IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084586
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240618BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20240618BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240618BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/38
H05K3/18
H05K3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198926
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
(72)【発明者】
【氏名】伊西 拓弥
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
5E343
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316CC54
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD47
5E316EE33
5E316FF14
5E316FF17
5E316GG15
5E316HH11
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB18
5E317CC25
5E317CC33
5E317CD32
5E317GG03
5E317GG17
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA17
5E343BB05
5E343BB24
5E343BB67
5E343CC22
5E343DD25
5E343DD43
5E343DD76
5E343EE36
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】高い品質を有するプリント配線板の提供。
【解決手段】プリント配線板は、樹脂と無機粒子とを含みビア孔を有する樹脂絶縁層と導体層とが交互に複数層積層されている積層体と、各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔内にそれぞれ形成されていて、積層方向に隣り合う前記導体層同士を接続するビア導体と、を有するプリント配線板であって、各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔の内壁面は、前記樹脂と前記無機粒子とで形成され、前記無機粒子は、前記内壁面を形成する第一平滑面を有する第一無機粒子と、前記樹脂絶縁層内に埋まっている第二無機粒子とを含み、各々の前記ビア導体は、積層方向で重なっていて、シード層と前記シード層上の電解めっき層で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と無機粒子とを含みビア孔を有する樹脂絶縁層と導体層とが交互に複数層積層されている積層体と、
各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔内にそれぞれ形成されていて、積層方向に隣り合う前記導体層同士を接続するビア導体と、
を有するプリント配線板であって、
各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔の内壁面は、前記樹脂と前記無機粒子とで形成され、
前記無機粒子は、前記内壁面を形成する第一平滑面を有する第一無機粒子と、前記樹脂絶縁層内に埋まっている第二無機粒子とを含み、
各々の前記ビア導体は、積層方向で重なっていて、シード層と前記シード層上の電解めっき層で形成されている。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、
前記第一平滑面は、前記無機粒子の切断面である。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板であって、
前記内壁面を形成する前記樹脂の面と前記第一平滑面とが面一である。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板であって、
前記内壁面を形成する前記樹脂の面と前記第一平滑面とによって、前記内壁面が平滑に形成されている。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板であって、
前記シード層がスパッタ膜である。
【請求項6】
請求項5のプリント配線板であって、
前記スパッタ膜は、前記ビア孔の内壁面に接する第一層と前記第一層上の第二層で形成されており、
前記第一層は、銅合金によって形成されていて、
前記第二層は、銅によって形成されている。
【請求項7】
請求項1のプリント配線板であって、
