコンピュータ装置のディスプレイに表示させてよい。小型のコンピュータ装置は、例えばスマートフォン又はタブレット端末などの移動端末を含んでよい。
【0024】
以下、タイヤ検査装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワークに接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0025】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ検査装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ検査装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0026】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0027】
本実施形態において、記憶部12は登録済みであるタイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを記憶する。ここで、登録済みとは、少なくとも1つの発信器31から読み取られるタイヤID情報が把握されており、その発信器31とタイヤID情報との紐づけが把握されていることをいう。
図2はタイヤ管理データの例を示す。
図2の例において、タイヤ管理データは、発信器ID情報とタイヤID情報との対応を示すテーブルである。発信器ID情報は、個々の発信器31(本実施形態においてRFIDタグ)に固有の識別情報である。
図2の例では、タイヤID情報がT001~T005であるタイヤは、登録済みであるタイヤであって、存在が確認されているタイヤである。そして、例えばタイヤID情報がT005のタイヤは、発信器ID情報が0005である1つのRFIDタグを内蔵している。また、例えばタイヤID情報がT001のタイヤは、発信器ID情報が0001、0004及び0009である3つのRFIDタグを内蔵している。また、発信器ID情報が0002、及び0011であるRFIDタグは、未使用又は使用不可能となっており、紐づけられたタイヤID情報が無いため空欄となっている。
【0028】
ここで、製造又は修理などによってタイヤに新たな発信器31が内蔵される場合に、新たな発信器ID情報にタイヤID情報が紐づけられる。タイヤ管理データは、例えば定期的に、又は、定期的でないタイミングで更新されてよい。例えばタイヤ検査装置10は、修理場所でタイヤに新たな発信器31が内蔵された場合に、タイヤ管理データを更新してよい。更新は、修理場所の作業者がタイヤ検査装置10の入力装置(例えばキーボード及びマウスなど)を用いて入力することで行われてよい。また、例えばタイヤ検査装置10は、ネットワーク経由でタイヤの製造場所のコンピュータにアクセスして、新たに製造されたタイヤの発信器ID情報とタイヤID情報との紐づけの情報を取得してよい。タイヤ管理データは、
図2の形式等に限定されるものでなく、例えばさらに別の項目(一例としてタイヤの種類)が追加されてよい。
【0029】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ検査装置10の全体の動作を制御する。
【0030】
ここで、タイヤ検査装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ検査装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを取得部131、判定部132及び出力部133として機能させる。
【0031】
取得部131は、タイヤ管理データを取得する。また、取得部131は、検査の対象である検査対象タイヤについて電圧検査が行われた場合に、高電圧装置から電圧検査の結果を取得してよい。取得部131は、本実施形態において電圧検査の結果を取得した後にタイヤ管理データを取得するが、電圧検査の結果を取得する前にタイヤ管理データを取得してよい。また、取得部131は、検査対象タイヤに内蔵された発信器31から読み取られるタイヤID情報を取得する。つまり、取得部131は、読取部70によって読み取られた検査対象タイヤのタイヤID情報を取得する。
【0032】
判定部132は、検査対象タイヤが電圧検査で合格と判定された後に、タイヤ管理データ及び検査対象タイヤに内蔵された発信器31から読み取られるタイヤID情報に基づいて読み取り検査を行う。判定部132は、読み取り検査で合格と判定する場合に検査対象タイヤのリトレッドが可能と判定する。電圧検査で合格と判定された後に読み取り検査が行われることによって、高電圧の影響を受ける発信器31が内蔵されたタイヤについて、適切にリトレッドの可否を判定することができる。
