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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084584
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240618BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100B
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198924
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】坂井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】曽根 直幸
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131BA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC15
3D131BC19
3D131BC22
3D131BC31
3D131BC43
3D131BC44
3D131BC51
3D131BC55
3D131DA52
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB27V
3D131EB42V
3D131EB42X
3D131EB43V
3D131EB43X
3D131EB44V
3D131EB44X
3D131EB46V
3D131EB46X
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EB87Z
3D131EB91V
3D131EB91X
3D131EB94V
3D131EB94X
3D131EB94Z
3D131EB97V
3D131EB97X
3D131EB97Z
3D131EB99V
3D131EB99X
3D131EB99Z
3D131EC01V
3D131EC01X
3D131LA05
3D131LA20
3D131LA24
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、陸部の剛性の低下を極力抑制しつつも、摩耗進展時の排水性を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、陸部に、1本以上のサイプを有し、前記サイプは、前記踏面への開口部からタイヤ径方向内側に延びる狭幅サイプ部と、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向内側端に連通してサイプ底まで延び、前記狭幅サイプ部よりも大きいサイプ幅を有する拡幅部と、を有し、前記拡幅部のタイヤ径方向の延在長さは、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向の延在長さよりも長く、前記拡幅部は、前記狭幅サイプ部に連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁によって区画された部分を有し、前記タイヤ径方向外側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°の傾斜角度で傾斜して延びている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の踏面に、溝で区画された陸部を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、1本以上のサイプを有し、
前記サイプは、前記踏面への開口部からタイヤ径方向内側に延びる狭幅サイプ部と、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向内側端に連通してサイプ底まで延び、前記狭幅サイプ部よりも大きいサイプ幅を有する拡幅部と、を有し、
前記拡幅部のタイヤ径方向の延在長さは、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向の延在長さよりも長く、
前記拡幅部は、前記狭幅サイプ部に連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁によって区画された部分を有し、
前記タイヤ径方向外側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°の傾斜角度で傾斜して延びていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ径方向外側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して40~65°の傾斜角度で傾斜して延びている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記拡幅部は、前記サイプ底側に、タイヤ径方向に対して傾斜して延びる2つのタイヤ径方向内側縁によって区画された部分を有し、
前記タイヤ径方向内側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~60°の傾斜角度で傾斜して延びている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記拡幅部は、前記狭幅サイプ部に連通し、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸増するサイプ幅漸増部と、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸減して前記サイプ底まで延びるサイプ幅漸減部と、を有する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記拡幅部は、断面視で略菱形である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記拡幅部は、断面視で略六角形状である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記狭幅サイプ部は、平板状のサイプである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記狭幅サイプ部は、深さ方向に屈曲しながら延びる3次元サイプである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有し、
少なくとも、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるタイヤ幅方向最外側陸部に、前記サイプを有する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤのトレッド部には、排水用の溝が設けられているが、摩耗進展時には溝体積が減少することから、摩耗進展時に排水性が低下することが問題となる。