前記シード層が形成されている前記樹脂絶縁層の表面は、前記樹脂のみで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示する技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂から成る絶縁層と配線導体層とが交互に複数層積層されている多層配線基板が開示されている。上下に位置する配線導体層同士は、それらの間の絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続されている。貫通導体は、最上層の絶縁層に形成された貫通導体にその下層側の貫通導体が上下方向に連続するように積み重ねられている。最上層の絶縁層に形成された貫通導体の上端部は、絶縁層から突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-268517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、絶縁層に設けた貫通孔に貫通導体が埋設されている。貫通孔の内壁面(内周面)に凹凸がある場合、貫通導体の外壁面(外周面)に凹凸に対応する応力が集中しやすい部位が形成される。この貫通導体に応力が集中すると、貫通導体に亀裂が生じると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のプリント配線板は、
樹脂と無機粒子とを含みビア孔を有する樹脂絶縁層と導体層とが交互に複数層積層されている積層体と、
各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔内にそれぞれ形成されていて、積層方向に隣り合う前記導体層同士を接続するビア導体と、
を有するプリント配線板であって、
各々の前記樹脂絶縁層の前記ビア孔の内壁面は、前記樹脂と前記無機粒子とで形成され、
前記無機粒子は、前記内壁面を形成する第一平滑面を有する第一無機粒子と、前記樹脂絶縁層内に埋まっている第二無機粒子とを含み、
各々の前記ビア導体は、積層方向で重なっていて、シード層と前記シード層上の電解めっき層で形成されている。
【0006】
本開示の実施形態のプリント配線板は、樹脂絶縁層は無機粒子と樹脂とを含む。樹脂絶縁層はビア孔を有する。ビア孔の内壁面はビア導体のシード層と接する。ビア孔の内壁面を樹脂と無機粒子とで形成する。ビア孔の内壁面を平滑とすることにより、内壁面上に形成されるシード層の表面が平滑となり、電解めっき層の充填性が向上する。これによりビア導体の内層を構成する電解めっき層に応力集中部位が形成されるのが抑制される。ビア導体の内層に亀裂が生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
図2】実施形態のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
図3A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す拡大断面図。
図3E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3G】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3H】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図4】実施形態の別例2のプリント配線板の製造方法を模式的に示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。図2は実施形態のプリント配線板2の一部を示す拡大断面図である。図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と積層体9とを有する。積層体9は樹脂絶縁層と導体層とを交互に複数層積層して形成されている。具体的には、積層体9は第一導体層10と第一樹脂絶縁層20と第二導体層30と第一ビア導体40と第二樹脂絶縁層120と第三導体層130と第二ビア導体140とを有する。
【0010】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。
絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第三面6(図中の上面)と第三面6と反対側の第四面8(図中の下面)を有する。
【0011】
第一導体層10は絶縁層4の第三面6上に形成されている。第一導体層10は信号配線12とパッド14を含む。第一導体層10は信号配線12とパッド14とは別の導体回路も含んでいてもよい。第一導体層10は主に銅によって形成される。第一導体層10は、絶縁層4上のシード層10aとシード層10a上の電解めっき層10bで形成されている。シード層10aは第三面6上の第一層11aと第一層11a上の第二層11bで形成されている。第一層11aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二層11bは銅で形成されている。電解めっき層10bは銅で形成されている。第一層11aは絶縁層4に接している。
【0012】
第一樹脂絶縁層20は絶縁層4の第三面6と第一導体層10上に形成されている。第一樹脂絶縁層20は第一面22(図中の上面)と第一面22と反対側の第二面24(図中の下面)を有する。第一樹脂絶縁層20の第二面24は第一導体層10と対向する。第一樹脂絶縁層20は樹脂80と多数の無機粒子90を含む。第一樹脂絶縁層20は厚み方向に貫通する貫通孔としてのビア孔26を有している。ビア孔26の内壁面27は樹脂80と無機粒子90とで形成されている。内壁面27は平滑に形成されている。
【0013】
