(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084589
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 2/08 20060101AFI20240618BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240618BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20240618BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240618BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240618BHJP
H01C 1/084 20060101ALI20240618BHJP
H01C 13/02 20060101ALI20240618BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01G2/08 A
H01G2/10 M
H01G2/02 101E
H01G4/228 J
H01G4/38 A
H01C1/084
H01C13/02
H01F27/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198936
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克哉
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 奈都葵
【テーマコード(参考)】
5E028
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E028BB01
5E028BB13
5E028CA02
5E028EA13
5E028GA02
5E028GA03
5E070AB01
5E070DA02
5E070DA18
5E082AA01
5E082BC25
5E082CC01
5E082GG01
5E082HH06
5E082KK07
5E082KK08
(57)【要約】
【課題】複数のチップ部品を一体化した電子部品において、電流値が上昇しても発熱による温度上昇を防止することができる電子部品を提供する。
【解決手段】所定の第1の方向に沿って配列されており端子電極を有する複数のチップ部品と、前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品の前記端子電極に接続しており、前記端子電極に対向する電極対向面と、前記電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向し前記第1の方向に対して略平行である実装面と、を有する金属ブロックと、を有する電子部品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1の方向に沿って配列されており端子電極を有する複数のチップ部品と、
前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品の前記端子電極に接続しており、前記端子電極に対向する電極対向面と、前記電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向し前記第1の方向に対して略平行である実装面と、を有する金属ブロックと、を有する電子部品。
【請求項2】
前記金属ブロックの前記電極対向面から重心位置までの最短距離L1は、前記端子電極が設けられる前記チップ部品の端面に直交する方向に関する前記チップ部品の長さL2の0.1倍以上1.0倍以下である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記金属ブロックにおける前記電極対向面および前記実装面に略垂直である横断面の断面積が、前記横断面に対する前記電極対向面および前記実装面の交線を2つの辺とする三角形の面積以上である請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
それぞれの前記チップ部品の前記端子電極は、一方の端面に形成される第1端子電極と、他方の端面に形成される第2端子電極と、を有し、
前記金属ブロックは、それぞれの前記チップ部品の前記第1端子電極に接続する第1金属ブロックと、それぞれの前記チップ部品の前記第2端子電極に接続する第2金属ブロックと、を有し、
前記第1金属ブロックは、前記第1端子電極に対向する第1電極対向面と、前記第1電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向する第1実装面と、を有し、
前記第2金属ブロックは、前記第2端子電極に対向する第2電極対向面と、前記第2電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向する第2実装面と、を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の前記チップ部品は、前記第1の方向に沿って互いに略平行に配列され、前記端子電極をそれぞれ有する複数の第1チップ部品と複数の第2チップ部品と、を有し、
前記金属ブロックの前記電極対向面は、それぞれの前記第1チップ部品の前記端子電極に対向する一方の電極対向面と、前記一方の電極対向面とは反対側を向き前記第2チップ部品の前記端子電極に対向する他方の電極対向面と、を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記金属ブロックは、前記第1の方向に延びる略直方体形状である請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記金属ブロックは、前記実装面および前記電極対向面とは異なる方向を向く面に形成される凹凸部を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記金属ブロックの前記電極対向面は、それぞれの前記チップ部品の前記端子電極に対して、導電性接合部材を介して接合する請求項1に記載の電子部品。
【請求項9】
前記端子電極は、略直方体形状の前記チップ部品の端面の少なくとも1つに形成されており、前記第1の方向は、前記端面の法線方向に交差する請求項1に記載の電子部品。
【請求項10】
前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品において前記実装面とは反対方向を向くチップ上側面に対向する板状部と、前記板状部において前記第1の方向に略平行な板状部第1辺に沿って形成されており前記板状部から前記第1の方向とは垂直な下方に突出する第1の突出部と、前記第1の突出部に対して前記第1の方向および前記下方とは垂直な第2の方向に形成され前記板状部から前記下方に突出する第2の突出部と、を有する絶縁ケースを有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項11】
前記金属ブロックは、前記実装面とは反対方向を向く面に形成され前記第1の方向に略平行に続く凹部を有し、
前記第1の突出部は、前記凹部に配置される請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
所定の第1の方向に沿って配列されており端子電極を有する複数のチップ部品と、