【0003】
これに対し、摩耗進展時のタイヤの排水性を向上させる技術として、トレッド部に摩耗進展時にサイプ幅が大きくなるサイプを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013-540077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、摩耗進展時にサイプ幅が大きくなる構成とすると、陸部の剛性が低下してしまい、十分なウェットグリップ性能が得られない場合があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、陸部の剛性の低下を極力抑制しつつも、摩耗進展時の排水性を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド部の踏面に、溝で区画された陸部を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、1本以上のサイプを有し、
前記サイプは、前記踏面への開口部からタイヤ径方向内側に延びる狭幅サイプ部と、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向内側端に連通してサイプ底まで延び、前記狭幅サイプ部よりも大きいサイプ幅を有する拡幅部と、を有し、
前記拡幅部のタイヤ径方向の延在長さは、前記狭幅サイプ部のタイヤ径方向の延在長さよりも長く、
前記拡幅部は、前記狭幅サイプ部に連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁によって区画された部分を有し、
前記タイヤ径方向外側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°の傾斜角度で傾斜して延びていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0008】
ここで、「トレッド部の踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した、最大負荷状態において、路面と接することとなるトレッド部の外表面のタイヤ周方向全周にわたる面をいう。
また、「サイプ」とは、接地時に閉塞する程度のサイプ幅(開口幅)を有するものをいう。
上記「延在長さ」、「サイプ幅」、「傾斜角度」等、及び後述の各形状や寸法は、特に断りのない限り、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態でのものである。
【0009】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「ホイール」の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
(2)前記タイヤ径方向外側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して40~65°の傾斜角度で傾斜して延びている、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
(3)前記拡幅部は、前記サイプ底側に、タイヤ径方向に対して傾斜して延びる2つのタイヤ径方向内側縁によって区画された部分を有し、
前記タイヤ径方向内側縁の各々は、前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~60°の傾斜角度で傾斜して延びている、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
ここで、上記「タイヤ径方向内側縁の各々の前記サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する傾斜角度」は、タイヤ径方向内側縁の各々が断面視で直線状に延びていない場合は、最小二乗法により直線で近似した際の「傾斜角度」をいうものとする。
【0011】
(4)前記拡幅部は、前記狭幅サイプ部に連通し、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸増するサイプ幅漸増部と、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸減して前記サイプ底まで延びるサイプ幅漸減部と、を有する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(5)前記拡幅部は、断面視で略菱形である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0013】
(6)前記拡幅部は、断面視で略六角形状である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0014】
(7)前記狭幅サイプ部は、平板状のサイプである、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0015】
(8)前記狭幅サイプ部は、深さ方向に屈曲しながら延びる3次元サイプである、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0016】
(9)1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有し、
少なくとも、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるタイヤ幅方向最外側陸部に、前記サイプを有する、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
ここで、「トレッド端」とは、上記最大負荷状態における接地面のタイヤ幅方向最外側位置をいう。また、「周方向主溝」とは、タイヤ周方向に延びる溝のうち、溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、陸部の剛性の低下を極力抑制しつつも、摩耗進展時の排水性を向上させた、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図2】幅方向サイプの断面図である。
図3】変形例にかかる幅方向サイプの断面図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図5】本発明の他の実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。ここで、空気入りタイヤ( 以下、単にタイヤとも称する) の内部構造等については、従来のものと同様の構造とすることができる。一例としては、該タイヤは、一対のビード部と、該一対のビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に配置されたトレッド部とを有するものとすることができる。また、該タイヤは、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を有するものとすることができる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【0021】