樹脂80は、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いてもよい。樹脂80は、一例としてエポキシ系樹脂を用いてもよい。
【0014】
多数の無機粒子90は樹脂80内に分散されている。無機粒子90は、例えば、シリカ、アルミナを用いてもよい。無機粒子90の粒子径は、例えば、平均粒子径0.5μm、粒子径範囲は、0.1μm以上5.0μm以下である。
【0015】
図1図2に示されるように、無機粒子90は第一無機粒子91と第二無機粒子92とを含む。第一無機粒子91はビア孔26の内壁面27を形成する第一平滑面91aを有する。第二無機粒子92は樹脂80内に埋まっている。第二無機粒子92の形状は一例として球形である。第一無機粒子91の形状は一例として球形を平面で切断した形状である。例えば、第一無機粒子91の形状は第二無機粒子92を平面で切断することで得られる。第一無機粒子91の形状と第二無機粒子92の形状は異なる。第一平滑面91aは第一無機粒子91の切断面である。
【0016】
図1に示されるように、第一樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22から無機粒子90は露出しない。具体的には、第一面22から第二無機粒子92は露出しない。第一面22は第二無機粒子92の表面を含まない。第一樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されていない。第一面22は荒らされていない。第一面22は平滑に形成されている。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.02μm以上0.06μm以下である。
【0017】
図2に示されるように、ビア孔26の内壁面27は、樹脂80の面80aと第一無機粒子91の第一平滑面91aとで形成されている。面80aと第一平滑面91aは、ほぼ共通な面を形成する。言い換えると、面80aと第一平滑面91aは、面一とされている。このため、内壁面27に凹凸が形成されない。すなわち、内壁面27は平滑である。内壁面27の算術平均粗さ(Ra)は一例として1.0μm以下である。言い換えると、内壁面27を形成する面80aと第一平滑面91aの各々の算術平均粗さ(Ra)は、一例として1.0μm以下である。
【0018】
図2に示されるように、ビア孔26の内壁面27は傾斜している。パッド14の上面と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ1は例えば70°以上85°以下である。パッド14の上面は第一導体層10の上面に含まれる。第一樹脂絶縁層20の第一面(上面)22と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ2は例えば95°以上110°以下である。
【0019】
図1に示されるように、第二導体層30は第一樹脂絶縁層20の第一面22上に形成されている。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36を含む。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36とは別の導体回路を含んでいてもよい。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成している。第二導体層30は主に銅によって形成される。第二導体層30は、第一面22上のシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。シード層30aは第一面22上の第一層31aと第一層31a上の第二層31bで形成されている。第一層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二層31bは銅で形成されている。電解めっき層30bは銅で形成されている。第一層31aは第一面22に接している。第二層31bは電解めっき層30bと接着している。第二導体層30のうち第一樹脂絶縁層20の第一面22と対向する面は第一面22の表面形状に沿って形成されている。第二導体層30は第一樹脂絶縁層20の第一面22の内側に入り込まない。
【0020】
第一ビア導体40はビア孔26内に形成されている。第一ビア導体40は、積層方向に隣り合う第一導体層10と第二導体層30を接続する。なお、積層方向とは各層を積層した方向であり、各層の厚み方向と同じ方向である。本実施形態では積層方向は上下方向と同じである。図1では第一ビア導体40はパッド14とランド36を接続する。第一ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。第一ビア導体40を形成するシード層30aと第二導体層30を形成するシード層30aは共通である。第一層31aは内壁面27に接している。
【0021】
第二樹脂絶縁層120は第一樹脂絶縁層20の第一面22と第二導体層30上に形成されている。第二樹脂絶縁層120は第五面122(図中の上面)と第五面122と反対側の第六面124(図中の下面)を有する。第二樹脂絶縁層120の第六面124は第二導体層30と対向する。第二樹脂絶縁層120は樹脂180と多数の無機粒子190を含む。第二樹脂絶縁層120は厚み方向に貫通する貫通孔としてのビア孔126を有している。ビア孔126の内壁面127は樹脂180と無機粒子190とで形成されている。内壁面127は平滑に形成されている。樹脂180、無機粒子190は、第一樹脂絶縁層20の樹脂80、無機粒子90と同様である。無機粒子190は、第一無機粒子191と第二無機粒子192とを含む。第一無機粒子191はビア孔126の内壁面127を形成する第一平滑面191aを有する。第二無機粒子192は樹脂180内に埋まっている。第二無機粒子192の形状は一例として球形である。第一無機粒子191の形状は一例として球形を平面で切断した形状である。例えば、第一無機粒子191の形状は第二無機粒子192を平面で切断することで得られる。第一無機粒子191の形状と第二無機粒子192の形状は異なる。第一平滑面191aは第一無機粒子191の切断面である。