前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品の前記端子電極に接続しており、前記端子電極に対向する電極対向面と、前記電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向し前記第1の方向に対して略直交する実装面と、を有する金属ブロックと、を有する電子部品。
【請求項13】
前記金属ブロックは、前記実装面および前記電極対向面とは略垂直であって、かつ、前記チップ部品において前記端子電極が形成される端面とは略垂直であるチップ側面に対向するチップ対向面を有する請求項12に記載の電子部品。
【請求項14】
前記金属ブロックは、前記実装面および前記電極対向面とは異なる方向を向く面に形成される凹凸部を有する請求項12に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチップ部品を含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ等の複数のチップ部品を、基板などを用いて一体化した電子部品が提案されている(特許文献1等参照)。このような電子部品は、基板実装時などにおいて、複数のチップ部品をまとめて実装可能であるため、実装工程の簡素化、迅速化の観点で、チップ部品を個別に実装するものに比べて有利な効果を奏する。また、板状部および板状部の辺から突出する突出部を有する絶縁ケースを用いることにより、組み立てを容易にしたり、チップ部品からの放熱特性を向上させたりする技術も提案されている(特許文献2等参照)。
【0003】
しかしながら、複数のチップ部品を一体化する従来の電子部品では、特に電流値が上昇すると、発熱量が大きくなり過ぎて想定以上の温度上昇を生じる場合があり、課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-8158号公報
【特許文献2】特開2022-79393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、複数のチップ部品を一体化した電子部品において、電流値が上昇しても発熱による温度上昇を防止することができる電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記したような課題に対して分析を重ねて結果、複数のチップ部品を一体化した従来の電子部品では、実装基板のランドパターンと電子部品との接合部分において発熱量が、電子部品単体の発熱量と比較して相対的に大きくなり、その対策を行うことで部品の温度上昇を抑制できるという新たな知見を得、その知見に基づき新たな電子部品を発明するに至った。
【0007】
本発明に係る電子部品は、所定の第1の方向に沿って配列されており端子電極を有する複数のチップ部品と、
前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品の前記端子電極に接続しており、前記端子電極に対向する電極対向面と、前記電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向し前記第1の方向に対して略平行である実装面と、を有する金属ブロックと、を有する。
【0008】
本発明に係る電子部品は、複数のチップ部品の端子電極に接続する金属ブロックを有し、さらに、金属ブロックの実装面が、実装時において実装対象であるランドパターンに対向する。この電子部品では、ランドパターンと電子部品との接合部分において、断面積の広い電流パスを形成することが可能な金属ブロックが配置されるため、電流値が上昇しても発熱量を抑制し、電子部品の温度上昇を防止することができる。
【0009】
また、たとえば、前記金属ブロックの前記電極対向面から重心位置までの最短距離L1は、前記端子電極が設けられる前記チップ部品の端面に直交する方向に関する前記チップ部品の長さL2の0.1倍以上1.0倍以下であってもよい。
【0010】
金属ブロックの厚み等については、特に限定されないが、電極対向面から重心位置までの最短距離L1に関して、金属ブロックが所定の長さを有することにより、より断面積の広い電流パスを形成し、電子部品の温度上昇を防止することが可能である。
【0011】
また、たとえば、前記金属ブロックにおける前記電極対向面および前記実装面に略垂直である横断面の断面積が、前記横断面に対する前記電極対向面および前記実装面の交線を2つの辺とする三角形の面積以上であってもよい。
【0012】
金属ブロックの横断面の断面積については、特に限定されないが、電極対向面および実装面による交線を2つの辺とする三角形の面積と同じかこれより広くすることにより、電流パスの断面積を広く確保し、電子部品の温度上昇をより効果的に防止することが可能である。
【0013】
また、たとえば、それぞれの前記チップ部品の前記端子電極は、一方の端面に形成される第1端子電極と、他方の端面に形成される第2端子電極と、を有してもよく、
前記金属ブロックは、それぞれの前記チップ部品の前記第1端子電極に接続する第1金属ブロックと、それぞれの前記チップ部品の前記第2端子電極に接続する第2金属ブロックと、を有してもよく、
前記第1金属ブロックは、前記第1端子電極に対向する第1電極対向面と、前記第1電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向する第1実装面と、を有してもよく、
前記第2金属ブロックは、前記第2端子電極に対向する第2電極対向面と、前記第2電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向する第2実装面と、を有してもよい。
【0014】
第1金属ブロックと第2金属ブロックとを有することにより、第1端子電極と第2端子電極の双方について、ランドパターンとの接合部分に断面積の広い電流パスを形成することができ、効果的に電子部品の温度上昇を防止できる。
【0015】
また、たとえば、前記複数の前記チップ部品は、前記第1の方向に沿って互いに略平行に配列され、前記端子電極をそれぞれ有する複数の第1チップ部品と複数の第2チップ部品と、を有してもよく、
前記金属ブロックの前記電極対向面は、それぞれの前記第1チップ部品の前記端子電極に対向する一方の電極対向面と、前記一方の電極対向面とは反対側を向き前記第2チップ部品の前記端子電極に対向する他方の電極対向面と、を有してもよい。
【0016】
このような電子部品では、ランドパターンを介して互いに直列接続する第1チップ部品と第2チップ部品との間に、金属ブロックが介在することにより、第1チップ部品と第2チップ部品との接続部分における電流パスの断面積を広く確保し、発熱を効果的に防止できる。
【0017】
また、たとえば、前記金属ブロックは、前記第1の方向に延びる略直方体形状であってもよい。
【0018】
金属ブロックは、三角柱、台形柱、四角錐台などの直方体形状以外の柱状形状その他の形状であってもよいが、直方体形状とすることにより、実装姿勢が安定するとともに、電流パスの断面積を広く確保できる。また、直方体形状の金属ブロックは、形状が単純であり製造が容易である。
【0019】
また、たとえば、前記金属ブロックは、前記実装面および前記電極対向面とは異なる方向を向く面に形成される凹凸部を有してもよい。
【0020】
金属ブロックが凹凸部を有することにより、金属ブロックからの放熱効率が向上するため、このような電子部品は、温度上昇をより効果的に防止できる。
【0021】