図1に示すように、本例のタイヤは、トレッド部の踏面1に、トレッド周方向に延びる複数本(図示例では3本)の周方向主溝2(2a、2b、2c)と、複数本の周方向主溝2のうちトレッド幅方向に隣接する周方向主溝2間に、又は、周方向主溝2(2a、2c)とトレッド端TEとにより、区画される複数(図示例では4つ)の陸部3(3a、3b、3c、3d) と、を有している。この例では、1つの周方向主溝2bは、タイヤ赤道面CL上に位置しており、他の周方向主溝2a、2cは、それぞれタイヤ赤道面CLを境界としたトレッド幅方向の一方の半部、他方の半部に位置している。そして、この例では、各トレッド幅方向半部に2つずつの陸部3が配置されている。図示のように、陸部3b 、3cは、トレッド幅方向中央側の陸部であり、陸部3a、3dは、トレッド端TEに隣接する陸部である。
【0022】
図1に示した例では、周方向主溝2の本数は、3本であるが、2本又は4本以上とすることもできる。従って、陸部3の個数も、3つ又は5つ以上とすることができる。また、本例では、全ての陸部がリブ状陸部3であるが、少なくとも1つの陸部が、非リブ状陸部、すなわちブロック状陸部であっても良い。なお、「リブ状陸部」とは、陸部が、トレッド幅方向に延びる幅方向溝によってトレッド周方向に完全に分断されていない陸部をいう。従って、本明細書では、幅方向サイプによってトレッド周方向に完全に分断されていても、「リブ状陸部」である。
【0023】
周方向主溝2の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅)) は、周方向主溝2の本数にもよるため特には限定されないが、例えば5~25mmとすることができる。同様に、周方向主溝2の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば6~18mmとすることができる。
【0024】
図示例では、トレッド踏面1の平面視において、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1つの周方向主溝2がトレッド周方向に対して傾斜して延びていても良く、その場合、トレッド周方向に対して、例えば5 °以下の角度で傾斜して延びるものとすることができる。また、図示例では、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の周方向主溝2が、ジグザグ状、湾曲状などの形状を有していても良い。
【0025】
図示例では、各陸部3は、トレッド幅方向に延びる幅方向溝4を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する(図示例でリブ状の)陸部3a、3dにおいては、トレッド端TEからトレッド幅方向内側に延びて(図示例でリブ状の)陸部3a、3d内で終端する幅方向溝4を、図示の範囲で3本ずつ有している。また、トレッド幅方向中央側の(図示例でリブ状の)陸部3b、3cにおいては、タイヤ赤道面CL上に位置する周方向主溝2bからトレッド幅方向外側に延びて(図示例でリブ状の)陸部3b、3c内で終端する幅方向溝4を図示の範囲で3本ずつ有している。幅方向溝4の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、全ての陸部3が幅方向溝4を有しているが、トレッド踏面1に幅方向溝4を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向溝4を有していれば良く、トレッド端TEにより区画される陸部3(図示例では陸部3a、3d) が幅方向溝4を有していることが好ましい。
ここで、幅方向溝4の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向溝4の本数にもよるため特には限定されないが、例えば1.0~1.5mmとすることができる。同様に、幅方向溝4の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば4~18mmとすることができる。
なお、図示例では、いずれの幅方向溝4も、トレッド幅方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1本の幅方向溝4がトレッド幅方向に対して傾斜して延びていても良く、この場合、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示例では、幅方向溝4は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向溝4が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向溝4は、排水性を向上させる観点から、例えば図示例のように、トレッド端TE又は周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向溝4は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3 においては、幅方向溝4は、該2本の周方向主溝2 のうちいずれの方に開口していても良い。
【0026】
各陸部3は、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプ5をさらに有している。図示例では、各陸部3は、トレッド幅方向に延びる幅方向サイプ5を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する陸部3a、3dにおいては、周方向主溝2a、2cのそれぞれからトレッド幅方向外側に延びて陸部3a、3d内で終端する幅方向サイプ5を、図示の範囲で3本ずつ有している。また、トレッド幅方向中央側の陸部3b、3cにおいては、周方向主溝2a、2cのそれぞれからトレッド幅方向内側に延びて陸部3b、3c内で終端する幅方向サイプ5を図示の範囲で3本ずつ有している。幅方向サイプ5の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、全ての陸部3が幅方向サイプ5を有しているが、トレッド踏面1に幅方向サイプ5を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向サイプ5を有していれば良く、トレッド端TEにより区画される陸部3(図示例では陸部3a、3d)が幅方向サイプ5を有していることが好ましい。
ここで、幅方向サイプ5のサイプ幅(開口幅(サイプの延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向サイプ5の本数にもよるため特には限定されないが、例えば0.2~ 1.0 mmとすることができる。同様に、幅方向サイプ5のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば4.0~18.0mmとすることができる。