【0022】
図1に示されるように、第二樹脂絶縁層120の第五面122は樹脂180のみで形成されている。第五面122から無機粒子190は露出しない。具体的には、第五面122から第二無機粒子92は露出しない。第五面122は第二無機粒子192の表面を含まない。第二樹脂絶縁層120の第五面122には凹凸が形成されていない。第五面122は荒らされていない。第五面122は平滑に形成されている。第五面122の算術平均粗さ(Ra)は、第一面22の算術平均粗さとほぼ同じにしてもよい。
【0023】
図2に示されるように、ビア孔126の内壁面127は、樹脂180の面180aと第一無機粒子191の第一平滑面191aとで形成されている。面180aと第一平滑面191aは、ほぼ共通な面を形成する。言い換えると、面180aと第一平滑面191aは、面一とされている。このため、内壁面127に凹凸が形成されない。すなわち、内壁面127は平滑である。内壁面127の算術平均粗さは、内壁面27の算術平均粗さとほぼ同じにしてもよい。言い換えると、内壁面127を形成する面180aと第一平滑面191aの各々の算術平均粗さを、内壁面27を形成する面80aと第一平滑面91aの各々の算術平均粗さと同じにしてもよい。また、ビア孔126の傾斜角度についても、ビア孔26の傾斜角度とほぼ同じにしてもよい。
【0024】
図1に示されるように、第三導体層130は第二樹脂絶縁層120の第五面122上に形成されている。第三導体層130は第一信号配線132と第二信号配線134とランド136を含む。第三導体層130は第一信号配線132と第二信号配線134とランド136とは別の導体回路を含んでいてもよい。第一信号配線132と第二信号配線134はペア配線を形成している。第三導体層130は主に銅によって形成される。第三導体層130は、第五面122上のシード層130aとシード層130a上の電解めっき層130bで形成されている。シード層130a、電解めっき層130bは第二導体層30のシード層30a、電解めっき層30bと同様である。シード層130aは第五面122上の第一層131aと第一層131a上の第二層131bで形成されている。第一層131aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二層131bは銅で形成されている。電解めっき層130bは銅で形成されている。第一層131aは第五面122に接している。第三導体層130のうち第二樹脂絶縁層120の第五面122と対向する面は第五面122の表面形状に沿って形成されている。第三導体層130は第二樹脂絶縁層120の第五面122の内側に入り込まない。
【0025】
第二ビア導体140はビア孔126内に形成されている。第二ビア導体140は積層方向に隣り合う第二導体層30と第三導体層130を接続する。図1では第二ビア導体140はランド36とランド136を接続する。第二ビア導体140はシード層130aとシード層130a上の電解めっき層130bで形成されている。第二ビア導体140を形成するシード層130aと第三導体層130を形成するシード層130aは共通である。第一層131aは内壁面127に接している。第一ビア導体40と第二ビア導体140は、積層方向で重なっている。
【0026】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
図3A図3Fは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。図3A図3C図E図3Fは断面図である。図3Dは拡大断面図である。図3Aは絶縁層4と絶縁層4の第三面6上に形成されている第一導体層10を示す。第一導体層10はセミアディティブ法によって形成される。第一層11aと第二層11bはスパッタで形成される。電解めっき層10bは電解めっきで形成される。
【0027】
図3Bに示されるように、絶縁層4と第一導体層10上に第一樹脂絶縁層20と保護膜50が形成される。第一樹脂絶縁層20の第二面24が絶縁層4の第三面6と対向している。第一樹脂絶縁層20の第一面22上に保護膜50が形成されている。第一樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90(第二無機粒子92)を有する。無機粒子90は樹脂80内に埋まっている。
【0028】
保護膜50は第一樹脂絶縁層20の第一面22を完全に覆っている。保護膜50は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜50と第一樹脂絶縁層20との間に離型剤による層が形成されている。
【0029】