また、たとえば、前記金属ブロックの前記電極対向面は、それぞれの前記チップ部品の前記端子電極に対して、導電性接合部材を介して接合してもよい。
【0022】
導電性接合部材により端子電極と電極対向面とが接合されていることにより、このような電子部品では、チップ部品と金属ブロックとの電気的な導通を確実に保つことができる。
【0023】
また、たとえば、前記端子電極は、略直方体形状の前記チップ部品の端面の少なくとも1つに形成されており、前記第1の方向は、前記端面の法線方向に交差してもよい。
【0024】
このような電子部品は、シンプルな形状の金属ブロックを用いて、複数のチップ部品を第1の方向に沿って容易に配列させて、複数のチップ部品を有する電子部品を構成することができる。
【0025】
また、たとえば、電子部品は、前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品において前記実装面とは反対方向を向くチップ上側面に対向する板状部と、前記板状部において前記第1の方向に略平行な板状部第1辺に沿って形成されており前記板状部から前記第1の方向とは垂直な下方に突出する第1の突出部と、前記第1の突出部に対して前記第1の方向および前記下方とは垂直な第2の方向に形成され前記板状部から前記下方に突出する第2の突出部と、を有する絶縁ケースを有してもよい。
【0026】
このような電子部品は、チップ部品や金属ブロックなどを、絶縁ケースを用いて容易に位置決めして一体化させることができるため、生産性が良好である。
【0027】
また、たとえば、前記金属ブロックは、前記実装面とは反対方向を向く面に形成され前記第1の方向に略平行に続く凹部を有してもよく、
前記第1の突出部は、前記凹部に配置されてもよい。
【0028】
このような電子部品は、絶縁ケースと金属ブロックとを位置精度よく確実に固定することが可能であり、寸法精度および固定強度が良好である。
【0029】
本発明の第2の観点に係る電子部品は、所定の第1の方向に沿って配列されており端子電極を有する複数のチップ部品と、
前記第1の方向に連続してそれぞれの前記チップ部品の前記端子電極に接続しており、前記端子電極に対向する電極対向面と、前記電極対向面とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向し前記第1の方向に対して略直交する実装面と、を有する金属ブロックと、を有する。
【0030】
第2の観点に係る電子部品も、第1の観点に係る電子部品と同様に、複数のチップ部品の端子電極に接続する金属ブロックを有し、さらに、金属ブロックの実装面が、実装時において実装対象であるランドパターンに対向する。このような電子部品では、ランドパターンと電子部品との接合部分において、断面積の広い電流パスを形成することが可能な金属ブロックが配置されるため、電流値が上昇しても発熱量を抑制し、電子部品の温度上昇を防止することができる。なお、実装面と第1の方向が略直交するため、電子部品の高さが高くなり、高さが低い電子部品より放熱性の点で有利である。
【0031】
また、たとえば、前記金属ブロックは、前記実装面および前記電極対向面とは略垂直であって、かつ、前記チップ部品において前記端子電極が形成される端面とは略垂直であるチップ側面に対向するチップ対向面を有してもよい。
【0032】
このような電子部品では、チップ部品と金属ブロックとの接触面積が広くなるため、より良好な放熱特性を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品の斜め上方からの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子部品を斜め下方から見た概略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子部品から金属ブロックを除く他の部材を表示した部分組立図である。
【
図4】
図4は、
図1および
図2に示す電子部品を実装基板に実装した状態における断面を示す実装状態断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子部品の斜め上方からの概略斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す電子部品を斜め下方から見た概略斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す電子部品に含まれる金属ブロックの概略斜視図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る電子部品を斜め下方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
【
図10】第5実施形態に係る電子部品を斜め上方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、実施例に係る発熱シミュレーションに用いる電子部品を説明した概念図である。
【
図12】
図12は、実施例に係る発熱シミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例に係る発熱シミュレーションに用いた電子部品が実装される実装基板の電流密度の計算結果を示す図である。
【
図14】
図14は、発熱シミュレーションに用いた電子部品の1つにおける電流パスの状態を示す概念図である。
【
図15】
図15は、発熱シミュレーションに用いた電子部品の他の1つにおける電流パスの状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0035】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品10の斜め上方からの概略斜視図である。電子部品10は、複数のチップ部品30と、第1金属ブロック80と、第2金属ブロック90とを有する。また、電子部品10は、複数のチップ部品30および金属ブロック80、90等が固定される絶縁ケース20を有する。
【0036】
なお、電子部品10の説明においては、
図1に示すように、複数のチップ部品30の配列方向を第1の方向D1、電子部品10の上部に配置される絶縁ケース20から実装面(実装面84、第2実装面94)である下方に向かう方向を第3の方向D3、第1の方向D1および第3の方向D3に垂直な方向を第2の方向D2として説明を行う。なお、第1の方向D1および第2の方向D2は電子部品10の実装面に対して略平行な方向であり、電子部品10の説明においては、これらの第1方向および第2方向を水平方向という場合がある。
【0037】
図2は、電子部品10を斜め下方から見た斜視図である。
図2に示すように、電子部品10における複数のチップ部品30は、5つのチップ部品31、41、51、61、71により構成される。5つのチップ部品31、41、51、61、71からなる複数のチップ部品30は、所定の第1の方向D1に沿って配列される。電子部品10では、第1の方向D1は、後述する金属ブロック80、90の実装面84、94と略平行であるが、電子部品としてはこれに限定されず、第1の方向D1が金属ブロックの実装面に対して垂直となるものもある(
図10等参照)。
【0038】
ここで、複数のチップ部品30に含まれるチップ部品31、41、51、61、71の数は、