なお、図示例では、いずれの幅方向サイプ5も、トレッド幅方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1本の幅方向サイプ5がトレッド幅方向に対して傾斜して延びていても良く、この場合、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示例では、幅方向サイプ5は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向サイプ5が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向サイプ5は、排水性を向上させる観点から、トレッド端TE又は図示例のように周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向サイプ5は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3においては、幅方向サイプ5は、該2本の周方向主溝2のうちいずれの方に開口していても良い。
【0027】
ここで、図示例では、幅方向溝4と幅方向サイプ5とがトレッド周方向で見た際に、交互に配置されている。これにより陸部3の剛性のバランスをより適正化することができる。一方で、トレッド周方向で見た際に、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向サイプ5間に幅方向溝4が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良く、また、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向溝4間に幅方向サイプ5が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良い。
また、図示例では、幅方向溝4及び幅方向サイプ5は、いずれも陸部3のトレッド幅方向中央で終端しているが、幅方向溝4と幅方向サイプ5とは、トレッド周方向に投影した際に重なる部分を有していても良く、あるいは、重ならないように配置しても良い。
【0028】
このように、本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部の踏面1に、溝で区画された陸部を有し、陸部3に、1本以上のサイプを有している。
【0029】
図2は、幅方向サイプの(延在方向に直交する断面の)断面図である。図2に示すように、幅方向サイプ5は、踏面1への開口部からタイヤ径方向内側に延びる狭幅サイプ部5aと、狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向内側端に連通してサイプ底5cまで延び、狭幅サイプ部5aよりも大きいサイプ幅を有する拡幅部5bと、を有している。
【0030】
本例では、狭幅サイプ部5aは、サイプ幅(断面視において、踏面1に平行に測った幅)が(踏面1での開口幅に等しく)一定である、平板状のサイプである。一方で、狭幅サイプ部5aは、深さ方向に屈曲しながら延びる3次元サイプであっても良い。
【0031】
本実施形態において、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通し、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸増するサイプ幅漸増部51と、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸減してサイプ底まで延びるサイプ幅漸減部53と、を有している。本例では、拡幅部5bは、サイプ幅漸増部51とサイプ幅漸減部53との間は、このサイプ幅の変化の小さい中間部52をさらに有している。また、図示例では、サイプ底5cは、直線状であるが、湾曲した形状としても良く、湾曲形状は、サイプ底5cのクラックの発生を抑制するために好ましい。
【0032】
図示例では、拡幅部5bは、断面視で略菱形である。すなわち、狭幅サイプ部5aへの連結部分の幅、中間部52、及び、サイプ底5cへの連結部分の幅をそれぞれ点として考えた場合に、拡幅部5bの断面視での概略形状が、菱形状である。
【0033】
ここで、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁5b1、5b2によって区画された部分を有し、タイヤ径方向外側縁5b1、5b2の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°(より好ましくは40~65°)の傾斜角度θ1で傾斜して延びている。図示例では、タイヤ径方向外側縁5b1及びタイヤ径方向外側縁5b2は、それぞれ逆方向に(延長線が互いに交差するように)、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する同じ傾斜角度で傾斜している。従って、本例では、サイプ幅漸増部51は、断面視で略二等辺三角形状である(狭幅サイプ部5aへの連結部分の幅を点と見ている)。
【0034】
また、拡幅部5bは、サイプ底5c側に、タイヤ径方向に対して傾斜して延びる2つのタイヤ径方向内側縁5b3、5b4によって区画された部分を有し、タイヤ径方向内側縁5b3、5b4の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~60°(より好ましくは35~55°)の傾斜角度θ2で傾斜して延びている。図示例では、タイヤ径方向外側縁5b3及びタイヤ径方向外側縁5b4は、それぞれ逆方向に(延長線が互いに交差するように)、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する同じ傾斜角度で傾斜している。従って、本例では、サイプ幅漸減部53は、断面視で略二等辺三角形状である(サイプ底の幅を点と見ている))。
【0035】
ここで、狭幅サイプ部5aのサイプ幅w1は、特には限定されないが、例えば0.2~ 1.0mmとすることができる。狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向の延在長さh1は、特には限定されないが、例えば2.0~12mmとすることができる。
拡幅部5bの最大幅w2は、特には限定されないが、例えば1.2~6.0mmとすることができる。拡幅部5bのタイヤ径方向の延在長さh2は、狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向の延在長さh1よりも長く、特には限定されないが、例えば2.5~11.0mmとすることができる。