図3Cに示されるように、保護膜50の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜50と第一樹脂絶縁層20を貫通する。第一導体層10のパッド14に至るビア導体用のビア孔26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO2レーザ光である。ビア孔26によりパッド14が露出される。ビア孔26が形成される時、第一面22は保護膜50で覆われている。そのため、ビア孔26が形成される時、樹脂が飛散しても、第一面22に樹脂が付着することが抑制される。
【0030】
図3Dは、レーザ光照射後のビア孔26の内壁面27bを示す。内壁面27bは樹脂80と樹脂80から突出している無機粒子90で形成されている。内壁面の形状を制御するため、レーザ光照射後の内壁面27bは処理される。樹脂80から突出している無機粒子90を選択的に除去することが好ましい。この除去により、無機粒子90から第一無機粒子91が形成される。例えば、レーザ光照射後の内壁面27bを薬品で処理することで、樹脂80から突出している無機粒子90を選択的に除去してもよい。あるいは、レーザ光照射後の内壁面27bをプラズマで処理することで、樹脂80から突出している無機粒子90を選択的に除去してもよい。無機粒子90を選択的に除去することは、無機粒子90のエッチング速度が樹脂80のエッチング速度より大きいことを含む。例えば、両者のエッチング速度差は10倍以上である。あるいは、両者のエッチング速度差は50倍以上である。あるいは、両者のエッチング速度差は100倍以上である。レーザ光照射後の内壁面27bを処理することで、第一平滑面91a(図2参照)を有する第一無機粒子91が得られる。また、レーザ光照射後の内壁面27bを処理するための条件を制御することで、内壁面27bの形状を制御することができる。条件の例は、温度、濃度、時間、ガスの種類や圧力である。無機粒子90のエッチング速度と樹脂のエッチング速度が制御される。
【0031】
第一樹脂絶縁層20にレーザ光Lを照射することで、樹脂80に埋まっている第二無機粒子92の一部がレーザ光照射後の内壁面27bを形成する。レーザ光照射後の内壁面27bを形成する第二無機粒子92は、樹脂80から突出している突出部分Pと樹脂80に埋まっている部分Eで形成される。レーザ光照射後の内壁面27bが処理される。例えば、四フッ化メタンを含むガスのプラズマで内壁面27bが処理される。突出部分Pが選択的に除去され、実施形態の内壁面27(図1及び図2参照)が形成される。第二無機粒子92から第一無機粒子91が形成される。突出部分Pを選択的に除去することで、第一平滑面91aを有する第一無機粒子91が形成される。球の形を持つ第二無機粒子92が平面で切断されると、第一無機粒子91の形状が得られる。内壁面27は樹脂80の面80aと第一無機粒子91の第一平滑面91aとで形成され、面80aと第一平滑面91aはほぼ同一平面上に位置する。例えば、スパッタで内壁面27b上にシード層30aが形成されると、突出部分Pはスパッタ膜の成長を阻害する。例えば、内壁面27b上に連続しているシード層30aが形成されない。あるいは、シード層30aの厚みを大きくしなければならない。微細な導体回路を形成することができない。実施形態では、突出部分Pが除去される。スパッタで形成されるシード層30aの厚みを薄くできる。スパッタで形成されるシード層30aの厚みが薄くても、連続しているシード層30aが得られる。
【0032】
内壁面27上に凹凸が形成されない。内壁面27は平滑に形成される。レーザ光照射後の内壁面27bを処理するための条件を制御することで、凹凸の大きさが制御される。
【0033】
ビア孔26内が洗浄される。ビア孔26内を洗浄することによりビア孔26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。ビア孔26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。ドライプロセスのガス種は、ハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)とOガスの混合ガス、あるいはハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)、Oガスの単独のガスである。洗浄はデスミア処理を含む。第一樹脂絶縁層20の第一面22は保護膜50で覆われているためプラズマの影響を受けない。第一樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されない。第一面22は荒らされない。
【0034】
レーザ光照射後の内壁面27bを処理することがビア孔26内を洗浄することを含む場合、ビア孔26内の洗浄を削除してもよい。
【0035】
図3Eに示されるように、ビア孔26内を洗浄後に、第一樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。レーザ光照射後の内壁面27bを処理することがビア孔26内を洗浄することを含む場合、レーザ光照射後の内壁面27bの処理後に、第一樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。レーザ光照射後の内壁面27bが処理される時、保護膜50は第一樹脂絶縁層20の第一面22を覆っている。保護膜50の除去後、第一樹脂絶縁層20の第一面22を荒らすことは行われない。そのため、第一面22は平滑に形成される。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.02μm以上0.06μm以下である。
【0036】