図2に示す5つのみには限定されず、電子部品10は、2つ以上の任意の数のチップ部品31、41、51、61、71を含み得る。チップ部品31、41、51、61、71は、互いに略同一の形状、サイズおよび構造を有してるため、チップ部品31、41、51、61、71については、主にチップ部品31についての説明を行い、他のチップ部品41、51、61、71については、説明を省略する。ただし、複数のチップ部品30に含まれる各チップ部品31、41、51、61、71は、
図2に示すように同一のもののみには限られず、互いに異なる形状およびサイズを有するものが、複数のチップ部品30に含まれていてもよい。
【0039】
図3は、
図2に示す電子部品10から、金属ブロック80、90を除く他の部材を表示した模式図である。
図2に示すように、チップ部品31は、略直方体の外形状を有しており、上方(Z軸負方向)を向くチップ上側面31aが、絶縁ケース20の板状部下面24に向き合うように配置される。電子部品10に含まれるチップ部品31は、チップコンデンサであるが、チップ部品31、41、51、61、71としてはチップコンデンサのみには限定されず、チップインダクタやチップバリスタなど、チップコンデンサ以外のチップ部品であっても構わない。
【0040】
図3に示すように、チップ部品31は、一対の端子電極である第1端子電極33と第2端子電極35とを有する。チップ部品31の端子電極33、35は、略直方体形状のチップ部品31の端面31c、31dの少なくとも一つに形成されており、第1の方向D1は、端面31c、31dの法線方向(第2の方向D2)に交差する。すなわち、チップ部品31の第1端子電極33は、チップ部品31の面のうち、第2の方向D2に垂直な一方の端面である第1端面31cに形成される。また、チップ部品31の第2端子電極35は、第2の方向D2に垂直であって第1端面31cとは反対方向を向く他方の端面である第2端面31dに形成される。
【0041】
端子電極33、35は、チップ部品31の面のうち、第1端面31cおよび第2端面31dの全体に形成されている。また、端子電極33、35は、第1端面31cおよび第2端面31dに隣接する他の面にも広がっており、端子電極33、35の一部は、チップ上側面31aや、チップ下側面31bや、チップ横側面31e、31fの一部にも形成されている。
【0042】
図4は、
図1および
図2に示す電子部品10が実装基板CBに実装された状態における断面を模式的に示す断面図であり、実装面84、94および第1の方向D1に垂直な横断面を示している。
図4に示すように、チップ部品31の内部には、誘電体層dyと内部電極層eyとが交互に積層されている。誘電体層dyの材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムまたはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。各誘電体層dyの厚みは、特に限定されないが、1μm~数百μmのものが一般的である。本実施形態では、各誘電体層の厚みは、好ましくは1.0~5.0μmである。
【0043】
内部電極層eyは、導電体材料を含有する。内部電極層eyが含有する導電体材料としては、特に限定されないが、誘電体層の構成材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。内部電極層eyに用いられる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層eyは、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層eyの厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。また、内部電極層eyは、金属以外の導電性材料で構成されていてもよい。
【0044】
チップ部品31の内部に積層される内部電極層eyは、第1端面31cに形成される第1端子電極33に接続しているものと、第2端面31dに形成される第2端子電極35に接続しているものがある。第1端子電極33と第2端子電極35に加えられる電位差は、内部電極層eyを介して、チップ部品31の誘電体層dyに加えられる。
【0045】
端子電極33、35の材質も特に限定されず、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極33、35の厚みも特に限定されないが、通常10~50μm程度である。なお、端子電極33、35の表面には、Ni、Cu、Sn等から選ばれる少なくとも1種の金属被膜が形成されていてもよい。
【0046】
図1および
図2に示すように、電子部品10は、第1金属ブロック80と第2金属ブロック90で構成される金属ブロック80、90を有する。金属ブロック80、90は、第1の方向D1に連続して、それぞれのチップ部品31、41、51、61、72の端子電極33、35に接続している。また、
図1および
図2に示すように、金属ブロック80、90は、端子電極33、35に対向する電極対向面(第1電極対向面82および第2電極対向面92)と、電極対向面とは略垂直であって実装時において実装基板CBのランドパターンLP(
図3参照)に対向する実装面(第1実装面84および第2実装面94)とを有する。
図2に示すように、金属ブロック80、90の実装面84、94は、第1の方向D1に対して略平行である。
【0047】
金属ブロック80、90が有する第1金属ブロック80は、それそれのチップ部品31、41、51、61、71の第1端面31cに形成される第1端子電極33に接続している。一方、金属ブロック80、90が有する第2金属ブロック90は、それそれのチップ部品31、41、51、61、71の第2端面31dに形成される第2端子電極35に接続している。
【0048】
詳細には、
図4に示すように、第1金属ブロック80は、第1端子電極33に対向する第1電極対向面82と、第1電極対向面82とは略垂直であって実装時においてランドパターンに対向する第1実装面84とを有する。また、第2金属ブロック90は、第2端子電極35に対向する第2電極対向面92と、第2電極対向面92とは略垂直であって実装時においてランドパターンLPに対向する第2実装面94とを有する。
【0049】
図2に示すように、金属ブロック80、90は、第1の方向D1に延び、第1の方向D1を長手方向とする略直方体形状を有する。ただし、金属ブロック80、90の形状としては、直方体形状のみには限定されず、台形柱などの他の四角柱、三角柱または四角錐台など、他の形状であってもかまわない。
【0050】
図2および
図3に示すように、金属ブロック80、90は、第1の方向D1に配列する複数のチップ部品30を、端面31c、31d側から挟むように配置される。金属ブロック80、90の第1の方向D1の長さは、たとえば金属ブロック80、90が接続する複数のチップ部品30の第1の方向D1に関する全体長さ(L5(
図3参照))に略等しい長さとすることができるが、特に限定されない。
【0051】
図2に示すように、第1金属ブロック80の第1電極対向面82は、それぞれのチップ部品31、41、51、61、71の第1端子電極33に対して、導電性接合部材を介して接合することが好ましい。導電性接合部材としては、はんだや導電性接着剤などが挙げられる。ただし、導電性接合部材としては、実装時において接合状態が変化する問題を回避するために、
図4に示す実装はんだSDより高温で溶融するものであることが好ましい。
【0052】