図2の例では、サイプ幅漸増部51のタイヤ径方向の延在長さh21は、特には限定されないが、例えば1.0~3.0 m m とすることができ、中間部52のタイヤ径方向の延在長さh22は、特には限定されないが、例えば0.2~0.4mmとすることができ、サイプ幅漸減部53のタイヤ径方向の延在長さh23は、特には限定されないが、例えば1.5~8.0mmとすることができる。幅方向サイプ5のサイプ深さ(最大深さ)hは、特には限定されないが、例えば4.0~18.0mmとすることができる。
【0036】
比h21/h23は、0.9~1.1とすることが好ましい。また、サイプ底5cの幅は、狭幅サイプ部5aのサイプ幅より大きいことが好ましい。
【0037】
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
まず、本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に1本以上の拡幅部5bを有する幅方向サイプ5を有しているため、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。そして、拡幅部5bのタイヤ径方向の延在長さh2は、狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向の延在長さh1よりも長いため、排水性を向上させることのできる期間を長く確保することができる。
【0038】
本発明者らは、サイプにより区画される陸部の形状そのものによる剛性に着目し、拡幅部の断面視での形状が矩形である場合の角部に剛性を補強する種々の形状のゴム部を設けることを試みたところ、図2に示すゴム部61~64のように、断面視で三角形状の場合が、断面視で矩形状の場合よりも、単位体積当たりの圧縮剛性の負担率が高く、剛性を効率的に向上させ得るという知見を得た。そして、断面視で三角形状のゴム部の斜辺(すなわち、2つのタイヤ径方向外側縁5b1、5b2及び2つのタイヤ径方向内側縁5b3、5b4)のサイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する傾斜角度にも着目したところ、後述の実施例にも示される通り、2つのタイヤ径方向外側縁5b1、5b2のサイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する傾斜角度が30~70°(より好ましくは40~65°)である場合や、2つのタイヤ径方向内側縁5b3、5b4のサイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する傾斜角度が30~60°(より好ましくは35~55°)である場合に、単位体積当たりの圧縮剛性の負担率が最も高くなるという知見を得た。
【0039】
本実施形態では、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁5b1、5b2によって区画された部分を有し、タイヤ径方向外側縁5b1、5b2の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°の傾斜角度で傾斜して延びているため、サイプ体積に比してサイプにより区画される陸部の剛性が高い。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、陸部の剛性の低下を極力抑制しつつも、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。
【0040】
上記の実施形態のように、拡幅部5bは、サイプ底5c側に、タイヤ径方向に対して傾斜して延びる2つのタイヤ径方向内側縁5b3、5b4によって区画された部分を有し、タイヤ径方向内側縁5b3、5b4の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~60°の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい(より好ましくは、35~55°)。これにより、サイプ底5c側でもサイプ体積に比して剛性の高い形状とすることができ、陸部の剛性の低下をさらに抑制することができる。
【0041】
上述したような効果を得るために、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通し、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸増するサイプ幅漸増部51と、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸減してサイプ底5cまで延びるサイプ幅漸減部53と、を有する形状であることが好ましい。同様に、拡幅部5bは、断面視で略菱形であることが好ましい。
【0042】
図3は、変形例にかかる幅方向サイプの断面図である。図3に示す幅方向サイプ5も、踏面1への開口部からタイヤ径方向内側に延びる狭幅サイプ部5aと、狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向内側端に連通してサイプ底5cまで延び、狭幅サイプ部5aよりも大きいサイプ幅を有する拡幅部5bと、を有している。図3に示すサイプは、サイプの最大幅を小さくしている点で、図2に示した幅方向サイプと異なっている。
【0043】
狭幅サイプ部51については、図2と同様であるので、再度の説明を省略する。また、図3の場合も、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通し、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸増するサイプ幅漸増部51と、サイプ幅がタイヤ径方向外側から内側に向かって漸減してサイプ底まで延びるサイプ幅漸減部53と、を有している。本例では、拡幅部5bは、サイプ幅漸増部51とサイプ幅漸減部53との間は、サイプ幅が略一定である中間部52をさらに有している。中間部52は、図示例では、断面視で直線状に区画されているが、サイプ幅が略一定である範囲で湾曲していても良い。また、図示例では、サイプ底5cは、直線状であるが、湾曲した形状としても良く、湾曲形状は、サイプ底5cのクラックの発生を抑制するために好ましい。
【0044】
図示例では、拡幅部5bは、断面視で略六角形状である。すなわち、狭幅サイプ部5aへの連結部分の幅、及び、サイプ底5cへの連結部分の幅をそれぞれ点として考えた場合に、拡幅部5bの断面視での概略形状が、六角形状である(図2の場合と異なり、中間部52は、点として考えていない)。
【0045】
図2の場合と同様に、拡幅部5bは、狭幅サイプ部5aに連通する側に、タイヤ径方向に対して傾斜して断面視で直線状に延びる2つのタイヤ径方向外側縁5b1、5b2によって区画された部分を有し、タイヤ径方向外側縁5b1、5b2の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~70°(より好ましくは40~65°)の傾斜角度θ1で傾斜して延びている。図示例では、タイヤ径方向外側縁5b1及びタイヤ径方向外側縁5b2は、それぞれ逆方向に(延長線が互いに交差するように)、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する同じ傾斜角度で傾斜している。従って、本例では、サイプ幅漸増部51は、断面視で略二等辺三角形状である。