図3Fに示されるように、第一樹脂絶縁層20の第一面22上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。第一層31aが第一面22上にスパッタで形成される。同時に、ビア孔26から露出する内壁面27とパッド14上に第一層31aがスパッタで形成される。その後、第一層31a上に第二層31bがスパッタで形成される。シード層30aはビア孔26から露出するパッド14の上面とビア孔26の内壁面27にも形成される。第一層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金で形成される。第二層31bは銅で形成される。
【0037】
図3Gに示されるように、シード層30a上にめっきレジスト60が形成される。めっきレジスト60は、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36(図1参照)を形成するための開口を有する。
【0038】
図3Hに示されるように、めっきレジストから露出するシード層30a上に電解めっき層30bが形成される。電解めっき層30bは銅で形成される。電解めっき層30bはビア孔26を充填する。第一面22上のシード層30aと電解めっき層30bによって、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36が形成される。第二導体層30が形成される。ビア孔26内のシード層30aと電解めっき層30bによって、第一ビア導体40が形成される。第一ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成する。
【0039】
めっきレジストが除去される。電解めっき層30bから露出するシード層30aがエッチングで除去される。第二導体層30と第一ビア導体40が同時に形成される。
【0040】
その後、第二導体層30と第一面22上に、第二樹脂絶縁層120と第三導体層130
と第二ビア導体140が形成される。第二樹脂絶縁層120と第三導体層130と第二ビア導体140は、第一樹脂絶縁層20と第二導体層30と第一ビア導体40が形成された方法と同様の方法で形成される。実施形態のプリント配線板2(図1参照)が得られる。
【0041】
実施形態のプリント配線板2(図1及び図2参照)では、第一樹脂絶縁層20において、ビア孔26の内壁面27は樹脂80の面80aと第一無機粒子91の第一平滑面91aとによって形成される。面80aと第一平滑面91aがほぼ共通な面を形成する。これにより内壁面27は平滑に形成される。そのため、ビア孔26の内壁面27上に均一な厚みのシード層30aが形成される。シード層30aは薄く形成される(図3F参照)。シード層30aが除去される時、エッチング量が少ない。そのため、電解めっき層30bのエッチング量が少ない。第一信号配線32と第二信号配線34を有する第二導体層30が設計値通りの幅を有する。また、内壁面27が平滑に形成されるため、シード層30aの表面が平滑となる。これにより電解めっき層30bの充填性が向上する。第一ビア導体40の内層を構成する電解めっき層30bに応力集中部位(一例として凹凸部)が形成されるのが抑制される。これにより、第一ビア導体40の内層である電解めっき層30bに亀裂が生じるのを抑制できる。さらに、内壁面27が平滑に形成されるため、内壁面27と第一ビア導体40との間にボイドが発生するのが抑制される。第二樹脂絶縁層120においても、第一樹脂絶縁層20と同様に、ビア孔126の内壁面127は樹脂180の面180aと第一無機粒子191の第一平滑面191aとによって平滑に形成されている。このため、第一信号配線132と第二信号配線134を有する第三導体層130が設計値通りの幅を有する。また、第二ビア導体140の内層である電解めっき層130bに亀裂が生じるのを抑制できる。さらに、内壁面127と第二ビア導体140との間にボイドが発生するのが抑制される。よってプリント配線板2の信頼性が向上する。すなわち、高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0042】
実施形態のプリント配線板2では第一樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22には無機粒子90が露出しない。同様に第二樹脂絶縁層120の第五面122は樹脂180のみで形成されている。第五面122には無機粒子190が露出しない。第一面22、第五面122にはそれぞれ凹凸が形成されない。第一樹脂絶縁層20の第一面22近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。第二樹脂絶縁層120の第五面122近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。第一面22、第五面122のそれぞれの比誘電率は場所によって大きく変わらない。第一信号配線32と第二信号配線34が第一面22に接していても、第一信号配線32と第二信号配線34間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。同様に、第一信号配線132と第二信号配線134が第五面122に接していても、第一信号配線132と第二信号配線134間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。そのため、実施形態のプリント配線板2ではノイズが抑制される。実施形態のプリント配線板2にロジックICが実装されても、第一信号配線32、132で伝達されるデータと第二信号配線34、134で伝達されるデータがロジックICにほぼ遅延なく到達する。ロジックICの誤動作を抑制することができる。例えば、第一信号配線32、132の長さと第二信号配線34、134の長さがそれぞれ5mm以上であっても、両者の伝搬速度の差を小さくすることができる。第一信号配線32、132の長さと第二信号配線34、134の長さが10mm以上、20mm以下であっても、ロジックICの誤動作を抑制することができる。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0043】