第1金属ブロック80の第1電極対向面82は、すべてのチップ部品31、41、51、61、71の第1端子電極33に対して、直接接触しているか、または、導電性接合部材のみを介して電気的に接続していることが好ましい。ただし、第1金属ブロック80は、一部のチップ部品31、41、51、61、71に対して、他のチップ部品の第1端子電極等を介して間接的に、電気的接続を確保する態様も考えられる。
【0053】
また、第2金属ブロック90の第2電極対向面92は、それそれのチップ部品31、41、51、61、71の第2端子電極35に対して、導電性接合部材を介して接合することが好ましい。第2電極対向面92と第2端子電極35とを接合する導電性接合部材としては、第1電極対向面82と第1端子電極33とを接合する導電性接合部材と同様に、はんだや導電性接着剤などが挙げられる。また、電子部品10においては、第2金属ブロック90の形状は、第1金属ブロック80と同様であり、第2金属ブロック90は、第1金属ブロック80に対して略対称に配置される。
【0054】
図4に示すように、電子部品10は、金属ブロック80、90の実装面84、94が実装基板CB側(下方)を向く姿勢で、実装基板CBのランドパターンLP上に載置され、実装基板CBに実装される。実装時において、金属ブロック80、90の実装面84、94はランドパターンLPに対向し、ランドパターンLPに直接接触するかまたは実装はんだSDを介して、ランドパターンLPに対して電気的に接合される。なお、実装はんだSDは、金属ブロック80、90において電極対向面82、92とは反対方向を向くブロック外側面86、96とランドパターンLPとの間に、はんだフィレットを形成してもよい。
【0055】
図4の断面図から理解できるように、電子部品10の金属ブロック80、90は、中実または断面積の広いブロック体であるため、実装基板CBのランドパターンLPから、チップ部品31の端子電極33、35までの間に、断面積の広い電流パスを形成することができる。たとえば、第1金属ブロック80の電極対向面82から重心位置G1までの最短距離L1は、端子電極33が設けられるチップ部品31の第1端面31cに直交する方向に関するチップ部品31の長さL2の(0.1)倍以上(2.0)倍以下であることが好ましく、(0.2)倍以上(1.0)倍以下であることがさらに好ましい。
【0056】
電極対向面82から重心位置G1までの最短距離L1が、チップ部品31の長さL2に対して所定の比率以上とすることにより、電流パスの断面積を広く確保し、大電流においても発熱を防止することが可能である。また、電極対向面82から重心位置G1までの最短距離L1が、チップ部品31の長さL2に対して所定の比率以下であることにより、電子部品10が過剰に大型化したり重くなったりする問題を防止できる。第2金属ブロック90の第2電極対向面92から重心位置までの最短距離についても、第1金属ブロック80の第1電極対向面82から重心位置G1までの最短距離L1と同様である。
【0057】
また、
図4に示すように、電子部品10では、第2金属ブロック90における第2電極対向面92および第2実装面94に略垂直である横断面の断面積S1が、横断面に対する第2電極対向面92および第2実装面94の交線を2つの辺とする三角形T1の面積S2(
図4においてグレーで表示)以上であることが好ましい。横断面の断面積S1が広いことにより、実装基板CBからチップ部品30までの電流パスの断面積を広く確保し、大電流での使用においても、発熱を効果的に防止することが可能である。第1金属ブロック80の横断面の断面積についても、第2金属ブロック90の脳断面の断面積S1と同様である。
【0058】
金属ブロック80、90の材質としては、金属であれば特に限定されないが、Cu、Al、Ag、Mg、Zn、Ni、Feなどの単体金属または合金などが挙げられ、Cu、Alを含む単体金属または合金が、導電率が高く発熱を効果的に抑制できる観点から好ましい。ただし、金属ブロック80、90は、断面積の広い電流パスを形成するため、CuやAlより導電率の低い金属を使用した場合にも、発熱を防止する効果を得ることができる。
【0059】
金属ブロック80、90は、鋳造、鍛造、削り出しなどにより作製することができる。金属ブロック80、90は、ブロックとして一体成型されたものであってもよく、複数の板材等を接合して、ブロック状にしたものであってもよい。
【0060】
図1および
図2に示すように、電子部品10の絶縁ケース20は、複数のチップ部品30および金属ブロック80、90に対して、実装面84、94とは反対側の面を覆うように取付けられている。
図3に示すように、絶縁ケース20は、板状部22と、板状部22から下方に突出する第1の突出部27および第2の突出部28とを有する。
【0061】
図3に示すように、絶縁ケース20の板状部22は、略矩形平板形状を有する。板状部22は、第1の方向D1に連続しており、板状部22の下面である板状部下面24は、それぞれのチップ部品において金属ブロック80、90の実装面84、94とは反対方向を向くチップ上側面31a(
図4参照)に対向する。
【0062】
絶縁ケース20の第1の突出部27は、板状部22において第1の方向D1に略平行な板状部第1辺24aに沿って形成されており、板状部22から下方(第3の方向D3)に突出する。また、絶縁ケース20の第2の突出部28は、板状部22において第1の方向D1および下方(第3の方向D3)とは垂直な第2の方向D2に略平行な板状部第2辺24bに沿って形成されており、板状部22から下方に突出する。
【0063】
第1の突出部27は、第1の方向であるX軸方向に延びる四角柱状の外形状を有するが、第1の突出部27の形状はこれに限定されない。たとえば、第1の突出部27は、三角柱状等の他の外形状を有していてもよく、また、
図3に示すような第1の方向D1に連続する第1の突出部27とは異なり、第1の方向D1に沿って断続的に形成される突起で構成されていてもよい。
【0064】
また、第2の突出部28は、第2の方向D2に延びる四角柱状の外形状を有するが、第2の突出部28の形状はこれに限定されない。たとえば、第2の突出部28は、三角柱状等の他の外形状を有していてもよく、また、
図3に示すような第2の方向D2に連続する第2の突出部28とは異なり、第1の突出部27から第2の方向D2側に離れて形成される孤立した突起であってもよい。
【0065】
本実施形態に示す絶縁ケース20では、
図3に示すように、第1の突出部27と第2の突出部28とは、板状部22における板状部第1辺24aと板状部第2辺24bとが接続する隅で略垂直に接続し、L字状の突起をなす。
【0066】
図3に示すように、板状部下面24の板状部第1辺24aには第1の突出部27が形成されており、板状部下面24の板状部第2辺24bには第2の突出部28が形成されているのに対して、板状部下面24の他の2つの辺には、突出部や突起が形成されていない。
【0067】
すなわち、
図3に示すように、板状部22における板状部第1辺24aに平行な板状部第3辺24cおよび板状部第2辺に平行な板状部第4辺24dには、突起の形成されていない非突起縁部が形成されている。
【0068】
図4に示すように、複数のチップ部品30のチップ上側面31aと、金属ブロック80、90において実装面84、94とは反対方向を向くブロック上面85、95とが、絶縁ケース20における板状部下面24に対向する。複数のチップ部品30のチップ上側面31aおよび金属ブロック80、90のブロック上面85、95は、接着剤が硬化した接着剤硬化部(不図示)を介して、板状部22に対して固定されている。接着剤としては、非導電性の接着剤であれば特に限定されないが、たとえばエポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0069】