【0046】
また、図2の場合と同様に、拡幅部5bは、サイプ底5c側に、タイヤ径方向に対して傾斜して延びる2つのタイヤ径方向内側縁5b3、5b4によって区画された部分を有し、タイヤ径方向内側縁5b3、5b4の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して30~60°(より好ましくは35~55°)の傾斜角度θ2で傾斜して延びている。図示例では、タイヤ径方向外側縁5b3及びタイヤ径方向外側縁5b4は、それぞれ逆方向に(延長線が互いに交差するように)、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対する同じ傾斜角度で傾斜している。従って、本例では、サイプ幅漸減部53は、断面視で略二等辺三角形状である。
【0047】
ここで、狭幅サイプ部5aのサイプ幅w1は、特には限定されないが、例えば0.2~ 1.0mmとすることができる。狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向の延在長さh1は、特には限定されないが、例えば2.0~12mmとすることができる。
拡幅部5bの最大幅w2は、特には限定されないが、例えば2.0~4.0mmとすることができる。拡幅部5bのタイヤ径方向の延在長さh2は、狭幅サイプ部5aのタイヤ径方向の延在長さh1よりも長く、特には限定されないが、例えば2.0~6.0mmとすることができる。
図3の例では、サイプ幅漸増部51のタイヤ径方向の延在長さh21は、特には限定されないが、例えば0.8~2.5mmとすることができ、中間部52のタイヤ径方向の延在長さh22は、特には限定されないが、例えば0.4~1.5mmとすることができ、サイプ幅漸減部53のタイヤ径方向の延在長さh23は、特には限定されないが、例えば0.6~2.0mmとすることができる。幅方向サイプ5のサイプ深さ(最大深さ)hは、特には限定されないが、例えば4.0~18.0mmとすることができる。
【0048】
図3の場合において、比h21/h23は、0.7~1.3とすることが好ましい。また、サイプ底5cの幅は、狭幅サイプ部5aのサイプ幅より大きいことが好ましい。
【0049】
図3の変形例によっても、陸部の剛性の低下を極力抑制しつつも、摩耗進展時の排水性を向上させることができるという効果を得ることができる。さらに、図3の変形例では、側部が断面視で略直線状であるため、金型からの脱型時の歪みを抑制して、ゴム割れをより効果的に抑制することができる。
【0050】
上記の例では、サイプがタイヤ幅方向に(傾斜せずに延びる)幅方向サイプである場合を示したが、サイプは、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる幅方向サイプであっても良い。また、タイヤ周方向に延びる周方向サイプであっても良く、この場合は、周方向サイプが延在するタイヤ周方向に直交する断面の形状及び寸法が、例えば図2図3に示したようになる。また、幅方向サイプと周方向サイプとを併用したパターンとすることもできる。
本実施形態の空気入りタイヤは、特に、乗用車用タイヤや重荷重用タイヤ( 特にトラック・バス用タイヤ) として好適に用いられる。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図4に示すように、タイヤは、通信装置としてのRFタグを備えてよい。RFタグは、ICチップとアンテナとを備える。RFタグは、例えば、タイヤを構成する同種又は異種の複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、タイヤ生産時にRFタグを取り付け易く、RFタグを備えるタイヤの生産性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、ビードフィラーと、ビードフィラーに隣接するその他の部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、タイヤを構成するいずれかの部材内に埋設されていてもよい。このようにすることで、タイヤを構成する複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置される場合と比較して、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、トレッドゴム、サイドゴム等のゴム部材内に埋設されてよい。RFタグは、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグは、剛性段差に基づき歪みが集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカスの端部と、このカーカスの端部に隣接する部材(例えばサイドゴム等)と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。RFタグの数は特に限定されない。タイヤは、1個のみのRFタグを備えてもよく、2個以上のRFタグを備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグを例示説明しているが、RFタグとは異なる通信装置であってもよい。
【0052】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグは、タイヤのサイドカットにより損傷しない。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド中央部に配置されてよい。トレッド中央部は、トレッド部において撓みが集中し難い位置である。このようにすることで、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、タイヤ幅方向でのタイヤの両外側からのRFタグとの通信性に差が生じることを抑制できる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を中心としてトレッド幅の1/2の範囲内に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端部に配置されてもよい。RFタグと通信するリーダーの位置が予め決まっている場合には、RFタグは、例えば、このリーダーに近い一方側のトレッド端部に配置されてよい。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端を外端とする、トレッド幅の1/4の範囲内に配置されてよい。
【0053】