[実施形態の別例1]
実施形態の別例1では、シード層10a、30a、130aの第一層11a、31a、131aは、銅と第2元素で形成されている。第2元素は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、の中から選ばれる。第一層11a、31a、131aは銅を含む合金で形成される。第二層11b、31b、131bは銅で形成される。第二層11b、31b、131bを形成している銅の量(原子量%)は99.9%以上である。99.95%以上が好ましい。
【0044】
なお、シード層10a、30a、130aの第一層11a、31a、131aは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、のうちのいずれか1つの金属で形成されてもよい。
【0045】
[実施形態の別例2]
実施形態の別例2ではレーザ光照射後の内壁面27b、127bを処理するための条件が制御される。そのため、図4に示されるように、内壁面27を形成する樹脂80の面80aと第一無機粒子91の第一平滑面91aとは実質的に同一平面を形成する。図4は処理後の内壁面27を示す拡大断面図である。なお、処理後の内壁面127は、処理後の内壁面27と同様の断面となるため、図示を省略する。第一平滑面91aと樹脂80の面80aとの間の距離はそれぞれ5μm以下である。そのため、第一無機粒子91と第一無機粒子91の周りに形成されている樹脂80間に隙間100があっても、隙間100内にシード層30aを形成することができる。この場合、シード層30aは内壁面27上と隙間100の内部に形成される。第一平滑面91aと隙間100の底との間の距離は5μm以下であると、スパッタで形成されるシード層30aが内壁面27から剥がれ難い。第一平滑面91aと隙間100の底との間の距離は3μm以下であることが好ましい。内壁面27上のシード層30aの厚みのバラツキを小さくすることができる。同様の理由により、スパッタで形成されるシード層130aを内壁面27から剥がれ難くなる。また、内壁面127上のシード層130aの厚みのバラツキを小さくすることができる。
【0046】
本開示の技術のプリント配線板2では、第一樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90を含むが、繊維補強材を含んでいてもよい。第二樹脂絶縁層120は樹脂180と無機粒子190を含むが、繊維補強材を含んでいてもよい。繊維補強材としては、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布を用いてもよい。繊維補強材は、第一樹脂絶縁層20と第二樹脂絶縁層120の双方に含まれてもよいし、片方のみに含まれてもよい。
【0047】
本開示の技術のプリント配線板2では、樹脂絶縁層が二層積層されているが、樹脂絶縁層が三層以上積層されてもよい。
【0048】
本開示の技術のプリント配線板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態のプリント配線板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態のプリント配線板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。
【0049】
本開示の技術のプリント配線板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、各導体層はフルアディティブ法によって形成されてもよい。また、各絶縁層は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態のプリント配線板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
2 :プリント配線板
4 :絶縁層
9 :積層体
10 :第一導体層(導体層の一例)
20 :第一樹脂絶縁層(樹脂絶縁層の一例)
22 :第一面(表面の一例)
26 :ビア孔
27 :内壁面
30 :第二導体層(導体層の一例)
30a :シード層
30b :電解めっき層
31a :第一層
31b :第二層
40 :第一ビア導体
80 :樹脂
90 :無機粒子
91 :第一無機粒子
91a :第一平滑面
92 :第二無機粒子
120 :第二樹脂絶縁層(樹脂絶縁層の一例)
130 :第三導体層(導体層の一例)
130a :シード層
130b :電解めっき層
131a :第一層
131b :第二層
140 :第二ビア導体
190 :無機粒子
191 :第一無機粒子
192 :第二無機粒子
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4