図4に示すように、第1の突出部27の板状部22からの下方への突出長さは、複数のチップ部品30に含まれるチップ部品31、41、51、61、71および金属ブロック80、90の高さ寸法(第3の方向D3に沿う長さ)より短く、チップ部品31、41、51、61、71および金属ブロック80、90の高さ寸法の1/2以下であることが好ましい。第2の突出部28の下方への突出長さについても、第1の突出部27と同様である。
【0070】
これにより、複数のチップ部品30に含まれるチップ部品31、41、51、61、71は、第1の突出部27や第2の突出部28に邪魔されることなく、
図7および
図8に示すように、チップ部品31、41、51、61、71のチップ下側面が下向きとなる姿勢で、実装基板CB等に表面実装される。
【0071】
図3に示す絶縁ケース20は、たとえば樹脂成型や、板材の機械加工によって作製することができる。絶縁ケース20の材質としては、絶縁性の材質であれば特に限定されないが、応力緩和の観点から、絶縁ケース20は樹脂製であることが好ましい。
【0072】
電子部品10の組み立てでは、各チップ部品31、41、51、61、71や金属ブロック80、90など、多数のブロック状のパーツを精度良く配置する必要がある。
図3に示すように、板状部22、第1の突出部27および第2の突出部28を有する絶縁ケース20を用いることにより、各チップ部品31、41、51、61、71や金属ブロック80、90を、
図2に示すような状態に、効率的かつ精度良く配置することができる。また、絶縁ケース20は、チップ部品31、41、51、61、71や金属ブロック80、90等が接着固定されることにより、電子部品10に含まれる各部材の接合強度を高め、衝撃や振動、熱変形などに起因する損傷から、電子部品10を保護することができる。
【0073】
図4に示すように、電子部品10では、ランドパターンLPと電子部品10との接合部分において、断面積の広い電流パスを形成することが可能な金属ブロック80、90が配置されるため、電子部品10への電流値が上昇しても、電流パスにおける発熱量を抑制し、電子部品10の温度上昇を防止することができる。
【0074】
第2実施形態
図5は、第2実施形態に係る電子部品110を斜め上方から見た斜視図である。電子部品110は、金属ブロック180、190等の形状が、
図1~
図4に示す電子部品10とは異なることを除き、電子部品10と同様である。電子部品110の説明は、電子部品10との相違点を中心に行い、電子部品10との共通点については、電子部品10と共通の符号を図面に付し、説明を省略する。
【0075】
図5に示すように、電子部品110は、電子部品10と同様に、複数のチップ部品30と、絶縁ケース120と、金属ブロック180、190とを有する。
図6に示すように、複数のチップ部品30が、第1の方向D1に沿って配列される5つのチップ部品31、41、51、61、71で構成される点や、複数のチップ部品30および金属ブロック180、190が、絶縁ケース120における板状部22の板状部下面24に配置および固定される点も、電子部品110は、電子部品10と同様である。
【0076】
図6に示すように、電子部品110の金属ブロック180、190は、それぞれのチップ部品31、41、51、61、71の第1端子電極33に接続する第1金属ブロック180と、それぞれのチップ部品31、41、51、61、71の第2端子電極35に接続する第2金属ブロック190とで構成される。第1金属ブロック180は、第1端子電極33に対向する第1電極対向面182と、第1電極対向面182とは略垂直であって実装時にランドパターンLP(
図4参照)に対向する第1実装面184とを有する。また、第2金属ブロック190は、第2端子電極35に対向する第2電極対向面192と、第2電極対向面192とは略垂直であって実装時にランドパターンLP(
図4参照)に対向する第2実装面194とを有する。
【0077】
図5および
図6に示すように、第1金属ブロック180および第2金属ブロック190の一部は、第2の方向D2に関して、絶縁ケース120の外側に露出している。
図7は、第1金属ブロック180の斜視図である。
図7に示すように、第1金属ブロック180は、第1実装面184とは反対方向を向くブロック上面185に形成され第1の方向D1に略平行に続く凹部189を有する。
図6に示すように、絶縁ケース120の第1の突出部27は、第1金属ブロック180の凹部189に配置される。これにより、第1金属ブロック180は、絶縁ケース120に対して、より確実かつ精度良く固定される。
【0078】
また、
図7に示すように、第1金属ブロック180は、第1実装面184および第1電極対向面182とは異なる方向を向く面の一つであるブロック上面185に形成される凹凸部188を有する。
図5に示すように、凹凸部188は、凹部189より第1電極対向面182から離間する部分に形成されており、電子部品110の上方から見て、絶縁ケース120から露出している。
【0079】
このように凹凸部188を有する第1金属ブロック180は、表面積が広く放熱性の観点で有利である。また、凹凸部188は、第1実装面184とは反対方向を向くブロック上面185において第1電極対向面182から離間する部分に形成されており、第1金属ブロック180において比較的電流密度の低い領域に形成されている。したがって、第1金属ブロック180は、発熱量自体についても、凹凸部188が形成されていない金属ブロックとほぼ同等か、大差のないレベルを実現できる。
【0080】
図5および
図6に示す第2金属ブロック190も、複数のチップ部品30を挟んで第1金属ブロック180と対称に配置されており、第1金属ブロック180と同様の形状を有する。すなわち、第2金属ブロック190も、第1金属ブロック180と同様に、ブロック上面195に形成され第1の方向D1に略平行に続く凹部199と、ブロック上面195に形成される凹凸部198とを有し、良好な放熱特性を奏する。なお、第2金属ブロック190の凹部199には、絶縁ケース120の突出部は係合していない。
【0081】
その他、第2実施形態に係る電子部品110は、第1実施形態に係る電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0082】
第3実施形態
図8は、第3実施形態に係る電子部品210を斜め上方から見た斜視図である。電子部品210は、金属ブロック280、290等の形状が、
図1~
図4に示す電子部品10とは異なることを除き、電子部品10と同様である。電子部品210の説明は、電子部品10との相違点を中心に行い、電子部品10との共通点については、電子部品10と共通の符号を図面に付し、説明を省略する。
【0083】
図8に示すように、電子部品210の金属ブロック280、290は、それぞれのチップ部品31、41、51、61、71の第1端子電極33に接続する第1金属ブロック280と、それぞれのチップ部品31、41、51、61、71の第2端子電極35に接続する第2金属ブロック290とで構成される。第1金属ブロック280は、第1端子電極33に対向する第1電極対向面282と、第1電極対向面282とは略垂直であって実装時にランドパターンLP(
図4参照)に対向する第1実装面284とを有する。また、第2金属ブロック290は、第2端子電極35に対向する第2電極対向面292と、第2電極対向面292とは略垂直であって実装時にランドパターンLP(