RFタグは、例えば、ビード部間に跨る、1枚以上のカーカスプライを含むカーカスより、タイヤ内腔側に配置されてよい。このようにすることで、タイヤの外部から加わる衝撃や、サイドカットや釘刺さりなどの損傷に対して、RFタグが損傷し難くなる。一例として、RFタグは、カーカスのタイヤ内腔側の面に密着して配置されてよい。別の一例として、カーカスよりタイヤ内腔側に別の部材がある場合に、RFタグは、例えば、カーカスと、このカーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材と、の間に配置されてもよい。カーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材としては、例えば、タイヤ内面を形成するインナーライナーが挙げられる。別の一例として、RFタグは、タイヤ内腔に面するタイヤ内面に取り付けられていてもよい。RFタグが、タイヤ内面に取り付けられる構成とすることで、RFタグのタイヤへの取り付け、及び、RFタグの点検・交換が行い易い。つまり、RFタグの取り付け性及びメンテナンス性を向上させることができる。また、RFタグが、タイヤ内面に取り付けられることで、RFタグをタイヤ内に埋設する構成と比較して、RFタグがタイヤ故障の核となることを防ぐことができる。また、カーカスが、複数枚のカーカスプライを備え、複数枚のカーカスプライが重ねられている位置がある場合に、RFタグは、重ねられているカーカスプライの間に配置されていてもよい。
【0054】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、1枚以上のベルトプライを含むベルトより、タイヤ径方向の外側に配置されてよい。一例として、RFタグは、ベルトに対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルトに密着して配置されてよい。また、別の一例として、補強ベルト層を備える場合、当該補強ベルト層に対してタイヤ径方向の外側で、当該補強ベルト層に密着して配置されてよい。また、別の一例として、RFタグは、ベルトよりタイヤ径方向の外側で、トレッドゴム内に埋設されていてもよい。RFタグが、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の外側に配置されることで、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信が、ベルトにより阻害され難い。そのため、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を向上させることができる。また、RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側がベルトに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。この一例として、RFタグは、タイヤのトレッド部で、ベルトと、当該ベルトよりタイヤ径方向の内側に位置するカーカスと、の間に配置されてよい。また、ベルトが、複数枚のベルトプライを備える場合に、RFタグは、タイヤのトレッド部で、任意の2枚のベルトプライの間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側が1枚以上のベルトプライに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。
【0055】
図5は、本発明の他の実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。RFタグは、例えば、クッションゴムと、トレッドゴムとの間やクッションゴムと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、クッションゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、RFタグは、例えば、クッションゴム内に埋設されていてもよい。更に、クッションゴムは、隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、クッションゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されてもよい。
【0056】
RFタグは、例えば、タイヤのサイドウォール部又はビード部の位置に配置されてよい。RFタグは、例えば、RFタグと通信可能なリーダーに対して近い一方側のサイドウォール部又は一方側のビード部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグとリーダーとの通信性を高めることができる。一例として、RFタグは、カーカスと、サイドゴムと、の間やトレッドゴムとサイドゴムと、の間に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ径方向において、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグがタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を高めることができる。RFタグは、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグは、剛性の高いビード部近傍に配置される。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。一例として、RFタグは、ビードコアとタイヤ径方向又はタイヤ幅方向で隣接する位置に配置されてよい。ビードコア近傍は歪みが集中し難い。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。特に、RFタグは、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側であって、かつ、ビード部のビードコアよりタイヤ径方向の外側の位置に配置されることが好ましい。このようにすることで、RFタグの耐久性を向上させることができるとともに、RFタグとリーダーとの通信が、ビードコアにより阻害され難く、RFタグの通信性を高めることができる。また、サイドゴムがタイヤ径方向に隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグは、サイドゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0057】