【0033】
ここで、判定部132は、読み取り検査において、検査対象タイヤが登録済みか否かを判定し、検査対象タイヤが登録済みであることを合格の条件としてよい。発信器31が正常であれば、読み取られるタイヤID情報はいずれかの登録済みのタイヤを示す。そのため、検査対象タイヤが登録済みであることを合格の条件とすることによって、電圧検査による発信器31の故障の有無を正確に検査することができる。
図2の例で、発信器ID情報が0001~0016のいずれかである発信器31を検査対象タイヤが内蔵する場合に、発信器31が正常であれば、タイヤID情報はT001~T005のいずれかになる。この例において、タイヤID情報がT001~T005のいずれでもなければ、読み取り検査が不合格であると判定することができる。
【0034】
また、判定部132は、検査対象タイヤが複数の発信器31を内蔵する場合に、読み取り検査において、複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報が一致することを合格の条件としてよい。つまり、1つでも一致しないタイヤID情報が存在すれば、直ちに読み取り検査が不合格であると判定することができる。複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報の一致を合格の条件とすることによって、電圧検査による故障の有無を効率的に検査することができる。
図2の例で、発信器ID情報が0001、0004及び0009である3つの発信器31を検査対象タイヤが内蔵する場合に、発信器31が正常であれば、全てのタイヤID情報はT001になる。この例において、少なくとも1つの発信器31について、タイヤID情報がT001でなければ、読み取り検査が不合格であると判定することができる。ここで、この例において、全ての発信器31について、タイヤID情報が誤った値(T001以外の値)で偶然に一致することもあり得る。そのため、高い精度が求められる場合に、検査対象タイヤが登録済みであることをさらに合格の条件に含めることが好ましい。つまり、判定部132は、検査対象タイヤが複数の発信器31を内蔵する場合に、読み取り検査において、複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報が一致し、かつ、検査対象タイヤが登録済みであることを合格の条件とすることが好ましい。また、偶然の一致が生じにくくなるように、発信器ID情報の値及びタイヤID情報の値は、乱数などを用いて定められることが好ましい。
【0035】
判定部132は、読み取り検査において、電圧検査の前後のタイヤID情報が一致することを合格の条件としてよい。電圧検査の前後で読み取ったタイヤID情報の一致を合格の条件とすることによって、電圧検査による発信器31の故障の有無をさらに正確に検査することができる。ここで、この例において、発信器31が電圧検査の前にすでに故障しており、電圧検査の前後で読み取ったタイヤID情報が誤った値で一致することもあり得る。そのため、高い精度が求められる場合に、検査対象タイヤが登録済みであること、及び、複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報が一致すること、の少なくとも1つをさらに合格の条件に含めることが好ましい。
【0036】
出力部133は、判定部132によって判定された結果(すなわち読み取り検査の合否など)を、表示装置などに対して出力する。例えばタイヤ検査装置10に接続されているディスプレイなどが、判定結果を表示する表示装置として機能し得る。
【0037】
ここで、出力部133は、判定部132が検査対象タイヤのリトレッドが可能でないと判定する場合に、代替手段の使用を提案するメッセージを出力する。代替手段は、故障した発信器31の代替品である新品の発信器31(RFIDタグ)であってよいし、貼り付け型の(パッチタイプの)発信器31であってよいし、タイヤID情報を含む二次元バーコードであってよい。このようなメッセージに従って、修理場所の作業者が素早く適切な対応を取ることができる。
【0038】
また、上記のメッセージは、発信器31を使用不可能にするコードを書き込むことの提案を含んでよい。つまり、故障した発信器31を確実に使用不可能にするための手法が、修理場所の作業者に伝えられてよい。メッセージに従うことで、故障している発信器31が悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0039】
また、上記のメッセージは、検査対象タイヤを電磁場下に置くことを促す提案を含んでよい。電磁場は、発信器31が有する情報を消去又は破壊するのに十分な強さを有するものであってよい。メッセージに従うことで、故障している発信器31が悪影響を及ぼすことをさらに確実に回避できる。