図4参照)に対向する第2実装面294とを有する。
【0084】
図8に示すように、金属ブロック280、290は、ブロック外側面286、296が、上方にいくに従って、電極対向面282、292側に傾斜する略台形柱形状を有している。このような金属ブロック280、290は、略直方体状の金属ブロック80、90に比べて体積を小さくして、小型化および軽量化を図ることが可能である。なぜなら、金属ブロック280、290において、電極対向面282、292および実装面284、294の双方から離間する部分は、比較的電流密度の低い領域になるためである。
【0085】
その他、第3実施形態に係る電子部品210は、第1実施形態に係る電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0086】
第4実施形態
図9は、第4実施形態に係る電子部品310の断面図である。電子部品310は、1つの金属ブロック380を、2列の複数のチップ部品30-1、30-2が挟む態様である点で、1列の複数のチップ部品30を、2つの金属ブロック80、90が挟む態様である電子部品10とは相違する。電子部品310の説明は、電子部品10との相違点を中心に行い、電子部品10との共通点については、電子部品10と共通の符号を図面に付し、説明を省略する。
【0087】
図9に示すように、電子部品310における複数のチップ部品は、第1の方向D1に沿って互いに略平行に配列され、第1および第2端子電極33、35をそれぞれ有する複数の第1チップ部品30-1と、複数の第2チップ部品30-2とを有する。
図9では、複数の第1チップ部品30-1および複数の第2チップ部品30-2における1つのチップ部品31のみが表示されているが、複数の第1チップ部品30-1および複数の第2チップ部品30-2は、いずれも
図2等に示す複数のチップ部品30と同様であり、第1の方向D1に配列される5つのチップ部品31、41、51、61、71を有する。
【0088】
図9に示す金属ブロック380は、
図2に示す金属ブロック80と同様に、略直方体形状を有する。金属ブロック80は、第1の方向D1に連続して端子電極33、35に対向する一対の電極対向面382a、382bと、電極対向面382a、382bとは略垂直であって実装時においてランドパターンLP(
図4参照)に対向し第1の方向D1に略平行である実装面384とを有する。すなわち、金属ブロック380の電極対向面は、一対の電極対向面382a、382bを構成する一方の電極対向面382aと、他方の電極対向面382bとを有する。
【0089】
図9に示すように、一方の電極対向面382aと、他方の電極対向面382bとは、金属ブロック380における互いに反対方向を向く面である。一方の電極対向面382aは、それぞれの第1チップ部品30-1の端子電極33に対向し、他方の電極対向面382bは、それぞれの第2チップ部品30-2の端子電極35に対向する。
【0090】
電子部品310の実装時において、金属ブロック380は、
図4に示す金属ブロック80,90と同様に、実装基板CBのランドパターンLPに対して、実装はんだSDを介して接続される。金属ブロック380は、ランドパターンLPとともに、第1チップ部品30-1の端子電極33と第2チップ部品30-2の端子電極35とを電気的に接続する電流パスを構成する。このような電子部品310も、金属ブロック380がランドパターンLPと電子部品310との接合部分において断面積の広い電流パスを形成し、電流パスにおける発熱量を抑制し、電子部品310の温度上昇を防止することができる。
【0091】
その他、第4実施形態に係る電子部品310は、第1実施形態に係る電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0092】
第5実施形態
図10は、第5実施形態に係る電子部品410を斜め上方から見た斜視図である。電子部品410は、複数のチップ部品430が配列される所定の第1の方向D1と、金属ブロック480、490の実装面484、494とが略垂直である点や、絶縁ケース20を有しない点等で、第1実施形態に係る電子部品10とは異なる。電子部品410については、電子部品10との相違点を中心に説明を行い、電子部品10との共通点については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0093】
図10に示すように、電子部品410は、複数のチップ部品430と、金属ブロック480、490とを有する。複数のチップ部品430は、
図1および
図2に示すチップ部品30と同様に、5つのチップ部品31、41、51、61、71(
図3等参照)で構成される。ただし、複数のチップ部品430のそれぞれのチップ部品31、41、51、61、71は、互いに上下に積み重なるように、実装面484、494とは垂直である第1の方向D1に沿って配列される。それぞれのチップ部品31、41、51、61、71は、
図1~
図3に示すチップ部品31、41、51、61、71と同様であり、第1端子電極33および第2端子電極35を有する。第1端子電極33は、チップ部品31における第1の方向D1に直交する第2の方向D2の一方側の端面である第1端面31cに形成されており、第2端子電極35は、チップ部品31における第2の方向D2の他方側の単面である第2端面31dに形成されている。
【0094】
金属ブロック480、490は、第1の方向D1に連続してそれぞれのチップ部品31、41、51、61、71の端子電極33、35に接続しており端子電極33、35に対向する電極対向部(第1電極対向面482、第2電極対向面492)と、電極対向面482、492とは略垂直であって実装時においてランドパターンLPに対向し第1の方向D1に対して略直交する実装面484、494とを有する。
【0095】
金属ブロック480、490は、それぞれのチップ部品430の第1端子電極33に接続する第1金属ブロック480と、それぞれのチップ部品430の第2端子電極35に接続する第2金属ブロック490とを有する。第1金属ブロック480は、第1端子電極33に対向する第1電極対向面482と、第1電極対向面482とは垂直であって実装時においてランドパターンLPに対向する第1実装面484とを有する。第2金属ブロック490は、第2端子電極35に対向する第2電極対向面492と、第2電極対向面492とは垂直であって実装時においてランドパターンLPに対向する第2実装面494とを有する。
【0096】
金属ブロック480、490は、実装面484、494および電極対向面482、492とは異なる方向を向く面であるブロック横側面483a、483b、493a、493bに形成される凹凸部488、498を有する。ブロック横側面483a、483b、493a、493bは、実装面484、494および電極対向面482、492に略垂直な面であるが、
図10に示す例とは異なり、凹凸部488、498は、実装面484、494に垂直であって電極対向面482、492とは反対方向を向くブロック外側面486、496に形成されていてもよい。凹凸部488、498を有する金属ブロック480、490は、表面積が広く放熱性の観点で有利である。
【0097】
また、
図10に示すように、第1金属ブロック480は、第1実装面484および第1電極対向面482とは略垂直であって、かつ、チップ部品31において第1端子電極33が形成される第1端面31cとは略垂直であるチップ横側面31eに対向するチップ対向面487を有する。また、第2金属ブロック490も、第1金属ブロック480と同様に、第2実装面494および第2電極対向面492とは略垂直であって、かつ、第2端子電極35が形成される第2端面31dとは略垂直であるチップ横側面31fに対向するチップ対向面497を有する。