図4に示すように、RFタグは、ビードフィラーと、このビードフィラーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ビードフィラーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、ビードフィラーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分は、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分が、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。また、ビードフィラーは、サイドゴムと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ビードフィラーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、RFタグは、スティフナーと、このスティフナーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、スティフナーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、スティフナーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。また、RFタグは、例えば、スティフナーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分は、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分が、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。スティフナーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。スティフナーは、タイヤ幅方向の外側でハットゴムに隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。スティフナーは、硬さの異なる複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。RFタグは、ハットゴムと、このハットゴムに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、例えば、ハットゴムと、カーカスプライと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、ハットゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0059】
RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ゴムチェーファーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、リムから加わる衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を低減できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0060】
図5に示すように、RFタグは、ワイヤーチェーファーと、このワイヤーチェーファーのタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、ゴムチェーファーなどのゴム部材であってよい。また、ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、カーカスであってもよい。
【0061】
図4に示すように、ベルトの半径方向外側にベルト補強層をさらに備えてもよい。例えば、ベルト補強層はポリエチレンテレフタレートからなるコードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回してなってもよい。ここでコードは、6.9×10-2 N/tex以上の張力をかけて接着剤処理を施してなり、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5 mN/dtex・%以上であってもよい。さらにベルト補強層はベルト全体を覆うように配置されていてもベルトの両端部のみを覆うように配置されていてもよい。さらにベルト補強層の単位幅あたりの巻き回し密度が幅方向位置で異なっていてもよい。このようにすることで、高速耐久性を低下させることなくロードノイズおよびフラットスポットを低減させることができる。
【実施例0062】
(実施例1)
本発明の効果を確かめるため、図2に示したサイプ(発明例1)と、図3に示したサイプ(発明例2)と、拡幅部が断面矩形状のサイプ(狭幅サイプ部の構成は、発明例1、2と同じであり、拡幅部の最大幅も発明例1、2と同じである)(比較例)とについてせん断剛性を評価するシミュレーションを行った。
発明例1については、w1=0.2mm w2=3.0mm、h1=3.2mm、h21=1.75mm、h22=0.10mm、h23=1.75mmとし、タイヤ径方向外側縁の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して52°の傾斜角度で傾斜して延び、タイヤ径方向内側縁の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して52°の傾斜角度で傾斜して延びているものとした。
発明例2については、w1=0.2mm、w2=2.6mm、h1=3.2mm、h21=1.22mm、h22=0.88mm、h23=1.5mmとし、タイヤ径方向外側縁の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して52°の傾斜角度で傾斜して延び、タイヤ径方向内側縁の各々は、サイプの延在方向に直交する断面における幅方向に対して48°の傾斜角度で傾斜して延びているものとした。
せん断剛性の評価方法は、サイプを含むブロック(30.0×36.0×8.0mm)に約6.0%のせん断歪を与えた際に踏面に発生するせん断方向の摩擦力の比較のシミュレーションにより行った。
【0063】
比較例を100とする指数(数値が大きい方がせん断剛性が高い)において、発明例1では、102.9であった。
【0064】
次に、発明例1と発明例2に対し、脱金型時の歪みを評価する試験を行った。試験は、試験は、脱金型時に発生する最大歪を算出すべく、ブレードが金型から引き抜かれる様子をカメラ撮影することで行った。発明例1の歪みを100とする指数(数値が大きい方が歪みが大きい)において、発明例2では、78.3であり、発明例2は、発明例1よりも歪みを抑制できた。
【0065】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.12_つくる責任、つかう責任」および「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0066】
1:踏面、 2:周方向主溝、 3:陸部、 4:幅方向溝、
5:幅方向サイプ、 5a:狭幅サイプ部、 5b:拡幅部、 5c:サイプ底、
51:サイプ幅漸増部、 52、中間部、 53:サイプ幅漸減部、
61~64:ゴム部、 100、200:通信装置、
CL:タイヤ赤道面、 TE:トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5