【0040】
図3は、タイヤ検査装置10の制御部13が実行するタイヤ検査方法の処理を例示するフローチャートである。タイヤ検査方法の処理は、検査対象タイヤが修理場所に搬送されたタイミングで開始されてよい。
【0041】
取得部131は、検査対象タイヤに対して電圧検査が実行される前に、読取部70によって読み取られた検査対象タイヤのタイヤID情報を取得する(ステップS1)。ここで、判定部132が電圧検査の前後のタイヤID情報の一致を判定しない場合に、ステップS1は省略されてよい。
【0042】
取得部131は、検査対象タイヤについて電圧検査が行われた場合に、高電圧装置から電圧検査の結果を取得する(ステップS2)。ここで、制御部13は、ネットワーク経由で高電圧装置に対して電圧検査の実行を指示した上で、電圧検査の結果を取得してよい。つまり、制御部13が、電圧検査も含めて、検査対象タイヤのリトレッドの可否を判定するための検査のタイミングを制御してよい。
【0043】
制御部13は、電圧検査の結果が合格である場合に(ステップS3のYes)、ステップS4の処理に進み、読み取り検査を実行する。制御部13は、電圧検査の結果が合格でない場合に(ステップS3のNo)、つまり不合格の場合に、読み取り検査を行わずに処理を終了する。ここで、電圧検査の結果が合格でない場合に、出力部133が電圧検査で不合格であることを表示装置などに対して出力してから、処理が終了されてよい。
【0044】
取得部131は、電圧検査の結果が合格である場合に、記憶部12からタイヤ管理データを取得する(ステップS4)。別の例として、取得部131は、電圧検査の結果を取得する前に、タイヤ管理データを取得してよい。
【0045】
取得部131は、検査対象タイヤに対して電圧検査が実行された後で、読取部70によって読み取られた検査対象タイヤのタイヤID情報を取得する(ステップS5)。
【0046】
判定部132は、電圧検査の前後のタイヤID情報が一致しない場合に(ステップS6のNo)、読み取り検査で不合格と判定する(ステップS10)。判定部132は、電圧検査の前後のタイヤID情報が一致する場合に(ステップS6のYes)、ステップS7の処理に進む。ここで、判定部132が電圧検査の前後のタイヤID情報の一致を判定しない場合に、ステップS6は省略されてよい。
【0047】
判定部132は、検査対象タイヤが複数の発信器31を内蔵しており、複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報が一致しない場合に、すなわち一部が異なる場合に(ステップS7のNo)、読み取り検査で不合格と判定する(ステップS10)。判定部132は、検査対象タイヤが複数の発信器31を内蔵しており、複数の発信器31から読み取られる全てのタイヤID情報が一致する場合に(ステップS7のYes)、ステップS8の処理に進む。ここで、検査対象タイヤが内蔵する発信器31が1つの場合に、ステップS7は省略されてよい。
【0048】
判定部132は、タイヤ管理データ及び電圧検査後のタイヤID情報に基づいて、検査対象タイヤが登録済みでない場合に(ステップS8のNo)、読み取り検査で不合格と判定する(ステップS10)。判定部132は、検査対象タイヤが登録済みである場合に(ステップS8のYes)、読み取り検査で合格と判定する(ステップS9)。このとき、検査対象タイヤはリトレッドが可能であると判定される。
【0049】
出力部133は、判定部132による判定結果を、表示装置などに対して出力する(ステップS11)。出力部133は、判定結果として、少なくとも読み取り検査の合否を出力する。読み取り検査が不合格の場合に、出力部133は、代替手段の使用を提案するメッセージを出力してよい。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ検査装置10及びタイヤ検査方法は、上記の構成によって、検査対象タイヤのタイヤID情報を用いる読み取り検査を実行し、発信器31が内蔵されたタイヤについて適切にリトレッドの可否を判定できる。また、本実施形態に係るタイヤ検査装置10及びタイヤ検査方法では、リトレッドの可否を判定するための検査において、従来技術の絶縁保護構造体のような特殊な器具を必要としない。
【0051】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0052】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 タイヤ検査装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
31 発信器
70 読取部
131 取得部
132 判定部
133 出力部