【0098】
このようなチップ対向面487、497を有する金属ブロック480、490は、チップ部品430との接触面積が広くなるため、より良好な放熱特性を奏する。
図10に示す電子部品410は、実装時における実装基板CBからの高さが高く、高さの低い他の電子部品にくらべて、効率的な放熱特性を奏し、電子部品410の温度上昇を抑制することができる。また、電子部品410も、電子部品10と同様に、ランドパターンLPと電子部品10との接合部分において、金属ブロック480、490が断面積の広い電流パスを形成し、電流パスにおける発熱量を効果的に抑制することができる。
【0099】
その他、第5実施形態に係る電子部品410は、第1実施形態に係る電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0100】
以下、さらに実施例を挙げて本発明に係る電子部品について詳細な説明を行うが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
実施例では、5つのチップ部品を並列に接続する複数のチップ部品30に対して、第2の方向D2の寸法が異なる5種類の一対の金属ブロック(ただし、そのうち1種類は第2の方向D2の寸法が0で金属ブロック不使用)をそれぞれ組み合わせ、金属ブロックの第2の方向D2の寸法のみが異なる5種類の電子部品を想定した発熱シミュレーションを実施した。複数のチップ部品30に含まれる1つのチップ部品の寸法は、3.5mm(第2の方向D2)×2.5mm(第1の方向D1)×2.5mm(第3の方向D3)とした。また、5種類の金属ブロックの第2の方向D2の寸法は、それぞれ、0mm、0.8mm、1.6mm、3.2mm、6.4mmとした。なお、金属ブロックの第1の方向D1に沿う長さは、いずれも12.5mm(ただし、第2の方向D2の寸法が0のものを除く)とした。
【0102】
図11(a)~(c)は、発熱シミュレーションで用いた電子部品510、610、710を比較した概念図である。
図11(a)に示す電子部品510は、金属ブロックの第2の方向D2の寸法が0mmであり、金属ブロック有しない。
図11(b)に示す電子部品610は、金属ブロック680、690の第2の方向D2の寸法が1.6mmである。
図11(c)に示す電子部品710は、金属ブロック780、790の第2の方向D2の寸法が6.4mmである。
【0103】
発熱シミュレーションでは、
図11(a)~(c)に示すような電子部品510、610、710に対して、13.7Aの電流を印加した場合に、環境温度25℃の条件で各電子部品510、610、710が到達する最高温度を算出した。
図12は、縦軸を各電子部品510、610、710の最高温度とし、横軸に金属ブロックの第2の方向D2の寸法とし、5種類の電子部品の発熱シミュレーションの結果をプロットしたものである。
【0104】
図12から理解できるように、5種類の電子部品510、610、710を比較すると、金属ブロックを有しない(第2の方向D2の寸法が0mmである)電子部品510の温度上昇が最も大きく、金属ブロックの第2の方向D2の寸法が大きくなるほど、電子部品の温度上昇が抑制される結果となったことが理解できる。
【0105】
図13は、金属ブロックの第2の方向D2の寸法がそれぞれ、0mm、(
図13(a))、3.2mm(
図13(b))の電子部品において、電子部品を実装した実装基板における導体部分(ランドパターンLPなど)で生じる電流密度の分布を示すものである。
図13では、色の濃い部分が電流密度の高い領域を示しており、色の薄い部分が電流密度の低い領域を示している。
【0106】
図13(a)に示すように、金属ブロックの第2の方向D2の寸法が0であり、金属ブロックを用いない電子部品では、電子部品と実装基板との接合部分近傍に、電流密度の高い領域が発生していることが解る。
【0107】
図14は、金属ブロックを用いない電子部品における電流の流れ(矢印で表示)を説明した概念図である。
図14に示すように、金属ブロックを用いない電子部品では、電子部品と実装基板との接合部分における電流パスの断面積が狭い。これにより、金属ブロックを用いない電子部品では、
図13(a)に示すような電流密度の高い領域が、電子部品と実装基板との接合部分近傍に発生したと考えられる。物質の自己発熱量は、電流値の2乗に比例するため、金属ブロックを用いない電子部品は、
図13(a)に示すように電流密度の高い領域での発熱量が大きくなり、電子部品の温度上昇も大きくなると考えられる。
【0108】
これに対して、
図13(b)に示すように、金属ブロックの第2の方向D2の寸法が(3.2)mmであり、第2の方向D2の寸法がチップ部品と同じ金属ブロックを用いる電子部品では、
図13(a)に示す電子部品と比較して、電子部品と実装基板との接合部分の電流密度が低いことが解る。
【0109】
図15は、金属ブロックを用いる電子部品における電流の流れ(矢印で表示)を説明した概念図である。
図15に示すように、金属ブロックを用いる電子部品では、電子部品と実装基板との接合部分における電流パスの断面積が広い。これにより、金属ブロックを用いる電子部品では、
図13(b)に示すように、電子部品と実装基板との接合部分近傍における電流密度が低く抑えられる。そのため、金属ブロックを用いない電子部品は、電子部品と実装基板との接合部分近傍での発熱量が抑えられ、電子部品の温度上昇を抑制できると考えられる。
【0110】
以上、複数の実施形態および実施例を用いて、本発明に係る電子部品の特徴を説明したが、本発明の技術的範囲には、他の多くの実施形態や変形例などが含まれることは言うまでもない。たとえば、電子部品に含まれるチップ部品の数は、複数であれば特に限定されず、また、電子部品に含まれるチップ部品の配置も、1列および複数列の配置のみには限定されず、マトリクス状その他の平面的および立体的な配置を採用し得る。
【符号の説明】
【0111】
10、110、210、310、410、510、610、710…電子部品
20、120…絶縁ケース
22…板状部
24…板状部下面
24a…板状部第1辺
24b…板状部第2辺
27…第1の突出部
28…第2の突出部
30、430…複数のチップ部品
31、41、51、61、71…チップ部品
30-1…第1チップ部品
30-2…第2チップ部品
31a…チップ上側面
31e、31f…チップ横側面
31c…第1端面
31d…第2端面
33…第1端子電極
35…第2端子電極
380、680、690、780、790…金属ブロック
80、180、280、480…第1金属ブロック
90、190、290、490…第2金属ブロック
82、182、282、482…第1電極対向面
382a…一方の電極対向面
382b…他方の電極対向面
92、192、292、492…第2電極対向面
384…実装面
84、184、284、484…第1実装面
94、194、294、494…第2実装面
T1…三角形
G1…重心位置
L1…距離L1
85、95、185、195…ブロック上面
86、96、286、296、486、496…ブロック外側面
483a、483b、493a、493b…ブロック横側面
487 チップ対向面
188、198、488、498…凹凸部
189、199…凹部
D1…第1の方向
D2…第2の方向
D3…第3の方向
CB…実装基板
LP…ランドパターン
SD…実装はんだ